IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パイロットコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-シャープペンシル用チャック 図1
  • 特開-シャープペンシル用チャック 図2
  • 特開-シャープペンシル用チャック 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041066
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】シャープペンシル用チャック
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/22 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
B43K21/22 A
B43K21/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146080
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】横須賀 極一郎
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353FC11
2C353FC19
2C353FC22
(57)【要約】
【課題】芯保持部にネジ部を容易に形成できるとともに、長期に渡り芯保持力が低下することなく確実に芯を保持可能なシャープペンシル用チャックを提供すること。
【解決手段】芯保持部11が複数に分割され、楔作用により芯保持部11で芯5を保持し、芯保持部11に、基準面12から凹んだ凹部15と当該凹部15分の構成材料で凸状に形成された凸部14とを長手方向に沿って連続的に備えたネジ部13を有し、凸部14の頂部に尖部16を形成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯保持部が複数に分割され、楔作用により当該芯保持部で芯を保持するシャープペンシル用チャックであって、
前記芯保持部に、基準面から凹んだ凹部と当該凹部分の構成材料で凸状に形成された凸部とを長手方向に沿って連続的に備えたネジ部を有し、
前記凸部の頂部に尖部が形成されたことを特徴とするシャープペンシル用チャック。
【請求項2】
前記凸部は、長手方向に沿った断面において前後方向に分断され、分断された各々の凸部の頂部に尖部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシル用チャック。
【請求項3】
前記基準面と前記凸部で囲まれた容積より前記基準面と前記凹部で囲まれた容積の方が大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のシャープペンシル用チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯の保持を確実に行うために芯保持部にネジ部を形成したシャープペンシル用チャックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チャックの芯保持部内面にピッチの異なる2種類のネジ溝を形成することにより、長期に渡って芯を確実に保持可能なシャープペンシル用チャックが知られている。(特許文献1参照)
【0003】
特許文献1のシャープペンシル用チャックでは、1次タップ加工で形成した平坦部をピッチの異なる2次タップ加工で更にネジ加工を施すため、芯保持部の平坦部を極小幅に形成できるとともに頂部に形成した平坦な角部を鋭角に形成することで、長期に渡って使用するなかでも芯保持力を維持することができる。
【0004】
しかしながら、上記シャープペンシル用チャックでは、ネジ溝の形成をピッチの異なるタップで2回に分けて施工していることから、加工コストが高くなるという課題があり、また、2回のタップ加工を施すため、特に2回目のタップ加工において発生する切り粉の除去に手間が掛かるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-43287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の背景をもとになされたものであり、その目的とするところは、芯保持部にネジ部を容易に形成できるとともに、長期に渡り芯保持力が低下することなく確実に芯を保持可能なシャープペンシル用チャックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、芯保持部が複数に分割され、楔作用により当該芯保持部で芯を保持するシャープペンシル用チャックであって、前記芯保持部に、基準面から凹んだ凹部と当該凹部分の構成材料で凸状に形成された凸部とを長手方向に沿って連続的に備えたネジ部を有し、前記凸部の頂部に尖部が形成されたことを特徴とするシャープペンシル用チャックである。
【0008】
本発明によれば、ネジ部の凸部は、凹部分の構成材料により形成されていることから、加工時に切り粉などの廃材がでないため加工コストが安く加工も容易である。また、凸部の頂部には尖部が形成されているため、尖部で芯をしっかり保持できることから安定した芯保持力が維持され、長期に渡って確実に芯を保持することができる。
【0009】
尚、本発明のネジ部を加工する方法としては、転造タップ加工(肉盛り加工)として例えばロールタップ加工などが好適である。ロールタップ加工では、塑性変形により凹部の構成材料を凸部に転造させてネジ部を形成するため、ネジ部加工時に切り粉が発生することがない。このため、加工後に切り粉の除去をする必要がなく、非常に低コストでネジ部の加工を行うことができると共に切り粉が残ることにより、芯保持部における芯の移動や芯の保持に影響ができることを防止できる。
【0010】
また、凸部は、長手方向に沿った断面において前後方向に分断され、分断された各々の頂部に尖部を備えてもよく、この場合、凸部に2つの尖部が形成されるため、芯保持部で芯をより確実に保持することができるようになることから好適である。
【0011】
