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特開2022-40663浮遊微小物除去方法および浮遊微小物除去装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040663
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】浮遊微小物除去方法および浮遊微小物除去装置
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/45 20060101AFI20220304BHJP
   B03C 3/40 20060101ALI20220304BHJP
   B03C 3/74 20060101ALI20220304BHJP
   B03C 3/10 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B03C3/45 Z
B03C3/40 A
B03C3/74 A
B03C3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145471
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】391038475
【氏名又は名称】株式会社TRINC
(74)【代理人】
【識別番号】100079832
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 誠
(72)【発明者】
【氏名】高柳 真
【テーマコード(参考)】
4D054
【Fターム(参考)】
4D054AA11
4D054BA02
4D054BC09
4D054BC28
4D054BC31
4D054DA04
4D054DA11
4D054EA07
(57)【要約】
【課題】 高効率、省エネルギー、省資源の浮遊微小物除去方法および浮遊微小物除去装置を提供する。
【解決手段】 浮遊微小物除去装置(1000)は、イオン放射手段(1010)によって、浄化対象空間(S)内の浮遊微小物(D)を空気イオン(AI)で帯電し、空気イオンと逆極性の電界を発生する線状電極(1020)によって、浮遊微小物を捕捉しかつ表面(1020S)に付着させ、線状電極の表面に接する掻き落とし位置(P)に掻き落とし手段(1030、1035、2110、2120、2050、2055)を配置し、移動手段(2010)によって、線状電極の表面各部を、掻き落とし位置まで順次移動するとともに、掻き落とし手段との摺接によって前記浮遊微小物を掻き落とし、回収手段によって、掻き落とされた前記浮遊微小物を回収する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に浮遊微小物を含む浄化対象空間に、片極性の空気イオンを放射するイオン放射手段と、
前記空気中に配置され、前記空気イオンと逆極性の電圧が印加されて電界を発生し、前記電界によって前記浮遊微小物を吸引し、表面で捕捉して、表面に付着させる線状電極と、
前記線状電極の表面に接する掻き落とし位置に配置された掻き落とし手段と、
前記浮遊微小物が付着した前記線状電極の表面各部を、掻き落とし位置まで順次移動するとともに、掻き落とし手段との摺接によって前記浮遊微小物を掻き落とす移動手段と、
前記掻き落とされた前記浮遊微小物を回収する回収手段と、
を備えた浮遊微小物除去装置であって、
前記線状電極の前記浄化対象空間に開放された部分(浮遊微小物吸着部)の配置と、前記掻き落とし手段、前記移動手段および回収手段の配置とを、独立に最適化したことを特徴とする浮遊微小物除去装置。
【請求項2】
前記掻き落とし手段、前記移動手段および回収手段は、浮遊微小物吸着部よりも低位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項3】
移動手段は、
前記線状電極を線長方向に駆動する駆動部と、
前記駆動部の上方に配置され、前記線状電極を浄化対象空間から駆動部に向かって下方に導き、かつ前記駆動部から上方の浄化対象空間に導く誘導部と、
前記駆動部と前記誘導部とを上下に連通しつつ、内部空間に前記線状電極が張られた支柱と、
を備え、前記回収手段は前記駆動部内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項4】
前記掻き落とし手段は、アースから絶縁されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項5】
前記回収手段は受け皿であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項6】
線状電極に高電圧を給電する給電手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項7】
