(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041344
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】オゾン消毒システム及び消毒方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/015 20060101AFI20220304BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A61L9/015
A61L2/20 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146487
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】500375730
【氏名又は名称】株式会社シモダアメニティーサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100191204
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 春彦
(72)【発明者】
【氏名】下田 貴宗
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB07
4C058CC02
4C058DD07
4C058DD16
4C058EE26
4C058JJ14
4C058JJ28
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA10
4C180CA06
4C180DD01
4C180DD11
4C180EA17X
4C180HH05
4C180KK01
4C180KK02
4C180KK04
4C180LL03
4C180LL06
4C180LL20
(57)【要約】
【課題】建物内の所定の対象空間を強力かつ十分に消毒することができるオゾン消毒システムを提供する。
【解決手段】オゾンを生成するオゾン生成手段、及びオゾンを送気するオゾン送気手段を具備するオゾン装置10と、オゾン装置10及び建物内の複数の対象空間A~Eをそれぞれ接続する複数の配管20~24と、を備え、オゾン装置10が、複数の配管20~24のうちの所定の配管に高濃度オゾンを送気して、所定の配管に接続された所定の対象空間を高濃度オゾンで消毒するオゾン消毒システム1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内を消毒するオゾン消毒システムであって、
オゾンを生成するオゾン生成手段、及びオゾンを送気するオゾン送気手段を具備するオゾン装置と、
前記オゾン装置及び前記建物内の複数の対象空間をそれぞれ接続する複数の配管と、
を備え、
前記オゾン装置が、前記複数の配管のうちの所定の配管に高濃度オゾンを送気して、該所定の配管に接続された所定の対象空間を高濃度オゾンで消毒することを特徴とするオゾン消毒システム。
【請求項2】
前記オゾン装置は、前記複数の配管に低濃度オゾンを送気すると同時に、前記複数の配管のうちの所定の配管に高濃度オゾンを送気することを特徴とする請求項1記載のオゾン消毒システム。
【請求項3】
前記対象空間に、該対象空間のオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出器を備え、
前記オゾン装置は、前記オゾン濃度検出器が検出するオゾン濃度情報に基づき、前記対象空間へ送気するオゾンの量及び/又は濃度を調整するオゾン調整手段を具備していることを特徴とする請求項1又は2記載のオゾン消毒システム。
【請求項4】
前記対象空間に、該対象空間の人の有無を検知する人感センサを備え、
前記人感センサは、前記オゾン濃度検出器が所定値以上を示す場合に、アラームを発生するアラーム発生手段を具備していることを特徴とする請求項3記載のオゾン消毒システム。
【請求項5】
前記対象空間に、該対象空間の人の有無を検知する人感センサを備え、
前記オゾン装置は、所定の対象空間に高濃度オゾンを送気している際、前記人感センサが人の存在を検知した場合に、前記高濃度オゾンの送気を停止することを特徴とする請求項1~4のいずれか記載のオゾン消毒システム。
【請求項6】
前記対象空間に、該対象空間のオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出器を備え、
前記オゾン濃度検出器が、前記対象空間のオゾン濃度が平常オゾン濃度を超えたことを検知した場合に、該対象空間の扉を外から開かないように施錠する施錠装置を備えていることを特徴とする請求項1~5のいずれか記載のオゾン消毒システム。
