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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040943
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】海苔の検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/86 20060101AFI20220304BHJP
   G01J 3/51 20060101ALI20220304BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
G01N21/86
G01J3/51
G01N21/27 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145912
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】392024699
【氏名又は名称】株式会社川島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086092
【弁理士】
【氏名又は名称】合志 元延
(72)【発明者】
【氏名】川島 一美
(72)【発明者】
【氏名】川島 久幸
【テーマコード(参考)】
2G020
2G051
2G059
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA05
2G020DA13
2G020DA23
2G020DA32
2G020DA42
2G051AA33
2G051AB01
2G051AB02
2G051BA08
2G051BB01
2G051BB05
2G051CA03
2G051CB01
2G051CB02
2G051CB05
2G051CC15
2G051DA06
2G051EA17
2G051EB02
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB10
2G059BB11
2G059CC03
2G059CC20
2G059DD12
2G059DD13
2G059EE02
2G059EE11
2G059EE13
2G059FF01
2G059GG02
2G059HH02
2G059JJ02
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM03
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】第1に、生産現場で色落ち度合いの検査が行え、第2に、安定的,高精度,客観的検査が可能となり、第3に、しかもこれらが簡単容易に実現され、第4に、更に異物検査も高精度化されるようになる、海苔の検査装置を提案する。
【解決手段】この海苔Aの検査装置12は、海苔Aの生産工程で使用され、反射方式により海苔Aの色落ち度合いを検査可能であり、コンベア2,表用光源3,裏用光源6、表用カメラ4,裏用カメラ7,判定手段5等を、有している。表用カメラ4,裏用カメラ7は、それぞれ表用光源3,裏用光源6からの照射光を、搬送される海苔Aを介し、反射光として受光可能であり、デジタルカラー・ラインスキャンカメラよりなる。判定手段5は、表用カメラ4又は裏用カメラ7の検出データに基づき、そして赤,緑,青のうち何れか一色のデータに基づき、海苔の色彩を数値化して、海苔Aの色落ち度合いを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥海苔の生産工程で使用される検査装置であって、反射方式により海苔の色落ち度合いを検査可能であり、コンベア,光源,カメラ,判定手段を有しており、
該コンベアは、海苔を搬送し、該光源は、搬送される海苔に対向配設され、該カメラは、該光源からの照射光を海苔を介し反射光として受光可能なカラーカメラよりなり、
該判定手段は、該カメラの検出データに基づき、海苔の色彩を数値化し、もって海苔の色落ち度合いを判定すること、を特徴とする海苔の検査装置。
【請求項2】
請求項1において、該光源は、少なくとも赤,緑,青の3波長を有する白色光LEDよりなり、該カメラは、赤,緑,青の撮像素子を搭載した、デジタルカラー・ラインスキャンカメラよりなること、を特徴とする海苔の検査装置。
【請求項3】
