(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040950
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】誤り率測定装置およびパラメータ取得方法
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20220304BHJP
H04L 43/00 20220101ALI20220304BHJP
H04B 17/309 20150101ALI20220304BHJP
【FI】
H04L1/00 C
H04L12/70 100Z
H04B17/309 100
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145926
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】大日向 哲郎
【テーマコード(参考)】
5K014
5K030
【Fターム(参考)】
5K014GA02
5K030GA11
5K030HA08
5K030HB12
5K030HC01
5K030JA10
5K030MB05
5K030MC07
5K030MC08
(57)【要約】
【課題】Cursorによる試験を行うための操作回数を低減して時間の短縮を図る。
【解決手段】誤り率測定装置1は、リンクの状態を管理するためのリンクトレーニング中にパラメータ値の変更指示があったときの応答時間を測定するものであり、少なくとも1回のリンクトレーニング中のRecovery Equalization Phase2または3の状態でパラメータ値として全てのPresetへの変更指示を被測定物Wに順次送信するデータ送信部11と、データ送信部11から順次送信される変更指示による全てのPresetに対応するそれぞれのCursor値を被測定物Wから順次受信して取得するデータ受信部13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンクの状態を管理するためのリンクトレーニング中にパラメータ値の変更指示があったときの応答時間を測定する誤り率測定装置(1)であって、
少なくとも1回のリンクトレーニング中のRecovery Equalization Phase2または3の状態で前記パラメータ値として全てのPresetへの変更指示を被測定物(W)に順次送信するデータ送信部(11)と、
前記データ送信部から順次送信される変更指示による前記全てのPresetに対応するそれぞれのCursor値を前記被測定物から順次受信して取得するデータ受信部(13)と、を備えたことを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項2】
リンクの状態を管理するためのリンクトレーニング中にパラメータ値の変更指示があったときの応答時間を測定する誤り率測定装置のパラメータ取得方法であって、
少なくとも1回のリンクトレーニング中のRecovery Equalization Phase2または3の状態で前記パラメータ値として全てのPresetへの変更指示を被測定物(W)に順次送信するステップと、
前記順次送信される変更指示による前記全てのPresetに対応するそれぞれのCursor値を前記被測定物から順次受信して取得するステップと、を含むことを特徴とする誤り率測定装置のパラメータ取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物(DUT:Device Under Test )のビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を測定する誤り率測定装置に関し、特に、リンクの状態を管理するためのリンクトレーニング中にパラメータ値の変更指示があったときの応答時間を測定する誤り率測定装置およびパラメータ取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誤り率測定装置は、例えば下記特許文献1に開示されるように、被測定物(DUT)を信号パターン折り返しのステートに遷移させた状態で固定データを含む既知パターンのテスト信号を被測定物に送信し、このテスト信号の送信に伴って被測定物から折り返して受信した被測定信号と基準となる参照信号とをビット単位で比較してビット誤り率を測定する装置として従来から知られている。
【0003】
ところで、この種の誤り率測定装置では、被測定物のビット誤り率を測定する他、リンクの状態を管理するためのリンクトレーニング中にパラメータ値の変更指示があったときの応答時間の測定を行う場合がある。
【0004】
例えばPCI Express(以下、PCIeと略称する)の場合、コンプライアンステスト項目の一つとして、応答時間の試験(Tx Link Equalization Response Time test)がある。この応答時間の試験は、
図6のフローチャートに基づく下記(1)~(5)の手順で行われる。
【0005】
(1)被測定物をループバック状態(Loopback Active)に設定するためのリンクトレーニングを開始する(ST11)。
