(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040919
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】脳波測定デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/25 20210101AFI20220304BHJP
A61B 5/369 20210101ALI20220304BHJP
【FI】
A61B5/04 300E
A61B5/04 320A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145862
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】519029446
【氏名又は名称】株式会社S’UIMIN
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】川名 ふさ江
(72)【発明者】
【氏名】馬場 節
(72)【発明者】
【氏名】柳原 康司
(72)【発明者】
【氏名】山下 勇輝
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127AA04
4C127AA06
4C127LL04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】セッティング作業が容易な脳波測定デバイスを提供する。
【解決手段】脳波測定デバイス1は、電極部10と、電極部から電気信号を取得するデバイス本体部20とを備える。電極部は、少なくとも2つの額用電極31、32が左右に並んで設けられているシート状の横長部11と、横長部から縦方向に延びており、先端部にデバイス本体部との接続部が設けられている縦長部12と、縦長部から左右に分岐したのち縦方向に屈曲して延びており、先端部に左耳用電極33および右耳用電極34がそれぞれ設けられている左腕部13および右腕部14とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極部と、前記電極部から電気信号を取得するデバイス本体部とを備え、
前記電極部は、
少なくとも2つの額用電極が左右に並んで設けられているシート状の横長部と、
前記横長部から縦方向に延びており、先端部に前記デバイス本体部との接続部が設けられている縦長部と、
前記縦長部から左右に分岐したのち前記縦方向に屈曲して延びており、先端部に左耳用電極および右耳用電極がそれぞれ設けられている左腕部および右腕部と、
を有する、
脳波測定デバイス。
【請求項2】
前記横長部には、リファレンス電極がさらに設けられている、
請求項1に記載の脳波測定デバイス。
【請求項3】
前記リファレンス電極は、左右の額用電極の間に設けられている、
請求項2に記載の脳波測定デバイス。
【請求項4】
前記左腕部および右腕部の基端部と前記横長部との間の長さは、5~10cmである、
請求項1~3のいずれかに記載の脳波測定デバイス。
【請求項5】
前記左腕部および右腕部の基端部と前記横長部との間の長さは、6~9cmである、
請求項4に記載の脳波測定デバイス。
【請求項6】
前記左腕部および右腕部の基端部と前記横長部との間の長さは、前記左腕部および右腕部の基端部と前記接続部との間の長さより短い、
請求項1~5のいずれかに記載の脳波測定デバイス。
【請求項7】
左右対称の形状を有する、
請求項1~6のいずれかに記載の脳波測定デバイス。
【請求項8】
脳波測定デバイスのデバイス本体部に対して着脱可能な電極部であって、
少なくとも2つの額用電極が左右に並んで設けられているシート状の横長部と、
前記横長部から縦方向に延びており、先端部に前記デバイス本体部との接続部が設けられている縦長部と、
前記縦長部から左右に分岐したのち前記縦方向に屈曲または湾曲して延びており、先端部に左耳用電極および右耳用電極がそれぞれ設けられている左腕部および右腕部と、
を有する電極部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波測定デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の睡眠を科学的に測定する方法として、終夜睡眠ポリグラフ検査法(Polysomnography;PSG)が知られている。PSGでは、呼吸や循環等のパラメータも含めると20以上の電極やセンサの測定データに基づいて睡眠段階や睡眠中の呼吸、循環情報の判定(睡眠経過図の作成)が行われる。
