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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041346
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】浚渫装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/88 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
E02F3/88 K
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146490
(22)【出願日】2020-09-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】318015677
【氏名又は名称】アザイ技術コンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152342
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 益史
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一郎
(57)【要約】
【課題】河川、港湾、ダム、湖沼等に堆積した堆積土砂中に沈木等の障害物が混在していても、環境に及ぼす影響を少なく抑えつつ、効率良く堆積土砂の掘削・除去作業ができる浚渫装置を提供する。
【解決手段】浚渫装置1は、沈木等の障害物が混在し、水底に堆積した堆積土砂を、水中を下降しながら浚渫するための浚渫装置1であって、ケーシング10と、ケーシング10の内部に収容され、前記堆積土砂を吸引・排出するための水中ポンプ11と、開口部13bが設けられた先端部13aを有し、ケーシング10よりも細く形成されるとともに、ケーシング10から下方に延びる少なくとも1の吸引管13と、を備え、先端部13aは、前記障害物の間に入り込み且つ前記障害物を押し退けながら開口部13bから前記堆積土砂を吸引する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈木等の障害物が混在し、水底に堆積した堆積土砂を、水中を下降しながら浚渫するための浚渫装置であって、
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に収容され、前記堆積土砂を吸引・排出するための水中ポンプと、
開口部が設けられた先端部を有し、前記ケーシングよりも細く形成されるとともに、前記ケーシングから下方に延びる少なくとも1の吸引管と、
を備え、
前記先端部は、前記障害物の間に入り込み且つ前記障害物を押し退けながら前記開口部から前記堆積土砂を吸引する、浚渫装置。
【請求項2】
前記先端部は、先端に向けて細くなる形状を有する、請求項1に記載の浚渫装置。
【請求項3】
前記少なくとも1の吸引管の前記先端部の近傍に、高圧ジェット水流を噴射し、前記堆積土砂を掘削するための高圧ジェット水流噴射ノズル、を更に備える、請求項1又は2に記載の浚渫装置。
【請求項4】
前記高圧ジェット水流噴射ノズルに前記高圧ジェット水流を分配する高圧ジェット水流分配ダクト、を更に備え、
前記高圧ジェット水流分配ダクトは、前記少なくとも1の吸引管の外側面に沿って配設されている、請求項1~3のいずれかに記載の浚渫装置。
【請求項5】
前記高圧ジェット水流噴射ノズルに前記高圧ジェット水流を分配する高圧ジェット水流分配ダクト、を更に備え、
前記高圧ジェット水流分配ダクトは、前記少なくとも1の吸引管の内部に配設されている、請求項1~3のいずれかに記載の浚渫装置。
【請求項6】
前記ケーシングは、下部に横方向に拡大したスカート形状を有するスカート部を含み、
前記少なくとも1の吸引管は、前記スカート部から下方に延びている、請求項1~5のいずれかに記載の浚渫装置。
【請求項7】
前記少なくとも1の吸引管に前記先端部が前記障害物の間に入り込み且つ前記障害物を押し退けるのを補助する動きを生じさせる補助装置、を更に備える請求項1~6のいずれかに記載の浚渫装置。
【請求項8】
前記補助装置は、前記補助する動きとして前記少なくとも1の吸引管に振動及び/又は回転を生じさせる、請求項7に記載の浚渫装置。
【請求項9】
前記少なくとも1の吸引管の前記振動を吸収するための少なくとも1の振動吸収管、を更に備え、
前記ケーシングは、その下面に前記少なくとも1の吸引管を接合するための少なくとも1の吸引管接合部を有し、
前記少なくとも1の吸引管は、前記少なくとも1の振動吸収管を介して、前記少なくとも1の吸引管接合部に接合されている、請求項8に記載の浚渫装置。
【請求項10】
前記水中ポンプは、インペラーと前記インペラーを回転させるためのモーターとを内蔵し、前記インペラーの回転を駆動力源とする水中サンドポンプである、請求項1~9のいずれかに記載の浚渫装置。
【請求項11】
前記水中ポンプは、高圧ジェット水流を駆動力源とするジェットリフトポンプである、請求項1~9のいずれかに記載の浚渫装置。
【請求項12】
前記水中ポンプは、エアーを駆動力源とするエアーリフトポンプである、請求項1~9のいずれかに記載の浚渫装置。
【請求項13】
前記少なくとも1の吸引管は、複数設けられており、全体として蛸のように見える、請求項1~12のいずれかに記載の浚渫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川、港湾、ダム、湖沼等に堆積した堆積土砂を浚渫する際に用いる浚渫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下端面が開口した天板付き円筒状のケーシング内に収納固定された水中サンドポンプと、天板を貫通してケーシング内周壁面に沿って上下方向に配設された複数本の高圧水パイプ及びその先端に設けられた噴射ノズルと、水中サンドポンプの下面側にあってケーシングの中央下部寄りの位置に固定設置された攪拌羽根とを備え、噴射ノズルから高圧水を噴射して堆積土砂を細かく破砕すると共に攪拌羽根で攪拌して堆積土砂を浮き上がらせて水中サンドポンプで吸引、排出するようにした浚渫装置が知られている。このような浚渫装置によれば、環境に悪影響を与えることなく効率的な堆積土砂の掘削・除去作業が可能であるとされている。(特許文献1参照)また、浚渫領域における木皮や沈木等の混在物が混じる堆積土砂を揚上重機のバケットで掴んで浚渫し、この混在物が混じる堆積土砂を分別装置の分別用水槽に投入し、混在物と堆積土砂を分別する浚渫方法が知られている。このような浚渫方法によれば、堆積土砂と混在物とを容易に分別でき、土質による作業能力の変化が少なく、分別作業を能率的に行うことができるとされている。(特許文献2参照)
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように改善すべき点があった。
【0004】
すなわち、特許文献1の浚渫装置では、堆積土砂中に障害物(例えば、沈木)が混在している場合、障害物がケーシングの下端面の下降を妨げる為、堆積土砂の掘削・除去作業を効率よくできないという問題があった。また、特許文献2の浚渫方法では、浚渫領域の障害物が混在する堆積土砂を掴んで移動させる際に土砂が水を濁らせ、環境に悪影響を与えるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-031623号公報
【特許文献2】特開2011-202501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、河川、港湾、ダム、湖沼等に堆積した堆積土砂中に沈木等の障害物が混在していても、環境に及ぼす影響を少なく抑えつつ、効率良く堆積土砂の掘削・除去作業ができる浚渫装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により提供される浚渫装置は、沈木等の障害物が混在し、水底に堆積した堆積土砂を、水中を下降しながら浚渫するための浚渫装置であって、ケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記堆積土砂を吸引・排出するための水中ポンプと、開口部が設けられた先端部を有し、前記ケーシングよりも細く形成されるとともに、前記ケーシングから下方に延びる少なくとも1の吸引管と、を備え、前記先端部は、前記障害物の間に入り込み且つ前記障害物を押し退けながら前記開口部から前記堆積土砂を吸引する構成とされていることを特徴としている。
