(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041195
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】光ファイババンドル及び光ファイババンドル装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/04 20060101AFI20220304BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20220304BHJP
G02B 23/26 20060101ALN20220304BHJP
【FI】
G02B6/04 B
G02B6/42
G02B23/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146264
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】391009936
【氏名又は名称】株式会社住田光学ガラス
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】猪股 敏一
(72)【発明者】
【氏名】本田 直史
【テーマコード(参考)】
2H040
2H137
2H250
【Fターム(参考)】
2H040CA11
2H040CA27
2H040DA11
2H137AB06
2H137BA16
2H137BB03
2H137BB09
2H137BC01
2H137CC11
2H250AB02
2H250AB03
2H250AB32
2H250AD32
2H250AD34
2H250CA02
2H250CA03
2H250CA42
2H250CA48
2H250CA49
2H250CA50
2H250CA65
2H250CA69
2H250CC28
2H250CD01
2H250CZ08
2H250CZ09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】出射光量を向上できる、光ファイババンドル及び光ファイババンドル装置を、提供する。
【解決手段】光ファイババンドル2は、複数の光ファイバを束ねてなる光ファイババンドル2であって、光ファイババンドル2の少なくとも軸線方向一方側の端部21が、テーパ状をなすテーパ部23であり、光ファイババンドル2の少なくとも軸線方向一方側の端部21において、テーパ部23のうち少なくとも端面23t側の部分は、複数の光ファイバどうしが熱融着された熱融着部26であり、複数の光ファイバは、それぞれ、開口数NAが0.4以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバを束ねてなる光ファイババンドルであって、
前記光ファイババンドルの少なくとも軸線方向一方側の端部が、テーパ状をなすテーパ部であり、
前記光ファイババンドルの少なくとも前記軸線方向一方側の端部において、前記テーパ部のうち少なくとも端面側の部分は、前記複数の光ファイバどうしが熱融着された熱融着部であり、
前記複数の光ファイバは、それぞれ、開口数NAが0.4以上である、光ファイババンドル。
【請求項2】
前記光ファイババンドルの前記軸線方向一方側の端部は、入射端部である、請求項1に記載の光ファイババンドル。
【請求項3】
前記複数の光ファイバは、それぞれ、開口数NAが0.5以上である、請求項1又は2に記載の光ファイババンドル。
【請求項4】
前記複数の光ファイバは、それぞれ、開口数NAが0.7以上である、請求項1又は2に記載の光ファイババンドル。
【請求項5】
前記テーパ部の端面に入射した光の一部が、前記熱融着部の内部において、クラッドに入った後にコアに閉じ込められるように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の光ファイババンドル。
【請求項6】
前記光ファイババンドルの中心軸線に沿った断面において、前記テーパ部の外周面は、前記テーパ部の端面に至るまでにわたって、前記端面に向かうにつれて前記中心軸線に向かうように直線状に延在している、請求項1~5のいずれか一項に記載の光ファイババンドル。
【請求項7】
前記熱融着部の内部において、各コアの直径が、前記テーパ部の端面に向かうにつれて徐々に小さくなっている、請求項1~6のいずれか一項に記載の光ファイババンドル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光ファイババンドルと、
