(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041103
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】化粧シート及びこれを用いた化粧材並びに化粧シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220304BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220304BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220304BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220304BHJP
【FI】
B32B27/00 E
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/65
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146138
(22)【出願日】2020-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】冨永 孝史
(72)【発明者】
【氏名】折原 隆史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 祐介
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AB11C
4F100AB24C
4F100AK17C
4F100AK25C
4F100AK51C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA18C
4F100CC00C
4F100DG10A
4F100EH46C
4F100EJ91C
4F100GB07
4F100HB00
4F100HB31B
4F100JC00C
4F100YY00C
4J038HA066
4J038MA02
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】例えば一般建具などの建装材に用いられる化粧シート、及びこれを用いた抗ウイルス性化粧材並びに化粧シートの製造方法に関し、抗ウイルス添加剤に、微粉砕された銀を添加することで、抗ウイルス性を向上できる。
【解決手段】印刷方法を用いて模様層30を設けた紙基材の模様層30の側に、単層もしくは複数層からなる表面保護層40が積層された化粧シート10であって、表面保護層40の最表層には、微粉砕された銀を少なくとも含む抗ウイルス添加剤(例えば抗ウイルス剤50)が塗工されている。また、表面保護層40の最表層が、シリコン系成分もしくはフッ素系成分により、耐汚染性能が付与されていても良いし、抗ウイルス添加剤の添加量が、表面保護層40の固形分に対して0.2質量%以上12質量%以下であっても良いし、表面保護層40の塗布量が、3μm以上であっても良い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷方法を用いて模様層を設けた紙基材の前記模様層の側に、単層もしくは複数層からなる表面保護層が積層された化粧シートであって、
前記表面保護層の最表層には、微粉砕された銀を少なくとも含む抗ウイルス添加剤が塗工されていること特徴とする、化粧シート。
【請求項2】
前記表面保護層の最表層が、シリコン系成分もしくはフッ素系成分により、耐汚染性能が付与されていることを特徴とする、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上12質量%以下であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記表面保護層の塗布量が、3μm以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記抗ウイルス添加剤の平均粒径をφ、前記表面保護層の塗布量をDとした時、以下の関係が成り立つことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧シート。
0.5D≦φ≦2D
【請求項6】
前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が、1~10μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、5μm未満に一つのピークを有し、5μm以上に少なくとも他の一つのピークを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記抗ウイルス添加剤の有効成分が、無機材料により担持されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記表面保護層に界面活性剤が添加されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項10】