請求項1において、該判定手段は、該カメラの検出データについて、赤,緑,青のうちいずれか一色のデータを選択使用すること、を特徴とする海苔の検査装置。
【請求項4】
請求項3において、該判定手段は、256フル階調について、予め設定された判定開始基準側の階調値および判定終了基準側の階調値と、検出データの選択された一色の検出階調値とに基づき、海苔の色落ち度合いを判定すること、を特徴とする海苔の検査装置。
【請求項5】
請求項4において、海苔の色落ち度合いは、下記式で算出した海苔毎の個別色落ち度合いKとして把握されること、を特徴とする海苔の検査装置。
なお下記式中、A’は、選択された一色の検出階調値であって、海苔毎の画素についての平均値。Bは、判定開始基準側の階調値。Cは、判定終了基準側の階調値。
【請求項6】
請求項5において、海苔の色落ち度合いは、複数枚の海苔毎に算出した個別色落ち度合いKを、複数枚について平均した平均値として把握されること、を特徴とする海苔の検査装置。
【請求項7】
請求項1において、該判定手段は、該カメラの検出データに基づき、海苔の外表面に付着した異物の有無も、判定可能であり、
該判定手段は、異物の有無の判定時において、海苔の色落ち度合いの判定結果に対応し、マッチした閾値および面積値に設定可能であること、を特徴とする海苔の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔の検査装置に関する。すなわち、海苔の色落ち度の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
乾燥海苔(以下単に海苔という)の生産工程では、生海苔摘採,水洗,抄き,脱水,乾燥の各工程の後、検査,カウント集積,整列,折曲,結束の各工程を辿って、海苔が生産されている。
そして検査工程では、検査装置により、各種夾雑物や金属等の異物が付着した海苔の検査が行われると共に、形状不良の海苔の検査も行われている。なお異物は、海苔の外表面つまり表面や裏面や海苔の内部等に、付着している。
【0003】
《従来例》
ところで、このように生産される海苔については、色落ち問題が指摘されていた。そこで従来は、これについて、出荷後に人手により色落ち度合いの検査が行われていた。
すなわち、上述した生産地での生産段階後、市場への出荷段階おいて、業界の検査員等の個人的な感覚,経験,判断に頼って、色落ち度合いが検査されていた。
なお、海苔の色落ちは、生海苔養殖場における海水栄養分の減少や、摘採回数の増加,反復繰り返し等に起因して多々発生し、海苔の色彩が変化するに至っていた。海苔は、通常の黒色から、徐々に薄茶色(例えば段ボールのような略黄色)へと、変化することが多々あった。
図4の写真において、図中右側は、通常の黒色の良品海苔Aを、左側は、色落ち海苔Aを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
上述した従来の検査装置としては、例えば次の特許文献1,2中に示されたものが、挙げられる。
【特許文献1】特開2012-217427号公報
【特許文献2】特開2015-198594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
《課題等》
ところで、このような従来例については、次の問題が課題として指摘されていた。
上述したように、海苔Aの色落ち度合いは、生産(生産地)段階後の出荷(市場)段階において、人の目により、その個人的な感覚,経験,判断に頼って、検査されていた。
そして海苔は、色落ち度合いによっては、市場にて出荷中止となることもあり、出荷される場合でも、等級品質評価や価格等に影響がでていた。
そこで、このように重視すべき海苔の色落ち度合いについては、第1に、出荷前の生産(生産地)段階で検査したい、という要望が強かった。第2に、個人的な感覚,経験,判断に頼らず検査したい、という指摘もあった。
すなわち第1に、生産工程,生産段階,生産地,生産現場で、色落ち度合いの検査が行えれば、基準以下のひどい色落ちの海苔については、市場への出荷停止が、市場への出荷前に事前に可能となる。第2に、個人的判断に頼らず、より安定的,高精度,客観的な色落ち度合いの検査が、勿論望ましい。
【0006】
《本発明について》