光源と、
を備え、
前記光源からの光が、前記光ファイババンドルの前記軸線方向一方側の端部の端面に入射するように構成されている、光ファイババンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイババンドル及び光ファイババンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイババンドルとして、端部において、光ファイバどうしを熱融着によりテーパ状に集束させたものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1によれば、熱融着することにより、接着剤により固着させる場合に比べて、耐熱性を向上でき、また、テーパ状とすることにより、照射密度を増加させることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の光ファイババンドルにおいては、出射端面から出る光の量(以下、「出射光量」という。)に関し、さらなる向上の余地があった。
【0005】
本発明は、出射光量を向上できる、光ファイババンドル及び光ファイババンドル装置を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光ファイババンドルは、
複数の光ファイバを束ねてなる光ファイババンドルであって、
前記光ファイババンドルの少なくとも軸線方向一方側の端部が、テーパ状をなすテーパ部であり、
前記光ファイババンドルの少なくとも前記軸線方向一方側の端部において、前記テーパ部のうち少なくとも端面側の部分は、前記複数の光ファイバどうしが熱融着された熱融着部であり、
前記複数の光ファイバは、それぞれ、開口数NAが0.4以上である。
【0007】
本発明の光ファイババンドルにおいて、
前記光ファイババンドルの前記軸線方向一方側の端部は、入射端部であると、好適である。
【0008】
本発明の光ファイババンドルにおいて、
前記複数の光ファイバは、それぞれ、開口数NAが0.5以上であると、好適である。
【0009】
本発明の光ファイババンドルにおいて、
前記複数の光ファイバは、それぞれ、開口数NAが0.7以上であると、好適である。
【0010】
本発明の光ファイババンドルにおいて、
前記テーパ部の端面に入射した光の一部が、前記熱融着部の内部において、クラッドに入った後にコアに閉じ込められるように構成されていると、好適である。
【0011】
本発明の光ファイババンドルにおいて、
前記光ファイババンドルの中心軸線に沿った断面において、前記テーパ部の外周面は、前記テーパ部の端面に至るまでにわたって、前記端面に向かうにつれて前記中心軸線に向かうように直線状に延在していると、好適である。
【0012】
本発明の光ファイババンドルにおいて、
前記熱融着部の内部において、各コアの直径が、前記テーパ部の端面に向かうにつれて徐々に小さくなっていると、好適である。
【0013】
本発明の光ファイババンドル装置は、
上記の光ファイババンドルと、
光源と、
を備え、
前記光源からの光が、前記光ファイババンドルの前記軸線方向一方側の端部の端面に入射するように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、出射光量を向上できる、光ファイババンドル及び光ファイババンドル装置を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光ファイババンドル装置を概略的に示す、概略図である。
【
図2】
図1の光ファイババンドルの構成について説明するための図面である。
【
図3】
図1の光ファイババンドルの作用について説明するための図面である。
【
図4】
図1の光ファイババンドルのテーパ部を形成する方法の一例を説明するための図面である。
【
図5】
図1の光ファイババンドル装置が内視鏡として構成された場合の構成例を概略的に示す、概略図である。
【
図6】実施例及び比較例の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の光ファイババンドル及び光ファイババンドル装置は、光ファイババンドル及び光源を備えた任意の装置に利用できるが、例えば、照明器具、又は、工業用若しくは医療用の内視鏡に、特に好適に利用できるものである。
