(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040773
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物および樹脂発泡シート
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220304BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20220304BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20220304BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20220304BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220304BHJP
B65D 81/127 20060101ALI20220304BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20220304BHJP
C08J 9/14 20060101ALN20220304BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L101/12
C08L23/00
B32B17/10
B32B27/18 D
B65D81/127 A
C08K5/09
C08J9/14 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145635
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】落合 哲也
【テーマコード(参考)】
3E066
4F074
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E066AA22
3E066BA01
3E066BA02
3E066CA01
3E066DA01
3E066HA05
3E066JA13
3E066KA20
3E066LA19
3E066MA05
3E066MA06
3E066MA07
3E066NA44
4F074AA16B
4F074AA20
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4F074AG07
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4F074BA95
4F074BC13
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA23
4F074DA24
4F074DA54
4F100AG00B
4F100AK03A
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4F100JG03
4J002AA00W
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4J002EH046
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4J002EN106
4J002GF00
4J002GG02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高分子型帯電防止剤による高い帯電防止効果が発揮される樹脂組成物、及び該樹脂組成物を含有する、帯電防止性に優れた樹脂発泡シートを提供する。
【解決手段】ベース樹脂と、高分子型帯電防止剤と、脂肪酸化合物とを含み、前記高分子型帯電防止剤100質量部に対する前記脂肪酸化合物の含有量が1質量部以上25質量部以下である樹脂組成物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂と、高分子型帯電防止剤と、脂肪酸化合物とを含み、
前記高分子型帯電防止剤100質量部に対する前記脂肪酸化合物の含有量が1質量部以上25質量部以下である樹脂組成物。
【請求項2】
前記ベース樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの発泡層を備え、
該発泡層のみの単層構造、又は、前記発泡層と他の層とが積層された多層構造を有し、
少なくとも一方の表面が、ベース樹脂と、高分子型帯電防止剤と、脂肪酸化合物とを含む樹脂組成物で構成され、且つ、
該樹脂組成物は、
前記高分子型帯電防止剤100質量部に対する前記脂肪酸化合物の含有量が1質量部以上25質量部以下である樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記ベース樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である請求項3記載の樹脂発泡シート。
【請求項5】
ガラス板の間に介装される合紙である請求項3又は4記載の樹脂発泡シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物および樹脂発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡シートは、発泡層を有することで優れた軽量性と緩衝性とを備えているため各種の用途に用いられている。
この種の樹脂発泡シートとしては、発泡層のみの単層構造を有するものや、発泡層以外の他の層として非発泡層を備えたものなどが知られている。
該樹脂発泡シートを構成する樹脂組成物の主成分となるベース樹脂としては、従来、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂などの種々の樹脂が知られている。
【0003】
発泡層のみの単層構造を有する樹脂発泡シートは、一般的には押出発泡法によって製造されており、原料樹脂を発泡剤とともに押出機で溶融混練し、得られた溶融混練物をサーキュラーダイやフラットダイからシート状に押出して発泡させるような方法で作製されている。
発泡層と非発泡層とが積層された多層構造の樹脂発泡シートは、発泡層のみの樹脂発泡シートを一旦作製した後で非発泡層となる樹脂フィルムをラミネートする方法や、発泡層と非発泡層とを共押出する方法などによって作製されている。
【0004】
樹脂発泡シートは、容器などを熱成形によって作製する際の原料シートとして用いられる他に平坦なシートのままの状態で緩衝材として用いられたりしている。
例えば、下記特許文献1には、複数のガラス板を重ねる際に隣り合うガラス板の間に介装させる合紙として非発泡層を備えた多層構造の樹脂発泡シートを用いることが記載されている。
この種の用途においては、接する相手材(ガラス板)に静電気が発生するのを防止すべく樹脂発泡シートを構成する樹脂組成物に高分子型帯電防止剤が配合されたりしている。
【0005】
高分子型帯電防止剤を配合して樹脂組成物に帯電防止性を発揮させることに関しては、下記特許文献2に記載されているように、同じ配合量でもより高い帯電防止効果を発揮させることが求められている。
