IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テクノエクセル株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社カクダイの特許一覧

<>
  • 特開-電磁弁 図1
  • 特開-電磁弁 図2
  • 特開-電磁弁 図3
  • 特開-電磁弁 図4
  • 特開-電磁弁 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040478
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/196 20060101AFI20220304BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
F16K17/196
F16K31/06 305K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145221
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000146995
【氏名又は名称】テクノエクセル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000128980
【氏名又は名称】株式会社カクダイ
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】高倉 健一
(72)【発明者】
【氏名】上原 渉
(72)【発明者】
【氏名】古川 喬
(72)【発明者】
【氏名】上出 博章
【テーマコード(参考)】
3H060
3H106
【Fターム(参考)】
3H060AA02
3H060CC25
3H060DC05
3H060DD04
3H060HH03
3H106DA35
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC14
3H106DC17
3H106DD02
3H106EE35
3H106EE45
3H106GA13
3H106GB08
3H106KK05
(57)【要約】
【課題】通過制御対象流体の凍結膨張に起因する通過制御対象流体の漏出や電磁弁および接続用の配管の破損を好適に回避する。
【解決手段】弁座31、弁体32およびアクチュエータ33を有するパイロット弁3と、弁座21および弁体22を有すると共に、上流側空間Siおよび圧力室Spの圧力差によって弁座21に対して弁体22が接離させられるメイン弁2と、圧力室Spに連通させられた弁口41hが設けられた弁座41、弁座41に対して接離させられる弁体42、弁体42を弁座41に向けて付勢するスプリング43、およびスプリング43が当接させられるスプリング受け部44を有すると共に、電磁弁1内における通過制御対象流体の圧力が予め規定された圧力を超えたときにスプリング43の付勢力に抗して弁体42が弁座41から離間させられて圧力室Sp内の通過制御対象流体を弁口41hから流出させる安全弁4とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1弁口が設けられた第1弁座、当該第1弁座に対して接離させられる第1弁体、および前記第1弁座に対して前記第1弁体を接離させるアクチュエータを有するパイロット弁と、
第2弁口が設けられた第2弁座、および当該第2弁座に対して接離させられる第2弁体を有すると共に、通過制御対象流体の流路における上流側空間内の圧力と前記第1弁口が連通させられた圧力室内の圧力との圧力差によって前記第2弁座に対して前記第2弁体が接離させられるメイン弁と備えた電磁弁であって、
前記圧力室に連通させられた第3弁口が設けられた第3弁座、当該第3弁座に対して接離させられる第3弁体、当該第3弁体を前記第3弁座に向けて付勢する付勢部材、および当該付勢部材における前記第3弁体側の端部とは逆側の端部が当接させられる付勢部材受け部を有すると共に、当該電磁弁内における前記通過制御対象流体の圧力が予め規定された圧力を超えたときに前記付勢部材の付勢力に抗して前記第3弁体が前記第3弁座から離間させられて当該圧力室内の当該通過制御対象流体を前記第3弁口から流出させる安全弁を備えている電磁弁。
【請求項2】
前記安全弁は、前記第3弁体を挿入可能な筒状の弁体ガイド部が前記第3弁座と一体的に形成されると共に、当該第3弁体の外周面と当該弁体ガイド部の内周面との間の隙間を密封する密封部材を備えている請求項1記載の電磁弁。
【請求項3】
前記メイン弁は、前記第2弁体としての弁膜部を備えたダイヤフラム弁で構成され、
前記安全弁は、前記第3弁座に対する前記第3弁体の接離方向が前記第2弁座に対する前記第2弁体の接離方向と一致すると共に前記第3弁口の中心が前記第2弁口の中心に対して前記両接離方向おいて重なるように当該第3弁口が設けられている請求項1または2記載の電磁弁。
【請求項4】
前記付勢部材受け部は、前記第3弁座が形成された圧力室形成部材とは別体に形成されて当該圧力室形成部材と一体化されると共に、当該圧力室形成部材に対して接する少なくとも2つの脚部が設けられて当該圧力室形成部材と一体化された状態において当該各脚部を除く部位が前記第3弁座に対する前記第3弁体の接離方向に沿って当該圧力室形成部材から離間させられている請求項1から3のいずれかに記載の電磁弁。
【請求項5】
