(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041124
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】マニピュレータ及びロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20220304BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B25J9/06 E
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146166
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】515130201
【氏名又は名称】株式会社Preferred Networks
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鍋嶌 厚太
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠輔
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707BS26
3C707KS03
3C707KT01
3C707KT05
3C707LT06
(57)【要約】
【課題】 マニピュレータ及びロボットにおいて、撮像対象である操作対象物と周辺環境を撮影しやすくする。
【解決手段】 マニピュレータであって、エンドエフェクタが取り付けられるメインアームから分岐する分岐アームを有し、前記分岐アームは、撮像装置を有し、前記メインアームを動かさずとも前記撮像装置の撮像対象に対する位置を可変にする機構を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレータであって、
エンドエフェクタが取り付けられるメインアームから分岐する分岐アームを有し、
前記分岐アームは、
撮像装置を有し、
前記メインアームを動かさずとも前記撮像装置の撮像対象に対する位置を可変にする機構を有する、マニピュレータ。
【請求項2】
前記分岐アームが有する前記機構は、前記分岐アームを屈伸させる回転関節、および、前記分岐アームを伸縮させる直動関節の少なくともいずれかを有し、いずれかの関節が可動することによって、前記メインアームを動かさずとも前記撮像装置の撮像対象に対する位置を可変にする、請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項3】
前記分岐アームが有する前記機構は、少なくとも、
前記撮像装置をチルト方向に回転させる第3の軸と、
前記第3の軸と回転軸が平行な第2の軸と、
前記第2の軸と回転軸が直交する第1の軸と、
を有し、
前記第3の軸は、前記第1の軸および前記第2の軸よりも前記撮像装置に近く、
前記第3の軸と前記第2の軸との間の距離は、前記第2の軸と前記第1の軸との間の距離よりも遠い、請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項4】
前記分岐アームが有する前記機構は、前記分岐アームの分岐部と前記撮像装置との間に設けられた、第1および第2の関節を有し、
前記第1の関節は、前記第2の関節が前記撮像装置を回転させる回転軸に直交する方向に、前記撮像装置の位置を移動させる、請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項5】
前記第2の関節は、前記第1の関節と前記撮像装置との間に設けられる、請求項4に記載のマニピュレータ。
【請求項6】
前記第1の関節は、回転軸が前記第2の関節の回転軸と平行な回転関節、または、直動軸が前記第2の関節の回転軸と直交する直動関節のいずれである、請求項4または5に記載のマニピュレータ。
【請求項7】
前記分岐アームが有する前記機構は、前記メインアームを動かさずとも前記撮像装置の撮像対象に対する姿勢も可変にする機構である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のマニピュレータ。
【請求項8】
マニピュレータであって、
複数のリンク部のうち、エンドエフェクタが取り付けられるリンク部以外のいずれかのリンク部から分岐する、多軸の分岐アームと、
前記分岐アームの先端に取り付けられる撮像装置と、を有し、
前記撮像装置は、前記分岐アームが分岐する位置と前記エンドエフェクタとの間のアームの長さよりも前記分岐アームの長さの方が長い状態で撮影を行うことが可能である、マニピュレータ。
【請求項9】
前記分岐アームは、少なくとも2種類の回転機能と、前記撮像装置の撮像対象に対する位置を可変にするリフト機能とを有する、請求項8に記載のマニピュレータ。
【請求項10】
前記分岐アームの前記2種類の回転機能には、前記撮像装置をパン方向及びチルト方向に回転させる機能が含まれる、請求項9に記載のマニピュレータ。