そのため、発泡層の両面に非発泡層が設けられた多層構造の樹脂発泡シートでは、相手材に接することのない発泡層には高分子型帯電防止剤を含有させず、非発泡層のみに高分子型帯電防止剤を含有させるようなことが行われたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-64048号公報
【特許文献2】特開2010-196054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
含有される高分子型帯電防止剤により高い帯電防止効果を発揮させることが求められているのは、樹脂発泡シートに限らず樹脂組成物が他の用途で用いられる場合にも共通している。
そして、高分子型帯電防止剤を含む樹脂組成物に対してより高い帯電防止効果を発揮させることについては種々の検討がなされているが更なる改善を行う余地が残されている。
そこで本発明は、高分子型帯電防止剤による高い帯電防止効果が発揮され得る樹脂組成物を提供し、ひいては、帯電防止性に優れた樹脂発泡シートを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題について鋭意検討し、脂肪酸化合物を併存させることで高分子型帯電防止剤の帯電防止性が向上され得ることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、
ベース樹脂と、高分子型帯電防止剤と、脂肪酸化合物とを含み、
前記高分子型帯電防止剤100質量部に対する前記脂肪酸化合物の含有量が1質量部以上25質量部以下である樹脂組成物、を提供する。
【0010】
本発明は、また、
少なくとも1つの発泡層を備え、
該発泡層のみの単層構造、又は、前記発泡層と他の層とが積層された多層構造を有し、
少なくとも一方の表面が、ベース樹脂と、高分子型帯電防止剤と、脂肪酸化合物とを含む樹脂組成物で構成され、且つ、
該樹脂組成物は、
前記高分子型帯電防止剤100質量部に対する前記脂肪酸化合物の含有量が1質量部以上25質量部以下である樹脂発泡シート、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い帯電防止効果が発揮され得る樹脂組成物が提供され、帯電防止性に優れた樹脂発泡シートが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】樹脂発泡シートの一使用態様を示した概略図。
【
図2】一実施形態の樹脂発泡シートの構造を示した概略断面図。
【
図3】他の実施形態に係る樹脂発泡シートを示した概略断面図。
【
図4】他の実施形態に係る樹脂発泡シートを示した概略断面図。
【
図5】樹脂発泡シートの表層部でのマトリックス-ドメイン構造の様子を透過型電子顕微鏡(×1000倍)で撮影した図(顕微鏡写真)。
【
図6】樹脂発泡シートの表層部でのマトリックス-ドメイン構造の様子を透過型電子顕微鏡(×2000倍)で撮影した図(顕微鏡写真)。
【
図7】樹脂発泡シートの表層部でのマトリックス-ドメイン構造の様子を透過型電子顕微鏡(×3500倍)で撮影した図(顕微鏡写真)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施の形態について図を参照しつつ説明する。
以下においては、樹脂発泡シートの形成材料として利用する態様を例示して本発明の樹脂組成物について説明する。
また、本実施形態における樹脂発泡シートは、特にその用途が限定されるわけではなく、各種用途に利用可能であるが、以下においてはガラス板の合紙として用いる場合を例にして本実施形態における樹脂発泡シートについて詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように本実施形態の樹脂発泡シート1は、ガラス板の合紙として利用される。
本実施形態の樹脂発泡シート1は、ガラス板2を複数枚上下方向に積層して積層体100を形成する際に隣接するガラス板2の間に介装させて合紙として用いられるものである。
本実施形態における合紙は、押出発泡法によって作製された樹脂発泡シート1で構成されている。
本実施形態における合紙は、
図2に示すように単層構造を有する樹脂発泡シート1で構成されており、両面において表面に発泡層10が露出した状態となっている。
本実施形態における前記ガラス板2としては、例えば、プラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイパネルなどのフラットディスプレイパネルの基板用のガラス板などが挙げられる。
【0015】
この種のガラス板は、一般に清浄性に対する要望が高く、異物が付着すると問題になり易い。
従って、異物の付着の原因となり易い静電気の発生防止が効率良く行われる本実施形態の樹脂発泡シート1は、このような効果がガラス板の合紙として利用されることによって特に有効活用されることになる。
また、本実施形態の樹脂発泡シート1は、脂肪酸化合物のガラス板2への移行が抑制される点においても有利である。
【0016】
本実施形態の樹脂発泡シート1(発泡層10)は、樹脂組成物で構成されている。
本実施形態における前記樹脂組成物は、前記ベース樹脂と添加剤とを含んでいる。
本実施形態における前記樹脂組成物は、前記添加剤として、高分子型帯電防止剤と、脂肪酸化合物とを特定の割合で含有している。
具体的には、前記樹脂組成物は、ベース樹脂と、高分子型帯電防止剤と、脂肪酸化合物とを含み、前記高分子型帯電防止剤100質量部に対する前記脂肪酸化合物の含有量が1質量部以上25質量部以下となっている。
【0017】
本実施形態における前記ベース樹脂とは、前記樹脂組成物における質量割合の最も高い樹脂を意味している。
即ち、本実施形態の前記樹脂組成物は、1又は2以上の樹脂を含有する。
前記ベース樹脂は、前記樹脂組成物における質量割合が50質量%以上であって、60質量%以上であってもよい。
前記樹脂組成物における前記ベース樹脂の質量割合は、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。
前記樹脂組成物における前記ベース樹脂の質量割合は、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよい。
【0018】
前記ベース樹脂やベース樹脂以外に含まれ得る樹脂は、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0019】
前記熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン-αオレフィン共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂などのポリエステル系樹脂;ポリスチレン樹脂、ポリαメチルスチレン樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合体樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、ABS樹脂、AS樹脂などのポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;フッ素系樹脂などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーと称されるものであってもよい。
