(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040510
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/08 20060101AFI20220304BHJP
C02F 3/10 20060101ALI20220304BHJP
C02F 3/34 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
C02F3/08 B
C02F3/10 Z
C02F3/34 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145266
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】澤田 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】江田 庸宏
(72)【発明者】
【氏名】小寺 博也
【テーマコード(参考)】
4D003
4D040
【Fターム(参考)】
4D003AB02
4D003BA03
4D003EA19
4D003FA02
4D040DD03
4D040DD14
4D040DD31
(57)【要約】
【課題】低コストで簡便に硝化効率の低下を充分に抑えつつ、硝化菌担持担体を硝化槽から抜き出すことができる水処理方法の提供。
【解決手段】硝化菌を担持する担体が充填された硝化槽にて被処理水を生物硝化処理する水処理方法であって、下記工程(i)~工程(iii)を有する、水処理方法。
工程(i):前記硝化槽の有効容積に対して、嵩体積が30体積%超、65体積%未満となるように前記硝化槽に充填された前記担体を前記硝化槽内で馴養し、硝化菌担持担体とする工程。
工程(ii):前記硝化菌担持担体を、前記硝化槽の有効容積に対する前記硝化菌担持担体の嵩体積が30体積%以上を維持するように残しつつ、前記硝化槽から抜き出す工程。
工程(iii):前記工程(ii)で抜き出した硝化菌担持担体を、別の生物硝化処理に用いる工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝化菌を担持する担体が充填された硝化槽にて被処理水を生物硝化処理する水処理方法であって、
下記工程(i)~工程(iii)を有する、水処理方法。
工程(i):前記硝化槽の有効容積に対して、嵩体積が30体積%超、65体積%未満となるように前記硝化槽に充填された前記担体を前記硝化槽内で馴養し、硝化菌担持担体とする工程。
工程(ii):前記硝化菌担持担体を、前記硝化槽の有効容積に対する前記硝化菌担持担体の嵩体積が30体積%以上を維持するように残しつつ、前記硝化槽から抜き出す工程。
工程(iii):前記工程(ii)で抜き出した硝化菌担持担体を、別の生物硝化処理に用いる工程。
【請求項2】
前記工程(ii)において、エアリフトポンプを用いて前記硝化菌担持担体、及び前記硝化槽にて処理された処理水を前記硝化槽から抜き出す、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記担体がスポンジ担体である、請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記担体の形状が、短辺が3~10mmの角型である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記工程(i)において、前記担体を前記硝化槽内で4日間以上馴養する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水等の被処理水は、アンモニア性窒素を含むことが多い。アンモニア性窒素を含む被処理水を飲用化するときには、アンモニア性窒素を低減することが行われる。