【発明の概要】
【0003】
本件発明者らは、人の睡眠を科学的に測定する方法の新しい技術を見出すべく、鋭意検討を行った。その結果、以下の知見を得た。なお、以下の知見はあくまで本発明をなすきっかけとなったものであり、本発明を限定するものではない。
【0004】
すなわち、PSGでは、20以上の電極やセンサを被験者にセッティングする必要があり、セッティング作業だけで1時間もかかることがあった。また、日常状態とは異なる監視付きの検査入院となるため、被験者側の負担も大きく、判定結果に影響を及ぼす可能性があった。また、20以上の電極やセンサの測定データに基づいて睡眠段階および睡眠中の各パラメータの判定(睡眠経過図の作成)が行われるため、解析に時間がかかっていた。
【0005】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものである。本発明の目的は、PSGが有する上記課題の少なくとも1つを解決できる技術を提供することにある。
【0006】
本発明の第1の態様に係る脳波測定デバイスは、
電極部と、前記電極部から電気信号を取得するデバイス本体部とを備え、
前記電極部は、
少なくとも2つの額用電極が左右に並んで設けられているシート状の横長部と、
前記横長部から縦方向に延びており、先端部に前記デバイス本体部との接続部が設けられている縦長部と、
前記縦長部から左右に分岐したのち前記縦方向に屈曲して延びており、先端部に左耳用電極および右耳用電極がそれぞれ設けられている左腕部および右腕部と、
を有する。
【0007】
このような態様によれば、電極部が、額用電極が設けられた横長部と、横長部から縦方向に延びる縦長部と、縦長部から左右に分岐して延び、先端部に左耳用電極および右耳用電極が設けられている左腕部および右腕部とを有する、非常に単純かつユニークな形状であるため、被験者一人でも短時間で簡便に装着することが可能であり、また低コストで利用できる。また、睡眠を阻害しないつけ心地を考慮した形状にもなっている。これにより、被験者が自宅で気軽に使用することが可能となり、日常状態での睡眠の判定が可能となる。また、少なくとも2つの額用電極がシート状の横長部に一体に設けられており、互いの位置関係が固定されているため、シート状の横長部を額部分に貼り付けるだけで、各電極を毎回同じ位置関係で配置することが可能である。また、額用電極は、被験者の額部分に貼り付けられることで、脳波に加えて、眼球の動きを検出することができる。また、左耳用電極および右耳用電極は、被験者の左右の耳の後ろに貼り付けられることで、脳波に加えて、首の筋電を検出することができる。したがって、脳波に加えて、眼球の動きおよび首の筋電の信号を利用できるため、睡眠の判定精度を高めることができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る脳波測定デバイスは、第1の態様に係る脳波測定デバイスであって、
前記横長部には、リファレンス電極がさらに設けられている。
【0009】
本発明の第3の態様に係る脳波測定デバイスは、第2の態様に係る脳波測定デバイスであって、
前記リファレンス電極は、左右の額用電極の間に設けられている。
【0010】
このような態様によれば、少なくとも2つの額用電極とリファレンス電極とがシート状の横長部に一体に設けられており、互いの位置関係が固定されているため、シート状の横長部を額部分に貼り付けるだけで、各電極を毎回同じ位置関係で配置することが可能であり、各電極の位置関係の変化によって判定結果にばらつきが生じることを抑制できる。
【0011】
本発明の第4の態様に係る脳波測定デバイスは、第1~3のいずれかの態様に係る脳波測定デバイスであって、
前記左腕部および右腕部の基端部と前記横長部との間の長さは、5~10cmである。
【0012】
本件発明者らが鋭意検討した結果、このような態様によれば、被験者が耳に痛みを感じることを減らすことができ、睡眠を阻害することをより効果的に防止できる。
【0013】
本発明の第5の態様に係る脳波測定デバイスは、第4の態様に係る脳波測定デバイスであって、
前記左腕部および右腕部の基端部と前記横長部との間の長さは、6~9cmである。
【0014】
本件発明者らが鋭意検討した結果、このような態様によれば、被験者が耳に痛みを感じることをより減らすことができ、睡眠を阻害することをさらに効果的に防止できる。
【0015】
本発明の第6の態様に係る脳波測定デバイスは、第1~5のいずれかの態様に係る脳波測定デバイスであって、