【請求項7】
前記オゾン装置は、所定の対象空間に接続された配管を介して該所定の対象空間からオゾンを吸気するオゾン吸気手段を具備していることを特徴とする請求項1~6のいずれか記載のオゾン消毒システム。
【請求項8】
所定の対象空間に対するオゾンの送気と、該所定の対象空間からのオゾンの吸気が同じ配管で行われることを特徴とする請求項7記載のオゾン消毒システム。
【請求項9】
前記対象空間に、該対象空間の人の有無を検知する人感センサを備え、
前記オゾン装置は、所定の対象空間に高濃度オゾンを送気している際、前記人感センサが人の存在を検知した場合に、前記高濃度オゾンの送気を停止すると共に、所定の対象空間のオゾンを吸気することを特徴とする請求項7又は8記載のオゾン消毒システム。
【請求項10】
前記オゾン装置は、オゾン吸気手段により吸気した排気オゾンを浄化する浄化手段を具備していること特徴とする請求項7~9のいずれか記載のオゾン消毒システム。
【請求項11】
前記対象空間に、該対象空間の臭気を検出する臭気検出器を備え、
前記オゾン装置は、前記臭気検出器が検出する臭気情報に基づき、前記対象空間へ送気するオゾンの量及び/又は濃度を調整するオゾン調整手段を具備していることを特徴とする請求項1~10のいずれか記載のオゾン消毒システム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか記載のオゾン消毒システムを用いて建物内を消毒する消毒方法であって、
前記複数の配管に低濃度オゾンを送気し、複数の対象空間を、常時、平常オゾン濃度に保持すると共に、
消毒必要時には、前記複数の配管のうちの所定の配管に高濃度オゾンを送気し、所定の対象空間を、所定時間、消毒オゾン濃度に保持することを特徴とする消毒方法。
【請求項13】
前記平常オゾン濃度が0.1ppm以下であり、前記消毒オゾン濃度が1.0ppm以上であることを特徴とする請求項12記載の消毒方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内を消毒するオゾン消毒システム、及びかかるオゾン消毒システムを用いた消毒方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物内の部屋やフロアなどの対象空間の除菌やウィルス除去等の消毒を目的として、オゾンを用いたオゾン消毒システムが利用されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のオゾン消毒システムは、人に影響の少ない低濃度オゾンを建物内の全体に供給するものであり、菌やウィルス等により高汚染が発生した所定の対象空間を十分に消毒することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、建物内の所定の対象空間を強力かつ十分に消毒することができるオゾン消毒システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、建物内の所定の対象空間を強力に消毒するオゾン消毒システムを開発すべく鋭意研究を行った結果、オゾンを生成するオゾン生成手段、及びオゾンを送気するオゾン送気手段を具備するオゾン装置と、オゾン装置及び建物内の複数の対象空間をそれぞれ接続する複数の配管とを備えるシステムとすることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1] 建物内を消毒するオゾン消毒システムであって、
オゾンを生成するオゾン生成手段、及びオゾンを送気するオゾン送気手段を具備するオゾン装置と、
前記オゾン装置及び前記建物内の複数の対象空間をそれぞれ接続する複数の配管と、
を備え、
前記オゾン装置が、前記複数の配管のうちの所定の配管に高濃度オゾンを送気して、該所定の配管に接続された所定の対象空間を高濃度オゾンで消毒することを特徴とするオゾン消毒システム。
[2] 前記オゾン装置は、前記複数の配管に低濃度オゾンを送気すると同時に、前記複数の配管のうちの所定の配管に高濃度オゾンを送気することを特徴とする上記[1]記載のオゾン消毒システム。
【0008】
[3] 前記対象空間に、該対象空間のオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出器を備え、
前記オゾン装置は、前記オゾン濃度検出器が検出するオゾン濃度情報に基づき、前記対象空間へ送気するオゾンの量及び/又は濃度を調整するオゾン調整手段を具備していることを特徴とする上記[1]又は[2]記載のオゾン消毒システム。
[4] 前記対象空間に、該対象空間の人の有無を検知する人感センサを備え、