本発明の海苔の検査装置は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、生産現場で色落ち度合いの検査が行え、第2に、安定的,高精度,客観的検査が可能となり、第3に、しかもこれらが簡単容易に実現され、第4に、更に異物検査も高精度化されるようになる、海苔の検査装置を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
請求項1の海苔の検査装置は、乾燥海苔の生産工程で使用される。もって、反射方式により海苔の色落ち度合いを検査可能であり、コンベア,光源,カメラ,判定手段を、有している。
そして該コンベアは、海苔を搬送する。該光源は、搬送される海苔に対向配設される。該カメラは、該光源からの照射光を海苔を介し反射光として受光可能なカラーカメラよりなる。
該判定手段は、該カメラの検出データに基づき、海苔の色彩を数値化し、もって海苔の色落ち度合いを判定すること、を特徴とする。
【0008】
請求項2については、次のとおり。
請求項2の海苔の検査装置では、請求項1において、該光源は、少なくとも赤,緑,青の3波長を有する白色光LEDよりなる。該カメラは、赤,緑,青の撮像素子を搭載した、デジタルカラー・ラインスキャンカメラよりなること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。
請求項3の海苔の検査装置では、請求項1において、該判定手段は、該カメラの検出データについて、赤,緑,青のうちいずれか一色のデータを選択使用すること、を特徴とする。
【0009】
請求項4については、次のとおり。
請求項4の海苔の検査装置では、請求項3において、該判定手段は、256フル階調について、予め設定された判定開始基準側の階調値および判定終了基準側の階調値と、検出データの選択された一色の検出階調値とに基づき、海苔の色落ち度合いを判定すること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。
請求項5の海苔の検査装置では、請求項4において、海苔の色落ち度合いは、下記数式1で算出した海苔毎の個別色落ち度合いKとして把握されること、を特徴とする。
なお下記式中、A’は、選択された一色の検出階調値であって、海苔毎の画素についての平均値。Bは、判定開始基準側の階調値。Cは、判定終了基準側の階調値。
【0010】
【数1】
【0011】
請求項6については、次のとおり。
請求項6の海苔の検査装置では、請求項5において、海苔の色落ち度合いは、複数枚の海苔毎に算出した個別色落ち度合いKを、複数枚について平均した平均値として把握されること、を特徴とする。
請求項7については、次のとおり。
請求項7の海苔の検査装置では、請求項1において、該判定手段は、該カメラの検出データに基づき、海苔の外表面に付着した異物の有無も、判定可能である。
そして該判定手段は、異物の有無の判定時において、海苔の色落ち度合いの判定結果に対応し、マッチした閾値および面積値に設定可能であること、を特徴とする。
【0012】
《作用等について》
本発明の検査装置は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)海苔は、コンベアにて搬送される。
(2)搬送される海苔は、光源から照射光が照射され、その反射光がカメラに受光される。
(3)光源は、少なくとも赤,緑,青の3波長を有する白色光LEDよりなり、カメラは、赤緑青の撮像素子を搭載したデジタルカラー・ラインスキャンカメラよりなる。
(4)検査装置の判定手段は、カメラの検出データについて、赤緑青のいずれか一色の数値を判定に用いる。
(5)もって判定手段は、海苔の色落ち度合いを判定し、海苔は、色落ち度合いに応じ処理される。
(6)判定手段の判定は、代表的には、カメラの検出階調値と、判定開始基準側の階調値および判定終了基準側の階調値とを、目安とする。そして、検出階調値の判定開始基準側の階調値からの離隔度にて、色落ち度合いが判定される。
(7)すなわち、海苔の色落ち度合いは、海苔毎の個別色落ち度合いとして算出,把握されるが、更に、複数枚の海苔の平均値としても算出,把握される。
(8)そこで、本発明の検査装置によると、次のようになる。
すなわち、海苔の色落ち検査が、第1に、生産工程中の検査工程の一環として、実施される。第2に、光源,カメラ,判定手段等により安定的,高精度,客観的に、実施される。第3に、既存の異物検査用の検査装置を活用し、簡単容易に、実施される。第4に、異物検査も高精度化される。
(9)そこで、本発明に係る海苔の検査装置は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0013】