前記左腕部および右腕部の基端部と前記横長部との間の長さは、前記左腕部および右腕部の基端部と前記接続部との間の長さより短い。
【0016】
本発明の第7の態様に係る脳波測定デバイスは、第1~6のいずれかの態様に係る脳波測定デバイスであって、
左右対称の形状を有する。
【0017】
本発明の第8の態様に係る電極部は、
脳波測定デバイスのデバイス本体部に対して着脱可能な電極部であって、
額用電極が左右に並んで設けられているシート状の横長部と、
前記横長部から縦方向に延びており、先端部に前記デバイス本体部との接続部が設けられている縦長部と、
前記縦長部から左右逆向きに分岐したのち前記縦方向に屈曲または湾曲して延びており、先端部に左耳用電極および右耳用電極がそれぞれ設けられている左腕部および右腕部と、
を有する。
【0018】
このような態様によれば、電極部が、額用電極が設けられた横長部と、横長部から縦方向に延びる縦長部と、縦長部から左右に分岐して延び、先端部に左耳用電極および右耳用電極が設けられている左腕部および右腕部とを有する、非常に単純かつユニークな形状であるため、被験者一人でも短時間で簡便に装着することが可能であり、また低コストで利用できる。また、睡眠を阻害しないつけ心地を考慮した形状にもなっている。これにより、被験者が自宅で気軽に使用することが可能となり、日常状態での睡眠の判定が可能となる。また、少なくとも2つの額用電極はシート状の横長部に設けられており、互いの位置関係が固定されているため、シート状の横長部を額部分に貼り付けるだけで、毎回同じ位置に正確に電極を配置することが可能である。また、額用電極は、被験者の額部分に貼り付けられることで、脳波に加えて、眼球の動きを検出することができる。また、左耳用電極および右耳用電極は、被験者の左右の耳の後ろに貼り付けられることで、脳波に加えて、首の筋電を検出することができる。したがって、脳波に加えて、眼球の動きおよび首の筋電の信号を利用できるため、睡眠の判定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る脳波測定デバイスの概略的な構成を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態に係る電極部の概略的な構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態に係る電極部をA-A線で切断した断面を示す図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態に係る電極部をB-B線で切断した断面を示す図である。
【
図5】
図5は、一実施の形態に係る電極部が被験者の頭部に装着された状態を示す正面図である。
【
図6】
図6は、一実施の形態に係る電極部が被験者の頭部に装着された状態を示す右側面図(被験者にとっての左側から見た図)である。
【
図7】
図7は、一実施の形態に係る電極部が被験者の頭部に装着された状態を示す左側面図(被験者にとっての右側から見た図)である。
【
図8】
図8は、一実施の形態に係る電極部が被験者の頭部に装着された状態を斜め前方から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、一実施の形態に係る電極部が被験者の頭部に装着された状態を斜め後方から見た斜視図である。
【
図10】
図10は、一実施の形態に係るデバイス本体部の概略的な構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、第1変形例に係る電極部の概略的な構成を示す平面図である。
【
図12】
図12は、第2変形例に係る電極部の概略的な構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。
【0021】
図1は、一実施の形態に係る脳波測定デバイス1の概略的な構成を示す図である。
【0022】
図1に示すように、脳波測定デバイス1は、電極部10と、電極部10から電気信号を取得するデバイス本体部20とを備えている。
【0023】
この脳波測定デバイス1は、たとえば、脳波解析のサービス提供者から被験者(ユーザ)に一定期間(たとえば1週間)貸し出され、複数晩分の脳波を測定してデバイス本体部20に保存した後返却してもらい、次いでサービス提供者が、デバイス本体部20に保存されたデータを一括して外部(たとえばクラウド上)の脳波解析システムにアップロードし、睡眠解析を行うものである。デバイス本体部20は、不図示の充電器により充電され、内蔵バッテリ26(