前記線状電極は、複数のプーリによって導かれ、移動するように前記プーリに巻き掛けられ、かつ回転駆動される駆動プーリに巻き掛けられ、前記駆動プーリは、前記線状電極に張力を与えるように付勢されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項8】
前記線状電極に付着した浮遊微小物を前記線状電極上で滅菌する滅菌器と、前記掻き落とし手段によって前記受け皿上に掻き落とされた浮遊微小物を滅菌する滅菌器との、いずれか一方または両方を、さらに有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊微小物の除去、特に空間に浮遊する微小物の空気イオンを用いた除去に関する。
【背景技術】
【0002】
塵埃等の浮遊微小物は生産工程等の障害となるため、その捕捉、除去が必須であり、従来、空気清浄機等による捕捉、除去が行われていた。
空気清浄機は、浮遊微小物を含む浄化対象空間の空気を吸い込み、フィルターまたは静電濾過器で浮遊微小物を濾過し、空気を浄化するものであるが、濾過・浄化された空気は元の空間に戻されるため、再び汚れた空気と混ざり合う。このため、浄化対象空間全体を完全に浄化するためには、浄化対象空間容積の何倍もの空気を濾過しなければならず、2時間から5時間という長時間を要するとともに、多大の電力を消費するという問題があり、フィルター掃除、交換等のメンテナンスも煩雑であった。また、空気清浄機は、通常、ファンにより空気を吸い込み、処理後、吹き出すが、その際、床や机上に鎮まっていた塵埃等を舞い上がらせ空気の汚染度を高める可能性がある。
他の形態の浮遊微小物除去装置として、被覆電線に高電圧を印加して、静電引力で浮遊微小物を吸引し、被覆に塗布した粘着剤により捕捉するものもあるが、粘着剤という消耗材を要するばかりでなく、微小物を吸着し、汚染した電線を回収し、リサイクルする手間と費用を要するという問題があった。
また特許文献1の集塵ベッセルは、集塵部に、孔壁面に粘着剤が塗布されたハニカム多孔集合体が使用されており、ハニカム多孔集合体は交換、リサイクル等の費用を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-265916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の問題点を解消すべく創案されたもので、高効率、省エネルギー、省資源の浮遊微小物除去方法および浮遊微小物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る浮遊微小物除去装置は、空気中に浮遊微小物を含む浄化対象空間に、片極性の空気イオンを放射するイオン放射手段と、前記空気中に配置され、前記空気イオンと逆極性の電圧が印加されて電界を発生し、前記電界によって前記浮遊微小物を吸引し、表面で捕捉して、表面に付着させる線状電極と、前記線状電極の表面に接する掻き落とし位置に配置された掻き落とし手段と、前記浮遊微小物が付着した前記線状電極の表面各部を、掻き落とし位置まで順次移動するとともに、掻き落とし手段との摺接によって前記浮遊微小物を掻き落とす移動手段と、前記掻き落とされた前記浮遊微小物を回収する回収手段と、を備えた浮遊微小物除去装置であって、
前記線状電極の前記浄化対象空間に開放された部分(浮遊微小物吸着部)の配置と、前記掻き落とし手段、前記移動手段および回収手段の配置とを、独立に最適化したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る浮遊微小物除去装置は、イオン放射手段によって、浮遊微小物(ウイルスを含む)を空気イオンで帯電し、空気イオンと逆極性の電界を発生しつつ浄化対象空間に開放された線状電極の部分(浮遊微小物吸着部)によって、浮遊微小物を捕捉しかつ表面に付着させ、線状電極の表面に接する掻き落とし位置に掻き落とし手段を配置し、移動手段によって、線状電極の表面各部を、掻き落とし位置まで順次移動するとともに、掻き落とし手段との摺接によって前記浮遊微小物を掻き落とし、回収手段によって、掻き落とされた前記浮遊微小物を回収するので、高効率、省エネルギーの浮遊微小物除去が可能であり、かつ、従来のようにフィルターを用いないため、そのメンテナンスも不要である。
そして本発明は、舞い上がった浮遊微小物が多く存在する浄化対象空間上部に浮遊微小物吸着部を配置し、線状電極の移動手段をメンテナンスが容易な浄化対象空間下部に配置する等浮遊微小物吸着部、移動手段、回収手段を独立に最適配置することによって、浮遊微小物の集塵効率と、移動手段による浮遊微小物の回収作業効率との両者を改善し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る浮遊微小物除去方法のー実施例を示す斜視図である。
