(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040710
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】ラスタイメージ変換装置及びプログラム並びに印刷システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
G06F3/12 344
G06F3/12 303
G06F3/12 350
G06F3/12 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145545
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】307015301
【氏名又は名称】武藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】角野 徳重
(72)【発明者】
【氏名】徳成 一博
(72)【発明者】
【氏名】矢彦沢 清
(57)【要約】 (修正有)
【課題】操作性及び汎用性に優れたラスタイメージ変換装置及びプログラム並びに印刷システムを提供する。
【解決手段】ラスタイメージ変換装置10は、印刷データを入力し、ラスタイメージデータに変換して印刷装置30に出力する。記憶部13は、印刷データをラスタイメージデータに変換する際の条件を規定した印刷環境データを記憶する。操作部14は、印刷環境データを設定又は編集する。変換処理部12は、印刷環境データに基づいて、印刷データをラスタイメージデータに変換する。印刷環境データは、印刷装置で被印刷物を位置決めする治具を生成するための治具レイアウト情報を含む。変換処理部12は、治具レイアウト情報に基づいて、治具を印刷装置で印刷出力するための治具イメージデータを生成し出力する治具作成処理と、前記レイアウト情報に基づいて印刷装置における印刷データの印刷位置及び印刷範囲を印刷データ割り付け処理と、を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データを入力し、この印刷データをラスタイメージデータに変換して印刷装置に出力するラスタイメージ変換装置であって、
前記印刷データを前記ラスタイメージデータに変換する際の条件を規定した印刷環境データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶される前記印刷環境データを設定又は編集するための操作部と、
前記記憶部に記憶された印刷環境データに基づいて、前記印刷データを前記ラスタイメージデータに変換する変換処理部と、
を有し、
前記印刷環境データは、前記印刷装置で被印刷物を位置決めする治具を生成するための治具レイアウト情報を含み、
前記操作部は、前記治具レイアウト情報を生成又は編集することが可能な操作モードを備え、
前記変換処理部は、前記治具レイアウト情報に基づいて、前記治具を前記印刷装置で印刷出力するための治具イメージデータを生成し出力する治具作成処理と、前記治具レイアウト情報に基づいて前記印刷装置における前記印刷データの印刷位置及び印刷範囲を割り付ける印刷データ割り付け処理と、を実行する
ことを特徴とするラスタイメージ変換装置。
【請求項2】
前記治具レイアウト情報は、前記印刷データの印刷位置及び印刷範囲を規定するための複数の印刷スロットを有する印刷テンプレート情報を含む
請求項1記載のラスタイメージ変換装置。
【請求項3】
前記治具レイアウト情報は、前記被印刷物を位置決めするための、前記印刷スロットの外周に沿った枠の情報を含む
請求項2記載のラスタイメージ変換装置。
【請求項4】
前記印刷データを格納するホットフォルダを更に有し、
前記ホットフォルダは、前記治具作成処理及び前記印刷データ割り付け処理を含む印刷ワークフローと関連付けられ
前記変換処理部は、前記ホットフォルダに前記印刷データが格納されたら、前記ホットフォルダに対応する前記印刷ワークフローを起動する
請求項1記載のラスタイメージ変換装置。
【請求項5】
印刷データを入力し、この印刷データをラスタイメージデータに変換するラスタイメージ変換装置と、
前記ラスタイメージ変換装置で変換されたラスタイメージデータに基づいて被印刷物に印刷を行う印刷装置と、
を備えた印刷システムにおいて、
前記印刷装置は、UV硬化インクを用いた多層印刷が可能なインクジェットプリンタであり、
前記ラスタイメージ変換装置は、
前記印刷データを前記ラスタイメージデータに変換する際の条件を規定した印刷環境データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶される前記印刷環境データを生成又は編集するための操作部と、
前記記憶部に記憶された印刷環境データに基づいて、前記印刷データを前記ラスタイメージデータに変換する変換処理部と、
を有し、
前記印刷環境データは、前記印刷装置で被印刷物を位置決めする治具を生成するための治具レイアウト情報を含み、
前記操作部は、前記治具レイアウト情報を生成又は編集することが可能な操作モードを備え、
前記変換処理部は、前記治具レイアウト情報に基づいて、前記治具を前記印刷装置で印刷出力するための治具イメージデータを生成し出力する治具作成処理と、前記治具レイアウト情報に基づいて前記印刷装置における前記印刷データの印刷位置及び印刷範囲を割り付ける印刷データ割り付け処理と、を実行し、