《第1の効果》
第1に、生産現場で色落ち度合いの検査が、行えるようになる。
本発明の検査装置は、海苔の生産工程中の検査工程において、色落ち度合いを検査する。生産工程,生産段階で、つまり生産地,生産現場で、色落ち度合いを検査する。市場への出荷前に色落ち度合いを検査し、基準に満たないひどい色落ちの海苔については、事前に出荷停止することが可能となる。
前述したこの種従来例のように、ひどい色落ちの海苔について、生産段階後の出荷段階において、つまり事後の市場において、出荷中止,出荷中断される事態は、回避される。生産者にとって好ましからざる事態発生は、回避される。
【0014】
《第2の効果》
第2に、安定的,高精度,客観的検査が可能となる。
本発明の検査装置では、光源からの照射光を海苔を介し反射光として受光可能なカラーカメラの検出データに基づき、判定手段により、海苔の色彩を数値化して、海苔の色落ち度合いが判定される。
もって、海苔の色落ち度合いが、安定的かつ高精度に検査でき、必要に応じ表示も適宜可能となる。前述したこの種従来例のように、個人的な感覚,経験,判断に頼ることなく、客観的に正確に検査可能となる。
【0015】
《第3の効果》
第3に、しかもこれらは、簡単容易に実現される。
本発明の検査装置は、従来より既存の検査装置を利用すると共に、更に、特徴的構成を採用したことにより、海苔の色落ち度合いの検査が、簡単容易に実現される。
すなわち、デジタルカラーカメラの検出データに基づき、判定手段にて判定することにより、海苔の色落ち度合いの検査が、簡単な構成により容易に実現される。色落ち検査を、上述したように、生産地において、安定的,高精度,客観的に可能となる。
【0016】
《第4の効果》
第4に、更に異物検査も高精度化される。
本発明の検査装置は、既存の検査装置の一環として、海苔の外表面に付着した異物の有無も判定可能である。
そしてその際、まず、モノクロカメラの検出データに基づいていた前述した従来例の検査装置に比し、カラーカメラの検出データに基づくので、異物検査が高精度化する。又、色落ち度合いの判定結果に対応し、異物の検出感度について、マッチした閾値および面積値に設定可能であり、この面からも、異物検査が高精度化する。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る海苔の検査装置について、発明を実施するための形態の説明に供し、検査装置全体の側面説明図である。
図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、(1)図は、画素の拡大説明図、(2)図は、海苔一枚分の検出データの展開データマップである。
図3】同発明を実施するための形態の説明に供し、(1)図は、海苔の平面説明図、(2)図は、海苔の断面説明図である。
図4】同発明を実施するための形態の説明に供し、海苔の写真であり、右側が通常海苔、左側が色落ち海苔である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
《海苔Aについて》
まず、海苔Aについて説明する。
海中から摘取されて生産工程で加工製造される海苔Aは、規格上、左右横幅寸法190mm、前後縦長さ寸法210mm程度の長方形シート状をなす(図3を参照)。そして、夾雑物や金属が異物Bとして多々付着している。
すなわち、ビニール片,羽毛,貝殻,紙,木片,木屑,石屑,砂,土,微細石,海老,虫等々の夾雑物が、付着していることも多い。又、鉄を始めアルミ,銅,ステンレス,その他の金属の、歯こぼれ片,微小片,磨耗片,錆,微粉,残滓等々が、付着していることもある。
海苔Aについては、以上のとおり。
【0019】
《検査装置1について》
次に、検査装置1について、図1を参照して一般的に説明する。
加工製造された海苔Aには、上述したように異物Bが付着している可能性があるので、検査装置(異物選別機)1にて、その検出,判定が実施される。異物Bが付着した海苔Aは、他の良品の海苔Aから取り除かれて、別途回収される。
検査装置1では、海苔Aは、ベルトコンベアやローラーコンベア等のコンベア2にて、搬送方向Cに水平搬送される。そして、搬送される海苔Aについて、異物Bが付着した海苔Aの検出,判定,取り除きが行われる。
【0020】
すなわち、上側の表用光源3からの照射光を、海苔Aを介し、上側の表用カメラ4が反射光として受光し、その検出データに基づき、判定手段5にて、海苔Aの表面に付着した表異物Bの検出,判定が行われる。
