(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040930
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20220304BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220304BHJP
B41J 13/02 20060101ALI20220304BHJP
B65H 29/70 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B65H5/06 M
B41J2/01 305
B41J13/02
B65H29/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145888
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】内藤 拓
【テーマコード(参考)】
2C056
2C059
3F049
3F053
【Fターム(参考)】
2C056HA29
2C056HA30
2C059BB06
2C059BB11
2C059BB18
2C059BB30
3F049AA01
3F049DA12
3F049EA02
3F049EA13
3F049EA14
3F049LA07
3F049LB03
3F053HA03
3F053HB01
3F053LA07
3F053LB03
(57)【要約】
【課題】生産性を低下させず、高出力の駆動源や高速な制御が不要であり、コストダウンできるインクジェット印刷装置を提供する。
【解決手段】シート状の記録媒体Pを一枚ずつ分離してレジストローラ130で搬送し、カール矯正を行うデカーラローラ131を経てベルト搬送部31に搬送して画像形成を行うインクジェット印刷装置において、レジストローラ130の回転駆動力と、ベルト搬送部31の回転駆動力とを、それぞれワンウェイクラッチ132,133を介してデカーラローラ131に伝達し、レジストローラ130、ベルト搬送部31、及びデカーラローラ131の回転部のギア比が、デカーラローラ131の外周速度がレジストローラ130及びベルト搬送部31の外周速度と同じか又は所定範囲内で早い速度となるように設定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の記録媒体を一枚ずつ分離してレジストローラで搬送し、カール矯正を行うデカーラローラを経てベルト搬送部に搬送して画像形成を行うインクジェット印刷装置において、
前記レジストローラの回転駆動力と、前記ベルト搬送部の回転駆動力とを、それぞれワンウェイクラッチを介して前記デカーラローラに伝達し、
前記レジストローラ、前記ベルト搬送部、及び前記デカーラローラの回転部のギア比が、前記デカーラローラの外周速度が前記レジストローラ及び前記ベルト搬送部の外周速度と同じか又は所定範囲内で早い速度となるように設定されたことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置においては、印刷対象の用紙又はフィルム等の記録媒体が搬送中に浮いて印刷ヘッドに接触する場合がある。それを防止する目的で、画像形成部の上流側にローラ対によるカール矯正部(デカーラローラ)を設けたものが例えば特許文献1に開示されている。なお、以降において記録媒体はシートと称する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたカール矯正部では、デカーラローラの駆動力を、シートを印刷部に搬送するベルト搬送機構(ベルトプラテン)の駆動力と連結させている。このような構成では、分離されたシートをデカーラローラ側に搬送する搬送ローラ(一般的には「レジストローラ」)と、デカーラローラとの間での速度変動が生じ、皺の原因になる恐れがあった。
【0005】
また、デカーラローラの駆動を上記レジストローラから伝達することもできるが、この場合には、シートがデカーラローラを抜けるまでレジストローラを止めることができず、次のシートを受け入れられないため、シートの間隔を広くする必要があり、生産性を低下させてしまう問題があった。
【0006】
また、上記レジストローラと上記デカーラローラと上記ベルト搬送機構とを、別々の駆動源で駆動することもできるが、その場合にはデカーラローラの速度制御に高い応答性が必要なため、高出力の駆動源や高速な制御が必要となり、コストアップになる。また外乱による速度変動はシートの皺や画像乱れの原因にもなりうる。
【0007】