前記界面活性剤が、カチオン性、両性、非イオン性のいずれかのタイプを単独もしくは複数種類を組み合わせて使用することを特徴とする、請求項9に記載の化粧シート。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の前記化粧シートを建築用材料の表層に貼り合わせることにより得られる、抗ウイルス性化粧材。
【請求項12】
印刷方法を用いて模様層を設けた紙基材の前記模様層の側に、表面保護層を積層した化粧シートの製造方法であって、
前記表面保護層の最表層に、微粉砕された銀を少なくとも含む抗ウイルス添加剤を塗工し、
前記抗ウイルス添加剤には、
平均粒径のものと、
平均粒径のものを微粉砕若しくは前記平均粒径と粒径の異なるメッシュのふるいにかけ、抽出した粒径の異なるものとを混在させることを特徴とする化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一般建具などの建装材に用いられる化粧シート、及びこれを用いた抗ウイルス性化粧材並びに化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧シート最表面のコーティング樹脂中に銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤を配合した抗ウイルス性を有する「内装用化粧シート」が知られている(特許文献1の段落[0018]及び
図1参照)。
上記した従来の銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤は、真比重が2.5以下であり、かつ平均粒径が1μ以下であり、かつ前記化粧シート最表面のコーティング樹脂に対して固形分比率で10~30%配合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の「内装用化粧シート」では、抗ウイルス性を有するが、銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤を用いているだけであったので、抗ウイルス性が低いという問題点があった。
本発明は、上記の点に着目したもので、抗ウイルス添加剤に、微粉砕された銀を添加することで、抗ウイルス性を向上できるようしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る化粧シートは、印刷方法を用いて模様層を設けた紙基材の前記模様層の側に、単層もしくは複数層からなる表面保護層が積層された化粧シートであって、前記表面保護層の最表層には、微粉砕された銀を少なくとも含む抗ウイルス添加剤が塗工されていること特徴とする。
また、本発明の一態様に係る化粧シートは、前記表面保護層の最表層が、シリコン系成分もしくはフッ素系成分により、耐汚染性能が付与されていることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上12質量%以下であることを特徴とする。
【0006】
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記表面保護層の塗布量が、3μm以上であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径をφ、前記表面保護層の塗布量をDとした時、以下の関係が成り立つことを特徴とする。
0.5D≦φ≦2D
【0007】
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が、1~10μmの範囲内にあることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、5μm未満に一つのピークを有し、5μm以上に少なくとも他の一つのピークを有することを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記抗ウイルス添加剤の有効成分が、無機材料により担持されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記表面保護層に界面活性剤が添加されていることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記界面活性剤が、カチオン性、両性、非イオン性のいずれかのタイプを単独もしくは複数種類を組み合わせて使用することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る抗ウイルス性化粧材は、前記化粧シートを建築用材料の表層に貼り合わせることにより得られる。
本発明の一態様に係る化粧シートの製造方法は、印刷方法を用いて模様層を設けた紙基材の前記模様層の側に、表面保護層を積層した化粧シートの製造方法であって、前記表面保護層の最表層に、微粉砕された銀を少なくとも含む抗ウイルス添加剤を塗工し、前記抗ウイルス添加剤には、平均粒径のものと、平均粒径のものを微粉砕若しくは前記平均粒径と粒径の異なるメッシュのふるいにかけ、抽出した粒径の異なるものとを混在させることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様によれば、抗ウイルス添加剤に、微粉砕された銀を添加することで、抗ウイルス性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係わる化粧シートの断面図である。
