(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041201
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】トレイ成型食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20220304BHJP
A23L 5/20 20160101ALN20220304BHJP
【FI】
A23L5/00 A
A23L5/00 G
A23L5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146270
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100109542
【弁理士】
【氏名又は名称】田伏 英治
(72)【発明者】
【氏名】水野 祐希
(72)【発明者】
【氏名】赤松 尚美
【テーマコード(参考)】
4B035
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE11
4B035LE16
4B035LG01
4B035LG12
4B035LG19
4B035LG25
4B035LG43
4B035LG57
4B035LK04
4B035LP03
4B035LP06
4B035LP59
(57)【要約】
【課題】内壁に凹凸形状が付されたトレイや端点を有するトレイを用いてトレイ成型食品を製造する際に食品内に発生する気泡を、抑制すること。
【解決手段】内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するトレイの凹部分及び/又は端点部分に、水含有溶液による処理を施した後、トレイ内に加工食品原料を充填し、当該加工食品原料を固形化することを含む、トレイ成型食品の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するトレイの凹部分及び/又は端点部分に、水含有溶液による処理を施した後、トレイ内に加工食品原料を充填し、当該加工食品原料を固形化することを含む、トレイ成型食品の製造方法。
【請求項2】
トレイ成型食品が、実質的に気泡を含まない、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
水含有溶液が、水である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
水含有溶液による処理が、水含有溶液を、トレイの凹部分及び/又は端点部分に、噴霧、塗布、又は滴下の形態で添加することにより行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
水含有溶液の添加量が、トレイの内側の表面積を基準として、0.001~0.5g/cm2である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
加工食品原料が、液体状食品原料である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
加工食品原料の粘度が、0.5Pa・S~50Pa・Sである、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
固形化が、加熱処理又は冷却処理により行われる、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
トレイ成型食品が、冷凍食品である、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
水含有溶液による処理が施された内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するトレイ中で一体として成型された形状を有し、気泡を実質的に含まない、トレイ成型食品。
【請求項11】
内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するトレイの凹部分及び/又は端点部分に、水含有溶液による処理を施した後、トレイ内に加工食品原料を充填し、当該加工食品原料を固形化することを含む、トレイ成型食品における気泡の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡を実質的に含まないトレイ成型食品の製造方法に関し、加工食品の技術分野において有用である。
【背景技術】
【0002】