図2】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例1を示す平面図である。
図3図2の浮遊微小物除去装置のIII-III矢視線に沿う断面図である。
図4図3における微小物回収機を示す平面図である。
図5図4の微小物回収機のV-V矢視線に沿う断面図である。
図6図5の微小物回収機のVI-VI矢視線に沿う断面図である。
図7図2の受け皿を示す縦断面図である。
図8図2の滅菌器を示す縦断面図である。
図9図7の受け皿に付加された紫外線ランプを示す端面図である。
図10】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例2における微小物回収機を示す平面図である。
図11図10の微小物回収機のXI-XI矢視線に沿う断面図である。
図12図11の微小物回収機のXII-XII矢視線に沿う断面図である。
図13】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例3を示す平面図である。
図14】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例3を示す正面図である。
図15図14のXV-XV矢視線に沿う断面図である。
図16図15のXVI-XVI矢視線に沿う断面図である。
図17図14のXVII-XVII矢視線に沿う断面図である。
図18図17のXVIII-XVIII矢視線に沿う断面図である。
図19図14のXIX-XIX矢視線に沿う断面図である。
図20図19のXX-XX矢視線に沿う断面図である。
図21】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例4を示す平面図である。
図22】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例4を示す正面図である。
図23】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例5を示す平面図である。
図24】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例5を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[浮遊微小物除去方法]
次に本発明に係る浮遊微小物除去方法について説明する。
【実施例0009】
図1において、浮遊微小物除去方法は、
(1) 空気中に浮遊微小物Dを含む浄化対象空間Sに、片極性の空気イオンAIを放射して、空気中に浮遊する浮遊微小物Dを帯電させ、
(2) 空気中に、空気イオンAIと逆極性の電圧を印加した線状電極1020を配置し、
(3) 線状電極1020の表面1020Sに接する掻き落とし位置Pに掻き落とし手段1030、1035を配置し、
(4) 線状電極1020の電界によって前記浮遊微小物を吸引して、前記線状電極の表面1020Sで浮遊微小物Dを捕捉して、表面1020Sに付着させ、
(5) 線状電極1020の表面に接する掻き落とし位置に掻き落とし手段を配置し、
(6) 浮遊微小物Dが付着した線状電極1020の表面1020S各部を、掻き落とし位置Pまで順次移動するとともに、掻き落とし手段1030、1035との摺接によって浮遊微小物Dを掻き落とし、
(7) 線状電極1020から掻き落とされた浮遊微小物Dを、回収手段(受け皿)1040で回収する。
(8) なお、必要に応じて、線状電極1020を滅菌する滅菌器3000(図2図3に関連して後述する。)を採用してもよい。
【0010】
図1に示すように、空気中に浮遊微小物Dを含む浄化対象空間Sに、イオン放射器(イオン放射手段)1010が配置されており、イオン放射器1010は、イオン放射口1012から片極性の空気イオンAIを空気中に放射する。イオン放射器1010は、コロナ放電等により片極性の空気イオンAIを発生し、浄化対象空間Sに放射する。これによって浮遊微小物Dは、空気イオンAIの極性にのみ帯電する。
浄化対象空間Sには、イオン放射器1010と適正な離間間隔をおいて、丸棒状(断面円形ワイヤ状)の線状電極1020が配置され、線状電極1020には空気イオンAIと逆極性の高電圧が印加されている。これによって、線状電極1020は、帯電した浮遊微小物Dを吸引し、吸引された浮遊微小物Dは線状電極1020の表面1020Sに付着する。空気イオン放射器1010、線状電極の電力はわずかであり、高効率、省エネルギーである。また、浮遊微小物Dは無風状態で捕捉されるので、鎮まった塵埃が舞上がることもない。
なお、必要に応じて、線状電極1020に捕捉されたウイルス等を滅菌する滅菌器3000(図2図3に関連して後述する。)を採用してもよい。これによって、浮遊微小物Dやウイルス等を滅菌し得る。
【0011】
