(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040650
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220304BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20220304BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B41J2/165 203
B41J2/175 501
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/165 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145452
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】藤田 陽
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB21
2C056EB29
2C056EB34
2C056EC22
2C056EC23
2C056EC24
2C056EC28
2C056EC35
2C056JA04
2C056JA13
2C056JA27
2C056JB04
2C056KB35
(57)【要約】
【課題】空吸引位置にズレが生じたことを適切に判断する。
【解決手段】プリンタ100は、インクヘッド27と、貯留室52を有するダンパー44と、キャップ61と、吸引ポンプ63と、制御装置80とを備える。制御装置80は、キャップ61を空吸引位置P10に移動させた後に吸引ポンプ63を駆動させた前後で、貯留室52の圧力が変化したか否かを判定する第1判定部93と、第1判定部93で貯留室52の圧力が変化していないと判定されたとき、キャップ61を上方に移動距離D10、移動させた状態で、吸引ポンプ63を駆動させた前後で、貯留室52の圧力が変化したか否かを判定する第2判定部98と、第1判定部93で貯留室52の圧力が変化したと判定されたとき、または、第2判定部98で貯留室52の圧力が変化していないと判定されたとき、空吸引位置P10を調整する調整部99と、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドと、
前記ノズルと連通し、かつ、インクが貯留される貯留室を有するダンパーと、
前記貯留室の圧力の変化を検出する圧力検出機構と、
前記ノズルを覆うように前記インクヘッドに装着可能なキャップと、
前記キャップに接続された吸引ポンプと、
前記インクヘッドに対してキャップを装着させたり離間させたりする昇降機構と、
制御装置と、
を備え、
前記吸引ポンプを駆動して前記インクヘッド内のインクを吸引せずに、前記キャップ内のインクを吸引する空吸引処理のときの前記インクヘッドに対する前記キャップの上下の論理的な位置を、空吸引位置としたとき、
前記制御装置は、
前記キャップを前記空吸引位置に移動させるように前記昇降機構を制御する第1移動制御部と、
前記第1移動制御部によって前記キャップが前記空吸引位置に移動した後、前記吸引ポンプを所定の吸引時間、駆動させる第1吸引制御部と、
前記第1吸引制御部によって前記吸引ポンプを駆動させた前後で、前記貯留室の圧力が所定の値分変化したか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部によって前記吸引ポンプを駆動させた前後で、前記貯留室の圧力が前記所定の値分変化していないと判定されたとき、前記キャップを前記インクヘッドに近づく方向に所定の移動距離、移動させる第2移動制御部と、
前記第2移動制御部による制御の後、前記吸引ポンプを前記所定の吸引時間、駆動させる第2吸引制御部と、
前記第2吸引制御部によって前記吸引ポンプを駆動させた前後で、前記貯留室の圧力が前記所定の値分変化したか否かを判定する第2判定部と、
前記第1判定部によって前記吸引ポンプを駆動させた前後で、前記貯留室の圧力が前記所定の値分変化したと判定されたとき、または、前記第2判定部によって前記吸引ポンプを駆動させた前後で、前記貯留室の圧力が前記所定の値分変化していないと判定されたとき、前記空吸引位置を調整する調整部と、
を備えた、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記空吸引位置における前記ノズル面と前記キャップとの上下の距離は、前記空吸引処理を実行することが可能な最小距離である、請求項1に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記所定の移動距離は、前記昇降機構が前記インクヘッドに対して前記キャップを上下に移動させることが可能な最小距離である、請求項2に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記第1移動制御部は、経過時間が経過する毎に、前記キャップを前記空吸引位置に移動させる制御を行う、請求項1から3までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記ノズル面を拭うワイパーと、
前記ワイパーで前記ノズル面をワイピングするワイピング機構と、
を備え、
前記制御装置は、定期経過時間が経過する毎に、前記ノズル面を前記ワイパーでワイピングする処理を少なくとも行う定期クリーニングを実行する定期クリーニング部を備え、