前記圧力室形成部材は、前記付勢部材受け部の形成材料の弾性率よりも低い弾性率の形成材料で形成されている請求項4記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通過制御対象流体の流路における上流側空間内の圧力とパイロット弁の弁口が連通させられた圧力室内の圧力との圧力差によって弁座に対して弁体が接離させられるメイン弁を備えたパイロット式の電磁弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁弁として、出願人は、メイン弁およびパイロット弁を備え、液体(一例として、水道水)の通過を規制/許容可能に構成されたパイロット式の電磁弁を下記の特許文献において開示している。出願人が開示している電磁弁では、水道水の流路における下流側空間と圧力室とを連通させる小孔がパイロット弁の弁体によって閉塞されている状態において水道水の流路における上流側空間の圧力と圧力室内の圧力とがほぼ等圧となり、メイン弁が閉状態となって水道水の通過が規制される。また、上記の小孔からパイロット弁の弁体が離間させられたときには、圧力室内の水道水が小孔を介して下流側空間に流出して圧力室内の圧力が上流側空間の圧力よりも低圧となり、メイン弁が開状態に移行させられて水道水の通過が許容される。なお、出願人は、下記の特許文献においてラッチ式の電磁弁および非ラッチ式の電磁弁をそれぞれ開示しているが、いずれの電磁弁においても、水道水の通過を規制/許容する基本原理については同様となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-040309号公報(第5-10頁、第1-7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、出願人が開示している上記の電磁弁には、以下のような改善すべき課題が存在する。
【0005】
具体的には、出願人が開示している電磁弁では、パイロット式の一般的な電磁弁の構成と同様にして、上流側空間内の圧力と圧力室内の圧力との圧力差によってメイン弁が閉状態/開状態のいずれかに移行させられて水道水等の通過を規制/許容する構成が採用されている。このため、この電磁弁では、水道水等の通過を規制しているとき(メイン弁が閉状態に移行させられているとき)、および水道水等の通過を許容しているとき(メイン弁が開状態に移行させられているとき)のいずれにおいても、上流側空間内、および圧力室内に水道水が存在した状態が維持されている。なお、電磁弁よりも下流側の配管構成によっては、下流側空間内にも水道水が存在した状態が維持される。
【0006】
一方、この種の電磁弁では、その設置場所が通過制御対象流体(上記の例における水道水等)の凍結温度を下回る温度となることがある。この場合、電磁弁が通過制御対象流体の通過を規制している状態や、電磁弁が通過制御対象流体の通過を許容しているものの、通過制御対象流体の流速が著しく低い状態において、電磁弁の設置場所の温度が通過制御対象流体の凍結温度まで低下したときには、電磁弁の上流側空間内、圧力室内および下流側空間内や、電磁弁よりも上流側の配管(以下、「上流側配管」ともいう)内、および電磁弁よりも下流側の配管(以下、「下流側配管」ともいう)内において通過制御対象流体が凍結する。また、通過制御対象流体が凍結したときには、その凍結膨張により、上流側空間内、圧力室内、下流側空間内、上流側配管内および下流側配管内の圧力が上昇する。
【0007】
かかる状態においては、電磁弁の構成要素同士の接合部位や、電磁弁と上流側配管との接続部位、および電磁弁と下流側配管との接続部位などから通過制御対象流体が漏出したり、電磁弁の構成要素や配管の破損が生じたりするおそれがある。したがって、この点を改善するのが好ましい。
【0008】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、通過制御対象流体の凍結膨張に起因する通過制御対象流体の漏出や電磁弁および接続用の配管の破損を好適に回避し得る電磁弁を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の電磁弁は、第1弁口が設けられた第1弁座、当該第1弁座に対して接離させられる第1弁体、および前記第1弁座に対して前記第1弁体を接離させるアクチュエータを有するパイロット弁と、第2弁口が設けられた第2弁座、および当該第2弁座に対して接離させられる第2弁体を有すると共に、通過制御対象流体の流路における上流側空間内の圧力と前記第1弁口が連通させられた圧力室内の圧力との圧力差によって前記第2弁座に対して前記第2弁体が接離させられるメイン弁と備えた電磁弁であって、前記圧力室に連通させられた第3弁口が設けられた第3弁座、当該第3弁座に対して接離させられる第3弁体、当該第3弁体を前記第3弁座に向けて付勢する付勢部材、および当該付勢部材における前記第3弁体側の端部とは逆側の端部が当接させられる付勢部材受け部を有すると共に、当該電磁弁内における前記通過制御対象流体の圧力が予め規定された圧力を超えたときに前記付勢部材の付勢力に抗して前記第3弁体が前記第3弁座から離間させられて当該圧力室内の当該通過制御対象流体を前記第3弁口から流出させる安全弁を備えている。
【0010】
また、請求項2記載の電磁弁は、請求項1記載の電磁弁において、前記安全弁は、前記第3弁体を挿入可能な筒状の弁体ガイド部が前記第3弁座と一体的に形成されると共に、当該第3弁体の外周面と当該弁体ガイド部の内周面との間の隙間を密封する密封部材を備えている。
【0011】
さらに、請求項3記載の電磁弁は、請求項1または2記載の電磁弁において、前記メイン弁は、前記第2弁体としての弁膜部を備えたダイヤフラム弁で構成され、前記安全弁は、前記第3弁座に対する前記第3弁体の接離方向が前記第2弁座に対する前記第2弁体の接離方向と一致すると共に前記第3弁口の中心が前記第2弁口の中心に対して前記両接離方向おいて重なるように当該第3弁口が設けられている。
【0012】