図10参照)により動作してもよい。
【0024】
図1に示すように、電極部10は、デバイス本体部20に対して着脱可能であってもよい。
図5~
図9に示すように、電極部10は、被験者の頭部に装着されて使用される部分であり、使用中に汚れや傷がつきやすいが、デバイス本体部20に対して着脱可能に構成されていることで、電極部10に汚れや傷が付いた場合であっても、電極部10だけを容易に交換することが可能である。
【0025】
電極部10は、予め定められた期間(たとえば1週間)または回数で使い捨て(ディスポーザブル)であってもよい。この場合、使い捨てではないタイプ(たとえば洗浄したり消耗部分のみ交換したりして繰り返し利用することを前提として設計されたタイプ)に比べて、電極部10に求められる機械的な耐久性のレベルを下げることが可能となり、より低コストで提供することが可能となる。また、使い捨てによる複数日連続測定できることで、面倒なメンテナンス作業が不要となり、被験者が自宅で気軽に使用することが可能となる。
【0026】
図2は、電極部10の概略的な構成を示す図である。
図5は、電極部10が被験者の頭部に装着された状態を示す正面図である。
図6は、電極部10が被験者の頭部に装着された状態を示す右側面図(被験者にとっての左側から見た図)である。
図7は、電極部10が被験者の頭部に装着された状態を示す左側面図(被験者にとっての右側から見た図)である。
図8は、電極部10が被験者の頭部に装着された状態を斜め前方から見た斜視図である。
図9は、電極部10が被験者の頭部に装着された状態を斜め後方から見た斜視図である。
【0027】
図2に示すように、電極部10は、シート状の横長部11と、横長部11から縦方向に延びている縦長部12と、縦長部12から左右に分岐したのち縦方向に屈曲して延びている左腕部13および右腕部14とを有している。電極部10は、左右対称の形状を有していてもよい。
【0028】
このうち横長部11には、少なくとも2つの額用電極31、32が左右に並んで設けられている。左右の額用電極31、32間の距離は、額用電極31、32が、10/20法における前頭極Fp1、Fp2の位置に装着できるような長さで設定されている。横長部11には、リファレンス電極35がさらに設けられていてもよい。
図2に示すように、リファレンス電極35は、左右の額用電極31、32の間に設けられていてもよい。額用電極31、32およびリファレンス電極35は、導電ゲルが乾燥しないように、台紙41に着脱可能に貼り付けられていてもよい。
【0029】
少なくとも2つの額用電極31、32とリファレンス電極35とがシート状の横長部11に一体に設けられており、互いの位置関係が固定されているため、
図5~
図9に示すように、シート状の横長部11を被験者の額部分に貼り付けるだけで、各電極31、32、35を毎回同じ位置関係で配置することが可能であり、各電極31、32、35の位置関係の変化によって判定結果にばらつきが生じることを抑制できる。
【0030】
図3は、電極部10の横長部11を
図2に示すA-A線で切断した断面の一例を示す図である。
【0031】
図3に示すように、横長部11は、シート状の電極保持材51と、電極保持材51上に接着剤51aを介して積層配置された絶縁基材54と、絶縁基材54上に積層配置された電極および信号導体55と、電極55上に積層配置された導電ゲル56とを有していてもよい。導電ゲル56上には、台紙41が着脱可能に貼り付けられている。
【0032】
電極保持材51としては、たとえば不織布が用いられてもよいし、発泡樹脂が用いられてもよい。この場合、横長部11の付け心地が向上し、睡眠を阻害することを防止できる。
【0033】
図2に示すように、横長部11の左右端部には、額用電極31、32およびリファレンス電極35を台紙41(または被験者の額部分)から剥がす際に被験者が指でつまむための突起部11a、11bが設けられていてもよい。これにより、額用電極31、32およびリファレンス電極35を台紙41(または被験者の額部分)から剥がす作業が容易になる。
【0034】
図2に示すように、左腕部13の先端部には、左耳用電極33が設けられており、右腕部14の先端部には、右耳用電極34が設けられている。左腕部13および右腕部14の長さは、左耳用電極33および右耳用電極34が、10/20法における耳朶A1、A2(
図6および
図7に示す例では耳の後ろ)の位置に装着できるような長さで設定されている。左耳用電極33および右耳用電極34は、導電ゲルが乾燥しないように、台紙42に着脱可能に貼り付けられていてもよい。
【0035】