前記第1移動制御部は、前記定期経過時間が経過する毎に、前記定期クリーニング部による前記定期クリーニングの実行前に、前記キャップを前記空吸引位置に移動させる制御を行う、請求項1から4までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記第1移動制御部は、印刷中にエラーが発生した後、前記キャップを前記空吸引位置に移動させる制御を行う、請求項1から5までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、インクを吐出するノズルを有するインクヘッドを備えたインクジェットプリンタが開示されている。上記インクジェットプリンタでは、ノズルの吐出性能を維持するために、キャップユニットが設けられている。キャップユニットは、印刷待機時に、インクヘッドのノズルが形成されたノズル面に装着されるキャップと、キャップに接続された吸引ポンプとを備えている。
【0003】
ノズル面をキャップが覆うことで、キャップとノズル面とによって囲まれた密閉空間が形成される。この密閉空間が形成された状態で吸引ポンプを駆動させることで、インクヘッド内に残留したインクをキャップに排出することができる。このように、インクヘッド内のインクを排出するための吸引の処理を吸引処理という。
【0004】
吸引処理の後に、キャップ内に残留したインクを排出するために、密閉空間を大気圧に開放した状態で、再度吸引ポンプを駆動させることが行われている。このことで、インクヘッド内のインクが排出されることなく、キャップ内のインクのみを排出することができる。このキャップ内のインクのみを排出するための吸引の処理を空吸引処理という。空吸引処理におけるインクヘッドのノズル面に対するキャップの位置のことを空吸引位置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の空吸引位置は、論理的な位置であり、インクジェットプリンタに対して過度の負荷が掛けられたり、インクジェットプリンタが設置された空間の温度や湿度に起因したりすることで、空吸引位置がズレることがあり得る。空吸引位置がズレて、ノズル面に対してキャップが近づき過ぎると、空吸引処理のときにインクヘッド内のインクが吸引ポンプで吸引されるおそれがある。また、空吸引位置がズレて、ノズル面に対してキャップが離れ過ぎると、キャップを昇降させるときにキャップ内のインクが外部に落下するおそれがある。そのため、空吸引位置にズレが生じないことが好ましく、空吸引位置にズレが生じていることを適切に判断することが好ましい。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、空吸引位置にズレが生じていることを適切に判断して、空吸引位置を調整することが可能なインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インクヘッドと、ダンパーと、圧力検出機構と、キャップと、吸引ポンプと、昇降機構と、制御装置とを備えている。前記インクヘッドは、ノズルが形成されたノズル面を有する。前記ダンパーは、前記ノズルと連通し、かつ、インクが貯留される貯留室を有する。前記圧力検出機構は、前記貯留室の圧力の変化を検出する。前記キャップは、前記ノズルを覆うように前記インクヘッドに装着可能である。前記吸引ポンプは、前記キャップに接続されている。前記昇降機構は、前記インクヘッドに対してキャップを装着させたり離間させたりする。前記吸引ポンプを駆動して前記インクヘッド内のインクを吸引せずに、前記キャップ内のインクを吸引する空吸引処理のときの前記インクヘッドに対する前記キャップの上下の論理的な位置を、空吸引位置とする。前記制御装置は、第1移動制御部と、第1吸引制御部と、第1判定部と、第2移動制御部と、第2吸引制御部と、第2判定部と、調整部とを備えている。前記第1移動制御部は、前記キャップを前記空吸引位置に移動させるように前記昇降機構を制御する。前記第1吸引制御部は、前記第1移動制御部によって前記キャップが前記空吸引位置に移動した後、前記吸引ポンプを所定の吸引時間、駆動させる。前記第1判定部は、前記第1吸引制御部によって前記吸引ポンプを駆動させた前後で、前記貯留室の圧力が所定の値分変化したか否かを判定する。前記第2移動制御部は、前記第1判定部によって前記吸引ポンプを駆動させた前後で、前記貯留室の圧力が前記所定の値分変化していないと判定されたとき、前記キャップを前記インクヘッドに近づく方向に所定の移動距離、移動させる。前記第2吸引制御部は、前記第2移動制御部による制御の後、前記吸引ポンプを前記所定の吸引時間、駆動させる。前記第2判定部は、前記第2吸引制御部によって前記吸引ポンプを駆動させた前後で、前記貯留室の圧力が前記所定の値分変化したか否かを判定する。前記調整部は、前記第1判定部によって前記吸引ポンプを駆動させた前後で、前記貯留室の圧力が前記所定の値分変化したと判定されたとき、または、前記第2判定部によって前記吸引ポンプを駆動させた前後で、前記貯留室の圧力が前記所定の値分変化していないと判定されたとき、前記空吸引位置を調整する。
【0009】
上記インクジェットプリンタによれば、インクヘッド内のインクが吸引ポンプによって吸引されるとき、ダンパーの貯留室の圧力が小さくなるため、貯留室の圧力が所定の値分変化することになる。例えば空吸引位置にズレが生じて、ノズル面に対してキャップが近づき過ぎている場合、キャップが空吸引位置に配置されているにも関わらず、吸引ポンプの駆動によりインクヘッド内のインクが吸引されて、貯留室の圧力が変化する。例えば空吸引位置にズレが生じていない場合、空吸引位置からインクヘッドに向かって所定の移動距離、キャップを移動させた状態で吸引ポンプを駆動させると、インクヘッド内のインクが吸引される。しかしながら、例えば空吸引位置にズレが生じ、ノズル面に対してキャップが離れ過ぎている場合、空吸引位置からインクヘッドに向かって所定の移動距離、キャップを移動させた状態で吸引ポンプを駆動させると、インクヘッド内のインクが吸引されないため、貯留室の圧力に変化が生じない。このように、吸引ポンプの駆動前後で、貯留室の圧力が所定の値分変化していないか否かを判定することで、空吸引位置にズレが生じているか否かを判定することができる。よって、空吸引位置にズレが生じているときのみに、空吸引位置の調整が行われるため、空吸引位置にズレが生じていることを適切に判断して、空吸引位置を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】キャリッジの下面の構成を模式的に示す図である。