【
図2】抗ウイルス剤の粒度分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1に係わる化粧シート10)
図1中、10は、実施形態1に係わる化粧シートであり、例えば一般建具などに用いられる。
化粧シート10は、次の層が順次積層されている。
なお、次の各層については、後述する。
【0013】
(1)紙基材20
(2)模様層30
(3)表面保護層40
(4)抗ウイルス剤50
なお、化粧シート10は、上記した(1)~(4)の層に限定されず、図示しないが、例えば表面保護層40の表面に、模様層30に同調させたエンボスなどの凹凸部を形成しても良いし、又、模様層30と表面保護層40との間に、図示しないが、透明熱可塑性樹脂層を追加しても良い。
【0014】
(紙基材20)
紙基材20は、本発明の化粧シート10の支持体となるものであって、具体的には、例えば薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙、樹脂混抄紙、紙間強化紙、晒又は未晒クラフト紙、リンター紙、上質紙、コート紙、無機紙、難燃紙、板紙、和紙等の各種の紙類を使用することができる。
また、紙基材20は、上記した紙類以外の材質であっても、紙類と同様の性質を備えた材質であれば、例えば織布又は不織布等であっても良い。紙基材1の厚さは、化粧材用基材への貼付適性上、適度の強度と可撓性とを有する範囲から選択するのが良く、通常は坪量15~100g/m2の範囲が好適である。
【0015】
(模様層30)
模様層30は、紙基材20の表面に、印刷方法を用いて形成され、目的の化粧シート10に意匠性を付与する目的で設けられるものである。
印刷方法としては、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷方法、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等の各種の印刷方法の適用により形成される。なお、印刷方法は、上記例示した印刷方法に限定されず、例えば手描き法、墨流し法や、転写法、写真法、電子写真法、感光性樹脂法、真空蒸着法、化学腐蝕法、感熱発色法、放電破壊法等、従来公知の任意の画像形成手段を適用することができる。
【0016】
模様層30の模様の種類は、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、例えば木目柄、石目柄、抽象柄等が一般的である。模様の種類は、上記例示した種類に限定されず、例えば全面ベタ印刷等であっても良い。
印刷方法に用いられる印刷インキとしては、一般的には、有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤を、体質顔料、充填材、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、乾燥剤等の適宜の添加剤や、溶剤又は希釈剤等と共に、合成樹脂等からなる結着剤中に分散してなるものである。
【0017】
着色剤としては、高度の隠蔽性が要求される用途には、例えば二酸化チタンや黄鉛等の無機顔料が使用される場合もあるが、一般的には例えばジスアゾイエロー、ハンザエロー、イソインドリノン、スレン、レーキレッド、ブリリアントカーミン、キナクリドン、ペリレン、アントラキノン、フタロシアニン等の透明度が高く色彩効果に優れた有機顔料、又はカーボンブラック等が使用されるのが通例である。
【0018】
また、結着剤としては、例えばアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキド樹脂、繊維素誘導体、シェラック、ロジン、変性ロジン、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂等、又はそれらの二種以上の混合物、共重合体等を使用することができる。
【0019】
(表面保護層40)
表面保護層40は、化粧シート10の表面に耐磨耗性や耐水性等の表面物性を付与する目的で設けられるものであるが、本発明においてはそれと同時に、最表層に、微粉砕された銀を少なくとも含む抗ウイルス添加剤が塗工され、抗ウイルス性を付与している。
また、表面保護層40は、透光性を有し、その表面側から模様層30の模様が見えるようにしている。
【0020】
表面保護層40は、単層もしくは複数層からなる。
また、表面保護層40に用いられる樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、繊維素誘導体、電離放射線硬化型樹脂等が使用されており、それらのいずれをも本実施形態に適用することができる。
【0021】
具体的には、表面保護層40は、イソシアネート硬化型の「UCクリヤー」(DICグラフィック株式会社製)に、抗ウイルス剤50を添加した塗工液を、グラビアコーターを用いて塗工する。なお、塗工にグラビアコーターを用いたが、これに限定されない。