前記人感センサは、前記オゾン濃度検出器が所定値以上を示す場合に、アラームを発生するアラーム発生手段を具備していることを特徴とする上記[3]記載のオゾン消毒システム。
[5] 前記対象空間に、該対象空間の人の有無を検知する人感センサを備え、
前記オゾン装置は、所定の対象空間に高濃度オゾンを送気している際、前記人感センサが人の存在を検知した場合に、前記高濃度オゾンの送気を停止することを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか記載のオゾン消毒システム。
[6] 前記対象空間に、該対象空間のオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出器を備え、
前記オゾン濃度検出器が、前記対象空間のオゾン濃度が平常オゾン濃度を超えたことを検知した場合に、該対象空間の扉を外から開かないように施錠する施錠装置を備えていることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれか記載のオゾン消毒システム。
[7] 前記オゾン装置は、所定の対象空間に接続された配管を介して該所定の対象空間からオゾンを吸気するオゾン吸気手段を具備していることを特徴とする上記[1]~[6]のいずれか記載のオゾン消毒システム。
[8] 所定の対象空間に対するオゾンの送気と、該所定の対象空間からのオゾンの吸気が同じ配管で行われることを特徴とする上記[7]記載のオゾン消毒システム。
[9] 前記対象空間に、該対象空間の人の有無を検知する人感センサを備え、
前記オゾン装置は、所定の対象空間に高濃度オゾンを送気している際、前記人感センサが人の存在を検知した場合に、前記高濃度オゾンの送気を停止すると共に、所定の対象空間のオゾンを吸気することを特徴とする上記[7]又は[8]記載のオゾン消毒システム。
[10] 前記オゾン装置は、オゾン吸気手段により吸気した排気オゾンを浄化する浄化手段を具備していること特徴とする上記[7]~[9]のいずれか記載のオゾン消毒システム。
[11] 前記対象空間に、該対象空間の臭気を検出する臭気検出器を備え、
前記オゾン装置は、前記臭気検出器が検出する臭気情報に基づき、前記対象空間へ送気するオゾンの量及び/又は濃度を調整するオゾン調整手段を具備していることを特徴とする上記[1]~[10]のいずれか記載のオゾン消毒システム。
【0009】
[12] 上記[1]~[11]のいずれか記載のオゾン消毒システムを用いて建物内を消毒する消毒方法であって、
前記複数の配管に低濃度オゾンを送気し、複数の対象空間を、常時、平常オゾン濃度に保持すると共に、
消毒必要時には、前記複数の配管のうちの所定の配管に高濃度オゾンを送気し、所定の対象空間を、所定時間、消毒オゾン濃度に保持することを特徴とする消毒方法。
[13] 前記平常オゾン濃度が0.1ppm以下であり、前記消毒オゾン濃度が1.0ppm以上であることを特徴とする上記[12]記載の消毒方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオゾン消毒システムによれば、建物内の所定の対象空間を強力かつ十分に消毒することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るオゾン消毒システムの使用状態を説明する図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係るオゾン消毒システムの使用状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のオゾン消毒システムは、建物内を消毒するオゾン消毒システムであって、オゾンを生成するオゾン生成手段、及びオゾンを送気するオゾン送気手段を具備するオゾン装置と、オゾン装置及び建物内の複数の対象空間をそれぞれ接続する複数の配管と、を備え、オゾン装置が、複数の配管のうちの所定の配管に高濃度オゾンを送気して、所定の配管に接続された所定の対象空間を高濃度オゾンで消毒することを特徴とする。
【0013】
本発明のオゾン消毒システムにおいては、オゾン装置が、複数の対象空間にそれぞれ接続された配管のうちの特定の配管に高濃度オゾンを送気できることから、強力な消毒が必要な所定の対象空間のみを高濃度オゾンで強力に消毒することができる。すなわち、菌やウィルス等に汚染された低濃度オゾンで十分に消毒できない対象空間を十分に消毒することができる。
【0014】