【0008】
好ましくは、前記先端部は、先端に向けて細くなる形状を有する構成とされている。
【0009】
好ましくは、前記浚渫装置は、前記少なくとも1の吸引管の前記先端部の近傍に、高圧ジェット水流を噴射し、前記堆積土砂を掘削するための高圧ジェット水流噴射ノズル、を更に備える構成とされている。
【0010】
好ましくは、前記浚渫装置は、前記高圧ジェット水流噴射ノズルに前記高圧ジェット水流を分配する高圧ジェット水流分配ダクト、を更に備え、前記高圧ジェット水流分配ダクトは、前記少なくとも1の吸引管の外側面に沿って配設されている構成とされている。
【0011】
好ましくは、前記浚渫装置は、前記高圧ジェット水流噴射ノズルに前記高圧ジェット水流を分配する高圧ジェット水流分配ダクト、を更に備え、前記高圧ジェット水流分配ダクトは、前記少なくとも1の吸引管の内部に配設されている構成とされている。
【0012】
好ましくは、前記ケーシングは、下部に横方向に拡大したスカート部を含み、前記少なくとも1の吸引管は、前記スカート部から下方に延びている構成とされている。
【0013】
好ましくは、前記浚渫装置は、前記少なくとも1の吸引管に前記先端部が前記障害物の間に入り込み且つ前記障害物を押し退けるのを補助する動きを生じさせる補助装置、を更に備える構成とされている。
【0014】
好ましくは、前記補助装置は、前記補助する動きとして前記少なくとも1の吸引管に振動及び/又は回転を生じさせる構成とされている。
【0015】
好ましくは、前記浚渫装置は、前記少なくとも1の吸引管の前記振動を吸収するための少なくとも1の振動吸収管、を更に備え、前記ケーシングは、その下面に前記少なくとも1の吸引管を接合するための少なくとも1の吸引管接合部を有し、前記少なくとも1の吸引管は、前記少なくとも1の振動吸収管を介して、前記少なくとも1の吸引管接合部に接合されている構成とされている。
【0016】
好ましくは、前記水中ポンプは、インペラーと前記インペラーを回転させるためのモーターとを内蔵し、前記インペラーの回転を駆動力源とする水中サンドポンプである構成とされている。
【0017】
好ましくは、前記水中ポンプは、高圧ジェット水流を駆動力源とするジェットリフトポンプである構成とされている。
【0018】
好ましくは、前記水中ポンプは、エアーを駆動力源とするエアーリフトポンプである構成とされている。
【0019】
好ましくは、前記少なくとも1の吸引管は、複数設けられており、全体として蛸のように見える構成とされている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、河川、港湾、ダム、湖沼等に堆積した堆積土砂中に沈木等の障害物が混在していても、環境に及ぼす影響を少なく抑えつつ、効率良く堆積土砂の掘削・除去作業ができる浚渫装置を提供することができる。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係る浚渫装置を含む浚渫システムを示す模式断面図である。
図2図1の浚渫装置を示す斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図1に示す浚渫システムを用いた浚渫作業の一例を説明するための図であり、浚渫システムをダム湖に堆積し、沈木が混在する堆積土砂の上方に配置した状態を示す模式断面図である。
図5】同じく、浚渫装置を堆積土砂まで降下させた状態を示す模式断面図である。
図6】同じく、浚渫装置により堆積土砂を掘削・除去する状態を示す模式断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る浚渫装置を示す斜視図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る浚渫装置を示す斜視図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る浚渫装置を示す断面図である。
図10】本発明の第5の実施形態に係る浚渫装置を示す断面図である。
図11】本発明の第6の実施形態に係る浚渫装置を示す断面図である。
図12図11のXII-XII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、以降の説明において、上下方向などの方向は、図面の記載にしたがったものとする。
【0024】
<第1の実施形態>
[浚渫システム]
本発明の第1の実施形態に係る浚渫装置1を含む浚渫システムDSは、河川、港湾、ダム、湖沼等に堆積した堆積土砂Sを浚渫するのに使用される。図1に示すように、浚渫システムDSは、浚渫装置1の他、浚渫用台船2、吊り下げ架台3、発電機4、堆積土砂貯留用台船2A、堆積土砂貯留槽5、排出用ホース5a、吐出ポンプ6、及び高圧ジェット水流供給ホース6aを具備している。
【0025】
浚渫装置1は、排出用ホース5aにより堆積土砂貯留槽5に連結されており、堆積土砂Sを掘削、吸引し、矢印N3で示すように排出用ホース5aを介して排出処理を行うためのものである。浚渫用台船2は、浚渫作業時、水上で浚渫装置1を移動させ、支持するためのものである。浚渫用台船2は、平面視において略正方形のフロートユニット20を複数組合せた構成を有する。また、中央部に浚渫装置1を水中に降下させるための開口としてポンプ枠21を有している。ポンプ枠21は、浚渫装置1が通過可能な大きさに形成されている。ポンプ枠21の周囲には吊り下げ架台3が設置されている。吊り下げ架台3は、浚渫装置1を水中に吊り下げるためのものである。
【0026】
吊り下げ架台3の天井部30には、電動チェーンブロック31が設置されている。浚渫装置1は、電動チェーンブロック31からチェーン32により吊り下げられている。チェーン32は、先端にフック(図示略)を具備しており、浚渫装置1を吊り下げている。電動チェーンブロック31は、浚渫装置1を矢印N1で示す方向に水中に降下させ、矢印N2で示す方向に上昇させる。
【0027】
発電機4は、浚渫用台船2上に設置されており、発電機本体40、電力供給ケーブル41,42を具備している。発電機本体40から、電力供給ケーブル41,42が、浚渫装置1及び吐出ポンプ6に接続されている。電力供給ケーブル41は、浚渫装置1に駆動のための電力を供給する。浚渫装置1は、掘削した堆積土砂Sをこの電力により矢印N3で示すように周囲の水と一緒に吸引、排出する。
【0028】
堆積土砂貯留槽5は、浚渫装置1により吸引、排出された堆積土砂Sを貯留するための槽であり、下部が水中にまで入り込んだ構造を有している。堆積土砂貯留槽5内には、吐出ポンプ6が設置されている。吐出ポンプ6は、後述する高圧ジェット水流供給ホース6aにより浚渫装置1に連結されており、矢印N4で示すように高圧ジェット水流を浚渫装置1に供給する。高圧ジェット水流は、浚渫装置1が堆積土砂Sを掘削する際に利用される。吐出ポンプ6は、電力供給ケーブル42により発電機4と繋がっており、発電機4から駆動のための電力の供給を受ける。
【0029】
堆積土砂貯留用台船2Aは、浚渫用台船2と連繋して移動するように構成され、フロートユニット22を複数組合せて形成されている。フロートユニット22は、平面視において、例えば、コの字形状をしている。2台のフロートユニット22が、堆積土砂貯留槽5の外周部を、二方向から挟むようにして取り囲んでいる。堆積土砂貯留槽5の外周部には、突起50が設けられている。堆積土砂貯留槽5は、突起50がフロートユニット22の上面22aと係合することにより水面に浮上している。
【0030】
