(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041332
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】軽量断熱遮音材とその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 11/79 20060101AFI20220304BHJP
C08J 9/42 20060101ALI20220304BHJP
D06M 15/05 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
D06M11/79
C08J9/42
D06M15/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146463
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】591167430
【氏名又は名称】株式会社KRI
(72)【発明者】
【氏名】羽山 秀和
(72)【発明者】
【氏名】林 蓮貞
【テーマコード(参考)】
4F074
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4F074AA63
4F074CC10Z
4F074CE15
4F074CE37
4F074CE44
4F074DA02
4F074DA13
4F074DA23
4F074DA32
4F074DA57
4L031AA01
4L031AA02
4L031AA11
4L031AA24
4L031AA26
4L031AB34
4L031BA20
4L031BA33
4L031DA17
4L033AA01
4L033AA02
4L033AA04
4L033AA09
4L033AB07
4L033AC05
4L033CA03
4L033DA06
(57)【要約】
【課題】 断熱性を有し遮音性に優れた軽量な断熱遮音材の提供。
【解決手段】 本発明の断熱遮音材は、シリカエアロゲル粒子の集合体が陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーのネットワークにより取り囲まれたセルを基本構成とし、複数のセルが密接した3次元的な連続構造の固体複合体が不織布あるいは連続気泡発泡体の内部に形成されており、軽量で優れた遮音性を有する。特に、不織布がグラスウール又はロックウールの場合には、200Hz~2000Hzの周波数帯の垂直入射音響透過損失が20dB以上の遮音性を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカエアロゲル粒子の集合体が陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーのネットワークにより取り囲まれたセルを基本構成とし、複数のセルが密接した3次元的な連続構造の固体複合体が不織布あるいは連続気泡発泡体の内部に形成されている断熱遮音材。
【請求項2】
不織布が天然繊維、無機繊維、再生セルロース繊維、半合成繊維、合成繊維の少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の断熱遮音材。
【請求項3】
連続気泡発泡体がウレタン樹脂、メラミン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、ラテックス、ゴムの少なくとも1種以上の連続気泡発泡体であることを特徴とする請求項1に記載の断熱遮音材。
【請求項4】
不織布がグラスウール又はロックウールである請求項1に記載の遮音材。
【請求項5】
200Hz~2000Hzの周波数帯の垂直入射音響透過損失が20dB以上であることを特徴とする請求項4に記載の断熱遮音材。
【請求項6】
陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーと水溶性非イオン界面活性剤を含む水溶液にシリカエアロゲル粒子を加えて得られる有機ナノファイバーとシリカエアロゲル粒子を含有する水分散液を不織布あるいは連続気泡発泡体に含浸して乾燥させる断熱遮音材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で断熱性、遮音性に優れた断熱遮音材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車両や航空機の快適性に対して騒音対策の要望があり、省エネルギーの観点から軽量であることが求められている。
ウレタンフォームのようなスポンジ状の発泡体やグラスウールやマイクロファイバーの不織布が吸音材として、ブチルゴムのようなゴム状シートが遮音材として用いられている。
発泡体や不織布から成る吸音材は連続気孔によって音による空気振動を圧損することにより優れた吸音性能を有するが、空気振動を完全に遮断することは困難で空気振動が材料を透過し、十分な遮音性を得ることが難しい。
ゴム状の遮音シートは、空気を遮蔽し振動を伝えないことで高い遮音性を有するが、音の反射が起こりやすく、重量が大きい問題がある。
【0003】
遮音材として、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴムやポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴムといった合成ゴム、PVC(ポリ塩化ビニル)、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)等の樹脂、瀝青質等に比較的比重の大きな充填剤を添加して混練し、カレンダーロール等の加工機にてシート状に加工された遮音材は公知である。このような遮音材は必要形状にトリムされたり、立体成形されたりして、防音を必要とする箇所に直接貼付たり、あるいは繊維系の吸音材や樹脂フォーム系の吸音材と積層、また必要形状に成形されて吸遮音材として使用されている。利用用途は広く、自動車を始めとする輸送機械、各種の家電製品、建築部材等、広範囲に渡っている。しかしながら、このような遮音材は質量則に従い、遮音性を得るためには大きな重量が必要であり、低い周波数の遮音性が低い問題がある。
【0004】
シリカエアロゲルを用いた軽量な断熱および遮音材が提案されている。特許文献1には、アルカリ水ガラス、水ガラス硬化剤、水溶性有機高分子及び水を含有し、その混合液がゲル化前の溶液に於いて海相-島相からなる複相構造をなし、かつその複相構造を反映した固結ゲルを生成させた後、取りだし、該ゲル中の水及び必要に応じて更に水溶性有機成分を燃焼・除去してなる高強度軽量シリカエアロゲル成型体の製造方法および成形体が記載されている。これによれば、含有する有機物を除去するために800℃の高温で2~3時間焼成を行う必要があり省エネルギーの観点から好ましくない。
【0005】
特許文献2には、水性発泡体、シリカエアロゲル粒子、有機バインダー及び/又は無機バインダーの混合体から得ることができる熱絶縁材料が記載されている。水性発泡体を形成するカチオン性界面活性剤塩やアニオン性界面活性剤塩は乾燥温度程度では蒸発しないため残存し、シリカエアロゲルの細孔に入ることでシリカエアロゲル本来の性能を活かすことができないと考えられる。