前記熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリーコン系樹脂などが挙げられる。
【0020】
前記樹脂組成物は、発泡性や成形加工性を考慮すると前記ベース樹脂が熱可塑性樹脂であることが好ましい。
即ち、本実施形態での前記樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物であることが好ましい。
前記ベース樹脂は、前記高分子型帯電防止剤とある程度の親和性を示すことが好ましいものの完全な相溶性を示すようなものではない方が好ましい。
即ち、前記ベース樹脂と前記高分子型帯電防止剤とは、適度に非相溶であることが好ましい。
【0021】
前記ベース樹脂は、極性の低い熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えば、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
合紙という用途について勘案すると、 前記ベース樹脂は、ポリエチレン樹脂かポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
【0022】
前記ポリエチレン樹脂は、例えば、触媒法(中低圧重合法)によって分子構造中に殆ど分岐がなく、942kg/m3以上の高い密度を有する状態となって作製される高密度ポリエチレン樹脂(PE-HD)、コモノマーの導入によって910kg/m3以上925kg/m3以下の密度となるように作製される直鎖低密度ポリエチレン樹脂(PE-LLD)や該直鎖低密度ポリエチレン樹脂(PE-LLD)と前記高密度ポリエチレン樹脂(PE-HD)との間の密度となるように作製される中密度ポリエチレン樹脂(PE-MD)などであってもよい。
前記ポリエチレン樹脂は、極低密度ポリエチレン樹脂(PE-VLD)であってもよい。
前記ポリエチレン樹脂は、例えば、高圧重合法によって作製され分子構造中に長鎖分岐を有する状態となっている低密度ポリエチレン樹脂(PE-LD)であってもよい。
【0023】
前記ポリプロピレン樹脂は、ホモポリプロピレン樹脂であっても、ランダムポリプロピレン樹脂であっても、ブロックポリプロピレン樹脂であってもよい。
【0024】
前記ベース樹脂は、長鎖分岐を有する低密度ポリエチレン樹脂(PE-LD)であることが好ましい。
ポリエチレンの長鎖分岐は、例えば、13C-NMRによって確認することができ、ヘキシル基以上の長さのアルキル基が存在することが確認できればポリエチレンに長鎖分岐が存在していると判断することができる。
低密度ポリエチレン樹脂(PE-LD)は、ヘプチル基以上の長さのアルキル基を有することが好ましく、オクチル基以上の長さのアルキル基を有することがより好ましい。
【0025】
ポリエチレン樹脂は、ある程度嵩高い分子構造を有していることが好ましく、例えば、メルトマスフローレイトが適度な低さを有していることが好ましい。
ポリエチレン樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)は、2g/10min以下であることが好ましい。
ポリエチレン樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)は、1g/10min以下であることがより好ましく、0.5g/10min以下であることがさらに好ましい。
樹脂発泡シート1を押出発泡法で製造する際の設備負荷を軽減する上において、ポリエチレン樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)は、0.1g/10min以上であることが好ましい。
【0026】
メルトマスフローレイト(MFR)はJIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」により測定することができる。
メルトマスフローレイト(MFR)は、同規格のB法記載の「b)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法」により測定することができる。
具体的には、メルトマスフローレイト(MFR)は、例えば、(株)東洋精機製作所製「セミオートメルトインデックサ2A」を用いて、測定することができる。
測定条件は次の通りとすることができる。
試料:3~8g
予熱:270秒
ロードホールド:30秒
試験温度:190℃
試験荷重:2.16kg(21.18N)
ピストン移動距離(インターバル):25mm
試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトマスフローレイト(g/10min)の値とすることができる。
【0027】
前記樹脂組成物に含有される前記添加剤としては、前記高分子型帯電防止剤や前記脂肪酸化合物以外のものとして、例えば、低分子型帯電防止剤(界面活性剤)、耐候性安定剤、光安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、消臭剤、顔料、無機充填剤などがあげられる。
【0028】
本実施形態における前記添加剤は、例えば、前記樹脂組成物における合計含有量が1質量%以上30質量%以下とされる。
前記樹脂組成物における前記添加剤の合計含有量は、27質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、23質量%以下であることがさらに好ましい。
前記樹脂組成物における前記添加剤の合計含有量は、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。
【0029】
前記高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、エチレン-メタクリル酸共重合体などのアイオノマー、ポリエチレングリコールメタクリレート系共重合体等の第四級アンモニウム塩、オレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体などが挙げられる。
【0030】
前記高分子型帯電防止剤としては、オレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体が好ましい。
前記オレフィン系ブロックは、例えば、炭素数が2~8のアルケンの内の1又は2以上のアルケンを構成単位としたポリオレフィンによって構成されていてもよい。
前記親水性ブロックは、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどの炭素数が2~8のアルキレンオキサイドを構成単位としたポリオキシアルキレンによって構成されていてもよい。
【0031】
前記高分子型帯電防止剤としては、MFR(190℃、21.18N)の値がベースポリマーに比べて高い値を有していることが好ましい。
前記高分子型帯電防止剤のMFRは、10g/10min以上であることが好ましく、20g/10min以上であることがより好ましい。
前記高分子型帯電防止剤のMFRは、例えば、50g/10min以下であってもよい。
