(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040421
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】不均一撹拌機能を有するディスクタイプのミキシングヘッド
(51)【国際特許分類】
B01F 27/72 20220101AFI20220304BHJP
B01F 27/80 20220101ALI20220304BHJP
【FI】
B01F7/08 D
B01F7/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145114
(22)【出願日】2020-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】591150052
【氏名又は名称】株式会社愛工舎製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114568
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 恒之
(72)【発明者】
【氏名】水戸 亮一
【テーマコード(参考)】
4G078
【Fターム(参考)】
4G078AA01
4G078AB09
4G078BA01
4G078BA05
4G078CA08
4G078DA17
4G078DC01
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】撹拌粉砕後の食材の粒子径分布にバラツキの有る状態を作り出すことができ、大量かつ連続的に被撹拌食材を製造可能なディスクタイプの連続発泡ミキシングヘッドを提供する。
【解決手段】ステーターハウジングとステーターヘッドから成るステーターと、ステーターのハウジングとヘッドの間に挟持され、回転軸によって回転駆動される円盤型のローターとを含み、ローター及びステーターの対向する両端面に同心円状かつ環状に並ぶ複数の小突起群を設け、ステーターとローターとの間を連続的に流れる被撹拌食材を撹拌粉砕するディスクタイプのミキシングヘッドであって、ローターには同心円状かつ環状に配列された複数の貫通孔を穿ち、ステーターとローターとの間を流れる食材の主要経路に、ローターに設けた貫通孔を通過する食材のバイパス経路を併設したことを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーターハウジングとステーターヘッドから成るステーターと、前記ステーターハウジングとステーターヘッドの間に挟持され、回転軸によって回転駆動されるディスクタイプのローターとを含み、前記ローター及びステーターの対向する両端面に同心円状かつ環状に並ぶ複数の小突起群を設け、前記ステーターとローターとの間を連続的に流れる被撹拌食材を撹拌・粉砕するディスクタイプのミキシングヘッドであって、
前記ローターには同心円状かつ環状に配列された複数の貫通孔を穿ち、前記ステーターとローターとの間を流れる食材の主要経路に、前記ローターに設けられた貫通孔を通過する食材のバイパス経路を併設したことを特徴とするディスクタイプのミキシングヘッド。
【請求項2】
前記ローターに環状に配列された貫通孔は、複数の同心環状に設けられていること特徴とする請求項1に記載のディスクタイプのミキシングヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、パンやケーキ生地などの被撹拌食材を撹拌する連続発泡ミキサーに使用されるディスクタイプのミキシングヘッドに関するものであって、被撹拌食材の撹拌・粉砕時において食材の粒子径を不均一とさせる機能を有する。
【背景技術】
【0002】
食品の製造加工業界において、カステラやスポンジケーキなどのソフトな生地類を連続的かつ大量に製造する場合には、
図1の斜視図(ミキシングヘッドの構造体の一部をカットモデルとして図示)に示すようなディスクタイプの連続発泡ミキシングヘッドが用いられることが多い。このようなミキシングヘッド100は、主に、ステーターハウジング101aと、ステーターヘッド101bから構成されるステーター101と、回転軸103によってステーターの内部で高速回転されるディスクタイプのローター102から構成されている。
【0003】
ステーター101とローター102の双方の対向面には、同心円状でかつ環列状に突出した多数の小突起(以下、単に「ピン」と言う。)104が設けられており、撹拌時に撹拌対象の食材が係るピンの隙間を通過することによって被撹拌食材の撹拌・粉砕処理が為されるのである。なお、ローター102の回転時に、ローター102とステーター101との対向するピンどうしが干渉し合わないように、双方のピン104は、ローターとステーターのそれぞれの対向面で、直径の異なる互い違いの環列同心円状に設けられていることは言うまでもない。
