IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フタバ産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-キャニスタ 図1
  • 特開-キャニスタ 図2
  • 特開-キャニスタ 図3
  • 特開-キャニスタ 図4
  • 特開-キャニスタ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040806
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
F02M25/08 311B
F02M25/08 311C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145692
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 光司
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA39
3G144GA13
3G144GA20
3G144GA28
3G144GA30
(57)【要約】
【課題】吸着材の充填時に、外側のケースとカートリッジのケースとの隙間に吸着材が入り込みにくいキャニスタを提供する。
【解決手段】キャニスタは、外側のケースと、内側のケースと、接続ポートと、シール部材と、を備える。内側のケースは、筒状である。また、内側のケースは、外側のケースの内部に装着され、粒状の吸着材が内部に充填される。接続ポートは、外側のケースの内部と外部とを接続する。シール部材は、内側のケースにおける接続ポートに通ずる側と反対側の端部において、外側のケースと、内側のケースにおける外側のケースとの接合部位との隙間を塞ぐ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、
外側のケースと、
前記外側のケースの内部に装着され、粒状の吸着材が内部に充填された筒状の内側のケースと、
前記外側のケースの内部と外部とを接続する接続ポートと、
前記内側のケースにおける前記接続ポートに通ずる側と反対側の端部において、前記外側のケースと、前記内側のケースにおける前記外側のケースとの接合部位との隙間を塞ぐシール部材と、
を備える、キャニスタ。
【請求項2】
前記内側のケースにおける前記接続ポートに通ずる側と反対側の開口部分が、前記接続ポートに通ずる側へ向かうにつれて開口面積が小さくなる形状である、請求項1に記載のキャニスタ。
【請求項3】
前記内側のケースは、
前記吸着材を内部に有する本体部と、
前記本体部における前記接続ポートに通ずる側と反対側の端部において、前記本体部から前記外側のケースの内面へ向けて突出する、前記接合部位としてのフランジ部と、
を備え、
前記フランジ部における前記接続ポートに通ずる側と反対側の面は、前記内側のケースの中心軸に対して略垂直であり、
前記中心軸を通る断面において、前記フランジ部における前記接続ポートに通ずる側と反対側の面の幅が、前記吸着材の平均粒径よりも小さい、請求項1又は請求項2に記載のキャニスタ。
【請求項4】
前記内側のケースは、
前記吸着材を内部に有する本体部と、
前記本体部における前記接続ポートに通ずる側と反対側の端部において、前記本体部から前記外側のケースの内面へ向けて突出する、前記接合部位としてのフランジ部と、
を備え、
前記内側のケースの中心軸を通る断面において、前記フランジ部における前記接続ポートに通ずる側と反対側の面は、前記中心軸側が前記接続ポートに通ずる側に向くように、前記中心軸に垂直な面に対して傾いている、請求項2に記載のキャニスタ。
【請求項5】
前記内側のケースは、
前記吸着材を内部に有する本体部と、
前記本体部における前記接続ポートに通ずる側と反対側の端部において、前記本体部から前記外側のケースの内面へ向けて突出する、前記接合部位としてのフランジ部と、
を備え、
前記内側のケースの中心軸を通る断面において、前記フランジ部における前記接続ポートに通ずる側と反対側の面は、前記中心軸側へ向かうにつれて前記接続ポートに通ずる側に徐々に向かう曲線形状である、請求項2に記載のキャニスタ。
【請求項6】
前記吸着材を前記接続ポート側へ向けて付勢する弾性部材を更に備える、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のキャニスタ。
【請求項7】
前記キャニスタは、
前記蒸発燃料を取り込むよう構成されたチャージポートと、
前記蒸発燃料を排出するよう構成されたパージポートと、
大気に開放された大気ポートと、
前記チャージポート及び前記パージポートが設けられた主室と、
前記主室と連通し、前記大気ポートが設けられた副室と、
を備え、
前記外側のケースは、前記副室及び前記主室を形成し、
前記副室の内部に前記内側のケースが装着され、
