(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040863
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】鉄筋固定具
(51)【国際特許分類】
E04C 5/18 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
E04C5/18 103
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145786
(22)【出願日】2020-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】507161341
【氏名又は名称】株式会社サンエーテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水間 靜夫
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
2E164BA02
2E164BA44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】鉄筋の交差部分において鉄筋相互を固定する際に、結束線で仮止めした後に結束線を取り外すことなく用いることができ、鉄筋の自転回動による緩み等の不具合を防止する鉄筋固定具を提供する。
【解決手段】横筋抱持領域111が、横筋HRに当接する円弧状の横筋当接部位を介してU字状に形成され、第一縦筋抱持領域112及び第二縦筋抱持領域113が、縦筋VRに当接する円弧状の縦筋当接部位を介して左右に拡開してV字状にそれぞれ形成され、鉄筋固定具本体が、横筋当接部位及び縦筋当接部位の少なくともいずれか一方に横筋HR又は縦筋VRの補強用リブと係合するリブ係合凹部112rを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋長手方向に沿って突起した一対の補強用リブをそれぞれ有する縦筋と横筋との交差部分に配置して該横筋を抱持する横筋抱持領域と前記横筋抱持領域の一端に連なって前記縦筋を抱持する第一縦筋抱持領域と該第一縦筋抱持領域に連なるU字状の第一締結領域と前記横筋抱持領域の他端に連なって前記縦筋を抱持する第二縦筋抱持領域と該第二縦筋抱持領域に連なるU字状の第二締結領域とを備えた棒鋼からなる鉄筋固定具本体と、前記第一締結領域に外側から係止するU字状の係止領域と該係止領域の一端に連なって前記第二締結領域を挿通する直線状の螺子領域とを備えた棒鋼からなる締結ボルトと、該締結ボルトに前記第二締結領域の外側から螺合する座金付き締結ナットとからなる鉄筋固定具において、
前記横筋抱持領域が、前記横筋に当接する円弧状の横筋当接部位を介してU字状に形成され、
前記第一縦筋抱持領域及び前記第二縦筋抱持領域が、前記縦筋に当接する円弧状の縦筋当接部位を介して左右に拡開してV字状にそれぞれ形成され、
前記鉄筋固定具本体が、前記横筋当接部位及び縦筋当接部位の少なくともいずれか一方に前記横筋又は前記縦筋の補強用リブと係合するリブ係合凹部を備えていることを特徴とする鉄筋固定具。
【請求項2】
前記リブ係合凹部が、前記横筋抱持領域、前記第一縦筋抱持領域又は前記第二縦筋抱持領域のそれぞれ最奥部位を避けて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄筋固定具。
【請求項3】
前記横筋抱持領域又は前記第一縦筋抱持領域若しくは第二縦筋抱持領域が、前記リブ係合凹部を備えている大曲率部位と前記リブ係合凹部を備えていない小曲率部位とを有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉄筋固定具。
【請求項4】
前記リブ係合凹部が、前記横筋抱持領域、前記第一縦筋抱持領域又は前記第二縦筋抱持領域の長手方向にそれぞれ沿った急斜面と該急斜面に連続する緩斜面とで形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の鉄筋固定具。
【請求項5】
