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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040448
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】ヒートポンプサイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20220304BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
F25B47/02 550R
F25B47/02 570G
F25B1/00 399Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145178
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】船津丸 和也
(57)【要約】
【課題】水冷媒熱交換器における水の凍結を防止する。
【解決手段】ヒートポンプサイクル装置は、圧縮機と、四方弁と、水冷媒熱交換器と、膨張弁と、熱源側熱交換器で構成される冷媒回路と、上記水冷媒熱交換器と、循環ポンプと、利用側ユニットで構成される温水回路と、上記熱源側熱交換器に室外空気を送風するファンと、上記水冷媒熱交換器における水の温度を検出する水温センサと、を有する。上記熱源側熱交換器の除霜を行う際は、上記熱源側熱交換器が凝縮器として機能するように上記四方弁を切り替え、上記熱源側熱交換器の除霜に引き続いて、上記熱源側熱交換機が凝縮器として機能する状態のまま上記ファンを回転させるファン除霜を実行するヒートポンプサイクル装置であって、上記ファン除霜は上記ファン除霜を行うことによって上記水冷媒熱交換器における水が凍結しないファン除霜許可条件が成立している場合に実行される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、四方弁と、水冷媒熱交換器と、膨張弁と、熱源側熱交換器で構成される冷媒回路と、
前記水冷媒熱交換器と、循環ポンプと、利用側ユニットで構成される温水回路と、
前記熱源側熱交換器に室外空気を送風するファンと、
前記水冷媒熱交換器における水の温度を検出する水温センサと、を有するヒートポンプサイクル装置であって、
前記熱源側熱交換器の除霜を行う際は、前記熱源側熱交換器が凝縮器として機能するように前記四方弁を切り替え、
前記熱源側熱交換器の除霜に引き続いて、前記熱源側熱交換機が凝縮器として機能する状態のまま前記ファンを回転させるファン除霜を実行するヒートポンプサイクル装置であって、
前記ファン除霜は前記ファン除霜を行うことによって前記水冷媒熱交換器における水が凍結しないファン除霜許可条件が成立している場合に実行されることを特徴とする
ヒートポンプサイクル装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたヒートポンプサイクル装置において、
前記温水回路における水の流量を検出する検知手段を有し、
前記ファン除霜許可条件は、前記水温センサによる検出値が第1閾値以上であり、水の流量が第2閾値以上である
ヒートポンプサイクル装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたヒートポンプサイクル装置において、
前記ファン除霜許可条件は、前記水温センサの検出値が、前記第1閾値未満であり、前記水の流量が第2閾値以上であり、かつ前記水温センサの検出値が水の流量に応じて決定される第3閾値以上である
ヒートポンプサイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外ファンに発生した霜を除霜することが可能なヒートポンプサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房運転中に蒸発器として機能する室外熱交換器に霜が発生した場合に、冷媒回路を暖房サイクルから冷房サイクルに切り替え、室外熱交換器の除霜を行うリバース除霜が知られている。ここで、室外環境によっては、室外ファンにも霜が発生する場合がある。室外ファンに霜が発生した場合には、リバース除霜後に冷媒回路を冷房サイクルのまま室外ファンを回転させ、室外ファンに暖気を送風することで、室外ファンの霜を融かすファン除霜という方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなファン除霜を行う機能は、水と冷媒とを熱交換させるATW(Air To Water)機器にも設けられている。ATW機器では、室内熱交換器が水と、冷媒との熱交換を行う水冷媒熱交換器とされている。また、水冷媒熱交換器では、二重管式熱交換器が利用される場合がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-034655号公報