また、請求項4記載の電磁弁は、請求項1から3のいずれかに記載の電磁弁において、前記付勢部材受け部は、前記第3弁座が形成された圧力室形成部材とは別体に形成されて当該圧力室形成部材と一体化されると共に、当該圧力室形成部材に対して接する少なくとも2つの脚部が設けられて当該圧力室形成部材と一体化された状態において当該各脚部を除く部位が前記第3弁座に対する前記第3弁体の接離方向に沿って当該圧力室形成部材から離間させられている。
【0013】
さらに、請求項5記載の電磁弁は、請求項4記載の電磁弁において、前記圧力室形成部材は、前記付勢部材受け部の形成材料の弾性率よりも低い弾性率の形成材料で形成されている。なお、本明細書において、「弾性率」が高い/低いとは、「ヤング率(曲げ剛性、撓み剛性)」や「体積弾性率(圧縮変形率)」が高い/低いことを意味している。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の電磁弁では、圧力室に連通させられた第3弁口が設けられた第3弁座、第3弁座に対して接離させられる第3弁体、第3弁体を第3弁座に向けて付勢する付勢部材、および付勢部材における第3弁体側の端部とは逆側の端部が当接させられる付勢部材受け部を有すると共に、電磁弁内における通過制御対象流体の圧力が予め規定された圧力を超えたときに付勢部材の付勢力に抗して第3弁体が第3弁座から離間させられて圧力室内の通過制御対象流体を第3弁口から流出させる安全弁を備えている。
【0015】
したがって、請求項1記載の電磁弁によれば、上流側配管内、上流側空間内、圧力室内、およびそれらに加えて下流側空間内や下流側配管内において通過制御対象流体が凍結温度まで温度低下して通過制御対象流体が凍結膨張したとしても、圧力室内の圧力が付勢部材の付勢力を超えたときに第3弁体が第3弁座から離間させられて第3弁口が開口され、これにより、圧力室から通過制御対象流体が流出して圧力室内の圧力が低下し、上流側空間内や上流側配管内、および下流側空間内や下流側配管内の圧力も低下するため、上流側配管および下流側配管や電磁弁の構成部品が破損したり、上流側配管および下流側配管と電磁弁との接続部位から通過制御対象流体が漏出したりする事態を確実に回避することができる。
【0016】
請求項2記載の電磁弁によれば、安全弁が、第3弁体を挿入可能な筒状の弁体ガイド部が第3弁座と一体的に形成されると共に、第3弁体の外周面と弁体ガイド部の内周面との間の隙間を密封する密封部材を備えたことにより、第3弁口を介して圧力室から流出した通過制御対象流体が電磁弁の外に漏出して電磁弁の周囲に通過制御対象流体による濡れが生じる事態を好適に回避することができ、また、電磁弁の設置場所の温度が凍結温度よりも十分に高い温度まで上昇して圧力室内の圧力が低下したときに、第3弁口から流出した通過制御対象流体を圧力室内に流入させることができる。
【0017】
請求項3記載の電磁弁によれば、メイン弁をダイヤフラム弁で構成すると共に、第3弁座に対する第3弁体の接離方向が第2弁座に対する第2弁体の接離方向と一致すると共に第3弁口の中心が第2弁口の中心に対して両接離方向おいて重なるように第3弁口を設けて安全弁を構成したことにより、電磁弁の製造時に、電磁弁の基体上への第2弁体等の載置、基体上への圧力室形成部材の載置、圧力室形成部材上への第3弁体や付勢部材の載置、および圧力室形成部材上へのスプリング受け部の載置を第2弁口の中心および第3弁口の中心を通過する直線に沿って同様の作業手順で実施することができる。これにより、メイン弁および安全弁の組立て作業を容易に行うことができるため、電磁弁の製造コストを低減することができる。
【0018】
請求項4記載の電磁弁では、付勢部材受け部が、第3弁座が形成された圧力室形成部材とは別体に形成されて圧力室形成部材と一体化されると共に、圧力室形成部材に対して接する少なくとも2つの脚部が設けられて圧力室形成部材と一体化された状態において各脚部を除く部位が第3弁座に対する第3弁体の接離方向に沿って圧力室形成部材から離間させられている。
【0019】
したがって、請求項4記載の電磁弁によれば、圧力室内において通過制御対象流体が凍結し、圧力室から第3弁口を介して通過制御対象流体を流出させることができなくなっても、スプリング受け部を変形させることなく圧力室形成部材を変形させることができる。この結果、付勢部材が当接させられるスプリング受け部を十分な強度(十分に弾性率が低い状態)としつつ、圧力室内での通過制御対象流体の凍結時に圧力室形成部材を確実に変形させて電磁弁の構成部品等の破損を好適に回避することができる。
【0020】
請求項5記載の電磁弁によれば、圧力室形成部材を、付勢部材受け部の形成材料の弾性率よりも低い弾性率の形成材料で形成したことにより、圧力室内での通過制御対象流体の凍結膨張時に圧力室形成部材が容易に変形するため、電磁弁の構成部品等の破損を一層好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】電磁弁1の外観斜視図である。
図2】電磁弁1の断面図である。
図3】電磁弁1の平面図である。
図4】第2ブロック12とスプリング受け部44との間に設けられた隙間Gについて説明するための説明図である。
図5】安全弁4の弁口41hが開口された状態における電磁弁1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る電磁弁の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1~3に示す電磁弁1は、「電磁弁」の一例である「パイロット式電磁弁」であって、メイン弁2、パイロット弁3および安全弁4が一体的に形成されて、液体(「通過制御対象流体」の一例:一例として水道水)の通過を規制/許容することができるように構成されている。