【請求項11】
前記分岐アームは、エンドエフェクタが取り付けられるリンク部以外のリンク部のうち、先端から3番目のリンク部から分岐する、請求項8に記載のマニピュレータ。
【請求項12】
前記分岐アームは直動機構を有し、当該直動機構によって前記分岐アームを伸長することにより、前記撮像装置は、前記分岐アームが分岐する位置と前記エンドエフェクタとの間のアームの長さよりも前記分岐アームの長さの方が長い状態で撮影を行うことが可能である、請求項8に記載のマニピュレータ。
【請求項13】
前記分岐アームの先端には、更に、音入力装置、音出力装置、発光装置のうちのいずれかが取り付けられる、請求項8に記載のマニピュレータ。
【請求項14】
前記マニピュレータは、垂直多関節型のマニピュレータである、請求項1乃至13のいずれか1項に記載のマニピュレータ。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のマニピュレータと、
前記マニピュレータを移動させる移動体と
を有するロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マニピュレータ及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置により撮影された撮影画像を用いて、例えば、垂直多関節型のマニピュレータ等を動作させる、ビジュアルフィードバック制御技術が知られている。一般に、当該技術が適用される垂直多関節型のマニピュレータは、撮像装置を天井等の固定した位置に取り付けて撮像装置をマニピュレータの動作と連動させない構成と、撮像装置をエンドエフェクタ等に取り付けて撮像装置をマニピュレータの動作と連動させる構成とに大別することができる。なお、撮像装置の撮像対象は、エンドエフェクタの操作する操作対象物、および、その周辺環境の一方または両方である。
【0003】
このうち、撮像装置をマニピュレータの動作と連動させない構成の場合、操作対象物(撮像対象でもある)がマニピュレータのアームによって遮蔽され、操作対象物に対する視野が制限されることがある。
【0004】
一方、撮像装置をマニピュレータの動作と連動させる構成の場合、マニピュレータのアームによって遮蔽されることは回避されるが、例えば、エンドエフェクタが操作対象物を把持した後は、操作対象物によって、周辺環境(撮像対象)に対する視野が制限されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、マニピュレータ及びロボットにおいて、撮像対象を撮影しやすくする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、例えば、以下のような構成を有する。即ち、
マニピュレータであって、
エンドエフェクタが取り付けられるメインアームから分岐する分岐アームを有し、
前記分岐アームは、
撮像装置を有し、
前記メインアームを動かさずとも前記撮像装置の撮像対象に対する位置を可変にする機構を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】垂直多関節型のマニピュレータを有するロボットの全体構成を示す図である。
【
図2】メインアーム部の各リンク部及びエンドエフェクタの動作方向を示す図である。
【
図3】サブアーム部の各リンク部及び撮像装置の動作方向を示す図である。
【
図4】サブアーム部の長さと、メインアーム部の分岐位置とエンドエフェクタとの間のアームの長さとの関係を示す図である。
【
図5】垂直多関節型のマニピュレータの動作例を示す第1の図である。
【
図6】垂直多関節型のマニピュレータの動作例を示す第2の図である。
【
図7】垂直多関節型のマニピュレータの動作例を示す第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0010】
[第1の実施形態]
<垂直多関節型のマニピュレータを有するロボットの全体構成>
はじめに、垂直多関節型のマニピュレータを有するロボットの全体構成について説明する。
図1は、垂直多関節型のマニピュレータを有するロボットの全体構成を示す図である。
図1に示すように、ロボット100は、垂直多関節型のマニピュレータ110と、移動体150とを有する。
【0011】
このうち、移動体150は、ロボット100を移動させ、ロボット100全体の位置を制御する。移動体150は、支持部151と、駆動部152と、制御装置153とを有する。
【0012】
支持部151は、垂直多関節型のマニピュレータ110を支持する基部である。駆動部152は、ロボット100を任意の位置に移動させる。制御装置153は、垂直多関節型のマニピュレータ110の動作及び駆動部152の動作を制御する。
【0013】
一方、垂直多関節型のマニピュレータ110は、ビジュアルフィードバックにより不図示の操作対象物に対して所定の操作を行う。このマニピュレータ110は、