【特許文献2】国際公開WO2018/073853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなATW機器においては、リバース除霜運転により室外熱交換器の除霜を行った後に室外ファンを回転させてファン除霜を開始すると、室外ファンの回転によって室外熱交換器を外気が通過するため、リバース除霜運転時と比べて室外熱交換器が冷やされるので室外熱交換器を流れる冷媒温度が低下する。また、室内熱交換器においては冷媒と水との間で熱交換が行われている。従って、室外熱交換器の冷媒温度が過度に低下すると、水冷媒熱交換器では水が凍結する場合がある。
【0006】
特に、水冷媒熱交換器が二重管式熱交換器であるとき、水が凍結して体積が膨張すると、二重管式熱交換器が破裂し、水冷媒熱交換器内で水と冷媒とが混ざり合う可能性がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、室外ファンの除霜を実行した場合に起きる水冷媒熱交換器における水の凍結を防止するヒートポンプサイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るヒートポンプサイクル装置は、圧縮機と、四方弁と、水冷媒熱交換器と、膨張弁と、熱源側熱交換器で構成される冷媒回路と、上記水冷媒熱交換器と、循環ポンプと、利用側ユニットで構成される温水回路と、上記熱源側熱交換器に室外空気を送風するファンと、上記水冷媒熱交換器における水の温度を検出する水温センサと、を有するヒートポンプサイクル装置である。
上記熱源側熱交換器の除霜を行う際は、上記熱源側熱交換器が凝縮器として機能するように上記四方弁を切り替え、上記熱源側熱交換器の除霜に引き続いて、上記熱源側熱交換機が凝縮器として機能する状態のまま上記ファンを回転させるファン除霜を実行するヒートポンプサイクル装置であって、上記ファン除霜は上記ファン除霜を行うことによって上記水冷媒熱交換器における水が凍結しないファン除霜許可条件が成立している場合に実行されることを特徴とする。
【0009】
このようなヒートポンプサイクル装置であれば、室外ファンの除霜を実行した場合に起きる水冷媒熱交換器における水の凍結が防止される。
【0010】
上記のヒートポンプサイクル装置においては、上記温水回路における水の流量を検出する検知手段を有し、上記ファン除霜許可条件は、上記水温センサによる検出値が第1閾値以上であり、水の流量が第2閾値以上であってもよい。
【0011】
上記のヒートポンプサイクル装置においては、さらに、上記ファン除霜許可条件は、上記水温センサの検出値が、上記第1閾値未満であり、水の流量が第2閾値以上であり、かつ上記水温センサの検出値が水の流量に応じて決定される第3閾値以上であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明によれば、室外ファンの除霜を実行した場合に起きる水冷媒熱交換器における水の凍結を防止するヒートポンプサイクル装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態のヒートポンプサイクル装置であるヒートポンプ式温水暖房装置を示す概略構成図である。
図2】水冷媒熱交換器が二重管式熱交換器であるときの二重管の断面を示す概略断面図である。
図3】本実施形態の除霜運転時の処理を説明するフローチャートである。
図4図3のフローチャート中のファン除霜運転実行判断(ST20)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図5】ファン除霜許可条件を流量Q及び往き温度Twoの二次元グラフで表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。また、以下に示す数値は例示であり、この例に限らない。
【0015】
図1(a)、(b)は、本実施形態のヒートポンプサイクル装置であるヒートポンプ式温水暖房装置を示す概略構成図である。
【0016】