線状電極1020の近傍には、1対のスクレーパ(掻き落とし手段)1030、1035が配置されている。スクレーパ1030、1035には、表面1020Sに円形に沿う半円状奥部1030B、1035Bが形成されたスリット1030S、1035Sが形成され、半円状奥部1030B、1035Bが表面1020Sの半面ずつに突き当てられ、両者によって、表面1020Sの全面に摺接し得る。線状電極1020は、継続的あるいは間欠的に線長方向に駆動されて線長方向に移動し、スクレーパ1030、1035は、線状電極1020の全長に渡って、表面1020S全面に摺接し、これによって、表面1020Sに付着した浮遊微小物Dは完全に掻き落される。
スクレーパ1030、1035はアースから絶縁されており、高電圧の線状電極1020がアースに導通することが防止されている。
【0012】
スクレーパ1030、1035の線状電極1020に対する摩擦力はわずかであり、線状電極1020はわずかな電力で駆動し得る。
スクレーパ1030、1035の半円状奥部1030B、1035Bの下方には、上方に開口する回収手段(受け皿)1040が配置され、表面1020Sから掻き落された浮遊微小物DD(回収後の浮遊微小物をDDとする。)は受け皿1040内に回収される。
すなわち、線状電極1020によって浮遊微小物Dを捕捉しているので、線状電極1020を線長方向に駆動するだけで浮遊微小物Dを受け皿1040に回収でき、回収、廃棄処理は容易であり、フィルターを用いないためメンテナンスの手間、費用はわずかである。
【0013】
以上のとおり、本実施例の浮遊微小物除去方法は、高効率、省エネルギー、省資源でメンテナンスが容易である。
【0014】
[浮遊微小物除去装置]
次に本発明に係る浮遊微小物除去装置について説明する。
【実施例0015】
図2図3において、実施例1の浮遊微小物除去装置1000は、空気中に浮遊微小物Dを含む浄化対象空間Sに設置され、片極性の空気イオンAIを放射するイオン放射器(イオン放射手段)1010と、空気イオンAIと逆極性の高電圧が印加されて電界を発生する線状電極1020とを備える。
イオン放射器1010は、コロナ放電等により、片極性の空気イオンAIを発生し、浄化対象空間Sに放射する。これによって浮遊微小物Dは、空気イオンAIの極性にのみ帯電し、線状電極1020は、電界によって、浮遊微小物Dを吸引しかつ表面1020Sに付着させる。
なお、線状電極1020は、後述する駆動部2000によって線長方向に駆動されるため、駆動部2000内に導入されているが、浮遊微小物Dを吸引し、表面1020Sに付着させるのは、主に浄化対象空間S内に開放された部分であり、この開放部分を、特に、浮遊微小物吸着部1020Aと呼ぶ。
【0016】
浮遊微小物除去装置1000は、放射状に張り出す複数のアーム1050を備え、線状電極1020の浮遊微小物吸着部1020Aは、アーム1050によって空間的に広げつつ張設されている。図2では、アーム1050は4本設けられて十字状に組まれているが、5本、6本、あるいはそれ以上の本数を採用してもよく、空間的に広がる任意の形態を採用し得る。
イオン放射器1010は、アーム1050によって支持され、線状電極1020から略1m離間しつつ、線状電極1020に沿って配置されている。図2では、イオン放射器1010はひし形に配置されているが、空間的に広がる形状であれば、5角形、6角形、あるいはより多くの角部の多角形を採用できる。
【0017】
イオン放射器1010を空間的に広がる形状に配置したことによって、浄化対象空間S内の広範囲に渡って、浮遊微小物Dが帯電し、線状電極1020を空間的に広がる形状に配置したことにより、浄化対象空間S内の広範囲において、帯電した浮遊微小物Dを吸引し得る。
【0018】
線状電極1020は図1同様の丸棒状であり、いわゆるワイヤ状に形成されている。以下本実施例の線状電極1020をワイヤ電極1020といいかえる。
【0019】
各アーム1050の先端部(浮遊微小物除去装置1000の外周端部)にはプーリ1060、1062、1064、1066が回転自在に装着され、ワイヤ電極1020はプーリ1060~1066に巻き掛けられて、空間的に広がる閉ループに沿って、線長方向に周回走行可能である。アーム1050は、先端部が多角形の頂点となるように放射状に組まれ、その中心部には、駆動部2000が設けられ、ワイヤ電極1020は駆動部2000によって駆動されて、線長方向に送られる(例えば、図2の矢印DR方向)。
【0020】
ここで、図3を参照して、駆動部2000を説明する。
駆動部2000は、ケーシング2060を有し、ケーシング2060内には、ワイヤ電極1020を駆動する駆動プーリ(移動手段)2010が収納されている。駆動プーリ2010には、モータ等の駆動手段(図示省略)が接続されて、ワイヤ電極1020は、1個のプーリ1060(図3の左端)から駆動部2000に引き込まれて、駆動プーリ2010に巻き掛けられている。駆動プーリ2010は、バネ2020によって、プーリ1060から離間する方向に付勢され、ワイヤ電極1020の適正な張力、プーリ1060~1066との適正な摩擦力が確保されている。これによって、駆動プーリ2010の駆動力は適切にワイヤ電極1020に伝達される。これによって、ワイヤ電極1020は、駆動プーリ2010の駆動力で、線長方向に移動する。
