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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041338
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】リンク機構を備えた椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 9/02 20060101AFI20220304BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20220304BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20220304BHJP
   A47C 3/20 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A47C9/02
A47C7/02 Z
A47C7/62 B
A47C3/20
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146475
(22)【出願日】2020-09-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】301041508
【氏名又は名称】株式会社オージーエー
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100213540
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵庭
(72)【発明者】
【氏名】大賀 隆之
【テーマコード(参考)】
3B084
3B091
3B095
【Fターム(参考)】
3B084JA00
3B091GA01
3B095CA01
3B095CA06
3B095CA07
(57)【要約】
【課題】 起立及び着座の動作を容易に行うことができると共に、正しい着座位置に確実に着座することが可能な、リンク機構を備えた椅子を提供する。また、本発明は、使用者の着座状態の長時間化を防ぐことができ、ひいては使用者の健康維持を図ることを目的とする。
【解決手段】 そのために、本発明のリンク機構を備えた椅子は、使用者の正面方向と直交する方向に沿って、左右に横断する中央線上方に向かって突出するように座板の中央を付勢することにより、側面視が所定の角度で山形状となる位置と平面状となる位置との間の適宜の位置で前記座板を固定可能とし、当該リンク機構を底板上に配置し、当該底板に天板の高さが可変な昇降式机を配置した。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座板を側面視山形状と平板状とに変形させるためのリンク機構を備えた椅子であって、
前記リンク機構は、
最上段に第一上部リンク部材と第二上部リンク部材を備えた上部リンク部が配置され、
前記第一上部リンク部材と前記第二上部リンク部材の互いに隣接する端部側を付勢部材によって上方に向かって突出するように付勢することにより、前記上部リンク部材の側面視が山形状となる位置と、前記付勢部材の付勢力に逆らって荷重を加えることにより前記リンク部材の側面視が水平になる位置との間で上下する第一リンクユニット及び第二リンクユニットを備え、
前記第一リンクユニットと前記第二リンクユニットの間には伸縮可能なシャフトを備えた支持部材が立設され、前記シャフトの先端は前記第一上部リンク部材及び前記第二上部リンク部材の隣接する端部側の上下移動を案内するように構成され、
前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットにおけるそれぞれの前記第一上部リンク部材には第一座面が配置され、前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットにおけるそれぞれの前記第二上部リンク部材には第二座面が配置され、
前記リンク機構は、底板上に配置され、
前記底板には天板の高さが可変な昇降式机が配置されていることを特徴とするリンク機構を備えた椅子。
【請求項2】
座板を側面視山形状と平板状とに変形させるためのリンク機構を備えた椅子であって、
前記リンク機構は、一端が第一上部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第一中部リンク軸に回動可能に連結された第一上部リンク部材と、一端が第二上部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第二中部リンク軸に回動可能に連結された第二上部リンク部材を備えた上部リンク部と、
一端が前記第一中部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第三中部リンク軸に回動可能に連結された第一中部リンク部材と、一端が前記第二中部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第四中部リンク軸に回動可能に連結された第二中部リンク部材を備えた上側中部リンク部と、
一端が、前記第三中部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第一下部リンク軸に回動可能に連結された第三中部リンク部材と、一端が前記第四中部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第二下部リンク軸に回動可能に連結された第四中部リンク部材を備えた下側中部リンク部と、
一端が、前記第一下部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第三下部リンク軸に回動可能に連結された第一下部リンク部材と、一端が前記第二下部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第四下部リンク軸に回動可能に連結された第二下部リンク部材を備えた下部リンク部と、
を有して構成される第一リンクユニット及び第二リンクユニットを備え、
前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットは、前記第一及び第二上部リンク軸と、前記第一~第四中部リンク軸と、前記第一~第四下部リンク軸とが互いに共用されるように互いに対向して配置され、
前記第三中部リンク軸と前記第三下部リンク軸との間又は前記第四中部リンク軸と前記第四下部リンク軸との間のいずれか一方又は両方に前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットを上方に付勢する付勢部材が架設され、
前記第一リンクユニットと前記第二リンクユニットの間には伸縮可能なシャフトを備えた支持部材が立設され、前記シャフトの先端は前記第一上部リンク軸及び前記第二上部リンク軸を保持するように配置されると共に、前記第三下部リンク軸及び前記第四下部リンク軸は前記支持部材に沿って上下移動可能に構成され、