又、下側の裏用光源6からの照射光を、海苔Aを介し、下側の裏用カメラ7が反射光として受光し、その検出データに基づき、判定手段5にて、海苔Aの裏面に付着した裏異物Bの検出,判定が行われる。
更に、下側の中用光源8からの照射光を、海苔Aを介し上側の中用カメラ9が透過光として受光し、その検出データに基づき、判定手段5にて、海苔A中つまり海苔A内部に付着した中異物Bの検出,判定が行われる。
なお検査装置1では、形状不良の海苔Aの検出,判定も行われる。すなわち、下側の形状用光源10からの照射光を、海苔Aを介し上側の形状用カメラ11が受光し、その検出データに基づき、判定手段5にて、形状不良の海苔Aの検出,判定が行われる。
検査装置1の一般的な説明については、以上のとおり。
【0021】
《本発明の概要》
以下、本発明について、図1図4を参照して説明する。まず、本発明の概要については、次のとおり。
本発明の検査装置12は、上述した検査装置1を利用し、その一環として組み込まれている。つまり検査装置1は、部分的に検査装置12として利用,把握される。
すなわち検査装置12は、まず、一般的な検査装置1に準じ、海苔Aの生産工程で使用され反射方式により海苔Aの外表面に付着した異物Bを検出,判定可能である。もって、コンベア2,表用光源3,表用カメラ4,裏用光源6,裏用カメラ7,判定手段5、等を備えている。
そして検査装置1に準じ、コンベア2は海苔Aを搬送する。表用光源3は、搬送される海苔Aの表側に対向配設され、表用カメラ4は、表用光源3からの照射光を、海苔Aを介し反射光として受光可能である。裏用光源6は、搬送される海苔Aの裏側に対向配設され、裏用カメラ7は、裏用光源6からの照射光を、海苔Aを介し反射光として受光可能である。
【0022】
これと共に、本発明の検査装置12は、上述した検査装置1に比し、次の特徴を備えている。
本発明の検査装置12の判定手段5は、表用カメラ4又は裏用カメラ7の検出データに基づき、海苔Aの色彩を数値化し、もって海苔Aの色落ち度合いを判定する。
すなわち、まず表用カメラ4や裏用カメラ7は、赤,緑,青の撮像素子を搭載した、デジタルカラー・ラインスキャンカメラよりなる。そして判定手段5は、このような表用カメラ4又は裏用カメラ7の検出データについて、赤,緑,青のうちいずれか一色のデータを選択使用する。
そして代表例では、判定手段5は、256フル階調について、予め設定された判定開始基準側の階調値および判定終了基準側の階調値と、その範囲内での選択された一色の検出データの数値化された検出階調値とに基づき、海苔Aの色落ち度合いを判定する。
本発明の概要については、以上のとおり。以下、このような本発明の検査装置12について、詳述する。
【0023】
《本発明の詳細》
検査装置12の表用光源3,裏用光源6,表用カメラ4,裏用カメラ7,判定手段5等について、更に詳述する。
まず、表用光源3や裏用光源6は、一般的な検査装置1と同様、少なくとも赤,緑,青の3波長を有する白色光LEDが使用され、海苔Aの左右横幅を照射可能な長尺状をなす。
表用カメラ4や裏用カメラ7として本発明の検査装置12では、カラーカメラが採用されている。前述した一般的な検査装置1では、モノクロカメラが用いられていたのに比し、カラー化が図られている。
すなわち、検査装置1では、2048bitのアナログモノクロ・ラインスキャンカメラが用いられていたのに比し、検査装置12では、4096bitのデジタルカラー・ラインスキャンカメラが用いられている。そして、その赤,緑,青の撮像素子が、海苔Aの左右横幅に対応し、左右横方向に線状配置されている。
なお第1に、表用カメラ4や裏用カメラ7としては、ラインスキャンカメラのほか、撮像素子が縦横二次元的に配置されて一度にデータ検出するエリアカメラも、使用可能である。
なお第2に、本発明の検査装置12では、表用カメラ4と裏用カメラ7のいずれかの検出データが、判定手段5にて色落ち度合いの判定用に使用される。
そこで上述によらず、表用カメラ4と裏用カメラ7のうち、色落ち度合い判定用にデータが使用される方を、カラーカメラとし、他方を、モノクロカメラのままとする例も可能ではある。
【0024】
次に、判定手段5について述べる。判定手段5は、例えばマイクロコンピュータよりなり、表用カメラ4又は裏用カメラ7からの検出データについて、一色のデータを選択使用する。
まず、表用カメラ4および裏用カメラ7のうち、何れか一方の検出データが、数値化されて選択使用される。これと共に、検出データの内、赤(R),緑(G),青(B)のうち、何れか一色のデータが、数値化されて選択使用される。
