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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040461
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20220304BHJP
   H02P 103/10 20150101ALN20220304BHJP
【FI】
H02P9/00 C
H02P103:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145198
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉野 真
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅大
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590AA12
5H590AB02
5H590CC09
5H590CC18
5H590CC24
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE01
5H590EA01
5H590FB02
5H590FC12
5H590FC22
5H590FC25
5H590JA19
(57)【要約】
【課題】誘導発電機を用いたときに生じる突入電流を抑制する。また、誘導発電機の運転開始時に必要とされる電源を、電力系統の力率を低下させることなく確保する。
【解決手段】誘導発電機1の回転速度が定格付近になってから開閉器MC1を閉じ、電力系統4と接続する際、順変換装置2の出力電圧を当初は零にしておき、その後、誘導発電機1の出力電圧を定格電圧まで徐々に上昇させていく。また、システム制御盤より供給される制御電源を昇圧して全波整流し、その直流電力を電解コンデンサCに充電することで、誘導発電機1の運転開始時に必要な直流電圧を用意する。さらに、誘導発電機1の軸電圧をコモンモードフィルタによって抑制することで、軸受が放電によって損傷することを防止する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導発電機を用いて順変換装置と逆変換装置を介して電力系統に接続する発電システムにおいて、前記誘導発電機の回転速度が定格付近になってから開閉器を閉じ、電力系統と接続する際、前記順変換装置の出力電圧を当初は零にしておき、その後、前記誘導発電機の出力電圧を定格電圧まで徐々に上昇させていくように構成したことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記誘導発電機は、制御電源を昇圧して全波整流し、その直流電力を電解コンデンサに充電することにより、運転開始時に必要な直流電圧を用意することを特徴とする請求項1記載の発電システム。
【請求項3】
前記誘導発電機は、軸電圧をコモンモードフィルタによって抑制することを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に接続する、誘導発電機を用いた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策として再生可能エネルギーを利用した発電事業が重要視されている。これらの発電事業は、2012年に固定価格買取制度(FIT)が施行されたことにより、急激に需要が伸びた。
【0003】
風力、水力、バイオマス発電などの再生可能エネルギーを利用した発電システムには発電機が用いられる。最も簡単な構成としては、図3に示すように、交流発電機を電力系統へ直接連系する方式が考えられる。この方式は、6.6kVの高圧連系設備において広く用いられている。
【0004】
一方、比較的小規模な売電事業者の発電システムは低圧連系が選択される。低圧連系では200Vといった低い電圧を扱い、高圧連系に対してイニシャルコストが低く、また、各種手続きやメンテナンスの簡易さの面で多くの利点がある。
【0005】
しかし我が国は、低圧連系をする場合、交流発電機からの出力を電力系統へ直接連系することを禁止している。これは、一般的に交流発電機の応答が遅いためで、系統故障時などの高速な停止や遮断が求められる場合の対応が難しいためである。
【0006】
そこで、図4のように、インバータ(逆変換装置)と交流発電機を組み合わせて系統連系する方式が採用されている。
【0007】
インバータは半導体バルブデバイスを使用することで、高速に停止や遮断が可能である。なお、インバータの機能に系統連系に必要な解列開閉器や保護リレーなどの種々の機能を加えたものをパワーコンディショナと呼ぶ。
【0008】
図4に示す発電システムでは、交流発電機で発電した交流電力を、一旦、コンバータにより直流電力に変換し、パワーコンディショナで再び交流電力に戻し、連系している電力系統へ逆潮流させる。
【0009】
交流発電機は同期式と誘導式の2種類に大別される。同期発電機の一般的な機器構成を図5に示す。同期発電機は、外部から出力電圧の制御が可能であるため、系統連系時に力率調整ができることや、系統と連系せずに自立運転ができるといった特長がある。