本発明は上記の如き課題を解決することのできるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置は、シート状の記録媒体を一枚ずつ分離してレジストローラで搬送し、カール矯正を行うデカーラローラを経てベルト搬送部に搬送して画像形成を行うインクジェット印刷装置において、前記レジストローラの回転駆動力と、前記ベルト搬送部の回転駆動力とを、それぞれワンウェイクラッチを介して前記デカーラローラに伝達し、前記レジストローラ、前記ベルト搬送部、及び前記デカーラローラの回転部のギア比が、前記デカーラローラの外周速度が前記レジストローラ及び前記ベルト搬送部の外周速度と同じか又は所定範囲内で早い速度となるように設定される。
【0009】
前記所定範囲内とは、前記デカーラローラがレジストローラとの間で前記記録媒体を引っ張りすぎて紙粉の発生が多くなったり、前記デカーラローラと前記ベルト搬送部と間で前記記録媒体の撓みが大きくなりすぎて皺が発生したりすることのない範囲である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産性を低下させず、高出力の駆動源や高速な制御が不要であり、コストダウンできるインクジェット印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略の構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示すレジストローラ、デカーラローラ、駆動ローラの部分を拡大した図である。
【
図3】デカーラローラとシートの関係を模式的に示す図である。
【
図4】デカーラローラでカールさせられたシートの斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るレジストローラ、デカーラローラ、駆動ローラの構成を示す平面図である。
【
図6】記録媒体の搬送速度の速度制御の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付し、その説明を省略若しくは簡略化する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略の構成を示す図である。
図1に示すインクジェット印刷装置1は、サイド給紙部10、内部給紙部20、印刷部30、第1排紙部40、反転部50、及び第2排紙部80を備える。
図1において、左右を左右方向、上下を上下方向、手前を前方向と定義する。
【0014】
サイド給紙部10は、シートPが積層される給紙台11と、給紙台11から最上位置のシートPのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部12と、1次給紙部12によって搬送されたシートPを循環搬送路CR上へ搬送する2次給紙部13とを備える。シートPは、例えば所定の大きさにカットされた用紙又はフィルムである。
【0015】
内部給紙部20は、サイズの異なるシートPが積層される給紙台21a,21b,21cと、給紙台21a,21b,21cのそれぞれの最上位置のシートPのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22a,22b,22cとを備える。
【0016】
2次給紙部13は、サイド給紙部10と内部給紙部20からシートPが搬送される。また、後述する反転部50からもシートPが搬送される。よって、2次給紙部13の手前には、1次給紙部12,22a,22b,22cから給紙されるシートPの搬送経路と、一方の面が印刷されたシートPが循環して搬送される経路とが合流する合流点が存在する。この合流点を基準に、給紙部側の経路を給紙搬送路FRと称し、給紙搬送路FRの下流側の経路を循環搬送路CRと称する。
【0017】
2次給紙部13は、レジストローラ130とデカーラローラ131を備える。レジストローラ130は、給紙搬送路FR及び循環搬送路CRから搬送されてくるシートPを、上下からニップしてデカーラローラ131に搬送する。
【0018】
デカーラローラ131は、搬送路の上側に配置され軟性で且つ大径の上ローラ131aと、搬送路の下側に配置され硬性で且つ小径の下ローラ131bとで構成される。デカーラローラ131は、シートPの搬送方向の端部を下向きにカールさせて印刷部30に搬送する。デカーラローラ131について詳しくは後述する。
【0019】
印刷部30は、循環搬送路CR上でシートPを搬送するベルト搬送部(ヘッド下搬送ユニット)31と、ベルト搬送部31の上部に設けられ、複数のインクジェットヘッドが組み込まれた印刷ヘッド32とを備える。
【0020】
ベルト搬送部31は、2次給紙部13から給紙されたシートPを搬送する。ベルト搬送部31は、搬送ベルト310と、駆動ローラ311と、従動ローラ312,313,314とを備える。
【0021】