本発明のオゾン消毒システムを適用する建物内の複数の対象空間としては、例えば、建物内の各部屋、建物内の各フロア等の各種空間を挙げることができる。すなわち、本発明における対象空間は、建物内の各フロア、建物内の各部屋など適宜設定することができる。例えば、各フロアに多数の部屋が存在する場合は、オゾン装置と各フロアをそれぞれ配管で接続して、フロア全体を1つの対象空間とすることもでき、オゾン装置と各フロアの各部屋をそれぞれ配管で接続して、フロアに存在する各部屋を1つの対象空間とすることもできる。
【0015】
本発明のオゾン消毒システムにおけるオゾンは、強い酸化力を有する気体であり、通常空気等で濃度を調整して用いる。本発明のオゾン消毒システムのオゾン装置が送気する高濃度オゾンは、対象空間を十分に消毒される濃度(消毒オゾン濃度)とできる程度に高い濃度のオゾンである。消毒オゾン濃度としては、例えば、1.0ppm以上であり、3.0ppm以上であることが好ましく、5.0ppm以上であることがより好ましく、6.0ppm以上であることがさらに好ましい。上限は、特に制限されないが、安全性等の点から、15.0ppmであることが好ましく、10.0ppmであることがより好ましく、8.0ppmであることがさらに好ましい。
【0016】
本発明のオゾン消毒システムは、上記のように、オゾン装置と、複数の配管とを備えている。また、オゾン濃度検出器、臭気検出器、人感センサ等を備えていることが好ましい。
【0017】
[オゾン装置]
オゾン装置は、オゾンを生成するオゾン生成手段、及びオゾンを送気するオゾン送気手段を具備しており、強力な消毒をしたい所定の対象空間に接続された所定の配管に、オゾン生成手段により生成した高濃度オゾンを、オゾン送気手段により送気する。
【0018】
オゾン生成手段としては、高濃度のオゾンを生成できる手段であれば特に制限されるものではなく、例えば、放電方式、電解方式、放射線照射方式、光化学反応方式等の方式を用いたオゾン生成手段を挙げることができ、放電方式を用いたオゾン生成手段が好ましい。放電方式としては、具体的に例えば、無声放電方式、コロナ放電方式等を挙げることができ、無声放電方式が好ましい。
【0019】
オゾン送気手段としては、オゾンを送気する手段であれば特に制限されるものではなく、ファン、ブロワ、コンプレッサ、エアポンプ等の従来公知の送気手段を採用することができる。
【0020】
オゾン装置の設置場所としては、特に制限されるものではなく、例えば、対象空間が存在する建物内、対象空間が存在する建物の屋上、対象空間が存在する建物の周囲の屋外等を挙げることができる。
【0021】
オゾン装置は、複数の配管のうちの所定の配管に高濃度オゾンを送気するものであり、高濃度オゾンを送気する所定の配管の数としては制限されるものではなく、1又は2以上の一部の配管であってもよいし、すべての配管であってもよい。
【0022】
また、オゾン装置は、高濃度オゾンを送気する所定の配管以外の配管にオゾンを送気できないものであってもよいが、所定の配管以外の配管に同時にオゾンを送気できるものが好ましい。すなわち、オゾン装置は、複数の配管に低濃度オゾンを送気すると同時に、複数の配管のうちの所定の配管に高濃度オゾンを送気できるものが好ましい。これにより、例えば、常時、複数の配管の全部に低濃度オゾンを送気し、消毒必要時には、他の配管には低濃度オゾンを送気した状態で、所定の配管のみに高濃度オゾンを送気することができ、建物内の特定の対象空間を効果的に消毒することができる。
【0023】
ここで、本発明のオゾン消毒システムのオゾン装置が送気する低濃度オゾンは、人が存在する場合でも安全な対象空間の濃度(平常オゾン濃度)となるような低い濃度のオゾンである。平常オゾン濃度としては、例えば、0.1ppm以下であり、0.08ppm以下であることが好ましく、0.06ppm以下であることより好ましい。下限は、殺菌効果が奏される範囲で特に制限されないが、0.01ppmであることが好ましく、0.02ppmであることがより好ましく、0.03ppmであることがさらに好ましい。
【0024】
オゾン装置は、所定の対象空間に接続された配管を介して所定の対象空間からオゾンを吸気するオゾン吸気手段を具備していることが好ましい。すなわち、オゾン装置は、発生したオゾンを対象空間へ配管を介して送気することができると共に、対象空間内のオゾンを配管を介して吸気することができることが好ましい。これにより、例えば、所定の対象空間の消毒が完了した場合に、所定の対象空間から高濃度オゾンを吸気し、対象空間外に排気して、対象空間内のオゾン濃度を迅速に低下させることができる。送気オゾン及び吸気オゾンを案内する配管は、同じ配管であってもよいし、別の配管であってもよい。なお、オゾンの送気及び吸気の切り換えは、例えば、オゾン装置に設けた電磁弁を用いて行うことができる。
【0025】