【0021】
駆動部2000には、給電器2030が収納され、ワイヤ電極1020は、給電器2030から給電された電圧によって電界を発生し、この電界によって浮遊微小物Dを吸引しかつ表面1020Sに付着させる。
【0022】
図3図7に示すように、駆動部2000には、約90度の角度で交差するブラシ(掻き落とし手段)2050、2055をケーシング2042内に内蔵した掻き落とし部2040が収納され、ブラシ2050、2055は、その毛部2052、2057内にワイヤ電極1020を挿通した状態で、ワイヤ電極1020の全周面に摺接する。ワイヤ電極1020が線長方向に走行すると、毛部2052、2057はワイヤ電極1020全長に繰り返し摺接し、表面1020Sに付着した浮遊微小物Dを掻き落とす。
【0023】
駆動部2000の底部には、毛部2052、2057のワイヤ電極1020との摺接位置の下方に、上方に開口する回収手段(受け皿)1040が配置され、表面1020Sから掻き落された浮遊微小物DD(回収後の浮遊微小物をDDとする。)は受け皿1040内に回収される。
【0024】
図3図9に示すように、駆動部2000内には、受け皿1040の上面に沿って紫外線ランプ(滅菌器)1045が設置され、底面にはヒータ1047が装着されている。これによって、受け皿1040内に回収された浮遊微小物DDは強力に滅菌される。
【0025】
プーリ1060と駆動部2000との間で、駆動プーリ2010の両側に至るワイヤ電極1020に、それぞれ滅菌器3000、3000が設けられ、ワイヤ電極1020は、それぞれの滅菌器3000、3000に挿通されている。
図2図8に示すように、滅菌器3000はケーシング3020を有し、内部に紫外線ランプ3030が設置され、底部にヒータ3040が装着されている。これによって、ワイヤ電極1020の表面1020Sに付着した浮遊微小物Dは強力に滅菌処理される。
【0026】
すなわち、ワイヤ電極1020によって浮遊微小物Dを捕捉しているので、ワイヤ電極1020を線長方向に駆動するだけで浮遊微小物Dを受け皿1040に回収でき、滅菌器1045、3000によって滅菌処理されるので、浮遊微小物Dの回収、廃棄処理は容易であり、メンテナンスの手間、費用はわずかである。
【実施例0027】
次に、本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例2について、図10図12に基づいて説明する。図中、実施例1と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0028】
本実施例の浮遊微小物除去装置は、実施例1におけるブラシ状の掻き落とし手段(図4図6)に替えて、スクレーパ状の掻き落とし手段を採用したものである。
【0029】
図10図12に示すように、駆動部2000(図2図3)に収納された掻き落とし部2040は、スクレーパ(掻き落とし手段)2110、2120をケーシング2100内に内蔵しており、スクレーパ2110、2120には、表面1020Sの円形に沿う半円状奥部2110B、2120Bを有するスリット2110S、2120Sが形成されている。これによって、スクレーパ2110、2120は、表面1020Sの半面ずつに接して、両者によって、表面1020Sの全面に摺接し得る。ワイヤ電極1020は、継続的あるいは間欠的に線長方向(矢印DR方向)に駆動され、スクレーパ2110、2120は、ワイヤ電極1020の全長に渡って、表面1020S全面に摺接し、表面1020Sに付着した浮遊微小物Dを完全に掻き落す。
ワイヤ電極1020の走行方向DRに対して、スクレーパ2110、2120は直角または一定の傾斜角で交差し、半円状奥部2110B、2120Bは、角部がワイヤ電極1020に接する。これによって、スクレーパ2110、2120による浮遊微小物Dの剥離力が高められている。
【0030】
スクレーパ2110、2120のワイヤ電極1020に対する摩擦力はわずかであり、ワイヤ電極1020はわずかな電力で駆動し得る。
スクレーパ2110、2120の半円状奥部2110B、2120Bの下方には、上方に開口する回収手段(受け皿)1040が配置され、表面1020Sから掻き落された浮遊微小物DD(回収後の浮遊微小物をDDとする。)は受け皿1040内に回収される。
すなわち、ワイヤ電極1020によって浮遊微小物Dを捕捉しているので、線状電極1020を線長方向に駆動するだけで浮遊微小物Dを受け皿1040に回収でき、回収、廃棄処理は容易であり、メンテナンスの手間、費用はわずかである。
【実施例0031】