搬送ベルト310は、デカーラローラ131により搬送されてきたシートPを吸着保持して搬送する。搬送ベルト310は、駆動ローラ311及び従動ローラ312~314に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト310には、エア吸引用の貫通孔である多数のベルト穴(図示せず)が形成されている。搬送ベルト310は、ファン(図示せず)の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により、シートPを吸着保持する。搬送ベルト310は、
図1において時計方向に回転(無端移動)することで、吸着保持したシートPを左から右へ向かう搬送方向に搬送する。
【0022】
印刷ヘッド32は、搬送ベルト310により搬送されるシートPにインクを吐出して画像を印刷する。印刷ヘッド32は、シートPの搬送方向(左右方向)に沿って所定間隔を空けて並列に配置されている。
【0023】
印刷部30により印刷されたシートPは、再び循環搬送路CR上を搬送されるか、又はインクジェット印刷装置1の筐体の外部に設けられた第2排紙部80へ排出されるかが分離フリッパ60により切り替えられる。
【0024】
再び循環搬送路CR上を搬送させられるシートPは、切り替え機構43により循環搬送路CR外へ排紙する第1排紙部40、又は反転部50に切り替えて誘導される。
【0025】
第1排紙部40は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出したトレイ形状をした排紙台41と、排紙台41にシートPを誘導する一対の排紙ローラ42とを備える。切り替え機構43によって第1排紙部40に誘導されたシートPは、排紙ローラ42により排紙台41に搬送され、排紙台41に印刷面を下にして積載される。
【0026】
反転部50は、シートPを反転させる反転台51と、循環搬送路CRから反転台51へシートPを搬送し、又は反転台51から循環搬送路CR上へシートPを搬送する一対の反転ローラ52とを備える。
【0027】
反転部50に誘導されたシートPは、反転台51により表裏が反転される。そして、表裏が反転されたシートPは、循環搬送路CR上に設けられた一対の搬送ローラ53により2次給紙部13に搬送される。
【0028】
2次給紙部13と印刷部30を通過した両面が印刷されたシートP、又は一方の面のみが印刷されたシートPは、分離フリッパ60に到達する。
【0029】
分離フリッパ60は、シートPを循環搬送路CR上に搬送させるか、又は第2排紙部80へ排紙させるかを切り替える。循環搬送路CR上を搬送させられるシートPは、上記の通り第1排紙部40へ排紙されるか、又は反転部50で表裏が反転されて循環搬送路CR上を循環する。
【0030】
第2排紙部80は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出したトレイ形状の排紙台81と、排紙台81にシートPを排出する一対の排紙ローラ82とを備える。排紙ローラ82により排紙されるシートPは、排紙台81に最後に印刷された面を上にして積載される。
【0031】
図2は、
図1に示すレジストローラ130、デカーラローラ131、及び駆動ローラ311の部分を拡大した図である。
【0032】
レジストローラ130は、上レジストローラ130aと下レジストローラ130bで構成される。給紙搬送路FRと循環搬送路CRの上を搬送されてくるシートPを、一旦止めた後に上レジストローラ130aと下レジストローラ130bでニップしてデカーラローラ131に搬送する。
【0033】
レジストローラ130を回転させる第1回転駆動力は、第1モータM1が発生する。第1回転駆動力は、第1モータM1の回転軸に嵌合された第1減速ギアM1aと上レジストローラ130aの回転軸に嵌合されたレジストローラギア130cを介して上レジストローラ130aに伝達される。上レジストローラ130aは、当接する下レジストローラ130bを従動回転させる。
【0034】
ベルト搬送部31の搬送ベルト310は、第2モータM2によって無端移動させられる。第2モータM2が発生する第2回転駆動力は、第2モータM2の回転軸に嵌合された第2減速ギアM2aと駆動ローラ311の回転軸に嵌合された駆動ローラギア311cを介して駆動ローラ311に伝達される。
【0035】
デカーラローラ131は、搬送路の上側に配置され軟性で且つ大径の上ローラ131aと、搬送路の下側に配置され硬性で且つ小径の下ローラ131bとで構成される。下ローラ131bを回転させる回転駆動力は、第1回転駆動力と第2回転駆動力の両方である。
【0036】
第1回転駆動力は、第1モータM1で発生し、第1減速ギアM1a、レジストローラギア130c、及び第1ワンウェイクラッチ132を介して下ローラ131bに伝達される。第1ワンウェイクラッチ132は、同軸上の内輪と外輪の間でクラッチ(図示せず)を介して一方向に回転駆動力を伝達する。
【0037】
第1ワンウェイクラッチ132の内輪132aは、下ローラ131bに固定される。内輪132aは、その内側を下ローラ131bの回転軸131bjに嵌合させて固定される。そして、その外輪132bには第1回転駆動力を伝達する第1伝達ギア132cが設けられている。