【
図4】ダンパーの平面図であり、貯留室の圧力が所定の判定圧力以下の状態を示す図である。
【
図5】ダンパーの平面断面図であり、貯留室の圧力が所定の判定圧力より大きい状態を示す図である。
【
図6】インクヘッドおよびキャップユニットの正面図である。
【
図7】インクヘッドおよびキャップユニットの正面図である。
【
図8】キャリッジ、インクヘッドおよびワイパーユニットの正面図である。
【
図10】空吸引位置に配置されたキャップを示す模式図である。
【
図11】空吸引位置判定処理を実行する手順を示したフローチャートである。
【
図12】マージン距離が設定された空吸引位置に対して空吸引位置判定処理を実行する手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。
【0012】
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)100の正面図である。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ100の前、後、左、右、上、下を示している。符号Yは主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは副走査方向を示している。本実施形態では、副走査方向Xは、平面視において主走査方向Yと直交しており、前後方向である。符号Zは高さ方向、すなわち上下方向を示している。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものではない。
【0013】
プリンタ100は、インクジェット方式のプリンタである。プリンタ100は、媒体5に対して印刷を行う。媒体5は例えばロール状の記録紙である。しかしながら、媒体5を形成する材料は特に限定されない。
【0014】
図1に示すように、プリンタ100は、プリンタ本体11を備えている。プリンタ本体11は、脚12に支持されており、かつ、操作パネル13を設けている。操作パネル13は、プリンタ100の状態を表示する表示画面14と、ユーザによって操作される入力キー15とを有する。
【0015】
プリンタ100は、媒体5を支持するプラテン18と、プラテン18に支持された媒体5を副走査方向Xに搬送する搬送機構20を備えている。搬送機構20は、例えばプラテン18に設けられたグリットローラ21と、グリットローラ21と共に媒体5を挟むピンチローラ22と、グリットローラ21に接続されたフィードモータ23とを備えている。フィードモータ23が駆動してグリットローラ21が回転することで、媒体5は副走査方向Xに搬送される。
【0016】
プリンタ100は、プラテン18の上方において主走査方向Yに延びたガイドレール25と、ガイドレール25に摺動自在に係合するキャリッジ26と、キャリッジ26に設けられたインクヘッド27(
図2参照)と、キャリッジ26およびインクヘッド27を主走査方向Yに移動させるヘッド移動機構30とを備えている。
【0017】
インクヘッド27は、プラテン18に支持された媒体5に向かってインクを吐出する。インクヘッド27の数は特に限定されないが、
図2に示すように、ここでは4つである。1つインクヘッド27は、インクが吐出され、かつ、副走査方向Xに並んで配置された複数のノズル28が形成されたノズル面29を有する。
【0018】
ヘッド移動機構30は、ガイドレール25の左右の両端部に設けられた左右のプーリ31a、31bと、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられたベルト32と、右のプーリ31bに接続されたキャリッジモータ33とを備えている。キャリッジモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ26およびインクヘッド27は主走査方向Yに移動する。
【0019】
図3に示すように、プリンタ100は、インクヘッド27にインクを供給するインク供給機構40を備えている。インク供給機構40は、例えばインクヘッド27ごとに設けられている。本実施形態では、インクヘッド27の数は4つであるため、インク供給機構40の数も4つである。インク供給機構40の構成は特に限定されない。本実施形態では、1つのインク供給機構40は、インクタンク41と、インク供給路42と、送液ポンプ43と、ダンパー44とを備えている。
【0020】
インクタンク41は、インクが貯留された容器である。インクタンク41に貯留されているインクは、例えばプロセスカラーインクおよび特色インク(例えばホワイトインク、クリアインクなど)のうちの1つのインクである。インクタンク41は、例えばインクカートリッジである。インクタンク41の形状は特に限定されず、パウチ状であってもよいし、ボトル状であってもよい。
【0021】
インク供給路42は、インクタンク41とインクヘッド27とを接続する。インク供給路42の一端は、ダンパー44を介してインクヘッド27のノズル28と連通している。インク供給路42の他端は、インクタンク41に接続されている。インク供給路42は、例えば可撓性を有する部材(例えばチューブ)によって形成されている。送液ポンプ43は、インク供給路42の途中部分に設けられている。送液ポンプ43は、インクタンク41からインクヘッド27に供給するインク量を調整して、インクヘッド27内の圧力を調整する。
【0022】
ダンパー44は、ダンパー44に流入するインクの流量(言い換えると、ダンパー44内の圧力)を検出する。当該検出の結果に基づいて送液ポンプ43が制御される。ダンパー44はインクヘッド27に接続されている。