【0006】
特許文献3には、無機エアロゲル及びメラミンフォームを含むインスレーティング複合材料が記載されている。連続気泡発泡体にゾル溶液を含浸させ、湿潤ゲルを形成させた後、ゲルを乾燥させる方法が採用されており、連続気泡発泡体としてメラミンフォームが用いられている。しかしながら、メラミンフォームでは、不織布の場合と同様に、エアロゲルの脱落を抑制できないため、エアロゲルの減少により断熱性能が低下する。
【0007】
特許文献4には、陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバー、水溶性非イオン界面活性剤と水を含む分散媒にシリカエアロゲル粒子を分散させて得られるシリカエアロゲル粒子の水分散液を乾燥して形成される断熱性、吸音性に優れる強度の強い固体複合体が記載されている。厚いシートを作製する場合、乾燥の際に割れが生じるため薄いシートを積層して形成しなければならない課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-139819号公報
【特許文献2】特表2013-518961号公報
【特許文献3】特表2016-521670号公報
【特許文献4】特開2018-43927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、軽量で、粉落ちが少なく、断熱性および遮音性に優れる断熱遮音材を提供すること、また、簡便で省エネルギーなど環境負荷の少ない前記断熱遮音材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーと水溶性非イオン界面活性剤を含む水溶液にシリカエアロゲル粒子を加えて得られる有機ナノファイバーとシリカエアロゲル粒子を含有する水分散液を不織布あるいは連続気泡発泡体に含浸して乾燥させることで得られる断熱遮音材により本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、以下の構成からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。
〔1〕 シリカエアロゲル粒子の集合体が陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーのネットワークにより取り囲まれたセルを基本構成とし、複数のセルが密接した3次元的な連続構造の固体複合体が不織布あるいは連続気泡発泡体の内部に形成されている断熱遮音材。
〔2〕 不織布が天然繊維、無機繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維の少なくとも1種以上であることを特徴とする前記〔1〕に記載の断熱遮音材。
〔3〕 連続気泡発泡体がウレタン樹脂、メラミン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、ラテックス、ゴムの少なくとも1種以上の連続気泡発泡体であることを特徴とする前記〔1〕に記載の断熱遮音材。
〔4〕 不織布がグラスウール又はロックウールである前記〔1〕に記載の遮音材。
〔5〕 200Hz~2000Hzの周波数帯の垂直入射音響透過損失が20dB以上であることを特徴とする前記〔4〕に記載の断熱遮音材。
〔6〕 陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーと水溶性非イオン界面活性剤を含む水溶液にシリカエアロゲル粒子を加えて得られる有機ナノファイバーとシリカエアロゲル粒子を含有する水分散液を不織布あるいは連続気泡発泡体に含浸して乾燥させる断熱遮音材の製造方法。
【0012】
前記不織布とは、一般に繊維を織らずに絡み合わせたものを言うが、本発明においては繊維を縦横に組み合わせた布や織物であっても繊維の隙間にシリカエアロゲル粒子の水分散液を含浸することができれば用いることができる。
【0013】
前記連続気泡発泡体とは、スポンジのように気泡同士が繋がっており、水を吸収したり、気体を通過させることができる構造の発泡体である。
【0014】
前記垂直入射音響透過損失とは、サンプルに垂直に入射した入射音のエネルギー(Ii)と透過音のエネルギー(It)において次式で算出される遮音性能値であって値が大きいほど遮音性が優れていることを意味している。
音響透過損失(TL)=10log10(Ii/It)
本発明においてはASTM-E2611に準拠した伝達マトリックス法に基づく音響材料の垂直入射音伝送測定により得られる値である。
【発明の効果】
【0015】
有機ナノファイバーとシリカエアロゲル粒子を含有する水分散液を不織布あるいは連続気泡発泡体に含浸して乾燥させることで得られる断熱遮音材は、軽量で、粉落ちが少なく、断熱性および遮音性あるいは周波数低音域及び高音域の遮音性に優れる。
【0016】
本発明の断熱遮音材は、固体複合体が不織布あるいは連続気泡発泡体の内部に存在しており、構成する固体複合体においてはシリカエアロゲル粒子の集合体が有機ナノファイバーのネットで取り囲まれているため、シリカエアロゲル粒子の粉落ちがほとんどない。
【0017】
本発明の断熱遮音材は、低い密度とシリカエアロゲルのナノ細孔が維持されているため遮音材に好適であり、軽量かつ遮音性あるいは周波数低音域及び高音域の遮音性に優れている。
【0018】
本発明の断熱遮音材は、250Hz以下の低周波数の音を遮断し、自動車、船舶や飛行機、ヘリコプターなどの輸送機器、工場の送風機、プレス機、真空ポンプなど、店舗・公共施設の空調室外機、ボイラーなどから発生する圧迫するような不快な音である低音域の音、「ゴー」という低い音域のロードノイズを有効に遮音することができる。
【0019】
グラスウール又はロックウールに含浸した場合の本発明の断熱遮音材は、2000Hz以下の全域において優れた遮音性を有しており、前記の低音域の不快音に加えて自動車走行時の「シャー」という1000Hz辺りのパターンノイズを有効に遮音することができる。
【0020】
グラスウール又はロックウール以外の不織布あるいは連続気泡発泡体を用いた場合の本発明の断熱遮音材は、低音域および高音域の遮音性に優れ中音域の音を透過する周波数選択性を有する遮音性能を示し、前記の低音域の不快音やガラスや金属を引っ掻いた際に発生するキーキー音のような人間が最も敏感に聞こえる不快な音である高音域の音を低減し、日常会話の音、音楽の主旋律の音域の心地よい音、サイレン音等を選択的に透過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1の断熱遮音材と比較例1の周波数に対する垂直入射透過損失
【
図2】実施例1の断熱遮音材と比較例2および計算例1、計算例2の周波数に対する垂直入射透過損失
【
図3】実施例1、実施例2の断熱遮音材の周波数に対する垂直入射透過損失
【
図4】実施例3、実施例4、実施例5、実施例6の断熱遮音材の周波数に対する垂直入射透過損失
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の断熱遮音材は、シリカエアロゲル粒子の集合体が陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーのネットワークにより取り囲まれたセルを基本構成とし、複数のセルが密接した3次元的な連続構造の固体複合体が不織布あるいは連続気泡発泡体の内部に形成されている複合材であって、軽量で遮音性が高く、粉落ちがほとんどないシリカエアロゲル複合材である。