アンモニア性窒素を含む被処理水を処理する方法として、例えば、アンモニア性窒素を含む被処理水に対し、担体に硝化菌が担持された硝化菌担持担体を利用する接触酸化法による硝化処理を行う水処理方法が提案されている。
【0003】
硝化菌担持担体を用いて被処理水を処理する場合、硝化菌担持担体を既存の水処理システムの硝化槽から抜き出し、新しい水処理システムの硝化槽に投入する、すなわち硝化菌を殖種することが行われる。そのため、硝化菌担持担体を硝化槽から抜き出すことがよく行われる。
しかし、硝化菌の担持量が不充分な状態で硝化菌担持担体を硝化槽から抜き出したり、一度に多量の硝化菌担持担体を硝化槽から抜き出したりした場合、硝化槽に残る硝化菌の絶対量が大幅に不足する。硝化菌は増殖速度が低いため、担体の表層及び内部で硝化菌が充分に増殖するまでの間、硝化槽における硝化効率が大きく低下してしまう。
【0004】
そこで、硝化効率の低下を充分に抑えつつ、硝化菌担持担体を硝化槽から抜き出すことができる水処理方法として、被処理水を生物硝化処理した後にイオン交換樹脂にてイオン交換処理する方法が提案されている(特許文献1)。
特許文献1に記載の水処理方法では、硝化菌担持担体を硝化槽から抜き出した後の硝化槽における硝化効率の低下を、イオン交換処理により補うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の水処理方法では、生物硝化処理の後にイオン交換処理を行うため、手間や運転コストがかかりやすい。
本発明は、低コストで簡便に硝化効率の低下を充分に抑えつつ、硝化菌担持担体を硝化槽から抜き出すことができる水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 硝化菌を担持する担体が充填された硝化槽にて被処理水を生物硝化処理する水処理方法であって、下記工程(i)~工程(iii)を有する、水処理方法。
工程(i):前記硝化槽の有効容積に対して、嵩体積が30体積%超、65体積%未満となるように前記硝化槽に充填された前記担体を前記硝化槽内で馴養し、硝化菌担持担体とする工程。
工程(ii):前記硝化菌担持担体を、前記硝化槽の有効容積に対する前記硝化菌担持担体の嵩体積が30体積%以上を維持するように残しつつ、前記硝化槽から抜き出す工程。
工程(iii):前記工程(ii)で抜き出した硝化菌担持担体を、別の生物硝化処理に用いる工程。
[2] 前記工程(ii)において、エアリフトポンプを用いて前記硝化菌担持担体、及び前記硝化槽にて処理された処理水を前記硝化槽から抜き出す、前記[1]の水処理方法。
[3] 前記担体がスポンジ担体である、前記[1]又は[2]の水処理方法。
[4] 前記担体の形状が、短辺が3~10mmの角型である、前記[1]~[3]のいずれか1つの水処理方法。
[5] 前記工程(i)において、前記担体を前記硝化槽内で4日間以上馴養する、前記[1]~[4]のいずれか1つの水処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低コストで簡便に硝化効率の低下を充分に抑えつつ、硝化菌担持担体を硝化槽から抜き出すことができる水処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の水処理方法に用いる水処理システムの一例を模式的に示す概略構成図である。
【
図2】実施例1において硝化菌担持担体を第1の硝化槽から抜き出した後の被処理水、第1の処理水及び第2の処理水のアンモニア性窒素濃度の時間変化を示すグラフである。
【
図3】比較例1において硝化菌担持担体を第1の硝化槽から抜き出した後の被処理水、第1の処理水及び第2の処理水のアンモニア性窒素濃度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る水処理方法の一実施形態を挙げ、
図1を適宜参照しながら詳述する。
なお、以下の説明で用いる各図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