【0024】
メイン弁2は、「メイン弁」の一例である「ダイヤフラム弁」であって、図2に示すように、弁座21、弁体22およびスプリング23を備えている。このメイン弁2は、圧力室Sp(ボディ10の第2ブロック12および弁体22によって形成される空間:「圧力室」の一例)内の圧力と、上流側空間Si(ボディ10の第1ブロック11に設けられた導入口Hiに連通させられている空間:「上流側空間」の一例)内の圧力との圧力差によって弁座21に対して弁体22が接離させられる構成が採用されている。
【0025】
弁座21は、「第2弁座」の一例であって、上記の第1ブロック11に形成されている。具体的には、本例の電磁弁1(メイン弁2)では、上流側空間Siから下流側空間So(第1ブロック11に設けられた排出口Hoに連通させられている空間:下流側空間」の一例)に水道水を流出させる(水道水の通過させる)ための弁口21h(「第2弁口」の一例)が第1ブロック11に形成されて弁座21が構成されている。なお、この電磁弁1では、第1ブロック11における弁口21hの形成部位(弁口21hの口縁部)が弁座21(第2弁座)に相当する。
【0026】
弁体22は、「第2弁体」の一例であって、本体部22aおよび弁膜部22bを備えている。この場合、本体部22aは、弁膜部22bの意図しない形状への変形を阻止する「基部(弁膜部押さえ)」として機能すると共に、スプリング23の一端部(同図における下端部)が当接させられる「スプリング当接部」として機能するように、弁膜部22bの形成材料の弾性率よりも高い弾性率の形成材料(一例として、PPS(Poly Phenylene Sulfide Resin))で円形浅皿状に形成されている。また、弁膜部22bは、「弁膜部」の一例であって、本体部22aの形成材料の弾性率よりも低い弾性率の形成材料(一例として、シリコーンゴム)で円形浅皿状に形成され、その外縁部が第1ブロック11と第2ブロック12との間に挟み込まれるようにしてメイン弁2に固定されている。また、本体部22aおよび弁膜部22bには、上流側空間Siから圧力室Spに水道水を流入させるための小孔22hが連通形成されている。
【0027】
スプリング23は、弁座21に向けて弁体22を付勢可能に一端部が弁体22(本体部22a)に当接させられると共に他端部が第2ブロック12に当接させられた状態でボディ10内(圧力室Sp内)に収容されている。この場合、本例の電磁弁1(メイン弁2)では、弁体22に形成された小孔22hに挿通させられて弁体22の弁座21に対する接離動に伴って小孔22hをクリニーングするニードル部23aがスプリング23と一体的に設けられている(スプリング23の一端部(図2において上部側の一端部)がニードル部23aとして機能するように小孔22hに挿通させられている)。
【0028】
パイロット弁3は、「パイロット弁」の一例であって、弁座31、弁体32およびアクチュエータ(ソレノイド)33を備えている。このパイロット弁3は、アクチュエータ33によって弁座31に対して弁体32が接離させられる構成が採用されている。弁座31は、「第1弁座」の一例であって、上記の第2ブロック12に形成されている。具体的には、本例の電磁弁1(パイロット弁3)では、圧力室Spから下流側空間Soに水道水を流出させるための弁口31h(「第1弁口」の一例)が第2ブロック12に形成されて弁座31が構成されている。なお、この電磁弁1では、第2ブロック12における弁口31hの形成部位(弁口31hの口縁部)が弁座31(第1弁座)に相当する。
【0029】
弁体32は、「第1弁体」の一例であって、アクチュエータ33における可動コア(可動鉄心:プランジャ)の先端部に取り付けられて、アクチュエータ33によって弁座31に対して接離させられる。アクチュエータ33は、「アクチュエータ」の一例であって、図示しない制御ユニットから電力線33aを介して供給される電力によって固定コア(固定鉄心:プラグナット)に対して可動コアを接離させることで弁座31に対して弁体32を接離させる。この場合、本例の電磁弁1では、ラッチ用のマグネットMが装着されたアクチュエータ33を備えてパイロット弁3が構成されている。なお、この種の「電磁弁」に採用される「アクチュエータ」の構成については公知のため、アクチュエータ33の構成に関する詳細な説明を省略する。
【0030】
安全弁4は、「安全弁」の一例であって、弁座41、弁体42、スプリング43およびスプリング受け部44を備えている。この安全弁4は、後述するように、電磁弁内における水道水の圧力(具体的には、圧力室Sp内の圧力)が予め規定された圧力を超えたときにスプリング43の付勢力に抗して弁体42が弁座41から離間させられて圧力室Sp内の水道水が流出させられる構成が採用されている。弁座41は、「第3弁座」の一例であって、上記の第2ブロック12に形成されている(第2ブロック12が「圧力室形成部材」に相当する構成の例)。具体的には、本例の電磁弁1(安全弁4)では、圧力室Spに連通させられた弁口41h(「第3弁口」の一例)が第2ブロック12に形成されて弁座41が構成されている。なお、この電磁弁1では、第2ブロック12における弁口41hの形成部位(弁口41hの口縁部)が弁座41(第3弁座)に相当する。
【0031】
弁体42は、「第3弁体」の一例であって、本体部42aおよびスプリング当接部42bを備えると共にOリング42cが装着されている。本体部42aは、弁座41に対して接離させられる部材であって、スプリング当接部42bの一端側(図2における下端部側)に固定されている。スプリング当接部42bは、スプリング43の一端部(同図における下端部)が当接させられる「スプリング当接部」として機能すると共に、第2ブロック12に設けられた後述の弁体ガイド部12a(「弁体ガイド部」の一例)の案内に従って弁体42を弁座41に対する接離方向に直動させるための「被ガイド部」として機能する。Oリング42cは、「密封部材」の一例であって、弁体42に装着されて弁体42の外周面と弁体ガイド部12aの内周面との間の隙間を密封することで、弁体ガイド部12aに対する弁体42のスライドを許容しつつ、電磁弁1からの水道水の漏出を阻止する。