以下、本発明に係る、光ファイババンドル及び光ファイババンドル装置の実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る光ファイババンドル装置1を概略的に示している。光ファイババンドル装置1は、光ファイババンドル2と、1つ又は複数(
図1の例では1つ)の光源3と、を備えている。光ファイババンドル装置1は、光ファイババンドル及び光源を備えた任意の装置として構成されることができるが、例えば、照明器具、又は、工業用若しくは医療用の内視鏡(
図5)として、特に好適に構成されることができる。光ファイババンドル装置1が、照明器具、又は、工業用若しくは医療用の内視鏡として構成される場合、光ファイババンドル2は、ライトガイドとして構成されると、好適である。
【0018】
図2は、
図1の光ファイババンドル2の構成について説明するための図面である。光ファイババンドル2は、複数の光ファイバ25(
図2)を束ねてなるものである。
図1及び
図2に示すように、光ファイババンドル2の少なくとも軸線方向一方側の端部21は、テーパ状をなすテーパ部23である。
図1の例では、光ファイババンドル2の軸線方向一方側の端部21のみが、テーパ部23である。ただし、光ファイババンドル2の軸線方向両側の端部21、22が、テーパ部23であってもよい。
なお、本明細書において、「軸線方向」とは、光ファイババンドル2の中心軸線(光軸線)Oに平行な方向である。
光ファイババンドル2の軸線方向一方側の端部21は、入射端部である。光ファイババンドル2の軸線方向他方側の端部22は、出射端部である。すなわち、光ファイババンドル2の少なくとも入射端部21は、テーパ部23であり、光ファイババンドル2の出射端部22は、テーパ部23であってもなくてもよい。
光ファイババンドル装置1は、光源3からの光が、光ファイババンドル2の軸線方向一方側の端部21の端面21t(ひいては、テーパ部23の端面23t)に入射し、光ファイババンドル2の軸線方向他方側の端部22の端面22tから出射するように構成されている。
【0019】
図1~
図2の例では、光ファイババンドル2は、軸線方向一方側の端部21と軸線方向他方側の端部22とを、それぞれ1つのみ有している。また、光ファイババンドル装置1は、光源3を、1つのみ有している。
ただし、図示は省略するが、光ファイババンドル2は、軸線方向一方側で分岐されることにより、軸線方向一方側の端部21を複数有してもよい。その場合、光ファイババンドル装置1は、光ファイババンドル2の軸線方向一方側の端部21ごとに、光源3を有する。これら複数の軸線方向一方側の端部21のうち少なくとも1つ(好適には全て)の端部21は、テーパ部23とする。そして、各光源3からの光が、光ファイババンドル2においてそれぞれ対応する軸線方向一方側の端部21の端面21tに入射し、光ファイババンドル2の軸線方向他方側の端部22の端面22tから出射する。
かつ/又は、光ファイババンドル2は、軸線方向他方側で分岐されることにより、軸線方向他方側の端部22を複数有してもよい。
【0020】
図2(b)は、光ファイババンドル2の軸線方向両側の端部21、22どうしの間の中間部24の軸直方向の断面を示している。ここで、「軸直方向」とは、光ファイババンドル2の軸線方向に垂直な方向である。
図2(b)に示すように、光ファイババンドルを構成する各光ファイバ25は、それぞれ、コア251とクラッド252とを有している。クラッド252は、コア251の外周側を覆っている。クラッド252の屈折率n
2は、コア251の屈折率n
1よりも小さい。
中間部24の全体において、複数の光ファイバ25どうしは、
図2(b)に示すように、互いに固着されていなくてもよい。この場合、光ファイババンドル2が任意の方向に曲げやすくなる。あるいは、中間部24の一部又は全体において、複数の光ファイバ25どうしは、互いに固着(接着剤を介した接着、又は、熱融着)されていてもよい。
図2(b)に示すように、中間部24において、各光ファイバ25のコア251及びクラッド252は、それぞれ、円形の外縁形状を有していると、好適である。
中間部24において、各光ファイバ25は、軸線方向に平行に延在している。
【0021】
光ファイババンドル2は、その軸線方向他方側の端部22において、複数の光ファイバ25どうしが、互いに固着(接着剤を介した接着、又は、熱融着)されている。光ファイババンドル2の軸線方向他方側の端部22の端面22tは、軸直方向に平行である。
【0022】