図1(a)に示されるように、ヒートポンプ式温水暖房装置100は、冷媒回路10と、温水回路20と、制御手段60とを備える。冷媒回路10においては、圧縮機1と、四方弁2と、冷媒と水との熱交換を行う水冷媒熱交換器3と、膨張弁4と、熱源側熱交換器5と、アキュムレータ6とが順に冷媒配管11で接続されている。温水回路20においては、水冷媒熱交換器3と、流量計31と、利用側ユニットである室内ユニット40と、循環ポンプ30とが順に水配管16で接続されている。さらにヒートポンプ式温水暖房装置100は、熱源側熱交換器5に室外空気を送風する室外ファン90と、水冷媒熱交換器3における水の温度を検出する温度センサ58とを備える。
【0017】
<冷媒回路の構成>
【0018】
圧縮機1は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動される。圧縮機1は、運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。四方弁2は、冷媒回路10における冷媒循環方向を切り換えるための流路切換弁である。水冷媒熱交換器3は、冷媒配管11を流れて水冷媒熱交換器3に流入した冷媒と、水配管16を流れて水冷媒熱交換器3に流入した水とを熱交換させる。水冷媒熱交換器3は、利用側熱交換器である。
【0019】
膨張弁4は、ステッピングモータを用いてパルス制御により弁の開度を制御する。膨張弁4は、熱源側熱交換器5に流入あるいは熱源側熱交換器5から流出する冷媒量を調整する。熱源側熱交換器5は、冷媒配管11を流れて熱源側熱交換器5に流入した冷媒と、室外ファン90の回転により取り込まれた外気とを熱交換させる。アキュムレータ6は、四方弁2から流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒に分離し、ガス冷媒のみを圧縮機1に吸入させる。
【0020】
冷媒配管11における圧縮機1の冷媒吐出口付近には、圧縮機1から吐出された冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ51と、圧縮機1から吐出された冷媒の温度である吐出温度を検出する吐出温度センサ52とが設けられている。冷媒配管11におけるアキュムレータ6の冷媒流入側付近には、圧縮機1に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサ53と、圧縮機1に吸入される冷媒の温度である吸入温度を検出する吸入温度センサ54とが設けられている。
【0021】
冷媒配管11における水冷媒熱交換器3と膨張弁4との間の膨張弁4の接続口付近には、冷媒温度センサ55が設けられている。冷媒温度センサ55は、暖房運転時に膨張弁4に流入する冷媒の温度を検出する。冷媒温度センサ55は、除霜運転時には膨張弁4から流出する冷媒の温度を検出する。膨張弁4と熱源側熱交換器5との間の冷媒配管11には、熱源側熱交換器5側に熱交温度センサ57が設けられている。熱交温度センサ57は、暖房運転時に熱源側熱交換器5に流入する冷媒の温度を検出する。熱交温度センサ57は、除霜運転時には熱源側熱交換器5から流出する冷媒の温度を検出する。熱源側熱交換器5の近傍には、外気温度を検出するための外気温度センサ56が設けられている。
【0022】
<温水回路の構成>
水冷媒熱交換器3には、冷媒配管11と水配管16が接続されている。水配管16には、流量計31と室内ユニット40と循環ポンプ30とが順次接続されている。循環ポンプ30は、回転数が固定されたモータまたは回転数が変更可能なモータによって駆動される。これにより、温水回路20では、矢印80の方向に水が循環する。特に、循環ポンプ30として、回転数が変更可能なモータを使用した場合は、温水回路20を流れる水の流量を変更することができる。循環ポンプ30が回転数の変更可能なモータを使用しない場合は、水配管16を流れる水の流量は、ヒートポンプ式温水暖房装置100が設置されたときの予め定められた固定の流量となる。室内ユニット40は、床暖房装置やラジエタなどといった室内を暖房するための端末である。流量計31は、温水回路20における単位時間あたりの水の流量を計測する。
【0023】
温水回路20は、水の温度を検知する検知手段を有する。例えば、水配管16における水冷媒熱交換器3の水の出口側には、水冷媒熱交換器3から流出する水の温度である往き温度を検出する温度センサ58が設けられている。水配管16における水冷媒熱交換器3の水の入口側には、水冷媒熱交換器3に流入する水の温度である戻り温度を検出する温度センサ59が設けられている。
【0024】
<制御手段>
制御手段60は、図1(b)に示すように、演算、情報伝達を行うCPU601と、ヒートポンプ式温水暖房装置100の運転制御に関わる各種プログラムや、各種プログラムの実行時に利用される各種条件テーブル(例えば、後述する除霜運転開始条件、除霜運転終了条件、及びファン除霜運転開始条件など)を記憶する記憶部602と、冷媒回路10や温水回路20に設けられた各種センサでの検出値を取り込むセンサ入力部603と、室内ユニット40を操作するための図示しないリモコンから送信される信号を受信する受信部604とを有する。
