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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041121
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】塗布容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20220304BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A45D34/04 510Z
B65D83/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146161
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】谷 仁一
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
3E014PC03
3E014PC16
3E014PE25
3E014PF10
(57)【要約】
【課題】切り離しを容易に行うことができると共に、樹脂成形を容易に行うことができる塗布容器を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る塗布容器1は、液状内容物Mを塗布する塗布材1Aと、塗布材1Aを保持すると共に、塗布材1Aに送り出される液状内容物Mが充填された充填部を有する筒状の本体2と、塗布材1Aを覆う筒状のキャップ3と、本体2及びキャップ3を互いに接続すると共に、切り離されることによって本体2からキャップ3を分離可能とされた切り離し部10と、を備え、切り離し部10は、切り離し部10の内面において本体2の径方向外側に凹んでおり切り離し部10において本体2の軸線方向D1に延びる溝を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状内容物を塗布する塗布材と、
前記塗布材を保持すると共に、前記塗布材に送り出される前記液状内容物が充填された充填部を有する筒状の本体と、
前記塗布材を覆う筒状のキャップと、
前記本体及び前記キャップを互いに接続すると共に、切り離されることによって前記本体から前記キャップを分離可能とされた切り離し部と、
を備え、
前記切り離し部は、前記切り離し部の内面において前記本体の径方向外側に凹んでおり前記切り離し部において前記本体の軸線方向に延びる溝を有する、
塗布容器。
【請求項2】
前記溝の前記軸線方向の一端が前記切り離し部の位置と一致する、
請求項1に記載の塗布容器。
【請求項3】
前記溝は、前記切り離し部から前記充填部まで延在する、
請求項1又は2に記載の塗布容器。
【請求項4】
前記溝は、前記充填部よりも前記切り離し部の反対側に延びている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液状内容物を塗布する塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から液状内容物を塗布する塗布容器としては種々のものが知られている。例えば、実用新案登録第2568992号公報には、ブラシ付き小型液状化粧品が記載されている。この小型液状化粧品は、粘性液状化粧料を保持すると共にブラシを保持する口部を有するプラスチック成型チューブと、ブラシに粘性液状化粧料を供給する薄肉パイプと、薄肉パイプをプラスチック成形チューブの内側において固定する熱融着部とを備える。
【0003】
小型液状化粧品の使用前には、プラスチック成形チューブの口部に外周において窪む肉薄の弱め部を介してブラシを封止する封止キャップが接続されている。そして、小型液状化粧品を使用するときには、弱め部を介して口部から封止キャップを切り離し、ブラシを口部から露出させた状態でプラスチック成形チューブを押圧することにより、粘性液状化粧料がブラシに押し出され、ブラシから粘性液状化粧料を塗布することが可能となる。
【0004】
特開2017-87531号公報には、中継芯を介して液体を筆に誘導する塗布具が記載されている。塗布具は、液体を収容する液収容部を含む軸体と、軸体の先端に嵌着されて固定されている先軸とを備える。軸体の内部には、液収容部と、液収容部から先軸に向かって棒状に延びる中継芯と、中継芯を包囲する蛇腹状のコレクターとが設けられる。先軸は筆が突出する開口を有する。