図4に示すように、ダンパー44は、中空のダンパー本体51と、貯留室52と、ダンパー膜53と、圧力検出機構54とを備えている。ダンパー本体51には、インク供給路42が接続された流入口55a、および、インクヘッド27に接続された流出口55b(
図3参照)が形成されている。
【0023】
貯留室52は、ダンパー本体51内に形成されており、インクを一時的に貯留する。貯留室52は、上記の流入口55a、および、流出口55bと連通している。貯留室52は、インクヘッド27のノズル28と連通している。印刷時、流入口55aから貯留室52に流入したインクは、流出口55bを通じてインクヘッド27へ流れる。本実施形態では、貯留室52の一部は開口しており、この開口部分をダンパー膜53が覆う。ダンパー膜53は、例えば可撓性を有するフィルムである。ダンパー膜53は、貯留室52内のインクの量や圧力に応じて、貯留室52の内側および外側に撓む。本実施形態では、貯留室52にバネ55が設けられている。バネ55は、圧縮された状態で貯留室52に配置され、ダンパー膜53に向かって弾性力を付与する。
【0024】
圧力検出機構54は、貯留室52内の圧力の変化を検出することで、インク供給路42内の圧力の変化を間接的に検出する。圧力検出機構54は、ダンパー膜53に設けられた押圧体56と、レバー57と、レバーセンサ58とを備えている。押圧体56は、バネ55に支持されている。
【0025】
レバー57は、ダンパー膜53と接触可能であり、支持バネ59を介してダンパー本体51に設けられている。レバー57は、押圧体56の右方において前後方向に延びた接触部57aと、接触部57aの後部から左方に延びた支持部57bと、接触部57aの前部から左方に延びた被検出部57cとを有している。接触部57aは、ダンパー膜53に接触する。支持部57bは、支持バネ59に支持される。被検出部57cは、レバーセンサ58によって検出される部位である。
【0026】
レバーセンサ58は、レバー57の位置を検出することで、貯留室52内の圧力の変化を検出する。本実施形態では、レバーセンサ58は、非接触式のセンサである。レバーセンサ58は、互いに離間した一対の検出部58aを有する。一対の検出部58aの間に、レバー57の被検出部57cが位置しているとき、レバーセンサ58は、貯留室52の圧力が所定の判定圧力以下であることを検出する。
【0027】
貯留室52の圧力が大きくなるにしたがって、
図5に示すように、ダンパー膜53が貯留室52の外側に撓む。このとき、レバー57が貯留室52の外側に押されることで、レバー57は、軸57dを軸にして回転する。そして、貯留室52の圧力が所定の判定圧力より大きくなったとき、レバー57の被検出部57cが一対の検出部58aの間から外れた位置に移動する。レバーセンサ58は、一対の検出部58aの間に、レバー57の被検出部57cが位置していないとき、貯留室52の圧力が所定の判定圧力よりも大きいことを検出する。本実施形態では、圧力検出機構54は、レバー57が一対の検出部58aの間に位置している状態から位置していない状態に変化、または、一対の検出部58aの間に位置していない状態から位置している状態に変化することで、貯留室52の圧力が所定の値V10(
図11参照)分変化したことを検出する。
【0028】
本実施形態では、プリンタ100は、キャップユニット60(
図6参照)と、ワイパーユニット70(
図8参照)とを備えている。
図6に示すように、キャップユニット60は、複数のキャップ61と、昇降機構62と、吸引ポンプ63とを備えている。
図7に示すように、1つのキャップ61は、1つのインクヘッド27の複数のノズル28(
図2参照)を覆うように、ノズル面29に装着可能に構成されている。キャップ61の数は、インクヘッド27の数と同じ4つである。キャップ61は、上部が開口した箱状の形状である。ここでは、キャップ61の少なくともインクヘッド27と接触する部分は、例えばゴムによって形成されている。キャップ61の内部には、スポンジなどの吸収体68(
図10参照)が配置されている。
【0029】
図6および
図7に示すように、昇降機構62は、キャップ61を昇降させて、ノズル面29に対してキャップ61を装着させたり、離間させたりする機構である。本実施形態では、昇降機構62は、複数のキャップ61を支持する板状の支持部材65と、支持部材65に接続された昇降モータ66とを有する。昇降モータ66が駆動することで、支持部材65およびキャップ61が昇降する。なお、昇降機構62は、ヘッド移動機構30によるインクヘッド27の主走査方向Yへの移動と連動して、キャップ61を昇降させるように構成されてもよい。
【0030】
図6に示すように、吸引ポンプ63は、キャップ61に接続されている。吸引ポンプ63は、接続されたキャップ61内のインクや、キャップ61に装着されたインクヘッド27内のインクを吸引する。吸引ポンプ63の種類は特に限定されないが、例えば真空ポンプである。本実施形態では、吸引ポンプ63は、チューブを介してキャップ61の底面に接続されている。吸引ポンプ63は、駆動時、対応するインクヘッド27に接続されたインク供給路42内の負圧よりも低い負圧を形成するように構成されている。例えばキャップ61がインクヘッド27に装着された状態で吸引ポンプ63が駆動すると、ノズル28からインクが吸い出される。吸引ポンプ63に吸引されたインクなどは、図示しないチューブを介して図示しない廃液タンクに排出される。
【0031】
図8に示すワイパーユニット70は、キャップユニット60の近傍に配置されており、インクヘッド27よりも下方に設けられている。ワイパーユニット70は、インクヘッド27のノズル面29をワイピングする。ワイパーユニット70は、ワイパー71と、ワイピング機構72と、洗浄液が貯留される洗浄液槽73とを備えている。
【0032】