【0004】
パンやケーキ生地などの食材は、
図2のミキシングヘッドの略断面図に示されるように、その側面に設けられた抽入孔105から空気などの気泡と共にミキシングヘッドに連続的に供給される。その後、被撹拌食材は、ステーターハウジング101a、及びローター102の下片面(
図2において下側の意)のそれぞれに設けられたピン104の隙間を通過しつつ撹拌・粉砕され、回転中心部分からローター102の外縁部方向に向かって移動する。
【0005】
食材がローター102の外縁部に達すると、食材はローター外縁部とステーター内面の側面周囲部との間に設けられた隙間を抜けて、ローター102の上片面(
図2において上側の意)に移動する。ローターの上片面側に移動した食材は、今度は、ステーターヘッド101bとローター102の上片面の対向面のそれぞれに設けられたピン104の隙間を通過しつつ撹拌・粉砕され、ローター外縁方向から回転中心部分に向かって移動する。そして、回転軸103の先端方向に設けられた抽出孔106からミキシングヘッド100の外部に抽出される。なお、撹拌対象である食材の流れの概略を
図2中の小矢印群に示す。
【0006】
係る一連の処理工程により、撹拌対象である食材の撹拌・粉砕が行われると同時に、食材中への空気の取り込みが行われ、その食品独特の食感や味・まろやかさ等を作り出すことができる。特に、スポンジケーキやカステラなどのデリケートな生地類を撹拌する際には、被撹拌食材中における空気の含有量が食材品質の重要なファクターとなり、含有される空気の割合によってその食感が大きく異なる。因みに、風味豊かな食感を得るためには、一般的に生地類の比重が0.4~0.8程度になるまで食材中に空気の混入が必要であると言われている。
【0007】
また、食品独特の食感の形成においては、撹拌・粉砕処理が施された食材の粒子径の分布が大きく影響している。一般に、パンやケーキ生地などの食材は、小麦粉や卵白・卵黄などの粒子が分散質として、ミルクやクリームなどの分散媒の中に分散した疑似コロイド的な分散相を形成しているものと仮定することができる。処理工程が進むに伴って分散質の粒子径は順次破砕されて一層細かく、かつ均一となり、処理が進むにつれて撹拌対象である食材の食感は一層滑らかとなる。
【0008】
しかしながら、近年、食材風味における自然回帰の願望が社会的に強まり、このような滑らかな食材の食感ではなく、いわゆるザラザラとした食感である自然食感のパンやケーキが消費者に好まれるようになってきた。このようなザラザラとした食感は、撹拌対象物である食材の粒子径の分布にバラツキを加え、敢えて、滑らかで均一の撹拌・粉砕結果を押えることで達成できる。そして、係る撹拌・粉砕処理は、例えば、特許文献1に示すような従来の縦型ミキサーを用いて、ケーキやパン生地などの食材を撹拌することによって実現することができる。
【0009】
このような従来からの縦型ミキサーを使用して食材の撹拌・粉砕を行う場合の実例を
図3に示す。撹拌対象物の食材は、図中のボウルcの内部に滞留されており、撹拌を行う際には当該ボウルが支持アームdによって鉛直方向に上昇され、撹拌子bがボウルcの内部に降ろされる。その後、撹拌子bの上部に接続された駆動制御部aに含まれる駆動モーター及び回転駆動機構(図示せず)によって撹拌子bが回転駆動され撹拌処理が行われる。なお、撹拌子bの形状は撹拌対象の食材によって種々様々であり、
図3に示した事例(ホイッパータイプの撹拌子)に限定されるものではない。
【0010】
なお、
図3に示す事例では、撹拌子が撹拌対象物である食材中に上部から挿入される形式であり、また、特許文献1に示す事例では、撹拌子が撹拌対象物である食材中の下部に位置して撹拌処理を行うものである。すなわち、これらの従来技術では、撹拌対象物である食材が、ミキシングヘッドのステーターと回転するローターとの間を流れるのではなく、ボウルなどの容器に滞留される仕組みとなっており、回転する撹拌子が撹拌対象の食材中に、上方または下方の鉛直方向から加えられる構造となる。因みに、係る構造的な特徴により、このような形式のミキサーが「縦型ミキサー」と称される由縁となっている。
【0011】
これらの縦型ミキサーでは、撹拌・粉砕動作を担う撹拌子がボウルに滞留された食材中で回転する為、撹拌・粉砕効果が食材全体に同時かつ均一に及ぶものではない。それ故、撹拌子の回転によって被撹拌食材中に生ずる食材の対流運動により、撹拌・粉砕効果が順次被撹拌食材中に及ぶことになる。このため、被撹拌食材全体に及ぶ撹拌・粉砕効果は均一ではなく、当然、撹拌・粉砕処理の結果による食材粒子径のバラツキが生ずる。つまり、このような食材粒子径のバラツキが、いわゆるザラザラとした自然食品的な食感を生むのである。