【0005】
先軸の内部には、中継芯から延びる筆と、筆を包囲する液誘導体とが設けられる。先軸には、先軸を径方向に貫通する空気孔が形成されており、空気孔は先軸の内部空間、及び軸体の内部空間に連通している。筆から液体が塗布されると、空気孔から先軸及び軸体の内部に空気が取り込まれると共に、液収容部に収容された液体が中継芯を介して筆に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2568992号公報
【特許文献2】特開2017-87531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した小型液状化粧品では、肉薄とされた弱め部を介して封止キャップをプラスチック成形チューブの口部から切り離すことが可能であり、弱め部は、外周において窪む凹状とされている。このような肉薄とされた切り離し部を備えた塗布容器では、切り離しを更に容易に行えることが求められる。
【0008】
前述した塗布具では、先軸及び軸体の内部に空気を通す空気孔が先軸を径方向に貫通するように形成されている。このように、径方向に貫通する空気孔を塗布容器に形成する場合、塗布容器の樹脂成形のときに複雑な形状を有する金型が必要となる場合がある。従って、塗布容器の樹脂成形を容易に行えない場合がある。
【0009】
本開示は、切り離しを容易に行うことができると共に、樹脂成形を容易に行うことができる塗布容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る塗布容器は、液状内容物を塗布する塗布材と、塗布材を保持すると共に、塗布材に送り出される液状内容物が充填された充填部を有する筒状の本体と、塗布材を覆う筒状のキャップと、本体及びキャップを互いに接続すると共に、切り離されることによって本体からキャップを分離可能とされた切り離し部と、を備え、切り離し部は、切り離し部の内面において本体の径方向外側に凹んでおり切り離し部において本体の軸線方向に延びる溝を有する。
【0011】
この塗布容器は、液状内容物を塗布する塗布材を保持する筒状の本体を備え、本体は、塗布材に送り出される液状内容物が充填された充填部を有する。塗布材を保持すると共に充填部を有する本体と、塗布材を覆うキャップとの間には、本体からキャップを分離可能とする切り離し部が形成されている。切り離し部の内面には溝が形成されており、この溝は切り離し部の内面において径方向外側に凹んだ形状とされている。よって、切り離し部において凹む溝が形成されていることにより、溝の部分で切り離し部が肉薄とされているので、切り離し部における本体及びキャップの切り離しを容易に行うことができる。また、切り離し部において凹状に形成される溝は本体の軸線方向に延びている。従って、切り離し部から本体の軸線方向に延びる溝に空気を通して本体の内部に空気を通すことができるので、径方向に貫通する空気孔を不要とすることができる。よって、塗布容器の樹脂成形のときに用意する金型を簡易にすることができるので、樹脂成形を容易に行うことができる。
【0012】
溝の軸線方向の一端が切り離し部の位置と一致してもよい。この場合、溝の一端が切り離し部まで達しており、溝の有無の境界部が切り離し部と一致することとなる。従って、切り離し部の位置と一致する溝の一端において切り離し部の厚みが変わるので、切り離し部における本体からのキャップの切り離しを一層容易に行うことができる。
【0013】
溝は、切り離し部から充填部まで延在していてもよい。この場合、液状内容部が充填されている充填部にまで切り離し部からの溝が達しているので、本体の内面における空気流路が充填部にまで達することとなる。従って、塗布体への液状内容物の送り出しをより促進させることができ、塗布材への液状内容物の安定した送り出しが可能となる。
【0014】
溝は、充填部よりも切り離し部の反対側に延びていてもよい。この場合、切り離し部から軸線方向に延びる溝が充填部よりも先まで延びるので、本体の内面における空気流通を一層促進させることができる。従って、充填部に充填された液状内容物の塗布体への送り出しを更に促進させることができ、塗布材への液状内容物の送り出しを更に安定させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、切り離しを容易に行うことができると共に、樹脂成形を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る塗布容器を示す側面図である。