(2)リンクトレーニング中に
図5のLTSSM(Link Training and Status State Machine)における「Recovery」のRecovery Equalization Phase2または3の状態で誤り率測定装置が被測定物のパラメータ値としてPreset:プリセット(例えば初期値:Preset0)の変更を指示する(ST12)。
(3)被測定物が実際に指示されたPreset(例えば初期値:Preset0)に変化するまでの応答時間を誤り率測定装置にて測定する(ST13)。このとき、指示されたPreset(例えば初期値:Preset0)に対応するCursor値:カーソル値を被測定物が誤り率測定装置に返送する(ST14)。このCursor値は被測定物が持つ固有の値であり、この試験を通じて誤り率測定装置はこの値を知ることができる。
(4)ST12~ST14の処理をパラメータ値としてPreset0(初期値)から順にインクリメントしてPreset9まで実行し、計10回の処理を行う(ST15)。
(5)ST15で得られたPreset0~9のうち、所望とするPresetに対応するCursor値を設定し、設定したCursor値で応答時間の試験を行うためのビットを設定して応答時間を測定する(ST16)。
【0006】
なお、各Cursor値は、予め被測定物と誤り率測定装置がそれぞれ持っており、Preset0~9の各Preset毎に任意に設定可能である。このため、各Cursor値は、被測定物と誤り率測定装置がお互いどの値を持っているか判らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の誤り率測定装置では、1回のリンクトレーニングに対して1つずつのPresetの試験を行う必要があり、リンクトレーニングの都度Cursor値を取得していた。このため、Cursorによる試験を行うためには、まず事前にPresetによる試験を10回繰り返さなければならず、操作が煩雑なだけでなく、時間を要するという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、Cursorによる試験を行うための操作回数を低減して時間の短縮を図ることができる誤り率測定装置およびパラメータ取得方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された誤り率測定装置は、リンクの状態を管理するためのリンクトレーニング中にパラメータ値の変更指示があったときの応答時間を測定する誤り率測定装置1であって、
少なくとも1回のリンクトレーニング中のRecovery Equalization Phase2または3の状態で前記パラメータ値として全てのPresetへの変更指示を被測定物Wに順次送信するデータ送信部11と、
前記データ送信部から順次送信される変更指示による前記全てのPresetに対応するそれぞれのCursor値を前記被測定物から順次受信して取得するデータ受信部13と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に記載された誤り率測定装置のパラメータ取得方法は、リンクの状態を管理するためのリンクトレーニング中にパラメータ値の変更指示があったときの応答時間を測定する誤り率測定装置のパラメータ取得方法であって、
少なくとも1回のリンクトレーニング中のRecovery Equalization Phase2または3の状態で前記パラメータ値として全てのPresetへの変更指示を被測定物Wに順次送信するステップと、
前記順次送信される変更指示による前記全てのPresetに対応するそれぞれのCursor値を前記被測定物から順次受信して取得するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リンクトレーニング中に被測定物に対してパラメータ値の変更指示があってから実際に指示されたパラメータ値に変更されるまでの応答時間を測定するにあたって、Cursorによる試験を行うための操作回数を低減して時間の短縮を図ることができる。これにより、例えば複数の被測定物のCursor試験のみを連続して行いたい場合などに、作業が効率化でき有用である。さらに、1回のリンクトレーニング中に行えば、一段と作業の効率化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る誤り率測定装置と被測定物との接続構成の概略を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係る誤り率測定装置のパラメータ取得方法を含む試験手順を示すフローチャートである。
【
図3】本発明に係る誤り率測定装置が被測定物から取得するPresetに対応するCursor値の一例を示す図である。
【
図4】本発明に係る誤り率測定装置と被測定物との他の接続構成の概略を示すブロック図である。
【
図5】リンク状態管理機構の一例であって、LTSSMの状態遷移図である。
【
図6】従来のパラメータ取得方法を含む試験手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