また、本明細書において、「アンモニア性窒素」とは、水中にアンモニウム塩として含まれている窒素のことであり、アンモニア態窒素ともいう。
また、本明細書において、担体に硝化菌が担持されたものを「硝化菌担持担体」ともいう。
【0011】
<水処理システム>
図1は、本発明に係る水処理方法に用いる水処理システムの一例を模式的に示す概略構成図である。
この例の水処理システム1は、被処理水供給流路100を通って原水槽(図示略)から供給された被処理水を生物硝化処理して第1の処理水とする第1の硝化槽10と;第1の処理水移送流路101を通って第1の硝化槽10から移送された第1の処理水を生物硝化処理して第2の処理水とする第2の硝化槽20と;被処理水供給流路100の途中に設けられた移送ポンプ(図示略)と;第1の硝化槽10内に浸漬され、第1の硝化槽10からを抜き出すエアリフトポンプ30とを備える。
なお、後述する散気装置のブロア及び空気量調整手段、移送ポンプ、エアリフトポンプ30等は、これらの動作を制御する制御部(図示略)に電気的に接続されている。
【0012】
(第1の硝化槽)
第1の硝化槽10は、担体200が充填された容器状の槽本体11と;槽本体11に第1の処理水移送流路101が接続する箇所に設けられた、担体200や硝化菌担持担体と第1の処理水とを分離するための固液分離装置12と;槽本体11の底部に挿入された散気装置13とを備える、いわゆる流動床型好気生物反応槽である。
【0013】
固液分離装置12としては、例えばスクリーン等が挙げられる。
散気装置13は、槽本体11の底部に位置する散気部14と;散気部14に空気を供給する空気供給管15と;空気供給管15の途中に設けられたブロア16と;散気部14とブロア16との間の空気供給管15の途中に設けられた空気量調整手段17とを備える。
散気部14としては、例えば散気孔(図示略)が形成された、散気管、散気球等が挙げられる。
空気量調整手段17としては、例えばゲート弁、バタフライ弁等が挙げられる。
【0014】
(第2の硝化槽)
第2の硝化槽20は、担体200が充填された容器状の槽本体21と;槽本体21に第2の処理水移送流路102が接続する箇所に設けられた、担体200や硝化菌担持担体と第2の処理水とを分離するための固液分離装置22と;槽本体21の底部に挿入された散気装置23とを備える、いわゆる流動床型好気生物反応槽である。
【0015】
固液分離装置22としては、例えばスクリーン等が挙げられる。
散気装置23は、槽本体21の底部に位置する散気部24と;散気部24に空気を供給する空気供給管25と;空気供給管25の途中に設けられたブロア26と;散気部24とブロア26との間の空気供給管25の途中に設けられた空気量調整手段27とを備える。
散気部24としては、例えば散気孔(図示略)が形成された、散気管、散気球等が挙げられる。
空気量調整手段27としては、例えばゲート弁、バタフライ弁等が挙げられる。
【0016】
(エアリフトポンプ)
エアリフトポンプ30は、送気手段(図示略)と;下端が下方に開放した吸引口とされた揚水管31と;上端が送気手段に接続し、下端が揚水管31の下端近傍に接続する送気管32と;揚水管31の上端近傍から側方に延びる吐出管33とを備える。
【0017】
(担体)
担体200は、被処理水に含まれるアンモニア性窒素を生物硝化するための微生物、つまり硝化菌を担持するためのものである。第1の硝化槽10及び第2の硝化槽20に担体200が充填されていることで、第1の硝化槽10及び第2の硝化槽20内の硝化菌が担体200に担持されて増殖し、硝化菌濃度を高めることができる。
【0018】
担体としては、担体の表面及び内部に硝化菌を担持できる、すなわち多くの硝化菌を担持でき、硝化効率が向上する点から、多孔質のものが好ましい。その中でも特に、硝化菌の担持を良好に維持でき、硝化効率を高めることができ、かつポンプや配管の損傷を最小限に抑制できる点から、スポンジ担体がより好ましい。