前記印刷装置は、前記被印刷物を載置する手段に対して前記治具イメージデータを前記UV硬化インクにより一層又は多層印刷する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項6】
印刷データを入力し、この印刷データをラスタイメージデータに変換して印刷装置に出力する印刷処理プログラムであって、
コンピュータに、
前記印刷データを前記ラスタイメージデータに変換する際の条件を規定した印刷環境データを記憶する記憶ステップと、
前記記憶工程で記憶される前記印刷環境データを生成又は編集するための操作ステップと、
前記記憶ステップで記憶された印刷環境データに基づいて、前記印刷データを前記ラスタイメージデータに変換する変換処理ステップと、
を実行させ、
前記印刷環境データは、前記印刷装置で被印刷物を位置決めする治具を生成するための治具レイアウト情報を含み、
前記操作ステップは、前記治具レイアウト情報を生成又は編集するステップを有し、
前記変換処理ステップは、前記治具レイアウト情報に基づいて、前記治具を前記印刷装置で印刷出力するための治具イメージデータを生成し出力する治具作成処理ステップと、前記治具レイアウト情報に基づいて前記印刷装置における前記印刷データの印刷位置及び印刷範囲を割り付ける印刷データ割り付け処理ステップと、を含む
ことを特徴とする印刷処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラスタイメージ装置及びプログラム並びに印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の印刷装置で様々な形状の被印刷物に印刷をする場合、予め印刷装置のテーブル(プラテン)上に被印刷物を正確に位置決めする必要がある。このため、テーブル上にセット可能な位置決め用治具が用いられることがある。この種の位置決め用治具は、例えば、レーザカッターなどによってリジットメディアを被印刷物の外形形状に合わせて切り抜いたものなどが使用されていた。このため、治具の作成に手間がかかるという問題があった。
【0003】
そこで、被印刷物の位置決め用の治具を、被印刷物を印刷する印刷装置を用いて簡易に作成する技術も知られている(特許文献1及び2)。この従来技術では、印刷データに含まれる被印刷物の輪郭線のデータに基づいて、自動または手動で枠データを作成し、この枠データの印刷モードによって被印刷物の位置決め用の枠をUV硬化インクの多層印刷にて作製する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-114702
【特許文献2】特開2018-144451
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来技術では、印刷データから抽出された輪郭データに基づいて枠データが生成されるため、治具は、その印刷データの印刷位置及び範囲に依存する。このため、一度生成された治具を異なる印刷データの印刷に使用しようとしても、印刷位置及び範囲が治具に固定された被印刷物の位置と整合しないことがある。また、例えば複数の異なる印刷データを複数の枠に割り付けて印刷するような場合には、複数の印刷データを予め配列させた一つの印刷テータを作成し、この印刷データに基づいて枠データを生成する必要がある。また、特殊な形状を有する印刷データによって作成された枠データの場合には、汎用性が極端に低いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、異なる複数の印刷データに対しても簡単に治具に割り付けることができる、操作性及び汎用性に優れたラスタイメージ変換装置及びプログラム並びに印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るラスタイメージ変換装置は、印刷データを入力し、この印刷データをラスタイメージデータに変換して印刷装置に出力するラスタイメージ変換装置であって、前記印刷データを前記ラスタイメージデータに変換する際の条件を規定した印刷環境データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶される前記印刷環境データを設定又は編集するための操作部と、前記記憶部に記憶された印刷環境データに基づいて、前記印刷データを前記ラスタイメージデータに変換する変換処理部と、を有する。前記印刷環境データは、前記印刷装置で被印刷物を位置決めする治具を生成するための治具レイアウト情報を含む。前記操作部は、前記治具レイアウト情報を生成又は編集することが可能な操作モードを備える。前記変換処理部は、前記治具レイアウト情報に基づいて、前記治具を前記印刷装置で印刷出力するための治具イメージデータを生成し出力する治具作成処理と、前記治具レイアウト情報に基づいて前記印刷装置における前記印刷データの印刷位置及び印刷範囲を割り付ける印刷データ割り付け処理と、を実行する。
【0008】