加工食品の分野では、トレイ内で固化成型されたトレイ成型食品が広く製造され、消費者等に提供されている。このようなトレイ成型食品においては、美観の付与、購買意欲の喚起等の観点から成型後の加工食品に模様(文字、図形、キャラクター等)を付与することが従来から広く行われて来た。この場合、トレイの内壁に適宜目的とする模様に対応した凹凸形状が付されたトレイが「型」として使用され、当該型に加工食品原料を充填した後、成型して目的とする加工食品が製造される(例えば、特許文献1)。また、トレイ成型食品の製造に際しては、様々な形状のトレイが用いられているが、トレイを構成する3つの面の交点として形成される端点(例えば、トレイの隅)を有するものも広く用いられている。
このようなトレイを用いて、例えば、卵を含有する加工食品原料をトレイに充填し、加熱ゲル化させて、卵含有トレイ成型食品を製造することが行われて来た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、このような内壁に適宜目的とする模様に対応した凹凸形状が付されたトレイや端点を有するトレイを用いて、従来の手法によりトレイ成型食品を製造した場合、得られた加工食品の美観や食感等に悪影響を与える程度の「気泡」がトレイ成型食品に形成され得るとの新たな課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、トレイ内への加工食品原料の充填に先だって、トレイの内壁の凹部分及び/又は端点部分を、水を含有する溶液で処理した上で、加工食品原料を固形化するという、従来知られていない、極めて簡便な方法により、当該課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。具体的には、本発明は以下の通りである。
【0006】
[1]内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するトレイの凹部分及び/又は端点部分に、水含有溶液による処理を施した後、トレイ内に加工食品原料を充填し、当該加工食品原料を固形化することを含む、トレイ成型食品の製造方法。
[2]トレイ成型食品が、実質的に気泡を含まない、上記[1]に記載の製造方法。
[3]水含有溶液が、水である、上記[1]~[2]に記載の製造方法。
[4]水含有溶液による処理が、水含有溶液を、トレイの凹部分及び/又は端点部分に、噴霧、塗布、又は滴下の形態で添加することにより行われる、上記[1]~[3]に記載の製造方法。
[5]水含有溶液の添加量が、トレイの内側の表面積を基準として、0.001~0.5g/cm2である、上記[1]~[4]に記載の製造方法。
[6]加工食品原料が、液体状食品原料である、上記[1]~[5]に記載の製造方法。
[7]加工食品原料の粘度が、0.5Pa・S~50Pa・Sである、上記[1]~[6]に記載の製造方法。
[8]固形化が、加熱処理又は冷却処理により行われる、上記[1]~[7]に記載の製造方法。
[9]トレイ成型食品が、冷凍食品である、上記[1]~[8]に記載の製造方法。
【0007】
[10]水含有溶液による処理が施された内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するトレイ中で一体として成型された形状を有し、気泡を実質的に含まない、トレイ成型食品。
【0008】
[11]内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するトレイの凹部分及び/又は端点部分に、水含有溶液による処理を施した後、トレイ内に加工食品原料を充填し、当該加工食品原料を固形化することを含む、トレイ成型食品における気泡の発生の抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するトレイを用いてトレイ成型食品を製造するに際しても、加工食品内に発生する気泡を高度に抑制して、実質的に気泡を含まないトレイ成型食品が提供される。また、トレイ内への加工食品原料の充填に先だって、トレイの内壁の凹部分及び/又は端点部分を、水を含有する溶液で処理することによって、本発明の製造方法によれば、従来から行われている加熱処理のみからなるトレイ成型食品の製造方法と比較して、より高いレベルで気泡の発生が抑制されたトレイ成型食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】後記の実施例でトレイ成型食品の製造のために用いられたトレイを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその実施態様に沿って詳述する。
【0012】
本発明の第一の実施態様は、以下のトレイ成型食品の製造方法である。