そして、選択使用される一色について、代表例では256フル階調を前提に、判定が実施される。因に階調は、0階調(黒)~256階調(白)の強弱・入光量を、256段階で数値表現する。
もって判定手段5は、海苔Aの検出データの数値化された検出階調値(海苔Aの選択された一色の検出階調値)と、予め設定された判定開始基準側の階調値および判定終了基準側の階調値とに基づき、海苔Aの色落ち度合いを判定する。
【0025】
上記した判定開始基準側の階調値や判定終了基準側の階調値については、次のとおり。すなわち、0階調~256階調全部では、データ範囲が広過ぎて、黒色から徐々に薄茶色(例えば段ボールのような略黄色)へと徐々に変化する、海苔Aの色変化範囲に絞り込んだ把握が、困難化する。
そこで、データ範囲を海苔Aの色変化範囲のみに狭く絞るべく、判定開始基準側の階調値と判定終了基準側の階調値とが、予め設定される。
判定手段5は、この判定開始基準側の階調値(例えば26階調に設定:良品海苔Aの黒色域とした値)と、判定終了基準側の階調値(例えば80階調に設定:色落ち海苔Aの限界とした値)とを、目安とする。そして、海苔Aの検出データの数値化された検出階調値(海苔Aの選択された一色の検出階調値、例えば、28階調や30階調で検出)を、評価する。
【0026】
もって、海苔Aの色落ち度合いが判定される。検出データ階調値が検出開始基準側の階調値からどの程度、離隔,隔離しているかにより、色落ち度合いが判定される。
例えば、検出階調値が28階調のケースでは、色落ち度3%程度の(個別)色落ち度合いの海苔Aと、判定,把握される。例えば、検出階調値が30階調のケースでは、色落ち度7%程度の(個別)色落ち度合いの海苔Aと、判定,把握される。
なお、海苔Aの色落ち度合いは、複数枚の海苔Aについての平均値として把握されることも多い。色落ち度合いの計算式等については後述。
本発明の検査装置12の詳細については、以上のとおり。
【0027】
《表1のデータ等について》
表1は、海苔Aの検出データの階調値(赤(R),緑(G),青(B)各色の検出階調値)である。
すなわち、本発明の検査装置12において、前述したデジタルカラーカメラの表用カメラ4を用いて検出した、海苔Aの状態に応じた階調値(3色それぞれについて平均した階調値)の実測データである。
このデータによると、赤(R)が特に海苔Aの色落ち状態に近いと、判断された。もって色落ち判定に際しては、赤(R)の色彩データ(検出階調値)の選択使用が、最適であると推測される。
【0028】
【表1】
【0029】
ここで、既存の検査装置1の表用カメラ4や裏用カメラ7で使用されていた、アナログモノクロカメラとの比較について述べておく。
本発明の検査装置12では、表用カメラ4や裏用カメラ7について、デジタルカラーカメラが使用され、例えば上記表1のデータが得られた。そこで、前者の既存のアナログモノクロカメラと、後者の本発明のデジタルカラーカメラとを比較すると、次のとおり。
・前者は白黒の濃淡しか表現できない。これに対し後者は、色彩により実際の海苔Aの色落ち具合を、よりクリアーに表現可能である。
・例えば赤色について、前者の白黒の濃淡の検出階調値と、後者の強弱の検出階調値とは相違しており、当然ながら後者が、実際の海苔Aの色に対応したものとなる。前者と後者では、分解能の技術思想も相違する。
・なお、前者のアナログモノクロカメラを使用しつつ、LED照射光を赤・緑・青に高速点滅させる技術も見られるが、赤系異物に青色照射光が照射された場合や、青系異物に赤色照射光が照射された場合、検出されるモノクロデータの濃淡度下がり、検出,判別性能が低下すると推察される。
表1のデータ等については、以上のとおり。
【0030】
図2の例》
次に、本発明の検査装置12に関し、図2の例を説明する。
図2の(1)図は、画素の拡大説明図、(2)図は、海苔A一枚分の検出データの展開データマップを示す。
・前述したよう表用カメラ4(又は裏用カメラ7)は、4096bitのデジタルカラー・ラインスキャンカメラよりなる。
・海苔Aの左右横幅寸が190mmなので、図示例では、表用カメラ4(裏用カメラ7)のカメラ視野は、余裕をもって240mmとした。もって0~240mmで、0~4096bitとなる。因に1画素サイズは7μm×7μm。
・しかしながら、表用カメラ4(又は裏用カメラ7)の左右横方向の分解能は、前述したように、4096bitも必要ないので、図示例ではカメラ内部での半分処理により、2048bitの検出データを使用。