図2に示すように、左腕部13および右腕部14の先端部には、それぞれ、左耳用または右耳用であることを表示する表示部13a、14aが設けられていてもよい。図示された例では、表示部13a、14aは、「左 Left」「右 Right」という文字であるが、左耳用と右耳用とを判別できるものであれば、文字に限定されるものではなく、記号であってもよいし、色や形状であってもよい。左腕部13および右腕部14の先端部に表示部13a、14aが設けられていることで、被験者が左耳用電極33および右耳用電極34を誤って逆に貼り付けてしまうことを防止でき、これにより、判定精度を高めることができる。
【0036】
図2に示すように、左腕部13および右腕部14の表示部13a、14aは、縦方向(すなわち腕部13、14が延びる方向)に対して左右逆向き(外向き)に傾いた角度で設けられていてもよい。この場合、
図6、
図7および
図9に示すように、左腕部13および右腕部14の表示部13a、14aがまっすぐになる向きで左耳用電極33および右耳用電極34を耳の後ろに貼り付けると、左腕部13および右腕部14が(まっすぐ上向きに延びるのではなく)頭部後方に傾いて延びるようになるため、左腕部13および右腕部14が耳の後ろに当たらないようになり、睡眠を阻害することを効果的に防止できる。
【0037】
図2に示すように、左腕部13および右腕部14の先端部には、それぞれ、左耳用電極33または右耳用電極34を台紙42(または被験者の耳の後ろ部分)から剥がす際に被験者が指でつまむための突起部13b、14bが設けられていてもよい。これにより、左耳用電極33または右耳用電極34を台紙42(または被験者の耳の後ろ部分)から剥がす作業が容易になる。
【0038】
図2に示すように、左腕部13および右腕部14の突起部13b、14bは、縦方向(腕部13、14が延びる方向)に対して左右逆向き(内向き)に傾いた角度で設けられていてもよい。この場合、
図6、
図7および
図9に示すように、左腕部13および右腕部14の突起部13b、14bがまっすぐになる向きで左耳用電極33および右耳用電極34を耳の後ろに貼り付けると、左腕部13および右腕部14が(まっすぐ上向きに延びるのではなく)頭部後方に傾いて延びるようになるため、左腕部13および右腕部14が耳の後ろに当たらないようになり、睡眠を阻害することを効果的に防止できる。
【0039】
図2に示すように、縦長部12は、各電極31~35から延びる信号線を含んでおり、縦長部12の先端部には、デバイス本体部20との接続部12aが設けられている。接続部12aは、各電極31~35から延びる信号線の出力端子(不図示)を含んでいる。
【0040】
図4は、電極部10の縦長部12、左腕部13および右腕部14を
図2に示すB-B線で切断した断面の一例を示す図である。左腕部13および右腕部14の積層構造は、縦長部12の積層構造と同様であり、以下、縦長部12の積層構造を代表して説明する。
【0041】
図4に示すように、縦長部12は、シート状の第1補強材611と、第1補強材611上に積層配置された第1絶縁基材631と、第1絶縁基材631上に積層配置された信号導体64(すなわち各電極31~35から延びる信号線)と、信号導体64上に積層配置された第2絶縁基材632と、第2絶縁基材632上に積層配置されたシート状の第2補強材612と、を有していてもよい。
【0042】
第1補強材611および第2補強材612としては、たとえば不織布が用いられてもよいし、発泡樹脂が用いられてもよい。この場合、縦長部が軽量かつ触り心地がよくなり、睡眠を阻害することを防止できる。
【0043】
図2に示すように、左耳用電極33および右耳用電極34が貼り付けられる台紙42には、縦長部12の先端部を挿し込んで仮止めするためのスリット42aが形成されていてもよい。この場合、デバイスを使用しないときに、縦長部12の先端部をスリット42aに挿し込んで仮止めしておくことで、デバイスの保管が容易となる。
【0044】
図2に示すように、台紙42のうち、左耳用電極33が貼り付けられた部分と、右耳用電極34が貼り付けられた部分と、スリット42aが形成されている部分との間には切り取り線が引かれており、互いに切り取り線にて切り離し可能であってもよい。
【0045】
図2を参照し、左腕部13および右腕部14の基端部から屈曲部分までの長さL1、L2は、左腕部13および右腕部14の基端部と横長部11との間の長さL3より短くてもよい(すなわち、L1<L3かつL2<L3)。本件発明者らが鋭意検討した結果、このような長さの関係であることにより、被験者が頭部に装着されている電極部10を気にする(意識する)ことを減らすことができ、睡眠を阻害することを防止できる。