排出用ホース5aは、浚渫装置1から堆積土砂貯留槽5に向けて延ばされており、浚渫装置1により掘削、吸引された堆積土砂Sを堆積土砂貯留槽5に排出するのに使用される。排出用ホース5aとして、例えば、樹脂製の蛇腹状のものが使用される。堆積土砂貯留槽5に堆積土砂Sと一緒に排出された水は吐出ポンプ6により高圧ジェット水流の生成に利用される。即ち、浚渫システムDSにおいては、浚渫装置1が吸引した水を再利用するようになっている。そのため、堆積土砂貯留槽5において、排出用ホース5aの先端と吐出ポンプ6とは、適切に離隔するように配置されており、吐出ポンプ6が、堆積土砂貯留槽5に貯留された堆積土砂Sを不測に吸引するのを防止する構成とされている。
【0031】
高圧ジェット水流供給ホース6aは、吐出ポンプ6と浚渫装置1とを繋ぐためのものである。吐出ポンプ6により生成された高圧ジェット水流を浚渫装置1に送るのに使用される。高圧ジェット水流供給ホース6aとして、例えば、樹脂製の蛇腹ホースが使用される。
【0032】
[浚渫装置]
図1図3のいずれかに示すように、浚渫装置1は、ケーシング10、水中サンドポンプ11、吸引管13、排出ダクト14、高圧ジェット水流供給ダクト15、振動発生装置16、及び振動吸収管17を具備している。浚渫装置1は、ケーシング10に水中サンドポンプ11を内蔵したケーシング型浚渫装置である。ケーシング10は、ポンプ格納管10aとスカート部10mとで形成される。スカート部10mを設けない場合、ケーシング10は、ポンプ格納管10aだけで形成される。浚渫装置1は、堆積土砂Sを掘削し、掘削された堆積土砂Sを矢印N3で示すように周囲の水Wと一緒に吸引、排出することにより河川、港湾、ダム、湖沼等から除去する。
【0033】
ケーシング10は、円筒形状のポンプ格納管10aの内部に水中サンドポンプ11、排出ダクト14、及び高圧ジェット水流供給ダクト15を収容している。ポンプ格納管10aの側面には、メンテナンス作業用の開口部10bが形成されている。開口部10bには、メンテナンスハッチ10cが、開閉自在に取り付けられている。メンテナンスハッチ10cは、メンテナンス作業時以外は容易に開かないようにボルト及びナットで固定されている。後述する水中サンドポンプ11の設置作業は、ポンプ格納管10aの側面に対向するように設けられたメンテナンスハッチ10cを開放し、二つの開口部10bを通じて行われる。また水中サンドポンプ11、排出ダクト14、高圧ジェット水流供給ダクト15、及びその他の構成要素のメンテナンス作業も、これらの開口部10bを通じて行われる。
【0034】
ポンプ格納管10aの外周面上端部には、電動チェーンブロック31により浚渫装置1の全体を吊り下げるためのフック係合部10dが複数個(例えば4個)設けられている。ポンプ格納管10aの上面には、水中サンドポンプ11の排出ダクト14が貫通している。排出ダクト14は、排出用ホース5aと接続されている。また、ポンプ格納管10aの上面の中央寄りの位置には、水中サンドポンプ11へ給電するための電力供給ケーブル41の取り付け部10eが設けられている。ポンプ格納管10aの上面と側面との間には置換水を取り込む為のスリット(図示略)が形成されている。
【0035】
水中サンドポンプ11は、本発明でいう水中ポンプの一例に相当し、モーター収容部11aとインペラー収容部11bと堆積土砂吸引部11cとを具備している。モーター収容部11aに収容されたモーター(図示略)は、電力供給ケーブル41により供給される電力によりインペラー収容部11bに収容されたインペラー(図示略)を回転させる。堆積土砂吸引部11cには吸引口11dが設けられている。前記インペラーの回転により吸引力が発生し、矢印N3で示すように吸引口11dから堆積土砂Sと水Wの混合物が吸引される。吸引部11cの下部には、撹拌羽根11eが取り付けられている。撹拌羽根11eは、前記インペラーの回転に伴って回転し、浚渫装置1中に吸引された堆積土砂Sと水Wとを攪拌し均一化する。水中サンドポンプ11により、浚渫装置1は、最大粒形60mm程度の堆積土砂Sを吸引、排出する。
【0036】
水中サンドポンプ11は、ケーシング10のポンプ格納管10aの内部中央に取り付けられている。取り付けは、締め付けリング10f,10j及び連結板10g,10kを用いて、水中サンドポンプ11のモーター収容部11a及び吸引部11cの2か所を支持することにより行われる。具体的には、締め付けリング10fは、4枚の締め付けリング片をモーター収容部11aの周方向にフランジ結合されたものである。締め付けリング10fのフランジ結合部は、連結板10gの内端部が連結されている。一方で、連結板10gの外端部は、ポンプ支持枠10hに設けられた取り付けプレート10iに固定されている。同様にして、吸引部11cは、締め付けリング10j及び連結板10kにより支持されている。
【0037】
ポンプ格納管10aの下方には、スカート部10mが配置されている。スカート部10mは、ポンプ格納管10aよりも横方向に拡大した形状をしており、ボルト10nによりポンプ格納管10aに接続されている。スカート部10mの下面には、吸引管接合部10pが設けられている。吸引管接合部10pは、下方に突出した円筒状の突起である。吸引管接合部10pに、後述する振動吸収管17を介して吸引管13が接合されている。スカート部10mには、矢印N3で示すように、吸引管13によって吸引された堆積土砂Sが流入する。吸引管接合部10pは、吸引管13の数量に合わせて準備される。なお、スカート部10mを設けない場合には、ポンプ格納管10aの下面に吸引管接合部10pを設け、吸引管13が接合される。
【0038】
吸引管13は、円筒形状を有し、ケーシング10よりも細く形成され、直径φ100mm~φ150mm、好ましくはφ100mm~φ125mm、長さ2~5m、好ましくは2~3mの鉄鋼製である。吸引管13の先端部13aは、斜めにカットされることにより先端程細くなるテーパ形状をしており、テーパ面には楕円形状の開口部13bを有している。浚渫装置1は、4本の吸引管13を具備しており、全体として蛸のような外観を有している。吸引管13の数は、4本に限られず、少なくとも1本あればよく、2本、3本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、又はそれ以上の複数本であってもよい。堆積土砂Sに沈木S1等の障害物が混在している場合、吸引管13の先端部13aは、沈木S1等の間隙に入り込み、沈木S1等を押し退けながら下降する。堆積土砂Sは、周囲の水Wと一緒に吸引管13の開口部13bから選択的に吸引される。
【0039】
高圧ジェット水流供給ダクト15は、浚渫装置1の内部において高圧ジェット水流を矢印N4で示すように送るためのものであり、上部高圧ジェット水流供給ダクト15a、環状高圧ジェット水流供給ダクト15b、高圧ジェット水流分配ダクト15c、高圧ジェット水流噴射ノズル15dを具備している。上部高圧ジェット水流供給ダクト15aは、その直径がφ100mm程度であり、ポンプ格納管10aの上面を貫通し、高圧ジェット水流供給ホース6aと連結されている。上部高圧ジェット水流供給ダクト15aは、レジューサーを有しており、ポンプ格納管10a内で細くなっており、その直径はφ40mm程度である。
【0040】
上部高圧ジェット水流供給ダクト15aの他端は、環状高圧ジェット水流供給ダクト15bに接合されている。環状高圧ジェット水流供給ダクト15bは、ポンプ格納管10aの中間の高さにおいて内周面に沿うようにして環状に配置されている。その直径は、φ40mm程度である。複数の高圧ジェット水流分配ダクト15cが、環状高圧ジェット水流供給ダクト15bから適当な間隔をおいて垂設されている。高圧ジェット水流分配ダクト15cは、吸引管13毎に高圧ジェット水流を分配するためのものであり、吸引管13の数量に合わせて準備される。吸引管13が1本である場合は、高圧ジェット水流分配ダクト15cは1本あればよい。垂設された高圧ジェット水流分配ダクト15cは、スカート部10mの下面を貫通して、吸引管13の外側面に沿うようにして下方に向けて配置されている。高圧ジェット水流分配ダクト15cの直径は、φ25mm程度である。
【0041】