前記接続ポートが前記大気ポートである、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のキャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、燃料タンクから発生した蒸発燃料が大気中に放出されることを抑制するキャニスタが搭載されている。キャニスタの内部には、活性炭等の吸着材が充填されている。燃料タンクから発生した蒸発燃料は、キャニスタの内部へ導入されて吸着材に一時的に吸着され、内燃機関の始動時に吸着材から脱離し、内燃機関に供給される。
【0003】
大気への蒸発燃料の放出を抑制するには、気体の流れ方向における吸着材層の長さLと、気体の流れ方向と垂直な断面における吸着材層の有効断面直径Dとの比L/Dを大きくすることが有効である。一般的に、要求されるL/Dの値は、キャニスタが搭載される車両の種類によって異なる。そのため、複数の仕様のキャニスタを作り分ける必要がある。
【0004】
特許文献1では、キャニスタを構成する外側のケースの内部に、別途、吸着材が充填された筒状のカートリッジを装着することが記載されている。このような構成によれば、L/Dが異なるカートリッジを適宜製造して装着することにより、外側のケースの設計を変更することなく、L/Dの仕様が異なるキャニスタを容易に作り分けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4173065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には、上記キャニスタの製造方法として、吸着材が充填されたカートリッジをあらかじめ作製しておき、そのカートリッジを外側のケースに装着した後に、フィルタで吸着材層に蓋をすることが記載されている。しかし、このような場合、本発明者の検討によれば、カートリッジの装着時に吸着材がこぼれないように気を遣うなど、組付け性が十分でなく自動化しにくい可能性があった。
【0007】
そこで、本発明者は、カートリッジの筒状のケースのみを外側のケースに装着した後に、吸着材をカートリッジのケースの開口部分から投入して充填することを検討した。その結果、吸着材の充填時に、外側のケースとカートリッジのケースとの隙間に吸着材が入り込んでしまう可能性があることが、新たな課題として見出された。
【0008】
本開示の一局面は、吸着材の充填時に、外側のケースとカートリッジのケースとの隙間に吸着材が入り込みにくいキャニスタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタである。キャニスタは、外側のケースと、内側のケースと、接続ポートと、シール部材と、を備える。内側のケースは、筒状である。また、内側のケースは、外側のケースの内部に装着され、粒状の吸着材が内部に充填される。接続ポートは、外側のケースの内部と外部とを接続する。シール部材は、内側のケースにおける接続ポートに通ずる側と反対側の端部において、外側のケースと、内側のケースにおける外側のケースとの接合部位との隙間を塞ぐ。
【0010】
このような構成によれば、吸着材の充填時に、外側のケースと内側のケースとの隙間に吸着材が入り込みにくい。
本開示の一態様では、内側のケースにおける接続ポートに通ずる側と反対側の開口部分が、接続ポートに通ずる側へ向かうにつれて開口面積が小さくなる形状であってもよい。このような構成によれば、内側のケースにおける接続ポートに通ずる側と反対側の開口部分が広いため、当該開口部分から吸着材を投入しやすい。
【0011】
本開示の一態様では、内側のケースは、本体部と、フランジ部と、を備えてもよい。本体部は、吸着材を内部に有する。フランジ部は、本体部における接続ポートに通ずる側と反対側の端部において、本体部から外側のケースの内面へ向けて突出する、接合部位である。フランジ部における接続ポートに通ずる側と反対側の面は、内側のケースの中心軸に対して略垂直であってもよい。中心軸を通る断面において、フランジ部における接続ポートに通ずる側と反対側の面の幅が、吸着材の平均粒径よりも小さくてもよい。このような構成によれば、吸着材の充填時に、内側のケースの中心軸に対して略垂直である、フランジ部における接続ポートに通ずる側と反対側の面に、吸着材が残留しにくい。
【0012】
本開示の一態様では、内側のケースは、本体部と、フランジ部と、を備えてもよい。本体部は、吸着材を内部に有する。フランジ部は、本体部における接続ポートに通ずる側と反対側の端部において、本体部から外側のケースの内面へ向けて突出する、接合部位である。内側のケースの中心軸を通る断面において、フランジ部における接続ポートに通ずる側と反対側の面は、中心軸側が接続ポートに通ずる側に向くように、中心軸に垂直な面に対して傾いていてもよい。このような構成によれば、吸着材の充填時に、内側のケースにおける外側のケースとの接合部位に吸着材が一層残留しにくい。
【0013】