表面保護層40は、次の特徴を有する。
(1)表面保護層40の最表層が、シリコン系成分もしくはフッ素系成分により、耐汚染性能が付与されている。
フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレンペルフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、四フッ化エチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニルフロライド(PVF)等を採用できる。
【0022】
(2)表面保護層40の塗布量が、3μm以上である。
ここで、「塗布量」は、実施例の「施工厚み」に関連する。すなわち、「塗布量」は、表面保護層40の最表層の表面積を関連し、「施工厚み」に対応し、以下、「塗布量」を「施工厚み」ともいう。
(3)表面保護層40中に、抗ウイルス剤50(抗ウイルス添加剤)が添加された系、例えば「無機銀系」において、更に界面活性剤が添加されている。
(4)界面活性剤が、カチオン性、両性、非イオン性のいずれかのタイプを単独もしくは複数種類を組み合わせて使用する。
【0023】
(抗ウイルス剤50)
抗ウイルス剤50は、無機銀系化合物の抗菌剤であり、例えば「ビオサイドTB-B100」(株式会社タイショーテクノス製)を使用し、「抗ウイルス添加剤」ともいう。なお、抗ウイルス剤50は、例示した抗菌剤に限定されず、銀系の抗ウイルス剤であれば良い。
抗ウイルス剤50(抗ウイルス添加剤)には、微粉砕された銀を少なくとも含む。
【0024】
抗ウイルス剤50(抗ウイルス添加剤)には、次の特徴を有する。
(1)抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)の添加量が、表面保護層40の固形分に対して0.2質量%以上12質量%以下である。
例えば、抗ウイルス剤50は、前記したイソシアネート硬化型のUCクリヤーに、同じく前記したビオサイドTB-B100を固形分比で1,3,5,7,9、11wt%となるように添加した。
【0025】
(2)抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)の平均粒径をφ、表面保護層40の塗布量をDとした時、以下の関係が成り立つように設定している。
0.5D≦φ≦2D
(3)抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)の平均粒径が、1~10μmの範囲内にある。
(4)抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)の粒度分布が、
図2に示すように、例えば5μm未満と5μm以上との間に2つのピークを持つ、抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)を使用する。
なお、2つのピークを持つことは「固有」の特長ではなく、必ず2つのピークを持つことに限定するものではない。
(5)抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)の有効成分が、無機材料により担持されている。
【0026】
(製造方法)
上記化粧シート10の製造方法は、次の通りである。
(1)紙基材20の表面に、印刷方法を用いて模様層30を形成する。
模様層30は、グラビア印刷法を用いて木目印刷を施した。
なお、グラビア印刷法を例示したが、これに限定されず、インクジェット印刷法を用いても良い。また、模様として、木目柄を例示したが、これに限定されず、他の柄でも良い。
(2)模様層30の表面に、表面保護層40を形成する。
【0027】
(3)このとき、イソシアネート硬化型の前記「UCクリヤー」に、同じく前記「ビオサイドTB-B100」を固形分比で1,3,5,7,9、11wt%となるように添加した塗工液を得る。
抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)には、微粉砕された銀を少なくとも含む。
(4)塗工液は、グラビアコーターを用いて、塗工する。
塗工厚みは、5μm狙いで塗工した。なお、塗工にグラビアコーターを用いたが、これに限定されない。
(5)その後、40℃環境下で24時間の養生を行ない、化粧シート10を得る。
【0028】
一方、ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)には、平均粒径のものと、平均粒径のものを微粉砕若しくは前記平均粒径と粒径の異なるメッシュのふるいにかけ、抽出した粒径の異なるものとを混在させてもよい。
その結果、抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)の粒度分布が、
図2に示すように、5μm未満と5μm以上との間に、少なくとも2つのピークを持つ。
粒度分布計を用いて測定した前記「ビオサイドTB-B100」の「平均粒径」は、「6.86μm」であった。これが1つ目のピークである。
