(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040435
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】低温米飯の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20220304BHJP
【FI】
A23L7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145155
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】520332933
【氏名又は名称】岩本 博
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100164286
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 卓夫
(74)【代理人】
【識別番号】100073483
【弁理士】
【氏名又は名称】八鍬 昇
(72)【発明者】
【氏名】岩本 博
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LC08
4B023LE11
4B023LE16
4B023LG01
4B023LK07
4B023LL02
4B023LP05
4B023LP10
4B023LP15
(57)【要約】
【課題】米飯を長時間保存しても品質を保つことを可能となり、余った米飯の破棄量を削減することができる技術を提供する。
【解決手段】低温米飯の製造方法は、粉末状のトレハロースを軟水に入れ、当該トレハロースを溶解させてトレハロース水溶液を作成する第1工程と、無洗米を、第1工程で作成したトレハロース水溶液に浸漬させ、この状態で1時間よりも長時間放置する第2工程と、第2工程後の無洗米を炊き上げて米飯にする第3工程と、第3工程後の米飯を、冷凍または冷蔵する第4工程と、を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状のトレハロースを軟水に入れ、当該トレハロースを溶解させてトレハロース水溶液を作成する第1工程と、
無洗米を、前記第1工程で作成したトレハロース水溶液に浸漬させ、この状態で1時間よりも長時間放置する第2工程と、
前記第2工程後の無洗米を炊き上げて米飯にする第3工程と、
前記第3工程後の米飯を、冷凍または冷蔵する第4工程と、
を実行する、低温米飯の製造方法。
【請求項2】
前記放置する時間は、少なくとも夏場と冬場とで異なり、夏場の方が冬場よりも短いことを特徴とする、請求項1に記載の低温米飯の製造方法。
【請求項3】
前記トレハロース水溶液におけるトレハロースの濃度は、少なくとも夏場と冬場とで異なり、夏場の方が冬場よりもトレハロースの濃度が低いことを特徴とする、請求項1または2に記載の低温米飯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯を長時間保存するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
炊き上げた後の米飯を長時間保存し、また流通させる観点において、米飯の品質を維持させることが望まれている。
【0003】
従来、米を炊飯する際にトレハロースを添加することで、保存時の品質劣化を改善する技術が知られている(例えば特許文献1)。また、炊飯米の食感(テクスチャー)に及ぼすトレハロースの影響を調査した論文も、開示されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】平田 健著、「炊飯米のテクスチャーに及ぼすトレハロースの影響」、「広島県立総合技術研究所食品工業技術センター研究報告 No.25」(第1頁~第4頁)、2009年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
業務用の米飯に関し、現状では早朝に炊き上げた米飯を流通させ、余った米飯については、品質劣化の観点で保存せずに当日のうちに破棄するのが一般的である。しかしながら、この破棄する分については無駄となってしまう。
【0007】