吸引管13の外側面には、アングル部材13cが縦方向に溶接されている。高圧ジェット水流分配ダクト15cが、その中に収容されて、吸引管13の外側面に沿って配設されている。高圧ジェット水流噴射ノズル15dは、高圧ジェット水流を矢印N4で示す方向に噴射するためのものであり、高圧ジェット水流分配ダクト15cの下端部に連結されており、吸引管13の開口部13bの近傍に下方に向けて配置されている。発電機4により吐出ポンプ6を駆動して、高圧ジェット水流噴射ノズル15dから高圧ジェット水流を噴射させると、堆積土砂Sが掘削されると同時に攪拌される。そうすると、堆積土砂Sは、周囲の水Wと一緒に吸引管13の開口部13bから吸引される。
【0042】
吸引管13の上部には、振動装置16が設置されている。振動装置16は、堆積土砂Sを掘削する際に吸引管13を振動させ、吸引管13が堆積土砂Sに混在している沈木S1等の障害物の間隙に入り込みそれらを押し退けるのを補助するためのものであり、高圧ジェット水流を駆動力として振動を発生し、高圧ジェット水流導入ダクト16aと高圧ジェット水流流出口16bとを有している。高圧ジェット水流導入ダクト16aは、高圧ジェット水流分配ダクト15cから分岐したもので、矢印N5で示すように高圧ジェット水流を振動装置16に導入する。高圧ジェット水流流出口16bは、振動発生に利用した高圧ジェット水流を流出させるためのものである。なお、振動装置16は、本発明でいう補助装置の一例に相当する。また、振動は、本発明でいう補助する動きの一例に相当する。
【0043】
振動装置16の種類としては、例えば、高圧ジェット水流により内蔵されたローラー(図示略)を回転させるローラーバイブレーターが挙げられる。その他、高圧ジェット水流によりボール、タービン等を回転させたり、ピストンを駆動したりするボールバイブレーター、タービンバイブレーター、又はピストンバイブレーター等が挙げられる。また、振動装置16は、高圧ジェット水流を駆動力として利用するものに限られず、例えば、エアー圧を利用するものを使用してもよい。また、モーターの回転軸に取り付けたアンバランスウエイトの加振力により振動を発生させる振動モーターを使用してもよい。
【0044】
吸引管13は、振動吸収管17を介して吸引管接合部10pに接合されている。振動吸収管17の材質は、例えば、ゴム製である。振動吸収管17は、振動装置16により吸引管13に発生した振動をスカート部10m及びポンプ格納管10aに伝えにくくするためのものである。また、振動吸収管17は、吸引管13を矢印N6で示すように揺動可能にする。堆積土砂Sに沈木S1等の障害物が混在している場合、吸引管13の先端部13aは、沈木S1等の間隙に入り込み、沈木S1等を押し退け、回避しながら下降する。振動吸収管17は、吸引管13の数量に合わせて準備される。吸引管13が1本である場合は、振動吸収管17は1本あればよい。このように、振動吸収管17は、吸引管13と同様、少なくとも1本あればよく、2本、3本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、又はそれ以上の複数本であってもよい。
【0045】
[浚渫方法]
浚渫システムDS1を用いたダム湖ALの浚渫作業の一例を説明する。図4に示すように、ダム湖ALは、ダム7によって堰き止められたものである。ダム7は、取水口70を備えている。取水口70の前面には、鉄製の格子71が嵌め込まれている。格子71は、大きなごみが取水口70に入り込むのを防止するためのものである。ダム湖ALの湖底には、上流から流れてきた土砂が堆積した堆積土砂Sが溜まっている。ダム湖ALに堆積土砂Sが溜まると、貯水量が減少し、取水口70が詰まる恐れがある。堆積土砂Sには、土砂と一緒に流れてきた沈木S1等の障害物が混在している。
【0046】
先ず、図4に示すように、浚渫装置1を吊り下げ架台3の天井部30近くに吊り下げた状態で、押し船等により浚渫用台船2及び堆積土砂貯留用台船2Aを目的の地点に移動させる。
【0047】
次に、図5に示すように、浚渫装置1を電動チェーンブロック31により矢印N1で示す方向に垂直に水中へ降ろしていく。吸引管13が水底に達すると、そのことが吸引管13の先端部13a付近に配置されたセンサ(図示略)に検知され、吐出ポンプ6、及び水中サンドポンプ11が駆動を開始する。駆動を開始した吐出ポンプ6により生成された高圧ジェット水流は、矢印N4で示す方向に高圧ジェット水流供給ホース6a及び高圧ジェット水流供給ダクト15を経て高圧ジェット水流噴射ノズル15dから噴射し、堆積土砂Sを掘削する。その際、堆積土砂Sは、細かく粉砕され、浮き上がる。
【0048】
図3及び図5に示すように、浮き上がった堆積土砂Sは、水中サンドポンプ11により発生した吸引力により、吸引管13の開口部13bから矢印N3で示す方向に水Wと一緒に吸引され、吸引管13を経てスカート部10mに集められる。スカート部10mに集められた堆積土砂Sは、撹拌羽根11eによって均一化される。均一化された堆積土砂Sと水Wの混合物は、吸引口11dから水中サンドポンプ11中に吸引され、排出ダクト14及び排出用ホース5aを経由して堆積土砂貯留槽5に排出される。
【0049】
次に、図6に示すように、浚渫装置1は、堆積土砂Sと水Wとの混合物を吸引、排出しながらダム湖ALの底部を矢印N1で示すように掘り下げて行く。堆積土砂Sには沈木S1が含まれており、浚渫装置1は、吸引管13を振動させることにより、沈木S1の間に入り込み、これらを押し退け又は回避しながら下方に進んで行く。浚渫装置1が、吸引管13の長さ分下降し、それ以上下降しにくくなったら、電動チェーンブロック31を駆動させて矢印N2で示すように浚渫装置1を上方向に一旦吊り上げ、浚渫用台船2及び堆積土砂貯留用台船2Aを次の地点へ横移動させる。
【0050】
その位置で再度浚渫装置1を矢印N1で示す方向に降下させ、堆積土砂Sの掘削、除去作業を行う。先に堆積土砂Sを除去した位置に残った沈木S1等は重機等を用いて除去する。沈木S1等を除去した位置においても必要に応じて更に堆積土砂Sの掘削、除去作業を繰り返し行うことで吸引管13の長さを超える深い所まで堆積土砂Sの浚渫を行う。同様にして、目的の深さまで、浚渫する区画内の堆積土砂Sの掘削、除去作業を繰り返す。
【0051】
本実施形態によれば、浚渫装置1は、ケーシング10の下方に吸引管13を具備している。吸引管13は、ケーシング10よりも細く、先端部13aが斜めカットにより先端に向けて細い尖頭形状になっている。そのため、ダム湖ALの堆積土砂Sに多くの沈木S1が混入している場合であっても、吸引管13の先端部13aは、沈木S1の間に入り込み且つ沈木S1を押し退けながら、開口部13bから堆積土砂Sを選択的に吸引する。これにより、浚渫装置1は、沈木S1等の障害物が混在している場合であっても堆積土砂Sを掘削、吸引、排出しつつ深い所まで降下することができるので、堆積土砂Sの浚渫作業を効率的に行うことができる。その結果、工期の短縮、コストの削減を図ることができる。
【0052】
また、先端部13aは、先端に向けて細くなる形状を有しているので、沈木S1の間に入り込み且つ沈木S1を押し退ける動作を効率的に行うことができる。
【0053】
また、吸引管13は、先端部13aの開口部13bの近傍に高圧ジェット水流噴射ノズル15dを具備している。高圧ジェット水流噴射ノズル15dから高圧ジェット水流を噴射させると、堆積土砂Sが掘削されると同時に攪拌され、水Wと一緒に吸引管13の開口部13bから吸引される。そのため、堆積土砂Sが相当に硬いか粘性の高いものであっても、排出処理することができる。吸引管13の開口部13bの近傍に高圧ジェット水流噴射ノズル15dが配置されているため、濁水が生じにくい。これにより、環境に影響を及ぼし難い浚渫作業を行うことができる。
【0054】
また、高圧ジェット水流分配ダクト15cは、吸引管13の外側面に縦方向に溶接されたアングル部材13cの中に収容されている。よって、高圧ジェット水流分配ダクト15cは、吸引管13の外側面に沿って配設されている。これにより、高圧ジェット水流分配ダクト15cは、吸引管13による浚渫作業を妨げることなく矢印N4で示すように高圧ジェット水流を供給することができる。
【0055】