オゾン装置は、オゾン吸気手段により吸気した排気オゾンを浄化する浄化手段を具備していることが好ましい。浄化手段としては、排気オゾンを浄化(分解)できる浄化方法を用いた手段であれば特に制限されるものではなく、浄化方法としては、例えば、活性炭接触分解法、触媒法、熱分解法、薬液洗浄法等を挙げることができ、取扱いが容易かつ除去性能が安定していることから、活性炭接触分解法が好ましい。この浄化手段は、オゾン装置本体の内部に設けられてもよいが、別体として設けられていてもよい。
【0026】
対象空間に、対象空間のオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出器を備える場合に、オゾン装置は、オゾン濃度検出器が検出するオゾン濃度情報に基づき、対象空間へ送気するオゾンの量及び/又は濃度を調整するオゾン調整手段を具備していることが好ましい。すなわち、オゾン装置は、経験則に基づいて、一定の濃度及び量で対象空間にオゾンを送気するものであってもよいが、対象空間において検出されたオゾン濃度に基づき、対象空間に送気するオゾンの量及び/又は濃度を調整することが好ましい。例えば、平常時、オゾン濃度検出器で検出されるオゾン濃度が、所定濃度(例えば0.03ppm)を下回った場合にオゾンを対象空間に送り込み、所定濃度(例えば0.06ppm)を上回った場合に、オゾンの送気を停止する態様を挙げることができる。また、消毒必要時、6.0ppmを下回った場合に、所定時間高濃度オゾンを送気する態様を挙げることができる。これにより、対象空間のオゾン濃度を適切な範囲で正確に維持することができる。また、消毒必要時には、消毒に必要な濃度を確実に維持することができる。
【0027】
オゾン調整手段のオゾン濃度調整方法としては、オゾン生成時にオゾン濃度を調整する方法であってもよいが、オゾン生成後にオゾン濃度を調整する方法が好ましい。オゾン生成後にオゾン濃度を調整する方法としては、具体的に、例えば、生成した高濃度オゾンに空気を混合させて濃度を調整する方法を挙げることができる。
【0028】
対象空間に、対象空間の人の有無を検知する人感センサを備えている場合であって、オゾン装置が所定の対象空間に高濃度オゾンを送気している際に人感センサが人の存在を検知した場合には、オゾン装置が、高濃度オゾンの送気を停止することが好ましい。また、オゾン装置がオゾン吸気手段を具備する場合は、所定の対象空間のオゾンを吸気することが好ましい。これにより、人が高濃度オゾンに暴露されることを抑制できる。
【0029】
また、対象空間の臭気を検出する臭気検出器を備える場合に、オゾン装置は、臭気検出器が検出する臭気情報に基づき、上記オゾン調整手段を用いて、対象空間へ送気するオゾンの量及び/又は濃度を調整することが好ましい。これにより、対象空間の臭気を正確に把握し、正確な消臭を行うことができる。
【0030】
[配管]
配管は、オゾン装置及び建物内の複数の対象空間をそれぞれ接続するように複数設けられている。すなわち、配管は、オゾン装置から対象空間に対してそれぞれ独立して接続されている。本発明のオゾン消毒システムは、オゾン装置から所定の配管を介して接続された所定の対象空間を、オゾン装置から送気される高濃度オゾンで消毒するものである。対象空間は、上記のように建物内の各フロアや建物内の各部屋など適宜設定されるものであり、例えば、対象空間が建物内の各フロアである場合、オゾン装置から各フロアに独立して配管が設けられる。なお、同一フロアに設けられた部屋に配管が枝分かれして接続されていてもよい。また、対象空間が建物内の各部屋である場合、オゾン装置から各部屋に独立して配管が設けられる。
【0031】
配管の材質としては、耐オゾン性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ガラス、テフロン(登録商標,PTFE)、チタン、酸化被膜処理アルミニウム、酸化被膜処理ステンレス等を挙げることができる。配管の対象空間への接続場所(吹出口)としては、特に制限されるものではないが、天井等の対象空間の上部が好ましい。これにより、空気よりも重く下部に滞留しやすいオゾンを対象空間全体に効率よく拡散させることができる。なお、各対象空間の吹出口に開閉弁を設けて、オゾン濃度検出器が検出するオゾン濃度情報及び/又は臭気検出器が検出する臭気情報に基づき、対象空間へのオゾン流入量を調節することもできる。
【0032】
[オゾン濃度検出器]
オゾン濃度検出器は、対象空間のオゾン濃度を検出できるものであればよく、市販のオゾンセンサを用いることができる。オゾン濃度検出器は、オゾン濃度情報の他に、気温情報、湿度情報等のその他の情報を検出するものであってもよい。対象空間におけるオゾン濃度検出器の設置場所としては、特に制限されるものではないが、床面から1.0~1.8m程度が好ましく、1.2~1.6m程度がより好ましい。これにより、人が立った状態における人の顔の高さのオゾン濃度を正確に計測することができる。