【0038】
第1モータM1で生じる第1回転駆動力は、第1減速ギアM1a→レジストローラギア130c→第1伝達ギア132c(外輪132b)→内輪132a→回転軸131bj→下ローラ131b→上ローラ131aの順に伝達する。この第1回転駆動力を伝達する伝達経路のギア比は、下ローラ131bの外周速度が上レジストローラ130aの外周速度と同一か、又は下ローラ131bの外周速度が上レジストローラ130aの外周速度より大きくなるように設定されている。
【0039】
下ローラ131bの外周速度が上レジストローラ130aの外周速度より大きくなるのは、上レジストローラ130aの外周速度の5%以内の範囲とされている。このように5%以内としたのは、それよりも大きくすると、シートP(用紙)を引っ張りすぎて紙粉の発生が多くなる等の不具合が発生する恐れがあるからである。
【0040】
第2回転駆動力は、第2モータM2で発生し、第2減速ギアM2aと第2ワンウェイクラッチ133を介して下ローラ131bに伝達される。第2ワンウェイクラッチ133は、第1ワンウェイクラッチ132と同じものである。
【0041】
第2ワンウェイクラッチ133(図示せず)は、第1ワンウェイクラッチ132と同様にその内輪133aの内側を下ローラ131bの回転軸131bjに嵌合させて固定される。
図2において、第2ワンウェイクラッチ133は第1ワンウェイクラッチ132と重なって見える。よって、第2ワンウェイクラッチ133の表記は省略している。第1ワンウェイクラッチ132と第2ワンウェイクラッチ133の平面構成については、以降に示す実施形態(
図5)で説明する。
【0042】
第2モータM2で発生する第2回転駆動力は、第2減速ギアM2a→第2伝達ギア133c(外輪133b)→内輪133a→回転軸131bj→下ローラ131b→上ローラ131aの順に伝達する。この第2回転駆動力を伝達する伝達経路のギア比は、下ローラ131bの外周速度がベルト搬送部31の外周速度と同一か、又は下ローラ131bの外周速度がベルト搬送部31の外周速度より大きくなるように設定されている。
【0043】
下ローラ131bの外周速度がベルト搬送部31の外周速度より大きくなるのは、ベルト搬送部31の外周速度の5%以内の範囲とされている。このように5%以内としたのは、それよりも大きくすると、シートP(用紙)の撓みが大きくなりすぎて皺が発生したり、ジャムの原因になる等の不具合が発生する恐れがあるからである。
【0044】
(デカーラローラ)
図3は、デカーラローラ131とシートPの関係を模式的に示す図である。
図3に示すように、デカーラローラ131の下ローラ131bは、上ローラ131aに圧接し、シートPの搬送方向を上向きに凸状に屈曲させる。
【0045】
図4は、デカーラローラでカールさせられたシートPの斜視図である。
図4に示すように、上向きにカールしたシートPであっても、上ローラ131aと下ローラ131bの間を通過する際に、破線で示すようにシートPを下向きにカールさせられる。
【0046】
このように下向きにカールさせられたシートPは、印刷ヘッド32に対して上下方向に所定の間隔を隔てて通過するため、適正な印刷が施される。
【0047】
図5は、
図2に示すA-A線で切った構造図である。
図5において、左右を左右方向、上下を前後方向、手前を上方向と定義する。
【0048】
図5に示すように、デカーラローラ131の下ローラ131bが固定された回転軸131bjの前側の端部に、第1ワンウェイクラッチ132と第2ワンウェイクラッチ133が固定されている。第1・第2ワンウェイクラッチ132,133のそれぞれは、内輪132b,133bの内側を下ローラ131bの回転軸131bjに嵌合させて固定される。
【0049】
第2ワンウェイクラッチ133は、内輪133aの孔が、回転軸131bjの前側の少し径の細い部分に叩き込まれ、回転軸131bjの段付き部分(参照符号は省略)に内輪133bを突き当てて固定される。第1ワンウェイクラッチ132は、第2ワンウェイクラッチ133の前側に間隔を空けて第2ワンウェイクラッチ133と同様に、内輪132bの孔を回転軸131bjに嵌合させて固定される。第2ワンウェイクラッチ133と第1ワンウェイクラッチ132の間にスペーサを設けてもよい。
【0050】
実線で示す下ローラ131bは、回転軸131bjの延長方向に沿って後方に長く形成される。一方、その下ローラ131bが圧接する上ローラ131aは、回転軸131bjの延長方向に沿って短い長さで形成される。上ローラ131aの内側で下ローラ131bの延長方向に沿う二点鎖線は、上ローラ131aが固定される軸131a1である。
【0051】