【0025】
制御手段60は、各種センサで検出した値をセンサ入力部603を介して取り込む。制御手段60は、使用者のリモコン操作によって送信される室内ユニット40の運転に関わる各種要求を受信部604を介して取り込む。制御手段60は、取り込んだ各種センサで検出した値や運転に関わる各種要求に基づいて、圧縮機1や循環ポンプ30の駆動制御、四方弁2の切り換え制御、膨張弁4の開度調整などといった、ヒートポンプ式温水暖房装置100の各装置の制御を行う。
【0026】
<水冷媒熱交換器の構成>
図2は、水冷媒熱交換器が二重管式熱交換器であるときの二重管の断面を示す概略断面図である。
【0027】
水冷媒熱交換器3は二重管熱交換器であり、暖房運転時に加熱流体である冷媒と被加熱流体である水との間の熱交換効率に優れる二重管301が利用される。二重管301は、内管302と外管303とを有する。内管302は、外管303に覆われている。これにより、外管303と内管302との間には筒状の流路306が形成される。また、内管302の内部には、流路306とは別の流路305が形成される。二重管301は、必要に応じて図示しないカバー管によって覆われる。内管302及び外管303は、例えば、銅で形成される。
【0028】
内管302は、水配管16に接続される。外管303は、冷媒配管11に接続される。これにより、内管302の流路305には、水が流通する。また、外管303と内管302との間の流路306には、冷媒が流通する。水冷媒熱交換器3においては、流路305を流通する水と、流路306を流通する冷媒との間で内管302を介した熱交換がなされる。
【0029】
<冷媒回路および温水回路の動作>
ヒートポンプ式温水暖房装置100が暖房運転あるいは除霜運転を行う際の、冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作、および、温水回路20における水の流れや各部の動作について図1(a)、(b)に戻り説明する。まず、ヒートポンプ式温水暖房装置100が暖房運転を行う場合について説明する。次に、ヒートポンプ式温水暖房装置100が除霜運転を行う場合について説明する。
【0030】
<暖房運転>
ヒートポンプ式温水暖房装置100が暖房運転を行う場合は、四方弁2が操作されて冷媒回路10が暖房サイクルとされる。この状態で圧縮機1が駆動すると、冷媒が冷媒回路10を実線矢印70の方向に流れる。圧縮機1から吐出された冷媒は、冷媒配管11を流れて四方弁2を経て水冷媒熱交換器3に流入する。圧縮機1の回転数は、温度センサ58で検出する水温である往き温度が室内ユニット40で使用者が要求する暖房能力に応じた目標往き温度となるように制御される。
【0031】
水冷媒熱交換器3に流入した冷媒は、温水回路20を循環して水冷媒熱交換器3に流入した水と熱交換を行って凝縮する。水冷媒熱交換器3から冷媒配管11に流出した冷媒は、膨張弁4を通過する際に減圧されて熱源側熱交換器5に流入する。膨張弁4の開度は、水冷媒熱交換器3の冷媒出口側(暖房運転時の膨張弁4側)における冷媒過冷却度が、圧縮機1の回転数と吐出圧力センサ51で検出する吐出圧力とに応じて定められる目標冷媒過冷却度となるように調整される。
【0032】
熱源側熱交換器5に流入した冷媒は、外気と熱交換を行って蒸発する。熱源側熱交換器5から冷媒配管11に流出した冷媒は、四方弁2、アキュムレータ6を介して圧縮機1に吸入されて再び圧縮される。
【0033】
一方、温水回路20では、循環ポンプ30が駆動することで温水回路20を実線矢印80の方向に水が流れる。水配管16を流れて水冷媒熱交換器3に流入した水は冷媒によって加熱されて温水となって、室内ユニット40に流入する。室内ユニット40に温水が流れることで、室内ユニット40が設置された部屋の暖房が行われる。尚、温水回路20において水が流れる方向は、冷媒回路10が暖房サイクルであっても冷房サイクルであっても、実線矢印80の方向である。
【0034】
<除霜運転>
ヒートポンプ式温水暖房装置100が暖房運転を行っているときに、除霜運転開始条件が成立した場合は、蒸発器として機能している熱源側熱交換器5において霜が発生している虞がある。除霜運転開始条件は、予め試験等によって定められている。除霜運転開始条件は、制御手段60の記憶部に格納されている。
【0035】