本開示の一態様では、内側のケースは、本体部と、フランジ部と、を備えてもよい。本体部は、吸着材を内部に有する。フランジ部は、本体部における接続ポートに通ずる側と反対側の端部において、本体部から外側のケースの内面へ向けて突出する、接合部位である。内側のケースの中心軸を通る断面において、フランジ部における接続ポートに通ずる側と反対側の面は、中心軸側へ向かうにつれて接続ポートに通ずる側に徐々に向かう曲線形状であってもよい。このような構成によれば、吸着材の充填時に、内側のケースにおける外側のケースとの接合部位に吸着材が一層残留しにくい。
【0014】
本開示の一態様は、吸着材を接続ポート側へ向けて付勢する弾性部材を更に備えてもよい。このような構成によれば、弾性部材によって内側のケースの内部に吸着材が固定されるため、車両の振動によって内側のケースの内部で吸着材が流動し微粉化することが抑制される。
【0015】
本開示の一態様では、キャニスタは、チャージポートと、パージポートと、大気ポートと、主室と、副室と、を備えてもよい。チャージポートは、蒸発燃料を取り込むよう構成される。パージポートは、蒸発燃料を排出するよう構成される。大気ポートは、大気に開放される。主室には、チャージポート及びパージポートが設けられる。副室は、主室と連通している。また、副室には、大気ポートが設けられる。外側のケースは、副室及び主室を形成してもよい。副室の内部に内側のケースが装着されてもよい。接続ポートが大気ポートであってもよい。
【0016】
このような構成によれば、副室の内部に内側のケースが装着されるため、外側のケースの設計を変更することなく副室のL/Dを容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】蒸発燃料処理システムの構成を示す図である。
図2】第1実施形態におけるキャニスタの断面図である。
図3図2に示すキャニスタの、内側ケースにおける吸着材が投入される側の開口部分の断面図である。
図4】第2実施形態におけるキャニスタの部分断面図である。
図5】第3実施形態におけるキャニスタの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.蒸発燃料処理システム]
図1に示す蒸発燃料処理システム1は、キャニスタ11と、燃料タンク12と、内燃機関13と、を備える。
【0019】
キャニスタ11は、自動車等の車両の燃料タンク12で発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する装置である。キャニスタ11は、給油口12aを備える燃料タンク12と、内燃機関13及び内燃機関13用のエアクリーナ14に連結するインテークマニホールド15とに、それぞれ接続されている。また、キャニスタ11には、内燃機関13に空気を供給するための吸気ライン16が接続されている。吸気ライン16の途中には、キャニスタ11用のエアクリーナ17が配置されている。
【0020】
キャニスタ11の内部には、不図示の吸着材が充填されている。キャニスタ11の構成については後に詳述する。
内燃機関13が稼働していない時は、燃料タンク12で発生した蒸発燃料が、空気とともにキャニスタ11に導入され、キャニスタ11内の吸着材に吸着される。そして、蒸発燃料の含有量が抑制された空気が、吸気ライン16を通じて大気中に放出される。
【0021】
一方、内燃機関13の始動時には、インテークマニホールド15に生じた負圧によって、吸気とともに吸着材に吸着されていた燃料の脱離が行われる。具体的には、大気中の空気が、吸気ライン16を通じてキャニスタ11の内部に導入され、吸着材に吸着していた燃料が脱離される。そして、燃料を含んだ空気が、内燃機関13へ排出され、内燃機関13で燃焼される。
【0022】
[1-2.キャニスタ]
次に、図2を参照し、キャニスタ11の構成を説明する。
キャニスタ11は、外側のケース31を備える。外側のケース31の内部は、隔離壁32によって、主室21及び副室22の2つの空間に仕切られている。
【0023】
主室21の一端には、チャージポート23及びパージポート24が設けられている。チャージポート23は、上記燃料タンク12に接続されており、蒸発燃料を取り込むように構成されている。パージポート24は、上記インテークマニホールド15に接続されており、蒸発燃料を上記内燃機関13へ向けて排出するように構成されている。
【0024】
一方、副室22の一端には、大気ポート25が設けられている。なお、大気ポート25は、チャージポート23及びパージポート24が設けられている側と同じ側に設けられている。大気ポート25には上記吸気ライン16が接続されている。すなわち、大気ポート25は、吸気ライン16を通じて大気に開放されている。
【0025】
なお、チャージポート23、パージポート24、及び大気ポート25は、いずれも外側のケース31の内部と外部とを接続ポートとしての機能を有する。
主室21と副室22とは、チャージポート23、パージポート24、及び大気ポート25が設けられている側と反対側の端部において、接続通路26によって連通している。そのため、外側のケース31の内部には、主室21、副室22、及び接続通路26によって、略U字状の通路が形成されている。