[本発明の概要について]
本発明に係る誤り率測定装置は、例えば拡張バスや拡張スロットの接続規格であるPCIeの規格に準拠したデバイスを被測定物(DUT)とし、被測定物を信号パターン折り返しのステート(
図5のLTSSMの「Loopback」ステート)に遷移させた状態で固定データを含む既知パターンのテスト信号を被測定物に送信し、このテスト信号の送信に伴って被測定物から折り返して受信した被測定信号と基準となる参照信号とをビット単位で比較してビット誤り率を測定するものである。
【0016】
特に、本発明は、リンクの状態を管理するためのリンクトレーニング中に被測定物に対してパラメータ値(Preset:プリセットまたはCursor:カーソル)の変更指示があってから実際に指示されたパラメータ値に変更されるまでの応答時間を測定するにあたって、Cursorによる試験を行うための操作回数を低減して時間の短縮を図ることを目的としている。
【0017】
なお、パラメータ値は、予め被測定物と誤り率測定装置がそれぞれ持っており、Transmitter Equalizationの量を決めるための値である。具体的には、例えばタップ毎の振幅(プリシュート、ディエンファシスのエンファシス量)に対応したパラメータ値として、Preset0~9と、Preset0~9の各Presetに対応するCursor値とがある。各Cursor値は、Preset0~9の各Preset毎に任意に設定可能であり、被測定物と誤り率測定装置がお互いどの値を持っているか判らないものである。
【0018】
図1に示すように、誤り測定装置1は、上記目的を達成するため、設定部2、パターン発生器3、エラー検出器4を備えて概略構成され、リンクの状態を管理するための1回のリンクトレーニング中に被測定物Wに対してパラメータ値(Preset0~9)の変更指示を全て送信し、それらに対応するCursor値を一度に全て取得する機能を有する。なお、この動作は、1回のリンクトレーニング中に限られず、複数回のリンクトレーニング中であってもよい。
【0019】
図1に示すように、被測定物Wは、リンク状態を管理するリンク状態管理機構として、
図5のLTSSM(Link Training and Status State Machine)によるリンク状態管理部W1を搭載し、データ受信部W2、データ送信部W3を備えて概略構成される。以下、被測定物Wと誤り率測定装置1の各構成について説明する。
【0020】
[被測定物の構成について]
データ受信部W2は、応答時間の試験(Tx Link Equalization Response Time test)を行う際に、リンクの状態を管理するためのリンクトレーニング中に誤り率測定装置1のパターン発生器3からのパラメータ値(PresetまたはCursor)の変更指示を受信する。
【0021】
また、データ受信部W2は、ビット誤り率の測定を行う際に、信号パターン折り返しのステート(
図5のLTSSMの「Loopback」ステート)に遷移させた状態で固定データを含む既知パターンのテスト信号を誤り率測定装置1のパターン発生器3から受信する。
【0022】
データ送信部W3は、応答時間の試験を行う際に、データ受信部W2が誤り率測定装置1のパターン発生器3からパラメータ値として1回のリンクトレーニング中に順次送信される全てのPreset(Preset0~9)の変更指示を受信すると、この受信した全てのPreset(Preset0~9)に対応するそれぞれのCursor値のデータを誤り率測定装置1に順次送信する。すなわち、誤り率測定装置1が被測定物WにPreset0の変更指示を送信してPreset0に対応するCursor値を被測定物Wが誤り率測定装置1に返信するという手順を、Preset0~9まで1回のリンクトレーニング中に繰り返し行う。なお、この動作は、1回のリンクトレーニング中に限られず、複数回のリンクトレーニング中であってもよい。
【0023】
また、データ送信部W3は、ビット誤り率の測定を行う際に、データ受信部W2が誤り率測定装置1のパターン発生器3から既知パターンのテスト信号を受信すると、この受信したテスト信号に対する応答信号を被測定信号として誤り率測定装置1に折り返して送信する。
【0024】
[誤り率測定装置の構成について]
設定部2は、ビット誤り率の測定に関わる各種設定を行う。具体的に、設定部2は、パラメータ値としてのPresetによる応答時間の試験を行うため、測定条件としてのPresetの初期値とPresetの測定回数を設定する。例えば、Presetの初期値を「0」、Presetの測定回数を「2」と設定した場合には、Preset0,1による応答時間の試験を1回のリンクトレーニング中に行う。また、Presetの初期値を「3」、Presetの測定回数を「5」と設定した場合には、Preset3,4,5,6,7による応答時間の試験を1回のリンクトレーニング中に行う。なお、この動作は、1回のリンクトレーニング中に限られず、複数回のリンクトレーニング中であってもよい。
【0025】
また、設定部2は、後述するパラメータ取得方法を含む試験手順に基づいて被測定物Wから取得したパラメータ値としてPreset0~9の何れかに対応するCursor値の設定、設定したCursor値による応答時間の試験を行うためのビットを設定する。