除霜運転開始条件としては、例えば、暖房運転時間が30分経過した後、外気温度センサ56で検出した外気温度が0℃以下の状態が30分以上継続した場合や、前回の除霜運転が終了してから所定時間(例:180分)が経過した場合等には、熱源側熱交換器5で霜が発生している可能性がある条件とする。
【0036】
ヒートポンプ式温水暖房装置100が除霜運転を行う際は、四方弁2が操作されて熱源側熱交換器5が凝縮器として機能するように、冷媒回路10における冷媒の流れ方向が切り換えられる。すなわち、冷媒回路10は、冷房サイクルとなる。この状態で圧縮機1が駆動すると、冷媒が冷媒回路10を破線矢印71の方向に流れる。圧縮機1から吐出された冷媒は、冷媒配管11を流れて四方弁2を経て熱源側熱交換器5に流入する。尚、除霜運転では、室外ファン90は、停止している。
【0037】
熱源側熱交換器5に流入した冷媒は、冷媒が有する熱によって熱源側熱交換器5で発生した霜を融かす。熱源側熱交換器5から冷媒配管11に流出した冷媒は、開度が全開とされている膨張弁4を通過して水冷媒熱交換器3に流入し、温水回路20を循環して水冷媒熱交換器3に流入した水と熱交換を行って蒸発する。水冷媒熱交換器3から冷媒配管11に流出した冷媒は、四方弁2、アキュムレータ6を介して圧縮機1に吸入されて再び圧縮される。
【0038】
除霜運転時の温水回路20における水の流れや各部の動作は、暖房運転時と同じであるため、詳細な説明は省略する。ただし、暖房運転時は水冷媒熱交換器3で水が冷媒によって加熱されるのに対し、除霜運転では水冷媒熱交換器3で水が冷媒によって冷却される。
【0039】
除霜運転中に、熱源側熱交換器5で発生した霜が融解したと考えられる条件である除霜運転終了条件が成立したときは、熱源側熱交換器5で発生した霜が融解したと考えられる。除霜運転終了条件が成立したとき、制御手段60は、後述するファン除霜運転開始条件によりファン除霜運転が必要か否かを判断する。制御手段60は、ファン除霜運転が必要と判断した場合は、熱源側熱交換器5の除霜運転に引き続きファン除霜運転を実行する。また、制御手段60は、ファン除霜運転が必要でないと判断した場合は、圧縮機1を停止して除霜運転を終了し、冷媒回路10を暖房運転に切り換え、圧縮機1を所定の回転数で起動して暖房運転を再開する。なお、除霜運転終了条件は、予め試験等によって定められている。例えば、熱交温度センサ57で検出した熱源側熱交換器5から流出する冷媒の温度が10℃以上となった場合や、除霜運転を実行してから所定時間(例えば、10分)が経過した場合等には、熱源側熱交換器5で発生した霜が融解したとする。
【0040】
<ファン除霜運転>
ファン除霜は、熱源側熱交換器5の除霜運転に引き続いて実行される。ファン除霜は、熱源側熱交換器5が凝縮器として機能する状態のまま室外ファン90を回転させることにより実行される。ファン除霜運転は、ファン除霜運転を実行するファン除霜運転開始条件が成立したときに、室外ファン90や図示しないベルマウスなどに付着した霜を融かすための運転モードである。
【0041】
ファン除霜運転開始条件は、予め試験等によって定められている。ファン除霜運転開始条件は、室外ファン90や図示しないベルマウスなどに霜が発生していると予測できる条件である。ファン除霜運転開始条件は、制御手段60の記憶部に格納されている。
【0042】
ファン除霜運転開始条件としては、例えば、除霜運転を実行する直前に外気温度センサ56で検出した外気温度Toが-10℃以上5℃以下の場合である。ファン除霜運転を行う時は、室外ファン90を最小回転数(例えば、290rpm)で1分間、回転させる。これにより、室外ファン90の回転により熱源側熱交換器5に流入した空気は、熱源側熱交換器5で冷媒によって加熱される。熱源側熱交換器5から流出した加熱された空気は室外ファン90へと流れて室外ファン90に当たり、室外ファン90で発生した霜が融解する。
【0043】
ファン除霜運転が実行された場合は、室外ファン90で発生した霜が融解したと考えられる。この後、制御手段60は、圧縮機1を停止してファン除霜運転を終了し、冷媒回路10を暖房運転に切り換え、圧縮機1を所定の回転数で起動して暖房運転を再開する。
【0044】
ファン除霜運転が実行されると、室外ファン90の回転によって熱源側熱交換器5を流れる冷媒は、室外ファン90が停止している熱源側熱交換器5の除霜運転時と比べて、熱源側熱交換器5に外気が供給される分、冷却される。これにより、水冷媒熱交換器3に流入する冷媒の温度が、熱源側熱交換器5の除霜運転時と比べて低くなるため、水冷媒熱交換器3では熱源側熱交換器5の除霜運転時と比べて水の温度が低下する。
【0045】