【0046】
本件発明者らが鋭意検討したところ、被験者が耳に痛みを感じることを減らすためには、左腕部13および右腕部14の基端部と横長部11との間の長さL3は、好ましくは5~10cmであってもよい、より好ましくは6~9cmであってもよい。
【0047】
図2に示すように、左腕部13および右腕部14の基端部と横長部11との間の長さL3は、左腕部13および右腕部14の基端部と接続部12aとの間の長さより短くてもよい。また、
図2に示すように、左腕部13および右腕部14の屈曲部分から先端部までの長さは、左腕部13および右腕部14の基端部と接続部12aとの間の長さと同じであってもよい。
【0048】
次に、
図1および
図10を参照し、デバイス本体部20の構成について説明する。
図10は、デバイス本体部20の概略的な構成を示すブロック図である。
【0049】
図1および
図10に示すように、デバイス本体部20は、制御部21と、上述したコネクタ部22と、操作部23と、表示部24と、記憶部25と、バッテリ26とを有している。
【0050】
このうち表示部24は、デバイス本体部20からユーザに対して各種情報を表示するインターフェースであり、たとえばLEDなどの表示ランプである。
図1に示す例では、表示部24は、5つの電極31~35にそれぞれ対応する5つの表示ランプ241~245を有している。
図1に示すように、5つの表示ランプ241~245と5つの電極31~35との対応関係が直感的に把握できるように、左側の額用電極31に対応する第1表示ランプ241と、リファレンス電極35に対応する第5表示ランプ245と、右側の額用電極32に対応する第2表示ランプ242とが、左右に一列に並んで配置されるとともに、左側の額用電極31に対応する第1表示ランプ241の下方に、左耳用電極33に対応する第3表示ランプ243が配置され、右側の額用電極32に対応する第2表示ランプ242の下方に、右耳用電極34に対応する第4表示ランプ244が配置されてもよい。また、
図1に示すように、第1表示ランプ241と第5表示ランプ245と第2表示ランプ242とが、横長部11の平面形状と相似する形状の図形(輪郭線)で囲われるとともに、第3表示ランプ243と第4表示ランプ244とは、それぞれ、左腕部13および右腕部14の先端部の平面形状と相似する形状の図形(輪郭線)で囲われていてもよい。この場合、5つの表示ランプ241~245と5つの電極31~35との対応関係をより直感的に把握できるようになる。各表示ランプ241~245は、それぞれ対応する電極31~35と被験者の肌との接触状態の良否を、たとえば異なる色(接触状態が良の場合には青色、接触状態が不良の場合には黄色など)で表示するように構成されていてもよい。
【0051】
操作部23は、ユーザがデバイス本体部20を操作するためのインターフェースであり、たとえばプッシュボタンである。操作部23(プッシュボタン)がユーザにより押されることで、表示ランプ241~245が消灯するとともに、デバイス本体部20における脳波測定が開始されてもよい。操作部23は、必要でないときに不注意で簡単に押されないように、一段凹んで設けられていてもよい。
【0052】
記憶部25は、たとえばフラッシュメモリなどの不揮発性データストレージである。記憶部25には、制御部21が取り扱う各種データが記憶される。
【0053】
制御部21は、デバイス本体部20の各種処理を行う制御手段である。制御部21は、デバイス本体部20内のプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現されてもよいし、ハードウェアで実装されてもよい。
【0054】
たとえば、制御部21は、リファレンス電極35を基準とした4ch(すなわち左右の額用電極31、32、左耳用電極33および右耳用電極34)の脳波信号をアナログフロントエンドによりA/D変換して取得したのち、フィルタリングおよび間引き処理を行ってもよい。そのあと、制御部21は、EDF(European Data Format)形式に変換したデータを記憶部25に書き込んでもよい。制御部21は、1回の測定で最大12時間連続測定が可能であってもよい。
【0055】