【0026】
外側のケース31は、上記主室21及び副室22を形成するケース本体33と、前記ケース本体33と接合し、上記接続通路26を形成する蓋部34と、を備える。
主室21における、チャージポート23及びパージポート24に通ずる側の端部には、フィルタ41が配置されている。フィルタ41は、主室21内に設けられた複数の支柱47に支持されている。
【0027】
また、主室21における、チャージポート23及びパージポート24に通ずる側と反対側の端部、言い換えれば、接続通路26側の端部にはグリッド43に支持されたフィルタ42が配置されている。グリッド43には、気体の通路となる不図示の複数の孔が形成されている。フィルタ41とフィルタ42との間には、粒状の吸着材44である活性炭が充填されている。
【0028】
グリッド43と外側のケース31の蓋部34との間には、両者を連結するように、弾性部材である2つのスプリング45a,45bが配置されている。スプリング45a,45bは、グリッド43及びフィルタ42を介して、吸着材44をチャージポート23及びパージポート24側へ向けて付勢する。
【0029】
副室22の内部には、粒状の吸着材61である活性炭が充填された筒状の内側のケース51が装着されている。内側のケース51における一端の開口部分51aが大気ポート25に通じており、他端の開口部分51bが接続通路26に通じている。
【0030】
内側のケース51は、吸着材61を内部に有する本体部52と、本体部52における大気ポート25に通ずる側の端部に設けられた当接部53と、本体部52における大気ポート25に通ずる側と反対側の端部に設けられたフランジ部54と、を備える。
【0031】
当接部53は、本体部52における大気ポート25に通ずる側の端部において、外側のケース31に当接する部位である。副室22における大気ポート25に通ずる側に設けられた段差において、外側ケース31と当接部53とが当接している。
【0032】
フランジ部54は、本体部52における大気ポート25に通ずる側と反対側の端部において、外側のケース31に接合する接合部位である。フランジ部54は、本体部52から外側のケース31の内面へ向けて突出する形状となっている。図3に示すように、フランジ部54の先端部54aは、外側のケース31の内面よりもわずかに小さいサイズに形成されている。
【0033】
外側のケース31と、フランジ部54の先端部54aとの隙間には、当該隙間を塞ぐシール部材71が設けられている。シール部材71はOリングであり、フランジ部54に設けられた溝55にはめ込まれている。内側のケース51はシール部材71を介して外側のケース31の内面と接合している。
【0034】
内側のケース51における大気ポート25に通ずる側と反対側の開口部分51bは、大気ポート25に通ずる側へ向かうにつれて開口面積が小さくなる形状となっている。具体的には、筒状の内側のケース51の中心軸51eを通る断面において、図3に示すように、上記開口部分51bの内面51cが、中心軸51e側が大気ポート25に通ずる側に向くように、中心軸51eに垂直な面に対して傾いている。また、フランジ部54における大気ポート25に通ずる側と反対側の面51dは、中心軸51eに対して略垂直であり、中心軸51eを通る断面における当該面51dの幅が、吸着材61の平均粒径よりも小さい。なお、ここでいう略垂直とは、実質的に垂直という意味である。また、吸着材61の平均粒径とは、体積換算値の平均粒径をいう。具体的には、吸着材61を体積の小さいものから順に篩い分けして得られた粒度分布において、積算50%での粒径をいう。
【0035】
図2に戻り、本体部52の内部における、大気ポート25に通ずる側寄りの位置には、吸着材61を本体部52の内部に支持する隔壁としての隔壁板62が固定されている。隔壁板62には、気体の通路となる複数の孔が形成されている。隔壁板62における、接続通路26側の面には、フィルタ63が支持されている。
【0036】
また、本体部52の内部における、接続通路26寄りの位置には、グリッド64に支持されたフィルタ65が配置されている。グリッド64には、気体の通路となる不図示の複数の孔が形成されている。フィルタ63とフィルタ65との間に、上記吸着材61が充填されている。
【0037】
グリッド64と外側のケース31の蓋部34との間には、上記主室21と同様に、弾性部材である2つのスプリング66a,66bが配置されている。スプリング66a,66bは、グリッド64及びフィルタ65を介して、吸着材61を大気ポート25側へ向けて付勢する。
【0038】
キャニスタ11の組み立て時には、まず、外側のケース31におけるケース本体33の内部に、内側のケース51が装着される。内側のケース51は、外側のケース31の開口部分から挿入され、副室22の内部を摺動し副室22内に装着される。
【0039】