前記高分子型帯電防止剤のMFRは、ベース樹脂のMFRの5倍以上の値であることが好ましく、15倍以上の値であることがより好ましく、25倍以上の値であることがさらに好ましい。
前記高分子型帯電防止剤のMFRは、ベース樹脂のMFRの50倍以上の値であってもよい。
前記高分子型帯電防止剤のMFRは、ベース樹脂のMFRの200倍以下の値であってもよい。
【0032】
本実施形態における前記高分子型帯電防止剤は、例えば、前記樹脂組成物における合計含有量が1質量%以上30質量%以下とされる。
前記樹脂組成物における前記高分子型帯電防止剤の含有量は、25質量%以下であることが好ましく、22質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
前記樹脂組成物における前記高分子型帯電防止剤の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。
【0033】
本実施形態における前記脂肪酸化合物としては、例えば、下記式(1)で表されるような化合物が挙げられる。
[CH3-(CH2)n-C(=O)‐]mX ・・・(1)
尚、上記式において「n」は2以上30以下の整数を表し、「m」は、1以上3以下の整数を表しており、Xは1価から3価の基で、例えば、水酸基、アミド基、金属イオン、1価のアルコール又は2価以上の多価アルコール(ジオール、グリセリン誘導体など)の水酸基から水素原子を除いた残基などである。
【0034】
具体的には、前記脂肪酸化合物としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0035】
脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、さらにこのようなモノカルボン酸の他に、ダイマー酸等のジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪酸金属塩を構成する金属としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。
【0036】
脂肪酸アミドとは、脂肪酸から誘導される酸アミドである。
該脂肪酸アミドとしては、例えば、脂肪族アミン由来のものが挙げられる。
【0037】
脂肪酸アミドの具体例としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0038】
脂肪酸エステルの具体例としては、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、ベヘニン酸モノグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リシノール酸モノグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(5)グリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)グリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレン(5)モノオレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ポリアジピン酸ペンタエリストールステアレート、ステアリン酸ステアリル、1,2-オキシステアリン酸、硬化ひまし油等が挙げられる。
【0039】
本実施形態における前記脂肪酸化合物としては、脂肪酸エステルが好ましい。
脂肪酸エステルの中でも、ステアリン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、ベヘニン酸モノグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リシノール酸モノグリセリドなどのモノグリセリドが好適である。
【0040】
本実施形態の樹脂発泡シートを構成する樹脂組成物における脂肪酸化合物の合計含有量は、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
本実施形態の樹脂発泡シートを構成する樹脂組成物における脂肪酸化合物の合計含有量は、100ppm以上であってもよく、300ppm以上であってもよい。
脂肪酸化合物の合計含有量は、500ppm以上であってもよく、1000ppm以上であってもよく、5000ppm以上であってもよい。
【0041】
樹脂発泡シートの脂肪酸化合物の含有量の測定方法は、公知の方法を用いることができる。
その方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
【0042】
前記脂肪酸金属塩については、例えば次のように測定される。
沸騰メタノールに樹脂発泡シートを浸漬して抽出し、放冷して析出した沈殿をろ別する。析出物を希塩酸中に懸濁し、エーテルを用いて溶媒抽出すると、エーテル相に遊離した脂肪酸が、水相に金属がそれぞれ抽出されるので脂肪酸は後述の手法で、金属はICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置等により金属種の特定と定量を行うことができる。
【0043】
前記脂肪酸、前記脂肪酸アミド、及び、前記脂肪酸エステルの定量は、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)(例えば、Termo SCIENTIFIC社製 「ACCELA」)を使って行うことができる。
【0044】
尚、脂肪酸化合物の定量に用いる検量線は、定量する脂肪酸化合物(脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル)の1000ppm濃度の基準溶液(メタノール溶液)をメタノールで希釈して作製した濃度の異なる5種類の標準液(50ppm、10ppm、5ppm、2.5ppm、1ppm)を使って作成する。
また、LC-MS/MSで測定する試料は、以下のようにして調製する。
・樹脂発泡シートを約2mm角の大きさに切断して約0.15gの抽出試料を採取する。
・該抽出試料を精秤し、該抽出試料を10mlのメタノールとともにPTFE(ポリテトラフロロエチレン)製の耐圧容器に入れ、該耐圧容器を密閉する。
・密閉した耐圧容器を120℃のオーブンで2時間加熱した後、オーブンから取り出して常温の室内で自然放冷する。
・室温まで冷却された耐圧容器を開けて容器内の抽出液を濾紙(No.5A)で濾過する。
・上記の濾過によって得られた濾液をLC-MS/MSでの測定試料とする。
・測定結果から、先に求めた検量線を使って濾液における脂肪酸化合物の量を算出する。
・濾液に含まれる脂肪酸化合物の量から樹脂発泡シートにおける脂肪酸化合物の含有量を求める。
【0045】
本実施形態の樹脂組成物における前記脂肪酸化合物の含有量は、前記の通り、前記高分子型帯電防止剤100質量部に対して1質量部以上25質量部以下とされる。
高分子型帯電防止剤100質量部に対する前記脂肪酸化合物の含有量は、2質量部以上であってもよく、3質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。