【0033】
[臭気検出器]
臭気検出器は、対象空間の臭気を検出できるものであればよく、市販の臭気センサを用いることができる。臭気検出器は、臭気情報の他に、気温情報、湿度情報等のその他の情報を検出するものであってもよい。また、臭気検出器は、上記オゾン濃度検出器と一体として構成されるものであってもよい。
【0034】
[人感センサ]
人感センサは、対象空間の人の有無を検知するものであればよく、例えば、赤外線などを用いて人の動きを検知するセンサ、マイクロフォンセンサなどで振動を感知するセンサ、画像認識センサ等を挙げることができる。
【0035】
人感センサは、オゾン濃度検出器が所定値以上を示す場合に、アラームを発生するアラーム発生手段を具備していることが好ましい。アラームを発生させる場所としては、対象空間内であってもよいし、対象空間の入口であってもよいし、オゾン装置の設置場所であってもよい。アラームの発生方法としては、例えば、警告音や通知音等の音による聴覚的方法、ランプ照明や、モニタ等に表示する文字による視覚的方法等の各種表示方法を採用することができる。
【0036】
[その他の装置]
本発明のオゾン消毒システムは、オゾン濃度検出器が、対象空間のオゾン濃度が平常オゾン濃度を超えたことを検知した場合に、対象空間の扉を外から開かないように施錠する施錠装置を備えていることが好ましい。これにより、消毒時等、対象空間のオゾン濃度が平常オゾン濃度を超えている際に、誤って入室することを防止できる。
【0037】
また、本発明のオゾン消毒システムは、高濃度オゾンを送気している所定の対象空間(例えば、部屋)の関係者がその部屋のある建物に入ったことを検知する建物入口検知手段(例えば、顔認証手段)を備え、かかる建物入口検知手段が関係者の建物への侵入を検知した場合に、高濃度オゾンの送気を停止すると共に、所定の対象空間のオゾンを吸気することが好ましい。また、人工知能(AI)を用いて、高濃度オゾンを送気(及び吸気)するタイミングを決定するシステムとすることもできる。
【0038】
続いて、上記説明したオゾン消毒システムを用いて建物内を消毒する消毒方法について説明する。
本発明の消毒方法は、上記オゾン消毒システムを用いて建物内を消毒する消毒方法であって、複数の配管に低濃度オゾンを送気し、複数の対象空間を、常時、平常オゾン濃度に保持すると共に、消毒必要時には、複数の配管のうちの所定の配管に高濃度オゾンを送気し、所定の対象空間を、所定時間、消毒オゾン濃度に保持することを特徴とする。
【0039】
平常オゾン濃度及び消毒オゾン濃度は、上述の通りである。消毒必要時に、消毒オゾン濃度を保持する時間としては、特に制限されるものではなく、例えば、10~300分であり、15~180分が好ましく、15~120分がより好ましい。具体的に、本発明の消毒方法においては、例えば、消毒オゾン濃度を6ppm、保持時間を60分に設定することができる。これにより、新型コロナウィルス(SARS‐CoV‐2)を1000分の1~10000分の1程度まで不活化できる。
【0040】
消毒必要時としては、例えば、新型コロナウィルス患者等が使用したことが判明して消毒が必要となった時の他、対象空間の使用後に念のために消毒をする時等を挙げることができる。具体的に、店舗等における毎日の使用後の夜間に消毒を行う態様を挙げることができる。
【0041】
以下、本発明を実施するための一実施形態について図面を参照しつつ説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0042】
ここで、
図1は、本発明の一実施形態に係るオゾン消毒システムの使用状態を説明する図である。
図2は、本発明の他の実施形態に係るオゾン消毒システムの使用状態を説明する図である。
【0043】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るオゾン消毒システム1は、オゾン装置10と、複数の配管20~24とを備えている。本発明の一実施形態に係るオゾン消毒システム1においては、オゾン装置10と各フロアの各部屋A~Eをそれぞれ配管20~24で接続し、建物内の各フロアに存在する各部屋A~Eを1つの対象空間とする。
【0044】
以下、詳細に説明する。
オゾン装置10は、無声放電方式を用いたオゾン生成手段、及び生成したオゾンを送気するオゾン送気手段を具備している。配管20~24は、オゾン装置10及び建物内の部屋A~Eをそれぞれ接続する。
【0045】
オゾン装置10は、配管20~24に低濃度オゾンを送気すると同時に、配管20~24のうちの所定の配管に高濃度オゾンを送気することができる。