上ローラ131aは、レジストローラ130の上レジストローラ130aと干渉しないように所定の間隔を空けて設けられる。つまり、上レジストローラ130aと上ローラ131aのそれぞれは、串(回転軸131bj)に間隔を空けて刺される団子のように複数の上レジストローラ130aと上ローラ131aが設けられる。
【0052】
第1ワンウェイクラッチ132の外輪132bの外周に設けられた第1伝達ギア132cは、レジストローラギア130cとかみ合う。レジストローラギア130cは、第1モータM1が発生する第1回転駆動力を伝達する。よって、第1ワンウェイクラッチ132の外輪132bは、第1回転駆動力によって回転する。
【0053】
外輪132bが回転すると、クラッチ(
図5において×で示す部分)を介して、内輪132a、回転軸131bj、下ローラ131b、及び上ローラ131aが回転する。クラッチのロック方向は、シートPの搬送方向(
図2において回転軸131bjを中心に時計方向)である。
【0054】
第2ワンウェイクラッチ133の外輪133bの外周に設けられた第2伝達ギア133cは、第2モータM2が発生する第2回転駆動力を伝達する第2減速ギアM2aとかみ合う。よって、第2ワンウェイクラッチ133の外輪133bは、第2回転駆動力によって回転する。
【0055】
外輪133bが回転すると、クラッチ(
図5において×で示す部分)を介して、内輪133a、回転軸131bj、下ローラ131b、及び上ローラ131aが回転する。第2ワンウェイクラッチ133のクラッチのロック方向は、第1ワンウェイクラッチ132と同じである。
【0056】
このように、第1ワンウェイクラッチ132は、下ローラ131bを第1回転駆動力によって時計方向(
図2)に回転させる。第2ワンウェイクラッチ133は、下ローラ131bを第2回転駆動力によって第1ワンウェイクラッチ132と同方向に回転させる。
【0057】
デカーラローラ131の下ローラ131b、上レジストローラ130a、及び駆動ローラ311の外周速度は、定常状態で一定の速度とすることも可能である。しかし、生産性を向上させるためには、上レジストローラ130aの外周速度を上げてシートPの間隔を詰める制御が行われる。
【0058】
上レジストローラ130aの外周速度を速めた場合、第1ワンウェイクラッチ132の外輪132bと内輪132aの回転速度は速まる。その結果、下ローラ131bの回転速度は速くなる。
【0059】
この場合の第2ワンウェイクラッチ133の外輪133bの回転速度は、上記の定常状態から変化が無いため第1ワンウェイクラッチ132の外輪132bの回転速度よりも遅くなる。一方、下ローラ131bの回転軸131bjに固定された第2ワンウェイクラッチ133の内輪133aの回転速度は、クラッチのロック方向が第2モータM2→下ローラ131bであるため、第1ワンウェイクラッチ132の内輪132aの回転速度と同じである。
【0060】
このように第2ワンウェイクラッチ133の内輪133aとその外輪133bの間で回転速度に差分が生じてもよい。その回転速度の差分は内輪133aが空回りすることで吸収される。つまり、上レジストローラ130aの外周速度を速めようとして増加させられた第1回転駆動力は、第2モータM2に伝達されない。その結果、ベルト搬送部31の駆動ローラ311の外周速度は定常状態の速度から変化しない。
【0061】
次に、上レジストローラ130aの外周速度がデカーラローラ131の下ローラ131bの外周速度よりも遅い場合について説明する。
【0062】
この場合、第1ワンウェイクラッチ132の内輪132aの回転速度は、その外輪132bの回転速度よりも速い。この回転速度差は、第1ワンウェイクラッチ132のクラッチによって吸収される。つまり、第1ワンウェイクラッチ132のクラッチのロック方向は、第1モータM1→下ローラ131bであるので、ロック方向と逆方向に回転駆動力は伝達されない。したがって、この場合の下ローラ131bは第2回転駆動力のみによって回転させられる。第1モータM1が発生する第1回転駆動力は、第1ワンウェイクラッチ132の外輪132bを空回りさせる。
【0063】
図6は、上レジストローラ130aの外周速度を上げてシートPの間隔を詰める等の制御を行った場合のレジストローラ130、デカーラローラ131、及びベルト搬送部31の搬送速度の関係を模式的に示す図である。
図6の横軸は時間であり、縦軸は搬送速度である。
図6において、実線はレジストローラ130の外周速度(搬送速度)、破線はデカーラローラ131の外周速度(搬送速度)、一点鎖線はベルト搬送部31の駆動ローラ311の外周速度(搬送ベルト310の搬送速度)を表す。
【0064】
図6に示すように、1次給紙部12から搬送されてきたシートPを一旦止めるレジスト動作(レジストローラ130の搬送速度が0)の後に、生産性を向上させるためシートPの搬送速度を速める速度制御が行われる。
【0065】
レジストローラ130が停止するレジスト動作の場合(