高分子型帯電防止剤100質量部に対する前記脂肪酸化合物の含有量は、22質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよく、18質量部以下であってもよい。
【0046】
本実施形態の樹脂組成物において前記高分子型帯電防止剤と前記脂肪酸化合物とを併存させることで該高分子型帯電防止剤の帯電防止効果が向上する理由については直接的に確かめられたわけではないが、前記脂肪酸化合物がベースポリマーと高分子型帯電防止剤との相溶化剤のように機能して前記高分子型帯電防止剤のベースポリマーへの分散性が向上するためではないかと考えられる。
【0047】
脂肪酸化合物は、前記の式(1)での炭素数3~31のアルキル基の部分([CH3(CH2)n-]で表される部分)に比べて残りの部分([(-C(=O)-)mX]で表される部分)の方が相対的に高い極性を有しており、分子構造中に相対的に極性の高い高極性部と、該極性部に比べて極性の低い低極性部とが存在する。
そして、高分子型帯電防止剤も同様に分子構造中に相対的に極性の高い高極性部と、該極性部に比べて極性の低い低極性部とが存在するため脂肪酸化合物が相溶化剤的に機能するものと考えられる。
【0048】
前記高分子型帯電防止剤は、例えば、前記ポリエチレン樹脂を樹脂組成物のベースポリマーとした場合、前記ベースポリマーを含むマトリックス中に粒子状となって分散する。
即ち、前記樹脂組成物には、前記ベースポリマーを含むマトリックス(連続相)と、前記高分子型帯電防止剤を含むドメイン粒子とが形成され、前記マトリックスに前記ドメイン粒子が分散した分散相が形成される。
このようなマトリックス-ドメイン構造(海島構造)を有する樹脂組成物においては、通常、前記高分子型帯電防止剤を含むドメイン粒子の比表面積が大きい方が高い帯電防止効果を発揮する上で有利になる。
そのため、前記脂肪酸化合物によって分散性の高められた前記高分子型帯電防止剤は、分散性が低い場合に比べて高い帯電防止効果を発揮する。
【0049】
前記脂肪酸化合物は、それ単独で前記ポリエチレン樹脂などのベースポリマーに対して混合された場合、ブリードアウトして樹脂発泡シートが接する相手材に付着する場合がある。
本実施形態の樹脂組成物においては、前記脂肪酸化合物の一部又は全部が前記ドメイン粒子中に取り込まれたりドメイン粒子とマトリックスとの界面に捕捉されたりした状態になると見られる。
そのため、本実施形態の樹脂発泡シート1は、ガラス板2と面接触して積層体10の構成部材とした際に静電気を発生させ難く、且つ、ガラス板2への付着物を生じさせ難い。
【0050】
このような効果をより顕著に発揮させる上において、前記マトリックス-ドメイン構造でのドメイン粒子は、20nm以上2000nm以下の大きさとなってマトリックス中に分散されていることが好ましい。
前記樹脂発泡シート1は、樹脂発泡シート1の表層部で断面観察した際に1μm角の範囲内に上記の大きさの粒子が平均5個以上存在することが好ましく、平均10個以上存在することがより好ましい。
即ち、前記樹脂発泡シート1は、少なくとも表層部の断面において20nm以上2000nm以下の大きさのドメイン粒子の平均個数が5個/μm2以上となって観察されることが好ましく、10個/μm2以上となって観察されることが好ましい。
前記ドメイン粒子の大きさは、50nm以上であることがより好ましい。
また、前記ドメイン粒子の大きさは、500nm以下であることがより好ましい。
前記樹脂発泡シート1は、このようなより好ましい大きさのドメイン粒子が上記のような平均個数で存在することがさらに好ましい。
【0051】
前記ドメイン粒子の大きさは、ドメイン粒子の輪郭線上の異なる2点を結ぶ線分の内の最も長い線分の長さ(長径の長さ)として求められる。
前記ドメイン粒子の大きさは、前記樹脂発泡シート1を厚さ方向に切断した断面での大きさとして求めることができる。
前記ドメイン粒子の大きさは、前記断面と平行するように樹脂発泡シート1をスライスして得られるスライス片を必要に応じて染色処理を施した後に透過型電子顕微鏡(TEM)で2000倍から4000倍程度の倍率(例えば、3500倍)で観察して求めることができる。
前記ドメイン粒子の大きさは、前記樹脂発泡シート1の表面にできるだけ近い位置で上記のような顕微鏡観察を実施し、該顕微鏡観察によって得られる画像を画像解析ソフトなどによって解析することによって求めることができる。
画像解析では、例えば、10μm2以上の面積を有する測定範囲を設定し、該測定範囲に上記のような大きさのドメイン粒子がいくつ存在するかを数え、その個数を測定範囲の面積で除することで平均個数を算出することができる。
【0052】
本実施形態における前記樹脂組成物は、高分子型帯電防止剤だけでは帯電防止効果が不足するようであれば、前記添加剤として界面活性剤を含有させるようにしてもよい。
【0053】
前記界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0054】
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、グリセリンや糖類などの多価アルコールと脂肪酸がエステル結合したエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル型界面活性剤;脂肪酸や多価アルコール脂肪酸エステルにアルキレンオキサイドを付加させたエステル・エーテル型界面活性剤;疎水基と親水基がアミド結合を介している脂肪酸アルカノールアミド等のアミド型界面活性剤などが挙げられる。
【0055】
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリン塩等のスルホン酸塩型界面活性剤;脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン酸塩、N-アシルグルタミン酸塩等のカルボン酸塩型界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、油脂硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩型界面活性剤;アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩型界面活性剤などが挙げられる。
塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属やカルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属等が挙げられる。
【0056】
前記カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩型界面活性剤;N-メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル・塩酸塩などのアミン塩型界面活性剤が挙げられる。
【0057】
前記両性界面活性剤としては、アルキルベタイン等のベタイン型界面活性剤;アルキルアミノ脂肪酸塩等のアミノ酸型界面活性剤;アルキルアミンオキシド等のアミンオキシド型界面活性剤などが挙げられる。
【0058】
本実施形態における前記界面活性剤は、例えば、前記樹脂組成物における合計含有量が10質量%以下とされる。
