(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040940
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】レンズ群,歯周病検査装置,歯周病検査システムおよび光検出器
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20220304BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20220304BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20220304BHJP
A61B 1/24 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
G02B3/00
A61C19/04 C
A61B1/00 526
A61B1/24
A61B1/00 551
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145908
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】東京UIT国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】新藤 幹雄
【テーマコード(参考)】
4C052
4C161
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052NN02
4C052NN15
4C161AA08
4C161BB08
4C161FF40
4C161HH53
4C161HH54
(57)【要約】 (修正有)
【課題】分解能の高いレンズ群を提供する。
【解決手段】レンズ41から45によって構成されるレンズ群において,隣接するレンズ同士のレンズの内部の一部が空洞とされ,それらの空洞の中に錐体61から64がそれぞれが入り込む。レンズ同士の間隔が小さくなるので、レンズ41から45によって集光した光を用いて得られる光断層画像のような画像の解像度が高くなる。またレンズの径は比較的大きいままなので、得られる光量も多くなり,光断層画像のような画像の明るさも明るくなる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの光軸が平行かつ光軸方向が同一である少なくとも2つのレンズの内部の一部が共通となるように,少なくとも2つのレンズが固定されている,
レンズ群。
【請求項2】
レンズ面とは反対側の面が平面であり,平面の一部に光の透過領域が形成されており,かつ上記透過領域を除く平面が全反射面である,
請求項1に記載のレンズ群。
【請求項3】
上記透過領域には,光を伝搬する伝搬部が形成されている,
請求項2に記載のレンズ群。
【請求項4】
上記共通部分に,光を通過し,かつレンズ群の屈折率と異なる屈折率を有する第1の導光部が形成されている,
請求項1から3のうち,いずれか一項に記載のレンズ群。
【請求項5】
上記共通部分に,空気層を介して光を透過する第2の導光部が形成されている,
請求項4に記載のレンズ群。
【請求項6】
上記導光部の上記平面と同一面は全反射面である,
請求項4または5に記載のレンズ群。
【請求項7】
上記導光部は,レンズ内部との境界面が平面またはレンズ面側に凸状である,
請求項4から6のうち,いずれか一項に記載のレンズ群。
【請求項8】
少なくとも2つのレンズのそれぞれの上記伝搬部には光導波路がそれぞれ取り付けられており,
上記光導波路を伝搬した光を,レンズを介して出射し,反射光を,レンズを介して上記光導波路に導くように,上記光導波路に光を出射する光制御をレンズごとに順に行う光制御手段,
をさらに備えた請求項3に記載のレンズ群。
【請求項9】
それぞれの光軸が平行かつ光軸方向が同一である少なくとも3つのレンズから構成されるレンズ群であって,
第1列のレンズと第2列のレンズとが交互に異なる行に配置されており,
少なくとも2つのレンズの内部の一部が共通となるように,少なくとも3つのレンズが固定されている,
請求項1から8のうち,いずれか一項に記載のレンズ群。
【請求項10】
第1列のレンズまたは第2列のレンズ同士のレンズの内部の一部が共通となるように,少なくとも3つのレンズが固定されている,
請求項9に記載のレンズ群。
【請求項11】
第1列と第2列のレンズ同士のレンズの内部の一部が共通となるように,少なくとも2つのレンズが固定されている,
請求項10に記載のレンズ群。
【請求項12】
それぞれの光軸が平行かつ光軸方向が同一である少なくとも3つのレンズから構成されるレンズ群であって,
第1列のレンズと第2列のレンズとが交互に異なる行に配置されている,
レンズ群。
【請求項13】
第1列または第2列のレンズの少なくとも一方の列のレンズの配置間隔がレンズの直径未満である,
請求項12に記載のレンズ群。
【請求項14】
レンズ面が正面から見て矩形である,
請求項12に記載のレンズ群。
【請求項15】
レンズ面とは反対側の面が平面であり,
上記平面に光導波路が固定されている,
請求項13または14に記載のレンズ群。
【請求項16】
測定光と参照光とに分けられた低干渉光のうちの測定光を,請求項1から15のうちいずれか一項に記載の上記レンズ群を構成するそれぞれのレンズに上記反対側の面から入射し,それぞれのレンズから出射した測定光が歯茎または歯から反射した光がそれぞれのレンズから出射した第1の反射光と,参照光が参照面によって反射された第2の反射光と,を検出して干渉信号を出力する光検出器,および
上記光検出器から出力された干渉信号にもとづいて歯周ポケットの深さについてのデータを生成する歯周ポケット・データ生成手段,
を備えた歯周病検査装置。
【請求項17】
光検出器と歯周ポケット・データ生成手段とを含む歯周病検査システムであって,
上記光検出器が,
測定光と参照光とに分けられた低干渉光のうちの測定光を,請求項1から15のうちいずれか一項に記載の上記レンズ群を構成するそれぞれのレンズに上記反対側の面から入射し,それぞれのレンズから出射した測定光が歯茎または歯から反射した光がそれぞれのレンズから出射した第1の反射光と,参照光が参照面によって反射された第2の反射光と,を検出して干渉信号を上記歯周ポケット・データ生成手段に送信し,
上記歯周ポケット・データ生成手段が,
上記光検出装置から送信された干渉信号を受信し,受信した干渉信号にもとづいて歯周ポケットの深さについてのデータを生成する,
歯周病検査システム。
【請求項18】
測定光と参照光とに分けられた低干渉光のうちの測定光を,請求項1から15のうち,いずれか一項に記載の上記レンズ群を構成するそれぞれのレンズに上記反対側の面から入射し,それぞれのレンズから出射した測定光が歯茎または歯から反射した光がそれぞれのレンズから出射した第1の反射光と,参照光が参照面によって反射された第2の反射光と,を検出して干渉信号を生成する,