よって、長時間保存可能となる米飯を製造する技術は、これまでと変わらず今日においても求められており、より好適な製造方法の確立が望まれる。
【0008】
本発明は、米飯を長時間保存しても、品質を保つ技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の低温米飯の製造方法は、粉末状のトレハロースを軟水に入れ、当該トレハロースを溶解させてトレハロース水溶液を作成する第1工程と、無洗米を、第1工程で作成したトレハロース水溶液に浸漬させ、この状態で1時間よりも長時間放置する第2工程と、第2工程後の無洗米を炊き上げて米飯にする第3工程と、第3工程後の米飯を、冷凍または冷蔵する第4工程と、を実行する。
また上述の放置する時間は、少なくとも夏場と冬場とで異なり、夏場の方が冬場よりも短いことを特徴とする。
さらに、上述のトレハロース水溶液におけるトレハロースの濃度は、少なくとも夏場と冬場とで異なり、夏場の方が冬場よりもトレハロースの濃度が低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、米飯を長時間保存しても品質を保つことを可能になる。よって、余った米飯の破棄量を削減することができる。すなわち、本発明によれは、経済的なロスを抑えることができると共に、消費者に価格の面で米飯を安く提供することが可能となる。また、長時間保存することができるため、日本の美味しい米飯を海外に輸出し、提供することも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の製造方法を例示するフローチャートである。
【
図2】
図1のフローチャートに対応した、実施形態の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<低温米飯の製造方法>
本実施形態の低温米飯の製造方法は、トレハロースを含有したトレハロース水溶液をあらかじめ作成しておき、この水溶液に米を浸漬させ、1時間よりも長い時間放置する。放置した後、炊き上げを行い、冷凍もしくは冷蔵保存する。米をトレハロース水溶液に長時間放置することで、米の表面に好適な分量のトレハロースを吸着させることができ、保存効果を高めることができる。
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の低温米飯の製造方法について説明する。
図1は、本実施形態の製造方法を例示するフローチャートであり、
図2はその製造方法の各ステップを図示した模式図である。以降、
図1のフローチャートに沿って説明すると共に、
図2の記載に基づき、使用する材料や器具に符号を付して説明する。
【0014】
作業実施者は、炊飯釜4に軟水3を入れ、そして粉末状のトレハロース1を炊飯釜4に入れることで、トレハロース水溶液35を作成する(S001、
図2(A)参照)(第1工程)。そして作業実施者は、トレハロース1が溶解するまで、スプーン50などを用いて混ぜ合わせてトレハロース水溶液35を作成する。尚、本実施形態では、常温常圧で白色の粉末状の結晶となるトレハロースを採用し、具体的には、林原株式会社の「トレハ」(登録商標)を採用している。
【0015】
作業実施者は、作成したトレハロース水溶液35に、BG(Bran-Grid)精米製法(ヌカ式)で精米された無洗米2を入れて、浸漬させる(S002、
図2(B)参照)。
【0016】
詳細については後述するが、ステップS001で作成するトレハロース水溶液35の濃度や分量、ステップS002で用意する無洗米2の分量は、夏場、冬場、およびこれら以外の時期によって、それぞれ異なるものとする。
【0017】
作業実施者は、無洗米2をトレハロース水溶液35に浸漬させた状態で、1時間よりも長い時間、放置する(S003、
図2(C)参照)(第2工程)。本実施形態において、この放置時間は、少なくとも夏場と冬場とで異なるものとなる。具体的には、25℃以上の夏場に実施する場合には、放置時間を90分とし、10℃未満の冬場、および春、秋ごろの時期に実施する場合には、放置時間を120分とする。尚、春、秋ごろの時期(すなわち夏場、冬場以外の時期)については、例えば、そのときの気温などに応じて90分から120分までの間を案分するなどして、放置時間を求めてもよい。ここで示した気温や放置時間は、あくまで一例である。
【0018】