本発明の実施形態に係る印刷システムは、印刷データを入力し、この印刷データをラスタイメージデータに変換するラスタイメージ変換装置と、前記ラスタイメージ変換装置で変換されたラスタイメージデータに基づいて被印刷物に印刷を行う印刷装置とを備える。前記印刷装置は、UV硬化インクを用いた多層印刷が可能なインクジェットプリンタである。前記ラスタイメージ変換装置は、前記印刷データを前記ラスタイメージデータに変換する際の条件を規定した印刷環境データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶される前記印刷環境データを生成又は編集するための操作部と、前記記憶部に記憶された印刷環境データに基づいて、前記印刷データを前記ラスタイメージデータに変換する変換処理部と、を有する。前記印刷環境データは、前記印刷装置で被印刷物を位置決めする治具を生成するための治具レイアウト情報を含む。前記操作部は、前記治具レイアウト情報を生成又は編集することが可能な操作モードを備える。前記変換処理部は、前記治具レイアウト情報に基づいて、前記治具を前記印刷装置で印刷出力するための治具イメージデータを生成し出力する治具作成処理と、前記治具レイアウト情報に基づいて前記印刷装置における前記印刷データの印刷位置及び印刷範囲を割り付ける印刷データ割り付け処理と、を実行する。前記印刷装置は、前記被印刷物を載置する手段に対して前記治具イメージデータを前記UV硬化インクにより一層又は多層印刷する。
なお、ここで「被印刷物を載置する手段」とは、例えば用紙、台紙、フィルム、樹脂、及び板状体等の「媒体」、並びに印刷装置のテーブル、プラテン等の「載置台」を含むものである。
【0009】
本発明の実施形態に係るラスタイメージ変換プログラムは、印刷データを入力し、この印刷データをラスタイメージデータに変換して印刷装置に出力する印刷処理プログラムであって、コンピュータに、前記印刷データを前記ラスタイメージデータに変換する際の条件を規定した印刷環境データを記憶する記憶ステップと、前記記憶工程で記憶される前記印刷環境データを生成又は編集するための操作ステップと、前記記憶ステップで記憶された印刷環境データに基づいて、前記印刷データを前記ラスタイメージデータに変換する変換処理ステップと、を実行させる。前記印刷環境データは、前記印刷装置で被印刷物を位置決めする治具を生成するための治具レイアウト情報を含む。前記操作ステップは、前記治具レイアウト情報を生成又は編集するステップを有する。前記変換処理ステップは、前記治具レイアウト情報に基づいて、前記治具を前記印刷装置で印刷出力するための治具イメージデータを生成し出力する治具作成処理ステップと、前記治具レイアウト情報に基づいて前記印刷装置における前記印刷データの印刷位置及び印刷範囲を割り付ける印刷データ割り付け処理ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作性及び汎用性に優れたラスタイメージ変換装置及びプログラム並びに印刷システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るラスタイメージ変換装置を用いた印刷システムを概略的に示す機能ブロック図である。
【
図2】同装置における記憶部に記憶される内容を示す模式図である。
【
図3】同装置における治具の作成手順を示すフローチャートである。
【
図4】同装置における治具レイアウトの設定操作を説明するための模式図である。
【
図5】同装置における治具レイアウトの枠の種類を示す概略図である。
【
図6】同装置で作成される治具の例を示す斜視図である。
【
図7】同装置の印刷処理を示すフローチャートである。
【
図8】同装置に入力されるマルチページ・シングルレイヤの印刷データの一例を示す模式図である。
【
図9】同装印刷データのレイアウト情報の例を示す図である。
【
図10】同レイアウト情報に基づき印刷データを各印刷スロットに割り付けた例を示す模式図である。
【
図11】マルチページ・シングルレイヤの割り付け処理を示すフローチャートである。
【
図12】同装置に入力されるマルチページ・マルチレイヤの印刷データの一例を示す模式図である。
【
図13】同印刷データのレイアウト情報の例を示す図である。
【
図14】同レイアウト情報に基づき印刷データを各印刷スロットに割り付けた例を示す模式図である。
【
図15】マルチページ・マルチレイヤの割り付け処理を示すフローチャートである。
【
図16】シングルジョブの印刷データからマルチページ・マルチレイヤの印刷データを生成する例を示す模式図である。
【
図17】マルチジョブをネスティングしてマルチページ・マルチレイヤの印刷データを生成する例を示す模式図である。
【
図18】同印刷データのレイアウト情報の例を示す図である。
【
図19】同レイアウト情報に基づき印刷データを各印刷スロットに割り付けた例を示す模式図である。
【
図20】マルチレイヤのマルチジョブをネスティングしてマルチページ・マルチレイヤの印刷データを生成する例を示す模式図である。
【
図21】同印刷データのレイアウト情報の例を示す図である。
【
図22】同レイアウト情報に基づき印刷データを各印刷スロットに割り付けた例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係るラスタイメージ変換装置及びプログラム並びに印刷システムについて詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
[実施形態]
[装置構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システムの概略構成を示す機能ブロック図である。この印刷システムは、印刷データ生成装置20、ラスタイメージ変換装置10、及び印刷装置としてのインクジェットプリンタ30を備える。
【0014】