前記縦筋の補強用リブと係合するリブ係合凹部に形成した前記第一縦筋抱持領域及び前記第二縦筋抱持領域の長手方向にそれぞれ沿った急斜面と該急斜面にそれぞれ連続する緩斜面が、前記第一縦筋抱持領域と第二縦筋抱持領域とで同一位置に同じ向き又は逆向きに設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の鉄筋固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に交差する鉄筋を交差部分で固定するための鉄筋固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート工事においては、コンクリート打設空間内に鉄筋を配設する必要があるが、縦筋と横筋の交差部分の固定に際し、結束線で結束する作業を代替するための各種の固定具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-094126号公報
【特許文献2】特開2016-204911号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】登録意匠公報第1624818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の固定具は、交差部分における鉄筋の形状に対応して折曲させた線状鋼材と当接部材とナット部材とスペーサー部材とからなり、鉄筋相互のずれを防止するためにその交差部分でスペーサー部材を介して固定するものであるが、スペーサー部材を必要とするために部品点数が多く、製造コストが高くて作業効率が低いという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の固定具は、鉄筋に当接する部材の当接部位が滑らかな板状または雄螺子状であるため、鉄筋同士の交差部分において、一方の鉄筋の補強用リブが他方の鉄筋に当接する状態で固定されると、何らかの理由で鉄筋が自転回動した際に、交差部分に隙間が生じて固定状態が緩んでしまい、いずれかの鉄筋が固定位置からずれる問題がある。
【0007】
非特許文献1に記載の固定具を用いた場合は、横筋として配設した段取り筋に作業位置等の目印を記入した後に、何らかの理由で当該段取り筋が自転回動すると、目印が見えづらくなる場合がある。
【0008】
さらに、段取り筋となる横筋を縦筋に交差させて結束線により仮止めした後に、この交差部分を従来の固定具を用いて固定しようとすると、結束線が固定具に干渉して固定が困難となる場合があった。
【0009】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、鉄筋の交差部分において鉄筋相互を固定する際に、結束線で仮止めした後に結束線を取り外すことなく用いることができ、鉄筋の自転回動による緩み等の不具合を防止する鉄筋固定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本請求項1に係る発明は、鉄筋長手方向に沿って突起した一対の補強用リブをそれぞれ有する縦筋と横筋との交差部分に配置して該横筋を抱持する横筋抱持領域と前記横筋抱持領域の一端に連なって前記縦筋を抱持する第一縦筋抱持領域と該第一縦筋抱持領域に連なるU字状の第一締結領域と前記横筋抱持領域の他端に連なって前記縦筋を抱持する第二縦筋抱持領域と該第二縦筋抱持領域に連なるU字状の第二締結領域とを備えた棒鋼からなる鉄筋固定具本体と、前記第一締結領域に外側から係止するU字状の係止領域と該係止領域の一端に連なって前記第二締結領域を挿通する直線状の螺子領域とを備えた棒鋼からなる締結ボルトと、該締結ボルトに前記第二締結領域の外側から螺合する座金付き締結ナットとからなる鉄筋固定具において、前記横筋抱持領域が、前記横筋に当接する円弧状の横筋当接部位を介してU字状に形成され、前記第一縦筋抱持領域及び前記第二縦筋抱持領域が、前記縦筋に当接する円弧状の縦筋当接部位を介して左右に拡開してV字状にそれぞれ形成され、前記鉄筋固定具本体が、前記横筋当接部位及び縦筋当接部位の少なくともいずれか一方に前記横筋又は前記縦筋の補強用リブと係合するリブ係合凹部を備えていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0011】
本請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記リブ係合凹部が、前記横筋抱持領域、前記第一縦筋抱持領域又は前記第二縦筋抱持領域のそれぞれ最奥部位を避けて配置されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0012】