前記リンク機構は、底板上に配置され、
前記底板には天板の高さが可変な昇降式机が配置されている
ことを特徴とするリンク機構を備えた椅子。
【請求項3】
請求項2に記載のリンク機構を備えた椅子において、
前記第一中部リンク部材と前記第三中部リンク部材及び/又は前記第二中部リンク部材と前記第四中部リンク部材は一体に形成されていることを特徴とするリンク機構を備えた椅子。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のリンク機構を備えた椅子において、
前記第一中部リンク部材と前記第三中部リンク部材及び/又は前記第二中部リンク部材と前記第四中部リンク部材との間には略三角形の補強板が配置されていることを特徴とするリンク機構を備えた椅子。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載のリンク機構を備えた椅子であって、
前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットにおけるそれぞれの前記第一上部リンク部材には第一座面が配置され、前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットにおけるそれぞれの前記第二上部リンク部材には第二座面が配置され、前記第一座面と前記第二座面によって使用者が座るための座板が形成され、前記付勢部材により前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットが上方に向かって付勢されることにより前記座板の中央が上方に向かって突出して当該座板の側面視が山形状となる位置と、前記付勢部材の付勢力に逆らって荷重を加えることにより前記座板の側面視が水平になる位置との間で上下することを特徴とするリンク機構を備えた椅子。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載のリンク機構を備えた椅子において、
前記リンク機構には、前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットの前記第三中部リンク軸と前記第四中部リンク軸を一体に保持する保持部材が設けられている、
ことを特徴とするリンク機構を備えた椅子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のリンク機構を備えた椅子において、
さらに、前記座板の形状及び高さを所定の状態で固定する座板形状調整機構を備えていることを特徴とするリンク機構を備えた椅子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のリンク機構を備えた椅子において、
前記昇降式机は、前記天板の姿勢を調整するための姿勢調整機構をさらに備えている
ことを特徴とするリンク機構を備えた椅子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のリンク機構を備えた椅子において、
前記昇降式机は、前記リンク機構との間の間隔を調整するための間隔調整機構をさらに備えている
ことを特徴とするリンク機構を備えた椅子。
【請求項10】
請求項9に記載のリンク機構を備えた椅子において、
前記間隔調整機構は、
前記底板の前部から水平方向に前後移動可能に配置されたアームと、
前記アームを所定の位置に位置決めするためのストッパと、
を備えていることを特徴とするリンク機構を備えた椅子。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のリンク機構を備えた椅子において、
前記底板には移動を制御するための制御手段を備えた移動機構が設けられている
ことを特徴とするリンク機構を備えた椅子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンク機構を備えた椅子に関し、さらに詳しくは、座面の位置や角度が可変調整とされ、さまざまな姿勢で使用することが可能なリンク機構を備えた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、年齢を問わず、椅子への座り過ぎが身体に悪影響を与えることが提言され、論文等でも発表されている。椅子へ座る場合には、膝と腰をほぼ直角に曲げた姿勢となるため、体重の大半を腰や脊柱に掛けるという座り方しか出来ず、椅子への座り過ぎによる身体への悪影響は、この姿勢のままで維持されることによるものである。一方、家庭、学校、オフィスなどで使用されている椅子は、種々のものが提供されており、例えば、高さ調整機能などの機能が搭載された椅子(特許文献1等を参照)や、起立支援機能が搭載された椅子(特許文献2等を参照)なども提案されている。例えば、特許文献1に開示された椅子は、ロッキング機構や背座の高さ調節機構等の作動機構を備えたものであり、特許文献2に開示された起立着座支援椅子は、使用者が起立するときには、マイクに向かって起立するときの音声を発すると、音声データを解析して電動アクチュエータによって座面部の後部が上昇し、同時に背もたれ部も上方向に上昇する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-105293号公報
【特許文献2】特開2014-140435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2を含め、これまで提供されている従来の椅子は、膝と腰をほぼ直角に曲げて体重の大半を腰や脊柱に掛けるという座り方しか出来ないものであり、椅子への座り過ぎによる身体への悪影響を防ぐことはできないものであった。そのため、椅子への座り過ぎによる身体への悪影響の原因とされる「座り方」を改めるしかない。理想的にはデスクワーク中であっても起立や着座の動作を頻繁に行って着座姿勢の長時間化を避けることが望ましい。また、従来の椅子は、座板の前後方向における適宜の位置で着座することができてしまうため、必ずしも正しい着座位置に正しい着座姿勢で着座できるとは限らないものであった。
【0005】
そこで、本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、側面視ひし形形状のリンク機構を備え、着座する座板の側面視が山形状となる状態と座板の側面視が平面状となる状態との間の適宜の位置で自在に変えることができるリンク機構を備えた椅子及びそのリンク機構を提供することを目的とする。
また、本発明は、座面の角度や高さを自在に瞬時にセットすることができ、例えば、普通に座ることはもちろんのこと、中腰の姿勢で着座する、座面にもたれかかるようにして腰掛ける、立ち上がった状態で座面にもたれ掛かる、などさまざまな姿勢で使用することが可能なリンク機構を備えた椅子及びそのリンク機構を提供することを目的とする。