(1)内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するトレイの凹部分及び/又は端点部分に、水含有溶液による処理を施した後、トレイ内に加工食品原料を充填し、当該加工食品原料を固形化することを含む、トレイ成型食品の製造方法。
【0013】
以下、本発明について詳述するが、文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと同様又は同等の任意の方法および材料は、本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及したすべての刊行物および特許は、例えば、記載された発明に関連して使用されうる刊行物に記載されている、構築物および方法論を記載および開示する目的で、参照として本明細書に組み入れられる。
【0014】
本発明で用いられる「トレイ」は、加工食品原料を成型するための「型」としての機能を有するものであれば特に限定はされず、その材質、大きさ、厚み等は食品加工の目的に応じて当業者であれば適宜選択することができる。また、当該「トレイ」は、トレイ内で成型された加工食品の包装容器としての機能を併せ持っていてもよい。トレイは、複数のトレイ(構成する各トレイを「単位トレイ」と略記する)を何個か連結して一体化したものであってもよい。ここでは、単位トレイの大きさは、同一又は異なっていてもよく、また、各単位トレイの形状及び/又は内壁に付与される凹凸形状は、同一又は異なっていてもよい。これらは、目的とするトレイ成型食品に応じて適宜選択することができる。
本発明により製造されたトレイ成型食品は、製造時に用いられたトレイと一体となった状態で最終製品として消費者等に提供されてもよく、また、製造後にトレイから取り出された状態で最終製品として消費者等に提供されてもよい。
【0015】
本発明で用いられる「トレイ」は、その内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するものである。凹部分及び/又は端点部分は、トレイに加工食品原料を充填した場合に、特に気泡が発生しやすい部分である。
加工食品の分野では、成型後の加工食品に付与する模様(文字、図形、キャラクター等)に対応してトレイの内壁に凹凸形状を設けることが従来から広く行われており、当業者であれば、適宜目的とする模様に応じて当該凹凸形状のトレイを調製することが可能である。本発明における内壁の凹部分としては、当該凹凸形状中の凹部分が該当する。ここで、凹部分の深さは、2cm以下であることが好ましく、1cm以下であることがより好ましい。また、凹部分の幅は、2cm以下であることが好ましく、1cm以下であることがより好ましい。
凹部分を構成する面は、丸味を帯びていてもよく(例えば、凹部分が球状)、また平面であってもよい(例えば、凹部分が直方体形状)。
また、加工食品の分野では、トレイとしては様々な形状のものが用いられているが、中には3つの面の交点として形成される端点を有するものがある。本発明における内壁の端点は、当該端点が該当する。
上記の凹部分及び端点においては、それを構成する面により形成される交線部分及び端点部分は、丸みを帯びていてもよい。凹部分の丸みは、球の半径(SR)が1cm以下であることが好ましく、0.5cm以下であることがより好ましい。
トレイは、透明、半透明、不透明(遮光)のいずれであってもよく、目的に応じて選択することができる。
【0016】
本発明で用いられる「水含有溶液」とは、水、又は水に食品加工用の原材料・添加物が溶解した水溶液をいう。当該食品加工用の原材料・添加物の好適な例としては、食塩や砂糖、醤油等の調味目的の原材料、水溶性色素等の着色目的の添加物等が挙げられる。中でも、当該添加物が、充填される「加工食品原料」に含有されている成分である場合が特に好ましい。
「水含有溶液」としては、気泡抑制の観点からは、上記の「加工食品原料」との混和性が良好なものが好ましい。
【0017】
当該水含有溶液による処理は、加工食品原料の加熱処理に先だって、トレイの凹部分及び/又は端点部分に、行われる。トレイに加工食品原料を充填した場合に、トレイの凹部分及び/又は端点部分において、特に気泡の発生が生じやすいためである。
当該水含有溶液による処理は、トレイの凹部分及び/又は端点部分に、例えば、水溶液を当該部分に噴霧、塗布、又は滴下すること(好ましくは、噴霧すること)により行うことができる。本発明を実施するに当たっては、トレイの凹部分及び/又は端点部分に確実に水含有溶液が処理されることが、製造されたトレイ成型食品中の気泡を抑制するために重要である。従って、水含有溶液による処理は、当該確実な処理が行えればよく、トレイの凹部分及び/又は端点部分のみでなく、当該部分を含む内壁面の全体に水含有溶液の処理を行ってもよい。