また、ポンプ格納管10aと吸引管13との間には、スカート部10mが配置されている。吸引管13の開口部13aから吸引された堆積土砂Sは、スカート部10mに集められる。スカート部10mに集められた堆積土砂Sは、撹拌羽根11eによって均一化される。均一化された堆積土砂Sと水Wの混合物は、水中サンドポンプ11、排出ダクト14及び排出用ホース5a中で目詰まりを防止し、円滑に堆積土砂貯留槽5に排出される。また、スカート部10mは、ケーシング10の下部において横方向に拡大した形状を有している。よって、スカート部10mの下面には、より多くの吸引管13を取り付けることができる。これにより、浚渫作業の効率化を図ることができる。
【0056】
また、吸引管13の上部に設置された振動装置16は、堆積土砂Sを掘削する際に吸引管13を振動させ、吸引管13が堆積土砂Sに混在している沈木S1等の障害物をずらすことにより、これらを押し退けるのを補助する。これにより、浚渫装置1は、沈木S1等の障害物が混在している場合であっても効率良く堆積土砂Sを掘削、吸引、排出することができる。
【0057】
また、吸引管13は、振動吸収管17を介してスカート部10mに接合されている。振動吸収管17は、振動装置16により吸引管13に発生した振動をスカート部10m及びポンプ格納管10aに伝えにくくする。これにより、振動発生によるポンプ格納管10a、それに格納された水中サンドポンプ11等、及びスカート部10mの損傷の未然防止、安定した堆積土砂Sの掘削、吸引、排出を図ることができる。
【0058】
また、振動吸収管17は、スカート部10m下面の吸引管接合部10pにおいて、吸引管13を揺動可能にする。これにより、吸引管13の先端部13aは沈木S1等の障害物を回避可能となる。これにより、吸引管13は、沈木S1等の障害物を回避しつつ下降することができ、堆積土砂Sの掘削、吸引、排出の効率化を図ることができる。
【0059】
また、吸引管13は、複数設けられているので、堆積土砂Sの浚渫作業を効率的に実施することができる。
【0060】
また、浚渫システムDSは、吸引管13を有する浚渫装置1と堆積土砂貯留槽5とがコンパクトに繋げられ一体となって水上を移動可能な構成を有しているため、施工場所が狭小な作業空間を強いられる場所や大型機械の搬入出、組み立て・設置が困難な場所であって且つ水底に堆積土砂Sと沈木S1等の障害物が混在している場合であっても、効率良く選択的に堆積土砂Sを掘削、吸引、排出することができる。
【0061】
<第2の実施形態>
図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係る浚渫装置1Aを説明する。浚渫装置1Aにおいて、第1の実施形態に係る浚渫装置1の構成要素と同一又は類似の機能を有する構成要素には、浚渫装置1と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。図7に示すように、浚渫装置1Aにおいて、高圧ジェット水流供給ダクト15Aは、環状高圧ジェット水流供給ダクト15bから垂設された高圧ジェット水流分配ダクト15Acが吸引管13の内部に収容されており、高圧ジェット水流噴射ノズル15Adが開口部13bの内側に配置されている点で第1の実施形態と相違している。高圧ジェット水流分配ダクト15Acは、吸引管13毎に高圧ジェット水流を分配するためのものであり、吸引管13の数量に合わせて準備される。高圧ジェット水流噴射ノズル15Adは、開口部13bから下方に若干突出するように配置されている。但し、高圧ジェット水流噴射ノズル15Adは、開口部13bの高さに配置されてもよいし、吸引管13の内部に収容されていてもよい。
【0062】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0063】
また、本実施形態においては、外側面に設置する構造物を少なくすることができる。これにより、吸引管13は、堆積土砂Sを吸引しつつ沈木S1を押し退ける際に、抵抗少なく深い所まで降下することができる。また、高圧ジェット水流分配ダクト15Acは、吸引管13による浚渫作業を妨げることなく矢印N4で示すように高圧ジェット水流を供給することができる。
【0064】
<第3の実施形態>
図8を参照して、本発明の第3の実施形態に係る浚渫装置1Bを説明する。浚渫装置1Bにおいて、第1の実施形態に係る浚渫装置1の構成要素と同一又は類似の機能を有する構成要素には、浚渫装置1と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。図8に示すように、浚渫装置1Bにおいて、吸引管13Bの先端部13Baは、先端程細くなる円錐状の尖頭形状に形成されている。本実施形態は、この点で第1の実施形態と相違している。先端部13Baの傾斜面には、複数の楕円形状の開口部13Bbが形成されている。開口部13Bbは、堆積土砂Sを吸引するためのものである。高圧ジェット水流供給ダクト15Bは、環状高圧ジェット水流供給ダクト15bから垂設された高圧ジェット水流分配ダクト15Bcが吸引管13Bの内部に収容されている。高圧ジェット水流分配ダクト15Bcは、吸引管13B毎に高圧ジェット水流を分配するためのものであり、吸引管13Bの数量に合わせて準備される。高圧ジェット水流噴射ノズル15Bdが開口部13Bbの一つに配置されている。なお、先端部13Baの形状は、円錐状に限らず、3角錐、4角錐、5角錐、6角錐、又はそれ以上の角錐であってもよい。
【0065】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0066】
また、本実施形態においては、外側面に設置する構造物を少なくすることができる。よって、吸引管13Bは、堆積土砂Sを吸引しつつ沈木S1を押し退ける際に、抵抗少なく深い所まで降下することができる。また、先端部13Baが先端程細くなる円錐状の尖頭形状に形成されているので、真っすぐに下降しやすい。これにより、安定した堆積土砂Sの掘削、吸引、排出を図ることができる。
【0067】
<第4の実施形態>
図9を参照して、本発明の第4の実施形態に係る浚渫装置1Cを説明する。浚渫装置1Cにおいて、第1の実施形態に係る浚渫装置1の構成要素と同一又は類似の機能を有する構成要素には、浚渫装置1と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。
【0068】
浚渫装置1Cは、水中サンドポンプ11に代えて、ジェットリフトポンプ11Cを具備している。ジェットリフトポンプ11Cは、本発明でいう水中ポンプの他の例に相当する。ジェットリフトポンプ11Cは、ジェットリフトポンプ駆動管11Caと堆積土砂吸引部11Ccとを具備している。堆積土砂吸引部11Ccには吸引口11Cdが設けられている。ジェットリフトポンプ駆動管11Caには高圧ジェット水流供給部11Cbが設けられている。高圧ジェット水流供給部11Cbには、環状高圧ジェット水流供給ダクト15bから分配されたポンプ駆動用高圧ジェット水流供給ダクト15Ceを介して、矢印N7で示すように高圧ジェット水流が供給される。この高圧ジェット水流を駆動力として吸引力が発生し、矢印N3で示すように吸引管13から堆積土砂Sと水Wの混合物が吸引され、それが更にポンプ格納管10aの内部で堆積土砂吸引部11Ccの吸引口11Cdから吸引される。
【0069】
ジェットリフトポンプ11Cは、ポンプ格納管10aの内部に取り付けられている。取り付けは、締め付けリング10Cf,10Cj及び連結板10Cg,10Ckを用いて、ジェットリフトポンプ11Cのジェットリフトポンプ駆動管11Ca及び堆積土砂吸引部11Ccの2か所を支持することにより行われる。具体的には、締め付けリング10Cfは、4枚の締め付けリング片をジェットリフトポンプ駆動管11Caの周方向にフランジ結合されたものである。締め付けリング10Cfのフランジ結合部は、連結板10Cgの内端部が連結されている。一方で、連結板10Cgの外端部は、ポンプ支持枠10hに設けられた取り付けプレート10iに固定されている。同様にして、堆積土砂吸引部11Ccは、締め付けリング10Cj及び連結板10Ckにより支持されている。
【0070】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0071】