また、制御部21は、脳波測定と同時に、電極31~35と被験者の肌との接触状態をモニタリングしてもよい。たとえば、制御部21は、5つの電極31~35それぞれにおける接触インピーダンスを測定してもよい。制御部21は、測定された接触インピーダンスに基づいて、接触状態の良否を判断し、当該接触状態の良否を、表示部24(表示ランプ241~245)に、たとえば異なる色で表示してもよい。たとえば、制御部21は、左側の額用電極31の接触インピーダンスに基づいて、左側の額用電極31の接触状態が不良であると判断した場合には、第1表示ランプ241の表示を青色から黄色に変えることで、左側の額用電極31の接触状態が不良(エラー)であることをユーザに直感的に知らせ、当該エラー電極31をしっかり貼り付けてもらい表示ランプ241が青色になるように促すことができる。
【0056】
以上のような本実施の形態によれば、電極部10が、額用電極31、32が設けられた横長部11と、横長部11から縦方向に延びる縦長部12と、縦長部12から左右に分岐して延び、先端部に左耳用電極33および右耳用電極34が設けられている左腕部13および右腕部14とを有する、非常に単純かつユニークな形状であるため、被験者一人でも短時間で簡便に装着することが可能であり、また低コストで利用できる。また、睡眠を阻害しないつけ心地を考慮した形状にもなっている。これにより、被験者が自宅で気軽に使用することが可能となり、日常状態での睡眠の判定が可能となる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、少なくとも2つの額用電極31、32がシート状の横長部11に一体に設けられており、互いの位置関係が固定されているため、シート状の横長部11を被験者の額部分に貼り付けるだけで、各電極31、32を毎回同じ位置関係で配置することが可能である。また、額用電極31、32は、被験者の額部分に貼り付けられることで、脳波に加えて、眼球の動きを検出することができる。また、左耳用電極33および右耳用電極34は、被験者の左右の耳の後ろに貼り付けられることで、脳波に加えて、首の筋電を検出することができる。したがって、脳波に加えて、眼球の動きおよび首の筋電の信号を利用できるため、睡眠の判定精度を高めることができる。
【0058】
なお、上述した実施の形態では、電極部10の左腕部13および右腕部14が、縦長部12から左右に分岐したのち縦方向に屈曲して延びていたが、これに限定されるものではない。たとえば、
図11に示すように、左腕部13および右腕部14は、縦長部12から左右斜め上向きに分岐したのち縦方向に屈曲して延びていてもよい。あるいは、
図12に示すように、左腕部13および右腕部14は、縦長部12から左右に分岐したのち縦方向に湾曲して(カーブして)延びていてもよい。
【0059】
また、上述した実施の形態では、脳波測定デバイス1、脳波解析のサービス提供者から被験者(ユーザ)に一定期間(たとえば1週間)貸し出され、複数晩分の脳波を測定してデバイス本体部20に保存した後返却してもらい、次いでサービス提供者が、デバイス本体部20に保存されたデータを一括して外部(たとえばクラウド上)の脳波解析システムにアップロードし、睡眠解析を行うものであるであったが、これに限定されるものではなく、たとえば、デバイス本体部20がLTEモジュールなどの通信部を有しており、毎晩の測定が終わると、LTE回線などのネットワークを介して自動的に外部(たとえばクラウド上)の脳波解析システムにデータをアップロードし、睡眠解析を行うように構成されていてもよい。これにより、被験者にとって脳波解析結果が返ってくるまでのタイムラグを大幅に短縮できる。
【0060】
上述した実施の形態の記載ならびに図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の記載または図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。上述した実施の形態の構成要素は、発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 脳波測定デバイス
10 電極部
11 横長部
11a、11b 突起部
12 縦長部
12a 接続部
13 左腕部
14 右腕部
13a、14a 表示部
13b、14b 突起部
20 デバイス本体部
21 制御部
22 コネクタ部
23 操作部
24 表示部
241~245 表示ランプ
25 記憶部
26 バッテリ
31、32 額用電極
33 左耳用電極
34 右耳用電極
35 リファレンス電極
41、42 台紙
42a スリット
51 電極保持材
51a 接着剤
54 絶縁基材
55 電極および信号導体
56 導電ゲル
611 第1補強材
612 第2補強材
631 第1絶縁基材
632 第2絶縁基材
64 信号導体