印刷データ生成装置20は、例えば、PDF(Portable Document Format)、PS(PostScript:登録商標)等のベクタ形式のページ記述言語、又はJPEG(Joint Photographic Experts Group)及びTIFF(Tagged Image File Format)等のイメージを圧縮した画像データからなる印刷ジョブを生成し、ラスタイメージ変換装置10を介してインクジェットプリンタ30へ出力する。なお、ここで「印刷ジョブ」とは、「印刷データ」を含み、印刷データを印刷するために記述された印刷命令を言う。また、「印刷データ」とは、印刷ジョブに従って印刷される文字、図形、図像などを含むデータを言う。以後、印刷データ生成装置20から出力される情報を、「印刷データ」又は「印刷ジョブ」と表記することがある。また、ラスタイメージ変換装置10内で、印刷データをラスタイメージデータに変換して出力する際の印刷環境データを含めた印刷データ、及び印刷環境データに従った変換処理を実行後にインクジェットプリンタ30へラスタイメージデータを出力するまでの一連の処理を、それぞれ広義の「印刷ジョブ」、及び「印刷ワークフロー」と呼ぶこともある。
【0015】
ラスタイメージ変換装置10は、入力されたベクタデータからなる印刷データを、ラスタイメージデータに変換してインクジェットプリンタ30に出力する。ラスタイメージ変換装置10は、例えば図示しないCPUにRIP(Raster Image Processor)プログラムを実行させることにより実現されるRIP装置として構成され得る。インクジェットプリンタ30は、例えば、UV(Ultra-Violet)硬化インクを使用した多層印刷が可能な印刷装置として構成することができる。
【0016】
ラスタイメージ変換装置10は、機能的には、1又は複数のホットフォルダ11、ラスタイメージ変換処理部12、記憶部13及び操作部14を有する。
【0017】
ホットフォルダ11は、印刷データ生成装置20から出力された印刷データを格納するフォルダである。このホットフォルダ11は、印刷環境データと関連付けられている。ホットフォルダ11に印刷データが格納されることにより、そのホットフォルダ11に対応する印刷環境データを参照し、印刷ワークフローが起動される。
【0018】
ラスタイメージ変換処理部12は、ホットフォルダ11に印刷データが格納されたかどうかを監視し、ホットフォルダ11に印刷データが格納されたら、そのホットフォルダ11に対応する印刷環境データに従って、印刷データに対するラスタライズ処理、カラーマッチング処理、ハーフトーン処理等を行い、ラスタイメージデータとしてインクジェットプリンタ30に出力する。
【0019】
記憶部13は、
図2に示すように、ラスタイメージ変換処理部12での変換処理を実行する印刷ワークフローを規定する印刷環境データを記憶する。印刷環境データには、カラーマッチングに必要なカラープロファイル及びカラーマネジメントの情報、印刷データのレイアウト情報、印刷に治具が必要な場合、治具を生成するための治具レイアウト情報、マルチレイヤ印刷の場合のレイヤ印刷情報、及びその印刷ワークフローに対応したホットフォルダ情報等が記憶されている。
【0020】
操作部14は、キーボード及びマウス等の入力部14aと、ディスプレイ装置等の表示部14bとを有する。操作部14は、入力部14a及び表示部14bを用いて、ホットフォルダ11に対する印刷データの格納操作、ラスタイメージ変換処理部12に対する各種操作及び記憶部13に記憶される印刷環境データの生成及び編集を行うための機能を有する。
【0021】
[治具の作成]
次に、印刷処理に先立つ治具の作成処理について説明する。
図3は、印刷環境データの設定・編集処理を示すフローチャートである。
【0022】
まず、治具レイアウトの設定指示の有無を判断する(ステップS11)。治具レイアウトの設定指示がある場合には、治具レイアウトの設定処理を実行する(ステップS12)。治具レイアウトの設定指示が無い場合には、その他の印刷環境データの設定処理を実行する(ステップS13)。治具レイアウトの設定処理が選択された場合には、治具レイアウト情報に含まれる印刷データを割り付ける際の印刷テンプレートの設定と治具を構成する枠の情報とを設定する。
【0023】
図4は、印刷テンプレートの各パラメータを示す模式図である。表示部14bには、治具レイアウトのイメージと各パラメータの入力ボックスが表示される。治具レイアウトにおける印刷テンプレートのパラメータは、治具15の幅(x1)、高さ(y1)、基準位置O1と印刷開始位置O2との距離(x2,y2)、治具15に配列された印刷スロット16の幅(x3)及び高さ(y3)、及び印刷スロット16間の隙間(x4,y4)を含む。図示のように、各印刷スロット16に、スロット番号を対応付けるようにしても良い。
【0024】
一方、治具レイアウトの枠の情報には、治具作成に必要な枠の種類、枠の幅、長さ、枠の印刷スロット16からの距離、UV硬化インクによる印刷積層回数の情報を含む。
図5は、枠の種類を示す図である。図示のように、枠の種類には、同図(a)の「フェンス」、同図(b)の「コーナー」、及び同図(c)の「四角形」が含まれる。「フェンス」は、被印刷物31に対して左右の枠17が印刷スロット16の左右の辺の上下方向の中央部、上下の枠17が印刷スロット16の上下の辺の左右方向の中央部にそれぞれ配置される線状の枠である。「コーナー」は、被印刷物31の四隅の位置を規制するL字状の枠である。「四角形」は、四角形の被印刷物31の周囲を連続的に囲む四角環状の枠である。被印刷物31が、四角形で薄板状である場合、同図(a)及び(b)の「フェンス」及び「コーナー」は、枠17が存在しない部分があるため、被印刷物31の治具からの取り出しが容易になる。同図(d)及び(e)に示すように、「フェンス」及び「四角形」は、円形の被印刷物31でも位置決めが可能であり、同図(f)に示すように、「四角形」は、三角形の被印刷物31でも位置決めが可能である。従って、枠の種類を適切に選択することで、被印刷物31の外形形状が異なっても、共通に使用することが可能になる。