また、本実施形態においては、ジェットリフトポンプ11Cの内部にインペラーのような構造物を設けていないので、比較的大きな粒形(例えば、最大粒形200mm程度)の土砂を含む堆積土砂Sを吸引することができる。
【0072】
また、ジェットリフトポンプ11Cは、ジェットリフトポンプ駆動管11Caとポンプ駆動用高圧ジェット水流供給ダクト15Ceから成る極めて簡単な構造を有している。これにより、浚渫装置1Cは、故障が少ないという利点を有する。
【0073】
<第5の実施形態>
図10を参照して、本発明の第5の実施形態に係る浚渫装置1Dを説明する。浚渫装置1Dにおいて、第1の実施形態に係る浚渫装置1の構成要素と同一又は類似の機能を有する構成要素には、浚渫装置1と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。
【0074】
浚渫装置1Dは、水中サンドポンプ11に代えて、エアーリフトポンプ11Dを具備している。エアーリフトポンプ11Dは、本発明でいう水中ポンプの他の例に相当する。エアーリフトポンプ11Dは、揚水管11Daと堆積土砂吸引部11Dcとを具備している。堆積土砂吸引部11Dcには吸引口11Ddが設けられている。揚水管11Daには、エアー供給部11Dbが設けられている。ポンプ格納管10aの上面の中央寄りの位置には、エアーリフトポンプ11Dへエアーを供給するためのエアー供給ダクト11Deを取り付けるためのエアー供給ダクト取り付け部10Deが設けられている。エアー供給ダクト11Deは、浚渫装置1Dの外部に設けられたエアーポンプ(図示略)からエアー供給部11Dbに矢印N8で示すようにエアーを供給するためのものである。このエアーを駆動力として吸引力が発生し、矢印N3で示すように吸引管13から堆積土砂Sと水Wの混合物が吸引され、それが更にポンプ格納管10aの内部で堆積土砂吸引部11Dcの吸引口11Ddから吸引される。
【0075】
エアーリフトポンプ11Dは、ポンプ格納管10aの内部に取り付けられている。取り付けは、締め付けリング10Df,10Dj及び連結板10Dg,10Dkを用いて、エアーリフトポンプ11Dの揚水管11Da及び堆積土砂吸引部11Dcの2か所を支持することにより行われる。具体的には、締め付けリング10Dfは、4枚の締め付けリング片をエアーリフトポンプ駆動管11Daの周方向にフランジ結合されたものである。締め付けリング10Dfのフランジ結合部は、連結板10Dgの内端部が連結されている。一方で、連結板10Dgの外端部は、ポンプ支持枠10hに設けられた取り付けプレート10iに固定されている。同様にして、堆積土砂吸引部11Dcは、締め付けリング10Dj及び連結板10Dkにより支持されている。
【0076】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0077】
また、本実施形態においては、エアーリフトポンプ11Dの内部にインペラーのような構造物を設けていないので、比較的大きな粒形(例えば、最大粒形200mm程度)の土砂を含む堆積土砂Sを吸引することができる。
【0078】
また、エアーリフトポンプ11Dは、揚水管11Daとエアー供給ダクト11Deから成る極めて簡単な構造を有している。これにより、浚渫装置1Dは、故障が少ないという利点を有する。
【0079】
<第6の実施形態>
図11及び図12を参照して、本発明の第6の実施形態に係る浚渫装置1Eを説明する。浚渫装置1Eにおいて、第1の実施形態に係る浚渫装置1の構成要素と同一又は類似の機能を有する構成要素には、浚渫装置1と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。
【0080】
図11に示すように、浚渫装置1Eは、振動装置16に代えて、回転装置16Eを具備している点で、浚渫装置1と相違している。回転装置16Eは、本発明でいう補助装置の他の例に相当する。回転装置16Eは、吸引管13Eを回転させるためのものである。回転装置16Eは、吸引管13E上部に設置されている。回転装置16Eは、堆積土砂Sを掘削する際に吸引管13Eを矢印N9で示すように回転させ、吸引管13Eが堆積土砂Sに混在している沈木S1等の障害物の間に入り込み、これらの障害物を押し退け又は回避するのを補助するためのものである。回転は、本発明でいう補助する動きの他の例に相当する。回転装置16Eは、高圧ジェット水流を駆動力として吸引管13Eを回転させ、高圧ジェット水流導入ダクト16Eaと高圧ジェット水流流出口16Ebとを有している。高圧ジェット水流導入ダクト16Eaは、高圧ジェット水流分配ダクト15Ecから分岐したものである。高圧ジェット水流流出口16Ebは、回転に利用した高圧ジェット水流を流出させるためのものである。高圧ジェット水流導入ダクト16Eaは、矢印N10で示すように、高圧ジェット水流を回転装置16Eに供給する。
【0081】
浚渫装置1Eにおいて、吸引管13Eは、先端部13Eaが先端程細くなる円錐状の尖頭形状に形成されている。先端部13Eaの傾斜面には、複数の楕円形状の開口部13Ebが形成されている。開口部13Ebは、堆積土砂Sを吸引するためのものである。高圧ジェット水流供給ダクト15Eは、環状高圧ジェット水流供給ダクト15bから垂設された高圧ジェット水流分配ダクト15Ecが吸引管13Eの内部に収容されている。高圧ジェット水流分配ダクト15Ecは、吸引管13E毎に高圧ジェット水流を分配するためのものであり、吸引管13Eの数量に合わせて準備される。高圧ジェット水流噴射ノズル15Edが、先端部13Eaの頂点部に配置されている。吸引管13Eが回転している時に、高圧ジェット水流分配ダクト15Ecは、回転しないように構成されている。なお、先端部13Eaの形状は、円錐状に限らず、3角錐、4角錐、5角錐、6角錐、又はそれ以上の角錐であってもよい。
【0082】
図12に示すように、回転装置16Eの内部において、吸引管13Eの外周部に複数の羽根13Edが形成されている。羽根13Edは、矢印N10で示す方向に高圧ジェット水流導入ダクト16Eaから導入された高圧ジェット水流を受けて、吸引管13Eを矢印N9で示す方向に回転させる。吸引管13Eは、回転することにより堆積土砂Sに混在している沈木S1等の障害物の間に入り込み、これらの障害物を押し退け、回避する。浚渫装置1Eは、堆積土砂Sを掘削、吸引、排出しながら降下する。
【0083】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0084】
また、吸引管13Eの上部に設置された回転装置16Eは、堆積土砂Sを掘削する際に吸引管13Eを回転させ、吸引管13Eが堆積土砂Sに混在している沈木S1等の障害物を押し退けるのを補助する。これにより、浚渫装置1Eは、沈木S1等の障害物が混在している場合であっても効率良く堆積土砂Sを掘削、吸引、排出することができる。
【0085】
また、吸引管13Eは、先端部13Eaの頂点部に高圧ジェット水流噴射ノズル15Edを具備している。高圧ジェット水流噴射ノズル15Edから高圧ジェット水流を噴射させると、堆積土砂Sが掘削されると同時に浮き上がり、水Wと一緒に吸引管13Eの開口部13Ebから吸引される。そのため、堆積土砂Sが相当に硬いか粘性の高いものであっても、排出処理することができる。浚渫装置1Eは、吸引管13Eの開口部13Ebの近傍に高圧ジェット水流噴射ノズル15Edが配置されているため、濁水を生じにくく、環境に影響を及ぼし難い。
【0086】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る浚渫装置の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。また、上述した各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0087】
浚渫装置1を水中に吊り下げるための設備は、図1に示した浚渫用台船2に設置された吊り下げ架台3に設けられた電動チェーンブロック31に限定されない。例えば、組立式クレーン台船上に積込みクレーンを設置し、この積み込みクレーンにより浚渫装置1を水中に降下させたり、上昇させたりする構成としてもよい。