また、本発明は、使用者の姿勢に応じて最適なポジションで机を使用することが可能なリンク機構を備えた椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、座板を側面視山形状と平板状とに変形させるためのリンク機構を備えた椅子であって、前記リンク機構は、最上段に第一上部リンク部材と第二上部リンク部材を備えた上部リンク部が配置され、前記第一上部リンク部材と前記第二上部リンク部材の互いに隣接する端部側を付勢部材によって上方に向かって突出するように付勢することにより、前記上部リンク部材の側面視が山形状となる位置と、前記付勢部材の付勢力に逆らって荷重を加えることにより前記リンク部材の側面視が水平になる位置との間で上下する第一リンクユニット及び第二リンクユニットを備え、前記第一リンクユニットと前記第二リンクユニットの間には伸縮可能なシャフトを備えた支持部材が立設され、前記シャフトの先端は前記第一上部リンク部材及び前記第二上部リンク部材の隣接する端部側の上下移動を案内するように構成され、前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットにおけるそれぞれの前記第一上部リンク部材には第一座面が配置され、前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットにおけるそれぞれの前記第二上部リンク部材には第二座面が配置され、前記リンク機構は、底板上に配置され、前記底板には天板の高さが可変な昇降式机が配置されていることを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するために請求項2に記載の発明は、座板を側面視山形状と平板状とに変形させるためのリンク機構を備えた椅子であって、前記リンク機構は、一端が第一上部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第一中部リンク軸に回動可能に連結された第一上部リンク部材と、一端が第二上部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第二中部リンク軸に回動可能に連結された第二上部リンク部材を備えた上部リンク部と、一端が前記第一中部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第三中部リンク軸に回動可能に連結された第一中部リンク部材と、一端が前記第二中部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第四中部リンク軸に回動可能に連結された第二中部リンク部材を備えた上側中部リンク部と、一端が、前記第三中部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第一下部リンク軸に回動可能に連結された第三中部リンク部材と、一端が前記第四中部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第二下部リンク軸に回動可能に連結された第四中部リンク部材を備えた下側中部リンク部と、一端が、前記第一下部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第三下部リンク軸に回動可能に連結された第一下部リンク部材と、一端が前記第二下部リンク軸に回動可能に連結されると共に、他端が第四下部リンク軸に回動可能に連結された第二下部リンク部材を備えた下部リンク部と、を有して構成される第一リンクユニット及び第二リンクユニットを備え、前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットは、前記第一及び第二上部リンク軸と、前記第一~第四中部リンク軸と、前記第一~第四下部リンク軸とが互いに共用されるように互いに対向して配置され、前記第三中部リンク軸と前記第三下部リンク軸との間又は前記第四中部リンク軸と前記第四下部リンク軸との間のいずれか一方又は両方に前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットを上方に付勢する付勢部材が架設され、前記第一リンクユニットと前記第二リンクユニットの間には伸縮可能なシャフトを備えた支持部材が立設され、前記シャフトの先端は前記第一上部リンク軸及び前記第二上部リンク軸を保持するように配置されると共に、前記第三下部リンク軸及び前記第四下部リンク軸は前記支持部材に沿って上下移動可能に構成され、前記リンク機構は、底板上に配置され、前記底板には天板の高さが可変な昇降式机が配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するために請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のリンク機構を備えた椅子において、前記第一中部リンク部材と前記第三中部リンク部材及び/又は前記第二中部リンク部材と前記第四中部リンク部材は一体に形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のリンク機構を備えた椅子において、前記第一中部リンク部材と前記第三中部リンク部材及び/又は前記第二中部リンク部材と前記第四中部リンク部材との間には略三角形の補強板が配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれか1項に記載のリンク機構を備えた椅子であって、前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットにおけるそれぞれの前記第一上部リンク部材には第一座面が配置され、前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットにおけるそれぞれの前記第二上部リンク部材には第二座面が配置され、前記第一座面と前記第二座面によって使用者が座るための座板が形成され、前記付勢部材により前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットが上方に向かって付勢されることにより前記座板の中央が上方に向かって突出して当該座板の側面視が山形状となる位置と、前記付勢部材の付勢力に逆らって荷重を加えることにより前記座板の側面視が水平になる位置との間で上下することを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために請求項6に記載の発明は、請求項2から5のいずれか1項に記載のリンク機構を備えた椅子において、前記リンク機構には、前記第一リンクユニット及び前記第二リンクユニットの前記第三中部リンク軸と前記第四中部リンク軸を一体に保持する保持部材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載のリンク機構を備えた椅子において、さらに、前記座板の形状及び高さを所定の状態で固定する座板形状調整機構を備えていることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