ここで、二重管301(図2)においては、流路305に水が流通し、流路306に冷媒が流通している。従って、熱源側熱交換器5の温度が0℃以下に低下し、流路306に流れる冷媒の温度の低下によって、流路305に流通する水と流路306に流通する冷媒との熱交換によって流路305内の水が凍結する可能性がある。例えば、内管302の内壁から内管302の中心に向かって氷が成長するように、流路305内の水が凍結する。そして、流路305内の水の凍結が進行すると、水の体積膨張によって内管302が破裂し、水と冷媒とが混ざり合って、温水回路20に冷媒が混入すれば、冷媒回路10の制御に支障をきたし、所望の暖房能力が得られなくなる。
【0046】
本実施形態では、ファン除霜運転の実行前に二重管301を流通する水の温度を検出することにより、ファン除霜運転を実行することにより起きる二重管301内での水の凍結を防止する。以下、水凍結を防止する制御方法を具体的に説明する。
【0047】
<ファン除霜に係る制御>
図3は、本実施形態の除霜運転時の処理を説明するフローチャートである。図4は、図3のフローチャート中のファン除霜運転実行判断(ST20)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0048】
図3に示すように、ヒートポンプ式温水暖房装置100が暖房運転を行っているとき、制御手段60のCPU601は、外気温度センサ56で検出した外気温度Toを定期的に取り込む。CPU601は、外気温度Toを取り込んだ時刻と共に記憶部602に記憶する(ST1)。
【0049】
次に、CPU601は、記憶した外気温度Toを参照し、除霜運転開始条件が成立したか否かを判断する(ST2)。除霜運転開始条件は、例えば、前述した外気温度Toが0℃以下である状態が30分以上継続したか否かである。
【0050】
ST2において、除霜運転開始条件が成立していなければ(ST2-No)、CPU601は、暖房運転を継続し(ST14)、ST1に処理を戻す。除霜運転開始条件が成立していれば(ST2-Yes)、外気温度センサ56よって検出した外気温度を判定外気温度Tojとして取り込む(ST3)。
【0051】
次に、CPU601は、除霜運転準備処理を実行する(ST4)。除霜運転準備処理では、CPU601は、圧縮機1および室外ファン90を停止し、冷媒回路10が冷房サイクル(破線矢印71)になるように四方弁2を切り替える。これにより、冷媒回路10において、熱源側熱交換器5が凝縮器として機能するとともに水冷媒熱交換器3が蒸発器として機能する。
【0052】
次に、CPU601は、圧縮機1を所定の回転数(例えば、70rps)で再起動する(ST5)。
【0053】
次に、CPU601は、除霜運転終了条件が成立しているか否かを判断する(ST6)。除霜運転終了条件は、例えば、前述した熱交温度センサ57で検出した熱源側熱交換器5から流出する冷媒の温度条件、または、除霜運転を実行してからの時間条件である。前述したように、温度条件は、熱交温度センサ57で検出した熱源側熱交換器5から流出する冷媒の温度が10℃以上となった場合であり、時間条件は、除霜運転を実行してから例えば10分が経過した場合である。CPU601は、熱交温度センサ57で検出した冷媒温度を常時取り込んで取り込んだ時刻と共に記憶部602に記憶しており、CPU601は、記憶した冷媒温度を参照し、これが10℃以上となったか否か、または、除霜運転を実行してから所定時間(例えば、10分)が経過したか否かを判断する。前述したように、除霜運転終了条件は、予め試験等によって定められており、熱源側熱交換器5で発生した霜が融解したと考えられる条件である。
【0054】
ST6において、除霜運転終了条件が成立していなければ(ST6-No)、CPU601は、ST6に処理を戻し除霜運転を継続する。除霜運転終了条件が成立していれば(ST6-Yes)、CPU601は、次のファン除霜運転実行判断を行う(ST20)。ファン除霜運転実行判断(ST20)については、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0055】
本実施形態では、ファン除霜運転実行判断において、ファン除霜運転を行っても水冷媒熱交換器3で水が凍結しないことが予め判明しているファン除霜許可条件(後述するST204~ST208)が成立している場合にファン除霜運転が実行される。ファン除霜許可条件は、予め試験等によって定められており、ファン除霜運転を行っても、水冷媒熱交換器3で水が凍結しないと考えられる条件である。
【0056】