水含有溶液による処理における水含有溶液の量は、上記目的を達成できればよく特に限定はされないが、例えば、トレイの内側の表面積を基準として、0.001~0.5g/cm2(好ましくは、0.01~0.05g/cm2)で水含有溶液による処理を行うことができる。
【0018】
本発明で用いられる「加工食品原料」は、特に限定はされず、水を含有する液体状の食品原料(以下、「液体状食品原料」と略記する場合がある)一般を用いることができる。また、「加熱処理」又は「冷却処理」により固化するものが好ましい。
当該液体状食品原料の好ましい具体例としては、卵(卵黄及び/又は卵白を含む)を含有する液体状食品原料等の加熱により固化する液体状食品原料、ゼラチンや増粘多糖類等を含有する液体状食品原料等の冷却により固化する液体状食品原料が挙げられる。
液体状食品原料の粘度は特に限定されないが、従来の加工方法では気泡の発生が生じやすく、かつ、本発明により効果的に気泡の発生を抑制できるものとして、0.5~50Pa・S、好ましくは2.5~40Pa・S、更に好ましくは5~30Pa・S、特に好ましくは5~25Pa・Sの粘度を有するものに本発明を適用することが特に好ましい。
当該加工食品原料は、加工食品の分野で通常行われる方法によりトレイ中に充填することができる。
なお、本発明で用いられる「加工食品原料」は、必要により固形成分(具材等)を含有するものであってもよい。
【0019】
本発明における「固形化」とは、加工食品原料を固化させるための処理をいい、具体的には、1)「加熱処理」、又は2)「冷却処理」が挙げられる。
本発明における加工食品原料の「加熱処理」としては、加工食品の分野で通常行われる加熱方法を用いることができるが、好ましくは、蒸し加熱又はボイル加熱である。両加熱処理は、加工食品の分野での常法により行うことができる。
用いられる加工食品原料が、加熱により固化する液体状食品原料である場合には、この段階で固化成型された「トレイ成型食品」を得ることができるが、好ましくはさらに冷却処理に付される。
用いられる加工食品原料が、冷却により固化する液体状食品原料である場合や冷凍により固化する液体状食品原料である場合には、冷却処理に付すことにより、固化成型された「トレイ成型食品」を得ることができる。
以上の通り、用いられる加工食品原料の特性に応じて、当業者であれば具体的な「固形化」の態様を適宜選択することができる。
【0020】
本発明における「冷却処理」としては、加工食品の分野で通常行われる冷却方法を用いることができるが、具体的には、空冷や、冷蔵庫・冷凍庫内での冷却や冷凍、冷却槽への浸漬、冷風の吹き付けなどにより行うことができる。
【0021】
製造された「トレイ成型食品」は冷凍し、冷凍食品として消費者等に提供することができる。このような冷凍食品としては、卵加工冷凍食品(例えば、オムレツ、出し巻き卵、厚焼き卵、茶わん蒸し、カスタードプリン等)、ゼリー状加工冷凍食品(例えば、コーヒーゼリー、フルーツゼリー等)が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明の製造方法により得られた「トレイ成型食品」においては、製造過程におけるトレイ器壁表面(即ち、トレイから取り出し後のトレイ成型食品の表面)の気泡の発生が高度に抑制され、実質的に気泡が含まれない。
従って、本発明において、「実質的に気泡が含まれない。」とは、後記の実施例「(4)気泡の確認方法」に記載された方法により、トレイ器壁と接する(もしくは、接していた)トレイ成型食品の表面を観察した場合に、
1)目視により気泡が確認できないか、又は、
2)目視により確認できる気泡が、直径3mm未満である、
ことを言う。
本発明の製造方法によれば、実質的に気泡を含まない、美観と食感等に優れた「トレイ成型食品」が提供される。また、本発明の製造方法によれば、水含有溶液処理及び加熱処理を行わない場合に比較して、より高いレベルで気泡の発生が抑制された、より好ましい品質を有する「トレイ成型食品」を得ることができる。本発明のこの優れた効果については、後記の実施例の項において具体的に示す。
【0023】
本発明の第二の実施態様は、以下のトレイ成型食品である。
(2)水含有溶液による処理が施された内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するトレイ中で一体として成型された形状を有しており、気泡を実質的に含まない、トレイ成型食品。
本発明の製造方法により、所望の形状を有し、かつ気泡を実質的に含まない、美観と食感等に優れた「トレイ成型食品」が提供される。
【0024】
本発明の第三の実施態様は、トレイ成型食品における気泡の発生の抑制方法である。
(3)内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するトレイの凹部分及び/又は端点部分に、水含有溶液による処理を施した後、トレイ内に加工食品原料を充填し、当該加工食品原料を固形化することを含む、トレイ成型食品における気泡の発生の抑制方法。