・もって、1bitは240mm/2048bitで、表用カメラ4(又は裏用カメラ7)の横方向の分解能は0.12mm。
・そして海苔Aは、縦の搬送方向Cに搬送される(最高66m/分)。縦方向の分解能は0.2mmに設定。
【0031】
そこで1スキャン毎に、赤(R),緑(G),青(B)について、それぞれ横方向2048個の階調値の検出データが、海苔Aの縦長さ分(210mm)について0.2mm毎に、表用カメラ4(又は裏用カメラ7)から判定手段5に送出される。
すなわち、縦長さ210mm/0.2mmで、1050回送出されるので、計2048×1050個(画素)の検出データ(スキャンデータ)が送出される。なお図示例では、一画素を0.2mmとする。
判断手段5は、検出データについて、選択された一色(3色について適宜切換可能)の各画素の階調値の平均値(例えば28階調や30階調)を、その1枚の海苔Aについての検出階調値とする。
図2の例については、以上のとおり。
【0032】
《計算式等について》
次に、本発明の検査装置12の判定手段5に関し、色落ち度合いの計算式について説明する。
海苔Aの色落ち度は、下記数式2で算出された複数枚の海苔A毎の個別色落ち度合いKや、その平均値として把握される。
なお下記の数式2中、A’は、一色の検出階調値であって、海苔A毎の画素についての平均値。Bは、判定開始基準側の階調値。Cは、判定終了基準側の階調値。
【0033】
【数2】
【0034】
上述した判定手段5における数式2について、更に詳述する。
・A’は、選択された一色の検出階調値である。すなわち、対象の1枚の海苔Aについて、表用カメラ4(裏用カメラ7)の検出データであって、選択された一色(例えば赤(R))について、各画素の階調値(入光量)の平均値である。
・Bは、判定開始基準側の階調値(割合開始位置)である。すなわち、例えば26階調にて設定され、色落ちのない良品海苔Aとして認められる限界の黒色に相当する。
・Cは、判定終了基準側の階調値である。すなわち、例えば80階調にて設定され、海苔Aが色落ちする限界、つまり全体的にひどい色落ち状態の海苔Aに対応する。
・そこで、判定開始基準側の階調値B(黒色側)~判定終了基準側の階調値C(色落ち側)迄を目安に、検出階調値A’が、評価,判定される。
・検出階調値A’が、判定開始基準側の階調値B以下の場合、その海苔Aの個別色落ち度は、0%となる。検出階調値A’が、判定終了基準側の階調値C以上の場合、その海苔Aの色落ち度は、100%となる。
・検出階調値A’が、判定開始基準側の階調値Bと判定終了基準側の階調値C間の範囲にある場合、その海苔Aの個別色落ち度合い(%)が算出,把握される。
【0035】
さてそこで判定手段5では、検出階調値A’が、例えば28階調であった場合、上記数式2にて、その1枚の海苔Aの個別色落ち度合いKは、約3%と算出,把握される。検出階調値A’が30階調であった場合、上記式2にて、その1枚の海苔Aの個別色落ち度Kは、約7%と算出,把握される。
判定手段5では、このように算出される数値化された各海苔A毎の個別色落ち度合いK(%)を記憶する。
そして、複数枚(例えば3枚)の海苔Aについての平均値が、対象となった複数枚の海苔Aの色落ち度合い(%)として把握される。これにより、一枚毎の変動幅が抑えられた値が、色落ち度として把握される。
そして、このように把握され数値化された個別色落ち度合いK(%)や、最終的に平均化されたな色落ち度合い(%)は、判定手段5にて画面表示される。
計算式等については、以上のとおり。
【0036】
《異物検査について》
次に、色落ち度合いと異物検査について、図1図3を参照して説明する。
判定手段5は、表用カメラ4,裏用カメラ7の検出データに基づき、海苔Aの外表面に付着した異物Bの有無も、判定可能である。
そして判定手段5は、異物Bの有無の判定時において、海苔Aの色落ち度合いの判定結果に対応し、マッチした閾値および面積値に設定制御可能である。
【0037】
これらについて、更に詳述する。検査装置12が組み込まれた検査装置1では、前述したように、上側の表用光源3からの照射光を海苔Aを介し、上側の表用カメラ4が反射光として受光し、その検出データに基づき、判定手段5にて、海苔Aの表面に付着した表異物Bの検出,判定が行われる。
又、下側の裏用光源6からの照射光を海苔Aを介し、下側の裏用カメラ7が反射光として受光し、その検出データに基づき、判定手段5にて、海苔Aの裏面に付着した裏異物Bの検出,判定が行われる。