【0046】
また、オゾン装置10は、オゾン吸気手段と、浄化手段60とを備えており、電磁弁により、オゾンの送気及び吸気を切り換え可能に構成されている。オゾン装置10は、高濃度オゾンによる消毒後等の必要時に、オゾン吸気手段により部屋A~Eから配管20~24を介してオゾンを吸気し、吸気されたオゾンを浄化手段60において活性炭接触分解法により分解し、大気中へ排気する。
【0047】
また、オゾン消毒システム1は、建物内の部屋A~Eに、部屋A~Eのオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出器としてのオゾンセンサ30を備えている。オゾンセンサ30は、人の顔の高さと同等程度の床面から1.5m程度の高さに設けられている。
【0048】
また、オゾン消毒システム1は、部屋A~Eの人の有無を検知する人感センサ40を備えている。人感センサ40は、オゾンセンサ30が所定値以上(例えば、0.1ppm)を示す場合に、アラームを発生するアラーム発生手段を具備している。
【0049】
オゾン装置10は、オゾンセンサ30が検出するオゾン濃度情報に基づき、部屋A~Eへ送気するオゾンの量及び/又は濃度を調整するオゾン調整手段を具備している。
【0050】
オゾン装置10は、所定の部屋A~Eに高濃度オゾンを送気している際、人感センサ40が人の存在を検知した場合に、高濃度オゾンの送気を停止すると共に、オゾン吸気手段によって所定の部屋A~Eからオゾンを吸気する。
【0051】
また、オゾン消毒システム1は、オゾンセンサ30が、部屋A~Eのうちの所定の部屋のオゾン濃度が平常オゾン濃度(例えば、0.1ppm以下)を超えたことを検知した場合に、所定の部屋の扉を外から開かないように施錠する施錠装置50を備えている。
【0052】
以上のような構成のオゾン消毒システム1を用いて建物内を消毒する消毒方法について説明する。
【0053】
まず、オゾン消毒システム1においては、オゾン装置10が、配管20~24に低濃度オゾンを送気し、部屋A~Eを、常時、設定した平常オゾン濃度0.1ppm以下に保持する。
【0054】
続いて、例えば、部屋Aにおいて新型コロナウィルス(SARS‐CoV‐2)患者が使用したことが判明して消毒が必要となった時に、オゾン装置10が、配管20~24のうち部屋Aに接続された配管20に高濃度オゾンを送気する。
【0055】
部屋Aの消毒は、部屋Aのオゾン濃度が、設定した消毒オゾン濃度6.0ppmに到達してから、60分保持することにより行う。この際、部屋Aのオゾン濃度は、部屋Aに設けられたオゾンセンサ30により検出され、オゾン装置10のオゾン調整手段が、オゾンセンサ30が検出するオゾン濃度情報に基づき、部屋Aへ送気するオゾンの量又は濃度を調整し、消毒オゾン濃度に保持する。また、部屋Aのオゾンセンサ30が平常オゾン濃度0.1ppmを超えていることを検知している間、施錠装置50は部屋Aの扉を外から開かないように施錠する。
【0056】
続いて、部屋Aの消毒完了後、オゾン装置10のオゾン吸気手段が、平常オゾン濃度の0.1ppm以下になるまで、配管20を介して部屋Aからオゾンを吸気する。この際、オゾン吸気手段により吸気した排気オゾンは、浄化手段60により濃度0.1ppm以下まで浄化され大気中に排気される。
【0057】
上記構成のオゾン消毒システム1を用いることにより、建物内の各フロアに存在する各部屋A~Eごとに強力かつ十分に消毒を行うことができる。
【0058】
次に、他の実施形態に係るオゾン消毒システムについて説明する。なお、上記オゾン消毒システム1と同様の構成の部材については、同一符号を付して説明を省略する。本実施形態においては、オゾン装置10と各フロアa,bをそれぞれ配管で接続し、建物内の各フロアa,bの全体を1つの対象空間とする点で上記実施形態と異なる。
【0059】
図2に示すように、他の実施形態に係るオゾン消毒システム2においては、建物内のフロアa,bに、独立して配管70,71が設けられている。このような建物内のフロアa,bに独立して配管70,71が設けられることにより、フロアごとに強力かつ十分に消毒を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のオゾン消毒システムによれば、建物内における対象空間を消毒することができることから、産業上有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 オゾン消毒システム
2 オゾン消毒システム
10 オゾン装置
20 配管
21 配管
22 配管
23 配管
24 配管
30 オゾンセンサ
40 人感センサ
50 施錠装置
60 浄化手段
70 配管
71 配管