載のリンク機構を備えた椅子において、前記昇降式机は、前記天板の姿勢を調整するための姿勢調整機構をさらに備えていることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載のリンク機構を備えた椅子において、前記昇降式机は、前記リンク機構との間の間隔を調整するための間隔調整機構をさらに備えていることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のリンク機構を備えた椅子において、前記間隔調整機構は、前記底板の前部から水平方向に前後移動可能に配置されたアームと、前記アームを所定の位置に位置決めするためのストッパと、を備えていることを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために請求項11に記載の発明は、請求項1から10のいずれか1項に記載のリンク機構を備えた椅子において、前記底板には移動を制御するための制御手段を備えた移動機構が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るリンク機構を備えた椅子によれば、着座する座板の側面視が山形状となる状態と座板の側面視が平面状となる状態との間の適宜の位置で自在に変えることを可能としたので、座面の角度を変えることで着座スタイルを適宜に変えることができる。すなわち、膝と腰をほぼ直角に曲げた姿勢であって、体重の大半を腰や脊柱に掛けることになる通常の着座姿勢から着座する座板の形状を適宜に変更することで、中腰の姿勢で着座する、座面にもたれかかるようにして腰掛ける、立ち上がった状態で座面にもたれ掛かる、などさまざまな姿勢による使用へ瞬時に変更することができるので、椅子への座り過ぎによる身体への悪影響、すなわち、腰や脊柱に掛かる荷重を大幅に軽減できるという効果がある。
【0018】
また、本発明に係るリンク機構を備えた椅子によれば、側面視が山形状とすることができるので前後方向の座板の幅がコンパクトとなり、座板の中央から使用者の足までの距離を縮めることができ、その分だけ着座するときの上半身のかがみ込み角度を小さくすることができる。よって、使用者は、通常の姿勢で着座する場合には上半身を大きくかがめずとも、正しい着座位置である座板の中央の頂部へ自己の臀部を軽く載せるだけで、起立姿勢から着座姿勢へとスムーズに移行することができ、足腰に無駄な力を入れる必要がない。また、使用者が着座の開始時に臀部が座板の頂部へ位置するようにすることで、使用者は起立姿勢から着座姿勢へ移行する過程において、変形する座板が使用者の太ももをサポートしつつ膝の後側を座板の先端で徐々に押して膝の屈曲を促すので、使用者の姿勢は最適な着座姿勢へと促され、着座後に座り直す必要もない。
【0019】
また、本発明に係るリンク機構を備えた椅子によれば、使用者が着座姿勢から起立姿勢へ移行する場合に、座板の先端が使用者の後方へ徐々に後退するので、着座時に使用者の足が座板の下方に回り込んでいたとしても、起立の際に座板の先端が膝の後ろに当たって邪魔するという事態は生じない。よって、使用者は、着座姿勢の状態から自己の膝を軽く伸ばすだけで、上半身を大きくかがめずとも起立姿勢へ移行することができ、足腰に無駄な力を入れる必要がない。また、使用者が起立する過程で膝の後ろに座板の先端が当たらないので、膝の後ろで椅子を押してしまって使用者がバランスを崩すという可能性も低い。
【0020】
さらに、本発明に係るリンク機構を備えた椅子によれば、天板の高さが可変な昇降式机を備えているので、使用者の姿勢に応じて最適なポジションで机を使用することが可能となり、使用者が様々な姿勢で自由に卓上作業(読書、ノートへのメモ、PC操作など)を行うことができるという効果がある。しかも、机を使用した作業をしながらであっても椅子への座り過ぎによって生じる身体への悪影響を大幅に軽減することができるという効果がある。このような当該昇降式机は、椅子のリンク機構を利用して使用者が起立及び着座を頻繁に繰り返す場合に特に有効である。
【0021】
また、本発明に係るリンク機構を備えた椅子によれば、昇降式机とリンク機構との間の間隔を調整するための間隔調整機構を備えているので、使用者の体型に合わせた調整が可能となるという効果がある。
【0022】
しかも、本発明に係るリンク機構を備えた椅子によれば、昇降式机とリンク機構とが底板上に配置されているので、使用者が起立又は着座する際や天板の高さを調整する際に、使用者が足を底板上に載せて自分の体重を底板にかけることができるので、椅子の姿勢及び昇降式机の姿勢が不安定になるのを防ぐことができるという効果がある。
【0023】
さらに、本発明に係るリンク機構を備えた椅子によれば、固定手段を備えた移動機構を備えているので所定の場所への移動及び設置を容易に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は座板が山形状となった状態の本発明に係るリンク機構を備えた椅子の一実施形態を示す側面図である。
図2図2は座板が水平となった状態の本発明に係るリンク機構を備えた椅子の一実施形態を示す側面図である。
図3図3図1,2に示す椅子の概略平面図である。
図4図4はリンク機構の一実施形態の正面図である。
図5図5はリンク機構及びその周辺を示す斜視図である。
図6図6図1の部分拡大図である。
図7図7(A)~(F)は座板の動きを説明する説明図である。
図8図8は座板形状調整機構を説明する説明図である。
図9図9(A)は底板及びその周辺の構造を説明する平面図、図9(B)は図9(A)のX-X線における断面図である。
図10図10はストッパの動きを説明する説明図であり、図10(A)はペダルを踏みこんでいない状態の説明図、図10(B)はペダルを踏み込んだ状態の説明図である。
図11図11は椅子の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るリンク機構を備えた椅子及びリンク機構について、好ましい幾つかの実施形態の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0026】
<椅子の概略構成>
図1は座板が山形状となった状態の本発明に係るリンク機構を備えた椅子の一実施形態を示す側面図、図2は座板が水平となった状態の本発明に係るリンク機構を備えた椅子の一実施形態を示す側面図、図3図1,2に示す椅子の概略平面図、図4はリンク機構の一実施形態の正面図である。
【0027】