ワイパー71は、ノズル面29を拭う部材である。ワイパー71は、前後および上下に延びる平板状の部材である。ワイパー71は、例えばゴムで形成されている。ワイピング機構72は、ワイパー71でノズル面29をワイピングする機構である。ワイピング機構72は、回転軸75と、回転モータ76とを有する。回転軸75は、前後に延びており、ワイパー71の一端に接続されている。回転軸75には回転モータ76が接続されている。回転モータ76が駆動することで、ワイパー71は回転軸75を中心に回転可能である。ワイパー71が、回転軸75から遠い方の端部を上にするような回転位置に配置されるとき、当該端部は、ノズル面29よりもわずかに高い位置に位置する。このような状態で、インクヘッド27を主走査方向Yに移動させることで、ワイパー71によってノズル面29が拭われる。一方、ワイパー71が、回転軸75から遠い方の端部を下にするような回転位置に配置されるとき、回転軸75の下方に設置された洗浄液槽73中の洗浄液に浸漬される。
【0033】
図1に示すように、プリンタ100は、制御装置80を備えている。制御装置80は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。制御装置80は、例えばホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリと、を備えている。なお、制御装置80は必ずしもプリンタ100の内部に設けられている必要はなく、例えばプリンタ100の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ100と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。
【0034】
本実施形態では、
図8に示すように、制御装置80は、操作パネル13、搬送機構20(詳しくはフィードモータ23)、インクヘッド27、ヘッド移動機構30(詳しくはキャリッジモータ33)、送液ポンプ43、ダンパー44の圧力検出機構54のレバーセンサ58、昇降機構62(詳しくは昇降モータ66)、吸引ポンプ63、および、ワイパーユニット70(詳しくは回転モータ76)とそれぞれ通信可能に接続されており、これらを制御可能に構成されている。
【0035】
ところで、インクヘッド27に対して定期的にクリーニングが行われる。本実施形態では、制御装置80は、記憶部81と、定期クリーニング部83を備えている。定期クリーニング部83は、所定の定期経過時間が経過する毎に、定期クリーニングを実行する。ここで、定期経過時間は、予め設定されたものであり、記憶部81に記憶されている。定期経過時間の具体的な値は特に限定されないが、例えば24時間である。すなわち、定期クリーニングは、1日に1回実行される。
【0036】
インクヘッド27の定期クリーニングは、例えば主吸引処理、空吸引処理、および、ワイピング処理から構成されている。主吸引処理は、キャップ61をインクヘッド27に装着させた状態で吸引ポンプ63を駆動させて、インクヘッド27のノズル28からインクヘッド27内のインクを吸引する処理である。主吸引処理では、インクヘッド27内のインクがキャップ61内に排出される。主吸引処理の後に空吸引処理が行われる。空吸引処理では、キャップ61をインクヘッド27から離間させた状態で吸引ポンプ63を駆動させて、キャップ61内のインクを吸引する。空吸引処理では、インクヘッド27内のインクは吸引されず、キャップ61内に排出されない。空吸引処理の後、ワイピング処理が行われる。ワイピング処理は、ワイパー71によってインクヘッド27のノズル面29をワイピングする処理である。このように、定期クリーニングを実行することで、インクヘッド27を綺麗にすると共に、ノズル28のメニスカスを整えることができる。
【0037】
本実施形態では、
図10に示すように、空吸引処理を実行している際のノズル面29に対するキャップ61の上下方向Zの位置のことを空吸引位置P10という。空吸引位置P10は、少なくともノズル面29からキャップ61の上端が離れている位置である。しかしながら、ノズル面29からキャップ61が下方に離れすぎている場合、主吸引処理においてインクヘッド27に装着されているキャップ61が下方に移動する間に、キャップ61内のインクが飛び散るおそれがある。そのため、空吸引位置P10は、出来るだけキャップ61の上端がノズル面29に近い方が好ましい。そこで、本実施形態では、ノズル面29からキャップ61までの上下方向Zの距離D5が、吸引ポンプ63を駆動させた状態でインクヘッド27内のインクを吸引することができない最小距離となるようなキャップ61の位置を空吸引位置P10とする。
【0038】
ここでは、空吸引位置P10に位置するキャップ61をノズル面29に向かって上方に所定の移動距離D10(例えば0.1mm)移動させたときに吸引ポンプ63を駆動させると、インクヘッド27内のインクは、吸引ポンプ63によって吸引される。この所定の移動距離D10とは、昇降機構62がキャップ61を上下方向Zに移動させる最小距離のことである。
【0039】
ところで、空吸引位置P10は、論理的な位置である。そのため、空吸引位置P10にキャップ61を実際に移動させたとき、キャップ61の位置が論理的な空吸引位置P10からズレること(以下、空吸引位置P10のズレという。)があり得る。例えばプリンタ100が設置されている空間の温度や湿度が変化することで、空吸引位置P10のズレが発生することがあり得る。また、例えばプリンタ100で機械的なエラーが発生することで、空吸引位置P10のズレが発生することがあり得る。この機械的なエラーの一例として、例えば印刷中の媒体5の詰まり(いわゆるメディアジャム)の発生によるキャリッジ26の急停止が挙げられる。キャリッジ26が急停止することで、キャリッジ26やインクヘッド27に対して外的な力が加わり、インクヘッド27の位置ズレが発生して空吸引位置P10のズレが発生する。
【0040】