【0010】
一方で、このように出力電圧を制御するためには、回転子の界磁巻線に、外部から直流電流を制御して供給する必要がある。そのため、界磁用に直流電源装置とAVR(自動電圧調整器)が必要となる。
【0011】
加えてスリップリングとブラシを使用しているタイプの発電機では定期的な部品交換が必要である。さらに、部品点数が多いためシステムが複雑になる。
【0012】
誘導発電機は、同期発電機と比べて構造が簡単であり、小型、堅牢といった特長がある。また、同期発電機のような界磁用の装置が不要のため、システムを簡素化できる利点もある。
【0013】
また、回転子にかご形を採用した場合、スリップリングやブラシが無いため、構造が単純かつ安価となるだけでなく、定期的な部品交換が不要となる。
【0014】
誘導発電機を用いた発電システムの公知文献としては、例えば、下記特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006-87221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
発電システムに誘導発電機を用いた場合、発電機の出力端子に接続した電源(電力系統)から励磁電流を供給する必要がある。そのため、電源(電力系統)の力率が低下することや、自立運転ができないといった問題がある。
【0017】
また、発電機と電源(電力系統)を接続したときに、発電機と順変換装置との間に定格電流の数倍の突入電流が発生してしまう問題もある。
【0018】
突入電流の抑制対策としては、順変換装置と誘導発電機との間に限流リアクトルを挿入する方法や、順変換装置の皮相容量を大きくする方法が考えられるが、いずれも装置の大型化やコストアップの要因となる。
【0019】
そこで、本発明では、誘導発電機の運転開始時の電源を電力系統の力率を低下させることなく確保するとともに、装置の大型化やコストアップを招くことなく、誘導発電機の電源投入時に流れる突入電流を確実に抑制することのできる発電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1記載の発明は、誘導発電機を用いて順変換装置と逆変換装置を介して電力系統に接続する発電システムにおいて、前記誘導発電機の回転速度が定格付近になってから開閉器を閉じ、電力系統と接続する際、前記順変換装置の出力電圧を当初は零にしておき、その後、前記誘導発電機の出力電圧を定格電圧まで徐々に上昇させていくように構成したことに特徴を有する。
【0021】
請求項2記載の発明は、制御電源を昇圧して全波整流し、その直流電力を電解コンデンサに充電することにより、請求項1記載の誘導発電機の運転開始時に必要な直流電圧を用意することに特徴を有する。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2の何れかに記載の誘導発電機の軸電圧をコモンモードフィルタによって抑制することに特徴を有する。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明によれば、誘導発電機への交流電圧印加時の電流を定格電流以内に抑制することができる。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、誘導発電機に供給する必要のある直流電圧を制御電源から供給することにより、電源(電力系統)の力率低下を防止できる。
【0025】
請求項3記載の発明によれば、誘導発電機の軸電圧が過大になることを防ぎ、誘導発電機の軸受が放電によって損傷することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の発電システムのシステム構成図である。
図2】本発明に係る誘導発電機の軸電圧に対する等価回路である。
図3】交流発電機を電力系統に直接連系する場合の発電システムの構成図である。
図4】交流発電機を電力系統にインバータで連系する場合の発電システムの構成図である。
図5】同期発電機の一般的な機器構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図1および図2により説明する。図1は本発明の発電システムAの構成図であり、図1において、1は例えば、三相AC200V,50Hzまたは60Hzの誘導発電機である。
【0028】
2は誘導発電機1を交流入力端子に接続した誘導発電機用の順変換装置(コンバータ)であり、誘導発電機1で発電した交流電力を直流電力に変換して出力する。3はコンバータ2の直流出力端子に接続された逆変換装置(パワーコンディショナ)であり、コンバータ2が出力する直流電力を再び交流電力に戻し、連系している電力系統4へ逆潮流させる。
【0029】
つづいて、本発明の特徴的部分であるコンバータ2の構成について説明する。本発明に係るコンバータ2は、遮断器MCCB1,MCCB2、開閉器MC1、リアクトルL、半導体バルブデバイス5、電解コンデンサCと、これらを駆動する制御部6、および、初期充電回路7から概略構成されている。
【0030】