【0023】
本発明の断熱遮音材を構成する不織布としては、特に限定はされないが、天然繊維(コットン繊維や麻繊維などの植物繊維、絹や羊毛など動物繊維)、無機繊維(ガラス繊維、人造鉱物繊維、炭素繊維)、再生セルロース繊維(ビスコース、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル)、半合成繊維(アセテート、トリアセテート、プロミックス)、合成繊維(ナイロン、アラミドなどのポリアラミド繊維、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリクラール、ポリ乳酸)あげられる。前記水分散液が内部に浸透しやすい点から親水性の不織布が好ましい。耐熱性の観点から無機繊維、アラミド繊維、植物繊維、再生セルロース繊維、半合成繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、ビニロン繊維がより好ましい。さらに好ましくはガラス繊維(グラスウール)や人造鉱物繊維(ロックウール)、炭素繊維などの無機繊維およびアラミド繊維である。
また、本発明においては、不織布に限らず、繊維を組み合わせた布や織物であっても繊維の隙間にシリカエアロゲル粒子の水分散液を含浸することができれば用いることができる。
【0024】
本発明の断熱遮音材を構成する連続気泡発泡体としては、特に限定はされないがウレタン樹脂、メラミン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、ラテックス、ゴムの連続気泡発泡体があげられる。シリカエアロゲル粒子の水分散液が内部に浸透しやすい点から親水性の連続気泡発泡体が好ましい。ここで連続気泡発泡体とは、内部に気泡を含みスポンジのように気泡同士が繋がっており、水を吸収したり、気体を通過させることができる構造の前記材料の発泡体である。
【0025】
次に、前記固体複合体は、陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバー、水溶性非イオン界面活性剤と水を含む分散媒にシリカエアロゲル粒子を分散させて得られる有機ナノファイバーとシリカエアロゲル粒子を含有する水分散液を乾燥して得られる。
【0026】
前記水分散液を乾燥した固体複合体は、シリカエアロゲル粒子の集合体が陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーのネットワークにより取り囲まれたセルを基本構成とし、複数のセルが密接した3次元的な連続構造の固体複合体である。固体複合体の模式図を
図6に示す。シリカエアロゲルとセルロースナノファイバーで製造した固体複合体の光学顕微鏡写真は、特許文献4の実施例の
図2、
図4、
図5に示されている。
【0027】
本発明の断熱遮音材は、前記混合水分散液を不織布あるいは連続気泡発泡体に含浸し、乾燥することで不織布あるいは連続気泡発泡体の内部空間に前記固体複合体を形成させた複合材である。
【0028】
前記陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーは、特に限定しないが、カルボキシル基及びカルボキシル基の塩、リン酸基及びリン酸基の塩並びに硫酸エステル基及び硫酸エステル基の塩等の陰イオン性官能基有する有機ナノファイバーが挙げられる。さらに、カルボキシル基の塩、リン酸基の塩及び硫酸エステル基の塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩等であればよい。
【0029】
特に好ましい陰イオン性官能基としては、前記硫酸基又は硫酸エステル基の塩であり、硫酸エステル基の塩としては、硫酸エステル化セルロースナノファイバーのナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩基の少なくとも一つ以上の硫酸エステル基の塩を挙げることができる。
【0030】
前記陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーとしては、変性又は修飾により表面に陰イオン性官能基を持たせるセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー等の天然多糖類ナノファイバー、及び寒天、ゼラチン、ヒアルロン酸、CMCとポリアクリル酸等のカルボキシル基を持つポリマーから天然形成又は人工加工により得られる有機ナノファイバーを例示できるが、その中でも、変性又は修飾により表面に陰イオン性官能基を持たせるセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー等の天然多糖類ナノファイバーは結晶化度が高くてチキソトロピー性や粘度が高いためより好ましい。
【0031】
前記陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーの結晶化度は、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。結晶化度の高い有機ナノファイバーはチキソロトピー性と粘度が高いため、エアロゲル粒子が取り込まれるミセルを安定化させることができ、乾燥した複合体は丈夫で耐水性が優れたため好ましい。
前記陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーの最も好ましい有機ナノファイバーは、変性又は修飾により表面に陰イオン性官能基を持たせるセルロースナノファイバー及びキチンナノファイバーである。
【0032】
そして、陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーの特に好ましいものを具体的例示すると、前記カルボキシル基又はカルボキシル基の塩を陰イオン性官能基として持つ有機ナノファイバーTEMPO酸化セルロースナノファイバー及びカルボキシメチル修飾セルロースナノファイバーを挙げることができる。
【0033】
また、有機ナノファイバーの表面の陰イオン性官能基の置換度は、大きい程有機ナノファイバーの水和性が高いため、分散媒の粘度やチキソトロピー性を向上する効果が高くなる。従って、有機ナノファイバーの表面の陰イオン性官能基の平均置換度が0.10~1.00であることが好ましく、より好ましくは0.15~0.95であり、さらに好ましくは0.20~0.90である。0.1以下になると増粘効果や非イオンエーテル型界面活性剤との相互作用が低くなる。一方、1.0以上になるとナノファイバーの結晶化度が低下し、チキソトロピー性が低下したり、繊維状が崩れたりすることにより増粘効果の低下や乾燥後の複合化材の強度が低下したりする恐れがある。
【0034】
陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーの平均繊維径は、2~500nmであることが好ましく、より好ましくは5~300nm、さらに好ましくは10~200nmである。2nm以下になるとナノファイバーの製造コストが高くなるとともに耐熱性が低下する。また、結晶化度が低下する恐れがある。一方、500nm以上になると表面積が小さくなり、チキソトロピー性が失う恐れがある。さらに、繊維径が大きくなると表面積が小さくなるためナノファイバーネットワークの中にシリカエアロゲル粒子を取り込んで固定化することができなくなるため、乾燥後の複合材が脆くなったり、シリカエアロゲル粒子の脱落により粉塵が発生したりする恐れがある。
【0035】
さらに、有機ナノファイバーの平均繊維長は、0.2~50μmが好ましく、より好ましくは0.3~35μm、さらに好ましくは0.5~30μm、最も好ましくは1.0~20μmである。繊維長が小さすぎるとネットワークが弱くなる。
【0036】
本発明の断熱遮音材の前記固体複合体を得るためのシリカエアロゲル粒子を分散させる分散媒は、陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバー、水溶性非イオン界面活性剤と水を含んでいる。
前記水溶性非イオン界面活性剤には、水と完全混合しない溶解度の低いものであっても、分散媒にしたときに水に溶解する親水性非イオン界面活性剤を含む。
【0037】
前記水溶性非イオン界面活性剤は、特に限定しないが、エチレングリコール又はポリエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレン又はポリプロピレングリコールアルキルエーテル、グリセリン又はポリグリセリンエーテル、アルキルグリコシド等のエーテル型水溶性界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の水溶性エステル型界面活性剤を用いることができる。その中でも水溶性に優れた非イオンエーテル型界面活性剤である下記式(1)又は(2)で表されるエーテル型非イオン界面活性剤が好ましい。
R1-O-(CH2-CH2-O)n-R2 (1)
R1-O-(CH2-CH2-CH2-O)n-R2 (2)
(式(1)及び式(2)中、R1は水素原子、炭素数10以下のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基又は炭素数10以下のアルケニル基、R2は炭素数3~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基又は炭素数10以下のアルケニル基、nは1~20)
【0038】
さらに、前記水溶性非イオン界面活性剤は、下記式(3)で表される炭素数4~7の両親媒性アルコールの少なくとも一種以上であることが好ましい。
HO-R3 (3)
(式(3)中、R3は炭素数4~7のアルキル基)
極性の高い炭素数3以下のメタノール、エタノール及び2-プロパノール又はイソブチルアルコールは、界面活性剤としての働きが弱くなり、疎水性のシリカエアロゲルになじみにくいため、少量(例えば15%以下)を添加しても疎水性のシリカエアロゲルを分散することができず、大量(例えば15%以上)を添加すると分散媒はシリカエアロゲルの細孔内に侵入し、乾燥後シリカエアロゲルが激しく収縮するため好ましくない。炭素数8以上のアルコールは、水に溶けにくいか溶けないため均一なシリカエアロゲル分散体を得られないため好ましくない。
【0039】
式(1)若しくは式(2)に示す水溶性の非イオンエーテル型界面活性剤又は式(3)に示す両親媒性アルコールを用いることで疎水性のシリカエアロゲル粒子は集合体で分散媒に分散するため特に好ましい。このような分散液を乾燥した後シリカエアロゲル粒子は集合体のままで陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーのネットワークに取り込まれたため有機ナノファイバーの含有量が少なくてシリカエアロゲルは収縮又は脱落しないため強くて遮音性に優れた複合体が得られる。
更に、水溶性の非イオンエーテル型界面活性剤及び/又は炭素数4以上の両親媒性アルコールは、エステル型の疎水性の非イオン界面活性剤と併用することもできる。
【0040】
分散液を乾燥して複合材を作製することを考えると、沸点300℃以下の界面活性剤が好ましい。界面活性剤の沸点が高すぎると蒸発し難く、乾燥して複合材に成形する場合、複合体内に界面活性剤が残留するため複合体の耐熱性を低下する恐れがあるため好ましくない。
【0041】
上記式(1)及び(2)で表されるエーテル型非イオン界面活性剤の中でも、R1、R2の炭素数が少なく、nも小さい沸点300℃以下のエーテル型非イオン界面活性剤が好ましい。
【0042】
沸点300℃以下のエーテル型非イオン界面活性剤を例示すると、エチレングリコールモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテルの群から選ばれた少なくとも一種以上である。
【0043】
上記式(3)で表される両親媒性アルコールは、式(3)中のR3の炭素数が4~7の親水性アルキルアルコールが好ましく、例示すると、1ーブタノール(nーブチルアルコール、ノルマルブタノール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブチルアルコール)、2-ブタノール(sec-ブチルアルコール)、2-メチル-2-プロパノール(tert-ブチルアルコール)、ペンタノールの全ての異性体、ヘキサノールの全ての異性体、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、4-ヘプタノールの群から選ばれる少なくとも一種以上である。
【0044】
本発明の断熱遮音材を構成する前記固体複合体に用いられるシリカエアロゲルは、好ましくは表面に疎水基を有する、疎水性エアロゲルである。具体的には、粒子表面に、下記式で表わされる3置換シリル基が結合することで疎水性となっている。式中、R
1,R
2,R
3は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~18のアルキル基、又は炭素数6~18のアリール基から選ばれ、好ましくはメチル基、エチル基、シクロヘキシル基、フェニル基である。
【化1】
【0045】
前記固体複合体に用いられるシリカエアロゲルは、気孔率50体積%以上、好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上の気孔を有する。
【0046】
シリカエアロゲルの粒子径は特に制限しないが、粒径が小さすぎると粒子間隙総合比が増え、遮音等シリカエアロゲルのナノサイズ細孔の比率が少ないため好ましくない。一方、粒径が大きすぎると、粒子間隙のサイズが大きくなり大きい空隙の間に空気が対流し遮音効果が減る恐れがあるため好ましくない。200nm~10mmの粒径範囲が好ましい。好ましくは、シリカエアロゲルの90%以上が粒径1μm~6mmの範囲内、より好ましくは2μm~3mmの範囲内、さらに好ましくは5μm~2mmの範囲内にあるエアロゲル粒子である。粒径が10mm以上のシリカエアロゲルを使用すると粒子と粒子の間の空隙が空気の平均自由行程より大きくなる恐れがあるため好ましくない。さらに粒子の間の空隙を減らすためシリカエアロゲル粉末の嵩密度(バルク密度)は粒子密度との差が小さいものが好ましい。嵩密度は粒子密度に近い程粒子間隙が小さいため好ましい。さらに、単一粒径より各種粒径の粒子が混ぜるシリカエアロゲルが好ましい。