図1中の点線Lより下側に示したメインアーム部110a及びエンドエフェクタ110bと、点線Lより上側に示したサブアーム部110c(分岐アームの一例)及び撮像装置110dと、に大別することができる。すなわち、制御装置153は、撮像装置110dで撮影された撮影画像中から撮像対象を特定し、撮影画像を用いたビジュアルフィードバック制御により、メインアーム部110a及びサブアーム部110cの動作を制御する。そしてメインアーム部110aを制御することでエンドエフェクタ110bの位置及び姿勢を適切に制御したり、サブアーム部110cを制御することで撮像装置110dの位置及び姿勢を適切に制御したりする。
【0014】
メインアーム部110aは、複数のリンク部(第1のリンク部111a、第2のリンク部112a、第3のリンク部113a、第4のリンク部114a、第5のリンク部115a)を有する。
【0015】
第1のリンク部111aの一方の端部は、移動体150に対して、回転部121を介して取り付けられる。また、第1のリンク部111aは昇降機構を有し、他端には、回転部122を介して第2のリンク部112aの一方の端部が取り付けられる。
【0016】
本実施形態において、第2のリンク部112aの他方の端部には、分岐部140が形成されており、分岐部140には、サブアーム部110cが取り付けられる。すなわち、サブアーム部110cは、エンドエフェクタが取り付けられるメインアーム部110aの途中から分岐するよう構成されている。また、分岐部140は、回転部123を有し、回転部123を介して、第3のリンク部113aの一方の端部が取り付けられる。つまり、サブアーム部110cは、第3のリンク部113aの根元から分岐する。
【0017】
第3のリンク部113aの他方の端部には、回転部124を介して第4のリンク部114aの一方の端部が取り付けられる。また、第4のリンク部114aの他方の端部には、回転部125を介して、第5のリンク部115aの一方の端部が取り付けられる。更に、第5のリンク部115aの他方の端部には、回転部126を介して、把持機能を有するエンドエフェクタ110bが取り付けられる。
【0018】
このように、メインアーム部110aは、6個の関節(基部から順に回転部121~126)及び1個の昇降機構と、5個のリンク(基部から順に第1のリンク部111a~第5のリンク部115a)とを有する。そして、メインアーム部110aは、先端に取り付けられたエンドエフェクタ110bが操作対象物を把持する。
【0019】
つまり、メインアーム部110aは、ビジュアルフィードバック制御により、6軸(6個の関節)と1昇降機構とを制御することで、エンドエフェクタ110bの位置及び姿勢を制御する。そして、エンドエフェクタ110bは、メインアーム部110aにより制御された位置及び姿勢のもとで、ビジュアルフィードバック制御により、把持機能を制御し、操作対象物を把持する。
【0020】
一方、分岐部140に取り付けられたサブアーム部110cは、第1のリンク部111c、第2のリンク部112cを有する。リンク長は、第1のリンク部111cよりも第2のリンク部112cのほうが長く、回転部133と回転部132との間の距離は、回転部132と回転部132との間の距離よりも遠い。
【0021】
第1のリンク部111cの一方の端部は、分岐部140に対して、回転部131を介して取り付けられる。また、第1のリンク部111cの他方の端部には、回転部132を介して第2のリンク部112cの一方の端部が取り付けられる。更に、第2のリンク部112cの他方の端部には、回転部133を介して、撮像装置110dが取り付けられる。
【0022】
このように、サブアーム部110cは、3個の関節(分岐部140から順に回転部131~133)と、2個のリンク(分岐部140から順に第1のリンク部111c~第2のリンク部112c)とを有する。そして、サブアーム部110cは、先端に取り付けられた撮像装置110dが、撮像対象(操作対象物や周辺環境等)を撮影する。
【0023】
つまり、サブアーム部110cは、ビジュアルフィードバック制御により、3軸(3個の関節)を制御することで、撮像装置110dの位置及び姿勢を3自由度で制御する。このとき、サブアーム部110cは、メインアーム部110aとの干渉を回避するように3軸を制御する。また、撮像装置110dは、サブアーム部110cにより制御された位置及び姿勢のもとで、撮像対象(操作対象物や周辺環境等)を撮影し、撮影画像を出力する。この撮像装置110dの撮影方向は、回転部131、132、133の回転角度に依存するが、
図1の場合には左方向であるとする。
【0024】
このように、マニピュレータ110は、
・メインアーム部110aの動作の一部に連動する位置、かつ、
・エンドエフェクタ110bから離れた位置、
である、第3のリンク部113aの根元からサブアーム部110cが分岐し、
・サブアーム部110cが分岐する位置とエンドエフェクタ110bとの間のアーム(本実施形態では、第3のリンク部113a~第5のリンク部115a及び回転部124~126)とは独立して、サブアーム部110cを、3自由度で制御する。