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1や前述の
図3の事例に示された従来技術では、処理の度毎に撹拌対象の食材をボウルに入れ、その後、撹拌子による撹拌・粉砕処理を行い、処理の終了後にボウルから食材を取り出す、と言う一連の作業手順に基づいて順次作業が進められる。したがって、前述の
図1や
図2に示したような連続発泡ミキシングヘッドを用いたときのように被撹拌食材の連続処理を行う事ができず、大量かつ連続的に被撹拌食材を製造することが不可能であった。
【0014】
本発明は、このような従来からの課題を解決することを目的としたものであって、撹拌・粉砕後の食材の粒子径分布にバラツキの有る状態を作り出すことが可能であり、大量かつ連続的に被撹拌食材を製造することができるディスクタイプの連続発泡ミキシングヘッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の観点によるディスクタイプのミキシングヘッドは、
ステーターハウジングとステーターヘッドから成るステーターと、前記ステーターハウジングとステーターヘッドの間に挟持され、回転軸によって回転駆動されるディスクタイプのローターとを含み、前記ローター及びステーターの対向する両端面に同心円状かつ環状に並ぶ複数の小突起群を設け、前記ステーターとローターとの間を連続的に流れる被撹拌食材を撹拌・粉砕するディスクタイプのミキシングヘッドであって、
前記ローターには同心円状かつ環状に配列された複数の貫通孔を穿ち、前記ステーターとローターとの間を流れる食材の主要経路に、前記ローターに設けられた貫通孔を通過する食材のバイパス経路を併設したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第2の観点によるディスクタイプのミキシングヘッドは、前記第1の観点において、
前記ローターに環状に配列された貫通孔は、複数の同心環状に設けられていること特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上の解決手段を備えた本発明によれば、ディスクタイプのミキシングヘッドを用いて、食材の粒子径が異なりザラザラとした自然食感のあるケーキ生地やパン生地を連続して大量に製造することができ、従来の縦型ミキサーを用いる場合に較べて作業効率を大幅に高めることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によるディスクタイプのミキシングヘッドを実現するための最良の形態である実施例について、本発明の明細書に添付された各図面を参照しつつ以下に説明を行う。先ず、本発明に基づくディスクタイプのミキシングヘッド10(以下、単に「ミキシングヘッド10」という)のカットモデル斜視図を
図4に、また、その略断面図を
図5に示す。
【0019】
これらの図からも明らかなように、ミキシングヘッド10の基本構造は、前述の
図1、
図2に示した従来タイプのミキシングヘッド100の場合とほぼ同様である。なお、ミキシングヘッド10を構成する各部材の材質は特に限定されるものではないが、その強度や防錆性、或は、食品製造機械として使用されるという衛生面を考慮すれば、ステンレス鋼材(例えば、SUS316鋼材など)を用いることが好ましい。
【0020】
添付の各図に示される通り、ミキシングヘッド10は主に、ステーターハウジン11a、ステーターヘッド11bから成るステーター11と、ステーター11の内部に収められたローター12から構成されている。ローター12は、モーターなどの動力源(図示せず)から回転軸13を介し、ステーター11の内部において高速度で回転駆動されるディスクタイプの部材である。
【0021】
ミキシングヘッド10の側面には、パンやケーキ生地などの被撹拌食材と空気の混合流体を供給する抽入孔15が設けられており、また、回転軸13の先端方向には、ステーター11とローター12によって撹拌された被撹拌食材を、ミキシングヘッド10の外部に抽出するための抽出孔16が設けられている。
【0022】
なお、ミキシングヘッド内における被撹拌食材の流れを
図5中の小矢印群に示す。因みに、ミキシングヘッド10への被撹拌食材の供給方法は、圧送ポンプなどを用いて抽入孔15から圧入するようにしても良いが、構造の簡易化や食材流量制御の容易性等に鑑みれば、抽出孔16から吸引して抽出する方法を採用することが好ましい。
【0023】
また、ステーターハウジン11a及びステーターヘッド11bの内面には、複数の同心円状かつ環列状に突出した多数の小突起(以下、単に「ピン」と言う。)14が設けられている。また、ステーター11の内面に対向するローター12のディスクの両端面にも、同様の小突起(ピン)14が設けられている。
