(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040609
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】調湿建材
(51)【国際特許分類】
E04F 13/02 20060101AFI20220304BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20220304BHJP
C04B 9/02 20060101ALI20220304BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
E04F13/02 A
C04B22/06 Z
C04B9/02
C04B24/26 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145398
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】508366189
【氏名又は名称】環境資材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121773
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 正
(72)【発明者】
【氏名】高橋 章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤史
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MD01
(57)【要約】
【課題】吸放湿性能を高めて、より調湿機能を向上させた調湿建材を提供する。
【解決手段】塗り壁材は、活性アルミナ粉末と、酸化マグネシウム粉末と、塩化マグネシウムと、水と、を所定の配合比率で混合しており、活性アルミナ粉末の配合比率が20~44質量%、酸化マグネシウム粉末の配合比率が8~25質量%、塩化マグネシウム粉末の配合比率が10~35質量%、水の配合比率が18~31質量%であるのが望ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性アルミナ粉末と、酸化マグネシウム粉末と、塩化マグネシウムと、水と、を所定の配合比率で混合したことを特徴とする塗り壁材。
【請求項2】
前記活性アルミナ粉末の配合比率が20~44質量%、前記酸化マグネシウム粉末の配合比率が8~25質量%、前記塩化マグネシウム粉末の配合比率が10~35質量%、前記水の配合比率が18~31質量%であることを特徴とする請求項1記載の塗り壁材。
【請求項3】
前記酸化マグネシウム粉末と前記塩化マグネシウム粉末の配合質量比が1:1.3~1:2.2であることを特徴とする請求項1又は2記載の塗り壁材。
【請求項4】
前記活性アルミナ粉末と前記水の配合質量比が1:1.3~1.7であることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の塗り壁材。
【請求項5】
活性アルミナ粉末の平均粒径が75~150μmであることを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の塗り壁材。
【請求項6】
強度を補強するための添加剤である粉末アクリル樹脂をさらに配合したことを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載の塗り壁材。
【請求項7】
請求項1乃至6何れか1項記載の塗り壁材から水を除いたことを特徴とする調湿建材用組成物。
【請求項8】
請求項1乃至6何れか1項記載の塗り壁材を所定の形状に成形して養生・硬化させたことを特徴とする調湿建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿機能を持つ建築資材である調湿建材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の住宅は、室内を快適な温度に保つために建物の高気密・高断熱化が進んでいる。一方、高気密・高断熱化に伴い、結露等の問題も発生している。このため、調湿機能を持たせた内装建材が提供されており、例えば、吸湿性に優れた珪藻土や消石灰等を混合した壁材が使用されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、消石灰にカキ貝殻粉末、赤貝貝殻粉末、貝灰、珪藻土、ホタテ貝殻粉末配合物のいずれかを配合した漆喰クリームが開示されている。この漆喰クリームは、室内壁面、天井、外壁の表面仕上層を形成するのに適し、吸放湿性、吸着性に優れている。また、下記特許文献2には、活性アルミナ粉末と消石灰とを混合した、調湿機能に優れた漆喰が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-37917号公報