光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,レンズ群,歯周病検査装置,歯周病検査システムおよび光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病の検査方法の一つとして歯周ポケットの深さを測ることが行われている。歯周ポケットの深さは,歯科医師等がポケット・プローブという棒状の測定器具を歯周ポケットの中に挿入して目視で測るのが一般的である。しかしながら,歯科医師等の力の加減,ポケット・プローブの挿入角度,目視誤差などにより測定結果が必ずしも正確でないことがある。また,検査時の歯茎からの出血等で,歯周病で無い患部への歯周病感染等も懸念される。このために,被検出物に光を照射して光断層情報から口腔内の情報を取得するOCT(optical coherence tomography)装置が考えられている(特許文献1)。OCT装置では,歯茎や歯を照射する光の反射光の間隔が小さいほど解像度の高い光断層画像が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
OCT装置において得られる光断層画像は解像度が高いほど歯周ポケットの深さなどを正確に測定できることから,歯茎や歯からの反射光を受光する受光部の間隔を小さくする必要がある。ところが,受光部の間隔を小さくすると,受光部に入射する光の光量が少なくなり(光エネルギーが少なくなり),光断層画像を得るための十分な光量を得ることができないことがある。受光部に多くの光を入射させるためには受光部にレンズなどの光を集光する光学部品を利用すればよい。しかしながら,十分な光量を得るためにレンズの大きさを大きくすると受光部の間隔が大きくなるので光断層画像の解像度が低くなることがあり,光断層画像の解像度を高くするためにレンズの大きさを小さくすると十分な光量が得られないことがある。
【0005】
この発明は,入射する光について十分な光量を得ながら,例えば,その入射した光を用いて光断層画像のような画像を得る場合に解像度の高い画像を得ることができるレンズ群などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明によるレンズ群は,それぞれの光軸が平行かつ光軸方向が同一である少なくとも2つのレンズの内部の一部が共通となるように,少なくとも2つのレンズが固定されていることを特徴とする。
【0007】
レンズ面(レンズの前面または後面)とは反対側(レンズ面が形成されている側とは反対側)の面(レンズ面とは異なるレンズの後面または前面)が平面であり,平面の一部に光の透過領域が形成されており,かつ上記透過領域を除く平面が全反射面であることが好ましい。
【0008】
上記透過領域には,たとえば,光を伝搬する伝搬部が形成されている。
【0009】
上記共通部分に,光を通過し,かつレンズ群の屈折率と異なる屈折率を有する第1の導光部が形成されていてもよい。
【0010】
上記共通部分に,空気層を介して光を透過する第2の導光部が形成されていてもよい。
【0011】
上記導光部の上記平面と同一面は全反射面としてもよい。
【0012】
上記導光部は,たとえば,レンズ内部との境界面が平面またはレンズ面側に凸状である。
【0013】
少なくとも2つのレンズのそれぞれの上記伝搬部には光導波路がそれぞれ取り付けられていてもよい。この場合,上記光導波路を伝搬した光を,レンズを介して出射し,反射光を,レンズを介して上記光導波路に導くように,上記光導波路に光を出射する光制御をレンズごとに順に行う光制御手段をさらに備えてもよい。
【0014】
それぞれの光軸が平行かつ光軸方向が同一である少なくとも3つのレンズから構成されるレンズ群であって,第1列のレンズと第2列のレンズとが交互に異なる行に配置されており,少なくとも2つのレンズの内部の一部が共通となるように,少なくとも3つのレンズが固定されていてもよい。
【0015】
第1列のレンズまたは第2列のレンズ同士のレンズの内部の一部が共通となるように,少なくとも3つのレンズが固定されていてもよい。
【0016】
第1列と第2列のレンズ同士のレンズの内部の一部が共通となるように,少なくとも3つのレンズが固定されていてもよい。
【0017】
第2の発明は,それぞれの光軸が平行かつ光軸方向が同一である少なくとも3つのレンズから構成されるレンズ群であって,第1列のレンズと第2列のレンズとが交互に異なる行に配置されているものである。
【0018】
第1列または第2列のレンズの少なくとも一方の列のレンズの配置間隔がレンズの直径未満であることが好ましい。
【0019】
レンズ面が正面から見て矩形でもよい。
【0020】
レンズ面とは反対側の面が平面であり,上記平面に光導波路が固定されていてもよい。
【0021】
第3の発明の歯周病検査装置は,測定光と参照光とに分けられた低干渉光のうちの測定光を,上記レンズ群を構成するそれぞれのレンズに上記反対側の面から入射し,それぞれのレンズから出射した測定光が歯茎または歯から反射した光がそれぞれのレンズから出射した第1の反射光と,参照光が参照面によって反射された第2の反射光と,を検出して干渉信号を出力する光検出器,および上記光検出器から出力された干渉信号にもとづいて歯周ポケットの深さについてのデータを生成する歯周ポケット・データ生成手段を備えていることを特徴とする。
【0022】
第4の発明は,光検出器と歯周ポケット・データ生成手段とを含む歯周病検査システムであって,上記光検出器が,測定光と参照光とに分けられた低干渉光のうちの測定光を,上記レンズ群を構成するそれぞれのレンズに上記反対側の面から入射し,それぞれのレンズから出射した測定光が歯茎または歯から反射した光がそれぞれのレンズから出射した第1の反射光と,参照光が参照面によって反射された第2の反射光と,を検出して干渉信号を上記歯周ポケット・データ生成手段に送信し,上記歯周ポケット・データ生成手段が,上記光検出装置から送信された干渉信号を受信し,受信した干渉信号にもとづいて歯周ポケットの深さについてのデータを生成するものである。
【0023】
第5の発明による光検出器は,測定光と参照光とに分けられた低干渉光のうちの測定光を,上記レンズ群を構成するそれぞれのレンズに上記反対側の面から入射し,それぞれのレンズから出射した測定光が歯茎または歯から反射した光がそれぞれのレンズから出射した第1の反射光と,参照光が参照面によって反射された第2の反射光と,を検出して干渉信号を生成するものである。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明によると,レンズの内部が一部共通なので,レンズの径を小さくすることなくレンズの間隔を小さくできる。このためにレンズ群によって集光した光を用いて光断層画像のような画像を生成する場合でも,比較的明るく,かつ解像度の高い画像を得ることができる。
【0025】
第2の発明によると,第1列に配置されているレンズと第2列に配置されているレンズとが交互に異なる行に配置されているので,列方向のレンズの間隔を実質的に小さくできる。第2の発明においてもレンズ群によって集光した光を用いて光断層画像のような画像を生成する場合でも,比較的明るく,かつ解像度の高い画像を得ることができる。第2の発明によるレンズ群を歯周病検査用OCT装置の検査用プローブに利用した場合には,列方向と歯周ポケットの深さ方向とを一致させるようにして使用する。歯周病検査用OCT装置においては,第2の発明によるレンズ群のように2列にレンズが配置されていても歯周病の検査に利用できる光断層画像を得ることができる。行方向にずれているレンズを含むレンズ群を用いて得られた光断層画像であっても,歯周病検査においては深さとギャップとが問題であり歯の幅方向(レンズの行方向)の光断層画像の厳密さはあまり要求されないので,そのような光断層画像であっても歯周病検査に利用できるからである。