【0025】
換言すると、マニピュレータ110は、メインアーム部110aを動かさずとも、メインアーム部110aや操作対象物によって遮蔽されない位置及び姿勢で撮像装置110dによる撮影が行われるよう、サブアーム部110cを制御する。なお、メインアーム部110aはビジュアルフィードバック制御のもと、動作してよい。すなわち、サブアーム部110cは、メインアーム部110aを動かさずとも撮像装置110dの撮像対象(操作対象物や周辺環境等)に対する位置及び姿勢を可変にする機構を有し、かつ、撮像装置110dは撮像対象に対する位置及び姿勢を変えて撮像対象を撮影することができる。
【0026】
この結果、本実施形態に係るマニピュレータ110によれば、
・撮像装置110dが操作対象物を撮影する際、メインアーム部110aによって遮蔽されるのを回避し、操作対象物を容易に撮影することができる。
・エンドエフェクタ110bが操作対象物を把持した後であっても、操作対象物によって遮蔽されるのを回避し、周辺環境を容易に撮影することができる(例えば、移動体150の移動を制御する際にも撮像装置110dの撮影画像を利用することができる)。
【0027】
<メインアーム部の各リンク部及びエンドエフェクタの動作方向>
次に、メインアーム部110aの各リンク部(第1のリンク部111a~第5のリンク部115a)及びエンドエフェクタ110bの動作方向について説明する。
図2は、メインアーム部の各リンク部及びエンドエフェクタの動作方向を示す図である。
【0028】
図2に示すように、回転部121に取り付けられた第1のリンク部111aは、矢印201方向に回転する。これにより、メインアーム部110a及びエンドエフェクタ110b全体の向きを変えることができる。例えばメインアーム部110a及びエンドエフェクタ110bはヨー(YAW)方向に向きを変えることができる。また、第1のリンク部111aは、昇降機構により、矢印202方向に上下動(伸縮)する。これにより、メインアーム部110a及びエンドエフェクタ110b全体の高さを垂直方向に変えることができる。なお、回転部121の回転軸と昇降機構の昇降軸は一致していてもよい。本実施形態に係るマニピュレータ110は、回転部121の回転軸を、マニピュレータ110の上下方向とする。なお、本明細書(請求項を含む)において、「一致する」とは「ほぼ一致する」など実質的に一致する態様を含む。
【0029】
また、回転部122に取り付けられた第2のリンク部112aは、矢印203方向に回転する。これにより、メインアーム部110aの第2のリンク部112a以降の先端側のリンク部及びエンドエフェクタ110bを、回転部122周りにリフトさせることができる。なお、回転部122の回転軸は、昇降機構の昇降軸に直交またはほぼ直交していてもよい。本実施形態に係るマニピュレータ110は、回転部122の回転軸を、マニピュレータ110の左右方向とし、回転部121と回転部122それぞれの回転軸に直交する方向を、マニピュレータ110の前後方向とする。特にマニピュレータの前方とは、回転部122に取り付けられたリンク部112aが屈曲する方向であり、
図2の場合には左側の方向である。なお、本明細書(請求項を含む)において、「直交する」とは「ほぼ直交する」など実質的に直交する態様を含む。
【0030】
また、回転部123に取り付けられた第3のリンク部113aは、矢印204方向に回転する。これにより、メインアーム部110aの第3のリンク部113a以降の先端側のリンク部及びエンドエフェクタ110bを、回転部123周りにリフトさせることができる。なお、回転部123の回転軸は、回転部122の回転軸に平行またはほぼ平行であってもよい。なお、本明細書(請求項を含む)において、「平行である」とは「ほぼ平行である」など実質的に平行である態様を含む。
【0031】
また、回転部124に取り付けられた第4のリンク部114aは、矢印205方向に回転する。これにより、メインアーム部110aの第4のリンク部114a以降の先端側のリンク部及びエンドエフェクタ110bを、回転部124周りに回転させることができる。なお、回転部124の回転軸は、回転部123の回転軸に直交していてもよい。
【0032】
また、回転部125に取り付けられた第5のリンク部115aは、矢印206方向に回転する。これにより、エンドエフェクタ110bをピッチ方向に回転させることができる。回転部125は、メインアーム部110aを屈伸(屈曲及び伸展)させる回転部としては、メインアーム部110aの最もエンドエフェクタ110b側に設けられた回転部である。なお、回転部125の回転軸は、回転部124の回転軸に直交していてもよい。
【0033】
また、回転部126に取り付けられたエンドエフェクタ110bは、矢印207方向に回転する。これにより、エンドエフェクタ110bをロール方向に回転させることができる。なお、回転部126の回転軸は、回転部125の回転軸に直交していてもよい。