空吸引位置P10のズレが発生して、空吸引位置P10にキャップ61を配置したにも関わらず、論理的な空吸引位置P10よりもキャップ61がノズル面29に近い場合、空吸引処理のときにインクヘッド27からインクが吸引されるおそれがある。一方、空吸引位置P10のズレが発生して、空吸引位置P10にキャップ61を配置したにも関わらず、論理的な空吸引位置P10よりもキャップ61がノズル面29から離れている場合、空吸引位置P10にキャップ61が移動している間に、キャップ61内のインクが飛び散るおそれがある。
【0041】
そこで、本実施形態では、空吸引位置P10のズレを解消するために、空吸引位置判定処理を行う。空吸引位置判定処理では、空吸引位置P10にズレが発生しているかを判定し、空吸引位置P10にズレが発生していると判定されたとき、空吸引位置P10の調整を行う。空吸引位置判定処理を実行するために、
図9に示すように、制御装置80は、更に第1移動制御部91と、第1吸引制御部92と、第1判定部93と、第2移動制御部96と、第2吸引制御部97と、第2判定部98と、調整部99とを備えている。制御装置80の各部の具体的な制御については後述する。
【0042】
次に、空吸引位置判定処理の制御手順について、
図11のフローチャートに沿って説明する。空吸引位置判定処理は、
図5に示すように、ダンパー44のレバー57が一対の検出部58aの間に位置していない状態で開始される。言い換えると、空吸引位置判定処理は、ダンパー44の貯留室52の圧力が所定の判定圧力より大きい状態で開始される。まずステップS101では、第1移動制御部91は、キャップ61を論理的な空吸引位置P10に移動させるように昇降機構62を制御する。例えば印刷待機中、キャップ61はインクヘッド27に装着された状態となる。印刷待機中において、第1移動制御部91は、キャップ61を下降させて、空吸引位置P10に移動させる。
【0043】
次に、ステップS103では、第1吸引制御部92は、第1移動制御部91によってキャップ61が空吸引位置P10に移動した後、吸引ポンプ63を所定の吸引時間T10、駆動させる。ここで、吸引時間T10は、予め設定されたものであり、記憶部81に記憶されている。吸引時間T10は、例えば最大5秒(すなわち5秒以下)であるが、特に限定されない。
【0044】
次に、ステップS105では、第1判定部93は、第1吸引制御部92によって吸引ポンプ63を駆動させた前後で、貯留室52の圧力が所定の値V10分、変化したか否かを判定する。本実施形態では、吸引ポンプ63が駆動する前において、
図5に示すように、ダンパー44のレバー57は、一対の検出部58aの間に位置していない。仮に、空吸引位置P10にズレが生じており、当該ズレがノズル面29に近づき過ぎているズレの場合、吸引ポンプ63が駆動すると、空吸引位置P10に関わらず、インクヘッド27内のインクがキャップ61に向かって吸引される。このとき、ダンパー44の貯留室52内のインクが減り、貯留室52の圧力が小さくなり、所定の判定圧力以下となることで、
図4に示すように、レバー57が一対の検出部58aの間に位置する。本実施形態では、レバー57が一対の検出部58aから外れた位置から、一対の検出部58aの間の位置までの移動で生じる貯留室52の圧力差が、所定の値V10となる。この所定の値V10は、記憶部81に予め記憶されている。
【0045】
本実施形態では、ステップS105において第1判定部93によって吸引ポンプ63を駆動させた前後で、貯留室52の圧力が所定の値V10分、変化した場合、インクヘッド27内のインクがキャップ61に吸引されたと判定される。この場合、空吸引位置P10にズレが発生していると判定され、次に、
図11のステップS113の空吸引位置P10の調整処理を実行する。
【0046】
なお、ステップS103において、所定の吸引時間T10(例えば5秒)が経過する前に、貯留室52の圧力が所定の値V10だけ変化することがあり得る。このように、ステップS103において貯留室52の圧力が所定の値V10だけ変化した場合には、所定の吸引時間T10を待たずに、すなわち吸引時間T10よりも短い時間の経過で、ステップS103の処理が終了して、ステップS105が実行されてもよい。本実施形態では、ステップS103において貯留室52の圧力が所定の値V10だけ変化したときとは、インクヘッド27内のインクが消費することを意味する。そのため、インクヘッド27内のインクが消費されたときに、所定の吸引時間T10を待たずに吸引ポンプ63を停止することで、インクの消費量を抑えることができる。また、この場合、ステップS103の処理時間を短縮することができるため、空吸引位置判定処理に要する時間を短縮することができる。
【0047】
一方、ステップS105において第1判定部93によって吸引ポンプ63を駆動させた前後で、貯留室52の圧力が所定の値V10分、変化しなかった場合、次に、
図11のステップS107に進む。ステップS107では、第2移動制御部96は、キャップ61をインクヘッド27に近づく方向に所定の移動距離D10移動させるように、昇降機構62を制御する。第2移動制御部96は、キャップ61を上方に所定の移動距離D10、移動させる。ここで、移動距離D10は、上述のように、昇降機構62がキャップ61を上下方向Zに移動させることができる最小距離のことである。移動距離D10は、予め設定された距離であり、記憶部81に記憶されている。
【0048】
次に、ステップS109では、第2吸引制御部97は、第2移動制御部96による制御の後、ステップS103における第1吸引制御部97による制御と同様に、吸引ポンプ63を所定の吸引時間T10、駆動させる。なお、ステップS109においてもステップS103と同様に、貯留室52の圧力が所定の値V10だけ変化した場合には、所定の吸引時間T10を待たずにステップS109の処理が終了してもよい。次に、ステップS111では、第2判定部98は、第2吸引制御部97によって吸引ポンプ63を駆動させた前後で、貯留室52の圧力が所定の値V10分、変化したか否かを判定する。