【0026】
第3の発明によると,上記のレンズ群を利用しているので,分解能が良く,しかもデータのレベルが高く,解像度の高い光断層画像のような画像が得られるポケット・データを得ることができる。
【0027】
第4の発明によると,光検出器と歯周ポケット・データ生成手段が別々の場所に置かれていたとしても,データのレベルが高く,解像度の高い光断層画像のような画像が得られる歯周ポケット・データを得ることができる。
【0028】
第5の発明によると,上記レンズ群を利用しているので,信号レベルが高く,解像度の高い光断層画像のような画像を得るための干渉信号が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】歯周病検査装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】歯茎および歯に照射光が照射される様子を示している。
【
図12】レンズに反射光が入射する様子を示している。
【
図22】(A)はレンズ群を構成する一部レンズを示し,(B)は
図22(A)のB-B線に沿う断面図,(C)は
図22(A)のC-C線に沿う断面図である。
【
図23】歯周病検査システムの電気的構成の一部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は,この発明の実施例を示すもので,歯周病検査装置の構成を示すブロック図である。
【0031】
SLD (Super luminescent diode)などのような光源1から低干渉光(低コヒーレント光)Lが出射される。低干渉光Lは,ビーム・スプリッタ2(光分岐器の一例である)によって測定光LMと参照光LRとに分岐させられる。光源1からは低干渉光Lが出射されればよく,ガス・レーザ,半導体レーザ,レーザ・ダイオードなどの他の光源を用いてもよい。
【0032】
ビーム・スプリッタ2によって分岐させられた測定光LMは,第1の光ファイバ7(第1の光導波路の一例である)の入射端面7Aから第1の光ファイバ7に入射する。第1の光ファイバ7の出射端面7B(
図2などを参照)は偏向装置10に接続されている。偏向装置10には,5本(便宜上5本としているが5本よりも多くても少なくてもよい)の第2の光ファイバ21から25(複数の第2の光導波路の一例である)が接続されている(5本の第2の光ファイバ21から25が光ファイバ・アレイの一例である)。
【0033】
5本の光ファイバ21から25における測定光LMの入射端面21Aから25A(
図2などを参照)のそれぞれに順に入射するように,第1の光ファイバ7の測定光LMの出射端面7B(
図2などを参照)から出射した測定光LMが,偏向装置10(光制御手段の一例である)によって偏向させられる。第2の光ファイバ21から25に入射した測定光LMは,第2の光ファイバ21から25内を伝搬して検査用プローブ30を通って,第2の光ファイバ21から25の測定光LMの出射端面21Bから25Bから出射し,測定対象である歯茎GUおよび歯TOに照射させられる。
【0034】
測定対象である歯茎GUおよび歯TOに照射された測定光LMは歯茎GUおよび歯TOから反射する。歯茎GUおよび歯TOから反射した測定光LMは,第2の光ファイバ21から25を順に通り,偏向装置10によって第1の光ファイバ7に導かれる。反射した測定光LMは,ビーム・スプリッタ2において反射してフォトダイオード4(光検出器の一例である)に入射する。
【0035】
また,ビーム・スプリッタ2において分岐させられた参照光LRは,参照光LRの進む方向およびその逆方向(
図1に示す実施例においてはZ軸正方向および負方向)に移動自在な参照用ミラー3(参照面)において反射する。反射した参照光LRは,ビーム・スプリッタ2を透過してフォトダイオード4に入射する。
【0036】
参照用ミラー3が移動させられて,測定光LMが被検査対象である歯茎GUおよび歯TOに照射するまでの伝播距離と被検査対象である歯茎GUおよび歯TOからの反射光がフォトダイオード4に入射するまでの伝播距離との総和の伝播距離と,参照光LRが参照用ミラー3を照射するまでの伝播距離と参照用ミラーからの反射光がフォトダイオード4に入射するまでの伝播距離との総和の伝播距離と,が等しくなると,測定光LMと参照光LRとの干渉が生じ,フォトダイオード4から干渉信号が出力される。
【0037】
フォトダイオード4から出力した干渉信号は,信号処理回路5(歯周ポケット・データ生成手段の一例である。プロセッサを用いてもよい)に入力し,歯茎GUおよび歯TOの光断層画像(断層画像)を表す信号(歯茎GUおよび歯TOのギャップ間距離を検出し,そのギャップ間距離情報の連続性より得られる歯周ポケットの深さについてのデータ)が生成される。生成された光断層画像を表す信号が表示装置6に入力することにより,表示装置6の表示画面に歯茎GUおよび歯TOの光断層画像が表示される。光断層画像の輪郭抽出処理が信号処理回路5において行われることにより,歯茎GUと歯TOとの間にある歯周ポケットの深さが算出される。算出された歯周ポケットの深さも表示装置6の表示画面に表示される。光断層画像を生成し,生成された光断層画像から歯周ポケットの深さを算出しているが,光断層画像を生成することなく,歯周ポケットの深さを表す数値データ(そのような数値データも歯周ポケットの深さについてのデータと考えられる)を信号処理回路5において算出し,歯周ポケットの深さを表示装置6の表示画面に表示するようにしてもよい。
【0038】
この実施例においては,光ファイバ7,21から25などにおいて,測定光LMの出射方向の部分を先端側とし,測定光LMの反射光の方向を基端側とする。
【0039】
【0040】
偏向装置10(偏向機構の一例である)には,上述のように第1の光ファイバ7が接続されている。第1の光ファイバ7の測定光の出射端面7Bの前面にはGRIN(gradient index)レンズ11(GRINレンズは入射した光を平行化して出力する平行化素子の一例であり,平行化できれば他のレンズ,他の光学素子でもよい)が配置されている。GRINレンズ11によって平行化された測定光LMは,固定ミラー12(回転しないが,回転させるようにしてもよい)によって反射され,偏向ミラー13に導かれる。偏向ミラー13は,所定の角度回転可能であり,入射した光を回転角に応じた偏向角で反射させる。偏向ミラー13には,例えば,MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)ミラーが採用される。偏向ミラー13において反射させられた測定光LMは,f-θレンズ14(入射した光を平行化して出射する平行化素子の一例であり,他の平行化素子でもよい)において平行化させられて集光レンズ15から19のうちのいずれかを通って,第2の光ファイバ21から25の入射端面21Aから25Aのいずれかから,第2の光ファイバ21から25のいずれかに入射する。なお,光を平行化するとは,光を完全に平行にすることに限定されず,光を略平行にすることも含む概念である。また,本実施形態において,平行化素子は,光を完全な平行よりもやや集光気味にすることが好ましい。すなわち,光の減衰及び物質を透過する際の拡散の影響を減らし,且つ,光の焦点が平行化素子から近傍に位置しないようにすることが好ましい。