前記界面活性剤の合計含有量は、8質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
前記界面活性剤の合計含有量は、0.1質量%以上とすることができ、1質量%以上でとしてもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、前記界面活性剤を含有させる場合、アニオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤を含むことが好ましい。
樹脂組成物が含有する界面活性剤は、特にアニオン系界面活性剤であることが好ましい。
具体的には、樹脂組成物に含まれる界面活性剤は、50質量%以上がアニオン系界面活性剤であることが好ましく、75質量%以上がアニオン系界面活性剤であることがより好ましく、90質量%以上がアニオン系界面活性剤であることがさらに好ましい。
樹脂組成物に含まれる界面活性剤は、実質的にアニオン系界面活性剤のみであってもよい。
【0059】
本実施形態の樹脂発泡シート1は、上記のような樹脂組成物を発泡剤などとともに押出機で溶融混練し、該溶融混練によって得られた溶融混練物を前記押出機の押出方向先端側に装着したダイからシート状に押出して発泡させることによって作製することができる。
該樹脂発泡シート1の幅や厚さは特に限定されるものではないが、厚さについては、0.2mm以上であることが好ましい。
樹脂発泡シート1の厚さは0.5mm以上であることがより好ましい。
樹脂発泡シート1の厚さは2.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましい。
【0060】
樹脂発泡シート1の厚さは、例えば、無作為に選択した複数箇所(例えば、20箇所)においてシックネスゲージ(例えば、テクロック社製、「ダイヤルシックネスゲージSM-112」)で厚さを測定し、その算術平均値を算出することによって求めることができる。
【0061】
本実施形態における前記発泡層10は、見掛け密度が10kg/m3以上であることが好ましい。
該見掛け密度は、15kg/m3以上であることがより好ましい。
前記発泡層10の見掛け密度は、200kg/m3以下であることが好ましい。
該見掛け密度は、150kg/m3以下であることがより好ましく、100kg/m3以下であることがさらに好ましい。
【0062】
前記発泡層10の見掛け密度は、以下のようにして求めることができる。
[見掛け密度の測定法]
発泡層10の見掛け密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」記載の方法で測定することができる。
具体的には、見掛け上の体積が100cm3以上の試験片を用意し、その質量を測定する。
尚、樹脂発泡シートから試験片を切り出す際には、できるだけ元のセル構造を変えないようにする。
また、100cm3以上の試験片が用意できない場合は、できるだけ大きな体積の試験片を用意する。
そして、見掛け密度は、次式によって算出する。
見掛け密度(kg/m3)=試験片質量(g)/試験片体積(mm3)×106
尚、試験片は、原則的に樹脂発泡シートを作製した後、72時間以上経過した後に採取し、温度23±2℃、相対湿度50±10%の雰囲気条件で16時間以上放置して状態調節を行った後に同様の条件下で質量及び体積を測定する。
【0063】
本実施形態では、樹脂発泡シート1として発泡層10のみの単層構造を有するものを例示しているが、樹脂発泡シート1は、
図3に示すように発泡層10の片面に非発泡層20を有する押出発泡シートであってもよく、
図4に示すように発泡層10の両面に非発泡層20を有する押出発泡シートであってもよく、必ずしも押出発泡シートでなくてもよい。
【0064】
前記非発泡層20は、通常、5μm以上500μm以下の厚さとされ得る。
【0065】
樹脂発泡シート1が非発泡層20を有する場合、
図2での発泡層10について説明した前記樹脂組成物と同様の樹脂組成物で当該非発泡層20を形成させることができる。
尚、本実施形態の樹脂発泡シート1は、相手材に接する表面が前記樹脂組成物で構成されていることが脂肪酸化合物の移行の抑制に有効に作用することから、
図4に示すように発泡層10の両面に非発泡層20を有する樹脂発泡シート1では、発泡層10の形成材料については特に限定されない。
一方で、
図3に示すような樹脂発泡シート1については、発泡層10の一面側のみにしか非発泡層20が設けられておらず、発泡層10の他面側が相手材に接する状態になることから、発泡層10と非発泡層20とのそれぞれを前述のような樹脂組成物で形成させることが好ましい。
【0066】
尚、
図4に示す樹脂発泡シート1では、一面側の非発泡層20を構成する樹脂組成物と他面側の非発泡層20を構成する樹脂組成物とに同じ樹脂組成物が用いられても異なる樹脂組成物が用いられてもよい。
また、
図3に示すような樹脂発泡シート1については、発泡層10を構成する樹脂組成物と非発泡層20を構成する樹脂組成物とに同じ樹脂組成物が用いられても異なる樹脂組成物が用いられてもよい。
【0067】
本実施形態の樹脂発泡シート1は、該発泡層のみの単層構造、又は、前記発泡層と他の層とが積層された多層構造を有し、少なくとも一方の表面が樹脂組成物で構成され、且つ、該樹脂組成物は、ベース樹脂と、高分子型帯電防止剤と、脂肪酸化合物とを含み、前記高分子型帯電防止剤100質量部に対する前記脂肪酸化合物の含有量が1質量部以上25質量部以下であるため高分子型帯電防止剤による帯電防止効果がより顕著に発揮され得る。
【0068】
本実施形態の樹脂発泡シート1は、上記のような機能を有することから合紙として用いられることが好ましいものの当該樹脂発泡シート1の用途は合紙に限定されるものではなく、各種の用途に利用可能である。
また、本明細書では樹脂組成物を樹脂発泡シートの形成材料とする場合を本発明の特定の事例として説明しているが、本発明の樹脂組成物は、その用途が樹脂発泡シートに限定されるものではない。
即ち、本発明の樹脂組成物は、ベース樹脂と、高分子型帯電防止剤と、脂肪酸化合物とを含み、前記高分子型帯電防止剤100質量部に対する前記脂肪酸化合物の含有量が1質量部以上25質量部以下であることで高分子型帯電防止剤による帯電防止効果がより顕著に発揮され得る点については樹脂発泡シート以外の用途においても共通している。
例えば、本発明の樹脂組成物は、射出成形品、ブロー成型品、プレス成形品などの各種の樹脂成形品の形成材料として好適であり、帯電防止性が求められる各種用途に利用可能である。
即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例0069】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
まず、ポリエチレン樹脂として以下の「PE1」、「PE2」の略称で表すものを用意した。
PE1:高圧重合法で製造される低密度ポリエチレン樹脂、密度:926kg/m3、MFR=3.5g/10min
PE2:高圧重合法で製造される低密度ポリエチレン樹脂、密度:923kg/m3、MFR=0.3g/10min
また、 前記高分子型帯電防止剤として以下の「AS1」~「AS4」の略称で表した4種類のものを用意した。