図2図1の塗布容器のA-A線断面図である。
図3図1の塗布容器の本体からキャップを切り離した状態を示す本体の側面図とキャップの断面図である。
図4図3のキャップを本体に装着した状態を示す側面図である。
図5図4の塗布容器の縦断面図である。
図6図3の本体の断面図である。
図7図6の本体の切り離し部側を拡大した断面斜視図である。
図8図7の切り離し部の正面図である。
図9図1の塗布容器の尾栓を示す断面図である。
図10図1の塗布容器の本体及びキャップを示す断面図である。
図11図10の本体及びキャップの間に位置する切り離し部を拡大した断面図である。
図12図11の切り離し部及び塗布材を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る塗布容器の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法及び比率は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る塗布容器1を示す側面図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図1及び図2に示されるように、塗布容器1は、軸線方向D1に沿って延びる棒状を呈する本体2と、本体2から切り離し部10を介して切り離されるキャップ3とを備える。本開示において、「軸」及び「軸線」とは、塗布容器において塗布容器の長手方向に沿って延びる中心線を示しており、「軸線方向」とは、塗布容器の軸線Lに沿った方向(例えば塗布容器1の長手方向)を示している。
【0019】
塗布容器1は、液状内容物Mを塗布する塗布材1Aを備える。本開示において、「塗布材」とは、塗布対象である被塗布部に液状内容物Mを塗布するものを示している。「塗布材」は、例えば、化粧料、パフ、スポンジ、チップ、含浸体若しくはブラシ等の化粧料塗布具、又は、筆若しくは文房具等の描画材であってもよい。「被塗布部」とは、塗布材によって塗布される対象のものを示しており、例えば、塗布容器1の使用者の肌、眉、睫毛、髪、又は紙等が挙げられる。
【0020】
塗布材1Aは、例えば、本体2の先端に装着されておりパイプ材5に収容された液状内容物Mを塗布する毛筆4と、パイプ材5の液状内容物Mを毛筆4に送る中継芯6と、を含む。この塗布容器1は、液状内容物Mを収容し、使用者が毛筆4によって液状内容物Mを塗布することが可能な容器である。
【0021】
本実施形態において、例えば、液状内容物Mはアイライナー、リップライナー、アイシャドウ、又はスキンケアー等の液状化粧料であり、塗布容器1は液状化粧料容器である。以下では、塗布容器1において、毛筆4が突出する方向を「前」、その反対方向を「後」として説明することがある。しかしながら、これらの方向は、説明の便宜のためのものであり、物の位置又は向き等を限定するものではない。一例として、塗布容器1は、少量化粧料容器であって、テスター又は試供品として用いられる。すなわち、塗布容器1は、店頭で配布するテスター、又は雑誌の付録として用いられてもよい。
【0022】
図1図3に示されるように、例えば、キャップ3は、本体2に対して軸線方向D1から傾くように折り曲げられることにより、切り離し部10が破断して本体2から分離される。本体2は、例えば、軸線方向D1の一端及び他端の双方に開口が形成される円筒状を呈する。しかしながら、本体2の形状は、円筒状に限られず、例えば矩形筒状等、他の形状であってもよい。
【0023】
本体2は、毛筆4が露出する開口2bを有する。キャップ3が本体2から分離されると、本体2が保持する塗布材1A(毛筆4)が開口2bと共に露出して、塗布容器1が使用に供される。本体2は、例えば、開口2bを有すると共に開口2bから離れるに従って拡径する先筒部2cと、先筒部2cの開口2bとの反対側の端部において段差部2dを介して拡径する拡径筒部2fとを有する。
【0024】
一例として、先筒部2cは、開口2bから拡径する第1テーパ面2gと、第1テーパ面2gの開口2bとの反対側の端部(後端)から拡径する第2テーパ面2hと、第2テーパ面2hの後端から拡径する第3テーパ面2jとを有する。例えば、軸線方向D1に対する第2テーパ面2hの傾斜角度は軸線方向D1に対する第3テーパ面2jの傾斜角度よりも大きく、軸線方向D1に対する第1テーパ面2gの傾斜角度は軸線方向D1に対する第2テーパ面2hの傾斜角度よりも大きい。