本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明の構成に加えて、前記横筋抱持領域又は前記第一縦筋抱持領域若しくは第二縦筋抱持領域が、前記リブ係合凹部を備えている大曲率部位と前記リブ係合凹部を備えていない小曲率部位とを有していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0013】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に係る発明の構成に加えて、前記リブ係合凹部が、前記横筋抱持領域、前記第一縦筋抱持領域又は前記第二縦筋抱持領域の長手方向にそれぞれ沿った急斜面と該急斜面に連続する緩斜面とで形成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0014】
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に係る発明の構成に加えて、前記縦筋の補強用リブと係合するリブ係合凹部に形成した前記第一縦筋抱持領域及び前記第二縦筋抱持領域の長手方向にそれぞれ沿った急斜面と該急斜面にそれぞれ連続する緩斜面が、前記第一縦筋抱持領域と第二縦筋抱持領域とで同一位置に同じ向き又は逆向きに設けられていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の鉄筋固定具によれば、鉄筋長手方向に沿って突起した一対の補強用リブをそれぞれ有する縦筋と横筋との交差部分に配置して横筋を抱持する横筋抱持領域と横筋抱持領域の一端に連なって縦筋を抱持する第一縦筋抱持領域と第一縦筋抱持領域に連なるU字状の第一締結領域と横筋抱持領域の他端に連なって縦筋を抱持する第二縦筋抱持領域と第二縦筋抱持領域に連なるU字状の第二締結領域とを備えた棒鋼からなる鉄筋固定具本体と、第一締結領域に外側から係止するU字状の係止領域と係止領域の一端に連なって第二締結領域を挿通する直線状の螺子領域とを備えた棒鋼からなる締結ボルトと、締結ボルトに第二締結領域の外側から螺合する座金付き締結ナットとからなることにより、縦筋と横筋とをこれらの交差部分において固定することができるばかりでなく、以下の本願発明に特有の構成により、本願発明に特有の効果を奏することができる。
【0016】
本発明の請求項1に係る発明の鉄筋固定具によれば、横筋抱持領域が、横筋に当接する円弧状の横筋当接部位を介してU字状に形成され、第一縦筋抱持領域及び第二縦筋抱持領域が、縦筋に当接する円弧状の縦筋当接部位を介して左右に拡開してV字状にそれぞれ形成されていることにより、第一縦筋抱持領域及び第二縦筋抱持領域が縦筋当接部位から大きく開いて開口しているため、縦筋と横筋との交差部分を結束線により仮止めした後であっても、結束線との干渉を避けて、結束線を取り外すことなく交差部分を固定することができる。
【0017】
しかも、交差部分近傍の空間に対して、コンクリートを十分に注入できるため、構造体の強度を十分に発揮することができる。
【0018】
また、鉄筋固定具本体が、横筋当接部位及び縦筋当接部位の少なくともいずれか一方に横筋又は縦筋の補強用リブと係合するリブ係合凹部を備えていることにより、横筋又は縦筋の補強用リブが鉄筋固定具本体のリブ係合凹部に係合するため、縦筋と横筋との交差部分を固定した際に横筋又は縦筋の自転回動を防止することができる。
【0019】
本発明の請求項2に係る発明の鉄筋固定具によれば、請求項1に係る発明の鉄筋固定具が奏する効果に加えて、リブ係合凹部が、横筋抱持領域、第一縦筋抱持領域又は第二縦筋抱持領域のそれぞれ最奥部位を避けて配置されていることにより、鉄筋の一方の補強用リブがリブ係合凹部に係合した際に、係合した鉄筋の他方の補強用リブが交差している他の鉄筋に当接せずに固定されるため、交差部分の固定後に仮に外力により横筋又は縦筋が自転回動しても、交差部分の緩みが生じない強固な固定を実現することができる。
【0020】