上記の通り、本発明によれば、内壁に凹部分及び/又は端点部分を有するトレイを用いて加工食品を製造する場合においても、トレイ内への加工食品原料の充填に先立って、トレイの凹部分及び/又は端点部分に水含有溶液による処理を施すことにより、その後の加熱処理等の固形化と相俟って、気泡の発生を高度に抑制することができるため、トレイ成型食品における気泡の抑制方法として極めて有用である。従って、本発明は、従来の製造方法で得られるトレイ成型食品に内包される気泡の発生を、さらに高度に抑制するために用いることができる。
【実施例0025】
以下、本発明のトレイ成型食品の製造方法、気泡を実質的に含まないトレイ成型食品、及びトレイ成型食品における気泡の発生の抑制方法について実施例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
以下の各実施例において使用されたトレイ、加工食品原料、加熱方法、及び気泡の確認方法は以下の通りである。
(1)トレイ
図1に示された内壁底面に凹凸形状を有する透明なトレイを使用した(トレイ底面の直径:43mm;トレイ上面の直径:53mm)。
(2)加工食品原料
1)卵液
各成分を混合・攪拌することにより比重を1.00に調整して、以下の組成を有する「卵液」を調製した(後記の実施例1で用いられたものに対応)。
【0027】
【0028】
油としては、パームエースN(不二製油株式会社)を用いた。
増粘剤としては、エコーガム(DSP五協フード&ケミカル株式会社)を用いた。
寒天としては、伊那寒天UZ-5(伊那食品工業株式会社)を用いた。
卵液の粘度の調整は、上記卵液に増粘剤であるエコーガム(DSP五協フード&ケミカル株式会社)を添加することにより常法により行った。
卵液の比重の調整は、攪拌時間を延長することにより行った。
2)ホワイトソース、デミソース、トマトソース
ホワイトソースとしては、ちょっとだけホワイトソース(ハインツ株式会社)を用いた。
デミソースとしては、ちょっとだけデミグラスソース(ハインツ株式会社)を用いた。
トマトソースとしては、カゴメ濃厚仕立てのトマトソース(カゴメ株式会社)を用いた。
(3)固形化方法
1)蒸し加熱 100℃/9分
具体的には、温度100℃、湿度100%に設定した「コンビオーブンSelfCookingCenter(株式会社フジマックFSCC WE 61E)」を使用し、トレイを入れ9分加熱した。
2)ボイル加熱 100℃/10分
具体的には、鍋にて沸騰させたお湯の中にトレイを入れ10分加熱した。
【0029】
(4)気泡の確認方法
下記の実施例で調製された「トレイ成型食品」について、トレイ器壁表面の気泡の有無と程度を、2名のパネルの目視により確認した。以下の基準に従って、評価結果を解析・記録した。◎と〇に該当する場合を「実質的に気泡を含まない。」と評価した。なお、気泡の確認は、加熱-凍結処理後に行った。また、トレイから「トレイ成型食品」を取り出した後に、当該表面の状態を確認した。
◎目視により気泡が確認できない。
〇目視により確認できる気泡が、直径3mm未満である。
×目視により確認できる気泡が、直径3mm以上である。
【0030】
固形化処理のみを行った場合及び水含有溶液処理のみを行った場合にそれぞれ得られた「トレイ成型食品」について「気泡の評価」を行った結果から、トレイ成型食品中に発生する気泡を効果的かつ高度に抑制するためには、水含有溶液処理及び固形化処理の両者が必要であることが明らかとなった。この観点から、さらに好ましい実施態様について検討した。
【0031】
実施例1(噴霧量変更の影響):水含有溶液処理(噴霧)(噴霧量変更)/加熱処理(蒸し加熱)/卵液(粘度:10.0Pa・S)
(トレイ成型食品の調製)
(1)トレイの内壁の全面に水(0.1g)を噴霧した。卵液(粘度:10.0Pa・S)をトレイ内に充填し、蒸し加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(2)トレイの内壁の全面に水(0.5g)を噴霧した。卵液(粘度:10.0Pa・S)をトレイ内に充填し、蒸し加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(気泡の評価結果)
【0032】
【0033】
水含有溶液の使用量を変更しても、同様の優れた気泡抑制効果が得られることも明らかとなった。使用されるトレイや適用される加工食品原料の特徴に応じて、本発明の水含有溶液処理条件を適宜調整できることとなり、本発明は汎用性が高いことが明らかとなった。
【0034】
実施例2(粘度変更の影響):水含有溶液処理(噴霧)/加熱処理(蒸し加熱)/卵液(粘度変更)