【0025】
キャップ3は、本体2から分離される前に開口2b及び塗布材1A(毛筆4)を覆う第1被覆部3bと、本体2から分離された後に本体2の先筒部2cに装着される第2被覆部3cとを有する。図2図4に示されるように、キャップ3は、切り離し部10を介して本体2から切り離された後に、軸線方向D1への向きが逆にされて本体2の先筒部2cに装着される。
【0026】
以上のように構成される本体2及びキャップ3は、例えば、一体成形されている。この場合、軸線方向D1の一方側及び他方側のそれぞれに金型が配置され、軸線方向D1に沿って並ぶ一対の金型で射出成形を行うことによって容易に本体2及びキャップ3を製造できる。一例として、本体2及びキャップ3の材料は、PP(ポリプロピレン)である。しかしながら、本体2及びキャップ3の材料は、PPに限られず、他の材料(樹脂材料)、具体例として環境保護に考慮された植物由来樹脂又は再生樹脂であってもよい。
【0027】
例えば、キャップ3において、第1被覆部3bの外径は、第2被覆部3cの外径よりも小さい。第1被覆部3b及び第2被覆部3cの間には、第1被覆部3bから第2被覆部3cに向かうに従って徐々に拡径する傾斜部3dが形成されている。第1被覆部3b及び第2被覆部3cは、例えば、共に軸線方向D1に沿って延在している。第1被覆部3bの軸線方向D1の長さは、例えば、第2被覆部3cの軸線方向D1の長さよりも短い。
【0028】
例えば、第1被覆部3b及び傾斜部3dは、キャップ3が本体2から切り離される前において塗布材1A(毛筆4)を被覆する。第1被覆部3b及び傾斜部3dは、軸線方向D1に延びる有底状の第1内部空間3gを有し、キャップ3が本体2から切り離される前において第1内部空間3gを画成する内面3hに塗布材1Aが接触又は近接している。第1内部空間3gの底部3kは、深くなるに従って縮径する傾斜面によって形成される。よって、仕切壁3pの底部3kの反対側から樹脂を流して成形を行う場合、底部3kの当該傾斜面により、第1内部空間3gを形成する金型(コアピン)の射出成形時の圧力による曲げを抑制することができる。
【0029】
第2被覆部3cは、キャップ3が本体2から切り離された後において塗布材1Aを覆った状態で本体2の先筒部2cに装着される。図4及び図5に示されるように、第2被覆部3cは、軸線方向D1に延びる第2内部空間3jを有する。第2内部空間3jの底部3mは、例えば、軸線方向D1に直交する平坦面とされている。第1被覆部3b及び第2被覆部3cは、例えば、仕切壁3pを介して分断されている。
【0030】
第2被覆部3cの第2内部空間3jを画成する第2被覆部3cの内面3qには、環状凸部3rが形成されている。本体2から切り離された後のキャップ3は、環状凸部3rが本体2の先筒部2cの外周面に当接した状態で本体2の先筒部2cに装着される。これにより、先筒部2c及び塗布材1Aがキャップ3によって封止される。先筒部2cにキャップ3が装着された状態において、例えば、塗布材1A(毛筆4)の先端4bと第2被覆部3cの底部3mとの間には隙間Sが形成される。
【0031】
パイプ材5は筒状を呈し、例えば、パイプ材5の内部には中綿(フェルト)が装着され、液状内容物Mが中綿(フェルト)に充填されている。パイプ材5は、例えば、肉薄のパイプであって、内部にポリエステル(又はポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET))によって構成された繊維が同時成形されたものであってもよい。パイプ材5の開口2b側には中継芯6が挿入されており、中継芯6はパイプ材5の内部の液状内容物Mを毛筆4に送出する。
【0032】
中継芯6は、例えば、PETによって構成されている。中継芯6は、パイプ材5の内部、及び毛筆4の内部において軸線方向D1に延在する。中継芯6は、パイプ材5に挿入される第1挿入部6bと、毛筆4に挿入される第2挿入部6cとを有し、例えば、第1挿入部6bの外径は第2挿入部6cの外径よりも大きい。一例として、第1挿入部6bは円柱状を呈し、第2挿入部6cは第1挿入部6bから離れるに従って縮径する円錐状を呈する。
【0033】
以上のように、中継芯6は、前側に位置する第2挿入部6cが毛筆4に入り込み、後側に位置する第1挿入部6bがパイプ材5に入り込むことによってパイプ材5に含まれる液状内容物Mと毛筆4との間に介在する。中継芯6は、例えば、毛細管現象によってパイプ材5の内部の液状内容物Mを吸い上げて毛筆4に送り込む。