【0049】
ここで、空吸引位置P10におけるノズル面29とキャップ61(例えばキャップ61の上端)との上下の距離D5(
図10参照)は、空吸引処理を実行することが可能な最小距離である。すなわち、空吸引位置P10におけるノズル面29とキャップ61との上下の距離D5は、吸引ポンプ63を駆動したときにインクヘッド27内のインクがキャップ61に吸引されない最小距離である。そのため、空吸引位置P10にズレが発生していない場合、空吸引位置P10からキャップ61を上方に所定の移動距離D10、移動させて吸引ポンプ63を駆動させると、インクヘッド27内のインクが吸引される。このとき、ダンパー44のレバー57が一対の検出部58aから外れた位置(
図5参照)から、一対の検出部58aの間の位置(
図4参照)に移動するため、第2判定部98は、吸引ポンプ63を駆動させた前後で、貯留室52の圧力が所定の値V10分、変化したと判定する。この場合、空吸引位置P10にズレが生じていないと判定され、調整処理は実行されない。
【0050】
一方、空吸引位置P10にズレが発生し、ノズル面29からキャップ61が離れ過ぎている場合、空吸引位置P10からキャップ61を上方に所定の移動距離D10、移動させて吸引ポンプ63を駆動させると、インクヘッド27内のインクが吸引されない。このとき、吸引ポンプ63が駆動されても、ダンパー44のレバー57が一対の検出部58aから外れたままの状態となり、第2判定部98は、吸引ポンプ63を駆動させた前後で、貯留室52の圧力が所定の値V10分、変化していないと判定する。この場合、空吸引位置P10にズレが生じている判定され、次に
図11のステップS113に進む。
【0051】
ステップS113では、空吸引位置P10にズレが生じているため、調整部99は、空吸引位置P10を調整する。ここでは、調整部99は、ズレが生じないように空吸引位置P10を設定し直す。なお、調整部99が空吸引位置P10を調整する制御手順は特に限定されず、従来公知の制御で空吸引位置P10を決定することができる。調整部99は、例えば特開2019-171586号公報に記載された「空吸引位置制御」と同様の制御手順で、空吸引位置P10を調整することができる。
【0052】
本実施形態では、空吸引位置判定処理は、所定のタイミングで行われる。例えば空吸引位置判定処理は、周期的に実行されてもよく、所定の経過時間が経過する毎に実行されるように構成されてもよい。この場合、
図11のステップS101では、第1移動制御部91は、経過時間が経過する毎に、キャップ61を空吸引位置P10に移動させる制御を行う。ここで、上記の経過時間は、記憶部81に予め記憶されたものである。上記の経過時間の具体的な値は特に限定されないが、例えば上記の経過時間は、1日や1週間である。この場合、空吸引位置判定処理は、例えば1日毎、または、1週間毎に行われる。なお、所定の経過時間が経過したときに印刷中である場合には、その印刷が終了した後に空吸引位置判定処理が実行されるように構成されていてもよい。
【0053】
このように、経過時間が経過する毎に空吸引位置判定処理を実行することで、過度に間隔を空けることなく、空吸引位置判定処理を定期的に実行することができる。このように、定期的に空吸引位置判定処理を実行することで、処理が複雑化することを抑制することができる。
【0054】
また、空吸引位置判定処理は、上述のような定期クリーニングが実行される直前に実行されてもよい。定期クリーニングは、例えば所定の定期経過時間(例えば1日)が経過する毎に実行される。そのため、この場合、空吸引位置判定処理は、所定の定期経過時間が経過する毎に実行される。この場合、
図11のステップS101では、第1移動制御部91は、所定の定期経過時間が経過する毎に、定期クリーニング部83による定期クリーニングの実行前に、キャップ61を空吸引位置P10に移動させる制御を行う。ここでは、
図11のフローチャートが終了した後、すなわち、空吸引位置判定処理が終了した後に、定期クリーニング部83による定期クリーニングが実行される。
【0055】
例えば空吸引位置判定処理には、ノズル28からインクが排出される動作が含まれるため、空吸引位置判定処理を実行することでノズル28のメニスカスが整っていないことがあり得る。しかしながら、空吸引位置判定処理でノズル28のメニスカスが整っていない状態であっても、空吸引位置判定処理の後に定期クリーニングを実行することで、ノズル28のメニスカスを整えることができる。
【0056】
また、空吸引位置判定処理は、定期クリーニングが実行される直前であって、かつ、上記の所定の経過時間が経過した後に実行されるように構成されてもよい。例えば上記の所定の定期経過時間が経過して、定期クリーニングが実行されるときにおいて、前回の空吸引位置判定処理が実行されてから、所定の経過時間が経過している場合、空吸引位置判定処理を実行するように構成されてもよい。一方、上記の所定の定期経過時間が経過して、定期クリーニングが実行されるときにおいて、前回の空吸引位置判定処理が実行されてから所定の経過時間が経過していない場合、空吸引位置判定処理は実行されず、定期クリーニングのみ実行されるように構成されてもよい。
【0057】
また、空吸引位置判定処理は、非周期的に実行されるように構成されてもよい。空吸引位置判定処理は、例えば印刷中におけるプリンタ100のエラーが発生して当該エラーが解消された後に、実行されるように構成されてもよい。ここでいう印刷中におけるプリンタ100のエラーとは、例えば機械的なエラーのことであり、上述のような印刷中の媒体5の詰まり(いわゆるメディアジャム)によるキャリッジ26の急停止によるエラーである。この場合、
図11のステップS101では、第1移動制御部91は、印刷中にエラーが発生した後(詳しくは、エラー発生後に当該エラーが解消した後)、キャップ61を空吸引位置P10に移動させる制御を行う。