次に、内側のケース51における大気ポート25に通ずる側と反対側の開口部分からフィルタ63を入れた後、吸着材61を投入し、フィルタ65で蓋をする。主室21側においても同様に、主室21におけるチャージポート23及びパージポート24に通ずる側と反対側の開口部分から、フィルタ41、吸着材44、及びフィルタ42をこの順に入れる。
【0040】
次に、グリッド43,64、及びスプリング45a,45b,66a,66bをそれぞれ配置した後、ケース本体33に蓋部34を取り付け、その外周縁部を溶着することによって、キャニスタ11が完成する。
【0041】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)キャニスタ11は、内側のケース51における大気ポート25に通ずる側と反対側の端部において、外側のケース31と、内側のケース51のフランジ部54との隙間を塞ぐシール部材71を備える。そのため、吸着材61の充填時に、外側のケース31と内側のケース51との隙間に吸着材61が入り込みにくい。
【0042】
(1b)内側のケース51における、大気ポート25に通ずる側と反対側の開口部分51bが、大気ポート25に通ずる側へ向かうにつれて開口面積が小さくなる形状である。
このような構成によれば、内側のケース51における大気ポート25に通ずる側と反対側の開口部分51bが広いため、当該開口部分51bから吸着材61を投入しやすい。
【0043】
特に、上記実施形態では、フランジ部54における大気ポート25に通ずる側と反対側の面51dは、内側のケース51の中心軸51eに対して略垂直であり、中心軸51eを通る断面において、当該面51dの幅が、吸着材61の平均粒径よりも小さい。
フランジ部54における大気ポート25に通ずる側と反対側の面51dが内側のケース51の中心軸51eに対して略垂直であると、当該面51dに吸着材61が残留しやすい。これに対し、上記実施形態では、中心軸51eを通る断面において、当該面51dの幅が、吸着材61の平均粒径よりも小さいため、吸着材61の充填時に、当該面51dに吸着材61が残留しにくい。
【0044】
(1c)キャニスタ11は、内側のケース51の内部の吸着材61を大気ポート25側へ向けて付勢する弾性部材としてのスプリング66a,66bを備える。そのため、吸着材61の充填量にばらつきが生じたとしても、スプリング66a,66bによって、内側のケース51の内部に吸着材61が固定される。その結果、車両の振動によって内側のケース51の内部で吸着材61が流動し微粉化することが抑制され、吸着材61の微粉によるフィルタ63,65の目詰まりが生じにくい。
【0045】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同様の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0046】
第2実施形態に係るキャニスタ11は、図4に示すように、内側のケース51における大気ポート25に通ずる側と反対側の端部の形状が、第1実施形態のキャニスタ11と異なる。
【0047】
上記第1実施形態では、フランジ部54における大気ポート25に通ずる側と反対側の面51dが、中心軸51eを通る断面において、中心軸51eに略垂直である。これに対し、第2実施形態では、中心軸51eを通る断面において、フランジ部54における大気ポート25に通ずる側と反対側の面81bが、当該面81bにおける中心軸51e側が大気ポート25に通ずる側に向くように、中心軸51eに垂直な面に対して傾いている。なお、フランジ部54における大気ポート25に通ずる側と反対側の面81bとは、言い換えれば、内側のケース51における大気ポート25に通ずる側と反対側の開口部分81aの内面である。
【0048】
このような構成によれば、吸着材61の充填時に、フランジ部54に当たった吸着材61が上記面81bを伝って本体部52側へ向かうため、第1実施形態のキャニスタ11と比べて、フランジ部54に吸着材61が一層残留しにくい。
【0049】
[2.第3実施形態]
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同様の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0050】
第3実施形態に係るキャニスタ11は、図5に示すように、内側のケース51における大気ポート25に通ずる側と反対側の端部の形状が、第1実施形態のキャニスタ11と異なる。
【0051】
上記第1実施形態では、フランジ部54における大気ポート25に通ずる側と反対側の面51dが、中心軸51eを通る断面において、中心軸51eに略垂直である。これに対し、第3実施形態では、中心軸51eを通る断面において、フランジ部54における大気ポート25に通ずる側と反対側の面91bが、中心軸51eへ向かうにつれて大気ポート25に通ずる側に徐々に向かう曲線形状である。なお、フランジ部54における大気ポート25に通ずる側と反対側の面91bとは、言い換えれば、内側のケース51における大気ポート25に通ずる側と反対側の開口部分91aの内面である。