【0025】
治具レイアウトの設定が完了すると、この治具レイアウト情報は、記憶部13に記憶される(ステップS14)。また、その他の印刷環境データが設定された場合でも、記憶部13に記憶される(ステップS14)。次に、治具の印刷を実行するかどうかを操作部14からの指示情報により判断し(ステップS15)、治具の作成が指示されている場合には、治具の印刷を実行する(ステップS16)。治具の印刷処理では、治具レイアウト情報に基づいてラスタイメージ変換処理部12が、治具の枠のラスタイメージデータを生成し、このラスタイメージデータを印刷積層回数分だけインクジェットプリンタ30に出力する。これにより、治具がインクジェットプリンタ30で印刷される。
【0026】
図6は、枠の種類が「フェンス」である場合の作成された治具の例を示している。治具15は、治具レイアウト情報に基づき、例えばリジットメディア等のシート状の印刷媒体18上に、例えばUV硬化インクの多層印刷により枠17を印刷形成することにより作成される。枠17は、厚盛印刷により形成されるので、被印刷物31を安定して位置決めすることが出来る。
なお、前述の「フェンス」及び「コーナー」は、治具15の枠17の印刷の所要時間の短縮及びインク使用量の削減にも効果がある。「フェンス」及び「コーナー」の各辺長の最適値は、被印刷物31の形状(大きさ及び厚さ)に依存する為、入力部14aは、各辺長を編集する機能を有する。
なお、一度作成した治具は、他の印刷ジョブにおいても繰り返し使用することができる。この場合、ラスタイメージ変換装置10上では、記憶されている複数の印刷環境データを検索し、使用する治具レイアウトを選択すれば良い。
【0027】
このように、治具レイアウト情報は、印刷の位置と範囲を規定する印刷テンプレートを基準として作成されるので、どのような印刷データを印刷する場合でも、その印刷データを印刷テンプレートに割り付けることにより、治具上の被印刷物の位置と印刷位置とが合致することになる。
【0028】
[印刷データのラスタイメージデータへの変換処理]
図7は、ラスタイメージ変換処理部12におけるラスタイメージ変換処理(印刷ワークフロー)を示すフローチャートである。
まず、予め、
図3に示した印刷環境データの初期値設定等の印刷ジョブの設定を行っておく(ステップS21)。次に、ホットフォルダ11から印刷データを読み込む(ステップS22)。ここで、新たに読み込まれた印刷データに対して、印刷ジョブの編集が必要と判断された場合には(ステップS23)、印刷ジョブを編集する(ステップS24)。印刷ジョブの編集の例としては、後述する複数の印刷ジョブのネスティング処理、及び印刷環境データの編集処理等がある。次に、印刷データの印刷テンプレートへの割り付けを含むラスタライズ処理が実行される(ステップと25)。この処理により、印刷テンプレートの各印刷スロットにラスタイメージデータ(CMYKデータ)が割り付けられる。
【0029】
次に、ラスタイメージ変換処理部12は、印刷テンプレートに割り付けられたラスタイメージデータに対するカラーマッチング処理を実行する(ステップS26)。カラーマッチング処理では、記憶部13に記憶された、印刷環境データに含まれる、入力プロファイル及びインクジェットプリンタ30の出力プロファイルを含むカラープロフアイル情報及びカラーマネジメント情報を参照し、ラスタイメージデータに色変換処理を施す。ラスタイメージ変換処理部12は、具体的には、まず、カラーマネジメント処理として、記憶部13に記憶されたJapan Color(登録商標)等の入力プロファイル(ICCプロファイル)を参照して、ラスタイメージデータ(例えば、8-bit_CMYKデータ)を、例えばL*a*b*表色系の色空間に展開し、デバイスインディペンデントカラーのL*a*b*値に色変換する。
【0030】
そして、ラスタイメージ変換処理部12は、インクジェットプリンタ30の出力プロファイル(ICCプロファイル)を参照して、L*a*b*値をデバイスディペンデントカラーのCMYK値(8-bit_CMYKデータ)に再度色変換する。
【0031】
その他、ラスタイメージ変換処理部12は、カラーキャリブレーション処理として、ライトインクカラー(Lc,Lm,Lk)の生成、下地色印刷及び厚盛印刷のための特色インクカラー(W:White/V:Varnish)の生成、インク量の調整(トーンカーブ調整)等を実行し得る。このように、ラスタイメージ変換処理部12は、カラーマネジメント処理及びカラーキャリブレーション処理を含む、いわゆるカラーマッチング処理全般を実行する。
【0032】
次に、ラスタイメージ変換処理部12は、CMYK値(8-bit_CMYKLcLmLkWVデータ)に基づいて、誤差拡散法等を用いたハーフトーン処理を実行する(ステップS27)。これにより、例えば、8-bit_CMYKデータを、例えば、デバイスディペンデントカラーのマルチサイズドットのCMYK値(2-bit_CMYKLcLmLkWVデータ)に変換する。
【0033】