上記の放置時間が経過した後、作業実施者は、蓋41を用いて炊飯釜4の開口部を閉めて内部を密封状態にし、無洗米2を炊き上げる(S004、
図2(D)参照)(第3工程)。ここでは、無洗米2をトレハロース水溶液35に浸漬させた状態のまま炊き上げる。トレハロース水溶液35の分量については、この炊き上げる前の段階で、好適な食感となるように、必要に応じて調整してもよい。また、炊き上げについては、電気炊飯器、ガス炊飯器、直火による窯、鍋など、使用する炊飯器具に応じて好適な手法が用いられるものとする。
【0019】
そして作業実施者は、炊き上がった米飯25を、つぶさないように気を付けながら、しゃもじ5を用いて軽くほぐす(S005、
図2(E)参照)。このようにすることで、米飯25の各粒の表面に残った水分を飛ばす(蒸発させる)ことができる。
【0020】
次いで作業実施者は、蓋41を用いて炊飯釜4の開口部を閉めることで、改めて内部を密封状態にし、余熱や蒸気が米飯25の中心部まで通るように、20分~30分ほど蒸らす(S006、
図2(F)参照)。
【0021】
20分~30分ほど蒸らした後、作業実施者は、酢飯にする場合は合わせ酢6を米飯25に入れて、しゃもじ5を用いて混ぜる(S007、
図2(G)参照)。尚、酢飯にしない場合、このステップS007の工程はスキップされる。
【0022】
作業実施者は、ステップS006の工程後の米飯25、またはステップS007の工程後の酢飯を小分けにして、容器や袋に入れて密閉した状態にする。そして、冷凍または冷蔵などの低温環境下で、小分けにした米飯26を保存し、製品として出荷できる状態にする(S008、
図2(H)参照)(第4工程)。ここでは、米飯26を冷凍庫7に入れて、例えばマイナス18℃以下で冷凍保存するものとしているが、冷蔵保存(例えば3~10℃、ここでは0℃前後のチルド保存も概念上含む)としてもよい。尚、米飯26の出荷の際は、この低温状態をある程度維持したまま出荷した方がよい。このような本実施形態の製造方法によって作成された米飯26が、市場に流通する。
【0023】
以下、本実施形態の製造方法の特徴やその利点について言及する。
【0024】
<トレハロース水溶液の事前作成>
本実施形態の製造方法では、あらかじめ、トレハロース水溶液35を作成しておき、このトレハロース水溶液35に米(無洗米2)を浸漬させている。これに対し、作業効率の観点で通常行われる手順は、まずは炊飯釜に米(ここでは精白米)を入れ、次いで水を炊飯釜に入れて必要に応じて米を洗い研ぎ、最後に粉末状のトレハロースを、米および水が入っている炊飯釜に入れる順番となる。この手順の場合、上層に位置する米粒については、粉末状のトレハロースが直接付着するため濃い濃度となるが、中心部などに位置する米粒については、トレハロースの粉末が付着し辛いため、薄い濃度となる。すなわち、トレハロースの濃度ムラが生じた米飯ができ上がる。
【0025】
濃度ムラが生じている状態だと、炊き上がった後すぐに食する分には気付きにくいが、冷凍保存して解凍すると、トレハロースの濃度の薄かった部分が白ろう化するため、見た目や品質がよくない。
【0026】
このような理由から、本実施形態の製造方法では、あらかじめトレハロース水溶液35を作り、このトレハロース水溶液35の入っている炊飯釜4に無洗米2を入れる手順(もしくは無洗米2の入った炊飯釜4に、事前に作成したトレハロース水溶液35を入れる手順)としている。この手順とすることで、無洗米2の各々の米粒にトレハロース1を均等に浸透させることができ、濃度ムラの発生を低減させることができる。また、均等に浸透させることで、トレハロースの濃度の薄いところが減り、白ろう化の発生を低減させることができる。
【0027】
<トレハロースの濃度>
次に、トレハロース1の水溶液中の濃度について言及する。トレハロース1の濃度を2%前後にすると、うまくいく場合と、少し白ろう化して失敗する場合とが生じ得る。他方、トレハロースの濃度を4%前後とすると、ほとんど失敗しなくなるが、トレハロースを4%以上入れると、味覚として感じられる程度にトレハロースの甘みが増してしまい、本来の味を損なうことになる。また、米粒にややねばりがでて、もっちりした食感となる。よって本実施形態の製造方法では、トレハロースの濃度を2.5%~3%(重量パーセント濃度。以下同じ)とし、後述のように、夏場、冬場、およびこれら以外の時期で、それぞれトレハロースの濃度を異ならせるものとする。