(トレイ成型食品の調製)
(1)トレイの内壁の全面に水(0.1g)を噴霧した。卵液(粘度:15.0Pa・S)をトレイ内に充填し、蒸し加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(2)トレイの内壁の全面に水(0.1g)を噴霧した。卵液(粘度:20.0Pa・S)をトレイ内に充填し、蒸し加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(X)(比較例)トレイの内壁へ水を噴霧することなく、卵液(粘度15.0Pa・S)をトレイ内に充填し、蒸し加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(Y)(比較例)トレイの内壁へ水を噴霧することなく、卵液(粘度20.0Pa・S)をトレイ内に充填し、蒸し加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(気泡の評価結果)
【0035】
【0036】
卵液の粘度が高くなる程、気泡が発生しやすい傾向が確認された。しかしながら、水含有溶液処理と加熱処理(固形化;以下同様)の両者の実施により、本発明は高粘度の卵液の場合でも、気泡の発生を効果的に抑制できることが明らかとなった。
なお、卵液の粘度が10.0Pa・Sの場合については、上記実施例1(1)の結果を参照することができる。水含有溶液処理と加熱処理の両者の実施により、加熱処理のみの場合に比べて、気泡の抑制をより高いレベルで行えることが、明らかである。
以上より、本発明は、種々の粘度の加工食品原料に対しても効果的に適用することができ、汎用性の高いものであることが明らかとなった。
【0037】
実施例3(比重変更の影響):水含有溶液処理(噴霧)/加熱処理(蒸し加熱)/卵液(比重変更)(粘度10.0Pa・S)
(トレイ成型食品の調製)
(1)トレイの内壁の全面に水(0.1g)を噴霧した。卵液(比重:1.00)をトレイ内に充填し、蒸し加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(2)トレイの内壁の全面に水(0.1g)を噴霧した。卵液(比重:1.10)をトレイ内に充填し、蒸し加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(気泡の評価結果)
【0038】
【0039】
卵液の比重を変更しても、いずれの場合も気泡の評価結果は極めて良好であった。
このことから、本発明においては、加工食品原料の比重に拘わらずに、優れた気泡抑制効果が奏されることが明らかとなった。
【0040】
実施例4(加熱処理方法変更の影響):水含有溶液処理(噴霧)/加熱処理(ボイル加熱)/卵液(粘度:15.0Pa・S)
(トレイ成型食品の調製)
(1)トレイの内壁の全面に水(0.1g)を噴霧した。卵液(粘度:15.0Pa・S)をトレイ内に充填し、ボイル加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(X)(比較例)トレイの内壁へ水を噴霧することなく、卵液(粘度:15.0Pa・S)をトレイ内に充填し、ボイル加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(気泡の評価結果)
【0041】
【0042】
加熱方法をボイル加熱に変更しても、十分な気泡の抑制効果が得られることが明らかとなった。加熱処理方法の選択に関しても、本発明の製造方法の汎用性が確認された。
【0043】
実施例5(加工食品原料変更の影響):水含有溶液処理(噴霧)/加熱処理(蒸し加熱)/各種ソース(粘度:15.0Pa・S)
(トレイ成型食品の調製)
(1)トレイの内壁の全面に水(0.1g)を噴霧した。ホワイトソース(粘度:15.0Pa・S)をトレイ内に充填し、蒸し加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(2)トレイの内壁の全面に水(0.1g)を噴霧した。デミソース(粘度:15.0Pa・S)をトレイ内に充填し、蒸し加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(3)トレイの内壁の全面に水(0.1g)を噴霧した。トマトソース(粘度:15.0Pa・S)をトレイ内に充填し、蒸し加熱に付した。10分間放冷後に凍結した。
(気泡の評価結果)
【0044】
【0045】
加工食品原料として種々のソース類を用いた場合でも、水含有溶液処理と加熱処理との組み合わせにより、より高いレベルで気泡が抑制できることが明らかとなった。本発明の製造方法は、各種の加工食品原料に適用可能な汎用性の高いものである。