そして、変換されたマルチサイズドットのCMYK値(2-bit_CMYKLcLmLkWVデータ)からなるラスタイメージデータを、インクジェットプリンタ30に出力する(ステップS28)。
【0034】
[印刷データの割り付け処理]
次に、
図7のステップS25で説明した印刷データの印刷テンプレートへの割り付け処理の詳細について説明する。
なお、この処理は、上述した治具15を使用する場合には、インクジェットプリンタ30の図示しないテーブル(プラテン)に、テーブルの基準位置と治具15の基準位置O1とを合致させた状態で設置し、各枠17内に被印刷物31をセットした状態で起動される。但し、この処理は、上述した治具15の使用が必ずしも前提ではなく、印刷媒体に印刷スロットの形状を通常印刷した治具を使用しても良い。また、インクジェットプリンタ30の図示しないテーブル(プラテン)に直接印刷スロット16の外枠イメージを印刷して、それぞれの印刷スロット16に合わせて被印刷物31をセットするような場合にも、この割付処理は適用可能である。要は、被印刷物31が正しい印刷位置に配置されれば良い。
【0035】
(1)マルチページ・シングルレイヤ印刷
異なる複数の印刷データを、それぞれ印刷テンプレートの別々の印刷スロットに割り付けて印刷する場合、通常は、印刷データ生成装置20内において、複数の印刷データが例えば別々のPDFファイルとして作成され、それぞれ別々のPDFファイルを別々の印刷スロットに割り付けるための割り付け操作が必要であった。これに対し、本実施形態では、これら別々のPDFファイルを1つのマルチページのPDFファイルの印刷データとして、ラスタイメージ変換装置10に入力することにより、ラスタイメージ変換処理部12が、各ページを各印刷スロットに自動的に割り付ける機能と、その印刷ワークフローを有している。
【0036】
図8は、入力するマルチページ、シングルレイヤの印刷データの例を示している。この印刷データは、画像データが異なる3つのページを有する。複数のPDFデータをマルチページのPDFデータに変換するのは、印刷データ生成装置20を用いて行っても良いし、ラスタイメージ変換装置10での印刷ジョブの編集作業(ステップS24)で行っても良い。ただし、印刷データ生成装置20を用いる場合において、印刷ワークフローとして、印刷ジョブをホットフォルダ11に投入し、インクジェットプリンタ30の印刷出力までを自動化するためには、印刷環境データに、その一連の処理をあらかじめ記載しなくてはならない。印刷データ生成装置20で予め作成する場合、マルチページPDFの各ページのレイアウト情報を印刷環境データとして記憶し、印刷ワークフローとして自動化することが可能である。
【0037】
印刷ジョブには、
図2に示した印刷環境データも含まれ、そのうちのレイアウト情報には、例えば、
図9に示すように、各ページのスキップの有無(Skip)と、印刷枚数(Print)の情報が含まれている。
図9は、印刷データのページ数Pが「3」、印刷テンプレートのスロット数Sが「4」の例を示している。
図9の例では、第1ページ及び第3ページの印刷枚数が「1」、第2ページの印刷枚数が「2」に設定され、スキップページが無しに設定されている。このような条件下で
図8に示すマルチページPDFからなる印刷データがホットフォルダ11に投入されると、
図10に示すように、印刷テンプレートの第1スロット(Slot1)に第1ページ(Page1)が割り付けられ、第2スロット(Slot2)に第2ページ(Page2)が割り付けられ、第3スロット(Slot3)に第2ページ(Page2)がコピーされて割り付けられ、第4スロット(Slot4)に第3ページ(Page3)が割り付けられる。
【0038】
図11は、このようなマルチページ・シングルレイヤの割り付け処理を示すフローチャートである。まず、ページ番号p及びスロット番号sが初期値「1」にセットされる(ステップS31)。次に、第pページがスキップ指定有りか無しかを判断し(ステップS32)、無しの婆には、第sスロットの印刷位置及び印刷範囲を治具レイアウト情報に基づいて計算し(ステップS33)、第sスロットに第pページの印刷データを割り付ける(ステップS34)。スロット番号sを更新し(ステップS35)、スロット番号sがスロット数Sを超えたら処理を終了する(ステップS36)が、スロット番号sがスロット数Sを超えなければ、第pページがPrintで指定された枚数分の割付を終了したかどうかを判断する(ステップS37)。指定された枚数の割付が終了していない場合には、ステップS33からの印刷スロット位置の計算に戻るが、指定された枚数の割付が終了している場合には、ページ番号pを更新する(ステップS38)。ページ番号pがページ数Pを超えたら処理は終了する(ステップS39)が、ページ番号pがページ数Pを超えてなければ、第pページのスキップ指定の有無の判断ステップS32に戻る。また、ステップS32で、第pページのスキップ指定が有りと判断された場合には、ページ番号pの更新処理(ステップS38)に飛ぶ。
【0039】
この実施形態によれば、割り付けたい印刷データをマルチページ化してホットフォルダ11に格納するだけで、印刷環境データに応じた割り付け処理が実行されるので、個々のページの印刷データをそれぞれ割り付ける必要が無い。また、治具レイアウト情報に基づいて印刷データが各印刷スロットに割り付けられるので、被印刷物の位置と印刷位置とがずれることも無い。
【0040】