図6に示すaの範囲)、デカーラローラ131は、第2モータM2が発生する第2回転駆動力で回転する。第2回転駆動力は、第2減速ギアM2a→第2伝達ギア133c→第2ワンウェイクラッチ133の外輪133b→第2ワンウェイクラッチ133の内輪133a→回転軸131bjの順に伝達されデカーラローラ131の下ローラ131bが回転する。この場合、第1ワンウェイクラッチ132は、その内輪132aのみが回転し外輪132bは回転しない。
【0066】
レジストローラ130の回転速度がデカーラローラ131の回転速度より遅い場合(
図6に示すbの範囲)、上記のレジスト動作の場合と異なり、第1モータM1が発生する第1回転駆動力によって第1ワンウェイクラッチ132の外輪132bが回転する。外輪132bの回転速度は、その内輪132aの回転速度よりも遅い。よって、外輪132bは第1回転駆動力で空回りする。この場合、デカーラローラ131の回転速度(破線)は、レジストローラ130の回転速度(実線)よりも速いためシートPを撓ませずシワを生じさせない。
【0067】
レジストローラ130の回転速度がベルト搬送部31の搬送速度よりも速い場合(
図6に示すcの範囲)、デカーラローラ131は、第1モータM1が発生する第1回転駆動力で回転する。第1回転駆動力は、第1減速ギアM1a→レジストローラギア130c→第1伝達ギア132c→第1ワンウェイクラッチ132の外輪132b→第1ワンウェイクラッチ132の内輪132a→回転軸131bjの順に伝達され下ローラ131bが回転する。この場合、デカーラローラ131の回転速度は、ベルト搬送部31の搬送ベルト310の搬送速度よりも速い。
【0068】
図6に示すように、デカーラローラ131の回転速度(破線)は、レジストローラ130(実線)及びベルト搬送部31(一点鎖線)の搬送速度よりも常に所定範囲内で早くなっている。デカーラローラ131の回転速度は、レジストローラ130及びベルト搬送部31の搬送速度と同一か、又は5%以内の範囲でレジストローラ130及びベルト搬送部31の搬送速度より早くなるように設定されている。
【0069】
以上説明したように本実施形態に係る第1ワンウェイクラッチ132は、内周にデカーラローラ131bの回転軸131bjが固定される内輪132aと、外周に第1回転駆動力を伝達する第1伝達ギアが設けられる外輪132bとの間で、シートPの搬送方向をクラッチのロック方向として第1回転駆動力を伝達し、第2ワンウェイクラッチ133は、内周にデカーラローラ131bの回転軸131bjが固定される内輪133aと、外周に第2回転駆動力を伝達する第2伝達ギア133cが設けられる外輪133bとの間で、シートPの搬送方向をクラッチのロック方向として第2回転駆動力を伝達する。これにより、デカーラローラ131の回転速度制御は、選択的且つ自動的に行われる。その結果、レジストローラ130とデカーラローラ131間においてはシートPの撓みを抑制し、シートPのシワ及びジャムの発生を防止することができ、デカーラローラ131とベルト搬送部31間においてはシートPの撓みを常に維持し、意図しない上流側の速度変動による画像の乱れを防止できる。
【0070】
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0071】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
(付記1)
シート状の記録媒体を一枚ずつ分離してレジストローラで搬送し、カール矯正を行うデカーラローラを経てベルト搬送部に搬送して画像形成を行うインクジェット印刷装置において、
前記レジストローラの回転駆動力と、前記ベルト搬送部の回転駆動力とを、それぞれワンウェイクラッチを介して前記デカーラローラに伝達し、
前記レジストローラ、前記ベルト搬送部、及び前記デカーラローラの回転部のギア比が、前記デカーラローラの外周速度が前記レジストローラ及び前記ベルト搬送部の外周速度と同じか又は所定範囲内で早い速度となるように設定されたことを特徴とするインクジェット印刷装置。
(付記2)
前記第1ワンウェイクラッチは、
内周に前記デカーラローラの前記回転軸が固定される内輪と、外周に前記第1回転駆動力を伝達する前記第1伝達ギアが設けられる外輪との間で、前記記録媒体の搬送方向をクラッチのロック方向として前記第1回転駆動力を伝達し、
前記第2ワンウェイクラッチは、
内周に前記デカーラローラの前記回転軸が固定される内輪と、外周に前記第2回転駆動力を伝達する前記第2伝達ギアが設けられる外輪との間で、前記記録媒体の搬送方向をクラッチのロック方向として前記第2回転駆動力を伝達する
付記1に記載のインクジェット印刷装置。
【符号の説明】
【0072】
1 インクジェット印刷装置
130 レジストローラ
131 デカーラローラ
131bj 回転軸
132 第1ワンウェイクラッチ
132c 第1伝達ギア
133 第2ワンウェイクラッチ
133c第2伝達ギア
31 ベルト搬送部
311 駆動ローラ