【0026】
パターン発生器3は、例えばPCIeのLTSSMの状態に基づくトレーニングシーケンスや既知パターンによるデータを発生するもので、データ送信部11とトリガ発生部12を含む。
【0027】
データ送信部11は、パラメータ値(PresetまたはCursor)による応答時間の試験を行う際に、エラー検出器4の後述するリンク状態管理部13aからの指示により、パラメータ値による応答時間の試験に必要なトレーニングシーケンス(Training Sequence Ordered Sets:TS OS )を発生する。
【0028】
トレーニングシーケンスは、誤り率測定装置1と被測定物Wがパラメータをやり取りするためのデータパターン列であり、被測定物Wに対してパラメータ値(PresetまたはCursor)の変更を指示するデータ、設定部2にて設定される測定条件としてのPresetの初期値とPresetの測定回数のデータ、設定部2にて設定されるPreset0~9の何れかに対応するCursor値のデータ、設定したCursor値による応答時間の試験を行うためのビットのデータなどが含まれる。
【0029】
データ送信部11は、被測定物Wがループバックに遷移した状態で被測定物Wのビット誤り率を測定する際に、被測定物Wに入力する既知パターンとして、PRBS(疑似ランダム・ビット・シーケンス)パターンや任意のプログラマブルパターンによるパターン信号(テスト信号)を発生する。
【0030】
トリガ発生部12は、タイミング信号としてのトリガを発生する。このトリガは、データ送信部11がパラメータ値(PresetまたはCursor)の変更指示のデータを含むトレーニングシーケンスを発生した時点で生成され、外部のケーブルまたは内部配線を介してエラー検出器4の後述するデータ受信部13に入力される。
【0031】
エラー検出器4は、被測定物Wからのデータを受信してエラーを検出するもので、データ受信部13、記憶部14、表示部15を含む。
【0032】
データ受信部13は、パターン発生器3のトリガ発生部12からトリガが入力しており、リンクトレーニング中に被測定物Wに対してパラメータ値(PresetまたはCursor)の変更指示があってから実際に指示されたパラメータ値に変更されるまでの応答時間を測定する機能を有し、リンク状態管理部13aとエラー検出部13bを備える。
【0033】
データ受信部13は、パターン発生器3のトリガ発生部12から入力されるトリガを起点として、パターン発生器3のデータ送信部11が被測定物Wに対してパラメータ値(PresetまたはCursor)の変更指示を送信した時間(パラメータ値変更指示送信時間)を測定し、測定した時間をログ情報として記憶部14に記憶する。
【0034】
データ受信部13は、パターン発生器3からのパラメータ値(PresetまたはCursor)の変更指示に従って実際にパラメータ値が変更された被測定物Wからデータを受信した時間(データ受信時間)を測定し、上述したパラメータ値変更指示送信時間からデータ受信時間までの応答時間を測定して測定したデータ受信時間および応答時間をログ情報として記憶部14に記憶する。
【0035】
リンク状態管理部13aは、被検査物Wに搭載されたリンク状態管理部W1と同一または同等の機構としてLTSSMを有し、使用する規格(例えばPCIe)に従って動作する。
【0036】
リンク状態管理部13aは、被測定物W(データ受信部W2、データ送信部W3)との間で通信されるトレーニングシーケンスにより、被測定物Wのリンク状態管理部W1の現在のリンク状態を認識する。具体的には、LTSSM値、リンク速度、ループバックの有無、LTSSMの遷移パターン、レーンを識別するためのレーン番号、リンク番号、パターン信号の発生時間や発生回数、エンファシス量、受け側のイコライザの調整値などの各種情報を得る。
【0037】
リンク状態管理部13aは、誤り率測定装置1と被測定物Wとの間の通信において、パターン発生器3からの被測定物Wの現在のリンク状態を把握するためのトレーニングシーケンスの送信に伴って被測定物Wのデータ送信部W3から受信するトレーニングシーケンスにより被測定物Wの現在のリンク状態を管理し、被測定物Wの現在のLTSSMの状態に応じて次に発生すべきトレーニングシーケンスをパターン発生器3のデータ送信部11に指示する。
【0038】
エラー検出部13bは、ビット誤り率測定を行う際、被測定物Wがループバックに遷移している状態において、パターン発生器3のデータ送信部11が発生する既知パターンのテスト信号と、このテスト信号の入力に伴って被検査物Wから折り返して入力されるパターン信号とを比較してビット誤り率を検出する。
【0039】
記憶部14は、LTSSMのRecovery Equalization Phase2または3の状態でパラメータ値(Preset0~9)の変更指示に伴って被測定物Wから取得したパラメータ値(Preset0~9に対応するそれぞれのCursor値(プリカーソル:C-1、メインカーソル:C0、ポストカーソル:C+1))、データ受信部13にて測定したパラメータ値変更指示送信時間、データ受信時間、応答時間をログ情報として記憶する他、エラー検出部13bにて検出したビット誤り率、ビット誤り測定に関する各種設定情報、リンク状態管理部13aが管理するLTSSM値やリンク速度を含む各種情報などを記憶する。