【0034】
毛筆4の後側の部分は先筒部2cの内部に配置されており、毛筆4は先筒部2cの開口2bから前側(キャップ3側)に突出する。毛筆4は、液状内容物Mを塗布する複数の毛4dと、毛4dの後端に位置する環状の毛筆保持部4cとを有する。例えば、毛筆保持部4cには、複数の毛4dの端部が固着されている。
【0035】
毛筆保持部4cは、本体2の内部において開口2bに向かって縮径する段差部2mと拡径された中継芯6の第1挿入部6bとの間に軸線方向D1に挟み込まれている。これにより、毛筆4は軸線方向D1に移動不能とされている。一例として、毛筆4は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)繊維を束ねることによって構成されている。
【0036】
本体2の開口2bとの反対側の開口2pには尾栓7が挿し込まれており、尾栓7は塗布容器1の後端の開口2pを塞いでいる。尾栓7の前端は、例えば、パイプ材5の後端に接触している。次に、本体2についてより詳細に説明する。図6は、本体2を示す縦断面図(軸線方向D1に延びる平面に沿って切断された断面図)である。図7は、本体2の開口2b及び先筒部2cの付近を拡大させた断面斜視図である。図6及び図7に示されるように、本体2の内部には、液状内容物Mが充填されたパイプ材5が収容される充填部2qと、充填部2qから開口2bに向かって延びる内部空間2rと、内部空間2rから開口2bまで縮径しながら延びる縮径空間2sとが形成されている。
【0037】
充填部2qの内径は内部空間2rの内径よりも大きく、内部空間2rの内径は縮径空間2sの内径よりも大きい。すなわち、充填部2qから内部空間2r及び縮径空間2sに向かうに従って本体2の内径が小さくなっている。充填部2qと内部空間2rとの間に前述した段差部2mが形成されている。
【0038】
図8は、本体2の開口2bを前方(キャップ3側)から見た正面図である。図6図7及び図8に示されるように、本体2は、例えば、その前端にキャップ3が切り離される切り離し部10を有する。切り離し部10は、切り離し部10の内面において本体2の径方向D2の外側に凹む溝11を有する。なお、「径方向D2」は、図8では左右方向を向く矢印として記載しているが、本体2の径方向であって、本体2の外周から本体2の中心に対して接近又は離間する方向を示している。すなわち、図8の例では、本体2の中心から本体2の外周に向かう全ての方向(本体2の中心から上下に延びる方向、及び本体2の中心から左右に延びる方向を含む)を示している。溝11は、開口2bからパイプ材5に収容された液状内容物Mに空気を供給する空気流路である。
【0039】
溝11は、本体2の開口2bから後方に延在する。溝11は、例えば、開口2bから軸線方向D1に延在しており開口2bから充填部2qまで延在する。例えば、溝11の開口2bとの反対側の端部(後端)の位置はパイプ材5の後端よりも後方である。これにより、パイプ材5の軸線方向D1の一端から他端まで溝11が延在した状態となるので、開口2bからパイプ材5の後端までの空気流通が確保される。
【0040】
溝11は、例えば、縮径空間2sに形成された第1溝部11bと、内部空間2rに形成された第2溝部11cと、充填部2qに形成された第3溝部11dとを含む。第1溝部11b、第2溝部11c及び第3溝部11dは、例えば、軸線方向D1に沿って一直線状(略一直線状)に並んでいる。
【0041】
溝11は、例えば、本体2の径方向D2の外側に曲面状に窪んでいる。一例として、溝11は円弧状に窪んでいる。切り離し部10は、例えば、複数の溝11を有し、複数の溝11は切り離し部10の周方向D3に沿って並んでいる。一例として、4つの溝11が周方向D3に沿って等間隔に並んでいる。
【0042】
図5及び図9に示されるように、本体2の開口2bとの反対側の開口2pには、開口2pを塞ぐ尾栓7が装着される。図9は、尾栓7を示す縦断面図である。尾栓7は、パイプ材5に軸線方向D1に沿って対向する底部7bと、底部7bから軸線方向D1に沿って延在する筒状部7cと、筒状部7cの底部7bとの反対側の端部において開口2pを塞ぐ鍔部7dとを有する。例えば、尾栓7は、PPによって構成されている。
【0043】
底部7bは、本体2の軸線方向D1の端部に位置する開口2pよりも本体2の軸線方向D1の中央側(前側)に入り込んでいる。すなわち、尾栓7の底部7bは、本体2の軸線方向D1の一端に位置する開口2pより、本体2の軸線方向D1の他端に位置する開口2b側に入り込んでいる。