遮断器MCCB1,MCCB2は、過負荷や短絡などの要因で二次側の回路に異常な過電流が流れたときに電路を開放し、一次側からの電源供給を遮断して二次側の回路や電線を損傷から保護する。
【0031】
開閉器MC1は、電流を制御部6によって開閉することで、誘導発電機1を始動/停止させる制御機器であり、リアクトルLは、誘導発電機1に加わるサージ電圧などの電気的ストレスを抑制する。
【0032】
半導体デバイス5を構成するパワー半導体としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いる。電解コンデンサCは、初期充電回路7によって誘導発電機1起動用の直流電圧を充電する。
【0033】
制御部6は、図示しないシステム制御盤より運転許可信号を受信することにより、開閉器MC1を投入/開放したり、半導体バルブデバイス5のパワー半導体をON/OFF操作する。また、初期充電回路7に投入指令を出力したり、前記システム制御盤にコンバータ2の状態を出力する機能を備える。
【0034】
初期充電回路7は、開閉器MC2、昇圧用のトランスTr、整流器8、および、抵抗Rによって構成されており、遮断器MCCB2を介して図示しないシステム制御盤から制御電源(例えば、単相AC200V)が供給される。
【0035】
以上のように構成した発電システムAにおいて、発電システムAを構成する誘導発電機1は、交流電圧を与えなければ電力を出力しない。そこで、本発明では、制御部6から初期充電回路7の開閉器MC2に投入指令を出力することにより、開閉器MC2を投入し、システム制御盤から制御電源を初期充電回路7のトランスTrによって昇圧し、整流器8によって全波整流することで、その直流電力を電解コンデンサCに充電する。
【0036】
この充電によって得た直流電圧を半導体バルブデバイス5によって高周波PWM(Pulse Width Modulation)で変換して誘導発電機1に印加する。これにより、誘導発電機1は運転を開始することができる。
【0037】
つまり、本発明では、誘導発電機1の起動用に電力系統4から励磁電流を供給する必要がないので、電力系統4の力率が低下することがない。
【0038】
また、誘導発電機1へ前述のごとく交流電圧を印加する場合、本発明では、誘導発電機1とコンバータ2を接続する際に、当初はコンバータ2の出力電圧を零にしておき、接続後に出力電圧を定格電圧まで徐々に昇圧する方式を用いる。
【0039】
これにより、誘導発電機1の電源投入時(開閉器MC1投入時)に流れる突入電流を定格電流以内に抑制することができる。
【0040】
このように、ソフトウェアによって突入電流を抑制することができるので、ハードウェアで対策を行う場合と違い、部品点数の増加や回路の複雑化がなく、装置の大型化やコストアップを防ぐことができる。
【0041】
また、本発明では、半導体バルブデバイス5を構成するパワー半導体としてIGBTを三相フルブリッジ接続し、前述したとおり、直流電圧を高周波PWMで変換した電圧を誘導発電機1に印加する。この場合、誘導発電機1の固定子巻線にコモンモード電圧が印加される。
【0042】
PWMインバータは高周波でスイッチングするため、コモンモード電圧も高周波である。誘導発電機1の軸は、電気的に浮遊キャパシタンスを介して固定子巻線と結合しているため、大地に対し、軸に電圧(以下、軸-大地間電圧)が発生する。
【0043】
図2は前記軸電圧に対する等価回路である。軸電圧が過大となると軸受が電食し、誘導発電機1が故障に至る。軸-大地間電圧の大きさの指針としてはピーク値で1.0V以下となっている。軸―大地間電圧を低減するにはコモンモードフィルタが有効である。
【0044】
図2に示す等価回路から軸電圧は概略下記[数1]で求められる。
【0045】
【数1】
【0046】
ただし、Vb:軸電圧ピーク値、Vc:コモンモード電圧ピーク値、X1:固定子巻線-固定子鉄心間のリアクタンス、X2:固定子鉄心-軸間のリアクタンス、X3:軸-固定子間のリアクタンス、R1:固定子鉄心-大地間の抵抗、Xc:コンバータ-大地間のリアクタンスを示している。
【0047】
上記[数1]を用いてコモンモードフィルタの設計を行い、軸-大地間電圧のピーク値を1.0V以下とすることにより、誘導発電機1の軸受の電食を抑制することが可能となる。
【0048】
以上説明したように、本発明に係る発電システムによれば、誘導発電機を用いたときに生じる突入電流を抑制することができる。また、誘導発電機の運転開始時に必要とされる電源を、電力系統の力率を低下させることなく確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
再生可能エネルギーを利用した発電システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 誘導発電機
2 順変換装置(コンバータ)
3 逆変換装置(パワーコンディショナ)
4 電力系統
5 半導体バルブデバイス
6 制御部
7 初期充電回路
8 整流器
MCCB1,MCCB2 遮断器
MC1,MC2 開閉器
L リアクトル
C 電解コンデンサ
R 抵抗
A 発電システム
図1
図2
図3
図4
図5