本請求項3に係る発明の鉄筋固定具によれば、請求項1又は請求項2に係る発明の鉄筋固定具が奏する効果に加えて、横筋抱持領域又は第一縦筋抱持領域若しくは第二縦筋抱持領域が、リブ係合凹部を備えている大曲率部位とリブ係合凹部を備えていない小曲率部位とを有していることにより、鉄筋を自転回動させて位置決めする際に、補強用リブが横筋抱持領域又は縦筋抱持領域の小曲率部位から大曲率部位に達したときに自転回動の抵抗が増して止まるため、いっそう簡便な操作で鉄筋の補強用リブをリブ係合凹部にいっそう確実に係合させて交差部分を固定することができる。
【0021】
本請求項4に係る発明の鉄筋固定具によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に係る発明の鉄筋固定具が奏する効果に加えて、リブ係合凹部が、横筋抱持領域、第一縦筋抱持領域又は第二縦筋抱持領域の長手方向にそれぞれ沿った急斜面と急斜面に連続する緩斜面とで形成されていることにより、鉄筋を一方向に回して補強用リブを緩斜面側から急斜面側へ向かうようにリブ係合凹部に係合させると、急斜面がスットパーの役割を奏して鉄筋の補強用リブが急斜面に当接して着座するため、簡便な操作で鉄筋の補強用リブをリブ係合凹部に確実に固定することができる。
【0022】
本請求項5に係る発明の鉄筋固定具によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に係る発明の鉄筋固定具が奏する効果に加えて、縦筋の補強用リブと係合するリブ係合凹部に形成した第一縦筋抱持領域及び第二縦筋抱持領域の長手方向にそれぞれ沿った急斜面と急斜面にそれぞれ連続する緩斜面が、第一縦筋抱持領域と第二縦筋抱持領域とで同一位置に設けられていることにより、縦筋の補強用リブが第一縦筋抱持領域と第二縦筋抱持領域の両方のリブ係合凹部に係合するため、交差部分を固定した際に縦筋の自転回動を確実に防止することができる。
【0023】
さらに、縦筋の補強用リブと係合するリブ係合凹部に形成した第一縦筋抱持領域及び第二縦筋抱持領域の長手方向にそれぞれ沿った急斜面と急斜面にそれぞれ連続する緩斜面が、第一縦筋抱持領域と第二縦筋抱持領域とで同一位置に逆向きに設けられていることにより、縦筋を自転回動させて位置決めする際に、どちら向きに自転回動させても縦筋の補強用リブが同じ力で第一縦筋抱持領域のリブ係合凹部と第二縦筋抱持領域のリブ係合凹部の両方に係合するため、いっそう簡便な操作で縦筋の補強用リブを位置決めして交差部分をいっそう確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】縦筋と横筋とをこれらの交差部で結束線によって仮止めした後に本発明の鉄筋固定具を用いて固定している様子を示す模式図。
【
図2】本発明の第1実施例に係る鉄筋固定具を示す模式的正面図。
【
図3】本発明の第1実施例に係る鉄筋固定具を示す模式的背面図。
【
図4】本発明の第1実施例に係る鉄筋固定具を示す模式的右側面図。
【
図5】本発明の第1実施例に係る鉄筋固定具を示す模式的平面図。
【
図6】本発明の第1実施例に係る鉄筋固定具の締結ボルトと座金付き締結ナットを示す模式図。
【
図7】本発明の第2実施例に係る鉄筋固定具を示す模式的正面図。
【
図8】本発明の鉄筋固定具の横筋抱持領域、第一縦筋抱持領域及び第二縦筋抱持領域に共通する構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の鉄筋固定具は、鉄筋長手方向に沿って突起した一対の補強用リブをそれぞれ有する縦筋と横筋との交差部分に配置して横筋を抱持する横筋抱持領域と横筋抱持領域の一端に連なって縦筋を抱持する第一縦筋抱持領域と第一縦筋抱持領域に連なるU字状の第一締結領域と横筋抱持領域の他端に連なって縦筋を抱持する第二縦筋抱持領域と第二縦筋抱持領域に連なるU字状の第二締結領域とを備えた棒鋼からなる鉄筋固定具本体と、第一締結領域に外側から係止するU字状の係止領域と係止領域の一端に連なって第二締結領域を挿通する直線状の螺子領域とを備えた棒鋼からなる締結ボルトと、締結ボルトに第二締結領域の外側から螺合する座金付き締結ナットとからなり、横筋抱持領域が、横筋に当接する円弧状の横筋当接部位を介してU字状に形成され、第一縦筋抱持領域及び第二縦筋抱持領域が、縦筋に当接する円弧状の縦筋当接部位を介して左右に拡開してV字状にそれぞれ形成され、鉄筋固定具本体が、横筋当接部位及び縦筋当接部位の少なくともいずれか一方に横筋又は縦筋の補強用リブと係合するリブ係合凹部を備えて、縦筋と横筋との交差部分を結束線により仮止めした後であっても、結束線との干渉を避けて、結束線を取り外すことなく交差部分を固定することができ、交差部分を固定した際に横筋又は縦筋の自転回動を防止することができ、交差部分近傍の空間に対して、コンクリートを十分に注入できるため、構造体の強度を十分に発揮することができるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0026】