【0041】
偏向ミラー13の回転角を,制御装置(図示略)を用いて制御することにより,測定光LMを第2の光ファイバ21から25のうちのいずれかに入射させることができる。たとえば,偏向ミラー13を所定角度から角度θ1だけ回転させることにより,
図2に示すように,測定光LMは,集光レンズ15を通って第2の光ファイバ21に入射する。同様に,偏向ミラー13を所定角度から角度θ2,θ3またはθ4だけそれぞれ回転させると,測定光LMは,集光レンズ16,17または18を通って第2の光ファイバ22,23または24に入射する。
図3に示すように,偏向ミラー13を所定角度から角度θ5だけ回転させると,測定光LMは,集光レンズ19を通って第2の光ファイバ25に入射する。
【0042】
上述のように,第2の光ファイバ21から25の測定光LMの出射端面から出射した測定光LMは歯茎GUおよび歯TOにおいて反射し,出射した出射端面から第2の光ファイバ21から25に再度入射する。歯茎GUおよび歯TOにおいて反射した後,再度第2の光ファイバ21から25に入射した測定光LMは,上述した第1の光ファイバ7から第2の光ファイバ21から25に出射される経路と逆の経路を経て,第1の光ファイバ7に再度入射する。
【0043】
偏向ミラー13の回転角を制御する制御装置および偏向ミラーが,第1の光ファイバ7から出射した測定光LMを,5本の第2の光ファイバ21から25に順に入射するように,測定光LMを制御する第1の制御機構の一例,第1の光ファイバ7から出射した測定光LMを偏向して,光ファイバ・アレイを構成する5本の第2の光ファイバ21から25の
それぞれに順に導く偏向機構(光制御手段)の一例である。
【0044】
【0045】
検査用プローブ30には,一方向に伸びている把持部31と,この把持部31の一端部において把持部31から垂直方向に伸びている接触部35と,が含まれている。
【0046】
図5は,接触部35の先端面35Aの正面図であり,
図4に比べて拡大されている。
【0047】
レンズ41から45(レンズ群の一例である)が,接触部35の先端面35Aから露出している。レンズ41から45は一列に配置されており,レンズ41から45のうち隣接するレンズ41と42,42と43,43と44および44と45の内部の一部がそれぞれ共通に固定されている(
図6,
図10などを参照)。
【0048】
【0049】
レンズ41から45のそれぞれには光を伝搬する伝搬部51から55が形成されている。レンズ41から45のレンズ面41Aから45Aとは反対側の伝搬部51から55の面は,底面51Aから55Aとなっている。一列に配列されている5本の第2の光ファイバ21から25が検査用プローブ30の基端側から先端側に通っている。5本の光ファイバ21から25の測定光の出射端面21Bから25Bには,レンズ41から45の伝搬部51から55の底面51Aから55Aに密着している。レンズ41から45の光軸はそれぞれ平行かつ光軸方向は同一である。
【0050】
把持部31は,硬質樹脂を材料として生成されており,ほとんど伸縮しない。接触部35は可撓性材料である軟質樹脂(たとえば,ポリウレタン)を材料として生成しており,所定の閾値よりも伸縮率が高い(比較的簡単に伸び縮みする)。
【0051】
把持部31の内部の硬質樹脂と光ファイバ21から25の外周面,接触部35の内部の軟質樹脂と光ファイバ21から25の外周面およびレンズ41から45の外周面のそれぞれが接する面は接着されていないで,単に,把持部31または接触部35内を通っているものである。また,レンズ41から45のそれぞれの外周面も互いに接着されていない。もっとも,いずれも接着されていてもよい。
【0052】
図7は,測定光B11,B21,B31,B41およびB51が検査対象である歯茎GUおよび歯TOに照射される様子を示すものである。
図7は,
図1に比べて拡大されている。
図7においては,光ファイバ21から25の図示も省略されている。
【0053】
測定光B11は第2の光ファイバ21を伝搬する測定光LMである。同様に,測定光B21は第2の光ファイバ22を,測定光B31は第2の光ファイバ23を,測定光B41は第2の光ファイバ24を,測定光B51は第2の光ファイバ25を,それぞれ伝搬する測定光LMである。
【0054】
図7は,歯茎GUおよび歯TOを側面から見たものであり,
図7の左側が身体の外側および内側の一方,右側が身体の外側および内側の他方に相当する。
【0055】
歯茎GUと歯TOとの間に歯周ポケットPPが形成されている。重度の歯周病の場合,歯周ポケットPPの深さは6mm以上となるから,測定光B11からB51の振れ幅ΔL(歯周ポケットPPの深さ方向における測定光B11からB51の振れ幅)が6mm以上あれば,重度の歯周病の歯周ポケットPPかどうかが判断できる。したがって,測定光B11からB51の振れ幅ΔLが6mm以上となるように,第2の光ファイバ21から25の本数および第2の光ファイバ21から25のそれぞれの径が決定される。このように,一度の走査で歯周ポケットの深さを測定するのに十分な振れ幅があることが好ましい。
【0056】
さらに,上述したレンズ41から45のそれぞれは,歯周ポケットPPの奥行の大きさ(歯周ポケットのギャップ間距離Δ22,Δ32,Δ42の始まりの位置から終わりの位置までの距離)ΔGをカバーするように,第1の焦点および第2の焦点が決められている。すなわち,第1の焦点は歯周ポケットPPの上部の歯茎GUの位置P1よりも基端側となり,第2の焦点は歯周ポケットPPの下部の歯茎GUと歯TOとが接する位置P2よりも先端側となるようにレンズ41から45が設計されている。歯周ポケットPPのギャップ間距離Δ22,Δ32,Δ42(これらの歯周ポケットPPの奥行の大きさの一例である)をカバーするように第1の焦点および第2の焦点が決められてもよい。
【0057】
図8(A)から
図8(E)は,干渉信号の一例である。
【0058】
図8(A),
図8(B),
図8(C),
図8(D)および
図8(E)は,それぞれ測定光B11,B21,B31,B41およびB51にもとづいて得られる干渉信号の一例である。
【0059】
測定光B11は,歯茎GUが無い歯TOの部分に直接照射されており(
図6参照),歯TOの表面からの反射光強度が高くなる。このために,
図8(A)に示すように,歯TOの表面からの反射光にもとづいて
図8(A)に示すように時刻t11において干渉信号が発生する。
【0060】
測定光B21は,歯周ポケットPPの上端部を照射するから(
図7参照),歯茎GUの表面からの反射光強度,歯茎GUと歯周ポケットPPとの境界からの反射光強度および歯茎GUの表面からの反射光強度が高くなる。このために,
図8(B)に示すように,歯茎GUの表面からの反射光,歯茎GUと歯周ポケットPPとの境界からの反射光および歯TOの表面からの反射光にもとづいて