【0044】
底部7bが開口2pより前側に入り込んでいることにより、軸線方向D1の一方側及び他方側のそれぞれに金型を配置して尾栓7を射出成形するときに、樹脂成形後における金型の取り外しを容易に行うことができる。更に、尾栓7の底部7bが前側に位置することによって、本体2の充填部2qにおけるパイプ材5の配置空間の容積を小さくできるので、液状内容物Mの揮発を抑制することが可能となる。
【0045】
底部7bは、例えば、軸線方向D1に突出する凸部7fを有する。一例として、底部7bは複数の凸部7fを有し、複数の凸部7fが周方向D3に沿って並んでいる。これにより、複数の凸部7fの間に形成された凹部7gが溝11からの空気流通路となるので、パイプ材5に充填された液状内容物Mに対してより効果的に空気流通を行うことができる。一例として、周方向D3に沿って4つの凸部7fが等間隔に並んでいる。また、尾栓7は、周方向D3に沿って並ぶ4つの凹部7gを備える。しかしながら、凸部7fの数、及び凹部7gの数は、4つでなくてもよく、1つ、2つ、3つ又は5つ以上であってもよく、特に限定されない。
【0046】
筒状部7cは、底部7bの径方向D2の外側の端部から後方に延び出している。筒状部7cの外周面7hには、例えば、底部7bから鍔部7dに向かって拡径するように傾斜する傾斜面7jと、傾斜面7j及び鍔部7dの間に位置する環状凸部7kとが形成されている。傾斜面7jよりも底部7b側における尾栓7の外径は、傾斜面7jよりも鍔部7d側における尾栓7の外径よりも小さい。例えば、環状凸部7kは円弧状に突出している。
【0047】
尾栓7の筒状部7cの外径は本体2の内径以下であり、筒状部7cが開口2pから本体2の内部に入り込むことによって尾栓7が本体2に装着される。このとき、筒状部7cが本体2の内側に入り込み、尾栓7の傾斜面7jが本体2の内面2tに対向すると共に環状凸部7kが内面2tに当接する。
【0048】
鍔部7dは、尾栓7の軸線方向D1における底部7bとの反対側の端部において拡径している。鍔部7dの外径は、本体2の内径よりも大きい。従って、尾栓7の筒状部7cが本体2の内部に入り込むと、鍔部7dの軸線方向D1を向く面7mが本体2の軸線方向D1の一端2vに対向又は接触する。
【0049】
次に、図10及び図11を参照しながら、本体2、キャップ3及び切り離し部10について更に説明する。切り離し部10は、本体2からキャップ3を切り離し可能にすると共に、切り離し前に本体2及びキャップ3を互いに接続している。具体的には、切り離し前においては、本体2の先筒部2cの縮径された部分とキャップ3の第1被覆部3bの縮径された部分とが切り離し部10を介して互いに接続されている。
【0050】
切り離し部10の切り離し前において、本体2及びキャップ3の内部空間は、キャップ3の内部に設けられた仕切壁3pを介して分断されている。従って、仕切壁3pの軸線方向D1の一方側及び他方側のそれぞれに金型を配置して射出成形を行うことにより、当該金型の引き抜きを容易に行うことができると共に、本体2及びキャップ3の一体成形を容易に行うことができる。
【0051】
前述した溝11は、例えば、切り離し部10から本体2の充填部2qの開口2p側(後側)まで延在している。溝11は、例えば、軸線方向D1に沿って直線状に延在している。図11及び図12に示されるように、本体2及びキャップ3の縦断面(軸線方向D1に沿って延びる平面に沿って切断した断面)において、例えば、切り離し部10は台形状を呈する。
【0052】
切り離し部10は、例えば、本体2の軸線方向D1の一端においてキャップ3に向かって本体2が縮径する方向に傾斜する前述した第1テーパ面2gと、キャップ3の軸線方向D1の一端において本体2に向かってキャップ3が縮径する方向に傾斜する第4テーパ面3sと、第1テーパ面2g及び第4テーパ面3sの間に位置する底面14とを含む。溝11の一端11gの軸線方向D1における位置は、例えば、底面14の軸線方向D1における位置と一致している。本開示において、「一致」とは、厳密に一致する場合に限られない。「溝の軸線方向の一端が切り離し部の位置と一致する」ことには、例えば、溝の軸線方向の一端が切り離し部の位置から若干ずれている場合(略一致の場合)であって、厳密に一致する場合と同様の作用効果をもたらす場合も含まれる。本実施形態では、溝11の一端11gの軸線方向D1の位置は、底面14の軸線方向D1の位置と同一である。
【0053】