【0032】
スプリング43は、「付勢部材」の一例であって、弁座41に向けて弁体42を付勢可能に一端部が弁体42(スプリング当接部42b)に当接させられる。この場合、スプリング43は、弁体42のスプリング当接部42bとスプリング受け部44とで挟まれて縮長された状態において、圧力室Sp内の圧力が上流側配管を介して供給される水道水の圧力と同程度のときに弁座41に対して弁体42を押し付けた状態(弁口41hが弁体42によって閉塞された状態)を維持でき、後述するように水道水の凍結膨張によって圧力室Sp内の圧力が過剰に上昇したときに弁座41からの弁体42の離脱を許容するようなバネレートのスプリングで構成されている。
【0033】
なお、本例の電磁弁1では、弁座41に対して弁体42(本体部42a)を押し付けている状態におけるスプリング43の付勢力が「予め規定された圧力」に対応する力となるようにスプリング43のバネレートや組込み状態における縮長量が規定されている。すなわち、本例の電磁弁1では、スプリング43によって弁座41に対して押し付けられている弁体42がスプリング43の付勢力に抗して弁座41から離間させられたときに弁口41hを介して弁体42(本体部42a)に加わる圧力が「予め規定された圧力」に相当する。
【0034】
スプリング受け部44は、スプリング43の他端部(同図における上端部:「付勢部材における第3弁体側の端部とは逆側の端部」の一例)が当接させられる「付勢部材受け部」の一例であって、円筒容器状に形成されている。このスプリング受け部44は、第2ブロック12とは別体に形成されて固定用ビス13によって第2ブロック12と一体化されている。より具体的には、本例の電磁弁1では、一例として、4本の固定用ビス13(図3参照)によってスプリング受け部44が第2ブロック12と共に第1ブロック11に固定されることでスプリング受け部44が第2ブロック12と一体化した状態となる構成が採用されている。
【0035】
また、スプリング受け部44には、各固定用ビス13を挿通させる部位に4つの脚部44a(「脚部」の一例:「少なくとも2つ」が4つの構成の例)が設けられている。これにより、図2,4に示すように、本例の電磁弁1では、スプリング受け部44が第2ブロック12と一体化された状態において各脚部44aの下面だけが第2ブロック12に接した状態(スプリング受け部44における各脚部44aを除く部位が弁座41に対する弁体42の接離方向に沿って第2ブロック12から離間させられた状態:第2ブロック12とスプリング受け部44における各脚部44aを除く部位との間に隙間Gが生じた状態)となっている。なお、本例の電磁弁1では、一例として、スプリング受け部44がPPSで形成され、スプリング受け部44が一体化される第2ブロック12がPOM(Poly Oxy Methylene)で形成されている(「圧力室形成部材が、付勢部材受け部の形成材料の弾性率よりも低い弾性率の形成材料で形成されている」との構成の一例)。
【0036】
また、本例の電磁弁1では、前述したように、弁体42を挿入可能な円筒状の弁体ガイド部12aが形成されている。この場合、本例の電磁弁1では、弁座41に対する弁体42の接離方向(図2,5に示す矢印A1,A2の方向)が、メイン弁2における弁座21に対する弁体22の接離方向(図2,5に示す矢印A1,A2の方向)と一致すると共に、弁口41hの中心が弁口21hの中心に対して上記の両接離方向おいて重なるよう(弁口41hの中心および弁口21hの中心が図2に示す一点鎖線L上に位置するように)に弁口41hが設けられている。これにより、本例の電磁弁1では、その製造時に、第1ブロック11上への弁体22やスプリング23の載置、第1ブロック11上への第2ブロック12の載置、第2ブロック12(弁体ガイド部12a)上への弁体42やスプリング43の載置、および第2ブロック12上へのスプリング受け部44の載置を一点鎖線Lに沿って同様の作業手順で実施することが可能となっている。また、スプリング受け部44および第2ブロック12を挿通させた固定用ビス13を第1ブロック11に対して締め込むことで、これらを容易に一体化させることが可能となっている。
【0037】
この電磁弁1の使用に際しては、上流側配管(供給源側配管:図示せず)を第1ブロック11の導入口Hiに接続すると共に、下流側配管(供給先側配管:図示せず)を排出口Hoに接続する(水道水の流路中に電磁弁1を設置する作業の実施)。この状態において上流側配管を介して水道水が供給されることで、導入口Hiから上流側空間Si内に水道水が流入する。なお、配管の接続作業(電磁弁1の設置作業)が完了したときには、その動作テストを兼ねてパイロット弁3を複数回に亘って開閉させることによって上流側空間Si内や下流側空間So内の空気が下流側空間Soに排出されて上流側空間Si内および圧力室Sp内が水道水で満たされた状態となる。
【0038】
また、この電磁弁1では、上流側配管(上流側空間Si)から下流側配管(下流側空間So)への水道水の通過を規制すべきときに、アクチュエータ33の可動コアが固定コアから離間させられた状態でマグネットMによってラッチされ、これにより、図2に示すように、パイロット弁3の弁体32が弁座31に向けて押し付けられて弁口31hが弁体32によって閉塞された状態となる。また、上記のように弁口31hが弁体32によって閉塞された状態においては、圧力室Sp内の圧力が上流側空間Si内の圧力と等しくなるため、スプリング23によって弁体22が弁座21に向けて押し付けられて弁体22(弁膜部22b)によって弁口21hが閉塞され(電磁弁1が閉状態に移行させられ)、水道水の通過が規制される。