光ファイババンドル2は、その軸線方向の一部又は全部において、複数の光ファイバ25の外周側を覆う、管状部材(例えば、後に
図4を参照しつつ説明する管状部材81)を、さらに備えてもよい。
【0023】
テーパ部23は、
図2(a)、
図2(c)、
図2(d)に示すように、テーパ状をなしており、また、光ファイババンドル2の少なくとも軸線方向一方側の端部21において、テーパ部23のうち少なくとも端面23t側の部分は、複数の光ファイバ25どうしが接着剤を介さずに熱融着された熱融着部26である。
図2(c)は、熱融着部26の軸直方向の断面を示している。熱融着部26は、テーパ部23の端面23tから熱融着部26の終端面26eまでにわたって延在している。ここで、熱融着部26の「終端面26e」は、熱融着部26のうち、テーパ部23の端面23tから軸線方向に最も離れた位置における、軸直方向に平行な仮想端面である。
図2の例において、熱融着部26の終端面26eは、テーパ部23の端面23tとテーパ部23の根元面23rとの間に位置している。ただし、熱融着部26の終端面26eは、テーパ部23の根元面23rに位置していてもよい。ここで、テーパ部23の「根元面23r」は、テーパ部23のうち、テーパ部23の端面23tから軸線方向に最も離れた位置における、軸直方向に平行な仮想端面である。
図2(d)は、テーパ部23の端面23tを示している。テーパ部23の端面23tは、軸直方向に平行である。
図2(c)、
図2(d)に示すように、熱融着部26において、各光ファイバ25のクラッド252どうしは、一体となっている。熱融着部26において、この一体となったクラッド252は、各光ファイバ25のコア251を覆っているとともに、コア251どうしの間の隙間を完全に又は部分的に埋めている。
光ファイババンドル2は、熱融着部26において複数の光ファイバ25どうしが接着剤を介さずに熱融着されているので、仮に光ファイバ25どうしが接着剤によって固着された場合に比べて、耐熱性を向上できる。
本明細書において、テーパ部23に関し、「テーパ状」とは、光ファイババンドル2の中心軸線Oに沿った断面において、テーパ部23の外周面23sが、テーパ部23の根元面23rから端面23tに至るまでにわたって、端面23tに向かうにつれて中心軸線Oに向かうように直線状に延在していることを指す。
【0024】
図3は、中心軸線Oに沿ったテーパ部23における熱融着部26の断面を拡大して示している。
図3に示すように、光ファイババンドル2の中心軸線Oに沿った断面において、テーパ部23(ひいては熱融着部26)では、各コア251とクラッド252との間の各界面が、光ファイババンドル2の中心軸線O上にある界面を除いて、それぞれ、テーパ部23の根元面23rから端面23tに至るまでにわたって、中心軸線Oに対して鋭角で傾斜しており、具体的には、端面23tに向かうにつれて中心軸線Oに向かうように直線状に延在している。光ファイババンドル2の中心軸線O上にある界面は、軸線方向に平行に延在している。また、光ファイババンドル2の中心軸線Oに沿った断面において、テーパ部23(ひいては熱融着部26)では、各コア251とクラッド252との間の各界面の、中心軸線Oに対する傾斜角度が、中心軸線Oから離れた位置にある界面ほど、大きい。
図2(c)及び
図2(d)に示すように、熱融着部26の内部において、各コア251の直径は、テーパ部23の端面23tに向かうにつれて徐々に小さくなっている。また、
図2(c)及び
図2(d)に示すように、熱融着部26の内部において、コア251どうしの間の間隔g(ひいては、クラッド252の厚み)は、テーパ部23の端面23tに向かうにつれて徐々に小さくなっている。ここで、「コア251どうしの間の間隔g」は、互いに隣接する一対のコア251どうしの間の間隔が最小となる位置で測るものとする。
図2(c)及び
図2(d)に示すように、テーパ部23(ひいては熱融着部26)は、円形の外縁形状を有していると、好適である。また、テーパ部23(ひいては熱融着部26)において、各コア251は、円形の外縁形状を有していると、好適である。
【0025】
光ファイババンドル2を構成する複数の光ファイバ25は、それぞれ、開口数NAが0.4以上である。
光ファイバ25の開口数NAは、コア251の屈折率をn
1とし、クラッド252の屈折率をn
2とし、光ファイバ25の外部が空気(屈折率が1)とすると、
【数1】
の式により求められる。コアの屈折率n
1、クラッドの屈折率n