【0024】
ステーター11及びローター12に配置・配列された複数のピンの様子を表すべく、ステーターヘッド11bの内面と、ローター12端面の平面図を
図6及び
図7に示す。なおローター12は、ステーター11の内部で高速回転するため、
図6、7に示された両部材に設けられたピン14は、回転時における相互の干渉を防止すべく、ステーターとローターのそれぞれにおいて、相互に異なる直系の環列の同心円状に、互い違いとなるように配置されている。
【0025】
本発明によるミキシングヘッド10が従来タイプのミキシングヘッドと異なる最大の特徴は、
図7に示すように、ローター12に環列状に並んで複数の貫通孔12aが設けられていることである。すなわち、係る貫通孔を設けることによって、ミキシングヘッド10の内部における被撹拌食材の主要経路に対してバイパス経路を併設することができる。
【0026】
前述の従来タイプのミキシングヘッドで説明したように、抽入孔15からミキシングヘッド10の内部に供給された被撹拌食材の大部分は、ローター12の回転中心方向からステーターハウジング11a内面と高速回転するローター12の下側端面との間を抜けて、ローター12の外縁部方向に移動する。そして、ローター12外縁部とステーター11の側面周囲部の内面との間に設けられた隙間を抜けて、ローター12の上側端面に移動する。
【0027】
その後、ローター12の上側端面に移動した被撹拌食材は、今度は、高速回転するローター12の上側端面と、ステーターヘッド11b内面との隙間を通って回転中心方向に移動する。そして、回転中心方向に集約された被撹拌食材は、抽出孔16からミキシングヘッド10の外部へ抽出されるのである。なお、ここで言う「上側」「下側」とは、あくまでも動作説明の便宜上、
図5の中における位置関係を示すものに他ならない。
【0028】
本発明においては、被撹拌食材の大部分が通過する主要経路に加えて、ローター12に設けた貫通孔12aを経由するバイパス経路が併設されることになる。すなわち、ローター12の下側端面の貫通孔12aまで移動した被撹拌食材の一部は、係る貫通孔12aを通過して、そのままダイレクトにローター12の上側端面に移動できる。
【0029】
そして、ローター12の上側端面では、係る貫通孔12aを抜けてダイレクトに移動してきた被撹拌食材の一部と、ローター12の外縁部とステーター11の側面周囲部の内面との隙間を通って移動してきた被撹拌食材とが合一され、ミキシングヘッド10の抽出孔16からミキシングヘッドの外部に抽出されるのである。
【0030】
貫通孔12aによるバイパス経路を抜けてきた被撹拌食材は、主要経路を通過してきた被撹拌食材に較べ、ローター12の表面とステーター11の内面に設けられたピン14によって撹拌・粉砕処理を受ける距離が短縮される。したがって、それぞれの被撹拌食材を構成する食材粒子径の大きさが異なることになる。
【0031】
つまり 、主要経路を移動してきた被撹拌食材の粒子径は、撹拌・粉砕処理を受けながら移動する距離が長くその粒子径が一層細かくなり、被撹拌食材の食感が一層滑らかとなる。これに比して、バイパス経路を通って移動してきた被撹拌食材の粒子径は比較的に粗く、係る粒子径の異なる2種類の被撹拌食材の合一によって、あたかも自然食品のようなザラザラとした食感が得られる。
【0032】
続いて、本発明に基づくミキシングヘッドにより処理を行った場合、処理後の被撹拌食材の粒子径の不均一性を示す指標の試算を試みる。ところで、主要経路を通ってきた被撹拌食材の量と、バイパス経路を抜けてきた被撹拌食材の量の比率は、それぞれの被撹拌食材が通過する経路の断面積比に比例することは言うまでもない。
【0033】
図8にミキシングヘッド10におけるステーター内部の水平断面模式図を示す。同図において、ステーター11の内半径をr1、ローター12の外縁半径をr2、ローター12に設けた貫通孔12aの半径をr3と想定する。また、ローター12の表面で環状に設けられた貫通孔12aの個数をNと想定する。
【0034】
さらに、ステーター11の内側面周囲部とローター外縁部との隙間を通る主要経路の断面積をS1、ローター12に設けた貫通孔12aを抜けるバイパス経路の断面積をS2と想定すると、S1及びS2は、それぞれ次のように求めることができる。
S1=πr12-πr22=π(r12-r22)
S2=N×πr32
したがって、粒子径の異なる被撹拌食材の量的比率をαと置くと、αは次のように表すことができる。
α=S2/S1=(N×r32)/(r12-r22)
【0035】
すなわち、係るαの値が小さいほど、処理終了後の被撹拌食材において、バイパス経路を抜けた食材が含まれる割合が少なくなり、被撹拌食材の粒子径はほぼ均一となる。一方、αの値が大きいほど、バイパス経路を抜けた被撹拌食材の含まれる割合が多くなり、撹拌処理後の食材粒子径は不均一となって、ザラザラとした食感が一層強まることになる。