【特許文献2】特開2017-14082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境意識の高まりに伴い、冷暖房効率をより向上させるために、さらに高気密化・高断熱化を実現した省エネルギー住宅が提供されており、調湿建材に対してさらなる調湿機能の向上が求められている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、吸放湿性能を高めて、より調湿機能を向上させた調湿建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る塗り壁材は、活性アルミナ粉末と、酸化マグネシウム粉末と、塩化マグネシウムと、水と、を所定の配合比率で混合したことを特徴とする。また、本発明に係る塗り壁材は、活性アルミナ粉末の配合比率が20~44質量%、酸化マグネシウム粉末の配合比率が8~25質量%、塩化マグネシウム粉末の配合比率が10~35質量%、水の配合比率が18~31質量%であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る調湿建材用組成物は、上記塗り壁材から水を除いたことを特徴とする。また、本発明に係る調湿建材は、上記塗り壁材を所定の形状に成形して養生・硬化させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る調湿建材によれば、多孔質材として活性アルミナ粉末を採用し、結合材として酸化マグネシウム粉末及び塩化マグネシウム粉末からなるマグネシアセメントを採用しているため、吸放湿性能を高めて、より調湿機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る塗り壁材の組成を示す表である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る塗り壁材の外観の仕上がりの評価を示す表である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る塗り壁材の吸放湿試験結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る塗り壁材の吸放湿試験結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る塗り壁材の吸放湿試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、まず、調湿建材として、室内の壁面に上塗りして使用される塗り壁材を例に挙げて説明する。また、本実施形態に係る調湿建材は、その主材料として、活性アルミナとマグネシアセメントとを配合していることを特徴とする。
【0012】
図1は、本実施形態に係る実施例及び比較例に係る塗り壁材の組成を示した表である。
図1では、塗り壁材の組成物である多孔質材(活性アルミナ)、結合材(マグネシアセメント、白セメント、消石灰)、水及び添加剤(粉末アクリル樹脂、塩基性硫酸マグネシウム)の配合比率が、塗り壁材の総質量を100質量%として質量比で示されている。
【0013】
実施例Aは、粒径75μm以上の活性アルミナ粉末が42.3質量%、酸化マグネシウム(MgO)粉末が9.2質量%、塩化マグネシウム(MgCl)粉末が18.1質量%、水が28.7質量%、粉末アクリル樹脂が1.0質量%、塩基性硫酸マグネシウムが0.7質量%の比率で配合されている。本実施形態に係るマグネシアセメントは、酸化マグネシウムと塩化マグネシウムとから構成されている。
【0014】
実施例Bは、粒径75μm以下の活性アルミナ粉末が42.3質量%、酸化マグネシウム粉末が9.2質量%、塩化マグネシウム粉末が18.1質量%、水が28.7質量%、粉末アクリル樹脂が1.0質量%、塩基性硫酸マグネシウムが0.7質量%の比率で配合されている。
【0015】
実施例Cは、粒径75μm以上の活性アルミナ粉末が37.1質量%、酸化マグネシウム粉末が15.2質量%、塩化マグネシウム粉末が22.7質量%、水が24.2質量%、粉末アクリル樹脂が0.5質量%、塩基性硫酸マグネシウムが0.3質量%の比率で配合されている。
【0016】
実施例Dは、粒径75μm以上の活性アルミナ粉末が32.0質量%、酸化マグネシウム粉末が19.2質量%、塩化マグネシウム粉末が28.8質量%、水が20.0質量%の比率で配合されている。
【0017】
実施例Eは、粒径75μm以上の活性アルミナ粉末が24.3質量%、酸化マグネシウム粉末が23.1質量%、塩化マグネシウム粉末が34.3質量%、水が18.0質量%の比率で配合されている。
【0018】