たとえば、実施例では一つの横筋抱持領域と二つの縦筋抱持領域とを有する鉄筋固定具として説明しているが、鉄筋への荷重の大小関係や他の部材との取合いによる作業スペースの都合により、縦筋と横筋との交差部分に配置する際に、実施例とは異なる向きに使用することを前提として、一つの縦筋抱持領域と二つの横筋抱持領域を有する鉄筋固定具として構成しても良い。
【0027】
また、締結ボルトを第一締結領域に係止して第二締結領域の外側から座金付き締結ナットを螺合させる用い方でなく、締結ボルトを第二締結領域に係止して第一締結領域の外側から座金付き締結ナットを螺合させて用いても良い。
【0028】
本発明の鉄筋固定具を構成する棒鋼は、丸鋼の他に通常の鉄筋、異形鉄筋など断面形状が円と異なるものや断面形状が一定でないものを用いることができる。
【0029】
本発明において、横筋抱持領域の横筋当接部位に設けられる横筋の補強用リブと係合するリブ係合凹部、第一縦筋抱持領域の縦筋当接部位に設けられる縦筋の補強用リブと係合するリブ係合凹部、及び、第二縦筋抱持領域の縦筋当接部位に設けられる縦筋の補強用リブと係合するリブ係合凹部は、それぞれ、横筋抱持領域、第一縦筋抱持領域及び第二縦筋抱持領域の最奥部位を避けて、少なくとも一つ設けられていればよいが、複数個設けてあれば、横筋又は縦筋を自転回動させる位置決めの際に、少ない自転回動量でいずれかのリブ係合凹部に補強用リブが迅速に係合するため、より好ましい。
【実施例0030】
以下に、本発明に係る鉄筋固定具の第1実施例について、
図1乃至
図6及び
図8に基づいて説明する。
【0031】
ここで、
図1は、縦筋と横筋とをこれらの交差部で結束線によって仮止めした後に本発明の鉄筋固定具を用いて固定している様子を示す模式図であり、
図2は、本発明の第1実施例に係る鉄筋固定具を示す模式的正面図であり、
図3は、本発明の第1実施例に係る鉄筋固定具を示す模式的背面図であり、
図4は、本発明の第1実施例に係る鉄筋固定具を示す模式的右側面図であり、
図5は、本発明の第1実施例に係る鉄筋固定具を示す模式的平面図であり、
図6は、本発明の第1実施例に係る鉄筋固定具の締結ボルトと座金付き締結ナットを示す模式図であり、
図8は、本発明の鉄筋固定具の横筋抱持領域、第一縦筋抱持領域及び第二縦筋抱持領域に共通する構成を示す説明図である。
【0032】
第1実施例に係る鉄筋固定具100は、
図1に示すように、鉄筋長手方向に沿って突起した一対の補強用リブVRRを有する縦筋VRと、鉄筋長手方向に沿って突起した一対の補強用リブHRRを有する横筋HRとの交差部分に配置するものであり、
図1乃至
図6に示すように、横筋HRを抱持する横筋抱持領域111と、この横筋抱持領域111の一端に連なって縦筋VRを抱持する第一縦筋抱持領域112と、この第一縦筋抱持領域111に連なるU字状の第一締結領域114と、横筋抱持領域111の他端に連なって縦筋VRを抱持する第二縦筋抱持領域113と、この第二縦筋抱持領域113に連なるU字状の第二締結領域115とを備えた棒鋼からなる鉄筋固定具本体110を有している。
【0033】
鉄筋固定具本体110の横筋抱持領域111は、横筋HRに当接する円弧状の横筋当接部位を介してU字状に形成されており、
図1及び
図5に示すように、第一縦筋抱持領域112及び第二縦筋抱持領域113は、それぞれ縦筋VRに当接する円弧状の縦筋当接部位を介して左右に拡開してV字状に形成されている。
【0034】
また、第1実施例に係る鉄筋固定具100は、
図1乃至
図6に示すように、鉄筋固定具本体110の第一締結領域114に外側から係止するU字状の係止領域121とこの係止領域の一端に連なって鉄筋固定具本体110の第二締結領域115を挿通する直線状の螺子領域122とを備えた棒鋼からなる締結ボルト120を有している。
【0035】