切り離し部10の切り離し前において、本体2の縮径空間2sを形成する傾斜面2wと、キャップ3の第1内部空間3gを形成する内面3hとの間には、傾斜面2wから径方向D2の内側に突出する段差部15が形成されている。本体2、キャップ3及び切り離し部10の内部において、塗布材1Aは段差部15又は内面3hに当接している。
【0054】
具体的には、毛筆4が段差部15又は内面3hに当接しており、毛筆4の内部において中継芯6の一部が本体2から切り離し部10及びキャップ3の内部まで延在している。このように、塗布材1Aが段差部15又は内面3hに当接していることにより、切り離し部10が切り離される前には溝11の空気流路が塞がれている。なお、切り離し部10の切り離し前においては、キャップ3の第1被覆部3bによって塗布材1Aの気密が確保されているので、塗布材1Aが段差部15又は内面3hに当接していなくてもよい。
【0055】
切り離し部10は、本体2及びキャップ3の肉厚の中で厚みが抑えられた縮径部(肉薄部、脆弱部)とされているため、本体2に対してキャップ3を径方向D2に折り曲げると、例えば、最も肉薄とされた底面14の部分が引き延ばされる。本体2に対するキャップ3の折り曲げを継続すると、引き延ばされた底面14の部分が破断して本体2からキャップ3が分離される。このとき、切り離し部10が切り離されて、例えば、底面14と第1テーパ面2gの間の部分が本体2の開口2bとなり、塗布材1A(毛筆4)が突出すると共に溝11の空気流路が開放される。そして、塗布材1Aが使用に供される。
【0056】
次に、本実施形態に係る塗布容器1から得られる作用効果について説明する。塗布容器1は、液状内容物Mを塗布する塗布材1Aを保持する筒状の本体2を備え、本体2は、塗布材1Aに送り出される液状内容物Mが充填された充填部2qを有する。塗布材1Aを保持すると共に充填部2qを有する本体2と、塗布材1Aを覆うキャップ3との間には、本体2からキャップ3を分離可能とする切り離し部10が形成されている。
【0057】
図6図8に示されるように、切り離し部10の内面には溝11が形成されており、溝11は切り離し部10の内面において径方向D2の外側に凹んだ形状とされている。よって、切り離し部10において凹む溝11が形成されていることにより、溝11の部分で切り離し部10が肉薄とされているので、切り離し部10における本体2及びキャップ3の切り離しを容易に行うことができる。
【0058】
また、切り離し部10において凹状に形成される溝11は本体2の軸線方向D1に延びている。従って、切り離し部10から本体2の軸線方向D1に延びる溝11に空気を通して本体2の内部に空気を通すことができる。すなわち、切り離し部10における切断を容易にする溝11を本体2の内部への軸線方向D1に延びる空気流路として有効利用することができる。その結果、径方向D2に貫通する空気孔を不要とすることができる。よって、塗布容器1の樹脂成形のときに用意する金型を簡易にすることができるので、樹脂成形を容易に行うことができる。従って、塗布容器1の製造コストを抑えることができるので、テスター又は試供品として相応しい塗布容器1とすることが可能となる。
【0059】
図10図12に示されるように、本実施形態では、溝11の軸線方向D1の一端11gが切り離し部10の位置と一致している。よって、溝11の一端11gが切り離し部10まで達しており、溝11の有無の境界部が切り離し部10(より具体的には底面14)と一致することとなる。従って、切り離し部10の位置と一致する溝11の一端11gにおいて切り離し部10の厚みが変わるので、切り離し部10における本体2からのキャップ3の切り離しを一層容易に行うことができる。
【0060】
本実施形態では、溝11は、切り離し部10から充填部2qまで延在している。よって、液状内容物Mが充填されている充填部2qにまで切り離し部10からの溝11が達しているので、本体2の内面における空気流路が充填部2qにまで達することとなる。従って、塗布材1Aへの液状内容物Mの送り出しをより促進させることができ、塗布材1Aへの液状内容物Mの安定した送り出しが可能となる。
【0061】
本実施形態では、溝11は、充填部2qよりも切り離し部10の反対側(後側)に延びている。よって、切り離し部10から軸線方向D1に延びる溝11が充填部2qよりも先まで延びるので、本体2の内面における空気流通を一層促進させることができる。従って、充填部2qに充填された液状内容物Mの塗布材1Aへの送り出しを更に促進させることができ、塗布材1Aへの液状内容物Mの送り出しを更に安定させることができる。