【0036】
具体例として、本実施例に基づく各種のを以下に示す。
ステーターの内半径:r1=122mm
ローターの外縁半径:r2=118mm
貫通孔の半径: r3=5mm
ローター上の貫通孔数:N=10個
【0037】
係る数値に基づき、本実施例における粒子径の異なる被撹拌食材の量的比率αを算出すると以下のようになる。
α=(10×52)/(1222-1182)≒0.27
すなわち、本実施例では、処理後の被撹拌食材の粒子径は、粒子が粗いものと細かいもののとの比率が約1:4となって、適度なザラザラ感のある自然食感を作り出せることができる。
【0038】
なお、本実施例の場合は、バイパス経路の役目を担う貫通孔12aがローター12の中心から、半径r2方向のほぼ2/3の位置に設けられている。したがって、被撹拌食材がローターの中心からバイパス経路の貫通孔に到達するまでの距離をl1、貫通孔12aを通らず、ローター外縁部とステーター側面周囲部の内面との隙間を抜ける主要経路を通って、ローターの反対側の貫通孔12aの位置までに達する距離をl2とすると、これらの距離は次のように表すことができる。
【0039】
l1=r2×(2/3)
l2=r2+r2×(1/3)=r2×(4/3)
つまり、
l2=2×l1
となって、主要経路はバイパス経路のほぼ2倍の経路長になる。
【0040】
すなわち、被撹拌食材が主要経路を通った場合、バイパス経路に較べて約2倍の距離、ステーターとローターのピンによる撹拌・粉砕処理を受けるため、主要経路を通る被撹拌食材に含まれる粒子径は、バイパス経路を通る場合に較べて約1/2以下に粉砕される可能性が高い。以上の結果より、本実施例では、主要経路を通った被撹拌食材に対し、その粒子径が約2倍の被撹拌食材が量的には約25%混合されることになる。
【0041】
なお、係る食材の粒子径の大きさ比率や、異なる粒子径の食材の混合比率は、ローター12に設ける貫通孔12aの位置や、その孔径、或いはその個数によって任意に選定することが可能である。これによって、様々の異なる粒子径を含む被撹拌食材を得ることが可能であり、異なる風味・食感を有する食品を多様に製造することができる。
【0042】
また、本実施例では、貫通孔はローター上において、1つの環列状に設けられているのみであるが、本発明は係る事例に限定されるものではない。上述の食感・風味の多様性を追求する観点に鑑みれば、例えば、環状に設けた貫通孔を、ローター上において複数の同心円状に配置するようにしても良い。さらに、各環列に設けられた貫通孔の個数や孔径を同心円毎に異なるように設定しても良い。
【0043】
本発明によるディスクタイプのミキシングヘッドを用いれば、不均一な粒子径分布を有するパン生地やケーキ生地等の被撹拌食材を、極めて高い作業効率の下で、大量かつ連続的に製造することができる。
【0044】
なお、本発明の実施形態は、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、例えば、各々の実施例を構成する各部位の形状や配置或いはその素材等は、本発明の趣旨を逸脱することなく、現実の実施態様に即して適宜変更ができるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上に説明した本発明の構成は、製パン業界や製菓業界をはじめとして、食材の撹拌・混練を必要とする各種の食品業界においてもその利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】従来のディスクタイプミキシングヘッドの斜視図である。
【
図2】従来のディスクタイプミキシングヘッドの略断面図である。
【
図3】従来の縦型ミキサーによる撹拌処理の方法を示した説明図である。
【
図4】本発明によるディスクタイプミキシングヘッドの斜視図である。
【
図5】本発明によるディスクタイプミキシングヘッドの略断面図である。
【
図6】ステーターヘッド内側に設けたピン配置の様子を表す平面図である。
【
図7】ローターのディスク端面に設けたピンと貫通孔の様子を表す平面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 … ミキシングヘッド
11 … ステーター
11a … ステーターハウジング
11b … ステーターヘッド
12 … ローター
12a … ローター貫通孔
13 … 回転軸
14 … ピン(小突起群)
15 … 抽入孔
16 … 抽出孔
100 … ミキシングヘッド
101 … ステーター
101a … ステーターハウジング
101b … ステーターヘッド
102 … ローター
103 … 回転軸
104 … ピン(小突起群)
105 … 抽入孔
106 … 抽出孔