図8(B)に示すように時刻t21,t22およびt23において干渉信号が発生する。時刻t21から時刻t22までの時間差Δt21は測定光B21が照射される部分の歯茎GUの厚さΔ21を示し,時刻t22から時刻t23までの時間差Δt22は測定光B21が照射される部分の歯周ポケットPPのギャップ間距離(歯TOと歯茎GUとの隙間の距離)Δ22を示している。
【0061】
同様に,測定光B31による歯茎GUの表面からの反射光,歯茎GUと歯周ポケットPPとの境界からの反射光および歯TOの表面からの反射光にもとづいて
図8(C)に示すように時刻t31,t32およびt33において干渉信号が発生する。時刻t31から時刻t32までの時間差Δt31は測定光B31が照射される部分の歯茎GUの厚さΔ31を示し,時刻t32から時刻t33までの時間差Δt32は測定光B31が照射される部分の歯周ポケットPPのギャップ間距離Δ32を示している。
【0062】
同様に,測定光B41による歯茎GUの表面からの反射光,歯茎GUと歯周ポケットPPとの境界からの反射光および歯TOの表面からの反射光にもとづいて
図8(D)に示すように時刻t41,t42およびt43において干渉信号が発生する。時刻t41から時刻t42までの時間差Δt41は測定光B41が照射される部分の歯茎GUの厚さΔ41を示し,時刻t42から時刻t43までの時間差Δt42は測定光B41が照射される部分の歯周ポケットPPのギャップ間距離Δ42を示している。
【0063】
測定光B51が照射される歯茎GUの部分には歯周ポケットPPができていないから(
図7参照),測定光B51による歯茎GUからの反射光および歯TOの表面からの反射光にもとついて,
図8(E)に示すように時刻t51およびt52において干渉信号が発生する。時刻t51から時刻t52までの時間差Δt51は測定光B51が照射される部分の歯茎GUの厚さΔ51を示す。
【0064】
図8(A)から
図8(E)の干渉信号のピーク値をプロットすることにより
図9に示す歯茎GUと歯TOとの光断層画像が生成される。
【0065】
図9は,歯茎GUの光断層画像Iguと歯TOの光断層画像Itoとの一例である。
【0066】
歯茎GUの光断層画像Iguと歯TOの光断層画像Itoとは表示装置6の表示画面に表示される。歯茎GUの光断層画像Iguと歯TOの光断層画像Itoとが信号処理回路5において輪郭抽出されることにより,歯周ポケットPPの深さΔdが信号処理回路5において算出される。
【0067】
上述の実施例では,歯茎GUと歯TOとの光断層画像IguとItoとを生成し,生成された光断層画像IguとItoとの輪郭を抽出することにより歯周ポケットPPの深さΔdを算出しているが,光断層画像IguとItoとを生成することなく(光断層画像IguとItoとを生成してもよい),計算により歯周ポケットPPの深さΔdを算出してもよい。
【0068】
また,上述の実施例では,測定光B11からB51の振れ幅は,重度の歯周病であっても一度の走査において歯周ポケットPPの深さΔdが測定できる程度のものとされている。しかしながら,一度の走査において歯周ポケットの深さΔdを測定できる程度の十分な振れ幅が無い場合に,検査用プローブ30を用いて上下の異なる位置で複数回(少なくとも2箇所)測定することにより,フォトダイオード4から出力された干渉信号にもとづいて歯周ポケットの深さΔdについてのデータを信号処理回路(歯周ポケット・データ生成手段)5において生成するようにしてもよい。
【0069】
たとえば,検査用プローブ30が,一回の走査(測定)により
図7に示される測定光B11からB31の範囲(B31からB51の範囲と同等)に相当する振れ幅の,測定光を出射できるとする。まず,
図7に示される測定光B11からB31に相当する範囲に,測定光を出射可能な位置で,検査用プローブ30による一度目の走査(測定)が実施されるとする。この場合,たとえば,一度目の走査において
図7に示される測定光B11からB31の範囲に出射される測定光にもとづいて得られる干渉信号から,
図7に示す歯茎GUおよび歯TOの上半分の光断層画像IguおよびItoが得られる。次に検査用プローブ30を下方向に動かす。動かした後の位置で実施される二度目の走査により,
図7に示される測定光B31からB51に相当する範囲に,検査用プローブ30から測定光が出射されるとする。この場合,二度目の走査において
図7に示される測定光B31からB51の範囲に出射される測定光にもとづいて得られる干渉信号から,
図7に示す歯茎GUおよび歯TOの下半分の光断層画像IguおよびItoが得られる。上下の異なる2箇所の位置に対する測定によって得られた2つの光断層画像が信号処理回路5において合成処理されることにより,
図7に示す歯茎GUおよび歯TOの光断層画像が得られる。歯茎GUおよび歯TOの上半分の光断層画像IguおよびItoと下半分の光断層画像IguおよびItoとは重複部分については重複するように合成し,一度の走査により得られる光断層画像IguおよびItoと同じ光断層画像が得られるように,上下方向における光断層画像の連続性が担保されていることはいうまでもない。
【0070】
上述の実施例においては,第2の光ファイバ21から25(レンズ41から45)が一列に配列されているが,二列以上に配列されていてもよい。その場合には,
図2および
図3において示した偏向装置10において,偏向ミラー13は,一次元方向にのみ測定光LMを偏向させるのではなく,二次元方向にも測定光LMを偏向できるようにし,各列に含まれる光ファイバに測定光を導くようにすることとなろう。また,5本の第2の光ファイバ21から25は,必ずしも一直線上に配列されていなくともよく曲線状に曲がっていてもよい。
【0071】
【0072】
レンズ41と隣接しているレンズ42とは,一部が重なっており(共通),その重なっている部分はほぼ錐体の空洞であり,空洞の内部に光を透過する錐体61(後述する錐体62から65も錐体61と同じ特性を有している)が入っている(
図11も参照)。この空洞部分もレンズの一部とみなしており,レンズ41とレンズ42とは内部の一部が共通とみなしている。錐体61はレンズ41から45と同じ材質であるが異なる材質でもよい。錐体61の一側面61Aとレンズ41の錐体61の一側面に対向する一側面41Cとは密着されていず間隔があけられており,そのため一側面61Aと一側面41Cとの間には空気層61Dが形成されている。同様に,錐体61の他の一側面61Bとレンズ42の錐体61の一側面に対向する一側面42Dとの間にも空気層61Eが形成されている。錐体61の一側面61Aおよび61B(境界面)はレンズ面41Aおよび42A側に凸状であるが平面でもよい。レンズ41の平面41Bおよび錐体61の底面61Cは接触部35の先端面35Aに固定されている。空気層61Dおよび61Eを介した錐体61が第2の導光部の一例である。錐体61の屈折率がレンズ41から45と異なればブリュースター角以下の入射角で入射する光は全反射するので,必ずしも空気層は必要無い(この場合の錐体61が第1の導光部の一例である。)。
【0073】
レンズ41の伝搬部51の底面51Aには上述のように光ファイバ21の出射端面21Bが密着している。底面51Aのうち光ファイバ21の出射端面21Bが密着している部分は光を透過する透過領域51Bである。