【0034】
<サブアーム部の各リンク部の動作方向>
次に、サブアーム部110cの各リンク部(第1のリンク部111c、第2のリンク部112c)及び撮像装置110dの動作方向について説明する。
図3は、サブアーム部の各リンク部及び撮像装置の動作方向を示す図である。
【0035】
図3に示すように、回転部131に取り付けられた第1のリンク部111cは、矢印301方向に回転する。これにより、サブアーム部110c及び撮像装置110d全体の向きをパン方向に回転させることができる。なお、回転部131の回転軸は、回転部122、123の回転軸に直交していてもよい。また、回転部131の回転軸は、サブアーム部110cがメインアーム部110aから分岐する面に直交していてもよい。また、回転部131の回転軸と第1のリンク部111cの長手方向とが一致していてもよい。
【0036】
また、回転部132に取り付けられた第2のリンク部112cは、矢印302方向に回転する。すなわち、回転部132は、サブアーム部110cを屈曲および伸展させる回転部(回転関節、回転機構)である。これにより、サブアーム部110cの第2のリンク部112c及び撮像装置110dを回転部132周りにリフトさせることができる。なお、回転部132の回転軸は、回転部131の回転軸に直交していてもよい。
【0037】
また、回転部133に取り付けられた撮像装置110dは、矢印303方向に回転する。これにより、撮像装置110dをチルト方向に回転させることができる。なお、回転部133の回転軸は、回転部132の回転軸に平行であってもよい。そのため、回転部132は、回転部133の回転軸に直交する方向に、撮像装置110dの位置を移動させる。
【0038】
このようにサブアーム部110cは、自身が有する3軸を制御することで、メインアーム部110aを動かさずとも、撮像装置110dと撮像対象との間に遮蔽物が入らないよう撮像装置110dを3次元的(上下前後左右方向)に動かし、当該撮像装置110dの撮像対象に対する位置および姿勢を可変にする。
【0039】
<サブアーム部の長さ>
次に、サブアーム部110cの長さについて、メインアーム部110aとの関係に基づいて説明する。
図4は、サブアーム部の長さと、メインアーム部の分岐部とエンドエフェクタとの間のアームの長さとの関係を示す図である。
【0040】
図4に示すように、サブアーム部110cの長さ(分岐部140からサブアーム部が分岐する位置(これを分岐位置と称す)と、回転部133の回転中心との間のアームの長さ)をLn_cとする。
【0041】
一方、
図4に示すように、メインアーム部110aのうち、分岐部140における分岐位置と、メインアーム部110aを屈伸(屈曲及び伸展)させる関節として最もエンドエフェクタ110bに近い位置に設けられた回転部との間のアームの長さをLn_aとする。具体的には、Ln_aは、分岐位置と回転部125の回転中心との間の長さに対応する。
【0042】
本実施形態に係るマニピュレータ110は、Ln_c>Ln_aの関係が成立するように構成される。つまり、本実施形態に係るマニピュレータ110では、サブアーム部110cの回転部133を、メインアーム部110aの回転部125よりも外側(
図4の場合には左側。すなわち、撮像対象に近い側)に位置させることができるように、サブアーム部110cを構成する。これにより、撮像装置110dは、分岐位置とエンドエフェクタ110bとの間のアームの長さよりもサブアーム部110cの長さの方が長い状態で、撮影を行うことが可能である。この結果、エンドエフェクタ110bが操作対象物を把持する際に、撮像装置110dは、エンドエフェクタ110bによって遮蔽されることなく、操作対象物を近くからあるいは遠くから覗き込むように撮影することができる。
【0043】
なお、
図4の例は、分岐位置が属する分岐部140の面(分岐面)に対して、直交する方向の長さ関係について説明したが、分岐位置が属する分岐部140の面(分岐面)に対して、平行な方向の長さについても同様の関係が成立するものとする。
【0044】
具体的には、サブアーム部110cにおいて、回転部132が、第2のリンク部112cを分岐面に平行となるように回転させた場合の、リンク部112cの長さ(回転部123よりも下方向に突出している部分の長さ)をLn_c'とする。
【0045】
また、メインアーム部110aにおいて、回転部123が、第3のリンク部113aを分岐面に平行となるように回転させた場合の、回転部125の回転中心までのアームの長さ(ただし、回転部123よりも下方向に突出している部分のアームの長さ)をLn_a'とする。
【0046】
そして、本実施形態に係るマニピュレータ110は、Ln_c'>Ln_a'の関係が成立するように構成される。つまり、本実施形態に係るマニピュレータ110では、サブアーム部110cの回転部133を、メインアーム部110aの回転部125よりも外側(
図4の場合には下側。すなわち、撮像対象に近い側)に位置させることができるように、サブアーム部110cを構成する。