AS1:ポリオレフィンによって構成されたポリオレフィンブロックとポリオキシアルキレンによって構成された親水性ブロックとを備えた高分子型帯電防止剤、MFR=35g/10min、融点115℃。
AS2:ポリオレフィンによって構成されたポリオレフィンブロックとポリオキシアルキレンによって構成された親水性ブロックとを備えた高分子型帯電防止剤、MFR=23g/10min、融点135℃。
AS3:ポリオレフィンによって構成されたポリオレフィンブロックとポリオキシアルキレンによって構成された親水性ブロックとを備えた高分子型帯電防止剤、MFR=35g/10min、融点135℃。
AS4:ポリオレフィンによって構成されたポリオレフィンブロックとポリオキシアルキレンによって構成された親水性ブロックとを備えた高分子型帯電防止剤、MFR=20g/10min、融点135℃。
そして、脂肪酸化合物として以下の「FA1」~「FA3」の略称で表した3種類のものを用意した。
FA1:ステアリン酸モノグリセリドを25質量%の割合で含有するマスターバッチ。
FA2:グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、脂肪酸ジエタノールアミンの3種混合物を15質量%の割合で含有するマスターバッチ。
FA3:ステアリン酸モノグリセリド。
また、界面活性剤として以下の「SA1」~「SA4」の略称で表した4種類のものを用意した。
SA1:アルキルスルホン酸ナトリウム。
SA2:ポリオキシエチレンアルキルアミン。
SA3:ポリエチレングリコール(PEG300)。
SA4:ポリオキシエチレンラウリルエーテル。
さらに、気泡調整剤として以下の「NA1」の略称で表した1種類のものを用意した。
NA1:アゾジカルボンアミド含有マスターバッチ
【0071】
<試験1:樹脂シートでの検討>
(比較例1)
ポリエチレン樹脂(PE1)100質量部に対する高分子型帯電防止剤(AS1)の割合が10質量部となるようにポリエチレン樹脂と高分子型帯電防止剤とを溶融混練して、得られた溶融混練物にてシート状のサンプル(「比較例1」の樹脂シート)を3枚作製した。
作製した3枚の樹脂シートのそれぞれについて表裏両面の表面固有抵抗率を測定し、表裏の平均値を算出した。
尚、平均値の算出に際しては明らかな異常値は削除した。
【0072】
(表面固有抵抗率)
樹脂シートの表面固有抵抗率は、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」記載の方法により測定した。
即ち、試験装置((株)アドバンテスト製デジタル超高抵抗/微少電流計、型名「R3840」及びレジスティビティ・チェンバ、型名「R12702A」)を使用し、ポリオレフィン系樹脂発泡シートから採取した試料に、約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vで1分間充電後の抵抗値を測定し、次式により算出した。
試料は、幅100mm×長さ100mm×厚さ(ポリオレフィン系樹脂シートのそのままの厚さ)とした。
測定は、温度20±2℃、相対湿度65±5%RHの環境下で24時間以上状態調節後に実施し、試験環境は、温度20±2℃、相対湿度65±5%RHとした。
試料数(n数)は3個とし、原則的に、それぞれ表裏両面を測定することとした。
尚、個々の試料の表面固有抵抗率は次式により求め、全ての試料についての測定値を算出平均し、その表裏の平均値をポリオレフィン系樹脂シートの表面固有抵抗率とした。
ρs=(π(D+d)/(D-d))×Rs
ρs: 表面固有抵抗率(MΩ)
D: 表面の環状電極の内径(cm)
d: 表面電極の内円の外径(cm)
Rs: 表面抵抗(MΩ)
【0073】
(総合評価)
A:表面固有抵抗率が10の11乗台以下(1×1012Ω未満)である。
B:表面固有抵抗率が10の11乗台を超え12乗台以下(1×1012Ω以上1×1013Ω未満)である。
C:表面固有抵抗率が10の13乗台以上(1×1013Ω以上)である。
結果を、下記表1に示す。
【0074】
(実施例1~5、比較例2~4)
使用材料を表1に示す通りのものに変更したこと以外は比較例1と同様に樹脂シートを作製し、比較例1と同様に表面固有抵抗率を測定した。
【0075】
【0076】
高分子型帯電防止剤と脂肪酸化合物とが併用されているシートでは表面固有抵抗率が低くなっており、優れた帯電防止性が発揮されていることが表1に示された結果からわかる。
【0077】
<試験2:樹脂発泡シートでの検討>
(実施例6)
ポリエチレン樹脂「PE1」100質量部に対し、高分子型帯電防止剤「AS1」が17質量部、気泡調整剤「NA1」が0.15質量部の割合となるようにブレンドした混和物を調製した。
押出方向に向けて第一押出機(シリンダー径:φ90mm)、第二押出機(シリンダー径:φ150mm)の順に2台の押出機が連結されたタンデム式押出機の先端部(第二押出機の先端部)に出口直径が222mm(スリット0.04mm)のサーキュラーダイを装着した。
前記混和物をタンデム式押出機の第一押出機に供給し、該第一押出機で溶融混練しつつ該第一押出機の途中から発泡剤として混合ブタン(イソブタン/ノルマルブタン=50/50(モル比))を圧入してさらに溶融混練を実施した。
混合ブタンの圧入量はポリエチレン樹脂100質量部に対する割合が18質量部となるように調整した。
さらに、前記ポリエチレン樹脂100質量部に対する割合が1.6質量部となるように前記第一押出機の途中から脂肪酸化合物(FA3:ステアリン酸モノグリセリド)を圧入して溶融混練を実施した。
この第一押出機での溶融混練後は、該第一押出機に連結された第二押出機で発泡に適する温度域(111℃)まで溶融混練物を冷却し、前記サーキュラーダイより大気中に押出発泡した。
その時の樹脂温度は112℃であった。
押出発泡された筒状発泡体を、エアーを吹き付けて冷却した後、直径770mm、長さ650mmの冷却マンドレル上を添わせて冷却し、冷却マンドレルの後部側に設けたカッターで押出方向に沿って筒状発泡体を切断し、速度36m/minで巻き取って長尺帯状の発泡シートを得、試験例2-1の樹脂発泡シート(発泡層単層)を得た。
【0078】
(実施例7、実施例8)
第一押出機の途中から導入するステアリン酸モノグリセリド(FA3)の量を1.6質量部に代えてそれぞれ2.6質量部(実施例7)、0.8質量部(実施例8)としたこと以外は実施例6と同様に樹脂発泡シート(発泡層単層)を作製した。
【0079】
(実施例9)
脂肪酸化合物をグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、脂肪酸ジエタノールアミンの3種混合物のマスターバッチ(FA2)に変更し、脂肪酸化合物の合計量が0.75質量部(マスターバッチとして5質量部)となる割合で該マスターバッチをポリエチレン樹脂や高分子型帯電防止剤と同時に第一押出機に投入したこと以外はこれまでの試験例と同様に試験例2-4と同様に樹脂発泡シート(発泡層単層)を作製した。
【0080】
(実施例10)
前述のタンデム式押出機とは別の押出機(第3押出機)を用意し、この第3押出機から供給される溶融混練物と前記第2押出機から供給される溶融混練物とを合流させる合流金型を前記サーキュラーダイの上流側に配置し、第2押出機から供給される溶融混練物が第3押出機から供給される溶融混練物で内側と外側とから挟み込まれた3層構造となってサーキュラーダイから押出発泡されるようにした。