次に、本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例3について、図13図20に基づいて説明する。図中、実施例1と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0032】
本実施例の浮遊微小物除去装置は、舞い上がった浮遊微小物Dが多く存在する浄化対象空間S上部に浮遊微小物吸着部1020Aを配置し、一方、駆動部2000をメンテナンスが容易な浄化対象空間S下部に配置している。すなわち、浮遊微小物吸着部1020A、駆動部2000を独立に最適配置することによって、浮遊微小物Dの集塵効率が高められるとともに、駆動部2000における浮遊微小物Dの回収作業効率が改善される。また床置できるため、設置、据付工事が容易で、移動も簡単にできる。
【0033】
図13、14に示すように、浮遊微小物除去装置1000は、実施例1と同様に、十字状に組まれたアーム1050の3つの先端部(図13の上端、下端、左端)にプーリ1062、1064、1066が回転自在に装着され、右端の先端部には誘導部4000が設けられている。図14に示すように、誘導部4000は鉛直な支柱4100の上端部に設けられ、支柱4100の下端部には駆動部2000が設けられている。駆動部2000には、アーム1050を組んでなる十字形の中央に向かって水平に突き出す支持脚4200、支持脚4200に対してほぼ直角な水平方向に対称に突き出す支持脚4210、4220が設けられ、支柱4100、誘導部4000、アーム1050、イオン放射器1010は、駆動部2000および支持脚4200、4210、4220によって安定に支持される。
なお、図中、1010はイオン放射器を示す。
【0034】
図14~16に示すように、誘導部4000は直方体状のケーシング4010を有し、ケーシング4010のプーリ1062、1066に斜めに対向する側面4012、4014には、ワイヤ電極1020を挿通し得る開口4016が設けられている。ケーシング4010内には、プーリ1062で案内されたワイヤ電極1020が掛けられた回転自在のプーリ1068、プーリ1066で案内されたワイヤ電極1020が掛けられた回転自在のプーリ1070が設けられている。
プーリ1068は、プーリ1062から水平に、ケーシング4010内に導入されたワイヤ電極1020を、支柱4100内部空間に沿って下方に導き、あるいは、支柱4100内部空間に沿って上昇して誘導部4000に至ったワイヤ電極1020を、開口4016を通して水平に導き、プーリ1062に案内する。プーリ1070は、プーリ1066から水平に、ケーシング4010内に導入されたワイヤ電極1020を、支柱4100内部空間に沿って下方に導き、あるいは、支柱4100内部空間に沿って上昇して誘導部4000に至ったワイヤ電極1020を、開口4016を通して水平に導き、プーリ1066に案内する。
【0035】
図17、18に示すように、支柱4100は中空であり、誘導部4000と駆動部2000とを連通し、内部空間にワイヤ電極1020が上下に張られている。誘導部4000と駆動部2000の間では、ワイヤ電極1020は浄化対象空間Sから完全に隔離され、線状電極1020に付着した浮遊微小物Dが浄化対象空間Sに漏洩することはない。支柱4100の内部空間には、上下に延在する滅菌装置4300が設けられ、支柱4100内で上下するワイヤ電極1020を効果的に滅菌し得る。滅菌装置4300としては、滅菌用光源やオゾン発生装置を適用可能であり、滅菌装置4300から光線やオゾンをワイヤ電極1020方向に反射する増幅器4400を支柱4100の内面に設けることにより、滅菌効果を高めることができる。
【0036】
図19、20に示すように、駆動部2000には、プーリ1068、1070に対応した位置で、ワイヤ電極1020の下端部が掛けられたプーリ1072、1074が設けられ、ワイヤ電極1020は、プーリ1072、1074から水平に引き出されて、水平な駆動プーリ2010に掛けられている。駆動プーリ2010には、動力部4500によって回転駆動される水平な駆動伝達車4510が当接され、駆動プーリ2010は動力部4500によって回転駆動される。これによって、ワイヤ電極1020は、その線長方向に駆動される。
【0037】
駆動プーリ2010はバネ2020によって、ワイヤ電極1020に張力を付与するように付勢され、ワイヤ電極1020は常に適正な緊張状態にある。実施例1と同様に、駆動部2000には、給電部2030、掻き落とし部2040、受け皿1040、滅菌器1045が設けられている。
【0038】
実施例3は、浮遊微小物吸着部1020A、駆動部2000を独立に最適配置することによって、浮遊微小物Dの集塵効率が高められるとともに、駆動部2000における浮遊微小物Dの回収作業効率が改善される。また、誘導部4000で円滑にワイヤ電極1020を支柱4100に導入し、かつ支柱4100から導出するので、ワイヤ電極1020は円滑に線長方向に駆動され、浮遊微小物吸着部1020Aの状態と、駆動部2000内に導入された状態とを、円滑に遷移し得る。さらに、支柱4100内の長距離移動時に滅菌されるので、滅菌効果が高い。