【0047】
以上の説明によれば、本実施形態に係るマニピュレータ110は、サブアーム部110cの一部であるリンク部112cが、メインアーム部110aの一部であって分岐部140より先端側のリンク部114aに平行であり、かつ、分岐部140側からみて回転部133が回転部125より外側に位置するような状態を、少なくとも1つ作り出せるように構成される。
【0048】
<垂直多関節型のマニピュレータの動作例>
次に、垂直多関節型のマニピュレータ110の動作例について説明する。
図5から
図7は、このマニピュレータの動作例を示す第1~第3の図である。各図の説明において、撮像装置110dの撮影方向は破線の矢印の方向であり、撮像対象は、少なくともエンドエフェクタ110bの操作対象物を含む。このうち、
図5は、エンドエフェクタ110bが高所にある操作対象物を把持するケースを示したものである。上述したように、サブアーム部110cは、2種類の回転機能と1種類のリフト機能を含む3軸を有し、かつ、Ln_c>Ln_aの関係を有している。このため、撮像装置110dは、高所にある操作対象物をエンドエフェクタ110bが把持する際に、エンドエフェクタ110bに遮蔽されることなく撮像対象を撮影することができる(横から覗き込むように撮影することができる)。
【0049】
図6は、エンドエフェクタ110bが移動体150から最も離れた位置にある操作対象物を把持するケースを示したものである。上述したように、サブアーム部110cは、2種類の回転機能と1種類のリフト機能を含む3軸を有し、かつ、Ln_c>Ln_aの関係を有している。このため、撮像装置110dは、移動体150から最も離れた位置にある操作対象物をエンドエフェクタ110bが把持する際に、エンドエフェクタ110bに遮蔽されることなく撮影することができる(上から覗き込むように撮影することができる)。
【0050】
図7は、エンドエフェクタ110bが低所にある操作対象物を把持するケースを示したものである。上述したように、サブアーム部110cは、2種類の回転機能と1種類のリフト機能を含む3軸を有し、かつ、Ln_c>Ln_aの関係を有している。このため、撮像装置110dは、低所にある操作対象物をエンドエフェクタ110bが把持する際に、エンドエフェクタ110bに遮蔽されることなく撮影することができる(上から覗き込むように撮影することができる)。
【0051】
なお、
図5~
図7の動作例には示していないが、エンドエフェクタ110bが操作対象物を把持した後に、メインアーム部110aが、操作対象物を所定の位置に移動させる場合(あるいはロボット100が任意の位置に移動する場合)も同様である。この場合も、上述したように、サブアーム部110cは、分岐位置とエンドエフェクタ110bとの間のアームとは独立して3自由度で制御されるため、撮像装置110dは、周辺環境(撮像対象)を操作対象物に遮蔽されることなく撮影することができる。
【0052】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、第1の実施形態に係るマニピュレータ110は、
・第1~第5のリンク部のうち、エンドエフェクタが取り付けられた第5のリンク部以外の第3のリンク部の根元から分岐する、多軸(3軸)のサブアーム部を有する。
・サブアーム部の先端に取り付けられる撮像装置を有する。
・撮像装置は、サブアーム部が分岐する分岐位置とエンドエフェクタとの間のアームの長さよりもサブアーム部の長さの方が長い状態で撮影を行うことが可能である。
【0053】
これにより、第1の実施形態に係るマニピュレータ110によれば、
・撮像装置が操作対象物を撮影する際、メインアーム部によって遮蔽されるのを回避し、操作対象物を容易に撮影することができる。
・エンドエフェクタが操作対象物を把持した後であっても、操作対象物によって遮蔽されるのを回避し、周辺環境を容易に撮影することができる。
【0054】
つまり、第1の実施形態によれば、マニピュレータ及びロボットにおいて、撮像対象を撮影しやすくすることができる。
【0055】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、サブアーム部110cを、メインアーム部110aの先端から3番目のリンク部である第3のリンク部113aの根元から分岐させる場合について説明した。しかしながら、サブアーム部110cの分岐位置は、これに限定されない。例えば、メインアーム部110a内の第1~第5のリンク部111a~115aのうち、エンドエフェクタが取り付けられる第5のリンク部115a以外のリンク部(例えば、第1、第2、第4のリンク部)のいずれかのリンク部の根元から分岐させてもよい。
【0056】
なお、分岐位置を変更した場合でも、Ln_c>Ln_a等の関係が成立するように、サブアーム部110cが構成されることが望ましい。ただし、サブアーム部110cの自由度を増すことで、操作対象物に対する視野を確保するように構成されてもよい。
【0057】