2は、例えば、コア251及びクラッド252がガラスから構成される場合、日本光学硝子工業会規格における「光学の屈折率測定方法」を用いて測定して得られる。
式(1)において、θは、光ファイバ25の受光角度(開口角とも呼ばれる)である。
【0026】
光ファイババンドル2を構成する複数の光ファイバ25のそれぞれの開口数NAの調整は、各光ファイバ25のそれぞれのコア251及びクラッド252の組成の調整により行うことができる。
光ファイババンドル2を構成する各光ファイバ25のコア251及びクラッド252は、それぞれ、例えば、多成分系ガラスあるいは石英系ガラス等、任意の組成のガラス、又は、プラスチック等から構成されてもよい。各光ファイバ25は、コア251及びクラッド252のうち少なくとも一方が多成分系ガラスから構成されていると好適であり、コア251及びクラッド252の両方が多成分系ガラスから構成されているとさらに好適である。
【0027】
テーパ部23(ひいては熱融着部26)がテーパ状であること、かつ、光ファイババンドル2を構成する複数の光ファイバ25のそれぞれの開口数NA(以下、単に「開口数NA」という。)が0.4以上であることにより、光ファイババンドル2は、テーパ部23の端面23tに入射した光の一部が、テーパ部23における熱融着部26の内部において、クラッド252に入った後にコア251に閉じ込められるように構成されている。このことについて、
図3を参照しつつ説明する。
従来一般的な光ファイババンドルの場合と同様に、光源3からテーパ部23の端面23tにおいてコア251又はクラッド252に入射した光のうち、コア251からクラッド252に最初に入射したときの入射角度(以下、「初期入射角度」という。)θ1が光ファイバ25の臨界角θcよりも大きい光は、コア251とクラッド252との間の界面で全反射して、コア251に閉じ込められたままコア251内で伝送され、光ファイババンドル2の出射端部22の端面22tから出射される。また、従来一般的な光ファイババンドルの場合と同様に、光源3からテーパ部23の端面23tにおいてコア251又はクラッド252に入射した光のうち、コア251からクラッド252への初期入射角度θ1が光ファイバ25の臨界角θcと等しい光は、コア251とクラッド252との間の界面に沿って移動しながら(ひいては、コア251に閉じ込められたまま)伝送され、光ファイババンドル2の出射端部22の端面22tから出射される。
一方、光源3からテーパ部23の端面23tにおいてコア251又はクラッド252に入射した光のうち、コア251からクラッド252への初期入射角度θ1が光ファイバ25の臨界角θcよりも小さい光は、
図3に示すように、クラッド252に入り、その後、当該クラッド252の隣のコア251に入った後に2回目にクラッド252に入射する。このとき、2回目にクラッド252に入射したときの入射角度(以下、「2回目入射角度」という。)θ2は、初期入射角度θ1よりも大きくなる。2回目入射角度θ2が臨界角θc以上であれば、この光は、コア251に閉じ込められて伝送され、光ファイババンドル2の出射端部22の端面22tから出射される。一方、2回目入射角度θ2が臨界角θcよりも小さければ、この光は、クラッド252に入って、さらに隣のコア251に入った後に3回目にクラッド252に入射する。このとき、3回目にクラッド252に入射したときの入射角度(以下、「3回目入射角度」という。)θ3は、2回目入射角度θ2よりも大きくなる。このようにして、テーパ部23の端面23tに入射した後にクラッド252に入った光は、その後、クラッド252に入射する度に、クラッド252への入射角度が増加する。そして、テーパ部23の端面23tに入射した後にクラッド252に入った光のうち一部又は全部は、最後にクラッド252に入射したときの角度(以下、「最終入射角度」という。)θLが、臨界角θc以上となり、コア251に閉じ込められて伝送され、光ファイババンドル2の出射端部22の端面22tから出射される。
従来一般的な光ファイババンドルにおいては、光源から入射端部の端面に入射した後にクラッドに入った光は、そのまま光ファイババンドルの外周面から外部へと出るため、光ファイババンドルの出射端部の端面からは出射しない。
一方、本実施形態の光ファイババンドルによれば、テーパ部23(ひいては熱融着部26)がテーパ状であること、かつ、開口数NAが0.4以上であることにより、テーパ部23の端面23tにおいてコア251又はクラッド252に入射した光の一部が、熱融着部26の内部において、クラッド252に入った後にコア251に閉じ込められて、光ファイババンドル2の出射端部22の端面22tから出射する。よって、その分、出射光量を向上できる。