【0062】
本実施形態では、切り離し部10においてキャップ3が本体2から切り離されたときに、開口2bから毛筆4が突出する例について説明した。このように切り離し部10における切断の後に毛筆4が突出しており、毛筆4の先端4bの位置が開口2bから離間しているので、被塗布部に開口2bが当たらないようにすることができる。すなわち、切り離し部10の切り離しによって形成される開口2bは、切り離しのときに荒れた面として形成されることがあるが、開口2bが荒れた場合であっても開口2bの被塗布部への接触を抑制することができる。その結果、安全性を高めることができる。
【0063】
以上、本開示に係る塗布容器の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変更することも可能である。すなわち、塗布容器の各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述した実施形態に限られず適宜変更可能である。
【0064】
例えば、前述の実施形態では、溝11が充填部2qの後側まで延びている例について説明した。しかしながら、溝は、充填部の後側まで延びていなくてもよく、例えば、充填部の途中部分まで延びていてもよい。また、液状内容物Mを含浸する塗布材の外周に凹状の空気流路が形成されていてもよく、この場合、溝をより短くすることが可能となる。
【0065】
前述の実施形態では、毛筆4及び中継芯6を含む塗布材1Aを備える塗布容器1について説明した。しかしながら、塗布容器が備える塗布材は、毛筆又は中継芯以外のものであってもよい。例えば、塗布材は、繊維が固められて形成されたフェルト状の塗布体であってもよいし、接着剤によって固められた繊維が研磨されて形成された塗布体であってもよい。塗布材は、ポリエステル又はナイロン等の繊維が先細りとされて束ねられたものであってもよい。また、塗布材は、中継芯を有しておらず、毛筆のみによって構成される塗布材であってもよい。
【0066】
また、塗布材は、前述した中継芯6を囲む筒状のジャバラ部材を含んでいてもよい。ジャバラ部材は、例えば、液状内容物Mの流れを制御する部品であって、液状内容物Mを含む溝(ジャバラ)を有する。また、毛筆4等の塗布具の後側に上記のジャバラ部材を配置して直接充填部に液状内容物が充填されてもよい。このように、塗布材の構成は適宜変更可能である。
【0067】
前述の実施形態では、本体2に対してキャップ3を折り曲げることによって切り離される切り離し部10について説明した。しかしながら、切り離し部における切り離しの態様は、折り曲げに限定されない。例えば、切り離し部は、本体に対してキャップを回転させることによって切り離される切り離し部であってもよく、切り離し部の態様は適宜変更可能である。
【0068】
前述の実施形態では、液状内容物Mが液状化粧料である例について説明した。しかしながら、液状内容物は、液状化粧料以外のものであってもよく、例えば、インク等であってもよい。更に、塗布容器は、化粧料容器以外の容器であってもよく、筆記具、デザイン用ペン又は文房具等であってもよい。このように、塗布容器は、種々の容器に適用させることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…塗布容器、1A…塗布材、2b…開口、2c…先筒部、2d…段差部、2f…拡径筒部、2g…第1テーパ面、2h…第2テーパ面、2j…第3テーパ面、2m…段差部、2p…開口、2q…充填部、2r…内部空間、2s…縮径空間、2t…内面、2v…一端、2w…傾斜面、3…キャップ、3b…第1被覆部、3c…第2被覆部、3d…傾斜部、3g…第1内部空間、3h…内面、3j…第2内部空間、3k…底部、3m…底部、3p…仕切壁、3q…内面、3r…環状凸部、3s…第4テーパ面、4…毛筆、4b…先端、4c…毛筆保持部、4d…毛、5…パイプ材、6…中継芯、6b…第1挿入部、6c…第2挿入部、7…尾栓、7b…底部、7c…筒状部、7d…鍔部、7f…凸部、7g…凹部、7h…外周面、7j…傾斜面、7k…環状凸部、7m…面、10…切り離し部、11…溝、11b…第1溝部、11c…第2溝部、11d…第3溝部、14…底面、15…段差部、D1…軸線方向、D2…径方向、D3…周方向、L…軸線、M…液状内容物、S…隙間。
図1
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