【符号の説明】
【0088】
S 堆積土砂
S1 沈木(障害物)
1,1A,1B,1C,1D,1E 浚渫装置
10 ケーシング
10m スカート部
10p 吸引管接合部
11 水中サンドポンプ(水中ポンプ)
11C ジェットリフトポンプ(水中ポンプ)
11D エアーリフトポンプ(水中ポンプ)
13,13B,13E 吸引管
13a,13Ba,13Ea 先端部
13b,13Bb,13Eb 開口部
15c,15Ac,15Bc,15Ec 高圧ジェット水流分配ダクト
15d,15Ad,15Bd,15Ed 高圧ジェット水流噴射ノズル
16 振動装置(補助装置)
16E 回転装置(補助装置)
17 振動吸収管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2020-12-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈木等の障害物が混在し、水底に堆積した堆積土砂を、水中を下降しながら浚渫するための浚渫装置であって、
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に収容され、前記堆積土砂を吸引・排出するための水中ポンプと、
開口部が設けられた先端部を有し、前記ケーシングよりも細く形成されるとともに、前記ケーシングから下方に延びる少なくとも1の吸引管と、
を備え、
前記先端部は、前記障害物の間に入り込み且つ前記障害物を押し退けながら前記開口部から前記堆積土砂を吸引し、
前記少なくとも1の吸引管に前記先端部が前記障害物の間に入り込み且つ前記障害物を押し退けるのを補助する動きを生じさせる補助装置、を更に備え、
前記補助装置は、前記補助する動きとして前記少なくとも1の吸引管に振動及び/又は回転を生じさせる、浚渫装置。
【請求項2】
前記先端部は、先端に向けて細くなる形状を有する、請求項1に記載の浚渫装置。
【請求項3】
前記少なくとも1の吸引管の前記先端部の近傍に、高圧ジェット水流を噴射し、前記堆積土砂を掘削するための高圧ジェット水流噴射ノズル、を更に備える、請求項1又は2に記載の浚渫装置。
【請求項4】
前記高圧ジェット水流噴射ノズルに前記高圧ジェット水流を分配する高圧ジェット水流分配ダクト、を更に備え、
前記高圧ジェット水流分配ダクトは、前記少なくとも1の吸引管の外側面に沿って配設されている、請求項に記載の浚渫装置。
【請求項5】
前記高圧ジェット水流噴射ノズルに前記高圧ジェット水流を分配する高圧ジェット水流分配ダクト、を更に備え、
前記高圧ジェット水流分配ダクトは、前記少なくとも1の吸引管の内部に配設されている、請求項に記載の浚渫装置。
【請求項6】
前記ケーシングは、下部に横方向に拡大したスカート形状を有するスカート部を含み、
前記少なくとも1の吸引管は、前記スカート部から下方に延びている、請求項1~5のいずれかに記載の浚渫装置。
【請求項7】
前記少なくとも1の吸引管の前記振動を吸収するための少なくとも1の振動吸収管、を更に備え、
前記ケーシングは、その下面に前記少なくとも1の吸引管を接合するための少なくとも1の吸引管接合部を有し、
前記少なくとも1の吸引管は、前記少なくとも1の振動吸収管を介して、前記少なくとも1の吸引管接合部に接合されている、請求項1~6のいずれかに記載の浚渫装置。
【請求項8】
前記水中ポンプは、インペラーと前記インペラーを回転させるためのモーターとを内蔵し、前記インペラーの回転を駆動力源とする水中サンドポンプである、請求項1~のいずれかに記載の浚渫装置。
【請求項9】
前記水中ポンプは、高圧ジェット水流を駆動力源とするジェットリフトポンプである、請求項1~のいずれかに記載の浚渫装置。
【請求項10】
前記水中ポンプは、エアーを駆動力源とするエアーリフトポンプである、請求項1~のいずれかに記載の浚渫装置。
【請求項11】
前記少なくとも1の吸引管は、複数設けられており、全体として蛸のように見える、請求項1~10のいずれかに記載の浚渫装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川、港湾、ダム、湖沼等に堆積した堆積土砂を浚渫する際に用いる浚渫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下端面が開口した天板付き円筒状のケーシング内に収納固定された水中サンドポンプと、天板を貫通してケーシング内周壁面に沿って上下方向に配設された複数本の高圧水パイプ及びその先端に設けられた噴射ノズルと、水中サンドポンプの下面側にあってケーシングの中央下部寄りの位置に固定設置された攪拌羽根とを備え、噴射ノズルから高圧水を噴射して堆積土砂を細かく破砕すると共に攪拌羽根で攪拌して堆積土砂を浮き上がらせて水中サンドポンプで吸引、排出するようにした浚渫装置が知られている。このような浚渫装置によれば、環境に悪影響を与えることなく効率的な堆積土砂の掘削・除去作業が可能であるとされている。(特許文献1参照)また、浚渫領域における木皮や沈木等の混在物が混じる堆積土砂を揚上重機のバケットで掴んで浚渫し、この混在物が混じる堆積土砂を分別装置の分別用水槽に投入し、混在物と堆積土砂を分別する浚渫方法が知られている。このような浚渫方法によれば、堆積土砂と混在物とを容易に分別でき、土質による作業能力の変化が少なく、分別作業を能率的に行うことができるとされている。(特許文献2参照)
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように改善すべき点があった。
【0004】
すなわち、特許文献1の浚渫装置では、堆積土砂中に障害物(例えば、沈木)が混在している場合、障害物がケーシングの下端面の下降を妨げる為、堆積土砂の掘削・除去作業を効率よくできないという問題があった。また、特許文献2の浚渫方法では、浚渫領域の障害物が混在する堆積土砂を掴んで移動させる際に土砂が水を濁らせ、環境に悪影響を与えるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-031623号公報
【特許文献2】特開2011-202501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、河川、港湾、ダム、湖沼等に堆積した堆積土砂中に沈木等の障害物が混在していても、環境に及ぼす影響を少なく抑えつつ、効率良く堆積土砂の掘削・除去作業ができる浚渫装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により提供される浚渫装置は、沈木等の障害物が混在し、水底に堆積した堆積土砂を、水中を下降しながら浚渫するための浚渫装置であって、ケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記堆積土砂を吸引・排出するための水中ポンプと、開口部が設けられた先端部を有し、前記ケーシングよりも細く形成されるとともに、前記ケーシングから下方に延びる少なくとも1の吸引管と、を備え、前記先端部は、前記障害物の間に入り込み且つ前記障害物を押し退けながら前記開口部から前記堆積土砂を吸引し、前記浚渫装置は、前記少なくとも1の吸引管に前記先端部が前記障害物の間に入り込み且つ前記障害物を押し退けるのを補助する動きを生じさせる補助装置、を更に備え、前記補助装置は、前記補助する動きとして前記少なくとも1の吸引管に振動及び/又は回転を生じさせる構成とされていることを特徴としている。
【0008】
好ましくは、前記先端部は、先端に向けて細くなる形状を有する構成とされている。
【0009】
好ましくは、前記浚渫装置は、前記少なくとも1の吸引管の前記先端部の近傍に、高圧ジェット水流を噴射し、前記堆積土砂を掘削するための高圧ジェット水流噴射ノズル、を更に備える構成とされている。
【0010】
好ましくは、前記浚渫装置は、前記高圧ジェット水流噴射ノズルに前記高圧ジェット水流を分配する高圧ジェット水流分配ダクト、を更に備え、前記高圧ジェット水流分配ダクトは、前記少なくとも1の吸引管の外側面に沿って配設されている構成とされている。
【0011】