【0028】
ところで、テーパ部23の端面面積比率Rsは、60%以上であると、好適である。
ここで、テーパ部23の端面面積比率Rsは、テーパ部23の根元面23rの断面積Arに対するテーパ部23の端面23tの面積Atの割合(Rs=(At/Ar)×100[%])である。
テーパ部23の端面面積比率Rsが60%未満となるようにすることは、テーパ部23の形成過程においてテーパ部23に割れが発生するおそれがあり、現実的に難しい。テーパ部23の端面面積比率Rsは、高いほど、テーパ部23の形成がしやすくなる。
なお、開口数NAを一定として考えたとき、テーパ部23の端面面積比率Rsが小さいほど、テーパ部23の端面23tにおいてコア251又はクラッド252に入射した後にクラッド252に入った光のうち、より多くの光(具体的には、より幅広い範囲内の初期入射角度θ1の光)が、コア251に閉じ込められるようになり、出射光量を向上できる。また、テーパ部23の端面面積比率Rsを一定として考えたとき、開口数NAが高いほど、テーパ部23の端面23tに入射した後にクラッド252に入った光のうち、より多くの光(具体的には、より幅広い範囲内の初期入射角度θ1の光)が、コア251に閉じ込められるようになり、出射光量を向上できる。言い換えれば、開口数NAが高いほど、より大きな端面面積比率Rsで、テーパ部23の端面23tに入射した後にクラッド252に入った光のうちのある一定量の光をコア251に閉じ込めることができる。仮に開口数NAが0.4未満である場合、理論上は、テーパ部23の端面面積比率Rsを60%未満にすれば、テーパ部23の端面23tに入射した後にクラッド252に入った光のうち少なくとも一部の光をコア251に閉じ込めることができる可能性があるといえる。しかし、上述のとおり、テーパ部23の端面面積比率Rsを60%未満にすることは、現実的には難しい。本実施形態によれば、開口数NAを0.4以上としているので、テーパ部23の端面面積比率Rsを60%以上と実現可能な大きさにしても、テーパ部23の端面23tに入射した後にクラッド252に入った光のうち少なくとも一部の光をコア251に閉じ込めることができるのである。
出射光量向上の観点から、テーパ部23の端面面積比率Rsは、84%以下であると好適であり、82%以下であるとより好適であり、80%以下であるとさらに好適である。
【0029】
開口数NAは、0.5以上であると、好適であり、0.564以上であると、より好適である。これにより、テーパ部23の端面23tに入射した後にクラッド252に入った光のうち、より多くの光(具体的には、より幅広い範囲内の初期入射角度θ1の光)が、コア251に閉じ込められるようになり、出射光量を向上できる。
開口数NAは、0.7以上であると、さらに好適であり、0.764以上であると、よりさらに好適である。これにより、テーパ部23の端面23tに入射した後にクラッド252に入った光のうち、さらにより多くの光(具体的には、より幅広い範囲内の初期入射角度θ1の光)が、コア251に閉じ込められるようになり、出射光量をさらに向上できる。
開口数NAは、0.8以上であると、さらに好適であり、0.843以上であると、よりさらに好適である。これにより、テーパ部23の端面23tに入射した後にクラッド252に入った光のうち、さらにより多くの光(具体的には、より幅広い範囲内の初期入射角度θ1の光)が、コア251に閉じ込められるようになり、出射光量をさらに向上できる。
【0030】
なお、テーパ部23の端面面積比率Rsが60~84%、かつ、開口数NAが0.4以上である場合は、テーパ部23の端面23tの中心近傍のファイバにおいてクラッド252に入射した後にクラッド252に入った光のうち、少なくとも、クラッド入射角度φが1°以下の光を、コア251に閉じ込めることができる。
テーパ部23の端面面積比率Rsが60~84%、かつ、開口数NAが0.5以上である場合は、テーパ部23の端面23tの中心近傍のファイバにおいてクラッド252に入射した後にクラッド252に入った光のうち、少なくとも、クラッド入射角度φが2°以下の光を、コア251に閉じ込めることができる。
テーパ部23の端面面積比率Rsが60~84%、かつ、開口数NAが0.7以上である場合は、テーパ部23の端面23tの中心近傍のファイバにおいてクラッド252に入射した後にクラッド252に入った光のうち、少なくとも、クラッド入射角度φが3°以下の光を、コア251に閉じ込めることができる。