スポンジ担体の材料としては、例えばポリビニールアルコール、ポリスチレンゴム、ポリウレタン等が挙げられる。
【0019】
担体の形状としては、例えば角型(例えば直方体、立方体等)、球体、筒体、糸状体等が挙げられる。これらの中でも成形しやすい点から角型が好ましく、立方体が特に好ましい。
角型の担体の短辺は3~10mmが好ましく、3~7mmがより好ましく、3~6mmがさらに好ましく、3~5mmが特に好ましい。短辺が上記下限値以上であれば、硝化菌を充分に担持できる。短辺が上記上限値以下であれば、第1の硝化槽10や第2の硝化槽20内で流動しやすい。また、固液分離装置12や固液分離装置22にて分離しやすくなる。
角型の担体の長辺については特に制限されないが、3~10mmが好ましく、3~7mmがより好ましく、3~6mmがさらに好ましく、3~5mmが特に好ましい。
【0020】
硝化菌としては、アンモニア性窒素の生物硝化に用いられる公知の硝化菌が挙げられる。Nitrosobactorを代表とする硝化菌は、独立栄養であり、基本的には炭酸ガスを唯一の炭素源としており、有機物基質を必要とせずアンモニアの存在下で生育できるが、その増殖速度は極めて小さい。したがって、生物硝化反応を高く保持するためには、硝化菌を硝化槽内に大量に保持する操作が必要となる。よって、硝化菌を、浮遊菌体ではなく担体に担持した状態で保持することが好ましい。
硝化菌の担体への担持方法としては、例えば、既存の水処理システムの硝化槽に担体を投入して担体の表面等に硝化菌を増殖させる方法等が挙げられる。
【0021】
<水処理方法>
本発明の水処理方法は、担体が充填された硝化槽にて被処理水を生物硝化処理する方法である。
被処理水は、アンモニア性窒素を含むことが多く、本実施形態に係る水処理方法はアンモニア性窒素を含む被処理水を生物硝化処理する場合に特に好適である。
被処理水としては特に限定されず、例えば地下水、河川水、湖沼水等が挙げられ、地下水が好ましい。地下水としては、例えば井戸水、温泉水、湧き水、鉱水、鉱泉水等が挙げられる。
【0022】
また、硝化槽から硝化菌が担持された担体(硝化菌担持担体)を抜き出すときには、下記工程(i)~工程(iii)を行う。すなわち、本発明の水処理方法は、下記工程(i)~工程(iii)を有する。
工程(i):前記硝化槽の有効容積に対して、嵩体積が30体積%超、65体積%未満となるように前記硝化槽に充填された前記担体を前記硝化槽内で馴養し、硝化菌担持担体とする工程。
工程(ii):前記硝化菌担持担体を、前記硝化槽の有効容積に対する前記硝化菌担持担体の嵩体積が30体積%以上を維持するように残しつつ、前記硝化槽から抜き出す工程。
工程(iii):前記工程(ii)で抜き出した硝化菌担持担体を、別の生物硝化処理に用いる工程。
【0023】
以下、水処理システム1を用いた水処理方法の一例について説明する。なお、本実施形態の水処理方法では、第1の硝化槽10から硝化菌担持担体を抜き出す。
被処理水供給流路100の途中に設けられた移送ポンプを駆動させて、被処理水を、原水槽(図示略)から被処理水供給流路100を通って第1の硝化槽10に供給し、被処理水を第1の硝化槽10に貯める。さらに、第1の硝化槽10から排出された第1の処理水を、第1の処理水移送流路101を通って第2の硝化槽20に移送し、第1の処理水を第2の硝化槽20に貯める。
【0024】
担体200を、水処理システム1の第1の硝化槽10及び第2の硝化槽20に充填する。
第1の硝化槽10における担体200の充填率は、第1の硝化槽10の有効容積に対して、担体200の嵩体積が30体積%超、65体積%未満となる量であり、好ましくは35~60体積%であり、より好ましくは40~60体積%である。
第1の硝化槽10において、担体200の嵩体積が上記下限値以上であれば、第1の硝化槽10から硝化菌担持担体を抜き出した後も硝化効率を良好に維持できる。また、第1の硝化槽10内での担体200の流動性にも優れる。第1の硝化槽10において、担体200の嵩体積が上記上限値以下であれば、担体200が第1の硝化槽10内において旋回しやすく、硝化菌と被処理水とが充分に接触し、硝化反応速度の低下を抑制できる。また、担体200を第1の硝化槽10内で流動させる際の消費エネルギーの上昇を抑制できる。