そして、このような表用カメラ4,裏用カメラ7の検出データに基づく、異物Bの検出,判定に際し、異物B判定用の閾値および面積値は、海苔Aの色落ち度合いに対応して設定変更することが、必要である。
色落ちのない黒い状態では、性能一杯まで感度を上げることができるが、色落ちが進行すると、海苔Aの反射光量が増大し、海苔Aを異物Bと認識し易く誤動作の可能性が増大するので、感度を落とし,下げて,甘くする必要がある。
【0038】
そこで判定手段5では、前述により把握された色落ち度合いに応じ、異物B判定用の閾値および面積値を、色落ちのない状態に比し、より大きくする設定変更可能となっている。前述した数値化された色落ち度合い(%)を用いて、赤(R),緑(G),青(B)のそれぞれの閾値,面積値を、設定変更可能となっている。
そして、この設定変更は、手動又は自動にて行われる。すなわち、数値化された色落ち度合い(%)の表示を見て手動で切換設定変更するか、又は、数値化された色落ち度合い(%)に応じ、自動切換で設定変更するか、切換可能となっている。
因に従来は、このような設定変更は、数値化された色落ち度合い(%)によらず、作業者の目視による色落ち判断に基づき、行われていた。
異物検査については、以上のとおり。
【0039】
《作用等》
本発明の検査装置12は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)海苔Aの生産工程では、海苔Aは、コンベア2にて搬送方向Cに搬送される。(図1を参照)
【0040】
(2)搬送される海苔Aは、検査装置12の表用光源3からの照射光が照射され、その反射光が表用カメラ4に受光される。又、裏用光源6からの照射光が照射され、その反射光が裏用カメラ7に受光される(図1を参照)。
【0041】
(3)表用光源3や裏用光源6は、少なくとも赤,緑,青の3波長を有する白色光LEDよりなる。表用カメラ4や裏用カメラ7は、赤(R),緑(G),青(B)の撮像素子を搭載した、デジタルカラー・ラインスキャンカメラよりなる(図1を参照)。
【0042】
(4)検査装置12の判定手段5は、表用カメラ4又は裏用カメラ7のいずれかの検出データを、判定に使用する。そしてその検出データについて、赤(R),緑(G),青(B)のうちいずれか選択した一色の数値を、判定に使用する(図2を参照)。
【0043】
(5)もって、検査装置12の判定手段5は、海苔Aの色落ち度合いを判定する。そして海苔Aは、色落ち度合いに応じ例えば等級品質評価され、色落ちのひどいものは出荷停止される(図4を参照)。
【0044】
(6)判定手段5の代表的判定方式は、次のとおり。すなわち、表用カメラ4又は裏用カメラ7の検出階調値と、予め設定された判定開始基準側の階調値(黒色側)および判定終了基準側の階調値(色落ち側)とを、目安として行われる。
そして、検出階調値の判定開始基準側の階調値からの離隔度にて、色落ち度合いが判定される。検出階調値は、海苔について、選択された一色の平均値とされる。
【0045】
(7)もって、例えば前記数式1や数式2にて、複数枚の各海苔Aについて、個別色落ち度合いKが算出,把握される。そして、複数枚分を平均することにより、平均値としての色落ち度合いが算出,把握される。
【0046】
(8)さてそこで、本発明の検査装置12によると、次の第1,第2,第3のようになる。
第1に、海苔Aの色落ち度合いの検査が、海苔Aの生産工程中の検査工程において、検査の一環として実施される。
第2に、海苔Aの色落ち度合いの検査が、表用光源3,裏用光源6、表用カメラ4,裏用カメラ7、判定手段5等により、安定的,高精度,客観的に実施される。
第3に、海苔Aの色落ち度合いの検査が、既存の異物検査用の検査装置1を活用することにより、簡単容易に実施される。
第4に、異物Bの検査も高精度化される(図3を参照)。すなわち、表用カメラ4や裏用カメラ7がカラーカメラよりなるので、その分、検査が高精度化される。又、色落ち度合いに対応すべく閾値や面積値が設定されるので、この面からも検査が高精度化される。
作用等については以上のとおり。
【符号の説明】
【0047】
A 海苔
B 異物
C 搬送方向
1 検査装置(一般例)
2 コンベア
3 表用光源
4 表用カメラ
5 判定手段
6 裏用光源
7 裏用カメラ
8 中用光源
9 中用カメラ
10 形状用光源
11 形状用カメラ
12 検査装置(本発明)
図1
図2
図3
図4