(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041042
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20220304BHJP
F04D 29/62 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
F04D29/28 K
F04D29/62 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146046
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楳山 亮
(72)【発明者】
【氏名】中根 芳之
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB27
3H130AB47
3H130AC14
3H130BA34C
3H130BA34D
3H130CB05
3H130CB11
3H130EA04C
3H130EA04D
3H130EB01C
3H130ED02C
3H130ED02D
(57)【要約】
【課題】インペラに過度な締付け力が作用するのを抑制可能な遠心圧縮機を提供すること。
【解決手段】遠心圧縮機は、回転軸310と、インペラ100と、を備える。インペラ100は、外周面112と背面114とざぐり部116とを有するハブ110と、複数のブレード120と、ざぐり部116を閉塞するようにハブ110に固定された蓋130と、を有する。ハブ110には、背面114からざぐり部116に通じる貫通孔110hが形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸にナットで固定されており前記回転軸と一体回転するインペラと、を備える遠心圧縮機であって、
前記インペラは、
前記回転軸の一方側から他方側に向かうにしたがって次第に拡径する形状を有する外周面と、前記他方側に形成された背面と、前記回転軸の先端部及び前記ナットを収容するざぐり部と、を有するハブと、
前記ハブの前記外周面に設けられた複数のブレードと、
前記ざぐり部を閉塞するように前記ハブに固定された蓋と、を有し、
前記ハブには、前記背面から前記ざぐり部に通じる貫通孔が形成されている、遠心圧縮機。
【請求項2】
前記蓋には、当該蓋を貫通する開口が形成されている、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記開口の面積は、前記貫通孔の面積よりも小さい、請求項2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記背面のうち前記ざぐり部と前記回転軸の軸方向に重なる部位よりも外側の部位と前記ざぐり部とを連通する、請求項1から3のいずれかに記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記背面のうち前記ざぐり部と前記回転軸の軸方向に重なる部位と前記ざぐり部とを連通する、請求項1から3のいずれかに記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2017-180268号公報には、インペラと、インペラに接続された回転軸と、を備える遠心圧縮機が開示されている。回転軸の先端部は、インペラの吸込み側に突出しており、この先端部にナットが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2017-180268号公報に記載されるような遠心圧縮機が駆動されると、インペラの吐出側の温度は、インペラの吸込み側の温度よりも高くなる。そうすると、回転軸及びボルトの温度がインペラの温度よりも低くなるため、回転軸、ナット、及びインペラのそれぞれの熱膨張係数によっては、インペラに過度な締付け力が生じる懸念がある。
【0005】
本発明の目的は、インペラに過度な締付け力が作用するのを抑制可能な遠心圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一局面に従った遠心圧縮機は、回転軸と、前記回転軸にナットで固定されており前記回転軸と一体回転するインペラと、を備える遠心圧縮機であって、前記インペラは、前記回転軸の一方側から他方側に向かうにしたがって次第に拡径する形状を有する外周面と、前記他方側に形成された背面と、前記回転軸の先端部及び前記ナットを収容するざぐり部と、を有するハブと、前記ハブの前記外周面に設けられた複数のブレードと、前記ざぐり部を閉塞するように前記ハブに固定された蓋と、を有し、前記ハブには、前記背面から前記ざぐり部に通じる貫通孔が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、インペラに過度な締付け力が作用するのを抑制可能な遠心圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の遠心圧縮機の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態の遠心圧縮機の構成を概略的に示す図である。