【0025】
第2の硝化槽20における担体200の充填率は特に制限されないが、第2の硝化槽20の有効容積に対して、担体200の嵩体積が20体積%以上、65体積%未満となる量が好ましく、より好ましくは30体積%超、65体積%未満となる量であり、さらに好ましくは35~60体積%であり、特に好ましくは40~60体積%である。
第2の硝化槽20において、担体200の嵩体積が上記下限値以上であれば、第1の処理水を充分に生物硝化処理できる。第2の硝化槽20において、担体200の嵩体積が上記上限値以下であれば、担体200が第2の硝化槽20内において旋回しやすく、硝化菌と第1の処理水とが充分に接触し、硝化反応速度の低下を抑制できる。また、担体200を第2の硝化槽20内で流動させる際の消費エネルギーの上昇を抑制できる。
なお、本発明において「硝化槽の有効容積」とは、硝化槽に収容されている液(被処理水又は第1の処理水)の容積である。
また、本発明において「嵩体積」とは、空隙部を含む見かけの体積である。
【0026】
第1の硝化槽10に被処理水を予め設定された水量で供給しつつ、散気装置13を駆動させて、散気部14から第1の硝化槽10内に空気を予め設定された空気量で散気する。
第1の硝化槽10の底部から空気を散気すると、第1の硝化槽10内に上昇流及び下降流からなる旋回流が生じ、第1の硝化槽10の被処理水内で担体200が自由に流動する。
旋回流における上昇流の流速は、0.1~0.5m/sが好ましい。
散気装置13の散気部14から散気される空気量は、空気量調整手段17によって任意の空気量に調整できる。
【0027】
第1の硝化槽10から固液分離装置12を通って排出された第1の処理水を、第1の処理水移送流路101を通って第2の硝化槽20に移送しつつ、散気装置23を駆動させて、散気部24から第2の硝化槽20内に空気を予め設定された空気量で散気する。
第2の硝化槽20の底部から空気を散気すると、第2の硝化槽20内に上昇流及び下降流からなる旋回流が生じ、第2の硝化槽20の第1の処理水内で担体200が自由に流動する。
旋回流における上昇流の流速は、0.1~0.5m/sが好ましい。
散気装置23の散気部24から散気される空気量は、空気量調整手段27によって任意の空気量に調整できる。
【0028】
第1の硝化槽10においては、酸素を含む空気が散気装置13の散気部14から供給される。第1の硝化槽10内に酸素が供給されると、被処理水中のアンモニア性窒素は、第1の硝化槽10内で硝化菌によってアンモニア酸化(硝化)されて硝酸になる。このようにして、アンモニア性窒素を含む被処理水を第1の硝化槽10で処理して第1の処理水とする。
第2の硝化槽20においては、酸素を含む空気が散気装置23の散気部24から供給される。第2の硝化槽20内に酸素が供給されると、第1の処理水中に残存するアンモニア性窒素は、第2の硝化槽20内で硝化菌によってアンモニア酸化(硝化)されて硝酸になる。このようにして、アンモニア性窒素を含む第1の処理水を第2の硝化槽20で処理して第2の処理水とする。
アンモニア酸化は、下記式で表される。
NH4
+ + 2O2 + HCO3
- → HNO3 + H2CO3 + H2O
【0029】
また、第1の硝化槽10に被処理水を連続的に供給することで、担体に硝化菌が担持され、増殖する。すなわち、第1の硝化槽10内で担体200は馴養され、硝化菌担持担体となる(工程(i))。また、第2の硝化槽20内でも担体200は馴養され、硝化菌担持担体となる。
工程(i)において、担体を第1の硝化槽10内で4日間以上馴養することが好ましい。馴養期間が4日以上であれば、硝化菌が充分に増殖する。
硝化菌は、担体200の少なくとも表面に担持される。担体200が多孔質の場合は、担体200の内部にも硝化菌が担持されていてもよい。