まず、CPU601は、ファン除霜許可条件を判断する前提として、ファン除霜開始条件が成立しているか否かを判断する(ST201)。ファン除霜運転開始条件は、図3のST3で取り込んだ判定外気温度Tojが-10℃以上5℃以下であるか否かである。ファン除霜運転開始条件が成立していなければ(ST201-No)、CPU601は、ファン除霜運転を行わず、ST12に処理を進める。
【0057】
ファン除霜運転開始条件が成立していれば(ST201-Yes)、CPU601は、温度センサ58によって水冷媒熱交換器3の内管302から流出する水冷媒熱交換器3の往き温度Twoを取り込む(ST202)。ここで、ST202での往き温度Twoは、ファン除霜運転を実行する前の温度である。次に、CPU601は、流量計31によって温水回路20の水配管16を流れる水の流量Qを取り込む(ST203)。なお、ST202とST203とは、適宜、順序を入れ替えてもよい。
【0058】
次に、CPU601は、ファン除霜許可条件の1つである、流量Qが第2閾値以上か否かを判断する(ST204)。本実施形態では、第2閾値は、ヒートポンプ式温水暖房装置100が設置されたときの予め定められた流量とする。例えば、第2閾値を20L/minとする。ST204において、流量Qが第2閾値以上でないならば(ST204-No)、つまり、温水回路20を水が循環していない場合は水冷媒熱交換器3において水が凍結するため、CPU601は、ファン除霜運転を行わず、ST12に処理を進める。
【0059】
ST204において、流量Qが第2閾値以上であるならば(ST204-Yes)、CPU601は、ファン除霜許可条件の1つである、温度センサ58によって取り込んだ往き温度Twoの検出値が第1閾値以上であるか否かの判断を行う(ST205)。例えば、第1閾値を14℃とする。第1閾値は、ファン除霜運転が実行された場合の水冷媒熱交換器3における水温低下を考慮し、ファン除霜運転が行われたとしても水が凍結に至らない温度とされる。例えば、氷の融点(0℃)よりも高い14℃に設定される。
【0060】
ST205において、往き温度Twoが第1閾値以上であるならば(ST205-Yes)、CPU601は、ST9に処理を移行する。すなわち、ファン除霜運転が実行される。
【0061】
ST205において、往き温度Twoの検出値が第1閾値以上でないならば、CPU601は、水の流量Qに応じて決定される水温である第3閾値に基づいて、ファン除霜運転を行うか否かの判断をする。
【0062】
流量Qが循環ポンプ30によって増えると、流量Qの増加に応じて水冷媒熱交換器3を通過する間に、水から冷媒に移動する単位体積当たりの熱量が小さくなるため、往き温度Twoが第1閾値より低い温度であっても流量Qが上述した第3閾値以上であれば、水冷媒熱交換器3において水を凍結させることなくファン除霜運転を行うことができる。
【0063】
図5は、ファン除霜許可条件を流量Q及び往き温度Twoの二次元グラフで表した図である。図5における斜線領域がファン除霜運転が可能な領域である。
【0064】
具体的には、往き温度Twoが第1閾値(本実施例では14℃)以上で、流量Qが第2閾値(本実施例では20L/min)以上である領域は、ファン除霜許可条件が成立する領域となり、CPU601は、往き温度Twoが第1閾値以上、かつ、流量Qが第2閾値以上であれば、ファン除霜運転を実行する。
【0065】
また、往き温度Twoが第1閾値以上でない場合は、流量Qの増加に応じて変化する第3閾値以上であれば、ファン除霜許可条件が成立する領域として、ファン除霜運転を実行する。ここで、第3閾値は、図5に示す流量Q-往き温度Twoの曲線(図5に示す曲線A)となる。以下、第3閾値を表す流量Q-往き温度Twoの曲線について説明する。
【0066】
冷媒に熱が奪われる水の水温変化量は、水温変化量ΔTとすれば、冷媒と水との熱交換量の式 ΔT=Δq/(m・c)(Δq:熱交換量(J)、m:水の質量(g)、c:比熱(J/(g・K))、ΔT:水温変化量(℃))となる。上記式より、水温変化量ΔTは、熱交換量Δqが変わらない場合は、水の質量流量mに反比例し、mが大きいほどΔTは小さくなる。この式において、水の質量流量mが流量Qに対応する。
【0067】
ここで、流量Qの大小に関わらず、冷媒が水から受ける熱交換量Δqが一定であると仮定すると、水温変化量ΔTは、質量流量mが大きくなるほど反比例して小さくなる。すなわち、流量Qが大きくなるのにつれて、水温変化量ΔTが小さくなる。そして、ある流量Q(本実施形態では、50L/min)以上では、水温変化量ΔTが無視できるほど小さくなる。
【0068】