図1に示されるように、遠心圧縮機1は、インペラ100と、タービンホイール200と、回転軸310と、ナット315と、モータ320と、軸受け330と、ケーシング400と、を備えている。
【0011】
回転軸310は、インペラ100とタービンホイール200とを接続している。この回転軸310は、モータ320により回転駆動される。回転軸310は、軸受け330で受けられている。なお、モータ320は、ロータと、ステータ(図示略)と、を有している。
【0012】
ケーシング400は、インペラ100、タービンホイール200、回転軸310、モータ320及び軸受け330を収容している。ケーシング400は、コンプレッサハウジング410と、タービンハウジング420と、センターハウジング430と、を有している。
【0013】
コンプレッサハウジング410は、インペラ100を収容している。コンプレッサハウジング410は、吸込み口411と、吐出部412と、を有している。コンプレッサハウジング410内におけるインペラ100の吐出側には、ディフューザ(図示略)が設けられている。
【0014】
タービンハウジング420は、タービンホイール200を収容している。タービンハウジング420は、吸込み部421と、排出口422と、を有している。
【0015】
センターハウジング430は、コンプレッサハウジング410とタービンハウジング420との間に配置されている。センターハウジング430は、モータ320と軸受け330とを収容している。
【0016】
センターハウジング430は、リアハウジング440を有している。リアハウジング440は、インペラ100と軸受け330との間に設けられている。
図2に示されるように、リアハウジング440は、インペラ100と対向する対向面442を有している。対向面442は、平坦に形成されている。
【0017】
インペラ100は、吸込み口411から吸い込まれたガス(例えば空気)を吐出部412から吐出させる。
図2に示されるように、インペラ100は、ハブ110と、複数のブレード120と、蓋130と、を備えている。インペラ100は、回転軸310にナット315で固定されている。インペラ100は、回転軸310と一体回転する。
【0018】
ハブ110は、回転軸310まわりに回転可能である。ハブ110は、外周面112と、背面114と、ざぐり部116と、を有している。
【0019】
外周面112は、回転軸310の軸方向における一方側(
図2における上側)から他方側(
図2における下側)に向かうにしたがって次第に拡径する形状を有する部位を含んでいる。換言すれば、外周面112は、吸込み側の端部から吐出側の端部に向かうにしたがって次第に当該外周面112の外径が大きくなる形状を有する部位を含んでいる。前記部位は、前記一方側から前記他方側に向かうにしたがって回転軸310の軸芯Aに近づく向きに凸となるように湾曲する形状を有している。
【0020】
背面114は、回転軸310と直交している。背面114は、前記他方側(吐出側)に形成されている。背面114は、平坦に形成されている。
【0021】
ざぐり部116は、ハブ110の一方側(吸込み側)から背面114に向かって窪む形状を有している。ざぐり部116は、回転軸310の先端部を収容している。回転軸310の先端部には、ナット315が接続されている。このため、ざぐり部116内には、回転軸310の先端部及びナット315が収容されている。ざぐり部116は、底面116aと、内周面116bと、を有している。
【0022】
底面116aは、平坦に形成されている。底面116aは、円形に形成されている。底面116aは、回転軸310と直交している。
【0023】
内周面116bは、円筒状に形成されている。内周面116bは、底面116aの縁部から軸芯Aと平行な方向に起立する形状を有している。内周面116bには、凹部116b1が形成されている。
【0024】
図2に示されるように、ハブ110には、背面114からざぐり部116に通じる貫通孔110hが形成されている。貫通孔110hは、背面114のうちざぐり部116と回転軸310の軸方向に重なる部位よりも外側の部位とざぐり部116とを連通している。貫通孔110hにおけるざぐり部116側の開口端は、内周面116bに形成されている。
【0025】
各ブレード120は、ハブ110の外周面112に設けられている。各ブレード120は、外周面112のうち前記一方側の端部の近傍から他方側の端部に至るように延びる形状を有している。各ブレード120は、ハブ110の回転方向に向けて傾倒している。
【0026】
蓋130は、ざぐり部116を閉塞するようにハブ110に固定されている。より詳細には、蓋130は、当該蓋130とざぐり部116とにより形成される空間S(