また、上記第1の実施形態では、メインアーム部110aが、6個の関節(回転部121~126)及び1個の昇降機構と、5個のリンク(第1のリンク部111a~第5のリンク部115a)とを有するものとして説明した。しかしながら、メインアーム部110aの関節の数、昇降機構の数及びリンクの数はこれに限定されない。ただし、メインアーム部110aが、例えば、n個のリンク(第1のリンク部~第nのリンク部)を有する場合にあっては、サブアーム部110cは、第1~第(n-1)のリンク部のいずれかの根元から分岐するように構成されるものとする。
【0058】
なお、この場合も、Ln_c>Ln_a等の関係が成立するように、サブアーム部110cが構成されることが望ましい。更に、この場合も、第(n-2)のリンク部(つまり、先端から3番目のリンク部)の根元から分岐するように構成されることが望ましい。
【0059】
また、上記第1の実施形態では、サブアーム部110cが、3個の関節(回転部131~133)と、2個のリンク(第1のリンク部111c、第2のリンク部112c)とを有するものとして説明した。しかしながら、サブアーム部110cの関節の数及びリンクの数はこれに限定されず、サブアーム部110cは、3軸以上を有していればよい(つまり、3自由度以上の自由度で制御できるように構成されていればよい)。ただし、この場合も、サブアーム部110cは、少なくとも2種類の回転機能(パン方向及びチルト方向に回転させる機能)と1種類のリフト機能と有しているものとする。また、上記第1の実施形態では、互いに直交する回転部131、132は、分岐位置から回転部131、132の順に設けられているが、分岐位置から回転部132、132の順に設けられてもよい。この場合でも、回転軸が互いに平行な回転部133と回転部132との間の距離は、回転部132と回転部131との間の距離よりも遠くなるよう構成される。
【0060】
また、上記第1の実施形態では、サブアーム部110cが固定長であるとして説明した。しかしながら、サブアーム部110cは、上記リフト機能として、伸縮可能な直動軸(直動関節、直動機構)を有していてもよい。この直動軸は、回転部133と分岐部140との間に設けられても、撮像装置110dと回転部133との間に設けられてもよく、回転部133の回転軸と直交する方向に、撮像装置110dの位置を移動させる。この場合、サブアーム部110cは、最も伸長させた状態の長さLn_cが、メインアーム部110aの分岐位置とエンドエフェクタ110bとの間のアームの長さLn_aよりも長くなるように構成されるものとする。つまり、サブアーム部110cを最も伸長させることにより、撮像装置110dは、分岐位置とエンドエフェクタ110bとの間のアーム長さよりもサブアーム部110cの長さの方が長い状態で撮影を行うことができるものとする。なおサブアーム部110cは、サブアーム部110cを屈伸させる回転関節と伸縮させる直動関節の両方をリフト機能として有してよく、いずれかの関節が可動することによって、メインアーム部110aの複数のリンク部を動かさずとも撮像装置110dの撮像対象に対する位置を可変にする。
【0061】
また、上記第1の実施形態では、撮像装置110dが撮影機能のみを有するものとして説明した。しかしながら、撮像装置110dは、撮影機能に加えて、例えば、マイク等の音入力機能を有する音入力装置、スピーカー等の音出力機能を有する音出力装置、LEDライト等の照明機能を有する発光装置等を有していてもよい。また、撮像装置110dは、サブアーム部110cの先端に取り付けられるデバイスの一例であり、取り付けられるデバイスは、所定の対象に対するデバイスの位置および姿勢を状況に応じて変えることが好ましいものが好適である。所定の対象とは、例えば、音入力装置であれば音源であり、音出力装置であれば音の受け手であり、発光装置であれば操作対象物や周辺環境である。
【0062】
[その他の実施形態]
本明細書(請求項を含む)において、「a、bおよびcの少なくとも1つ(一方)」又は「a、b又はcの少なくとも1つ(一方)」の表現(同様な表現を含む)が用いられる場合は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、又はa-b-cのいずれかを含む。また、a-a、a-b-b、a-a-b-b-c-c等のように、いずれかの要素について複数のインスタンスを含んでもよい。さらに、a-b-c-dのようにdを有する等、列挙された要素(a、b及びc)以外の他の要素を加えることも含む。
【0063】
また、本明細書(請求項を含む)において、「接続される(connected)」及び「結合される(coupled)」との用語が用いられる場合は、直接的な接続/結合、間接的な接続/結合、電気的(electrically)な接続/結合、通信的(communicatively)な接続/結合、機能的(operatively)な接続/結合、物理的(physically)な接続/結合等のいずれをも含む非限定的な用語として意図される。当該用語は、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきであるが、意図的に或いは当然に排除されるのではない接続/結合形態は、当該用語に含まれるものして非限定的に解釈されるべきである。