従って、第3閾値は、流量Qが20L/min以上50L/min未満では、Two=0.0047Q-0.4101Q+19.939・・・(1)式の二次曲線に近似し、流量Qが50L/min未満では、流量Qの増加に伴ってTwoは低下する。一方、流量Qが50L/min以上の場合には、水温変化がほぼないことから、第3閾値は、固定値10℃となる。第3閾値は、予め試験などを行って求められ、記憶部602に記憶されている。
【0069】
このように、往き温度Twoが第1閾値以上でない場合に、流量Qの増加に応じて往き温度Twoが第3閾値以上であれば、水温変化量ΔTの変化が小さいことにより水冷媒熱交換器3において水を凍結させることなくファン除霜運転を行うことができる。
【0070】
再び、図4のフローチャートに戻り、本実施形態のファン除霜運転時の処理を説明する。ST205において、往き温度Twoが第1閾値以上でないならば(ST205-No)、CPU601は、ST206に処理を移行する。
【0071】
ST206において、流量Qが50L/min未満ならば(ST206-Yes)、CPU601は、ST207に処理を移行する。そして、CPU601は、ST207において、往き温度Twoが(1)式で示される第3閾値以上であるか否かを判断する(ST207)。
【0072】
ST207において、往き温度Twoが第3閾値以上ならば(ST207-Yes)、CPU601は、ST9に処理を移行する。すなわち、ファン除霜運転が実行される。ST207において、往き温度Twoが第3閾値未満ならば(ST207-No)、CPU601は、ファン除霜運転を行わず、ST12に処理を進める。
【0073】
一方、ST206において、流量Qが50L/min以上ならば(ST206-No)、CPU601は、ST208に処理を移行する。そして、CPU601は、ST208において、往き温度Twoが10℃以上であるか否かを判断する(ST208)。
【0074】
ST208において、往き温度Twoが10℃以上ならば(ST208-Yes)、CPU601は、ST9に処理を移行する。すなわち、ファン除霜運転が実行される。ST208において、往き温度Twoが10℃未満ならば(ST208-No)、CPU601は、ファン除霜運転を行わず、ST12に処理を進める。
【0075】
以上説明したように、本実施形態では図4に示すフローによって、ファン除霜運転実行判断がなされる。再び、図3のフローチャートに戻り、ST9以降のファン除霜の処理を説明する。
【0076】
次に、CPU601は、タイマー計測を開始する(ST9)とともに、室外ファン90を起動する(ST10)。なお、前述したように、ファン除霜運転時の室外ファン90の回転数は最小回転数とされる。これにより、室外ファン90が回転し、室外ファン90に熱源側熱交換器5で熱交換された暖気が当てられることで、室外ファン90に付着した霜が融かされる。
【0077】
次に、CPU601は、ファン除霜運転時間Tf(本実施形態では1分)が経過したか否かを判断する(ST11)。ファン除霜運転時間Tfが経過していなければ(ST11-No)、CPU601は、ST11に処理を戻しファン除霜運転を継続する。ファン除霜運転時間Tfが経過していれば(ST11-Yes)、CPU601は、暖房運転の再開処理を実行する(ST12)。運転再開処理では、CPU601は、圧縮機1を停止し、冷房サイクル(破線矢印71)が暖房サイクル(実線矢印70)になるように四方弁2を切り換える。これにより、冷媒回路10が、熱源側熱交換器5が蒸発器として機能するとともに水冷媒熱交換器3が凝縮器として機能する状態となる。
【0078】
そして、CPU601は、暖房運転を再開し(ST13)、ST1に処理を戻す。暖房運転では、CPU601は、室内ユニット40から要求される運転能力に応じて、圧縮機1や室外ファン90の回転数や膨張弁4の開度を制御する。
【0079】
以上、説明した制御によれば、ファン除霜に伴う流路305内の水の凍結が防止され、内管302ひいては外管303の破裂が確実に防止される。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0081】
1…圧縮機
2…四方弁
3…水冷媒熱交換器
4…膨張弁
5…熱源側熱交換器
6…アキュムレータ
10…冷媒回路
11…冷媒配管
16…水配管
20…温水回路
30…循環ポンプ
31…流量計
40…室内ユニット
51…吐出圧力センサ
52…吐出温度センサ
53…吸入圧力センサ
54…吸入温度センサ
55…冷媒温度センサ
56…外気温度センサ
57…熱交温度センサ
58、59…温度センサ
60…制御手段
90…室外ファン
100…ヒートポンプ式温水暖房装置
301…二重管
302…内管
303…外管
305…流路
306…流路
601…CPU
602…記憶部
603…センサ入力部
604…受信部
図1
図2
図3
図4
図5