2つ目のピークは、抗ウイルス剤50の固有のものであっても良いし、或いは人工的に2つ目のピークを持たせても良い。
例えば、前記「ビオサイドTB-B100」を微粉砕し、平均粒径を0.49μmとした。
【0029】
その結果、「平均粒径」の「6.86μm」のものと、微粉砕した「平均粒径を0.49μm」のものとを、例えば1:1で混ぜることで、平均粒径「6.86μm」による1つ目のピークと、微粉砕した「平均粒径を0.49μm」による2つ目のピークとを人工的に作ることができる。
また、微粉砕に限らず、前記「ビオサイドTB-B100」を、「平均粒径」を超える10μmメッシュのふるいにかけても良い。逆に、「平均粒径」未満、例えば「5.0μm」未満のメッシュのふるいにかけても良い。
【0030】
(抗ウイルス性化粧材)
抗ウイルス性化粧材は、上記製造方法により得られた化粧シート10を、図示しないが、建築用材料の表層に貼り合わせることにより得られる。
【0031】
(実施形態の作用・効果)
実施形態の作用・効果は、次の通りである。
(1)本実施形態によれば、印刷方法を用いて模様層30を設けた紙基材20の模様層30の側に、単層もしくは複数層からなる表面保護層40が積層された化粧シート10であって、表面保護層40の最表層には、微粉砕された銀を少なくとも含む抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)が塗工されているので、微粉砕された銀成分により、化粧シート10上に付着したウイルスを死滅させることできる。
【0032】
(2)本実施形態によれば、表面保護層40の最表層が、シリコン系成分もしくはフッ素系成分により、耐汚染性能が付与されていることで、化粧シート10に付着したウイルスが表面に留まることを防ぐことができる。
(3)本実施形態によれば、抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)の添加量が、表面保護層40の固形分に対して0.2質量%以上12質量%以下であり、濃度0.2wt%以下では充分な性能が発現せず、12wt%以上では表面保護層の機械強度が低下する。
抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)の添加量は、好ましくは1wt%~10wt%、より好ましくは3wt%~8wt%である。
0.2wt%以下は、活性値が低くなる傾向がある。
12wt%以上では、樹脂分が低く、コート層がもろくなる傾向がある。
具体的には、キズが付きやすくなったり、はがれやすくなったり、特に前者の影響が大きい。
【0033】
(4)本実施形態によれば、表面保護層40の塗布量が、3μm以上とすることで、抗ウイルス剤の絶対量を増やすことができ、抗ウイルス効果が発現する。
これに加え、本実施形態によれば、銀イオンが塗膜中を移動してウイルスに作用するため、最表層に存在しない「銀」も抗ウイルス性能に寄与する。
(5)本実施形態によれば、抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)の平均粒径をφ、表面保護層40の塗布量をDとした時、「0.5D≦φ≦2D」の関係が成り立ち、塗布量と粒径との関係で、ある程度の量の抗ウイルス剤は表面に露出させた方が、効果が発現する。
【0034】
(6)本実施形態によれば、抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)の平均粒径が、1~10μmの範囲内にあり、又、抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)の粒度分布が、5μm未満に一つのピークを有し、5μm以上に少なくとも他の一つのピークを有することで、表面露出させるためには粒径が大きいことが望ましく、銀イオンを発生させやすくするためには、粒径が小さく、表面積を広くした方が望ましく、その両方の効果を発現させることができる。
(7)本実施形態によれば、抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)の有効成分が、例えば無機材料により担持され、又、微粉砕した銀を担持させることで、分散性を向上させるとともに、経時のブルーミングを抑制できる。
すなわち、銀が微粉末された状態で、実施例1で後述する「コート液」中に単独で添加すると、凝集したり、同じく実施例1で後述する「コート樹脂」と相性が悪く、ブルーミングしてしまうところ、「無機材料」に担持させることで、不具合を解決できる。
【0035】
(8)本実施形態によれば、表面保護層40中に抗ウイルス添加剤(抗ウイルス剤50)が添加された系において、更に界面活性剤が添加されているので、界面活性剤により分散性が上がり、表面保護層の透明性が上がるため、意匠性が向上できる。
なお、界面活性剤にアニオン系のものを使用すると、銀イオンと拮抗作用を起こすため、それ以外の系が望ましい。
【0036】
(9)本実施形態によれば、化粧シート10を建築用材料の表層に貼り合わせているので、付着した菌が24時間以内に99%以上減少するため、化粧材を介したウイルス感染のリスクを抑えることができる。