なお、上記の実施形態では、ページのスキップの有無を指定したが、印刷スロットの使用のスキップの有無を指定できるようにしても良い。この場合には、予めレイアウト情報の中に、スキップする印刷スロットの情報をスキップスロット情報として指定しておく。そして、スキップスロット情報に基づいて、
図11のステップS32の前又は後で、第sスロットのスキップの有無を判断し、スキップ有りの場合には、ステップS35に進んでスロット番号sを更新し、スキップ無しの場合には、第sスロットに対する割付処理を実行すれば良い。このような処理を行えば、例えば、前述したUV硬化インクの多層印刷により作成された治具15のある印刷スロット16の枠17が破損などにより使用不能の場合、入力部14aより該当印刷スロット16を指定し、その印刷スロット16へのページの割付をスキップすることができる。
【0041】
(2)マルチページ・マルチレイヤ印刷
例えば、透明なスマホケースにUV硬化インクによる厚盛印刷を行うような場合、下地層としてホワイトインクを全面印刷し、その上にCMYKインクによる画像を印刷し、更にその上にバーニッシュインクを使用した厚盛印刷を行うといった、多層印刷をすることがある。以下、インクジェットプリンタ30のテーブル(プラテン)に対して、印刷層の数だけインクジェットのヘッドを副走査方向に往復させるマルチパス印刷方式によるマルチレイヤ印刷について例を挙げて説明するが、各層のインクを吐出するノズルを副走査方向に僅かずつずらして、各層のインクを同時に吐出しながら、ずらし量分のピッチで各印刷層の印刷を一度のヘッドスキャン動作で行うシングルパス印刷方式にも適用可能であることは言うまでも無い。
【0042】
本実施形態では、上述のようなマルチレイヤ印刷を行うための印刷データも、マルチページデータとして入力する。
図12は、入力するマルチページ、マルチレイヤの印刷データの例を示している。この印刷データは、1つの画像を構成する3つのレイヤにそれぞれ対応させて3つのページの画像データを含んでいる。第1ページは、ホワイトインクの印刷用の画像データ、第2ページは、CMYKインクの印刷用の画像データ、第3ページは、バーニッシュインクの印刷用の画像データである。
【0043】
図13は、この場合のレイヤ印刷情報の例である。
図13は、印刷データのページ数Pが「3」、印刷テンプレートのスロット数Sが「4」の例を示している。
図13の例では、第1ページのレイヤが「1」、カラーモードが「White」、第2ページのレイヤが「2」、カラーモードが「CMYK」、第3ページのレイヤが「3」、カラーモードが「Vernish」に設定されている。また、各ページのスキップの有無(Skip)は無し、印刷データのレイヤの重ね回数(Multiplex)も無し、第1ページ~第3ページまでの印刷枚数(Print)は「4」に設定されている。なお、この他、画像処理のMirror変換を用いると、アクリルなどの透明メディアに多層印刷(例えば、「CMYK],[White]の順番)を行ない、印刷イメージを裏面から見せる場合に原画像と同じ向き(見え方)を維持することができる。その為、レイヤ印刷情報にMirrorを含めることもできる。
【0044】
このような条件下で
図12に示すマルチページPDFからなる印刷データがホットフォルダ11に投入されると、
図14に示すように、印刷テンプレートの第1~第4スロットの第1レイヤに第1ページが割り付けられ、同じく第2レイヤに第2ページが割り付けられ、同じ具第3レイヤに第3ページが割り付けられる。第1レイヤは1回目の印刷、第2レイヤは2回目の印刷、第3レイヤは3回目の印刷のために、ラスタイメージデータの形態でインクジェットプリンタ30に出力される。
【0045】
図15は、このマルチページ・マルチレイヤの割り付け処理を示すフローチャートである。まず、レイヤ番号l及びページ番号pを初期値「1」にセットする(ステップS41)。次に、スロット番号sを初期値「1」にセットする(ステップS42)。次に、第pページがスキップ指定有りか無しかを判断し(ステップS43)、無しの場合には、第sスロットの印刷位置及び印刷範囲を治具レイアウト情報に基づいて計算し(ステップS44)、第sスロットの第lレイヤに第pページの印刷データを割り付ける(ステップS45)。スロット番号sを更新し(ステップS46)、スロット番号sがスロット数Sを超えたら処理を終了する(ステップS47)が、スロット番号sがスロット数Sを超えなければ、第pページがPrintで指定された枚数分の割付を終了したかどうかを判断する(ステップS48)。指定された枚数の割付が終了していない場合には、ステップS44からの印刷スロット位置の計算に戻るが、指定された枚数の割付が終了している場合には、Multiplexで指定されたレイヤの重ね回数分のレイヤの割り付けが終了したかどうかを判断する(ステップ49)。もし、重ね回数分のレイヤの割り付けが終了していなかったら、レイヤを追加し、レイヤ番号lを更新した後(ステップS50)、ステップS42に戻って、スロット番号sを「1」に初期化する。ステップS49で、もし、レイヤの重ね回数分のレイヤの割付が終了していたら、ページ番号pを更新する(ステップS51)。ページ番号pがページ数Pを超えたら処理は終了する(ステップS52)が、ページ番号pがページ数Pを超えてなければ、ステップS42に戻って、スロット番号sを「1」に初期化した後、第pページのスキップ指定の有無を判断する(ステップS43)。また、ステップS43で、第pページのスキップ指定が有りと判断された場合には、ページ番号pの更新処理(ステップS51)に飛ぶ。
【0046】