【0047】
このような粒径のシリカエアロゲルは、当該粒径範囲を有する市販品を用いてもよいし、上記範囲よりも粒径が大きいシリカエアロゲルを適宜粉砕処理して用いてもよい。
【0048】
シリカエアロゲルは空気の平均自由行程を阻害する数十nmの細孔構造のため空気の分子運動が阻害され、高い遮音性を示す。粒子表面に疎水基を有することから、水性媒体中に分散しても、細孔内への水の染み込みや侵入が防止される。このことは、組成物の状態、さらには成形後の状態においても、エアロゲル本来の高い気孔率を保持できること、ひいては優れた遮音性を発揮できることを意味する。
【0049】
表面に疎水基を有するシリカエアロゲルは、単独では水性媒体中に均一に分散することができないが、界面活性剤の共存により、水性媒体中に分散させることができる。しかし、界面活性剤の含有量が少ない場合、シリカエアロゲルが分散できない。一方界面活性剤の濃度をシリカエアロゲルが分散できるまで上げると分散媒は細孔内に染み込みやすくなる。本発明は陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーと界面活性剤を併用することにより分散媒がシリカエアロゲルの細孔内に侵入しないため成形後の遮音材の細孔率を高度に保持でき、高い遮音性を持つ複合材が得られる。
【0050】
本発明の断熱遮音材に含有される前記固体複合体を形成するための有機ナノファイバーとシリカエアロゲル粒子を含有する水分散液は、以上のような成分を、所定比率で配合することにより調製される。
【0051】
シリカエアロゲル粒子の水分散液を作製するに当たり、各成分の配合順序などは特に限定しないが、シリカエアロゲルの表面が疎水性であること、水溶性非イオン界面活性剤の不在下では、シリカエアロゲルを水に分散できないことに鑑みて、(1)陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバー、水溶性非イオン界面活性剤と水を混ぜた後、シリカエアロゲル粒子を添加混合する方法と;(2)陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーを水に添加して、シリカエアロゲル粒子を添加した後に水溶性非イオン界面活性剤を添加して混合する方法などが挙げられる。添加及び混合は、所定量を一度に添加して混合する方法と少量ずつ添加混合する方法のいずれも可能である。また、シリカエアロゲルの分散液の粘度が高い場合、分散液を調製した後、分散媒を加えてさらに希釈することできる。
【0052】
シリカエアロゲル粒子を分散媒に分散するための混ぜる方法は特に制限しないか、シェーキング、磁性スターラー撹拌、機械撹拌、振動撹拌、超音波撹拌等の公知の方法が適用できる。しかし、撹拌のせん断力が強すぎるとシリカエアロゲルの細孔構造が崩壊する恐れがあるため好ましくない。
【0053】
撹拌時間が特に限られていないが、均一な分散液を得るまで撹拌する。撹拌時の分散液の温度は特に制限しないが、施工環境や用途に応じて温度を適切調整すればよい。温度が高すぎると有機成分の分解や揮発の恐れがあるため好ましくない。15~150℃が好ましい。より好ましくは20~120℃、さらに好ましくは23~90℃である。
【0054】
疎水性のシリカエアロゲル粒子を、陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーと水溶性非イオン界面活性剤を含む水系分散媒に分散することによりシリカエアロゲル粒子が集合体で分散しているコロイドの様なクリーム状の分散液が得られる。
【0055】
前記固体複合体を形成するシリカエアロゲル粒子の集合体(ミセル)の形状と大きさ(ミセル当たり取り込まれるシリカエアロゲルの数)は、有機ナノファイバーと界面活性剤の含有量、分散プロセスや条件に依存する。特に、有機ナノファイバーの含有量が少ない場合、乾燥した複合体はシリカエアロエル粒子の集合体が六角形のような多面体である。一方、有機ナノファイバーの含有量が極端に大きい時、集合体が球状である。
【0056】
水に対する陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーの濃度は0.01~3重量%が好ましい。この範囲内であれば、シリカエアロゲル粒子を分散媒に容易に分散し、分散したシリカエアロゲル粒子のミセルが高い安定性を保つことができるため好ましい。
0.01重量%以下になる分散媒のチキソトロピー性又は粘度が低すぎるため、シリカエアロゲル粒子のミセルが合一しやすく安定を保つことが困難であるため好ましくない。一方、3重量%以上になると分散媒の粘度が高いためシリカエアロゲル粒子がよく分散できず、均一な分散液を得難いため好ましくない。より好ましくは0.05~2.5重量%、さらに0.1~2.0重量%、もっと好ましくは0.2~1.5重量%である。
【0057】
分散媒に対する水溶性非イオン界面活性剤の濃度は界面活性剤の種類に依存し、特に制限しないが、0.2~20重量%が好ましい。より好ましくは2~15重量%である。水溶性非イオン界面活性剤の濃度は低すぎると、シリカエアロゲルを分散媒に均一に分散させることが困難となる。しかしながら、水溶性非イオン界面活性剤の濃度は高すぎると表面張力の低下により分散媒はシリカエアロゲル粒子の表面を濡らすだけでなく、シリカエアロゲルの細孔内に染み込む又は浸透するため、乾燥の際に溶媒の蒸発により細孔が収縮し、遮音性が低下する。
【0058】
本発明の断熱遮音材を構成する固体複合体の陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーとシリカエアロゲルの重量比は特に限られないが、陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーの重量比が少なくなると、シリカエアロゲルの分散液は熱力学的に不安定な状態になり、乾燥又は成型の際にシリカエアロゲル粒子のミセルが凝集することで相分離が発生する恐れがある。さらに、陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーの重量比が低すぎると乾燥後の複合体が脆くなるため好ましくない。一方、陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバーの重量比が大きすぎるとシリカエアロゲル由来性能が低下するため好ましくない。そのため、シリカエアロゲル粒子と有機ナノファイバーの重量比は95:5~60:40が好ましい。より好ましくは90:10~70:30、さらに好ましくは85:15~75:25である。
【0059】
前記固体複合体は、内部に空気を含有して生成され、その空気含有率はシリカエアロゲル粒子と有機ナノファイバーの配合比率、水分散液中の濃度等により変化するが、固体複合体内部に通常は8~35vol%の空気が存在する。
【0060】
本発明の断熱遮音材は、前記固体複合体が不織布あるいは連続気泡発泡体の内部に形成されている。本発明の遮音断熱材は、固体複合体と不織布あるいは連続気泡発泡体の内部および空間(空気)で構成されており、固体複合体は不織布の網目あるいは連続気泡発泡体の気泡連結部の開口部よりも大きいため、固体複合体が不織布あるいは連続気泡発泡体から脱落することはない。また、シリカエアロゲル粒子は、有機ナノファイバー(セルロースナノファイバー)により固体複合体を形成しているので、シリカエアロゲル粒子の粉落ちがほとんどない。