【0039】
また、上流側配管(上流側空間Si)から下流側配管(下流側空間So)への水道水の通過を許容するときには、アクチュエータ33の可動コアが固定コアに接近(接触)させられた状態でマグネットMによってラッチされ、これにより、パイロット弁3の弁体32が弁座31から離間させられて弁口31hが開口された状態となる。この際には、圧力室Sp内の水道水が弁口31hから下流側空間So内に流出させられることで圧力室Sp内の圧力が上流側空間Si内の圧力よりも低くなるため、スプリング23の付勢力に抗して弁体22が弁座21から離間させられて弁口21hが開口され(電磁弁1が開状態に移行させられ)、水道水の通過が許容される。
【0040】
なお、上記のように電磁弁1が開状態に移行させられて上流側空間Si(導入口Hiに接続された上流側配管)から下流側空間So(排出口Hoに接続された下流側配管)に向かって水道水が流れた後に、電磁弁1が再び閉状態に移行させられたときに、上流側空間Si内や圧力室Sp内については、水道水で満たされた状態が維持されるが、下流側空間So内については、下流側配管の接続態様によって、水道水で満たされた状態が維持されたり、水道水が下流側配管に流出して下流側空間So内に水道水が存在しない状態(下流側空間So内に空気が存在する状態)となったりする。また、電磁弁1が閉状態および開状態のいずれの状態に移行させられているかや、下流側空間So内に水道水が存在するか否かを問わず、後述のように電磁弁1の設置場所が「通過制御対象流体(本例では水道水)」の凍結温度よりも十分に高い温度のときには、安全弁4が閉状態のまま維持されている。
【0041】
一方、前述したように、この種の「電磁弁」では、その設置場所が「通過制御対象流体(水道水)」の凍結温度を下回る温度となることがある。なお、以下の説明においては、電磁弁1の構成に関する理解を容易とするために、一例として、電磁弁1が閉状態に移行させられ、かつ下流側空間So内の水道水が下流側配管に流出して下流側空間So内に水道水が存在しない状態となっているものとする。
【0042】
上記のような状態において電磁弁1の設置場所が水道水の凍結温度に向かって徐々に温度低下したときには、上流側配管内、上流側空間Si内および圧力室Sp内の水道水が膨張する。なお、本明細書では、「通過制御対象流体(水道水)」の温度低下時に凍結温度に達する前から膨張率が高くなって体積が増加する現象、および「通過制御対象流体(水道水)」が液体から固体に変化することで体積が増加する現象を総称して「凍結膨張」という。
【0043】
この場合、上流側配管や電磁弁1が断熱材で覆われているか否か、およびどの部位がどの程度の断熱能力を有する断熱材で覆われているかなどにより、上流側配管内の水道水、上流側空間Si内の水道水、および圧力室Sp内の水道水の温度低下(凍結膨張)の推移は異なるが、一例として、上流側配管内、上流側空間Si内、および圧力室Sp内の順で水道水の温度が徐々に低下して上流側配管内で水道水が凍結したときには、まず、上流側配管内の水道水の凍結膨張によって上流側配管内の圧力が上昇し、上流側配管内の水道水が導入口Hiから上流側空間Si内に流入する。次いで、上流側配管内からの水道水の流入、および上流側空間Si内の水道水の凍結膨張によって上流側空間Si内の圧力が上昇し、上流側空間Si内の水道水が小孔22hを介して圧力室Sp内に流入する。
【0044】
この際に、本例では、電磁弁1が閉状態に移行させられていることで弁座31の弁口31hが弁体32よって閉塞されて圧力室Spから下流側空間Soへの水道水の流出が規制されているため、上流側空間Siからの水道水の流入、および圧力室Sp内の水道水の凍結膨張によって圧力室Sp内の圧力が上昇する。また、上記のような圧力上昇により、圧力室Sp内の圧力が、スプリング43の付勢力(スプリング43が弁体42を弁座41に向かって押し付けている力)を超えたときには、図5に示すように、弁体42がスプリング43の付勢力に抗して弁体ガイド部12a内を矢印A2の向きでスライドさせられて弁口41hが開口される。これにより、圧力室Sp内の水道水が弁口41hを介して圧力室Spの外に流出させられて圧力室Sp内の圧力が低下する。
【0045】
この際に、前述したように、本例の電磁弁1では、弁体42(スプリング当接部42b)と弁体ガイド部12aとの間の隙間がOリング42cによって密閉されている。これにより、弁口41hから流出された水道水は、第2ブロック12の弁体ガイド部12aと安全弁4の弁体42とで構成される貯水空間Ss内に貯水された状態が維持され、電磁弁1の外に漏出する事態が回避される。
【0046】
また、上記のような貯水空間Ssへの水道水の流出によって圧力室Sp内の圧力が低下することにより、上流側空間Si内の水道水が小孔22hを介して圧力室Sp内に流入して上流側空間Si内の圧力が低下する。さらに、圧力室Spへの水道水の流出によって上流側空間Si内の圧力が低下することにより、上流側配管内の水道水が導入口Hiを介して上流側空間Si内に流入して上流側配管内の圧力が低下する。この結果、安全弁4が閉状態から開状態に移行させられる以前の状態と比較して、圧力室Sp内、上流側空間Si内および上流側配管内のすべてにおいて圧力が低下する。これにより、電磁弁1の構成部品や上流側配管などに圧力上昇に伴う破損が生じる事態が好適に回避される。なお、安全弁4が開状態となっているこの時点において、貯水空間Ss内は、圧力室Sp内、上流側空間Si内および上流側配管内の圧力と同程度の圧力となっている。