さらに、基準面と凹部で囲まれた容積より基準面と凸部で囲まれた容積の方が小さくなるよう構成してもよく、この場合、凸部は基準面と凹部で囲まれた容積分の構成材料で形成されていることから、密度が高くなることで凸部の硬度を向上させることができる。このため、凸部の耐久性が向上することで長期に渡って安定した芯保持力で芯を保持することができる。
【0012】
また、少なくとも芯保持部の表面に無電解メッキ層が形成されていてもよく、この場合、メッキ層により芯保持部の高尖部および低尖部の両尖部の摩耗が抑制されるため、より長期に渡って芯保持力を維持することができることから好適である。
尚、チャックに施す無電解メッキとしては、ニッケル-燐メッキ、又はニッケル-ボロンメッキ等が好適に使用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、芯保持部にネジ部を容易に形成できるとともに、長期に渡り芯保持力が低下することなく確実に芯を保持可能なシャープペンシル用チャックを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のシャープペンシル用チャックを示す縦断面図である。
図2図1の要部(ネジ部)を拡大した拡大断面図である。
図3図1の実施形態のシャープペン用チャックで芯を保持した状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1及び図2に基づいて本発明における実施例1のシャープペンシル用チャックを説明する。また、図1の左側を前方とし右側を後方とすると共に芯保持部の凹部や凸部がある軸心側を内方と表現しその反対側を外方と表現する。図1はシャープペンシル用チャック1を示す縦断面図であり、図2図1の要部(ネジ部)を拡大した拡大断面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、シャープペンシル用チャック1(以降チャック1と表現)は、前部に複数に分割(本実施形態ではすり割り加工により2分割)された芯保持部11を有している。また、芯保持部11の内周面12(本発明における基準面)にはネジ部13が形成され、ネジ部13は、図2に示すように、内周面12(基準面)から内方に向かって突出する凸部14と外方へ向かって凹む凹15とが形成してある。そして、凸部14は、前後方向に分断されており、分断された各々の頂部に尖部16(前方尖部16a、後方尖部16b)が形成されている。
【0017】
尚、具体的にはチャック1は黄銅で形成してあり、内外面を含む表面全体に無電解ニッケル-燐メッキを施してある。これにより、芯保持部11で芯を保持した際の高尖部16a及び低尖部16bの摩耗を抑制できることから、より長期に渡って芯保持力を維持することができる。
【0018】
ネジ部13を加工する方法としては、先ずチャック1の前部に芯保持部11の内周面12(基準面)を形成するために、芯保持部11で保持する芯5の外径と略同等の孔をキリにより形成する。その後、内周面12(基準面)にネジ部13を転造タップ加工(肉盛り加工)としてロールタップ加工により形成してある。その際、ネジ13部の凸部14は、塑性変形により内周面12(基準面)と凹部15で囲まれた容積分の構成材料を凸部14へと転造させることで形成しているため、ネジ加工時に切り粉などの廃材が発生することがなく、切り粉の除去も必要ないことから低コストで加工することができると共に切り粉がチャック内に残ることによるチャック1内を芯5が移動することを妨げることや芯5の保持を妨げることを防止できる。尚、凹部15から凸部14に転造する際、凹部15と内周面12(基準面)で囲まれた容積の内、約半分が前方側の凸部14の後方尖部16bを形成し、残りの約半分が後方側の凸部14の前方尖部16aを形成するために転造される。
【0019】
そして、転造により凹部15と凸部14を形成する際、内周面(基準面)を境にして凹部15の容積より凸部14の容積の方が小さくなるよう転造することが好ましく、本実施形態では、凸部14は転造時に圧縮されて密度が高くなることで加工硬化が発生し、硬度を向上させてある。具体的には転造時に凹部15に対して凸部14の容積が約10%程度減少しているため、その分、凸部14の密度は他の部分よりが高くなり硬度が向上した。このため、凸部14の耐久性が向上し長期に渡って凸部14の摩耗を抑制することができるものとなった。
【0020】
次に、図3を用いて、本実施形態のシャープペンシル用チャック1を使って実際に芯5を保持する状態の一例を説明する。
図3に示すように、チャック1の側面に形成した凹部に金属製のボール2を回動可能に配置する。更に、チャック1の外側にはボール2と当接するように内面にテーパー面3aを有する締具3が配置され、シャープペンシル用チャック1の後部外段17と締具3の内段3bとの間に取付時荷重5g~30gでコイルスプリング4を張架し、チャック1の外周凹部18に配置されたボール2を締具3のテーパー面3aに押圧する。すると、チャック1の芯保持部11は締具3のテーパー面3aとの楔作用により閉じられ芯保持部により芯5を保持する。また、チャック1の芯保持部11により保持された芯5は、長手方向前方には楔作用が解除されてわずかな抵抗で移動できるが、長手方向後方には楔作用が働き強い力で移動が阻止される。更に、締具3の前部に駒6を圧入固着し、ボール2の外れを防止する。
尚、芯保持部で芯5を保持する際、芯保持部の凸部の頂部には尖部16が前後に分断された前方尖部16aと後方尖部16bの2か所形成されているため、芯5を確実に保持でき、長期に渡って芯を確実に保持できるものとなった。
【0021】
また、本発明は、図3の実施形態にに限定されるものではなく、チャックの芯保持部外面に締具を外嵌し、締具あるいはチャックの芯保持部外面のどちらかにテーパー面を形成し、このテーパー面の楔作用によりチャックの芯保持部を閉じて芯を保持するノック式シャープペンシルに利用しても良い。
【符号の説明】
【0022】
1 シャープペンシル用チャック
2 ボール
3 締具
3a テーパ面
3b 内段
4 コイルスプリング
5 芯
6 駒
11 芯保持部
12 内周面(基準面)
13 ネジ部
14 凸部
15 凹部
16 尖部
16a 前方尖部
16b 後方尖部
17 後部外段
18 外周凹部
図1
図2
図3