図2を参照)に回転軸310の先端部及びナット315が位置するようにざぐり部116の内周面116bの凹部116b1に圧入されている。蓋130は、円板状に形成されている。蓋130は、前記空間Sをインペラ100の吸込み側から熱的に遮断している。蓋130は、断熱材からなることが好ましい。あるいは、蓋130の内面及び外面の少なくとも一方に、断熱部材が設けられることが好ましい。
【0027】
図2に示されるように、蓋130には、当該蓋130を貫通する開口130hが形成されている。開口130hは、蓋130のうち軸芯Aを含む部位に形成されている。この開口130hの面積は、貫通孔110hの面積(総面積)よりも小さい。これにより、空間Sの圧力が減少するため、インペラ100に作用するスラスト荷重F(
図2において矢印で示される荷重)が低減される。
【0028】
以上に説明したように、本実施形態の遠心圧縮機1のインペラ100では、ざぐり部116が蓋130で閉塞されており、かつ、貫通孔110hを通じてハブ110の背面114とざぐり部116とが連通しているため、ざぐり部116と蓋130とにより形成される空間Sの温度は、ハブ110の一方側(吸込み側)の温度よりも高温となるハブ110の他方側(吐出側)の温度、つまり、ハブ110の背面114側の温度とほぼ同じ温度となる。このため、ざぐり部116内に位置する回転軸310及びナット315とインペラ100との温度差が小さくなる。よって、回転軸310、ナット315及びインペラ100のそれぞれの熱膨張係数の差に起因するインペラ100の過度な締め付けが抑制される。
【0029】
また、蓋130は、ざぐり部116の凹部116b1に圧入されているため、蓋130のハブ110からの離脱が抑制される。
【0030】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0031】
例えば、
図3に示されるように、貫通孔110hは、背面114のうちざぐり部116と回転軸310の軸方向に重なる部位とざぐり部116とを連通してもよい。
【0032】
また、開口130hの面積が貫通孔110hの面積よりも小さくなるのであれば、開口130hの位置や、向きや数は、上記の例に限られない。
【0033】
[態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0034】
この開示の一局面に従った遠心圧縮機は、回転軸と、前記回転軸にナットで固定されており前記回転軸と一体回転するインペラと、を備える遠心圧縮機であって、前記インペラは、前記回転軸の一方側から他方側に向かうにしたがって次第に拡径する形状を有する外周面と、前記他方側に形成された背面と、前記回転軸の先端部及び前記ナットを収容するざぐり部と、を有するハブと、前記ハブの前記外周面に設けられた複数のブレードと、前記ざぐり部を閉塞するように前記ハブに固定された蓋と、を有し、前記ハブには、前記背面から前記ざぐり部に通じる貫通孔が形成されている。
【0035】
この遠心圧縮機のインペラでは、ざぐり部が蓋で閉塞されており、かつ、貫通孔を通じてハブの背面とざぐり部とが連通しているため、ざぐり部と蓋とにより形成される空間の温度は、ハブの一方側(吸込み側)の温度よりも高温となるハブの他方側(吐出側)の温度、つまり、ハブの背面側の温度とほぼ同じ温度となる。このため、ざぐり部内に位置する回転軸及びナットとインペラとの温度差が小さくなる。よって、回転軸、ナット及びインペラのそれぞれの熱膨張係数の差に起因するインペラの過度な締め付けが抑制される。
【0036】
また、前記蓋には、当該蓋を貫通する開口が形成されていることが好ましい。
【0037】
このようにすれば、前記空間の圧力が減少するため、インペラに作用するスラスト荷重が低減される。
【0038】
また、前記開口の面積は、前記貫通孔の面積よりも小さいことが好ましい。
【0039】
このようにすれば、インペラの吐出側(ハブの背面側)から貫通孔と開口とを通じてインペラの吸込み側に向かう流れが形成されるのが抑制される。
【0040】
例えば、前記貫通孔は、前記背面のうち前記ざぐり部と前記回転軸の軸方向に重なる部位よりも外側の部位と前記ざぐり部とを連通してもよい。
【0041】
ハブの背面側においては、ハブの径方向に沿って回転軸から離間するにしたがって次第に流体の圧力及び温度が高くなるため、この態様では、ざぐり部内に位置する回転軸及びナットとインペラとの温度差がより小さくなる。
【0042】
あるいは、前記貫通孔は、前記背面のうち前記ざぐり部と前記回転軸の軸方向に重なる部位と前記ざぐり部とを連通してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 遠心圧縮機、100 インペラ、110 ハブ、110h 貫通孔、112 外周面、114 背面、116 ざぐり部、116a 底面、116b 内周面、116b1 凹部、120 ブレード、130 蓋、130h 開口、200 タービンホイール、310 回転軸、315 ナット、320 モータ、330 軸受け、400 ケーシング、410 コンプレッサハウジング、420 タービンハウジング、430 センターハウジング、440 リアハウジング、442 対向面、A 軸芯。