さらに、第1実施例に係る鉄筋固定具100は、締結ボルト120に鉄筋固定具本体110の第二締結領域115の外側から螺合する座金付き締結ナット130を有している。
【0036】
そして、鉄筋固定具本体110が、横筋抱持領域111の横筋当接部位に横筋HRの補強用リブHRRと係合する、いわゆる水滴型の6つの横筋リブ係合凹部111rを備えている。
【0037】
これらの横筋リブ係合凹部111rは、
図7及び
図8に示すように、それぞれ横筋抱持領域111の長手方向に沿った横筋リブ係合凹部急斜面111rsと、この横筋リブ係合凹部急斜面111rsに連続する横筋リブ係合凹部緩斜面111rgとで形成されている。
【0038】
これらの横筋リブ係合凹部111rは、いずれもU字状の横筋抱持領域111の最奥部位111aを避けて配置されている。
【0039】
図8に示すように、横筋抱持領域111は、横筋リブ係合凹部111rを備えている横筋抱持領域大曲率部位111tと横筋リブ係合凹部111rを備えていない横筋抱持領域小曲率部位111gとを有している。
【0040】
また、
図1乃至
図3に示すように、鉄筋固定具本体110の第一縦筋抱持領域112が、鉄筋固定具本体110の第二縦筋抱持領域113に対向して配置され、第一縦筋抱持領域112の縦筋当接部位に縦筋VRの補強用リブVRRと係合する、いわゆる水滴型の6個の第一縦筋リブ係合凹部112rを備えるとともに、第二縦筋抱持領域113の縦筋当接部位に縦筋VRの補強用リブVRRと係合する、いわゆる水滴型の6個の第二縦筋リブ係合凹部113rを備えている。
【0041】
縦筋VRの補強用リブVRRと係合する第一縦筋リブ係合凹部112rと第二縦筋リブ係合凹部113rとは、
図2に示すように、第一縦筋抱持領域112と第二縦筋抱持領域113とで同一位置に設けられている。
【0042】
そして、縦筋VRの補強用リブVRRと係合する第一縦筋リブ係合凹部112r及び第二縦筋リブ係合凹部113rは、縦筋に当接する円弧状の縦筋当接部位を介して左右に拡開しているV字状の第一縦筋抱持領域112及び第二縦筋抱持領域113のそれぞれ最奥部位112a、113aを避けて配置されている。
【0043】
さらにまた、
図8に示すように、第一縦筋抱持領域112は、第一縦筋リブ係合凹部112rを備えている第一縦筋抱持領域大曲率部位112tとこの第一縦筋リブ係合凹部112rを備えていない第一縦筋抱持領域小曲率部位112gとを有しており、第二縦筋抱持領域113は、第二縦筋リブ係合凹部113rを備えている第二縦筋抱持領域大曲率部位113tとこの第二縦筋リブ係合凹部113rを備えていない第二縦筋抱持領域小曲率部位113gとを有している。
【0044】
次に、本発明に係る鉄筋固定具100を用いて縦筋VRと横筋HRとを、これらの交差部分において固定する手順を説明する。
【0045】
まず、縦筋VRの所定位置において、横筋HRを手前側に水平に配置して、結束線BWで縦筋VRと横筋HRとを仮止めする。
次に、結束線BWを避けて、鉄筋固定具本体110のU字状の横筋抱持領域111のカーブの内側である横筋当接部位を手前側から横筋HRに当接させ、鉄筋固定具本体110全体を縦筋VRの奥側から架け回して、第一縦筋抱持部112及び第二縦筋抱持部113のそれぞれのV字状のカーブの内側である縦筋当接部位を縦筋VRの奥側から縦筋VRに当接させる。
【0046】
さらに、結束線BWを避けて、第一締結領域114に締結ボルト120のU字状の係止領域121を外側から係止させ、この係止領域121の一端に連なる螺子領域122を内側から第二締結領域115に挿通させる。
そして、結束線BWを避けて、締結ボルト120の螺子領域122に第二締結領域115の外側から座金付き締結ナット130を軽く螺合させて鉄筋固定具100を仮固定する。
【0047】
鉄筋固定具100を仮固定した状態で、横筋HRを自転回動させると、横筋HRの補強用リブHRRが横筋抱持領域111の横筋リブ係合凹部111rに係合して自転回動が止まり、横筋HRの位置決めが完了する。
【0048】
同様に、鉄筋固定具100を仮固定した状態で、縦筋VRを自転回動させると、縦筋VRの補強用リブVRRが第一縦筋抱持部112の第一縦筋リブ係合凹部112r及び第二縦筋抱持部113の第二縦筋リブ係合凹部113rに係合して自転回動が止まり、縦筋VRの位置決めが完了する。
【0049】