【実施例0037】
以下に、本発明に係る化粧シートの実施例1~22、比較例1~3並びに比較用ブランクについて説明する。なお、本発明は、下記の実施例1~22に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1~6)
実施例1は、次のように化粧シートを製造した。
グラビア印刷法を用いて紙基材に木目印刷を施したのち、イソシアネート硬化型の「UCクリヤー」(DICグラフィック株式会社製)に、「ビオサイドTB-B100」(株式会社タイショーテクノス製)を固形分比で1,3,5,7,9、11wt%となるように添加した塗工液を、グラビアコーターを用いて塗工厚み5μm狙いで塗工した。
ここで、「塗工液」としては、アクリル系のコート剤を使用しているが、「塗工液」はアクリル系のコート剤に限定されない。
その後、40℃環境下で24時間の養生を行ない、実施例1~6の化粧シートを得た。
【0039】
実施例1は、固形分比で「1wt%」、実施例2は「3wt%」、実施例3は「5wt%」、実施例4は「7wt%」,実施例5は「9wt%」、実施例6は「11wt%」である。
また、抗ウイルス添加剤の有効成分、すなわち「ビオサイドTB-B100」の場合には、「無機銀系化合物」が「無機材料」により担持されている。
すなわち、「ビオサイドTB-B100」には、銀を微粉砕して添加し、銀は無機物により担持されている。
【0040】
(実施例7~12)
実施例7~12は、塗工厚みを3μmとし、他は実施例1~6と同じ条件で、実施例7~12の化粧シートを得た。
実施例7は、固形分比で「1wt%」、実施例8は「3wt%」,実施例9は「5wt%」、実施例10は「7wt%」、実施例11は「9wt%」、実施例12は「11wt%」である。
【0041】
(実施例13~16)
実施例13~16は、塗工厚みを1μmとし、他は実施例3~6と同じ条件で、実施例13~16の化粧シートを得た。
実施例13は、「5wt%」,実施例14は「7wt%」、実施例15は「9wt%」、実施例16は「11wt%」である。
【0042】
(実施例17)
実施例17は、ビオサイドTB-B100を微粉砕し平均粒径を0.49μmとし、他は実施例9と同じ条件(固形分比で「5wt%」)で、実施例17の化粧シートを得た。
【0043】
(実施例18)
実施例18は、ビオサイドTB-B100を10μmメッシュのふるいにかけ、平均粒径を10μm以上とし、他は実施例9と同じ条件(固形分比で「5wt%」)で、実施例18の化粧シートを得た。
【0044】
(実施例19)
実施例19は、銀(無機物により担持無し)を微粉砕して添加し、他は実施例9と同じ条件(固形分比で「5wt%」)で、実施例19の化粧シートを得た。
【0045】
(実施例20)
実施例20は、界面活性剤成分として、「カチオン性の界面活性剤」としてアルキルトリメチルアンモニウム塩を、抗ウイルス剤100質量部に対して1質量部の割合で添加し、他は実施例9と同じ条件(固形分比で「5wt%」)及び同じ方法を用いて、実施例20の化粧シートを得た。
【0046】
(実施例21)
実施例21は、実施例20で「カチオン性の界面活性剤」に代え、「両性の界面活性剤」としてアルキルジメチルアミンオキシドを使用し、他は実施例9と同じ条件(固形分比で「5wt%」)及び同じ方法を用いて、実施例21の化粧シートを得た。
【0047】
(実施例22)
実施例22は、実施例20で「カチオン性の界面活性剤」に代え、「非イオン性の界面活性剤」としてポリエチレングリコールを使用し、他は実施例9と同じ条件(固形分比で「5wt%」)及び同じ方法を用いて、実施例22の化粧シートを得た。
【0048】
(比較例1)
比較例1は、実施例13と同様に、塗工厚みを1μmとし、他は実施例1と同じ条件(固形分比で「1wt%」)で、比較例1の化粧シートを得た。
【0049】
(比較例2)
比較例2は、実施例13と同様に、塗工厚みを1μmとし、他は実施例2と同じ条件(固形分比で「3wt%」)で、比較例2の化粧シートを得た。
【0050】
(比較例3)
比較例3は、実施例20でカチオン性の界面活性剤に代え、「アニオン性の界面活性剤」として脂肪酸塩を使用し、他は実施例9と同じ条件(固形分比で「5wt%」)及び同じ方法を用いて、比較例3の化粧シートを得た。
【0051】
(比較用ブランクの作成)
比較用ブランクは、ビオサイドTB-B100を無添加とし、他は実施例1と同じ方法を用いて、 比較用ブランクとなる化粧シートを作製した。
【0052】
(評価方法)
評価方法及び評価基準は、次の通りである。
実施例1~22及び比較例1~3の化粧シートに対して、抗ウイルス試験を実施し、又、表面の透明性について目視評価を実施した。
【0053】
(抗ウイルス試験法)
抗ウイルス試験方法は、次の通りである。
(1)試料へウイルス培養液を接種する。
ウイルスはエンペローブ型(インフルエンザウイルス)を使用する。
(2)ポリエチレンフィルムを被せる。
ポリエチレンフィルムを被せ、試料とウイルスを密着させる。
【0054】
(3)所定時間、培養を行う。
25℃、湿度90%以上の条件下で所定時間、ウイルスと試料を接触させる。