図1図4に示すとおり、本実施形態の椅子1は、概略として、座板11を側面視山形状(図1に示す状態)と平板状(図2に示す状態)との間で変形させるための金属製(例えばステンレス製)のリンク機構12を備え、リンク機構12の第一上部リンク部材1U(詳細は後述)には背もたれ20が取り付けられ、第二上部リンク部材2U(詳細は後述)にはハンドル40が取り付けられている。また、リンク機構12の支持部材13(詳細は後述)は底板70上に配置されており、この底板20には天板100TBの高さが可変な昇降式机100が配置されている。尚、本実施形態の座板11は、後述する図7に示すとおり、その形状が自在に変化するものであり、例えば、座板11は一対の座面11-1,11-2のそれぞれを一体に形成したクッション性のあるウレタン製マットによって構成されている。そして、このウレタン製マットの全体を柔軟性のある塩化ビニル製カバーで覆うことによって座板11が構成される。また、背もたれ20は、着座すべき方向を使用者へ示す目印としても機能する。この背もたれ20には使用者の左右方向にかけて緩やかなカーブ(アール)が付けられていてもよい。
【0028】
<リンク機構の概略構成>
座板11を山形状と平板状(水平状)に変形させるリンク機構12は、最上段に第一上部リンク部材1Uと第二上部リンク部材2Uを備えた上部リンク部ULが配置され、第一上部リンク部材1Uと前記第二上部リンク部材2Uの互いに隣接する端部側を付勢部材50,50によって上方に向かって突出するように付勢することにより、上部リンク部材1U,2Uの側面視が山形状となる位置(図1参照)と、付勢部材50,50の付勢力に逆らって荷重を加えることによりリンク部材1U,2Uの側面視が平板状(水平状)となる位置(図2参照)との間で上下する第一リンクユニット12A及び第二リンクユニット12Bを備える(図4参照)。
【0029】
そして、第一リンクユニット12Aと第二リンクユニット12Bの間には、伸縮可能なシャフト131を備えた支持部材13が立設され、シャフト131の先端は第一上部リンク部材1U及び第二上部リンク部材2Uの隣接する端部側の上下移動を案内するように構成されている。
【0030】
<リンク機構の具体的構成>
さらに、リンク機構12について詳述する。本実施形態の椅子1は、前述したとおり、座板11を側面視山形状となる位置(図1参照)と平板状(水平状)となる位置(図2参照)との間で変形させるためのリンク機構12を備え、リンク機構12は、互いに同じ構成の第一リンクユニット12A及び第二リンクユニット12Bを備えている(図5参照)。そして、第一リンクユニット12A及び第二リンクユニット12Bの各々は、上部リンク部UL、上側中部リンク部UML、下側中部リンク部LML、下部リンク部LLを備える。
【0031】
上部リンク部ULは、一端が第一上部リンク軸1uに回動可能に連結されると共に、他端が第一中部リンク軸1mに回動可能に連結された第一上部リンク部材1Uと、一端が第二上部リンク軸2uに回動可能に連結されると共に、他端が第二中部リンク軸2mに回動可能に連結された第二上部リンク部材2Uを備える。
【0032】
上側中部リンク部UMLは、一端が第一中部リンク軸1mに回動可能に連結されると共に、他端が第三中部リンク軸3mに回動可能に連結された第一中部リンク部材1Mと、一端が第二中部リンク軸2mに回動可能に連結されると共に、他端が第四中部リンク軸4mに回動可能に連結された第二中部リンク部材2Mを備える。
【0033】
下側中部リンク部LMLは、一端が、第三中部リンク軸3mに回動可能に連結されると共に、他端が第一下部リンク軸1nに回動可能に連結された第三中部リンク部材3Mと、一端が第四中部リンク軸4mに回動可能に連結されると共に、他端が第二下部リンク軸2nに回動可能に連結された第四中部リンク部材4Mを備える。
【0034】
下部リンク部LLは、一端が、第一下部リンク軸1nに回動可能に連結されると共に、他端が第三下部リンク軸3nに回動可能に連結された第一下部リンク部材1Lと、一端が前記第二下部リンク軸2nに回動可能に連結されると共に、他端が第四下部リンク軸4nに回動可能に連結された第二下部リンク部材2Lを備える。
【0035】
<第一及び第二リンクユニットの関係>
第一リンクユニット12A及び第二リンクユニット12Bは、それぞれ第一上部リンク軸1u、第二上部リンク軸2u、第一中部リンク軸1m、第二中部リンク軸2m、第三中部リンク軸3m、第四中部リンク軸4m、第一下部リンク軸1n、第二下部リンク軸2n、第三下部リンク軸3n、第四下部リンク軸4nが互いに共用されるように互いに対向して配置されている(図4)。
【0036】
また、第三中部リンク軸3mと第三下部リンク軸3nとの間又は第四中部リンク軸4mと第四下部リンク軸4nとの間のいずれか一方又はその両方(図示は両方)には第一リンクユニット12A及び第二リンクユニット12Bを上方に伸長するように付勢する付勢部材50が架設されている。付勢部材は、例えば、コイルバネが利用できるがエアシリンダや油圧シリンダなどの他の部材も適宜に利用することができる。
【0037】
また、第一リンクユニット12Aと第二リンクユニット12Bの間には伸縮可能なシャフト131を備えた支持部材13が立設され、シャフト131の先端は第一上部リンク軸1u及び第二上部リンク軸2uを保持するように配置されると共に、第三下部リンク軸3n及び第四下部リンク軸4nは支持部材13に沿って上下移動可能に構成されている。また、第三中部リンク軸3m及び第四中部リンク軸4mは支持部材13の所定位置に保持されており、第一リンクユニット12A及び第二リンクユニット12Bが伸縮する状態においてその位置は変わらない。
【0038】
<ダブルタイプ>
図5は、リンク機構及びその周辺を示す斜視図である。
図5に示すとおり、本実施形態の椅子1には、2つのリンク機構12,12を一対として並列に連結するようにして配置されている。このように2つのリンク機構12,12を一対として並列配置することにより椅子1の安定性を高めることができる。尚、シャフト131が伸縮する際の衝撃を吸収するために、コイルバネなどの付勢部材を支持部材13の内部などに配置してもよい(図4符号51)。
【0039】
<リンク部材の接合部>
図6は、図1の部分拡大図である。
図6に示すとおり、本実施形態の椅子1に使用されるリンク機構12は、第一中部リンク部材1Mと第三中部リンク部材3M及び第二中部リンク部材2Mと第四中部リンク部材4Mはそれぞれ一体に形成されている。この場合、いずれか一方のみを一体に形成することもできる。なお、図6に示した例では、第一中部リンク部材1Mと第三中部リンク部材3Mが一体に形成され、かつ、第二中部リンク部材2Mと第四中部リンク部材4Mも一体に形成されており、これによって、部材点数や可動部の数(関節の数)を削減することができるので、椅子1の強度や耐久性を高めることができる。
【0040】
なお、図6に示されるとおり、本実施形態の椅子1に使用されるリンク機構12において、第一中部リンク部材1Mと第三中部リンク部材3Mとの間及び第二中部リンク部材2Mと第四中部リンク部材4Mとの間には、例えば、略三角形の図示しない補強板を配置することもできる。この補強板はいずれか一方のみの間に配置してもよい。
【0041】
<座板の構成>