比較例Aは、粒径75μm以上の活性アルミナ粉末が45.1質量%、酸化マグネシウム粉末が6.9質量%、塩化マグネシウム粉末が13.8質量%、水が31.0質量%、粉末アクリル樹脂が2.5質量%、塩基性硫酸マグネシウムが0.7質量%の比率で配合されている。
【0019】
比較例Bは、粒径50~500μmの粒子である活性アルミナ粉末が21.0質量%、粒子が板状結晶構造である消石灰が48.0質量%、水が30.0質量%、海藻のりが1.0質量%の比率で配合されている。本比較例Bでは、結合力を補強する添加剤として海藻のりを用いている。
【0020】
比較例Cは、粒径50~500μmの粒子である活性アルミナ粉末が30.0質量%、白色ポルトランドセメントが28.0質量%、水が40.0質量%、粉末アクリル樹脂が2.0質量%の比率で配合されている。
【0021】
比較例Dは、粒径75μm以上の活性アルミナ粉末が37.1質量%、酸化マグネシウム粉末が30.0質量%、塩化マグネシウム粉末が18.0質量%、水が14.9質量%の比率で配合されている。
【0022】
ここで、組成物のうち、活性アルミナは、調湿機能を主として担保するための多孔質材であり、マグネシアセメント、白セメント及び消石灰は、水と水和反応を起こす結合材である。また、粉末アクリル樹脂、塩基性硫酸マグネシウム及び海藻のりは、強度等を補強するための添加剤である。
【0023】
続いて、上記実施例等に配合されている活性アルミナについて説明する。活性アルミナ(κ-アルミナ、γ-アルミナ、η-アルミナ等)は、多孔質であり、比表面積及び細孔容積が大きく、細孔径も小さいため、一般に、吸着剤、乾燥剤、触媒担体等として使われている。
【0024】
本実施形態に係る活性アルミナ粒子の細孔容積は0.3~0.7ml/g、比表面積は100~280m2/gである。また、活性アルミナ粒子の細孔は、細孔径が7~20Åの細孔が全体の90%を占める。このため、活性アルミナは、高い吸湿性を有すると共に、気体等の非常に小さな粒子に対しても高い吸着性を示す。また、活性アルミナの結晶構造は、板状結晶構造であり、コテで塗る際の作業性が良く、ひび割れが少ない。
【0025】
本実施形態において用いる活性アルミナ粉末は、水酸化アルミニウムAlOH3が99.8%の粉末を約500~700℃(例えば、600℃)で焼成してから破砕することで製造される。こうして得られた活性アルミナ粉末には、様々な粒径の粒子が含まれるが、本実施形態では、ふるい(篩い)工程によって、粒径を分けて使用している。
【0026】
上述したように、実施例A,C,D,E及び比較例A,Dでは、粒径75μm以上の活性アルミナ粉末を使用し、実施例Bでは、粒径75μm以下の活性アルミナ粉末を使用している。また、比較例B,Cでは、粒径が50~500μmの活性アルミナ粉末を使用している。
【0027】
また、上記実施例等に配合されているマグネシアセメントは、天然さんのマグネサイトから取れる酸化マグネシウム粉末と、海水から取れる塩化マグネシウム粉末とから構成される。酸化マグネシウムと塩化マグネシウムとに水を加えて撹拌すると、水和反応が起き、養生・硬化することで、強度及び付着力が高く、膨張収縮が少ない硬化物(マグネシウム複塩)ができる。その結晶構造は、柱状結晶構造であり、活性アルミナと結晶構造的に似ており、活性アルミナの有毒ガス等の吸着機能を妨げることもない。
【0028】
また、比較例Bで用いる消石灰は水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の粉末であり、一般的な漆喰の主原料である。消石灰は、板状結晶構造の消石灰と、粒状結晶構造の消石灰とが存在するが、比較例Bで用いる消石灰は、板状結晶構造の消石灰である。
【0029】
添加剤である粉末アクリル樹脂は、アクリル樹脂を特殊変性ポリビニルアルコールで覆った粉末であり、添加することで、粒子の付着力を向上させることができる。これにより、塗り壁材の下地への付着力が向上すると共に、塗り壁材の粒子同士の付着力が向上することで、塗り壁材が養生・硬化した塗り壁の強度も向上する。粉末アクリル樹脂としては、例えば、ジャパンコーティングレジン社のLDM7100P等を用いることができる。
【0030】
同じく添加剤である塩基性硫酸マグネシウムは、短繊維形状であり、保水性に優れており、添加することで、強度を保ちつつ塗り壁材が養生・硬化した塗り壁の保水性を向上させることができる。塩基性硫酸マグネシウムは、海水から取れる水酸化マグネシウムと硫酸マグネシウムを水熱合成することで生成され、例えば、宇部マテリアルズ株式会社のモスハイジ(登録商標)を用いることができる。
【0031】
次に、本実施形態に係る塗り壁材の外観検査について説明する。
図2は、本実施形態に係る塗り壁材の養生硬化後の外観の仕上がりの検査結果を示す表である。本試験では、所定の配合比率で混合された塗り壁材を十分に混練した後、壁(珪酸カルシューム板、石膏ボード板等)の表面に厚さ2mmの表面層を構成するようにコテ塗りし、さらに所定期間養生して乾燥・硬化させてから、塗り壁の外観を評価した。