【0030】
第1の硝化槽10内で担体200を馴養した後、馴養した担体200、すなわち硝化菌担持担体を抜き出す必要が生じたときには、第1の硝化槽10から硝化菌担持担体を抜き出す。具体的には作業者が手動にて、又は制御装置(図示略)によって自動にて、エアリフトポンプ30を駆動させ、第1の硝化槽10内の硝化菌担持担体を、第1の硝化槽10の有効容積に対する硝化菌担持担体の嵩体積が30体積%以上を維持するように残しつつ、第1の硝化槽10から抜き出す(工程(ii))。第1の硝化槽10から硝化菌担持担体を抜き出す際は、被処理水の第1の硝化槽10への供給を続けてもよいし、供給を停止してもよい。
硝化菌担持担体を第1の硝化槽10から抜き出す際に、第1の硝化槽10の有効容積に対する硝化菌担持担体の嵩体積が30体積%以上を維持するように残すことで、硝化菌担持担体を抜き出した後の硝化効率の低下を抑制できる。
なお、硝化菌の大きさに対して担体200ははるかに大きいので、担体200に硝化菌が担持しても嵩体積はほとんど変わらない。すなわち、担体200の嵩体積と硝化菌担持担体の嵩体積はほぼ同じである。
【0031】
エアリフトポンプ30においては、送気手段から供給された空気が、送気管32を通って揚水管31の下端近傍から揚水管31に供給され、揚水管31内を上昇する。この際、揚水管31の下端の吸引口から、硝化菌担持担体を含む第1の処理水が吸い上げられ、揚水管31内を上昇する空気と混合しながら上昇する。揚水管31内を上昇した硝化菌担持担体を含む第1の処理水と空気との混合物は、揚水管31の上端近傍から側方に延びる吐出管33から吐出される。このようにして、第1の硝化槽10から硝化菌担持担体が抜き出される。予め設定された量の硝化菌担持担体を抜き出したら、エアリフトポンプ30を停止、すなわち送気手段からの空気の供給を停止することによって、第1の硝化槽10からの硝化菌担持担体の抜き出しを停止する。
第1の硝化槽10から硝化菌担持担体を抜き出す際に被処理水の第1の硝化槽10への供給を停止した場合は、供給を再開する。
【0032】
抜き出した硝化菌担持担体は、別の生物硝化処理に用いられる(工程(iii))。
第2の硝化槽20から固液分離装置22を通って排出された第2の処理水は、第2の処理水移送流路102を通って水処理システム1の外部に排出される。
【0033】
<作用効果>
以上説明した本発明の水処理方法は、上述した工程(i)~工程(iii)を有するので、硝化菌担持担体を抜き出した後の硝化槽中には、この硝化槽の有効容積に対して、嵩体積が30体積%以上の硝化菌担持担体が残っている。よって、硝化菌担持担体を硝化槽から抜き出した後の硝化槽における硝化効率の低下を抑制できる。
しかも、本発明の水処理方法では、硝化菌担持担体を抜き出した後の硝化槽中には嵩体積が30体積%以上の硝化菌担持担体が残っているので、生物硝化処理の後にイオン交換処理を行う必要がない。また、硝化菌担持担体を抜き出した後、生物硝化処理を継続する上では、硝化菌担持担体を抜き出した後の硝化槽に、硝化菌が担持されていない担体を充填する必要もない。よって、本発明の水処理方法によれば、低コストで簡便に硝化効率の低下を充分に抑えつつ、硝化菌担持担体を硝化槽から抜き出すことができる。
ただし、硝化菌担持担体を抜き出した後の硝化槽から、再度、硝化菌担持担体を抜き出す場合には、硝化槽から抜き出した硝化菌担持担体とほぼ同量の、硝化菌が担持されていない担体を、硝化菌担持担体を抜き出した後の硝化槽に充填し、馴養した後に、硝化菌担持担体を抜き出すことが好ましい。硝化菌が担持されていない担体を硝化槽に充填する際には、担体と硝化菌担持担体の合計の嵩体積が、硝化槽の有効容積に対して30体積%超、65体積%未満となる量とする。
【0034】
<他の実施形態>
本発明の水処理方法は、上述した実施形態に限定されない。
図示例の水処理システム1は、2つの硝化槽を備えているが、硝化槽の数は、2つに限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