【0074】
レンズ41のレンズ面41Aと反対側の平面41Bのうち伝搬部51が形成されている領域(透過領域の一例である)41Dを除く平面41B,伝搬部51の外周面51C,伝搬部51の底面51Aのうち光ファイバ21の出射端面21Bが密着されている領域を除く領域,および錐体61の底面61Cはすべて蒸着されており,光の全反射面となっている。
【0075】
図10においては,レンズ41に伝搬部51が形成されているが伝搬部51が形成されていなくともよい。その場合には,伝搬部51の底面51Aとレンズ面41Aと反対側の平面41Bとが同一面状に形成されることとなる。
【0076】
レンズ42にも伝搬部52が形成されている。また,伝搬部52の底面52Aには光ファイバ22が固定されている。
【0077】
レンズ42においてもレンズ42のレンズ面42Aと反対側の平面42Bのうち伝搬部52が形成されている領域(透過領域の一例である)42Dを除く平面42B,伝搬部52の外周面52C,伝搬部52の底面52Aのうち光ファイバ22の出射端面22Bが密着されている領域を除く領域などはすべて蒸着されており,光の全反射面となっている。
【0078】
図11は,レンズ41から45の斜視図である。
図11において,
図10に示すものと同一物については同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
レンズ42と43との共通部分,レンズ43と44との共通部分,およびレンズ44と45との共通部分は,上述したレンズ41と42との共通部分と同様に空洞となっており,それらの空洞に錐体62,63および64が入り込む。
【0080】
図10を参照して説明したのと同様に,錐体62の一側面62Aと,この一側面62Aに対向するレンズ42の一側面42Cとの間には空気層が形成され,錐体62の一側面62Bと,この一側面62Bに対向するレンズ43の一側面43Dとの間にも空気層が形成される。
【0081】
同様に,錐体63の一側面63Aと,この一側面63Aに対向するレンズ43の一側面43Cとの間には空気層が形成され,錐体63の一側面63Bと,この一側面63Bに対向するレンズ44の一側面44Dとの間にも空気層が形成される。
【0082】
さらに,錐体64の一側面64Aと,この一側面64Aに対向するレンズ44の一側面44Cとの間には空気層が形成され,錐体64の一側面64Bと,この一側面64Bに対向するレンズ45の一側面45Dとの間にも空気層が形成される。
【0083】
レンズ43,44および45のそれぞれにも伝搬部53,54および55が形成されている。伝搬部53,54および55の底面53A,54Aおよび55Aの中央部分には光ファイバ23,24および25の出射端面23B,24Bおよび25Bが固定される。
【0084】
レンズ43においても,レンズ43の平面43Bのうち伝搬部53が形成されている領域(透過領域の一例である)43Dを除く平面43B,伝搬部53の外周面53C,伝搬部53の底面53Aのうち光ファイバ23の出射端面23Bが密着されている領域を除く領域などはすべて蒸着されており,光の全反射面となっている。
【0085】
同様に,レンズ44の平面44Bのうち伝搬部54が形成されている領域(透過領域の一例である)44Dを除く平面44B,伝搬部54の外周面54C,伝搬部54の底面54Aのうち光ファイバ24の出射端面24Bが密着されている領域を除く領域などはすべて蒸着されており,光の全反射面となっている。
【0086】
さらに,レンズ45の平面45Bのうち伝搬部55が形成されている領域(透過領域の一例である)45Dを除く平面45B,伝搬部55の外周面55C,伝搬部55の底面55Aのうち光ファイバ25の出射端面25Bが密着されている領域を除く領域などはすべて蒸着されており,光の全反射面となっている。
【0087】
錐体62,63および64の底面61C,62Cおよび63Cも蒸着されており,光の全反射面となっている。
【0088】
【0089】
図12は,光ファイバ21内を伝搬してきた光が歯茎GUおよび歯TOに照射され,その反射光L1からL6がレンズ41に入射する様子を示している。
【0090】
レンズ面41Aと反対側の平面(底面)41Bおよび伝搬部51の外周面51Cが蒸着されているので,レンズ41に入射した反射光L1は平面41Bにおいて全反射し,レンズ面41Aにおいて反射し,かつ外周面51Cにおいて全反射して光ファイバ21の出射端面21Bから光ファイバ21に入射して,光ファイバ21内を伝搬していく。平面41Bが蒸着されていなければ反射光L1は平面41Bにおいて全反射しないので,光ファイバ21にほとんど入射しない。また,伝搬部51の外周面51Cが蒸着されていなければ反射光L1は外周面51Cにおいて全反射しないので,光ファイバ21にほとんど入射しない。平面41Bおよび伝搬部51の外周面51Cにおいて全反射するので,本来なら光ファイバ21にほとんど入射しない反射光L1が光ファイバ21に入射するようになる。
【0091】
レンズ41に入射した反射光L2,L3およびL4は,レンズ41内において反射しないで光ファイバ21に直接入射する。
【0092】
レンズ41に入射した反射光L5は,レンズ41の一側面41Cと錐体61の一側面61Aとの間に空気層が形成されているので,反射光L5がブリュースター角以下の入射角で入射した場合にはレンズ41の一側面41Cで全反射する。反射光L5は,伝搬部51の外周面でさらに反射し,光ファイバ21に入射する。ブリュースター角以下の入射角で入射した反射光L5は一側面41Cで全反射するので,空気層が形成されていない場合と比べて光ファイバ21に入射する光量が増加する。
【0093】
反射光L6は,レンズ42から入射し,レンズ42の一側面42Dと錐体61の一側面61Bとの間に形成されている空気層を透過する。反射光L6は,錐体61の底面61Cにおいて全反射し,レンズ41のレンズ面41Aにおいて反射し,かつ伝搬部51の外周面51Cにおいて全反射して光ファイバ21に入射する。レンズ41とレンズ42との内部が一部共通していなければ,レンズ42から入射した反射光L6はレンズ41に密着している光ファイバ21には入射しないが,この実施例のレンズ群ではレンズ41とレンズ42との内部が一部共通しているので,レンズ42から入射した反射光L2はレンズ41に密着している光ファイバ21には入射し,光ファイバ21に入射する光量が増加する。
【0094】
上記の実施例では,レンズ41の平面41B,伝搬部51の外周面51C,伝搬部51の底面51Aのうち光ファイバ21の出射端面21Bが密着している透過領域51Bを除く領域,および錐体の底面61Cが全反射面とされているが,これらのすべてまたはいずれかが全反射面とされていなくてもよい。また,上述した空気層が形成されていなくともよい。隣接するレンズが一部共通であれば,光ファイバ21と22との間隔を短くでき,歯茎GUおよび歯TOからの反射光から得られる光断層画像が高解像度となるからである。もちろん,上記のように全反射の面を多くしたり,空気層を形成したりする(共通部分の屈折率とレンズ41から45の屈折率とを異なるようにする)ことにより,光ファイバ21に入射する反射光の光量が増えるので,反射光から得られる光断層画像は見やすくなる。