図5に実施例1で得られたガラスウール内部に固体複合体が形成されている断熱遮音材の顕微鏡写真、
図7に不織布の場合の遮音断熱材の模式図を示す。不織布の繊維間の空間に固体複合体と空間(空気)が構成されており、固体複合体はガラス繊維の網目よりも大きく、また、不織布の繊維に接着して存在している。
【0061】
本発明の断熱遮音材中の固体複合体の構成比は、断熱遮音材に対して体積比で好ましくは5vol%以上、より好ましくは10vol%以上、さらに好ましくは20vol%以上である。固体複合体の構成比が高いほど遮音性が高くなるため、固体複合体の構成比を高くすると高同等の遮音性を得るための厚さを薄くすることができる。
【0062】
本発明の断熱遮音材の密度は、不織布あるいは連続気泡発泡体の材料やシリカエアロゲルとマクロポアの比率による。密度は特に限定されないが、軽量の観点から300kg/m3以下であることが好ましい。
なお、本明細書において不織布、連続気泡発泡体、固体複合体、断熱遮音材等の内部に空間部を有する材料の密度は、見かけ密度である。
【0063】
本発明の断熱遮音材の厚さが薄すぎると遮音効果が小さく、厚過ぎると省スペースに対するメリットを失う。シートの厚さは0.5mm以上、50mm以下が好ましい。より好ましくは1mm以上、10mm以下である。
【0064】
続いて、本発明の断熱遮音材の製造方法について説明する。
本発明の断熱遮音材は、不織布あるいは連続気泡発泡体に有機ナノファイバーとシリカエアロゲル粒子を含有する水分散液を含浸した後、又は、有機ナノファイバーとシリカエアロゲル粒子を含有する水分散液に不織布あるいは連続気泡発泡体を浸して含浸した後、乾燥して不織布あるいは連続気泡発泡体の内部空間に前記固体複合体を形成させて製造することができる。
【0065】
有機ナノファイバーとシリカエアロゲル粒子を含有する水分散液が高粘度である場合は、分散液の中に気泡が含まれている可能性が高いため、含浸する前に脱泡することが好ましい。脱泡した前記混合水分散液から得られた固体複合体は、空気の平均自由行程より大きい空隙が少なくなるため高い遮音性と強度を持つ複合体が得られるため好ましい。
【0066】
乾燥は、常圧乾燥、減圧乾燥又は常圧と減圧の併用等の乾燥法の何れも適用することができる。シリカエアロゲルの熱伝導性が低いため減圧乾燥又は常圧乾燥で一部の水又は非イオン界面活性剤が揮発した後、減圧乾燥に変えることも良い。乾燥の温度、時間は界面活性剤の沸点、常圧または減圧等の因子に依存する。生産性と施工の面から常圧乾燥と減圧乾燥を併用することが好ましい。
【0067】
乾燥温度と時間は特に制限しないが、界面活性剤の沸点、金型の形状により調整すればよい。例えば、50~250℃が好ましい。より好ましくは60~200℃、さらに好ましくは75~180℃である。温度が低すぎると水と界面活性剤を除くための乾燥時間が長くなり、生産性が低いため好ましくない。一方、乾燥温度が高すぎると水や界面活性剤の揮発が激しすぎるため気泡や欠陥の形成可能性があるため好ましくない。また、乾燥温度が高すぎると有機ナノファイバーが分解したり、不織布あるいは連続気泡発泡体の材質によっては溶融して性能が低下したり形状を保持できない危険性があるため好ましくない。不織布あるいは連続気泡発泡体の内部空間に前記固体複合体を形成しているため、厚くても乾燥する際に断熱遮音材が割れることがない。
【0068】
不織布あるいは連続気泡発泡体の内部空間に形成する前記固体複合体の構成比は、水分散液中の有機ナノファイバーとシリカエアロゲル粒子の濃度を濃くすることによって構成比を高くすることができるが、不織布あるいは連続気泡発泡体への有機ナノファイバーとシリカエアロゲル粒子を含有する水分散液の含浸、乾燥を繰り返すことによっても構成比を高くすることができる。
【0069】
本発明の断熱遮音材は、不織布あるいは連続気泡発泡体の種類によって異なる遮音性能を示す。すなわち、全周波数領域においてほぼ同じような遮音性能を示す断熱遮音材と低音域および高音域の遮音性に優れ中音域の音を透過する周波数選択性を有する遮音性能を示す断熱遮音材に区別される。全周波数領域にほぼ同じような遮音性能を示すものは、不織布としてグラスウール、ロックウールを用いた場合は、全周波数領域にほぼ同じような遮音性能を発揮するが、グラスウール又はロックウール以外の不織布あるいは連続気泡発泡体を用いた場合は、低音域および高音域の遮音性に優れ中音域の音を透過する周波数選択性を有する遮音性能を示す。
【0070】
グラスウール又はロックウールを用いた場合の本発明の断熱遮音材は、200Hz~1000Hzの周波数帯の垂直入射音響透過損失が20dB以上、好ましくは30dB以上、さらに好ましくは40dB以下である。
【0071】
透過損失が20dBの場合は音の大きさは10%、30dBの場合は約3%、40dBの場合は1%となり騒音が軽減あるいは殆どなくなる。
【0072】
グラスウール又はロックウール以外の不織布あるいは連続気泡発泡体を用いた場合の本発明の断熱遮音材(以下、「周波数選択断熱遮音材」という。)は、低音域および高音域の遮音性に優れ中音域の音を透過する周波数選択性を有する遮音性能を示すが、その特性は以下のとおりである。
【0073】
前記周波数選択断熱遮音材は、前記低音域が400Hz以下の周波数帯であり及び前記高音域が1300Hz以上の周波数帯であり、前記低音域と前記高音域の間の前記中音域に、透過損失の最小値を有することを特徴とする周波数選択断熱遮音材である。
【0074】
そして、前記周波数選択断熱遮音材は、前記各音域の透過損失の平均値が、前記低音域において6dB以上であり、前記高音域において6dB以上であり、前記中音域において14dB以下であり、透過損失の最小値が3dB以下であることを特徴とする。
【0075】
また、前記周波数選択断熱遮音材は、不織布あるいは連続気泡発泡体の種類によって中音域の周波数帯をより狭い範囲の音域で特徴づけることができ、中音域を800Hz~1300Hzと中音域を400~1000Hzとする周波数選択断熱遮音材とする周波数選択断熱遮音材ある。それぞれを例示すると、中音域を800Hz~1300Hzとする周波数選択断熱遮音材の例としてはコットン不織布、メラミンフォーム、カーボンファイバー不織布等があり、中音域を400~1000Hzとする周波数選択断熱遮音材の例としては3Mシンサレート(登録商標)不織布等がある。
【0076】
中音域を800Hz~1300Hzとする周波数選択断熱遮音材の好ましい各音域の透過損失の平均値は、周波数800Hz以下の低音域において6dB以上、好ましくは10dB以上、さらに好ましくは20dB以上であり、周波数1300Hz以上の高音域において6dB以上、好ましくは10dB以上、さらに好ましくは20dB以上であり、800Hz~1300Hzの中音域において8dB以下、好ましくは6dB以下、さらに好ましくは4dB以下であり、透過損失の最小値が3dB以下、好ましくは2dB以下、さらに好ましくは1dB以下である。