【0047】
また、上記のように貯水空間Ss内に水道水が流出させられた状態において電磁弁1の設置場所が水道水の凍結温度よりも十分に高い温度まで温度上昇したときには、上流側配管内、上流側空間Si内および圧力室Sp内の水道水が収縮する。この際には、スプリング43の付勢力によって弁体42が弁座41に向かって矢印A1の向きでスライドさせられる結果、貯水空間Ss内の水道水が弁口41hから圧力室Sp内に流入させられて安全弁4が閉状態(弁体42が弁座41に当接させられて弁口41hが閉塞された状態)に移行させられる。
【0048】
また、上流側空間Si内の水道水の収縮、および貯水空間Ssから圧力室Sp内への水道水の流入によって圧力室Sp内の水道水が小孔22hから上流側空間Si内に流入すると共に、上流側配管内の水道水の収縮、および圧力室Spから上流側空間Siへの水道水の流入によって上流側空間Si内の水道水が導入口Hiから上流側配管内に流入する。これにより、圧力室Sp内、上流側空間Si内および上流側配管内が通常状態(温度低下による水道水の凍結膨張が生じていない状態)の圧力に復帰する。
【0049】
一方、上記の例とは相違するが、電磁弁1の設置場所が水道水の凍結温度以下の非常に低い温度まで温度低下したときに、電磁弁1内(上流側空間Siおよび圧力室Sp内)の温度が凍結温度に達するまでは、上記の動作例のように安全弁4が開状態に移行させられて圧力室Spから貯水空間Ssに水道水が流出する。また、電磁弁1内の温度が凍結温度以下まで温度低下したときには、上流側空間Si内、圧力室Sp内および貯水空間Ss内において水道水が凍結膨張する。
【0050】
この際に、前述したように、本例の電磁弁1では、第2ブロック12がスプリング受け部44の形成材料(本例では、PPS)の弾性率よりも低い弾性率の形成材料(本例では、POM)で形成されてスプリング受け部44よりも弁体42の方が変形し易くなっている。また、本例の電磁弁1では、スプリング受け部44が第2ブロック12と一体化された状態において各脚部44aの下面だけが第2ブロック12に接した状態となり、スプリング受け部44における各脚部44aを除く部位が第2ブロック12から離間させられて隙間Gが生じた状態となるように構成されている。したがって、圧力室Sp内において水道水が凍結膨張したときには、第2ブロック12における圧力室Spの形成部位が、スプリング受け部44側における脚部44a以外の部位に向かって(圧力室Spの外側に向かって)撓むようにして変形する結果、第2ブロック12やスプリング受け部44が第1ブロック11から外れたり、第2ブロック12やスプリング受け部44が破損したりする事態が好適に回避される。
【0051】
また、貯水空間Ss内の水道水が凍結膨張したときには、弁体42がスプリング43の付勢力に抗して弁座41(第2ブロック12)からさらに離間させられる結果、弁体42や弁体ガイド部12aの破損も好適に回避される。
【0052】
さらに、上記のように圧力室Sp内や貯水空間Ss内において水道水が凍結した状態において電磁弁1の設置場所が水道水の凍結温度よりも高い温度まで温度上昇したときには、凍結している水道水の融解によって水道水(氷)が収縮する結果、圧力室Sp内や貯水空間Ss内の圧力が低下する。この際には、変形が生じていた第2ブロック12が弾性復帰すると共に、弁座41から離間させられるようにスライドさせられていた弁体42がスプリング43の付勢力によって弁座41に向けてスライドさせられる。また、電磁弁1の設置場所がさらに温度上昇したときには、前述の動作説明と同様にして、圧力室Sp内、上流側空間Si内および上流側配管内が通常状態(温度低下による水道水の凍結膨張が生じていない状態)の圧力に復帰させられる。
【0053】
なお、上記のいずれの例とも相違するが、例えば、下流側配管内において水道水が凍結したときには、上記の例における上流側配管内での水道水の凍結膨張が生じたときと同様にして、下流側空間So内の圧力が上昇し、下流側空間So内の水道水が弁口31hを介して圧力室Sp内に流入する結果、安全弁4が開状態に移行させられたり、第2ブロック12が変形させられたりすることとなる。これにより、下流側配管内に水道水が存在する状態で電磁弁1の設置場所が凍結温度以下まで温度低下したときにも、上流側配管、下流側配管および電磁弁1の破損を好適に回避することが可能となっている。
【0054】
このように、この電磁弁1では、圧力室Spに連通させられた弁口41hが設けられた弁座41、弁座41に対して接離させられる弁体42、弁体42を弁座41に向けて付勢するスプリング43、およびスプリング43における弁体42側の端部とは逆側の端部が当接させられるスプリング受け部44を有すると共に、電磁弁1内における「通過制御対象流体(上記の例では水道水)」の圧力が予め規定された圧力を超えたときにスプリング43の付勢力に抗して弁体42が弁座41から離間させられて圧力室Sp内の「通過制御対象流体」を弁口41hから流出させる安全弁4を備えている。
【0055】
したがって、この電磁弁1によれば、上流側配管内、上流側空間Si内、圧力室Sp内、およびそれらに加えて下流側空間So内や下流側配管内において「通過制御対象流体」が凍結温度まで温度低下して「通過制御対象流体」が凍結膨張したとしても、圧力室Sp内の圧力がスプリング43の付勢力を超えたときに弁体42が弁座41から離間させられて弁口41hが開口され、これにより、圧力室Spから水道水が流出して圧力室Sp内の圧力が低下し、上流側空間Si内や上流側配管内、および下流側空間So内や下流側配管内の圧力も低下するため、上流側配管および下流側配管や電磁弁1の構成部品が破損したり、上流側配管および下流側配管と電磁弁1との接続部位から「通過制御対象流体」が漏出したりする事態を確実に回避することができる。