【0095】
【0096】
図13は,
図4に対応するもので,検査用プローブ30の斜視図である。
図13において
図4に示すものと同一物については同一符号を付して説明を省略する。
【0097】
検査用プローブ30の接触部35の先端面35Aからはレンズ群を構成する7つのレンズ71から77が露出している。7つのレンズが図示されているが,7つよりも多くのレンズでもよいし7つ未満レンズでもよい。
【0098】
【0099】
接触部35の正面から見て,第1列(左側の列)にレンズ71,73,75および77が1列に配置されており,第2列(右側の列)にレンズ72,74および76が1列に配置されている。
【0100】
第1行には第1列のレンズ71のみが配置され,第2行には第2列のレンズ72のみが配置され,第3行には第1列のレンズ73のみが配置され,第4行には第2列のレンズ74のみが配置され,第5行には第1列のレンズ75のみが配置され,第6行には第2列のレンズ76のみが配置され,第7行には第1列のレンズ77のみが配置されている。このように第1列に配置されているレンズ71,73,75および77と第2列に配置されているレンズ72,74および76とが交互に異なる行に配置されている。
【0101】
列方向におけるレンズ間の距離(列方向に隣接するレンズの光軸間の距離)は実質的にpとなる。このレンズ間の距離pはレンズ71から77の直径未満であることが好ましい。第1列に配置されているレンズ71,73,75および77と第2列に配置されているレンズ72,74および76とが交互に異なる行に配置されているから,レンズ71から77が同一列に配置されている場合と比べてレンズ間の距離が短くなっている。
【0102】
【0103】
レンズ71から77の光軸は平行であり,これらの光軸方向は同一方向となっている。 レンズ71,72,73,74,75,76および77のそれぞれには伝搬部81,82,83,84,85,86および87が形成されている。これらの伝搬部81,82,83,84,85,86および87の底面81A,82A,83A,84A,85A,86Aおよび87Aに光ファイバ21,22,23,24,25,26および27の出射端面21B,22B,23B,24B,25B,26Bおよび27Bが密着している。
【0104】
【0105】
上述したように,接触部35の正面から見て,第1列(左側の列)にレンズ71,73,75および77が1列に配置されており,第2列(右側の列)にレンズ72,74および76が1列に配置されているから,第1列(左側の列)に光ファイバ,21,23,25および27が1列に位置決めされ,第2列(右側の列)に光ファイバ22,24および26が位置決めされている。
【0106】
図13から
図16に示す検査用プローブ30では,レンズ71から77のレンズの大きさを小さくしなくても列方向におけるレンズ71から77のレンズ間隔が実質的に短くなっているから,レンズ71から77に入射した反射光を用いて光断層画像などを生成した場合に,高解像度の画像を得ることができる。
図13から
図16に示す例では,レンズ71から77は2列に配置されているが,3列以上でもよい。また,レンズ間隔は,すべて等しくpとされているが,必ずしも等しくなくともよい。一部のレンズ間隔またはすべてのレンズ間隔が異なっていてもよい。
【0107】
図17から
図22(A),(B)および(C)は,変形例を示している。
【0108】
図17は接触部35の正面図であり,
図5および
図14に対応している。
図18は,接触部35の側面図であり,
図15に対応している。
図18において
図15に示すものと同一物については同一符号を付して説明を省略する。
【0109】
第1列(左側の列)には正面から見て矩形のレンズ91,93,95および97が配置されており,第2列(右側の列)には正面から見て矩形のレンズ92,94および96が配置されている。
【0110】
第1行には矩形のレンズ91のみが配置され,第2行には矩形のレンズ92のみが配置され,第3行には矩形のレンズ93のみが配置され,第4行には矩形のレンズ94のみが配置され,第5行には矩形のレンズ95のみが配置され,第6行には矩形のレンズ96のみが配置され,第7行には矩形のレンズ97のみが配置されている。
【0111】
矩形のレンズ91の底面91B(
図18参照)は,
図17に示すように円100を考えたときに,その円100に内接する矩形である。矩形のレンズ91の底面91Bが円100に対応している場合に存在するレンズ部分100A,100B,100Cおよび100Dは矩形のレンズ91から取り除かれている。他のレンズ92から97も同様である。
【0112】
第1列の矩形のレンズ91,93,95および97は列方向に互いに隣接するレンズ同士は側面が密着している。また,第2列の矩形のレンズ92,94および96も互いに隣接するレンズ同士は側面が密着している。さらに,第1列の矩形のレンズから91,93,95および97と第2列の矩形のレンズ93,95および97も行方向に隣接するレンズ同士が密着しているが,必ずしも密着する必要は無い。
【0113】
図17および
図18に示す矩形のレンズ91から97でも,実質的に列方向のレンズ間の距離pが小さくなる。
【0114】
図19は,他の変形例を示すもので,接触部35の正面図であり,主として
図5に対応している。
【0115】
図5に示すレンズ41から45は1列に配置されていたが,
図19に示すレンズ101から107は2列に配置されている。第1列(正面から見て左側の列)にはレンズ101,103,105および107が配置されている。第2列(正面から見て右側の列)にはレンズ102,104および106が配置されている。第1行にはレンズ101のみが配置され,第2行にはレンズ102のみが配置され,第3行にはレンズ103のみが配置され,第4行にはレンズ104のみが配置され,第5行にはレンズ105のみが配置され,第6行にはレンズ106のみが配置され,第7行にはレンズ107のみが配置されている。
【0116】
第1列に配置されているレンズ101,103,105および107ならびに第2列に配置されているレンズ102,104および106において列方向に隣接するレンズ同士は,
図10から
図12を参照して説明したように,レンズ内部の一部が共通であり,その共通部分には錐体61などに対応する錐体が入っている。また,上述したのと同様に空気層も形成されている。
図5に示すようにレンズ41から45を1列にするのではなく,
図19に示すようにレンズ101から107を2列(または3列以上)にし,列方向に隣接するレンズ同士の内部の一部を共通にしてもよい。
【0117】
図19に示すようにレンズ101から107を配置することにより,列方向のレンズ間隔を小さくでき,かつ歯茎GUおよび歯TOからの反射光を効率良く光ファイバに導くことができる。
【0118】
図20は変形例の一例で,接触部35の正面図であり,主として
図19に対応する。
【0119】
第1列にはレンズ121,123,125および127が配置されており,第2列にはレンズ122,124および126が配置されている。第1行にはレンズ121のみが配置され,第2行にはレンズ122のみが配置され,第3行にはレンズ123のみが配置され,第4行にはレンズ124のみが配置され,第5行にはレンズ125のみが配置され,第6行にはレンズ126のみが配置され,第7行にはレンズ127のみが配置されている。