図5に示すとおり、本実施形態の椅子1においては、第一リンクユニット12A及び第二リンクユニット12Bにおけるそれぞれの第一上部リンク部材1Uには第一座面11-1が配置され、第一リンクユニット12A及び第二リンクユニット12Bにおけるそれぞれの第二上部リンク部材2Uには第二座面11-2が配置されており、これらの第一座面11-1と第二座面11-2によって使用者が座るための座板11が形成される。尚、本実施形態では、座板11は、一対の第一座面11-1と第二座面11-2のそれぞれを一体に形成したクッション性のあるウレタン製マットによって構成されており、このウレタン製マットの全体を柔軟性のある塩化ビニル製カバーで覆うことによって構成されている。
【0042】
図7(A)~(F)は座板の動きを説明する説明図である。尚、図7に示した椅子1の外観は、本実施形態の椅子1の外観を簡略化したものであり、実際の外観とは必ずしも一致しない。
図7(A)に示すとおり、非使用時には、一対のリンク機構12,12を構成するそれぞれの第一リンクユニット12A及び第二リンクユニット12Bは、付勢部材50によってそれぞれ上方に向かって付勢されていることから座板11の中央が上方に向かって突出した状態となり、座板11の側面視が山形状となる。そして、付勢部材50の付勢力に逆らって下向きに荷重を加えることにより、第一リンクユニット12A及び第二リンクユニット12Bが、図7(A)~(F)に示すように、下方に下がりながら連続的に変形して座板11が平板状(水平状)となる。座板11が平板状(水平状)となった状態から座板11への下方への荷重を除けば第一リンクユニット12A及び第二リンクユニット12Bは付勢部材50によって再び上方に向かって突出した状態となる。
【0043】
<保持部材について>
一対のリンク機構12,12には、それぞれの第一リンクユニット12A及び第二リンクユニット12Bの第三中部リンク軸3mと第四中部リンク軸4mを一体に保持する保持部材P1が設けられている(図6参照)。この保持部材P1によって第三中部リンク軸3mと第四中部リンク軸4mは支持部材13に保持され、互いに拘束されるので、例えば座板11の変形中のがたつきが防止されて動きがスムーズになると共に椅子1としての安定性が増す。また、保持部材P1によって保持された部材同士は、一部の機構(例えば下記の座板形状調整機構60)を共用することが可能であり、効率的である。尚、この保持部材P1は、一対のリンク機構12,12の間に架設された梁部材63(図4)と共通の部材で構成することも可能である。
【0044】
<リンク部材の角度について>
さらに、図6に示されるとおり、本実施形態の椅子1においては第一中部リンク部材1Mと第三中部リンク部材3Mは一体に形成され、また、第二中部リンク部材2Mと第四中部リンク部材4Mは一体に形成されている。そして、第一中部リンク部材1Mと三中部リンク部材3Mの取り付け角度θ1(第二中部リンク部材2Mと第四中部リンク部材4Mの取り付け角度も同様)は、それぞれ90°とすることもできるが、90°より小さい角度、例えば70~80°に設定することが好ましい。本実施形態ではθ1は75°とされている。θ1を90°より小さい角度に設定した場合には、座板11が水平状態のときに第三中部リンク部材3Mと第一下部リンク部材1Lとのなす角度θ2(図2)が180°より小さな角度で折れ曲がる(第四中部リンク部材4Mと第二下部リンク部材2Lとのなす角度も同様)ので、座板11が水平状態(図7(F))から非水平状態(図7(E))に移行する際のリンク機構12の動きがスムーズ(リンク機構12のがたつきがない)となる。
【0045】
<座板形状調整機構>
図6に示すとおり、本実施形態の椅子1は、座板11の形状及び高さを所定の状態で固定する座板形状調整機構60を備えている。本実施形態の座板形状調整機構60は、例えば、図4及び図8に示すとおり、一対のリンク機構12,12のそれぞれの第一上部リンク軸1uの間に架設された梁部材62の下側へ立設された板状のブレーキプレート61と、一対のリンク機構12,12のそれぞれの第三中部リンク軸3mの間に架設された梁部材63に固定された軸を中心として回動可能な偏心カム60Aと、偏心カム60Aに取り付けられたレバー60Bと、ブレーキプレート61を挟んで偏心カム60Aの反対側に対向するようにして梁部材63に固定された固定部材60Cと、梁部材63及び一対のリンク機構12,12のそれぞれの第三下部リンク軸3nの間に架設された梁部材64を互いに近づく方向に引っ張る引張バネ60Dを備えている。尚、図4ではレバー60B等は省略している。また、一対のリンク機構12,12のそれぞれの第一中部リンク軸1mの間に架設された梁部材65にはブレーキプレート16を挿通するための所定の開口が設けられており、ブレーキプレート16の移動方向が上下方向から外れないようガイドする機能を有している。この構成において、偏心カム60Aは、レバー60Bの位置によってブレーキプレート61の所定の高さ位置の当接部Tで当接してブレーキプレート61の上下移動を阻止する位置と、ブレーキプレート61から離れてブレーキプレート61の上下移動を阻害しない位置との間で回動するようになっている。これにより、使用者がレバー60Bを手で把持して図8左側の水平状態から図8右側の傾斜状態へと押し込むと、偏心カム60Aのカム面と固定部材60Cとが両側からブレーキプレート61を一定の力で挟持し、拘束(クランプ)する。これによって、ブレーキプレート61の上下移動が制限されるので、座板11の高さ位置及び形状を瞬時に固定することができる。また、その状態から使用者がレバー60Bを水平状態(図8左側に示す図)に戻すと、偏心カム60Aのカム面が当接部Tから離れ、ブレーキプレート61は偏心カム60Aと固定部材60Cによる挟持から解放され、ブレーキプレート61の上下移動が可能となり、座板11の高さ位置及び形状の変更が可能となる。よって、使用者は、座板11の高さ位置及び形状を変更させつつ、所望のタイミングでレバー60Bを水平状態から下方へ向かって押し込むだけで座板11の高さ及び形状を所望の高さ及び形状に瞬時に固定することができる。
【0046】
上記実施形態では、リンク機構12を二組並列に配置したものを説明したが、リンク機構12の個数を一組(シングルタイプ)とすることもできる。この場合、椅子1の全体は1本の支持部材13で支持することとなる。シングルタイプの椅子1場合は、部品点数を抑えることができると共に、軽量化を図ることが可能となる。
【0047】
<昇降式机の高さ調整機構>
図1及び図2に示すとおり、本実施形態の椅子1は昇降式机100を備えており、この昇降式机100は、天板100TBと、天板100TBを支持する伸縮可能なシャフト100Sと、天板100TBの高さを調整するための例えばネジ式の高さ調整機構100SAとを備える。図1には、側面視山形状となった座板11(比較的座板11が高い状態)に合わせて天板100TBが高めに設定された様子が示されており、図2には側面視平板状となった座板11(比較的座板11が低い状態)に合わせて天板100TBも低めに設定された様子が示されている。
【0048】
<天板の姿勢調整機構>