【0056】
また、この電磁弁1によれば、安全弁4が、弁体42を挿入可能な筒状の弁体ガイド部12aが弁座41と一体的に形成されると共に、弁体42の外周面と弁体ガイド部12aの内周面との間の隙間を密封するOリング42cを備えたことにより、弁口41hを介して圧力室Spから流出した「通過制御対象流体」が電磁弁1の外に漏出して電磁弁1の周囲に「通過制御対象流体」による濡れが生じる事態を好適に回避することができ、また、電磁弁1の設置場所の温度が凍結温度よりも十分に高い温度まで上昇して圧力室Sp内の圧力が低下したときに、弁口41hから流出した「通過制御対象流体」を圧力室Sp内に流入させることができる。
【0057】
さらに、この電磁弁1によれば、メイン弁2をダイヤフラム弁で構成すると共に、弁座41に対する弁体42の接離方向が弁座21に対する弁体22の接離方向と一致すると共に弁口41hの中心が弁口21hの中心に対して上記の両接離方向おいて重なるように弁口41hを設けて安全弁4を構成したことにより、電磁弁1の製造時に、第1ブロック11上への弁体22やスプリング23の載置、第1ブロック11上への第2ブロック12の載置、第2ブロック12(弁体ガイド部12a)上への弁体42やスプリング43の載置、および第2ブロック12上へのスプリング受け部44の載置を一点鎖線Lに沿って同様の作業手順で実施することができる。これにより、メイン弁2および安全弁4の組立て作業を容易に行うことができるため、電磁弁1の製造コストを低減することができる。
【0058】
また、この電磁弁1では、スプリング受け部44が、弁座41が形成された第2ブロック12とは別体に形成されて第2ブロック12と一体化されると共に、第2ブロック12に対して接する少なくとも2つの脚部44a(本例では、4つの脚部44a)が設けられて第2ブロック12と一体化された状態において各脚部44aを除く部位が弁座41に対する弁体42の接離方向に沿って第2ブロック12から離間させられている。
【0059】
したがって、この電磁弁1によれば、圧力室Sp内において「通過制御対象流体」が凍結し、圧力室Spから弁口41hを介して「通過制御対象流体」を流出させることができなくなっても、スプリング受け部44を変形させることなく第2ブロック12を変形させることができる。この結果、スプリング43が当接させられるスプリング受け部44を十分な強度(十分に弾性率が低い状態)としつつ、圧力室Sp内での「通過制御対象流体」の凍結時に第2ブロック12を確実に変形させて電磁弁1の構成部品等の破損を好適に回避することができる。
【0060】
さらに、この電磁弁1によれば、第2ブロック12を、スプリング受け部44の形成材料の弾性率よりも低い弾性率の形成材料で形成したことにより、圧力室Sp内での「通過制御対象流体」の凍結膨張時に第2ブロック12が容易に変形するため、電磁弁1の構成部品等の破損を一層好適に回避することができる。
【0061】
なお、「電磁弁」の構成は、上記の電磁弁1の構成の例に限定されない。例えば、弁体42(本体部42a)と弁体ガイド部12aとの隙間を密閉するOリング42cを備えた構成を例に挙げて説明したが、例えば、「第3弁口」から流出した「通過制御対象流体(水道水)」を貯留可能な容器体を「スプリング受け部」内に貯留したり、電磁弁1から漏出した「通過制御対象流体(水道水)」を貯留可能な貯留部を別途設けたりしたときには「密閉部材」を不要とすることもできる。
【0062】
また、弁座41に対する弁体42の接離方向が弁座21に対する弁体22の接離方向と一致すると共に弁口41hの中心が弁口21hの中心に対して両接離方向おいて重なるように(一点鎖線L上に位置するように)弁口41hを設けて安全弁4を構成した例について説明したが、「第3弁座」に対する「第3弁体」の接離方向が「第2弁座」に対する「第2弁体」の接離方向と一致すると共に「第3弁口」の中心が「第2弁口」の中心に対して両接離方向おいて重ならないように「第3弁口」を設けたり、「第3弁座」に対する「第3弁体」の接離方向が「第2弁座」に対する「第2弁体」の接離方向と一致しないように「第3弁口」を設けたりすることもできる(いずれも図示せず)。
【0063】
さらに、4つの脚部44aをスプリング受け部44に設けた構成を例に挙げて説明したが、「脚部」の数は、2つ、3つ、または5つ以上の任意の数とすることができる。また、「スプリング受け部」に「脚部」を設けない構成(電磁弁1における隙間Gに相当する隙間を生じさせない構成)を採用することもできる。さらに、圧力室形成部材を、付勢部材受け部の形成材料の弾性率よりも高い弾性率の形成材料で形成したり、圧力室形成部材を、付勢部材受け部の形成材料の弾性率と同じ弾性率の形成材料で形成したりすることもできる。これらの構成を採用した場合においても、「安全弁」を設けたことで「通過制御対象流体」の凍結膨張に起因する「電磁弁」の構成部品や配管の破損を十分に回避することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 電磁弁
2 メイン弁
3 パイロット弁
4 安全弁
10 ボディ
11 第1ブロック
12 第2ブロック
12a 弁体ガイド部
13 固定用ビス
21,31,41 弁座
21h,31h,41h 弁口
22,32,42 弁体
22a,42a 本体部
22b 弁膜部
22h 小孔
23,43 スプリング
23a ニードル部
33 アクチュエータ
33a 電力線
42b スプリング当接部
42c Oリング
44 スプリング受け部
44a 脚部
G 隙間
Hi 導入口
Ho 排出口
L 一点鎖線
M マグネット
Si 上流側空間
So 下流側空間
Sp 圧力室
Ss 貯水空間
図1
図2
図3
図4
図5