【0032】
本塗布硬化試験では、硬化後の塗り壁表面の平滑度が高く、ひび割れが少ないほど優れた外観として評価した。
図2に示すように、実施例A,B,C,D,E及び比較例B,Cは、外観が良であり、比較例A,Dは外観が不良であった。
【0033】
比較例Aでは、活性アルミナ粉末の配合比率が45.1質量%と高く、結合材であるマグネシアセメントの配合比率が、酸化マグネシウム6.9質量%、塩化マグネシウム13.8質量%と相対的に低下している。このため、比較例Aでは、塗り壁材の粒子同士の結合力の低下により、付着力や強度が低下し、下地への付着で脱落が生じた。
【0034】
比較例Dでは、水の量が不足し、ドライアウト現象により強度不足となり、外観不良となった。これは、多孔質材である活性アルミナ粉末に水が吸水され、水和反応に必要な水の量が不足したからであると考えられる。なお、比較例Dでは、唯一、酸化マグネシウムの配合比率が塩化マグネシウムよりも大きいが、この配合比率がマグネシアセメントでは一般的である。
【0035】
この外観評価試験結果に鑑み、活性アルミナ粉末に吸水される水の量を考慮しながら算出した配合比率が、実施例Cに示す配合比率である。具体的には、まず、活性アルミナ粉末の配合比率が37.1質量%の場合に適切な水の配合比率が24~25質量%であると推測した。
【0036】
また、マグネシアセメントを構成する酸化マグネシウムと塩化マグネシウムの配合比率は、左官工事のコテ仕上げに最適な配合を種々の配合条件で試した結果、活性アルミナ粉末の配合比率が37.1質量%の場合、酸化マグネシウムと塩化マグネシウムとの配合比率が質量比で約1:1.5であると判明した。
【0037】
このように、潮解性が高い塩化マグネシウムの配合比率を上げることで、コテ塗りの施工性が向上し、塗り壁の外観も良好となる。なお、酸化マグネシウムの配合比率を低下させるとセメントとしての機械的強度が低下するが、塗り壁では高い強度は不要であるため問題無い。
【0038】
以上より、実施例Cに示す、活性アルミナ粉末が37.1質量%、酸化マグネシウム粉末が15.2質量%、塩化マグネシウム粉末が22.7質量%、水が24.2質量%、粉末アクリル樹脂が0.5質量%、塩基性硫酸マグネシウムが0.3質量%の配合比率を求めた。
【0039】
また、他の実施例の配合比率は、実施例Cを基準として、種々の配合条件で試した結果から算出したものであり、吸放湿性能を向上させるために活性アルミナの配合比率を増やす場合には、強度維持のために添加剤を増量したり、活性アルミナの配合比率を減らす場合には、補強が不要となるため、添加剤を除いたりしている。
【0040】
続いて、本実施形態に係る塗り壁材の吸放湿試験について説明する。
図3~
図5は、塗り壁材を養生・硬化させた塗り壁の吸放湿試験の結果を示す図である。本試験は、JIS A6909に準じて行っており、温度一定(23℃)で相対湿度を変化させたときの、当該雰囲気に設置された塗り壁の質量変化から吸湿量を測定した。塗り壁材の塗り厚みは、全て2mmである。
【0041】
図3は、実施例A,Bの試験結果を示し、
図4は、実施例A,C,D,Eの試験結果を示し、
図5は、実施例A,C,D及び比較例B,Cの試験結果を示している。なお、比較例A,Dに関しては、上記塗布硬化試験において外観不良と評価されたように、吸放湿量の測定を正しく行うことができず、比較例A,Dについては吸放湿試験を行っていない。
【0042】
図3~
図5において、縦軸は吸放湿量[g/m
2]を示し、横軸は経過時間[h]を示している。本試験では、測定開始後、0~24時間までは高湿度(90%)下に置いて吸湿させ、24~48時間の間は低湿度(50%)下において放湿させている。
【0043】
まず、
図3を参照して、活性アルミナ粉末の粒径だけが異なり、全ての配合比率の等しい実施例Aと実施例Bの吸放湿試験結果を比較すると、実施例Aの方が、実施例Bよりも少し高い吸放湿性能を示している。したがって、塗り壁材の吸放湿性能を向上させるためには、粒径が75μm以下の活性アルミナ粉末よりも粒径が75μm以上の活性アルミナ粉末を配合したほうが、吸放湿性能が向上して望ましい。
【0044】
但し、多孔質材である活性アルミナ粉末の粒径が大きくなり過ぎると、脆くなって強度が低下してしまうおそれがあり、また、養生硬化した塗り壁の表面が凸凹して、手で触った際にざらざら感が出過ぎたりするため、活性アルミナ粉末は、その平均粒径が75~150μmであることが望ましい。
【0045】
また、
図5を参照すると、結合材として、消石灰を用いる比較例Bや白色ポルトランドセメントを用いる比較例Cに比べて、マグネシアセメント(酸化マグネシウム、塩化マグネシウム)を用いる実施例A,C,Dの方が24時間経過後の吸湿量が250[g/m
2]以上となるなど、吸放湿性能が大きく向上している。