この状態で、螺子領域122に螺合している座金付き締結ナット130をさらに回すことにより、結束線BWで仮止めされていた縦筋VRと横筋HRとを、結束線BWを取り外すことなく、これらの交差部分において鉄筋固定具100を用いて固定することができる。
【0050】
第1実施例に係る鉄筋固定具100によれば、横筋抱持領域111が、横筋HRに当接する円弧状の横筋当接部位を介してU字状に形成され、第一縦筋抱持領域112及び第二縦筋抱持領域113が、縦筋VRに当接する円弧状の縦筋当接部位を介して左右に拡開してV字状にそれぞれ形成されていることにより、第一縦筋抱持領域112及び第二縦筋抱持領域113がそれぞれ縦筋当接部位から大きく開いて開口しているため、縦筋VRと横筋HRとの交差部分を結束線BWにより仮止めした後であっても、結束線BWとの干渉を避けて、結束線BWを取り外すことなく交差部分を固定することができる。
【0051】
しかも、交差部分近傍の空間に対して、コンクリートを十分に注入できるため、構造体の強度を十分に発揮することができる。
【0052】
また、鉄筋固定具本体110が、横筋当接部位に横筋HRの補強用リブHRRと係合する横筋リブ係合凹部111rを備え、縦筋当接部位に縦筋VRの補強用リブVRRと係合する第一縦筋リブ係合凹部112r及び第二縦筋リブ係合凹部113rを備えていることにより、横筋HRの補強用リブHRRが鉄筋固定具本体110の横筋リブ係合凹部111rに係合し、縦筋VRの補強用リブVRRが鉄筋固定具本体110の第一縦筋リブ係合凹部112r及び第二縦筋リブ係合凹部113rに係合するため、縦筋VRと横筋HRとの交差部分を固定した際に横筋HR及び縦筋VRの自転回動を防止することができる。
【0053】
さらに、横筋リブ係合凹部111rが、横筋抱持領域111の最奥部位111aを避けて配置され、第一縦筋リブ係合凹部112rが、第一縦筋抱持領域112の最奥部位112aを避けて配置され、第二縦筋リブ係合凹部113rが、第二縦筋抱持領域113の最奥部位113aを避けて配置されていることにより、横筋HRの補強用リブHRRが横筋リブ係合凹部111rに係合した際に、横筋HRの他方の補強用リブHRRが交差している縦筋VRに当接せずに固定され、縦筋VRの補強用リブVRRが第一縦筋リブ係合凹部112r及び第二縦筋リブ係合凹部113rに係合した際に、係合した縦筋VRの他方の補強用リブVRRが交差している横筋HRに当接せずに固定されるため、縦筋VRと横筋HRとの交差部分の固定後に仮に外力により横筋HR又は縦筋VRが自転回動しても、交差部分の緩みが生じない強固な固定を実現することができる。
【0054】
さらにまた、横筋抱持領域111が、横筋リブ係合凹部111rを備えている横筋抱持領域大曲率部位111tと横筋リブ係合凹部111rを備えていない横筋抱持領域小曲率部位111gとを有し、第一縦筋抱持領域112が、第一縦筋リブ係合凹部112rを備えている第一縦筋抱持領域大曲率部位112tと第一縦筋リブ係合凹部112rを備えていない第一縦筋抱持領域小曲率部位112gとを有し、第二縦筋抱持領域113が、第二縦筋リブ係合凹部113rを備えている第二縦筋抱持領域大曲率部位113tと第二縦筋リブ係合凹部113rを備えていない第二縦筋抱持領域小曲率部位113gとを有していることにより、横筋HRを自転回動させて位置決めする際に、補強用リブHRRが横筋抱持領域111の横筋抱持領域小曲率部位111gから横筋抱持領域大曲率部位111tに達したときに自転回動の抵抗が増して止まり、縦筋VRを自転回動させて位置決めする際に、補強用リブVRRが第一縦筋抱持領域112の第一縦筋抱持領域小曲率部位112gから第一縦筋抱持領域大曲率部位112tに達したとき、又は、第二縦筋抱持領域113の第二縦筋抱持領域小曲率部位113gから第二縦筋抱持領域大曲率部位113tに達したときに自転回動の抵抗が増して止まるため、いっそう簡便な操作で横筋HRの補強用リブHRRを横筋リブ係合凹部111rにいっそう確実に係合させ、縦筋VRの補強用リブVRRを第一縦筋リブ係合凹部112r及び第二縦筋リブ係合凹部113rにいっそう確実に係合させて交差部分を固定することができる。
【0055】