そして、中音域を400~1000Hzとする前記周波数選択断熱遮音材は、各音域の透過損失の平均値は、周波数400Hz以下の低音域において6dB以上、好ましくは8dB以上、さらに好ましくは10dB以上であり、高音域を周波数1000Hz以上とすることができる高音域において6dB以上、好ましくは8dB以上、さらに好ましくは10dB以上であり、400~1000Hzの中音域において6dB以下、好ましくは3dB以下、さらに好ましくは2dB以下であり、透過損失の最小値が3dB以下、好ましくは2dB以下、さらに好ましくは1dB以下である。
【0077】
通常の遮音材は、単位面積当たりの質量(面密度)が大きいほど、また同じ面密度であれば高い周波数(高音域)ほど透過損失(遮音性能)が大きくなる質量則といわれる法則にしたがうが、本発明の断熱遮音材は、面密度が小さいにもかかわらず透過損失が大きく、質量則に従わない軽くても高い遮蔽性を実現する。
【0078】
本発明の断熱遮音材は、それを具備した機器として利用できる。
断熱遮音材の用途としては、自動車のエンジンルーム、車内やトランクルームに用いられているゴム系の遮音材から置き換えることで大幅な軽量化が図れ、前述のエンジン音やタイヤからの放射音などのノイズを低減させることができる。このような用途としては自動車の他にも鉄道車両、船舶、航空機やヘリコプターなどの輸送機の機体には軽量であるため好適である。また、工場の送風機、プレス機、真空ポンプなど、店舗・公共施設の空調室外機、ボイラーなど、家の壁、床、天井などにも用いることができる。
断熱遮音材を具備した機器としては、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、エアコン、スピーカーなどが挙げられる。
本発明の断熱遮音材は断熱性も同時に有しているため、特に電気自動車、家の壁などの建造物、ボイラーや冷蔵庫は省エネルギーの観点から好適である。
【実施例0079】
本発明について、実施例を用いてさらに説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。各実施例及び各比較例の作製方法や用いた物性評価法、陰イオン性官能基を持つ有機ナノファイバー、界面活性剤やシリカエアロゲル粒子のメーカーやそれらの調製方法を以下に示した。
【0080】
(有機ナノファイバー)
有機ナノファイバーとしてセルロースナノファイバーの表面の一部又は全ての6位の炭素のヒドロキシメチル基がTEMPO酸化によりカルボキシル基に変換されたTEMPO酸化法セルロースナノファイバーである第一工業製薬社製レオクリスタ(TEMPO酸化法セルロースナノファイバーが2重量%の水分散液)を用いた。
【0081】
(界面活性剤)
ナカライテスク株式会社製のエチレングリコールモノブチルエーテル(EGMBE)を用いた。
【0082】
(シリカエアロゲル粒子)
シリカエアロゲル粒子はキャボト社製ENOVA AEROGEL MT1100を用いた。MT1100について粒子サイズは2~24μm、粒子の密度は120kg/m3である。
【0083】
(不織布)
ガラス繊維不織布(グラスウール)として厚さ5mmあるいは10mmの長繊維グラスウール(密度105.1kg/m3、融点・軟化温度850℃)を用いた。
コットン不織布として脱脂綿(ハクジュウコットン、白十字社製、密度43.1kg/m3)を用いた。
カーボン繊維不織布としてアクリル繊維を焼成炭化したカーボン繊維から成る厚さ3mmのカーボンフェルト(密度109.2kg/m3)を用いた。
マイクロファイバー不織布として繊維径2μmのポリプロピレンマイクロファイバーと繊維径25μmのポリエステル短繊維から成る厚さ10mmのシンサレート(3M社製、密度22.3kg/m3)を用いた。
(連続気泡発泡体)
連続気泡発泡体として厚さ3mmのメラミンフォーム(密度82.5kg/m3)を用いた。
【0084】
(板ガラス)
板ガラスとして厚さ5cmのフロートガラス(FL5、密度2500kg/m3)を用いた。
【0085】
(透過損失の評価)
周波数選択断熱遮音材の垂直入射透過損失を日本音響エンジニアリング株式会社製 WinZacを用いてASTM-E2611に準拠した伝達マトリックス法に基づく音響材料の垂直入射音伝送の測定を行った。
直径40mmの円盤状に切り抜いた周波数選択断熱遮音材の試料を装置に設置し、周波数が200~5000Hzの範囲で測定した。環境温度は25℃であった。
【0086】
(周波数選択断熱遮音材の密度および面密度の評価)
直径41.5mmの円盤状に切り抜いた一定面積(S=13.5cm2)の周波数選択断熱遮音材についてその質量(W)をマイクロ電子天秤、その厚み(d)をマイクロメータで測り、次式により密度および面密度を求めた。
面密度とは単位面積当たりの重量である。
密度(kg/m3)=W(kg)/[d(m)×S(m2)]
面密度(kg/m2)=W(kg)/[S(m2)]
【0087】
[実施例1]
110mlのねじ口瓶にレオクリスタの水分散液(固形分2重量%)13g、蒸留水35g、エチレングリコールモノブチルエーテル2.5gを加えスターラーでレオクリスタが均一に分散するまで撹拌した後、シリカエアロゲル(MT1100)0.86gを加え、蓋を閉めて手で3分間シェーキングすることによりクリーム状の分散液を得た。得られた分散液に蒸留水を34g加えてスターラーで撹拌して含浸用分散液を得た。ステンレス製トレイに厚さ10mm、6cm×6cmのグラスウールを置き、含浸用分散液を浸み込ませた後、120℃の乾燥機で3時間乾燥して断熱遮音材を得た。乾燥後の断熱遮音材の厚さは6mmであった。密度は182kg/m
3、面密度は1.1kg/m
2の軽さであった。得られた断熱遮音材の厚さ、密度、面密度および垂直入射透過損失を評価した結果を表1に、周波数に対する垂直入射透過損失のグラフを
図1、
図3に示した。断熱遮音材の光学顕微鏡写真を
図5に示した。
【0088】
[実施例2]
110mlのねじ口瓶にレオクリスタの水分散液(固形分2重量%)13g、蒸留水35g、エチレングリコールモノブチルエーテル2.5gを加えスターラーでレオクリスタが均一に分散するまで撹拌した後、シリカエアロゲル(MT1100)0.86gを加え、蓋を閉めて手で3分間シェーキングすることによりクリーム状の分散液を得た。得られた分散液に蒸留水を13g加えてスターラーで撹拌して含浸用分散液を得た。ステンレス製トレイに厚さ5mm、6cm×6cmのグラスウールを置き、分散液を浸み込ませた後、120℃の乾燥機で3時間乾燥して断熱遮音材を得た。乾燥後の断熱遮音材の厚さは3.5mmであった。密度は212kg/m
3、面密度は0.74kg/m
2の軽さであった。得られた断熱遮音材の厚さ、密度、面密度および垂直入射透過損失を評価した結果を表1に、周波数に対する垂直入射透過損失のグラフを
図3に示した。
【0089】
[実施例3]
110mlのねじ口瓶にレオクリスタの水分散液(固形分2重量%)13g、蒸留水35g、エチレングリコールモノブチルエーテル2.5gを加えスターラーでレオクリスタが均一に分散するまで撹拌した後、シリカエアロゲル(MT1100)0.86gを加え、蓋を閉めて手で3分間シェーキングすることによりクリーム状の分散液を得た。ステンレス製トレイに厚さ5mm、6cm×6cmの脱脂綿を置き、分散液を浸み込ませた後、120℃の乾燥機で3時間乾燥して断熱遮音材を得た。乾燥後の断熱遮音材の厚さは1mmであった。密度は259kg/m