天板100TBとシャフト100Sとの連結部には、天板100TBの姿勢を調整するための姿勢調整機構100TBAが設けられており、この姿勢調整機構100TBAによって天板100TBの仰角方向の姿勢が調整可能となっている。姿勢調整機構100TBAとしては、例えば図示されたようなネジ式の固定構造を採用することができるが、これに限定されるものではい。尚、図1は、天板100TBが使用者側を向くような姿勢に設定された状態を示しており、図2は、天板100TBが直上を向いた姿勢に設定された状態を示している。
【0049】
<間隔調整機構について>
また、図1及び図2に示すとおり、本実施形態の昇降式机100のシャフト100Sの下端側は、前述した一対のリンク機構12,12と昇降式机100との間隔を調整するための間隔調整機構202に連結されており、当該間隔調整機構202は底板70に設けられている。
【0050】
間隔調整機構202は、図9に示すとおり、底板70の前方の端面側から水平方向に前後移動可能に配置された左右一対のアーム202A,202Aと、左右一対のアーム202A,202Aを互いに拘束する梁部材202Bと、左右一対のアーム202A,202Aの移動方向を前後方向に制限するための案内部202Gと、一方のアーム202Aを所定の位置に位置決めするためのストッパ203とを備え、当該一方のアーム202Aには、その移動方向(長手方向)に沿って連続するようにして穿設された複数のストッパ孔202H,202H,202H,…が配置されている。
【0051】
<ストッパの構造>
図10(A),(B)に示すとおり、ストッパ203は、底板70に固定された支柱203PPと、支柱203PPに固定された回動軸203STと、回動軸203STを支点としてシーソー状に回動可能な操作ペダル203Pと、操作ペダル203Pの先端に設けられた突起部203PTと、操作ペダル203Pの基端側(図10(A)(B)における回動軸203STよりも左側)と底板70との間に介設されたバネ部材203SPとを備える。尚、操作ペダル203Pの先端部(突起部203PT)の外径は、アーム202Aに形成されたストッパ孔202H,202H,202H,…(図9参照)の各々の径よりも若干小さい程度に設定されている。操作ペダル203Pは使用者が足で踏み込むことで操作が行われる。
【0052】
<ストッパの動作>
使用者が自分の足で操作ペダル203Pを踏み込んでいない状態(図10(A))では、バネ部材203SPの弾性力によって操作ペダル203Pの基端側が上方に押し上げられた状態となっており、回動軸203STを回転中心として操作ペダル203Pの先端側(突起部203PT)はいずれかのストッパ孔202Hへ挿入された状態となっている。これにより、突起部203PTはストッパ孔202Hに挿通された状態となり、アーム202A,202Aの前後移動が阻止されて底板70へ固定されることになるので、リンク機構12(特に支持部材13)から昇降式机100までの間隔が固定される(ロック状態)。
【0053】
一方、使用者が自分の足で操作ペダル203Pを踏み込んだ状態(図10(B))では、バネ部材203SPの弾性力に抗して操作ペダル203Pの基端側が底板70側に向かって押し下げられるので、操作ペダル203Pの先端側(突起部203PT)はストッパ孔202Hから離間して抜き出され、突起部203PTとストッパ孔202Hとの掛止状態が解除される。これにより、アーム202A,202Aは前後方向への移動が可能となり、リンク機構12の支持部材13から昇降式机100までの間隔を適宜に変更することが可能となる(ロック解除)。
【0054】
このように、使用者が椅子1に着座した状態で操作ペダル203Pを足で踏み込んでストッパ203のロックを解除し、解除状態のままでシャフト100Sを把持して昇降式机100のアーム202A,202Aを底板70から繰り出したり戻したりすることにより、リンク機構12の支持部材13と昇降式机100との間の間隔を適宜に調整することが可能となる。そして、その間隔が適当な間隔になった時点で操作ペダル203Pから足を離すことにより、ストッパ203はロック状態となり、リンク機構12の支持部材13から昇降式机100までの間隔を固定することができる。
【0055】
<移動機構>
さらに、本実施形態の椅子1は、床面上を移動させるための移動機構204を備えている。移動機構204は、移動用のローラ204R,204R,204R,204Rと、少なくとも1つのローラ204Rの回転を制御するためのブレーキ用ハンドル204Hなどを備えている。椅子1が使用状態(図2のハンドル204Hを起立させた状態)にある場合は、ローラ204の回転面は床面から離れた(浮いた)状態に保持されており、底板70の底面の6か所に設けられたクッション材で形成されたボスが床面に密着した状態となっている(ロック状態)。これにより、椅子1の移動が確実に阻止されて安定して配置されると共に、クッション性を有するボスにより床面の傷付きを防止する。そして、使用者がハンドル204Hを足で踏み込んでハンドル204Hを横倒状態(図1の状態)とすると、ローラ204Rの回転面は床面に押し付けられるように当接し、底板70を上方に押し上げると共にローラ204Rが回転可能状態となる。これにより、椅子1の移動が可能となり所望の場所への移動が可能となる(ロック解除状態)。そして、再び使用者がハンドル204Hを踏み込むことでハンドル204Hは再び起立状態となり、ローラ204Rはロック状態となる。このハンドル204Hは、例えば、ハートカムを利用した無限循環移動するロック機構により1回踏み込むごとにロック状態とロック解除状態を繰り返すようになっている。
【0056】
<椅子1の動作>
図11は、本実施形態の椅子の使用状態を説明する説明図である。
本実施形態の椅子1においては、使用者2が着座した際における当該使用者2の正面方向Daと直交する方向(上方)Dbに沿って座板11が付勢されている。この付勢力は、座板11の中央を、使用者2からみて左右方向に横断する中央線LCを上方Dbに向かって突出させるように働く。しかも、本実施形態の椅子1は、側面視が所定の角度で山形状となる位置(図7(A))と、平面状となる位置(図7(F))との間の適宜の位置(例えば図7(A)~図7(F)の何れかの位置)で、座板11を固定することが容易にできる。
【0057】
<本実施形態の効果>
本実施形態の椅子1は、側面視が所定の角度で山形状となる位置(図7(A))と、平面状となる位置(図7(F))との間の適宜の位置(例えば図7(A)~図7(F)の何れかの位置)で、座板11を固定することが可能である。このため、本実施形態の椅子1の使用者2は、完全な起立姿勢(不図示)と完全な着座姿勢(図11右側)とのいずれか一方を選択できるだけでなく、起立姿勢と着座姿勢(図11右側)の中間の任意の姿勢を自由に選択することも可能である。すなわち、通常に着座した状態(図11の右側)から、使用者2がレバー60Bを手で把持して水平状態から傾斜状態へと押し込むことで瞬時に座板11の形状を適宜に変更することができる。そのため、膝と腰をほぼ直角に曲げた通常の着座姿勢から、中腰の姿勢で着座する、座面にもたれかかるようにして腰掛ける、立ち上がった状態で座面にもたれ掛かるなど、さまざまな姿勢へ瞬時に変更することができる。従って、椅子への座り過ぎによる身体への悪影響、すなわち、腰や脊柱に掛かる荷重を大幅に軽減できるという効果がある。