(4)中和液でウイルスを洗い出す。
中和液を10mL添加してウイルスを洗い出し、回収する。
(5)洗い出し液の10倍希釈系列を作製する。
【0055】
(6)宿主細胞を準備する。
6ウェルプレートに単層培養した細胞を準備し、培地を除去する。
(7)細胞に洗い出し液を接種する。
宿主細胞に洗い出し液の各希釈系列から0.1mL接種する。
(8)1時間培養する。
6ウェルプレートをCO2インキュベーターに移して37℃、5%CO2下で1時間培養し、細胞にウイルスを吸着させる。
【0056】
(9)細胞培養寒天を注ぐ。
細胞培養寒天培地を加える。
(10)2~3日間培養する。
培地が固まった後、37℃、5%CO2下で2~3日培養する。
(11)細胞を固定する。
ホルマリン固定液を加えて、細胞を固定する。
【0057】
(12)細胞を染色する。
固定液と培地を除去した後、メチレンブルー染色液で細胞を染色する。
(13)プラーク数を計測する。
(14)ウイルス感染価と抗ウイルス活性値を算出する。
【0058】
(ウイルス感染価の算出方法)
ウイルス感染価の算出方法は、次の式1の通りである。
[式1] V = ( 10 × C × D × N ) / A
V : 試料1cm2当たりのウイルス感染価(PFU/cm2)
C : 計測したプラーク数
D : プラークを計測したウェルの希釈系列
N : 中和液量
A : 試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
【0059】
計算例は、次の[例1]の通りである。
[例1]
プラーク数:12個
計測ウェル:102倍希釈
V = ( 10 × 12 × 102×10 ) / 16
= 7.5 × 103 PFU / cm2
log V = log ( 7.5 × 103 ) = 3.88
【0060】
(抗ウイルス活性値の算出方法)
抗ウイルス活性値の算出方法は、次の式2の通りである。
[式2] 抗ウイルス活性値 = log (Vb) - log (Vc)
Log (Vb):所定時間後の無加工試料1cm2当たりのウイルス感染価の常用対数値
Log (Vc) :所定時間後の抗ウイルス加工試料1cm2当たりのウイルス感染価の常用対数値
抗ウイルス活性値が「2」以上であるならば、「抗ウイルス効果あり」と考える。
【0061】
(評価基準)
評価基準は、大別すると、「判定1」、「判定2」の次の2種類に分けた。
(1)判定1
判定1は、「活性値」の評価基準であり、活性値「2」以上を「○」とし、「2」未満を「×」とした。
【0062】
(2)判定2
判定2は、「表面濁度」の評価基準であり、「透明」を「◎」とし、「僅かに白濁」(蛍光灯直下で白濁が確認できる場合)を「○」とし、「白濁」(蛍光灯直下でなくとも白濁が確認できる場合)を「△」とした。
【0063】
(評価結果)
化粧シートの評価結果は、次の表1の通りである。
【表1】
【0064】
【0065】
実施例9、実施例17、実施例18の3個を比較すると、実施例9は、粒度分布に2つのピークを持つTB-B100の原体を使用し、活性値「3」である。
これに対し、実施例17及び実施例18は、意図的にピークを1つにしたものであり、実施例17の活性値「2.1」であり、実施例18の活性値「2.2」である。
その結果、粒度分布に2つのピークを持つ実施例9は、意図的にピークを1つにした実施例17及び実施例18と比較し、活性値が高い傾向にあり、抗ウイルス性が高いことが推測できた。
【0066】
実施例19~22及び比較例3を比較すると、界面活性剤添加により分散性が向上して透明性は上がるが、界面活性剤が抗ウイルス剤表面をコーティングしてしまうため、活性値は若干低下する傾向にある。
ただし、比較例3のアニオン性の界面活性剤では、活性値が大きく低下する傾向にある。
「活性値」の観点から評価すると、施工厚みが「3μm」以上の実施例1~実施例12のものが、「1μm」の実施例13~16及び比較例1及び比較例2のものと比較し、活性値が高い傾向にあり、抗ウイルス性が高いことが推測できた。
【0067】
また、「活性値」の観点から評価すると、固形分比が高いほど、活性値が高い傾向にあり、抗ウイルス性が高いことが推測できた。
「表面濁度」の観点から評価すると、施工厚みによる影響が少ないものと推測できる。
「表面濁度」の観点から評価すると、固形分比が高いほど、「白濁」しやすい傾向が推測できた。
「表面濁度」の観点から評価すると、「透明」に近いほど、表面保護層40の最表層側から模様層30の模様が透けて見やすい。しかし、「透明」が一概に良いというわけで無く、化粧シート10の用途や使用目的に応じ、「僅かに白濁」や「白濁」でも実用上、足りる場合もある。
【0068】
また、化粧シート10の用途や使用目的に応じ、透明度が要求される場合には、活性値は若干低下する傾向にあるが、実施例20~22のように、「界面活性剤」を添加することで、透明度を改善できる。
さらに、実施例20~22は、実施例9と同じ条件(固形分比で「5wt%」)で、「界面活性剤」を添加したが、これに限定されず、他の実施例1~実施例8及び実施例10~実施例12に「界面活性剤」を添加しても良い。