【0052】
このような構成によれば、吸着材61の充填時に、フランジ部54に当たった吸着材61が上記面91bを伝って本体部52側へ向かうため、第1実施形態のキャニスタ11と比べて、フランジ部54に吸着材61が一層残留しにくい。
【0053】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0054】
(3a)内側のケース51における大気ポート25に通ずる側と反対側の端部の形状は、上記実施形態に示したものに限定されない。
例えば、内側のケース51における大気ポート25に通ずる側と反対側の開口部分51bの内面51cが、大気ポート25に通ずる側へ向かうにつれて内側のケース51の中心軸51e側に多段階状に向かう階段形状であってもよい。また、内側のケース51における大気ポート25に通ずる側と反対側の開口部分51bが、開口面積が一定の形状であってもよい。
【0055】
また、上記第1実施形態では、フランジ部54における大気ポート25に通ずる側と反対側の面51dが内側のケース51の中心軸51eに略垂直な平面である。これに対し、当該面51dが、開口部分51bの内面51cと同様に、大気ポート25に通ずる側へ向かうにつれて筒状の内側のケース51の中心軸51e側に直線的に向かう形状となっていてもよい。
【0056】
(3b)外側のケース31とフランジ部54との隙間をシールする方法は、上記実施形態に示されたものに限定されない。
例えば、Oリングを設けるための溝55を、フランジ部54ではなく外側のケース31に形成してもよい。また、シール部材71として、Oリングの代わりにガスケットを用いて、上記隙間をシールしてもよい。
【0057】
(3c)上記実施形態では、吸着材61が充填された筒状の内側のケース51が副室22の内部に装着されているが、内側のケース51が主室21の内部に装着されてもよい。また、内側のケース51が、主室21及び副室22の両方の内部に装着されてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、副室22全体に内側のケース51が配置されているが、内側のケース51が副室22の一部に配置されていてもよい。例えば、大気ポート25寄りに内側のケース51が配置されており、副室22の残りの部分に別途吸着材が充填されてもよい。
【0059】
なお、キャニスタ11には、長時間の駐車時に外気温の変化によって発生する蒸発燃料(DBL(Diurnal Breathing Loss))を抑えることが求められる。DBLを抑えるには、副室22のL/Dをある程度大きくすることが有効であることが判明している。
【0060】
ここで、要求される仕様の都合上、外側のケース31の設計を変更することなく副室22における吸着材61の充填量を比較的少なくする場合を考える。この場合において、仮に副室22の内部に内側のケース51を設けずに、副室22における吸着材61の充填量を減らすと、吸着材層の長さLが短くなり副室22のL/Dが低下してしまう。
【0061】
これに対し、上記実施形態のように、副室22の内部に内側のケース51を装着すれば、内側のケース51のサイズを適宜変更することにより、有効断面直径Dを小さく調整することができる。そのため、必要な副室22のL/Dを確保しつつ、副室22の吸着材61の充填量を減らすことができる。
このような理由により、少なくとも副室22の内部に内側のケース51を装着することが好ましい。
【0062】
(3d)上記実施形態では、キャニスタ11が、吸着材が充填された吸着室を主室21及び副室22の2つ有しているが、キャニスタ11が1つ又は3つ以上の吸着室を有してもよい。
(3e)上記実施形態では、当接部53が段差状の突起であるが、当接部53の形状はこれに限定されない。例えば、当接部53は、本体部52から外側のケース31の内面へ向けて略垂直に突出するフランジ等であってもよい。
【0063】
(3f)キャニスタ11の組み立て方法は、上記実施形態に示したものに限定されない。例えば、内側のケース51にフィルタ63を入れた後に、内側のケース51を外側のケース31の内部に装着し、その後、吸着材61を内側のケース51に投入してもよい。
【0064】
(3g)吸着材44,61を接続ポート側へ向けて付勢する弾性部材は、スプリングに限定されない。例えば、弾性部材は、板バネ等の他のバネ、ウレタン等の弾性を有するクッション部材等であってもよい。
【0065】
(3h)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0066】
11…キャニスタ、21…主室、22…副室、23…チャージポート、24…パージポート、25…大気ポート、31…外側のケース、44,61…吸着材、51…内側のケース、51e…中心軸、52…本体部、54…フランジ部、54a…先端部、71…シール部材。
図1
図2
図3
図4
図5