そして、横筋リブ係合凹部111rが、横筋抱持領域111の長手方向に沿った横筋リブ係合凹部急斜面111rsと横筋リブ係合凹部急斜面111rsに連続する横筋リブ係合凹部緩斜面111rgとで形成され、第一縦筋リブ係合凹部112rが、第一縦筋抱持領域112の長手方向に沿った第一縦筋リブ係合凹部急斜面112rsと第一縦筋リブ係合凹部急斜面112rsに連続する第一縦筋リブ係合凹部緩斜面112rgとで形成され、第二縦筋リブ係合凹部113rが、第二縦筋抱持領域113の長手方向に沿った第二縦筋リブ係合凹部急斜面113rsと第二縦筋リブ係合凹部急斜面113rsに連続する第二縦筋リブ係合凹部緩斜面113rgとで形成されていることにより、横筋HRを一方向に回して補強用リブHRRを横筋リブ係合凹部緩斜面111rg側から横筋リブ係合凹部急斜面111rs側へ向かうように横筋リブ係合凹部111rに係合させると、横筋リブ係合凹部急斜面111rsがスットパーの役割を奏して横筋HRの補強用リブHRRが横筋リブ係合凹部急斜面111rsに当接して着座し、縦筋VRを一方向に回して補強用リブVRRを第一縦筋リブ係合凹部緩斜面112rg側から第一縦筋リブ係合凹部急斜面112rs側へ向かうように第一縦筋リブ係合凹部112rに係合させると、第一縦筋リブ係合凹部急斜面112rsがスットパーの役割を奏して縦筋VRの補強用リブVRRが第一縦筋リブ係合凹部急斜面112rsに当接して着座し、縦筋VRを一方向に回して補強用リブVRRを第二縦筋リブ係合凹部緩斜面113rg側から第二縦筋リブ係合凹部急斜面113rs側へ向かうように第二縦筋リブ係合凹部113rに係合させると、第二縦筋リブ係合凹部急斜面113rsがスットパーの役割を奏して縦筋VRの補強用リブVRRが第二縦筋リブ係合凹部急斜面113rsに当接して着座するため、簡便な操作で横筋HRの補強用リブHRRを横筋リブ係合凹部111rに、縦筋VRの補強用リブVRRを第一縦筋リブ係合凹部112r及び第二縦筋リブ係合凹部113rに、確実に固定することができる。
【0056】
それに加えて、第一縦筋リブ係合凹部112rに形成した第一縦筋抱持領域112の長手方向に沿った第一縦筋リブ係合凹部急斜面112rsと第一縦筋リブ係合凹部急斜面112rsに連続する第一縦筋リブ係合凹部緩斜面112rgと、第二縦筋リブ係合凹部113rに形成した第二縦筋抱持領域113の長手方向に沿った第二縦筋リブ係合凹部急斜面113rsと第二縦筋リブ係合凹部急斜面113rsに連続する第二縦筋リブ係合凹部緩斜面113rgとが、第一縦筋抱持領域112と第二縦筋抱持領域113とで同一位置に設けられていることにより、縦筋VRの補強用リブVRRが第一縦筋抱持領域112の第一縦筋リブ係合凹部112rと第二縦筋抱持領域113の第二縦筋リブ係合凹部113rの両方に係合するため、交差部分を固定した際に縦筋VRの自転回動を確実に防止することができる。
本発明の第2実施例に係る鉄筋固定具200は、上述した第1実施例に係る鉄筋固定具100と比較すると、水滴型のリブ係合凹部の具体的態様が異なっており、その他の形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第1実施例の鉄筋固定具と同一の部分について対応する200番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
第2実施例に係る鉄筋固定具200によれば、第一縦筋リブ係合凹部212rに形成した第一縦筋抱持領域212の長手方向に沿った第一縦筋リブ係合凹部急斜面212rsと第一縦筋リブ係合凹部急斜面212rsに連続する第一縦筋リブ係合凹部緩斜面212rgと、第二縦筋リブ係合凹部213rに形成した第二縦筋抱持領域213の長手方向に沿った第二縦筋リブ係合凹部急斜面213rsと第二縦筋リブ係合凹部急斜面213rsに連続する第二縦筋リブ係合凹部緩斜面213rgとが、第一縦筋抱持領域212と第二縦筋抱持領域213とで同一位置に逆向きに設けられていることにより、縦筋VRを自転回動させて位置決めする際に、どちら向きに自転回動させても縦筋VRの補強用リブVRRが同じ力で第一縦筋抱持領域212の第一縦筋リブ係合凹部212rと第二縦筋抱持領域213の第二縦筋リブ係合凹部213rの両方に係合するため、いっそう簡便な操作で縦筋VRの補強用リブVRRを位置決めして交差部分をいっそう確実に固定することができる。
以上、本発明に係る鉄筋固定具について第1実施例および第2実施例を用いて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。