3、面密度は0.26kg/m
2の軽さであった。得られた断熱遮音材の厚さ、密度、面密度および垂直入射透過損失を評価した結果を表2に、周波数に対する垂直入射透過損失のグラフを
図4に示した。
【0090】
[実施例4]
110mlのねじ口瓶にレオクリスタの水分散液(固形分2重量%)13g、蒸留水35g、エチレングリコールモノブチルエーテル2.5gを加えスターラーでレオクリスタが均一に分散するまで撹拌した後、シリカエアロゲル(MT1100)0.86gを加え、蓋を閉めて手で3分間シェーキングすることによりクリーム状の分散液を得た。得られた分散液に蒸留水を13g加えてスターラーで撹拌して含浸用分散液を得た。ステンレス製トレイに厚さ3mm、6cm×6cmのカーボンフェルトを置き、分散液を浸み込ませた後、120℃の乾燥機で3時間乾燥して断熱遮音材を得た。乾燥後の断熱遮音材の厚さは2mmであった。密度は184kg/m
3、面密度は0.37kg/m
2の軽さであった。得られた断熱遮音材の厚さ、密度、面密度および垂直入射透過損失を評価した結果を表2に、周波数に対する垂直入射透過損失のグラフを
図4に示した。
【0091】
[実施例5]
110mlのねじ口瓶にレオクリスタの水分散液(固形分2重量%)13g、蒸留水35g、エチレングリコールモノブチルエーテル2.5gを加えスターラーでレオクリスタが均一に分散するまで撹拌した後、シリカエアロゲル(MT1100)0.86gを加え、蓋を閉めて手で3分間シェーキングすることによりクリーム状の分散液を得た。得られた分散液に蒸留水を13g加えてスターラーで撹拌して含浸用分散液を得た。ステンレス製トレイに厚さ10mm、6cm×6cmのマイクロファイバー不織布を置き、分散液を浸み込ませた後、120℃の乾燥機で3時間乾燥して断熱遮音材を得た。乾燥後の断熱遮音材の厚さは1.5mmであった。密度は166kg/m
3、面密度は0.25kg/m
2の軽さであった。得られた断熱遮音材の厚さ、密度、面密度および垂直入射透過損失を評価した結果を表2に、周波数に対する垂直入射透過損失のグラフを
図4に示した。
【0092】
[実施例6]
110mlのねじ口瓶にレオクリスタの水分散液(固形分2重量%)13g、蒸留水35g、エチレングリコールモノブチルエーテル2.5gを加えスターラーでレオクリスタが均一に分散するまで撹拌した後、シリカエアロゲル(MT1100)0.86gを加え、蓋を閉めて手で3分間シェーキングすることによりクリーム状の分散液を得た。得られた分散液に蒸留水を13g加えてスターラーで撹拌して含浸用分散液を得た。ステンレス製トレイに厚さ3mm、6cm×6cmのメラミンフォームを置き、分散液を浸み込ませた後、120℃の乾燥機で3時間乾燥して断熱遮音材を得た。乾燥後の断熱遮音材の厚さは2.3mmであった。密度は123kg/m
3、面密度は0.28kg/m
2の軽さであった。得られた断熱遮音材の厚さ、密度、面密度および垂直入射透過損失を評価した結果を表2に、周波数に対する垂直入射透過損失のグラフを
図4に示した。
【0093】
[比較例1]
実施例1で用いた厚さ1cmの長繊維グラスウールの厚さ、密度、面密度および垂直入射透過損失を評価した結果を表1に、周波数に対する垂直入射透過損失のグラフを
図1に示した。
【0094】
[比較例2]
厚さ5mmの板ガラス(FL5)の厚さ、密度、面密度および垂直入射透過損失を評価した結果を表1に、周波数に対する垂直入射透過損失のグラフを
図2に示した。
【0095】
〔均一材料の遮音性〕
一般に遮音性つまり透過損失は質量則に従い、材料の質量(面密度)が大きいほど遮音性が大きくなるとされており、質量則によれば無限に広がった板に平面波が垂直に入射したと仮定したときの透過損失は次式で与えられる。
TL0=20log10(f×m)-42.5
ここで、TL0は透過損失(dB)、fは周波数(Hz)、mは面密度(kg/m2)である。
【0096】
[計算例1]
面密度が実施例と同じ1.1kg/m
2の均一材料の遮音性を前記式に基づいて計算した結果を表1に、周波数に対する垂直入射透過損失のグラフを
図2に示した。
【0097】
[計算例2]
面密度が比較例2の板ガラスと同じ12.5kg/m
2の均一材料の遮音性を前記式に基づいて計算した結果を表1に、周波数に対する垂直入射透過損失のグラフを
図2に示した。
【0098】
実施例1及び実施例2にて得られた断熱遮音材、比較例および計算例の厚さ、密度、面密度および垂直入射透過損失を評価した結果を表1に示す。
【表1】
表1の結果から明らかなように、実施例1にてグラスウールに含侵することで得られたシリカエアロゲル粒子/有機ナノファイバー固体複合体を含有する断熱遮音材は、面密度が1.1kg/m
2と小さく、軽量でも200Hz~2000Hzの透過損失が大きく、遮音性に優れている。
図1に実施例1の断熱遮音材と比較例1の周波数に対する垂直入射透過損失を示す。実施例1と同様の軽さである比較例1のグラスウールでは遮音性がほとんどない。
図2に実施例1の断熱遮音材と比較例2および計算例1、計算例2の周波数に対する垂直入射透過損失を示す。実施例1の面密度で質量則により計算した計算例1の200Hz~2000Hzの透過損失は、実施例1に比べて相当低い。また、比較例2の板ガラスや計算例2は、実施例1と同等の遮音性を示すが、実施例1と同等の遮音性を得るためには面密度が12.5kg/m
2といった重い材料が必要であることがわかる。このように本発明の断熱遮音材は、質量則に従わず、これまでの常識を覆す新規な材料である。
図3に実施例1、実施例2の断熱遮音材の周波数に対する垂直入射透過損失を示す。実施例2では実施例1に比べて多くの固体複合体でグラスウールの空気を置き換えることで厚さが薄くても同等の遮蔽性を得ることができ、面密度が0.74kg/m
2に小さくすることができている。
【0099】
実施例3~6にて得られた断熱遮音材の厚さ、密度、面密度および垂直入射透過損失を評価した結果を表2及び
図4に示す。
【表2】
表2及び
図4に示すように、グラスウール又はロックウール以外の不織布あるいは連続気泡発泡体を用いた場合の本発明の断熱遮音材は、低音域および高音域の遮音性に優れ中音域の音を透過する周波数選択性を有する遮音性能を示し、含浸させる不織布あるいは連続気泡発泡体の種類により透過する中音域の周波数帯域を変えることができる。
本発明の断熱遮音材は、従来の軽量な防音材(吸音材、遮音材)では実現できない250Hz以下の耳を圧迫するような不快な低周波音を遮断することができる。低周波音は自動車エンジンのこもり音だけでなく、鉄道車両、船舶、航空機やヘリコプターなどの輸送機器、工場の送風機、プレス機、真空ポンプなど、店舗・公共施設の空調室外機、ボイラーなどからも発生するので特に軽量であることが求められる幅広い分野への利用が期待できる。200Hz~1000Hzの遮音ができるので「ゴー」という低い音域のロードノイズや「シャー」という1000Hz辺りのパターンノイズやエンジン透過音を有効に遮音することができる。さらに軽量であることは自働車など輸送機の軽量化だけでなく、住宅などの建築物の施工に対してのメリットも大きい。また、断熱性も兼ね備えているので住宅や自動車などの居住空間の快適性についても効果を発揮する。