【0058】
近年は、着座姿勢が長くなるほど健康に害を及ぼすという研究結果も発表されているように、着座せずに起立姿勢を維持するか、或いは、着座したとしてもなるべく起立姿勢に近い姿勢を維持することが好ましいと考えられる。この点、本実施形態の椅子1は、図7(A)~図7(F)の何れの位置においても座板11を固定することができるので、起立姿勢に近い姿勢で軽く腰掛けることや、疲労度に応じて着座の深さを適宜に変更することが可能である。
【0059】
具体的に、使用者2は、デスクワークの開始時には、座板11の頂部の角度を急峻(例えば図7(A))に設定して椅子1に浅く腰掛ける。その後、使用者2が疲労を感じた場合には、座板11の頂部の角度を緩やか(例えば図7(D))に設定して腰掛ける深さを大きくする。その後、疲労が解消した場合は、座板11の頂部の角度を再び急峻(例えば図7(A))に切り替えてもよいし、疲労が解消しない場合は、座板11の頂部の角度を更に緩やか(例えば図7(F))に切り替えてもよい。
【0060】
また、使用者2が起立しているときには座板11の側面視が山形状となっており、前後方向Daの座板の幅が狭くコンパクトなので、座板11の中央から使用者2の足までの距離L0を短くすることができ、その分だけ着座するときの上半身のかがみ込み角度θを小さくすることができる。よって、使用者2は、上半身を大きくかがめずとも、正しい着座位置である座板11の中央の頂部へ自己の臀部を軽く載せるだけで、起立姿勢から着座姿勢へとスムーズに移行することができ、足腰に無駄な力を入れる必要がない。また、使用者2が着座の開始時(図11左側)に座板11の頂部へ臀部を位置させておけば、使用者2が起立姿勢から着座姿勢(図11右側)へ移行する過程において、変形する座板が使用者2の太ももをサポートしつつ膝の後側を座板の先端で徐々に押して膝の屈曲を促すので、使用者2の姿勢は最適な着座姿勢へと促され、着座後に座り直す必要もない。
【0061】
また、本実施形態の椅子1によれば、使用者2が着座姿勢(図11右側)から起立姿勢(図11左側)へ移行する過程において、座板11の先端が使用者2の後方へ徐々に後退するので、着座時に使用者2の足が座板11の下方に回り込んでいたとしても、起立の際に座板11の先端が膝の後ろに当たって邪魔するという事態は生じない。よって、使用者2は、着座姿勢(図11右側)の状態から自己の膝を軽く伸ばすだけで、上半身を大きくかがめずとも起立姿勢へ移行することができ、足腰に無駄な力を入れる必要がない。また、使用者2が起立する過程で膝の後ろに座板11の先端が当たらないので、膝の後ろで椅子を押してしまって使用者2がバランスを崩すという可能性も低いと考えられる。
【0062】
したがって、本実施形態の椅子1によれば、使用者2は着座した状態(図11側)から気軽に立ち上がることができるため、使用者2の着座状態の長時間化を防ぐことができ、ひいては使用者2の健康維持を図ることができるという効果がある。
【0063】
以上の結果、本実施形態の椅子1の使用者2は、なるべく浅く腰掛けたり、姿勢をこまめに変更したりする習慣(つまり、「座りすぎを避ける」という習慣)を身に着けることが可能である。このようにして座りすぎを避けていれば、例えば、飲み物などを取りにいくために室内を移動することが億劫でなくなるし、仕事への意欲、仕事の効率、子供の学力等の向上も期待できる。さらには、座りすぎが原因で発症する病気のリスクを軽減し、健康維持を図ることも可能と考えられる。
【0064】
<移動機構による効果>
また、本実施形態に係るリンク機構を備えた椅子1によれば、床面上を移動させるための移動機構204を備えており、移動機構204はローラ204Rと、ローラ204Rの回転を制御するための制御手段としてのハンドル204Hを備えているので、椅子1を容易に所望の場所に移動してその場所に配置固定することができるという効果がある。
【0065】
<昇降式机による効果>
さらに、本実施形態に係るリンク機構を備えた椅子1によれば、天板70の高さが可変な昇降式机100が配置されており、この机100は使用者2が取り得る着座姿勢や起立姿勢、またはその間の中腰姿勢など、様々な姿勢に適した高さに設定することができ、しかも天板の角度を調整することができるので、使用者2は様々な姿勢で自由に卓上作業(読書、ノートへのメモ、PC操作など)を行うことができるという効果がある。また、昇降式机100TBとリンク機構12との間の間隔を調整するための間隔調整機構202をさらに備えているので、使用者の体型に合わせた調整ができるという効果がある。
【0066】
しかも、本実施形態の椅子1によれば、昇降式机100とリンク機構12,12とが底板70上に配置されているので、使用者2が起立又は着座する際や天板100TBの高さを調整する際に、使用者2が足を底板70上に載せて自分の体重の少なくとも一部を底板70にかけることができるので、椅子1の姿勢及び昇降式机100の姿勢が不安定になるのを防ぐことができるという効果がある。
【0067】
また、本実施形態の椅子1によれば、昇降式机100とリンク機構100とが共通の底板70上に配置されているので、天板100TBの高さを調整する際には椅子1の自重により昇降式机100の姿勢を安定させることができ、座板11の形状を変形させる際には昇降式机100の自重によりリンク機構12,12の姿勢を安定させることができるという効果がある。
【符号の説明】
【0068】
11 座板
12A 第一リンクユニット
12B 第二リンクユニット
12 リンク機構
131 シャフト
13 支持部材
1L 第一下部リンク部材
1M 第一中部リンク部材
1U 第一上部リンク部材
1n 第一下部リンク軸
1m 第一中部リンク軸
1u 第一上部リンク軸
2L 第二下部リンク部材
2M 第二中部リンク部材
2U 第二上部リンク部材
2n 第二下部リンク軸
2m 第二中部リンク軸
2u 第二上部リンク軸
3M 第三中部リンク部材
3n 第三下部リンク軸
3m 第三中部リンク軸
20 背もたれ
40 ハンドル
4M 第四中部リンク部材
4n 第四下部リンク軸
4m 第四中部リンク軸
50 付勢部材
60 座板形状調整機構
60A 偏心カム
60B レバー
60C 固定部材
61 ブレーキプレート
62 梁部材
63 梁部材
64 梁部材
70 底板
202G 案内溝
100 昇降式机
100TB 天板
100S シャフト
100SA 高さ調整機構
100TBA 姿勢調整機構
202 間隔調整機構
202A アーム
202B 針部材
202G 案内部
202H ストッパ孔
203 ストッパ
203PP 支柱
203ST 回動軸
203P 操作ペダル
203PT 突起部
203SP バネ部材
204 移動機構
204H ブレーキ用ハンドル
204R ローラ
LC 中央線
LL 下部リンク部
LML 下側中部リンク部
P 補強板
P1 保持部材
T 当接部
UL 上部リンク部
UML 上側中部リンク部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11