【0058】
空吸引位置P10のズレが発生する要因として、印刷中のエラーが挙げられる。そのため、空吸引位置P10のズレが生じる可能性が高いと考えられる印刷中のエラーが発生した後に、空吸引位置判定処理を実行することで、空吸引位置判定処理を効率よく実行することができる。
【0059】
以上、本実施形態では、インクヘッド27内のインクが吸引ポンプ63によって吸引されるとき、ダンパー44の貯留室52の圧力が小さくなるため、貯留室52の圧力が所定の値V10分、変化することになる。例えば空吸引位置P10にズレが生じて、ノズル面29に対してキャップ61が近づき過ぎている場合、キャップ61が空吸引位置P10に配置されているにも関わらず、吸引ポンプ63の駆動によりインクヘッド27内のインクが吸引されて、貯留室52の圧力が変化する。例えば空吸引位置P10にズレが生じていない場合、空吸引位置P10からインクヘッド27に向かって所定の移動距離D10、キャップ61を移動させた状態で吸引ポンプ63を駆動させると、インクヘッド27内のインクが吸引される。しかしながら、例えば空吸引位置P10にズレが生じ、ノズル面29に対してキャップ61が離れ過ぎている場合、空吸引位置P10からインクヘッド27に向かって所定の移動距離D10、キャップ61を移動させた状態で吸引ポンプ63を駆動させると、インクヘッド27内のインクが吸引されないため、貯留室52の圧力に変化が生じない。このように、吸引ポンプ63の駆動前後で、貯留室52の圧力が所定の値V10分変化していないか否かを判定することで、空吸引位置P10にズレが生じているか否かを判定することができる。よって、空吸引位置P10にズレが生じているときのみに、空吸引位置P10の調整が行われるため、空吸引位置P10にズレが生じていることを適切に判断して、空吸引位置P10を調整することができる。
【0060】
本実施形態では、
図10に示すように、空吸引位置P10におけるノズル面29とキャップ61(例えばキャップ61の上端)との上下の距離D5は、空吸引処理を実行することが可能な最小距離である。このような位置を空吸引位置P10に設定することで、空吸引処理のときに、ノズル面29からキャップ61が離れ過ぎていないため、キャップ61が昇降するときに、キャップ61からインクが落下し難くすることができる。
【0061】
本実施形態では、所定の移動距離D10は、昇降機構62がインクヘッド27に対してキャップ61を上下に移動させることが可能な最小距離である。このように当該最小距離でキャップ61をインクヘッド27に移動させて、第2判定部98による判定を行うことで、より厳密に空吸引位置P10のズレが生じているか否かを判定することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、空吸引位置P10は、ノズル面29からキャップ61までの上下方向Zの距離D5が、吸引ポンプ63を駆動させた状態でインクヘッド27内のインクを吸引することができない最小距離となるようなキャップ61の位置である。しかしながら、空吸引位置P10は、当該最小距離からマージンを含めた距離、例えば当該最小距離のときのキャップ61の位置よりも下方にマージン距離D20移動させた位置であってもよい。このマージン距離D20は、プリンタ100毎に適宜設定されるものであり、例えば0.7mmである。このように、マージン距離D20が設定された空吸引位置P10の場合、空吸引位置P10からキャップ61を上方に所定の移動距離D10(例えば0.1mm)移動させて吸引ポンプ63を駆動させた場合であっても、インクヘッド27内のインクは、キャップ61に向かって吸引されない。
【0063】
マージン距離D20が設定された空吸引位置P10に対して空吸引位置判定処理を行う場合、
図12のフローチャートに沿って実行される。なお、
図12のステップS201、S203、S205、および、S213は、
図11のステップS101、S103、S105、および、S113と同様の制御であるため、説明は省略する。
図12のステップS207では、第2移動制御部96は、キャップ61をインクヘッド27が近づく方向にマージン距離D20(例えば0.7mm)移動させるように、昇降機構62を制御する。
【0064】
ステップS207において、キャップ61が上方にマージン距離D20移動した後、次にステップS209に進む。ステップS209では、
図11のステップS109と同様に、第2吸引制御部97は、吸引ポンプ63を所定の吸引時間T10、駆動させる。その後、ステップS211では、
図11のステップS111と同様に、第2判定部98は、第2吸引制御部97によって吸引ポンプ63を駆動させた前後で、貯留室52の圧力が所定の値V10分、変化したか否かを判定する。ここで、貯留室52の圧力が所定の値V10分、変化したと判定された場合、空吸引位置P10にズレが生じていないと判定される。一方、ステップS211において、貯留室52の圧力が所定の値V10分、変化していないと判定された場合、空吸引位置P10にズレが発生し、ノズル面29からキャップ61が離れ過ぎていると判定される。この場合、次に、ステップS213に進み、調整部99は、空吸引位置P10の調整を行う。
【0065】
このように、マージン距離D20が設定された空吸引位置P10の場合であっても、
図12のフローチャートに沿って制御を行うことで、空吸引位置P10にズレが生じているか否かを判定し、必要に応じて空吸引位置P10を調整することができる。
【符号の説明】
【0066】
27 インクヘッド
28 ノズル
29 ノズル面
44 ダンパー
54 圧力検出機構
61 キャップ
62 昇降機構
63 吸引ポンプ
80 制御装置
91 第1移動制御部
92 第1吸引制御部
93 第1判定部
96 第2移動制御部
97 第2吸引制御部
98 第2判定部
99 調整部
100 インクジェットプリンタ