【0028】
<軟水の使用>
本実施形態の製造方法では、硬水よりもカルシウムやマグネシウムの含有量の少ない軟水を用いて、トレハロース水溶液を作成している。このように軟水を用いることで、まろやかな口当たりとさっぱりした風味を得ることができる。尚、日本国の水道水は、衛生的な状態を保つために塩素などの消毒成分を含んでいるが、そのほとんどが軟水である。よって、本実施形態の製造方法においては水道水を使用しても構わない。
【0029】
<BG精米製法により精米した無洗米の採用>
本実施形態の製造方法では、精白米ではなく無洗米を採用しており、水洗い式製法の無洗米ではなく、水洗い加工をしない(水を使っても少量)のBG精米製法を採用している。
【0030】
玄米から胚芽と糠(ヌカ)とが取り除かれることで精白米となるが、この精白米の表面には、粘着性のある肌糠が少なからず付着している。よって本実施形態の製造方法において、仮に精白米を採用した場合、
図1のフローチャートのステップS002の前段階で、米に付着している肌糠を水で洗い落とす作業(米を研ぐ作業)が必要になる。この作業により、水分が米に付着、吸水し、含水率が増加してトレハロースの濃度が薄くなる、よって、炊飯後冷凍し解凍した時に、一部が白ろう化したり、老化が進行し易くなったりしてしまう。
【0031】
また、本実施形態の製造方法において、仮に水洗い式製法による無洗米を採用する場合、米を研ぐ作業は不要となる。しかしながら、水洗い式製法による無洗米の場合、当該無洗米を製造する工程内に、水洗いの工程が入るため、乾燥させても十分に水分を取り除くことができず、含水率が増加して好ましいものとはならない。
【0032】
以上のことから、本実施形態では、BG精米製法によって精米した無洗米を採用している(BG精米製法による無洗米は、肌糠も取り除かれている)。
【0033】
<放置時間>
次に、トレハロース水溶液に無洗米を浸漬させて放置する時間について言及する。本実施形態の製造方法では、1時間よりも長時間、無洗米2をトレハロース水溶液35に浸漬させて放置している。通常行われるものと想定される手順としては、放置時間を設けずに炊き込みをすぐに行うか、たとえ放置時間を設けても30分程度となる。これに対し1時間よりも長時間(本実施形態では、この30分程度の時間よりも3倍近い時間)をかけて浸漬させる。このように十分な時間を確保してトレハロース水溶液に米を浸漬させ、吸水させることで、冷凍状態(もしくは冷蔵状態)から解凍した際に、米飯が白ろう化するのを低減させることができる。
【0034】
<夏場と冬場との差異>
上述の製造方法では、少なくとも夏場と冬場とで放置時間を異ならせている。夏場のように気温が高くなると、これに起因してトレハロース水溶液の水温も高くなり、米の吸水性がよくなる。よって本実施形態では、夏場においては放置時間を短くして90分とし、冬場においては、夏場よりも放置時間を長くして120分としている。尚、夏場、冬場以外の時期については、放置時間を120分とするが、その時々の気温などに応じて90分から120分までの間を案分してもよい。放置時間についてまとめると、以下のとおりとなる。
(夏場) 放置時間を90分とする。
(冬場) 放置時間を120分とする。
(夏場、冬場以外) 放置時間を120分とする。
【0035】
またトレハロースの濃度を、少なくとも夏場と冬場とで異ならせてもよい。夏場は温度が高く、湿度も高いため、米の吸水性がよくなる。よって夏場の場合は、冬場よりもトレハロースの濃度を少し薄くすることができる。一方、冬場は温度が低く、乾燥傾向にあるため、夏場よりも米の吸水性がよくない。よって冬場の場合は、夏場よりもトレハロースの濃度を高める。本実施形態では、夏場においてはトレハロースの濃度が2.5%となるようにトレハロース水溶液を作成する。他方、冬場においてはトレハロースの濃度が3%となるようにトレハロース水溶液を作成する。尚、夏場、冬場以外の時期では、トレハロースの濃度が2.8%~3%の目安となるようにトレハロース水溶液を作成する。まとめると、トレハロース水溶液におけるトレハロースの濃度は以下のとおりとなる。
(夏場) トレハロースの濃度を2.5%とする。
(冬場) トレハロースの濃度を3.0%とする。