また、図示例の水処理システム1では、第1の硝化槽10のみから硝化菌担持担体を抜き出しているが、第2の硝化槽20のみから硝化菌担持担体を抜き出してもよいし、第1の硝化槽10及び第2の硝化槽20の両方から硝化菌担持担体を抜き出してもよい。第2の硝化槽20から硝化菌担持担体を抜き出す場合、第2の硝化槽20における担体200の充填率は、第2の硝化槽20の有効容積に対して、担体200の嵩体積が30体積%超、65体積%未満となる量とする。また、硝化菌担持担体を、第2の硝化槽20の有効容積に対する硝化菌担持担体の嵩体積が30体積%以上を維持するように残しつつ、第2の硝化槽20から抜き出す。さらに、第2の硝化槽20内にて担体200を4日間以上馴養させた後に、第2の硝化槽20から硝化菌担持担体を抜き出すことが好ましく、その際にはエアリフトポンプを用いることが好ましい。
水処理システムが硝化槽を3つ以上備える場合、いずれの硝化槽から硝化菌担持担体を抜き出してもよいが、硝化菌担持担体を抜き出す硝化槽において、上述した工程(i)~工程(iii)を行う。
【0035】
散気装置は、図示例のものに限定されず、公知のものを採用できる。
硝化槽から硝化菌担持担体を抜き出すポンプは、エアリフトポンプに限定されないが、ポンプとしては、エネルギー効率が高く、装置を簡素化できること、及び硝化菌担持担体を破砕しにくい点からは、エアリフトポンプが好ましい。
【0036】
図示例の水処理システム1において、被処理水供給流路100の途中に、第1の硝化槽10に供給される被処理水の水量を測定する水流量測定装置(図示略)を設けてもよい。水流量測定装置としては、例えばローターメータ、電磁流量計等が挙げられる。
また、第1の処理水移送流路101、第2の処理水移送流路102の途中に、処理水のアンモニア濃度又はアンモニア性窒素濃度を測定する濃度測定装置(図示略)を設けてもよい。濃度測定装置50としては、例えばイオン選択性センサ等が挙げられる。濃度測定装置は、第1の硝化槽10、第2の硝化槽20に直接浸漬されていてもよい。
【実施例0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
水処理システムとして、
図1に示す水処理システム1と同様のものを用意した。
硝化槽の槽本体としては、完全混合槽型の透明アクリル製水槽を用いた。該水槽は、幅:120mm、奥行き:60mm、高さ:270mm、有効容積:1.75Lの片側旋回流角型水槽である。水槽の底部には、散気球を設けた。
【0039】
地下水に塩化アンモニウム及び重炭酸水素ナトリウムを加え、アンモニア性窒素濃度:4.4mg/L、アルカリ度:70mg/Lの被処理水を調製した。
水温18℃の被処理水を第1の硝化槽に供給し、被処理水を第1の硝化槽に貯めた。
【0040】
担体として、発泡ポリウレタン製スポンジ担体(テクノフォームジャパン社製、ウォターフレックス、5mm角型、品番:AQ-14)を第1の硝化槽及び第2の硝化槽に充填した。第1の硝化槽への担体の充填率は、第1の硝化槽の有効容積に対して担体の嵩体積が60体積%となる量とした。第2の硝化槽への担体の充填率は、第2の硝化槽の有効容積に対して担体の嵩体積が30体積%となる量とした。
【0041】
第1の硝化槽に被処理水を供給しつつ、散気球から第1の硝化槽内に空気を散気した。また、第1の硝化槽から排出された第1の処理水を第2の硝化槽に移送しつつ、散気球から第2の硝化槽内に空気を散気した。被処理水は、水滞留時間(HRT)が0.43時間となるように供給した。アンモニア性窒素負荷は、0.25kg-N/m3/dであった。各硝化槽の溶存酸素が飽和状態となるように過剰に空気を散気した。
連続して第1の硝化槽に被処理水を供給して被処理水を生物硝化処理しつつ、第1の硝化槽及び第2の硝化槽にて担体を馴養し、担体に硝化菌を担持させて硝化菌担持担体とした。
【0042】