【0040】
表示部15は、例えば液晶などの表示器からなり、被測定物Wから取得したパラメータ値(例えば
図3に示すようなPreset0~9に対応するそれぞれのCursor値(C-1、C0、C+1))、データ受信部13にて測定した応答時間(記憶部14に記憶された応答時間を含む)、エラー検出部13bにて検出したビット誤り率などを含む測定結果、ビット誤り測定に関わる各種設定画面などを表示する。
【0041】
[応答時間の測定手順について]
次に、上記のように構成される誤り測定装置1によるパラメータ取得方法を含む応答時間の測定手順について
図2を参照しながら説明する。ここでは、リンクの状態を管理するためのリンクトレーニング中に被測定物Wに対してパラメータ値としてPreset0~9の変更指示があってから実際に指示されたPresetに変更されるまでの応答時間を測定する場合を例にとって説明する。
【0042】
まず、測定条件としてのPresetの初期値とPresetの測定回数を設定する(ST1)。ここでは、パラメータ値としてPreset0~9全てのPresetによる応答時間の試験を行ってPreset0~9全てに対応するCursorを取得するため、Presetの初期値:「0」、Presetの測定回数:「10」をそれぞれ設定する。
【0043】
パターン発生器3のデータ送信部11は、エラー検出器4のリンク状態管理部13aからの指示により、PCIeのトレーニングシーケンスに基づき被測定物Wに対してパラメータ値として全てのPreset(Preset0~9)の変更を指示するデータを含むトレーニングシーケンスを発生し、被測定物Wをループバック状態に設定するためのリンクトレーニングを開始する(ST2)。
【0044】
なお、各Preset(Preset0~9)の変更指示はミリセックオーダーで行うことが規格で決められている。このため、例えばPreset0の変更を指示するデータを含むトレーニングシーケンスを被測定物Wに送信した場合には、ミリセックオーダーで次のPreset1の変更を指示するデータを含むトレーニングシーケンスが被測定物Wに送信される。
【0045】
パターン発生器3のデータ送信部11は、リンクトレーニングを開始すると、1回のリンクトレーニング中にLTSSMのRecovery Equalization Phase2または3の状態で被測定物Wに対するPresetの変更指示を設定部2にて設定された測定条件(Presetの初期値とPresetの測定回数)に従って被測定物Wのパラメータ値として全てのPreset(Preset0~9)の変更を順次指示する(ST3)。なお、この動作は、1回のリンクトレーニング中に限られず、複数回のリンクトレーニング中であってもよい。
【0046】
そして、被測定物Wは、パターン発生器3のデータ送信部11からパラメータ値として全てのPreset(Preset0~9)の変更の指示を順次受信すると、受信した指示に従って該当するパラメータ値としてのPresetを変更する。すなわち、被測定物Wは、パターン発生器3のデータ送信部11からパラメータ値としてPreset0→Preset1→Preset2→…→Preset8→Preset9の順番に変更の指示を順次受信すると、Preset0→Preset1→Preset2→…→Preset8→Preset9の順番にパラメータ値を順次変更する。
【0047】
このとき、エラー検出器4のデータ受信部13は、パターン発生器3のトリガ発生部12から入力されるトリガを起点として、パターン発生器3のデータ送信部11が被測定物Wに対してパラメータ値として全てのPreset(Preset0~9)の変更指示を送信した時間(パラメータ値変更指示送信時間)を測定し、測定した時間を記憶部14に記憶する。
【0048】
そして、エラー検出器4のデータ受信部13は、被測定物Wが実際に指示されたパラメータ値としてPreset0~9それぞれに変化するまでの応答時間を測定し(ST4)、測定したそれぞれの応答時間を記憶部14に記憶する。
【0049】
このとき、被測定物Wは、順次変更を指示されたパラメータ値としてPreset0~9に対応するそれぞれのCursor値を誤り率測定装置1に返送し、返送されたそれぞれのCursor値を誤り率測定装置1(記憶部14)が保持する(ST5)。
【0050】
ここで、
図3は指示されたパラメータ値:Preset0~9に対応するそれぞれのCursor値の一例を示す。なお、
図3ではPreset0~9をP0~9として表記し、C-1、C、C+1の合計値が63となるようにPreset0~9に対応するそれぞれのCursor値が予め被測定物Wに設定されている。
図3において、例えば指示されたパラメータ値がPreset5の場合には、Preset5に対応するCursor値としてC-1:6、C:57、C+1:0が被測定物Wから返送される。また、指示されたパラメータ値がPreset7の場合には、Preset7に対応するCursor値としてC-1:7、C:45、C+1:11が被測定物Wから返送される。