そして、第1押出機には、ポリエチレン樹脂「PE2」100質量部に対し、気泡調整剤「NA1」が0.15質量部の割合になるようブレンドした樹脂組成物を供給し、さらに第1押出機途中から発泡剤として混合ブタン(イソブタン/ノルマルブタン=50/50(モル比))を圧入した。第3押出機には、ポリエチレン樹脂「PE1」100質量部に対し、高分子型帯電防止剤「AS2」が20質量部、脂肪酸化合物(FA3:ステアリン酸モノグリセリド)が0.4質量部の割合で含まれている樹脂組成物を供給した。
そして、第2押出機から供給される溶融混練物で発泡層を形成させるとともに第3押出機から供給される溶融混練物で非発泡層を形成させ、これらを共押出することで、非発泡層/発泡層/非発泡層の3層構造の樹脂発泡シートを作製した。
【0081】
(比較例5)
高分子型帯電防止剤を変更したこと、および、脂肪酸化合物を含有させなかったこと以外は実施例6と同様に樹脂発泡シートを作製した。
【0082】
(比較例6、比較例7)
ステアリン酸モノグリセリド(FA3)に代えてポリオキシエチレンラウリルエーテル(SA4)を0.4質量部、ポリエチレングリコール(SA3:PEG300)を0.3質量部の割合で第1押出機の途中から圧入したこと以外は実施例6と同様に比較例6、比較例7の樹脂発泡シートを作製した。
【0083】
(比較例8)
高分子型帯電防止剤を用いないこと、および、ステアリン酸モノグリセリド(FA3)を2.0質量部とした以外は実施例6と同様に比較例8の樹脂発泡シートを作製した。
【0084】
(比較例9)
ステアリン酸モノグリセリド(FA3)に代えてアルキルスルホン酸ナトリウム(SA1)を0.5質量部とした以外は実施例6と同様に比較例9の樹脂発泡シートを作製した。
【0085】
(樹脂発泡シートの評価)
各試験例の樹脂発泡シートについて単位面積当たりの質量(坪量)、厚さ(平均厚さ)、(密度)見掛け密度、及び、表面固有抵抗率の測定を実施した。
また、下記の要領にて曇り試験を実施した。
【0086】
(坪量測定)
樹脂発泡シートの坪量は、JIS P8124:2011「紙及び板紙-坪量測定方法」記載の方法により測定した。
具体的には、100cm2以上のサンプルを10枚切り取り、それぞれの質量と面積とを測定し次式により求めた。
坪量(g/m2)=10000×試験片質量(g)/試験片面積(cm2)
【0087】
(厚さ)
樹脂発泡シートの厚さは、幅方向に50mmピッチでシックネスゲージ(テクロック社製、「ダイヤルシックネスゲージSM-112」)で厚さを測定し、その算術平均値を算出した。
【0088】
(表面固有抵抗率)
樹脂発泡シートの表面固有抵抗率は、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」記載の方法により測定した。
即ち、試験装置((株)アドバンテスト製デジタル超高抵抗/微少電流計、型名「R3840」及びレジスティビティ・チェンバ、型名「R12702A」)を使用し、樹脂発泡シートから採取した試料に、約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vで1分間充電後の抵抗値を測定し、次式により算出した。
試料は、幅100mm×長さ100mm×厚さ(樹脂発泡シートのままの厚さ)とした。
測定は、温度20±2℃、相対湿度65±5%RHの環境下で24時間以上状態調節後に実施し、試験環境は、温度20±2℃、相対湿度65±5%RHとした。
試料数(n数)は3個とし、原則的に、それぞれ表裏両面を測定することとした。
尚、個々の試料の表面固有抵抗率は次式により求め、全ての試料についての測定値を算出平均し、その表裏の平均値を樹脂発泡シートの表面固有抵抗率とした。
ρs=(π(D+d)/(D-d))×Rs
ρs: 表面固有抵抗率(MΩ)
D: 表面の環状電極の内径(cm)
d: 表面電極の内円の外径(cm)
Rs: 表面抵抗(MΩ)
【0089】
(曇り試験)
・樹脂発泡シートの無作為に選択した場所から5cm×9cmのサイズのシート片を6枚切り出した。
同じサイズのガラス板を3枚用意し、2枚のシート片の間にガラス板を挟み込んだ試料を3セット作製した。
該試料に1kgの質量の錘を載せて60℃、80%RHに設定された恒温恒湿槽内で24時間保持した。
24時間経過後に恒温恒湿槽から取り出した切り出した試料のシート片をガラス板の両面から剥がし、該ガラス板を目視で評価した。
評価の判定基準は以下の通りとした。
(判定基準)
1.移行物を全く確認することができない。
2.よく見て微かに移行物が確認できる。
3.一目ではっきりと移行物が確認できる。
4.全面にべっとりと移行物が確認できる。
【0090】
(総合評価)
A:表面固有抵抗率が10の9乗台以下(1×1010Ω未満)であり、曇り試験判定が1である。
B:表面固有抵抗率が10の10乗台以上11乗台未満(1×1010Ω以上1×1011Ω未満)であり、曇り試験判定が2以下である。
C:表面固有抵抗率が10の11乗台以上(1×1011Ω以上)であり、曇り試験判定が2以下である。
D:表面固有抵抗率が10の11乗台以上(1×1011Ω以上)であり、曇り試験判定が3以上である。
上記の評価結果を表2に示す。
【0091】
【0092】
表2に示された結果からも高分子型帯電防止剤と脂肪酸化合物とが併用されているシートでは表面固有抵抗率が低くなっており、優れた帯電防止性が発揮されていることがわかる。
【0093】
(マトリックス-ドメイン構造の確認)
比較例5、比較例9、実施例6に係る樹脂発泡シートの表層部のマトリックス-ドメイン構造の様子を透過型電子顕微鏡写真で観察した。
顕微鏡観察は、押出方向(MD)に平行する断面と、押出方向とは直交する幅方向(TD)に平行する断面とに関し、1000倍、2000倍、3500倍の3通りの倍率で行った。
結果を
図5から
図7に示す。
これらの図における濃色部は高分子型帯電防止剤を含むドメイン粒子で、その周囲がポリエチレン樹脂を含むマトリックスである。
また、
図5~
図7のそれぞれの写真の左側が押出方向(MD)に平行する断面での写真であり、右側が幅方向(TD)に平行する断面での写真である。
そして、
図5~
図7のそれぞれの写真の(a)は、高分子型帯電防止剤のみを含む試料である比較例5についてのTEM写真で、(b)は高分子型帯電防止剤とアルキルスルホン酸ナトリウムとを含む試料である比較例9についてのTEM写真で、(c)が高分子型帯電防止剤と脂肪酸化合物(ステアリン酸モノグリセリド)とを含む試料である実施例6についてのTEM写真である。
尚、
図5は、顕微鏡での観察倍率1000倍で撮影したTEM写真で、写真下のスケールバーの長さが2μmである。
また、
図6は、顕微鏡での観察倍率2000倍で撮影したTEM写真で、写真下のスケールバーの長さが500nmである。
そして、
図7は、顕微鏡での観察倍率3500倍で撮影したTEM写真で、写真下のスケールバーの長さが500nmである。
【0094】
この写真からは、脂肪酸化合物を併存させることで高分子型帯電防止剤が微細なドメイン粒子となって分散され、帯電防止効果を発揮する上で有利となることがわかる。