【0120】
斜め方向に隣接するレンズ121と122,122と123,123と124,124と125,125と126,126と127は,
図10から
図12を参照して説明したように,レンズ内部の一部が共通であり,その共通部分には錐体61などに対応する錐体が入っている。また,上述したのと同様に空気層も形成されている。
【0121】
図20に示すようにレンズ121から127を配置しても,列方向のレンズ間隔を実質的に小さくでき,かつ歯茎GUおよび歯TOからの反射光を効率良く光ファイバ21から27に導くことができる。
【0122】
図21ならびに
図22(A),(B)および(C)も変形例を示している。
【0123】
【0124】
図19に示す例では列方向に隣接するレンズ同士の一部が共通となるように配置されており,
図20に示す例では斜め方向に隣接するレンズ同士の一部が共通となるように配置されているのに対し,
図21に示す例では,列方向および斜め方向に隣接するレンズ同士の一部が共通となるように配置されている。
【0125】
第1列(正面から見て左側の列)にはレンズ141,143,145および147が配置され,第2列(正面から見て右側の列)にはレンズ142,144および146が配置されている。第1行にはレンズ141のみが配置され,第2行にはレンズ142のみが配置され,第3行にはレンズ143のみが配置され,第4行にはレンズ144のみが配置され,第5行にはレンズ145のみが配置され,第6行にはレンズ146のみが配置され,第7行にはレンズ147のみが配置されている。
【0126】
図22(A)はレンズ141,142,143および144を取り出したもので,接触部35の正面から見た図であり,
図22(B)は
図22(A)のB-B線に沿う断面図,
図22(C)は
図22(A)のC-C線に沿う断面図である。
【0127】
レンズ141は,レンズ142および143の一部と共通である。レンズ142はレンズ141,143および144の一部と共通である。レンズ143はレンズ141,142,144および145の一部と共通である。レンズ144はレンズ142,143,145および146の一部と共通である。レンズ145はレンズ143,144,146および147の一部と共通である。レンズ146はレンズ144,145および147の一部と共通である。レンズ147はレンズ145および146の一部と共通である。
【0128】
図22(B)および
図22(C)に示すように,レンズ141から144の共通部分には,
図11に示したように共通部分に空洞が形成され,その空洞に
図11に示す錐体61などに対応する導光部170が入り込む。導光部170とレンズ141から144との間には空気層180が形成される。
【0129】
図21ならびに
図22(A),(B)および(C)の変形例においても,列方向のレンズ間隔を実質的に小さくでき,かつ歯茎GUおよび歯TOからの反射光を効率良く光ファイバ21から27に導くことができる。
【0130】
図13から
図22(A),(B)および(C)に示す実施例では7つのレンズのレンズ群について説明されているが,これらのレンズから光を出射するための7つの光ファイバ21から27などに光を導くように偏向装置10が制御され,かつ7つのレンズにおいて受光した反射光を光ファイバ21から27から,光ファイバ7に導くように偏向装置10が制御される。
【0131】
上述の実施例のように2列(またはそれ以上の列)のレンズから構成されるレンズ群を歯周病検査用OCT装置の検査用プローブに利用した場合には,列方向と歯周ポケットの深さ方向とを一致させるようにして使用する。歯周病検査用OCT装置においては,複数列にレンズが配置されていても歯周病の検査に利用できる光断層画像を得ることができる。行方向にずれているレンズを含むレンズ群を用いて得られた光断層画像であっても,歯周病検査においては深さとギャップとが問題であり歯の幅方向(レンズの行方向)の光断層画像の厳密さはあまり要求されないので,そのような光断層画像であっても歯周病検査に利用できるからである。
【0132】
図23は,他の実施例を示すもので,歯周病検査システムの一部のブロック図である。
【0133】
反射した測定光LMおよび反射した参照光LRはフォトダイオード4に入射し,フォトダイオード4から干渉信号が出力される。干渉信号は,アナログ/ディジタル変換回路201においてディジタル・データに変換される。変換されたディジタル・データは,通信回路202に入力し,通信回路202からサーバ200に送信される。
【0134】
サーバ200は,信号処理回路(歯周ポケット・データ生成手段)5の機能を有しており,上述した干渉信号から光断層画像を生成できる。通信回路202から送信されたディジタル・データをサーバ200において受信すると,サーバ200において光断層画像が生成されることとなる。
【0135】
サーバ200において生成された光断層画像を表すデータを通信回路202に送信してもよい。光断層画像を表すデータが表示制御装置203に与えられ,表示制御装置203によって表示装置204が制御されることにより光断層画像が表示装置204の表示画面に表示されることとなる。
【符号の説明】
【0136】
1:光源,2:ビーム・スプリッタ,3:参照用ミラー,4:フォトダイオード,5:信号処理回路,6:表示装置,7:光ファイバ,7A:入射端面,7B:出射端面,10:偏向装置,11:GRINレンズ,12:固定ミラー,13:偏向ミラー,14:f-θレンズ,15-17:集光レンズ,19:集光レンズ,21:光ファイバ,21A:入射端面,21B:出射端面,22-25:光ファイバ,30:検査用プローブ,31:把持部,35:接触部,35A:先端面,41-45:レンズ,41A-45A:レンズ面,41B-45B:平面,41C-44C:一側面,42D-45D:一側面,51-55:伝搬部,51A-55A:底面,51B:透過領域,51C-55C:外周面,52:伝搬部,61-65:錐体,61A-64A:一側面,61B-64B:一側面,61C:底面,61D:空気層,61E:空気層,71-77:レンズ,81-86:伝搬部,81A-86A:底面,91-97:レンズ,91B:底面,100:円,100A-100C:レンズ部分,101-107:レンズ,121-127:レンズ,141-147:レンズ,170:導光部,180:空気層,200:サーバ,201:ディジタル変換回路,202:通信回路,203:表示制御装置,204:表示装置,B11:測定光,B21:測定光,B31:測定光,B41:測定光,B51:測定光,GU:歯茎,Igu:光断層画像,Ito:光断層画像,L:低干渉光,L1-L6:反射光,LM:測定光,LR:参照光,PP:歯周ポケット,TO:歯,p:距離,Δ21:厚さ,Δ22:ギャップ間距離,Δ31:厚さ,Δ32:ギャップ間距離,Δ41:厚さ,Δ42:ギャップ間距離,Δ51:厚さ,Δd:深さ,Δt21:時間差,Δt22:時間差,Δt31:時間差,Δt32:時間差,Δt41:時間差,Δt42:時間差,Δt51:時間差,θ1:角度,θ2:角度,θ5:角度