ここで、クラッド入射角度φは、テーパ部23の端面23tにおいてクラッド252に入射した光の、端面23tにおける、光ファイババンドルの中心軸線Oに対する角度である。
【0031】
出射光量向上やテーパ部の形成容易性の観点から、テーパ部23の端面23tの直径は、1.0~12.0mmが好適であり、2.0~10.5mmがより好適である。
出射光量向上やテーパ部の形成容易性の観点から、テーパ部23の端面23tにおける各コア251の直径の平均値は、テーパ部23の根元面23rにおける各コア251の直径の平均値の0.8~0.4倍であると好適であり、テーパ部23の根元面23rにおける各コア251の直径の0.7~0.5倍であるとより好適である。
出射光量向上やテーパ部の形成容易性の観点から、テーパ部23の端面23tにおける各コア251の直径の平均値は、10~50μmであると好適であり、15~45μmであるとより好適である。
出射光量向上やテーパ部の形成容易性の観点から、テーパ部23の端面23tにおけるコア251どうしの間の間隔gの平均値は、テーパ部23の根元面23rにおけるコア251どうしの間の間隔gの平均値の0.8~0.4倍であると好適であり、テーパ部23の根元面23rにおけるコア251どうしの間の間隔gの平均値の0.7~0.5倍であるとより好適である。
出射光量向上やテーパ部の形成容易性の観点から、テーパ部23の端面23tにおけるコア251どうしの間の間隔g(
図2(d))の平均値は、0.3~6.0μmであると好適であり、0.5~5.0μmであるとより好適である。
出射光量向上やテーパ部の形成容易性の観点から、テーパ部23のテーパ角α(
図2(a))は、2°~20°であると好適であり、5°~15°であるとより好適である。なお、「テーパ角α」は、軸線方向に対するテーパ部23の外周面23sの鋭角側の角度である。
出射光量向上やテーパ部の形成容易性の観点から、テーパ部23の軸線方向長さL(
図2)は、0.01~40mmであると好適であり、0.05~30mmであるとより好適である。
出射光量向上やテーパ部の形成容易性の観点から、熱融着部26の軸線方向長さM(
図2)は、0.01~40mmであると好適であり、0.05~30mmであるとより好適である。
【0032】
光源3は、ハロゲン若しくはメタルハライド等のランプ光源、又は、LED光源等、任意のものを用いてよい。光源3は、ランプ光源であると、上述した出射光量向上の効果が得られやすいので、好適である。
【0033】
つぎに、
図4を参照しつつ、上述した実施形態の光ファイババンドル2のテーパ部23の形成方法の一例を説明する。
まず、複数の光ファイバ25を束ねてなる光ファイババンドル2の端部21を、管状部材81内に挿入する。
なお、管状部材81内に入る光ファイバ25の断面積の総和は管状部材81の内径断面積に対して少なくとも80%を占めており、幾何学的に計算すると理論的には90.7%未満である。
管状部材81は、例えば、チタン又はステンレスから構成される。チタンは、光ファイバ25を構成する材料(例えば、ガラス)と線膨張係数が近いこと、また、加熱して変形させる温度域で、光ファイババンドル2の軸線方向への変形を抑えるような肉厚を持たせても、半径方向への変形は可能な延性を有し得ることから、管状部材81を構成する材料として特に好適である。
つぎに、管状部材81で覆われた光ファイババンドル2の端部21を、案内部材83に通した後(
図4(a))、加熱及び加圧しつつ、治具82のテーパ状の穴82hの中に押し込む(
図4(b))。これにより、光ファイババンドル2の端部21が、テーパ状となり、テーパ部23となるとともに、テーパ部23のうち少なくとも端面側の部分が熱融着されて熱融着部26となる。
管状部材81は、その後に光ファイババンドル2から取り外されてもよいし、あるいは、その後に取り外されずに光ファイババンドル2の構成要素とされてもよい。
ただし、上述した実施形態の光ファイババンドル2のテーパ部23は、
図4に示す形成方法とは異なる形成方法により形成されてもよい。
【0034】
図5は、