【0046】
これは、消石灰と比べてマグネシアセメントの結合力が高く、結合材として消石灰を用いるよりもマグネシアセメントを用いる方が活性アルミナの配合比率を高くすることができ、マグネシアセメントを用いる実施例A,C,Dにおいて、消石灰を用いる比較例Bと比べて、活性アルミナの配合比率がより高くなっているからである。
【0047】
また、白色ポルトランドセメントは、結晶構造がマグネシアセメントのような柱状結晶構造ではないため、柱状結晶構造である活性アルミナの小孔の一部を塞いでしまっていると考えられるからである。
【0048】
このように、本実施形態では、塗り壁材の結合材としてマグネシアセメントを用いることで、多孔質材である活性アルミナの配合比率を高めることができると共に、活性アルミナの吸放湿性能を良好に発揮させることができ、塗り壁材の吸放湿性能を向上させることができる。
【0049】
また、
図4に示すように、多孔質材として、粒径75μm以上の活性アルミナ粉末を用いる実施例A,C,D,Eに関して、活性アルミナ粉末の配合比率が42.3質量%と最も高い実施例Aの24時間経過後の吸湿量が450[g/m
2]以上と最も高い。よって、塗り壁材の吸放湿性能を向上させるためには、活性アルミナの配合比率を上げるのが望ましい。
【0050】
また、活性アルミナ粉末の配合比率が24.3質量%の実施例Eにおいて、24時間経過後の吸湿量が約200[g/m2]となっており、塗り壁材の吸放湿性能を担保するためには、活性アルミナの配合比率は20質量%以上であることが望ましい。
【0051】
一方、上述した外観検査の結果に示したように、例えば、比較例Aのように、活性アルミナの配合比率が45.1質量%と高くなり過ぎると、相対的に結合材であるマグネシアセメントの配合比率が低下し、補強のための添加剤(粉末アクリル樹脂)を加えても結合力不足により、外観不良が発生する。
【0052】
したがって、活性アルミナ粉末の配合比率は、44質量%以下であることが望ましく、活性アルミナ粉末の配合比率は、塗り壁材の総質量を100質量%として、20~44質量%であることが望ましい。
【0053】
また、水についてみると、水の配合比率が低下すると、漆喰の粘度が大きくなって、コテ塗りにおける作業性が大きく低下すると共に、塗られた漆喰の平滑度も低下して外観が悪化する。また、水の配合比率が大きくなると、硬化時にひび割れが発生して外観が悪化する。
【0054】
但し、本実施形態では、水との混合時に、多孔質材である活性アルミナが水を吸水するため、その分を考慮する必要がある。活性アルミナ粉末の配合比率が37.1質量%の場合に適切な水の配合比率が24~25質量%として求めた実施例Cの配合比率や、その他の実施例の配合比率を含め、種々の条件で試験した結果、水の配合量は、活性アルミナ粉末に対して、質量比で1:1.3~1:1.7であることが望ましいと判明した。
【0055】
また、マグネシアセメントに関しては、上述したように、活性アルミナ粉末の配合比率が37.1質量%の場合(実施例C)、酸化マグネシウムと塩化マグネシウムとの配合比率が質量比で約1:1.5であると判明している。
【0056】
その他の種々の条件で試験した結果を考慮すると、塗り壁材の総質量を100質量%として、活性アルミナ粉末の配合比率が20~44質量%、水の配合比率が18~31質量%である場合に、酸化マグネシウム粉末の配合比率が8~25質量%、塩化マグネシウム粉末の配合比率が10~35質量%であることが望ましいと判明した。また、酸化マグネシウムと塩化マグネシウムとの配合比率は、質量比で1:1.3~1:2.2であることが望ましい。
【0057】
以上、本実施形態に係る塗り壁材について説明したが、続いて、塗り壁材の材料となる調湿建材用組成物について説明する。塗り壁材の配合材料のうち、水については、塗壁の施工現場で混合されるものであり、塗り壁材の流通形態としては、水を除いた調湿建材用組成物として取引される。
【0058】
ここで、調湿建材用組成物に含まれるマグネシアセメントの塩化マグネシウムは、空気中の湿度を吸収して潮解を起こすため、流通段階では、工場で予めプレミックスした調湿建材用組成物を密封袋内に入れて密封した状態で扱う必要がある。
【0059】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、消石灰、活性アルミナ、結合材及び水の配合比率は適宜変更可能であり、また、他の材料をさらに加えても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、調湿建材として、塗り壁材を例に挙げて説明したが、本発明は、調湿機能を備える建築資材である調湿建材に広く適用することができる。例えば、塗り壁材と同じ配合の組成物を型枠により所定形状に成形した後に、養生硬化させて製造される調湿建材プレートであっても良い。