(夏場、冬場以外) トレハロースの濃度を2.8%~3.0%とする。
【0036】
加えて、無洗米とトレハロース水溶液との重量比率についても、夏場、冬場、もしくはこれら以外の時期で異ならせてもよい。例えば以下の割合の付近となるように配合してもよい。
(夏場) 無洗米:トレハロース水溶液=1:1.5
(冬場) 無洗米:トレハロース水溶液=1:1.6
(夏場、冬場以外) 無洗米:トレハロース水溶液=1:1.6
夏場の場合、1合(150g)の無洗米に対しトレハロース水溶液が230g(約1.53)となり、冬場(および夏場、冬場以外の時期)の場合、1合(150g)の無洗米に対しトレハロース水溶液が240g(約1.60)となる(この例では「冬場」と「夏場、冬場以外」とで同じ値としている)。
【0037】
尚、上記において、「夏場」、「冬場」、「夏場、冬場以外の時期」については、東京における日平均気温の月平均値を想定している。すなわち、東京での日平均気温の月平均値が25℃以上となる7月、8月、9月ごろを「夏場」とし、東京での日平均気温の月平均値が10℃以下となる12月、1月、2月ごろを「冬場」としている。また、これら以外の月(東京での日平均気温の月平均値が15℃~22℃、23℃)を、「夏場、冬場以外の時期」としている。当然、寒冷な気候である北海道や温暖な気候である沖縄などの地域差を考慮して、「夏場」とする時期や「冬場」とする時期を個別に設けてもよい。
【0038】
このように本実施形態では、少なくとも夏場と冬場とで上述の放置時間を異ならせ、夏場の方が冬場よりも短くしている(第1の特徴)。また、トレハロース水溶液におけるトレハロースの濃度についても、少なくとも夏場と冬場とで異ならせ、夏場の方が冬場よりもトレハロースの濃度が低くなるようにしている(第2の特徴)。加えて、無洗米とトレハロース水溶液との比率も、少なくとも夏場と冬場とで異ならせる(第3の特徴)。これら第1~第3の特徴については、一つの特徴を実施したらその他の特徴を実施できない、などの排他的なものではなく、各特徴を相互に組み合わせることができる。
【0039】
<先行技術文献との差異>
上述の特許文献1、非特許文献1にも、トレハロースを用いた炊飯米の製造について記載されているが、ここでは、本実施形態の製造方法と、各文献に記載されている方法との差異について言及する。
【0040】
特許文献1は、事前にトレハロース水溶液を作成しない手順となっており、この手順の場合、上述のとおり濃度ムラが形成されてしまう。また、特許文献1では、1時間浸漬させるものとしているが、本実施形態の製造方法では、1時間よりも長時間放置するものとし(1時間<「放置時間」)、具体的には、90分や120分を例示して説明した。さらに、トレハロース、水、米の配合も、特許文献1の記載事項と本実施形態の製造方法とでは異なる。
【0041】
非特許文献1では、無洗米では無く精白米を用いており、300ccの精白米に対してトレハロースを3%添加すると、最も良い食感(テクスチャー)となることが示されている。300ccの精白米に対する3%であることから、添加するトレハロースの量は9cc(300cc×0.03=9cc)となり、軟水を500ccとすると、そのトレハロース水溶液の濃度は1.8%となる(9cc/500cc=0.018)。この1.8%に対し、本実施形態の製造方法では夏場トレハロース濃度2.5%、冬場トレハロース3%となっていることから、非特許文献1の記載と本実施形態の態様とでは異なっている。
【0042】
また非特許文献1では、精白米を用いていることから、作業前に米を研いで水洗いするものと推察されるため、当然に米の含水率は増加する。よって非特許文献1では、上述の1.8%よりも濃度が低くなるものと考えられる。
【0043】
以上、本実施形態により、冷凍保存(もしくは冷蔵保存)した米飯であっても、白ろう化せずに品質を維持することができる。
【0044】
本実施形態は、本発明の技術思考を具体化するための一例を示すものであって、本発明は上述の説明および図示したものに限定させるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 トレハロース
2 無洗米
3 軟水
4 炊飯釜
5 しゃもじ
6 合わせ酢
7 冷凍庫
25 米飯
26 小分けにした米飯
35 トレハロース水溶液
41 蓋
50 スプーン