図1の光ファイババンドル装置1が工業用又は医療用の内視鏡として構成された場合の構成例を概略的に示す、概略図である。本例の内視鏡として構成された光ファイババンドル装置1は、内視鏡用スコープ4と、光源3と、制御部6と、ディスプレイ7とを、備えている。内視鏡用スコープ4は、操作部41と、挿入部42とを、有している。内視鏡用スコープ4の挿入部42及び操作部41の内部には、ライトガイドとして構成された本発明の一実施形態に係る光ファイババンドル2と、イメージガイド5とが、設けられている。内視鏡用スコープ4の挿入部42の先端部には、例えば、光ファイババンドル2の出射端部22と、イメージガイド5の入射端部と、イメージガイド5の入射端部に対してさらに先端側に配置された、光学系(例えば、対物レンズ)とが、配置される。光ファイババンドル2は、光源3からの光を、伝送し、挿入部42の先端から観察対象物に向けて照射するように、構成されている。光ファイババンドル2の入射端部21を構成するテーパ部23(ひいては熱融着部26)は、光源3と対向して配置される。イメージガイド5は、例えば光学系(対物レンズ等)を介して、その入射端部にて結像される観察対象物の像を、伝送するように構成されている。イメージガイド5により伝送された像は、例えば接眼レンズ(図示せず)を介して、制御部6に入射される。制御部6は、例えば、光検出器、ADC(アナログ-デジタル変換器)、CPU、メモリ(RAM、ROM等)を含んで構成されている。制御部6は、イメージガイド5から入射される像に基づいて画像処理等を行って画像信号を生成し、生成した画像信号に基づいて、観察対象物の画像をディスプレイ7に表示する。また、制御部6は、光源3の制御も行う。
【実施例0035】
本発明の実施例及び比較例を試作して実験を行ったので、以下に説明する。
比較例3、4及び実施例1~3の光ファイババンドルは、それぞれ、中間部24における各光ファイバ25の直径が50μmであり、中間部24におけるコア251の直径が46μmであり、中間部24におけるクラッド252の厚みが2μmであり、入射端部21がテーパ部23であり、入射端(入射端部21の端面)の直径が5mmであり、テーパ部23の端面面積比率Rsが80%であり、テーパ部23のうち少なくとも端面23t側が光ファイバ25どうしが熱融着された熱融着部26であり、テーパ角αは10°であり、出射端部22がテーパ部23ではなく軸線方向に沿ってストレートであり、出射端部22において光ファイバ25どうしが接着されており、全長が1000mmであった。比較例3、4及び実施例1~3の光ファイババンドルは、それぞれ、4本ずつ用意した。比較例3、4及び実施例1~3の光ファイババンドルのテーパ部23は、それぞれ、
図4を参照しつつ説明した形成方法によって形成した。熱融着前に管状部材81内に入った光ファイバ25の断面積の総和は、管状部材81の内径断面積に対しておよそ86%であった。比較例3、4及び実施例1~3の光ファイババンドルの各光ファイバ25の開口数NAは、表1に示すとおりであった。
比較例1、2の光ファイババンドルは、それぞれ、入射端部21がテーパ部23ではなく軸線方向に沿ってストレートであり、入射端部21において光ファイバ25どうしが接着されており、熱融着部26が無いこと以外は、比較例3、4及び実施例1~3の光ファイババンドルと同様の構成を有していた。比較例1、2の光ファイババンドルの入射端(入射端部21の端面)及び出射端(出射端部22の端面)の直径は、それぞれ5mmであった。比較例1、2の光ファイババンドルは、それぞれ、1本ずつ用意した。比較例1、2の光ファイババンドルの入射端部21は、外周側が管状部材によって覆われていた。管状部材内に入った光ファイバ25の断面積の総和は、管状部材の内径断面積に対しておよそ86%であった。比較例1、2の光ファイババンドルの各光ファイバ25の開口数NAは、表1に示すとおりであった。
実験においては、各例の光ファイババンドルの入射端に、ハロゲンランプ光源(住田光学ガラス製LS-DWL)の光を、積分球を用いて入射し、各例の光ファイババンドルの出射端を光パワーメータ(安藤電気製AQ-1135E)に押し付けて出射光量を測定した。それぞれの出射光量(光量)を表1に示す。表1において、比較例3、4及び実施例1~3の光量は、4本の平均値とした。また、表1の各例の開口数NAと光量との関係を、
図6にグラフとして示す。
【0036】
【0037】
表1及び
図6からわかるように、実施例1~3は、比較例1~4よりも、大幅に大きな光量が得られた。
本発明の光ファイババンドル及び光ファイババンドル装置は、光ファイババンドル及び光源を備えた任意の装置に利用できるが、例えば、照明器具、又は、工業用若しくは医療用の内視鏡に、特に好適に利用できるものである。