【0064】
また、本明細書(請求項を含む)において、「AがBするよう構成される(A configured to B)」との表現が用いられる場合は、要素Aの物理的構造が、動作Bを実行可能な構成を有するとともに、要素Aの恒常的(permanent)又は一時的(temporary)な設定(setting/configuration)が、動作Bを実際に実行するように設定(configured/set)されていることを含んでよい。例えば、要素Aが汎用プロセッサである場合、当該プロセッサが動作Bを実行可能なハードウェア構成を有するとともに、恒常的(permanent)又は一時的(temporary)なプログラム(命令)の設定により、動作Bを実際に実行するように設定(configured)されていればよい。また、要素Aが専用プロセッサ又は専用演算回路等である場合、制御用命令及びデータが実際に付属しているか否かとは無関係に、当該プロセッサの回路的構造が動作Bを実際に実行するように構築(implemented)されていればよい。
【0065】
また、本明細書(請求項を含む)において、含有又は所有を意味する用語(例えば、「含む(comprising/including)」及び「有する(having)」等)が用いられる場合は、当該用語の目的語により示される対象物以外の物を含有又は所有する場合を含む、open-endedな用語として意図される。これらの含有又は所有を意味する用語の目的語が数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)である場合は、当該表現は特定の数に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0066】
また、本明細書(請求項を含む)において、ある箇所において「1つ又は複数(one or more)」又は「少なくとも1つ(at least one)」等の表現が用いられ、他の箇所において数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)が用いられているとしても、後者の表現が「1つ」を意味することを意図しない。一般に、数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)は、必ずしも特定の数に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0067】
また、本明細書において、ある実施例の有する特定の構成について特定の効果(advantage/result)が得られる旨が記載されている場合、別段の理由がない限り、当該構成を有する他の1つ又は複数の実施例についても当該効果が得られると理解されるべきである。但し当該効果の有無は、一般に種々の要因、条件、及び/又は状態等に依存し、当該構成により必ず当該効果が得られるものではないと理解されるべきである。当該効果は、種々の要因、条件、及び/又は状態等が満たされたときに実施例に記載の当該構成により得られるものに過ぎず、当該構成又は類似の構成を規定したクレームに係る発明において、当該効果が必ずしも得られるものではない。
【0068】
また、本明細書(請求項を含む)において、複数のハードウェアが所定の処理を行う場合、各ハードウェアが協働して所定の処理を行ってもよいし、一部のハードウェアが所定の処理の全てを行ってもよい。また、一部のハードウェアが所定の処理の一部を行い、別のハードウェアが所定の処理の残りを行ってもよい。本明細書(請求項を含む)において、「1又は複数のハードウェアが第1の処理を行い、前記1又は複数のハードウェアが第2の処理を行う」等の表現が用いられている場合、第1の処理を行うハードウェアと第2の処理を行うハードウェアは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。つまり、第1の処理を行うハードウェア及び第2の処理を行うハードウェアが、前記1又は複数のハードウェアに含まれていればよい。なお、ハードウェアは、電子回路、又は、電子回路を含む装置等を含んでよい。
【0069】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は上記した個々の実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において種々の追加、変更、置き換え及び部分的削除等が可能である。例えば、前述した全ての実施形態において、説明に用いた数値は、一例として示したものであり、これらに限られるものではない。また、実施形態における各動作の順序は、一例として示したものであり、これらに限られるものではない。