第1の硝化槽への被処理水の供給開始から4日間経過した後(すなわち、馴養期間が4日間)、第1の硝化槽への被処理水の供給を停止した後、エアリフトポンプを駆動させ、第1の硝化槽内の硝化菌担持担体を、第1の硝化槽10の有効容積に対する硝化菌担持担体の嵩体積が30体積%となるように残しつつ、第1の硝化槽10から抜き出した。硝化菌担持担体の抜き出し量は、第1の硝化槽に充填した担体の充填量の約半量に相当する。
【0043】
次いで、エアリフトポンプを停止して、第1の硝化槽への被処理水の供給を再開した。
イオン選択性センサ(エンドレスハウザージャパン社製、ISEmax CAS40D)を原水槽(図示略)、第1の硝化槽及び第2の硝化槽にそれぞれ投入し、再開直後から7日目までの被処理水、第1の処理水及び第2の処理水のアンモニア性窒素濃度を測定した。被処理水、第1の処理水及び第2の処理水のアンモニア性窒素濃度の推移を
図2に示す。
その結果、再開直後から第1の処理水のアンモニア性窒素濃度は0.8mg/L程度を示した。また、再開直後から第2の処理水のアンモニア性窒素濃度は0mg/Lであり、硝化効率の低下を充分に抑えることができた。
【0044】
[比較例1]
実施例1と同様の水処理システムを用いた。
実施例1と同様にして調製した、水温18℃の被処理水を第1の硝化槽に供給し、被処理水を第1の硝化槽に貯めた。
既存の水処理システムの硝化槽から抜き出された硝化菌担持担体を、第1の硝化槽及び第2の硝化槽に充填した。硝化菌担持担体の充填率は、各硝化槽の有効容積に対して、硝化菌担持担体の嵩体積が30体積%となる量とした。
【0045】
第1の硝化槽に被処理水を供給しつつ、散気球から第1の硝化槽内に空気を散気した。また、第1の硝化槽から排出された第1の処理水を第2の硝化槽に移送しつつ、散気球から第2の硝化槽内に空気を散気した。被処理水は、水滞留時間(HRT)が0.43時間となるように供給した。アンモニア性窒素負荷は、0.25kg-N/m3/dであった。各硝化槽の溶存酸素が飽和状態となるように過剰に空気を散気した。
【0046】
イオン選択性センサ(エンドレスハウザージャパン社製、ISEmax CAS40D)を第2の硝化槽に投入し、第2の処理水のアンモニア性窒素濃度を測定した。約1か月経過後に安定状態、すなわち第2の硝化槽の第2の処理水のアンモニア性窒素濃度が0.1mg/L以下を7日連続で示すようになった。
【0047】
第1の硝化槽への被処理水の供給を停止した後、エアリフトポンプを駆動させ、第1の硝化槽内の硝化菌担持担体を、第1の硝化槽10の有効容積に対する硝化菌担持担体の嵩体積が15体積%となるように残しつつ、第1の硝化槽10から抜き出した。硝化菌担持担体の抜き出し量は、第1の硝化槽に充填した硝化菌担持担体の充填量の約半量に相当する。
【0048】
次いで、エアリフトポンプを停止して、硝化菌担持担体の抜き出し量と同量の新品の発泡ポリウレタン製スポンジ担体(テクノフォームジャパン社製、ウォターフレックス、5mm角型、品番:AQ-14)を第1の硝化槽10に投入し、被処理水の供給を再開した。
イオン選択性センサ(エンドレスハウザージャパン社製、ISEmax CAS40D)を原水槽(図示略)、第1の硝化槽及び第2の硝化槽にそれぞれ投入し、再開直後から7日目までの被処理水、第1の処理水及び第2の処理水のアンモニア性窒素濃度を測定した。被処理水、第1の処理水及び第2の処理水のアンモニア性窒素濃度の推移を
図3に示す。
その結果、再開後、6日目でようやく第1の処理水のアンモニア性窒素濃度が1mg/L程度を示した。特に再開後から1日目までは、第1の処理水のアンモニア性窒素濃度が高かった。また、再開直後の第2の処理水のアンモニア性窒素濃度は1.8mg/L程度を示し、2日目になってようやく第2の処理水のアンモニア性窒素濃度が0.1mg/L程度を示した。第2の処理水のアンモニア性窒素濃度は0mg/Lとなるには、再開から6日間を要した。このように、硝化菌担持担体の抜き出した後の硝化効率の低下を充分に抑えることができなかった。