【0051】
そして、エラー検出器4は、ST5で得られたPreset0~9のうち、所望とするPresetに対応するCursor値を設定部2にて設定するとともに、設定したCursor値で応答時間の試験を行うためのビットを設定部2にて設定してCursor値による応答時間を測定する(ST6)。
【0052】
[他の接続構成について]
ところで、
図1の接続構成に代えて、
図4の接続構成でも同様にパラメータ値(PresetまたはCursor)による応答時間の試験を行うことができる。なお、
図4において、
図1と同一または同等の構成要素には同一番号を付している。また、特に図示はしないが、
図4の誤り率測定装置1は、パターン発生器3が
図1のデータ送信部11とトリガ発生部12の機能を備え、エラー検出器4がデータ受信部13、記憶部14、表示部15の機能を備えている。なお、データ送信部11は、1回のリンクトレーニング中にRecovery Equalization Phase2または3の状態でパラメータ値として全てのPresetへの変更指示を被測定物Wに順次送信する機能を有する。また、データ受信部13は、データ送信部11から順次送信される変更指示による全てのPresetに対応するそれぞれのCursor値を被測定物Wから順次受信して取得する機能を有する。なお、この動作は、1回のリンクトレーニング中に限られず、複数回のリンクトレーニング中であってもよい。
【0053】
図4の接続構成では、計測器としての誤り率測定装置1のパターン発生器3と波形測定装置(例えばオシロスコープなど)21との間をケーブルで接続し、パターン発生器3からケーブルを介して波形測定装置21にトリガを入力する。また、誤り率測定装置1のパターン発生器3は、被測定物Wと波形測定装置21に対し、ディバイダ22を介してそれぞれケーブルで接続する。さらに、誤り率測定装置1のエラー検出器4は、被測定物Wと波形測定装置21に対し、ディバイダ23を介してそれぞれケーブルで接続する。
【0054】
図4の接続構成でパラメータ値(PresetまたはCursor)による応答時間の試験を行う場合には、誤り率測定装置1のパターン発生器3が送信するデータ(パラメータ値としてPreset0~9の全ての変更を指示するデータまたは被測定物Wから取得するPreset0~9の何れかのPresetに対応するCursor値の変更を指示するデータを含む)をディバイダ22により2つに分岐する。このディバイダ22により分岐したデータは、一方が波形測定装置21に入力され、他方が被測定物Wに入力される。そして、被測定物Wが送信するデータ(パラメータ値としてPreset0~9の全てに変更したデータ、Preset0~9に対応するそれぞれのCursor値を含む)をディバイダ23により2つに分岐する。このディバイダ23により分岐したデータは、一方が被測定物Wとリンクトレーニングを行うために誤り率測定装置1のエラー検出器4に入力され、他方がパラメータ値の変化を観測するための波形測定装置21に入力される。そして、波形測定装置21で取得したデータの波形をデコードすることにより、被測定物Wがパラメータ値(PresetまたはCursor)の変更の指示を受けてから実際にパラメータ値(PresetまたはCursor)を変更するまでの応答時間を測定する。
【0055】
また、上述した実施の形態では、規格としてPCIeを例にとって説明したが、被測定物Wとの間のリンクトレーニング中に被測定物Wに対してパラメータ値の変更指示があったときの応答時間の測定が要求される規格であれば、PCIeのみに限定されるものではない。
【0056】
このように、本実施の形態によれば、少なくとも1回のリンクトレーニング中のRecovery Equalization Phase2または3の状態でパラメータ値としてPreset0~9への変更指示を全て送信し、それらに対応するCursor値を一度に全て取得する構成なので、従来の手法ではCursorによる試験を行う前にPresetで10回の試験が必要であったのに対し、Preset1回の試験でCursorによる試験が可能となり、操作回数が低減できるとともに、測定時間が短縮できる。これにより、例えば複数の被測定物のCursor試験のみを連続して行いたい場合などに、作業が効率化でき有用である。さらに、被測定物に対してパラメータ値(Preset0~9)の変更指示を全て送信し、それらに対応するCursor値を一度に全て取得する動作を1回のリンクトレーニング中に行えば、一段と作業の効率化が可能である。
【0057】
以上、本発明に係る誤り率測定装置およびパラメータ取得方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 誤り率測定装置
2 設定部
3 パターン発生器
4 エラー検出器
11 データ送信部
12 トリガ発生部
13 データ受信部
13a リンク状態管理部(LTSSM)
13b エラー検出部
14 記憶部
15 表示部
21 波形測定装置
22,23 ディバイダ
W 被測定物(DUT)
W1 リンク状態管理部(LTSSM)
W2 データ受信部
W3 データ送信部