以上のように、マルチレイヤ印刷を行う印刷データをマルチページの印刷データとして入力することにより、マルチレイヤの印刷データを、印刷環境データで指定された条件で、印刷テンプレートの各印刷スロットに割り付けることができる。ここで、前述と同様、治具15のある印刷スロット16の枠17が破損などにより使用不能の場合、入力部14aより該当印刷スロット16を指定し、その印刷スロット16へのページの割付をスキップする処理を
図15の処理に追加しても良い。
【0047】
なお、入力されるマルチレイヤ印刷を行うマルチページの印刷データは、印刷データ生成装置20で予め作成しておいても良いし、ラスタイメージ変換装置10内の印刷ジョブの編集操作で作成するようにしても良い。ただし、印刷データ生成装置20を用いる場合において、印刷ワークフローとして、印刷ジョブをホットフォルダ11に投入し、インクジェットプリンタ30の印刷出力までを自動化するためには、印刷環境データに、その一連の処理をあらかじめ記載しなくてはならない。印刷データ生成装置20で予め作成する場合、マルチページPDFの各ページのレイヤ印刷情報を印刷環境データとして記憶し、印刷ワークフローとして自動化することが可能である。
【0048】
また、上記のマルチページ・マルチレイヤの印刷データは、シングルレイヤの印刷データから作成することも出来る。
図16は、一つの印刷データ(Job1)からマルチページ・マルチレイヤの印刷データを生成する例を示す図である。ラスタイメージ変換装置10内において、一つの印刷データから、画像処理技術などを用いて、下地用の画像、カラー画像及びバーニッシュ画像等のレイヤを自動、又は半自動で抽出し、これらをそれぞれ第1ページ、第2ページ及び第3ページに割り付けた一つの印刷データを生成する。レイヤを自動生成する場合には、画像の全面を抽出、色の存在する部分を抽出、色の存在しない部分を抽出、ページ全体をフラットな任意の濃度とする画像、同画像の白黒の反転画像を抽出する等の処理を行うこともできる。また、レイヤを自動生成する場合、ブリーディング(原画よりも拡大)と、チョーク(原画よりも縮小)を指定する機能を有していても良い。なお、レイアウト情報の指定は、例えば
図13で示したものと同様のものを使用することができる。
【0049】
図17は、レイヤ印刷用に作成された異なるシングルページの印刷データ(Job1,Job2)をネスティング処理してマルチページ・マルチレイヤの印刷データを作成する例を示す図である。このようなネスティング処理は、印刷データ生成装置20で行っても良いし、ラスタイメージ変換装置10内の印刷ジョブの編集操作で行っても良い。
【0050】
図18は、
図17に示すマルチページ・マルチレイヤの印刷データについての、他のレイアウト情報の例を示す図である。このレイアウト情報では、第1ページが第1レイヤ(カラーモード=CMYK)、第2ページが第2レイヤ(カラーモード=Vernish)に指定され、それぞれ印刷枚数(Print)が「4」に設定され、第2レイヤの重ね回数(Multiplex)が「1」に設定されている。
【0051】
このような条件下で印刷データをホットフォルダ11に格納すると、
図19に示すような割り付け処理が実行される。すなわち、第2レイヤの割付が終了後、Multiplexが「1」なので、第3レイヤが追加され、第2レイヤの印刷データが第3レイヤにコピーされる。このように、レイアウト情報のレイヤコピーの枚数の指定によって、印刷層数を任意に変更することができる。
【0052】
図20は、それぞれがマルチページ・マルチレイヤである複数の印刷データ(Job1,Job2)をネスティングして、一つのマルチページ・マルチレイヤの印刷データを作成する例を示している。ネスティング処理は、印刷データ生成装置20で行っても良いし、ラスタイメージ変換装置10内の印刷ジョブの編集操作で行っても良い。この例は、
図8に示したマルチページ・シングルレイヤの印刷データの各ページを、
図16で示したように、マルチレイヤ化する場合も含まれる。
【0053】
この例では、
図20に示すように、第1ページがJob1の第1ページで第1レイヤ、第2ページがJob1の第2ページで第2レイヤ、第3ページがJob2の第1ページで第1レイヤ、第4ページがJob2の第2ページで第2レイヤにそれぞれ対応している。
図21は、レイヤ印刷情報の例を示す。この例では、第1ページ及び第3ページのカラーモードが「CMYK」、第2ページ及び第4ページのカラーモードが「Vernish」、第1ページ及び第2ページの印刷枚数が「3」、第3ページ及び第4ページの印刷枚数が「1」にそれぞれ設定されている。
【0054】
このような条件下で印刷データをホットフォルダ1に格納すると、
図22に示すように、第1スロット~第3スロットまでの第1レイヤに第1ページが割り付けられ、第1スロット~第3スロットまでの第2レイヤに第2ページが割り付けられ、第4スロットの第1レイヤに第3ページが割り付けられ、第4スロットの第2レイヤに第4ページが割りつけられる。
【0055】
上記の処理は、
図15に示したフローチャートを、印刷ジョブ毎に実行すると共に、スロット番号の初期値を印刷ジョブ毎に変えるようにすることにより、実現可能である。
【0056】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
10 ラスタイメージ変換装置
11 ホットフォルダ
12 ラスタイメージ変換処理部
13 記憶部
14 操作部
20 印刷データ生成装置
30 インクジェットプリンタ