【実施例0039】
次に、本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例4について、図21図22に基づいて説明する。図中、実施例1、3と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0040】
本実施例の浮遊微小物除去装置1000は、実施例3と同様のアーム1050と、アーム1050よりも長尺のアーム1055とを十字型に組み、実施例3と同様の3つの先端部(図13の上端、下端、左端)にプーリ1062、1064、1066が回転自在に装着されている。そして、長尺のアーム1055は、図上、左右に延伸配置され、その先端部には誘導部4000、支柱4100、駆動部2000のセットが設けられている。
【0041】
これによって、実施例3の効果に加え、浮遊微小物吸着部1020Aから水平方向に離間した位置で浮遊微小物の吸着動作を、効率よく行わせることができる。また、誘導部4000、支柱4100、駆動部2000のメンテナンスや、浮遊微小物Dの回収作業を行うことができ、浄化対象空間Sの汚染を最大限に防止し得るという効果が得られる。
【実施例0042】
次に、本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例5について、図23、24に基づいて説明する。図中、実施例1、3と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0043】
本実施例の浮遊微小物除去装置は、実施例1と同様に、駆動部2000を十字形に組まれたアーム1050の中央に配置して、浮遊微小物除去装置1000の中央で浮遊微小物Dの回収作業を行うものであり、誘導部4000、支柱4100、駆動部2000のセットを中央に配置している。
【0044】
図23、24に示すように、浮遊微小物除去装置1000は、実施例1と同様のアーム1050を十字型に組み、それぞれの先端部にプーリ1060、1062、1064、1066が回転自在に装着されている。そして、プーリ1060、1062、1064、1066にはワイヤ電極1020が周回状に掛けられ、かつ、プーリ1060から中央に向かって延ばされて、誘導部4000に導かれている。
【0045】
誘導部4000は実施例3と同様に構成され、その下側に支柱4100、駆動部2000が順次接続されている。
【0046】
実施例5は、実施例3が、部屋の壁際に配置できるのに対し、部屋の中央部に配置でき、狭小空間に適応し得るという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本装置は工場やオフィス、病院などに設置して用いるが、人間の邪魔にならないように上方空間に配置するのが好ましい。
その場合、天井から吊り下げるのが好ましいが、天井に据え付けることが困難な場合は、床からスタンドで立たせることも可能である。その場合、転倒防止のため、壁または天井から転倒防止装置を設けるのが好ましい。
【符号の説明】
【0048】
AI 空気イオン
D、DD 浮遊微小物
P 掻き落とし位置
S 浄化対象空間
1000 浮遊微小物除去装置
1010 イオン放射器(イオン放射手段)
1012 イオン放射口
1020 線状電極、ワイヤ電極
1020A 浮遊微小物吸着部
1020S 表面
1030、1035、2110、2120 スクレーパ(掻き落とし手段)
1030B、1035B、2110B、2120B 半円状奥部
1030S、1035S スリット
1040 受け皿(回収手段)
1045 滅菌器(紫外線ランプ)
1047、3040 ヒータ
1050、1055 アーム
1060、1062、1064、1066、1068、1070、1072、1074、1076、1078 プーリ
2000 駆動部
2010 駆動プーリ(移動手段)
2020 バネ
2030 給電器
2040 掻き落とし部
2040B 底部
2042、2060、2100、3020 ケーシング
2050、2055 ブラシ(掻き落とし手段)
2052、2057 毛部
2110S、2120S スリット
3000 滅菌器
3030 紫外線ランプ
4000 誘導部
4010 ケーシング
4012、4014 側面
4016 開口
4100 支柱
4200、4210、4220 支持脚
4300 滅菌装置
4400 増幅器
4500 動力部
4510 駆動伝達車
図1
図2
図3
図4
図5
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図11
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