好ましくは、前記浚渫装置は、前記高圧ジェット水流噴射ノズルに前記高圧ジェット水流を分配する高圧ジェット水流分配ダクト、を更に備え、前記高圧ジェット水流分配ダクトは、前記少なくとも1の吸引管の内部に配設されている構成とされている。
【0012】
好ましくは、前記ケーシングは、下部に横方向に拡大したスカート部を含み、前記少なくとも1の吸引管は、前記スカート部から下方に延びている構成とされている。
【0013】
好ましくは、前記浚渫装置は、前記少なくとも1の吸引管の前記振動を吸収するための少なくとも1の振動吸収管、を更に備え、前記ケーシングは、その下面に前記少なくとも1の吸引管を接合するための少なくとも1の吸引管接合部を有し、前記少なくとも1の吸引管は、前記少なくとも1の振動吸収管を介して、前記少なくとも1の吸引管接合部に接合されている構成とされている。
【0014】
好ましくは、前記水中ポンプは、インペラーと前記インペラーを回転させるためのモーターとを内蔵し、前記インペラーの回転を駆動力源とする水中サンドポンプである構成とされている。
【0015】
好ましくは、前記水中ポンプは、高圧ジェット水流を駆動力源とするジェットリフトポンプである構成とされている。
【0016】
好ましくは、前記水中ポンプは、エアーを駆動力源とするエアーリフトポンプである構成とされている。
【0017】
好ましくは、前記少なくとも1の吸引管は、複数設けられており、全体として蛸のように見える構成とされている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、河川、港湾、ダム、湖沼等に堆積した堆積土砂中に沈木等の障害物が混在していても、環境に及ぼす影響を少なく抑えつつ、効率良く堆積土砂の掘削・除去作業ができる浚渫装置を提供することができる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る浚渫装置を含む浚渫システムを示す模式断面図である。
図2図1の浚渫装置を示す斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図1に示す浚渫システムを用いた浚渫作業の一例を説明するための図であり、浚渫システムをダム湖に堆積し、沈木が混在する堆積土砂の上方に配置した状態を示す模式断面図である。
図5】同じく、浚渫装置を堆積土砂まで降下させた状態を示す模式断面図である。
図6】同じく、浚渫装置により堆積土砂を掘削・除去する状態を示す模式断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る浚渫装置を示す斜視図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る浚渫装置を示す斜視図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る浚渫装置を示す断面図である。
図10】本発明の第5の実施形態に係る浚渫装置を示す断面図である。
図11】本発明の第6の実施形態に係る浚渫装置を示す断面図である。
図12図11のXII-XII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、以降の説明において、上下方向などの方向は、図面の記載にしたがったものとする。
【0022】
<第1の実施形態>
[浚渫システム]
本発明の第1の実施形態に係る浚渫装置1を含む浚渫システムDSは、河川、港湾、ダム、湖沼等に堆積した堆積土砂Sを浚渫するのに使用される。図1に示すように、浚渫システムDSは、浚渫装置1の他、浚渫用台船2、吊り下げ架台3、発電機4、堆積土砂貯留用台船2A、堆積土砂貯留槽5、排出用ホース5a、吐出ポンプ6、及び高圧ジェット水流供給ホース6aを具備している。
【0023】
浚渫装置1は、排出用ホース5aにより堆積土砂貯留槽5に連結されており、堆積土砂Sを掘削、吸引し、矢印N3で示すように排出用ホース5aを介して排出処理を行うためのものである。浚渫用台船2は、浚渫作業時、水上で浚渫装置1を移動させ、支持するためのものである。浚渫用台船2は、平面視において略正方形のフロートユニット20を複数組合せた構成を有する。また、中央部に浚渫装置1を水中に降下させるための開口としてポンプ枠21を有している。ポンプ枠21は、浚渫装置1が通過可能な大きさに形成されている。ポンプ枠21の周囲には吊り下げ架台3が設置されている。吊り下げ架台3は、浚渫装置1を水中に吊り下げるためのものである。
【0024】
吊り下げ架台3の天井部30には、電動チェーンブロック31が設置されている。浚渫装置1は、電動チェーンブロック31からチェーン32により吊り下げられている。チェーン32は、先端にフック(図示略)を具備しており、浚渫装置1を吊り下げている。電動チェーンブロック31は、浚渫装置1を矢印N1で示す方向に水中に降下させ、矢印N2で示す方向に上昇させる。
【0025】
発電機4は、浚渫用台船2上に設置されており、発電機本体40、電力供給ケーブル41,42を具備している。発電機本体40から、電力供給ケーブル41,42が、浚渫装置1及び吐出ポンプ6に接続されている。電力供給ケーブル41は、浚渫装置1に駆動のための電力を供給する。浚渫装置1は、掘削した堆積土砂Sをこの電力により矢印N3で示すように周囲の水と一緒に吸引、排出する。
【0026】
堆積土砂貯留槽5は、浚渫装置1により吸引、排出された堆積土砂Sを貯留するための槽であり、下部が水中にまで入り込んだ構造を有している。堆積土砂貯留槽5内には、吐出ポンプ6が設置されている。吐出ポンプ6は、後述する高圧ジェット水流供給ホース6aにより浚渫装置1に連結されており、矢印N4で示すように高圧ジェット水流を浚渫装置1に供給する。高圧ジェット水流は、浚渫装置1が堆積土砂Sを掘削する際に利用される。吐出ポンプ6は、電力供給ケーブル42により発電機4と繋がっており、発電機4から駆動のための電力の供給を受ける。
【0027】
堆積土砂貯留用台船2Aは、浚渫用台船2と連繋して移動するように構成され、フロートユニット22を複数組合せて形成されている。フロートユニット22は、平面視において、例えば、コの字形状をしている。2台のフロートユニット22が、堆積土砂貯留槽5の外周部を、二方向から挟むようにして取り囲んでいる。堆積土砂貯留槽5の外周部には、突起50が設けられている。堆積土砂貯留槽5は、突起50がフロートユニット22の上面22aと係合することにより水面に浮上している。
【0028】
排出用ホース5aは、浚渫装置1から堆積土砂貯留槽5に向けて延ばされており、浚渫装置1により掘削、吸引された堆積土砂Sを堆積土砂貯留槽5に排出するのに使用される。排出用ホース5aとして、例えば、樹脂製の蛇腹状のものが使用される。堆積土砂貯留槽5に堆積土砂Sと一緒に排出された水は吐出ポンプ6により高圧ジェット水流の生成に利用される。即ち、浚渫システムDSにおいては、浚渫装置1が吸引した水を再利用するようになっている。そのため、堆積土砂貯留槽5において、排出用ホース5aの先端と吐出ポンプ6とは、適切に離隔するように配置されており、吐出ポンプ6が、堆積土砂貯留槽5に貯留された堆積土砂Sを不測に吸引するのを防止する構成とされている。
【0029】
高圧ジェット水流供給ホース6aは、吐出ポンプ6と浚渫装置1とを繋ぐためのものである。吐出ポンプ6により生成された高圧ジェット水流を浚渫装置1に送るのに使用される。高圧ジェット水流供給ホース6aとして、例えば、樹脂製の蛇腹ホースが使用される。
【0030】
[浚渫装置]
図1図3のいずれかに示すように、浚渫装置1は、ケーシング10、水中サンドポンプ11、吸引管13、排出ダクト14、高圧ジェット水流供給ダクト15、振動発生装置16、及び振動吸収管17を具備している。浚渫装置1は、ケーシング10に水中サンドポンプ11を内蔵したケーシング型浚渫装置である。ケーシング10は、ポンプ格納管10aとスカート部10mとで形成される。スカート部10mを設けない場合、ケーシング10は、ポンプ格納管10aだけで形成される。浚渫装置1は、堆積土砂Sを掘削し、掘削された堆積土砂Sを矢印N3で示すように周囲の水Wと一緒に吸引、排出することにより河川、港湾、ダム、湖沼等から除去する。
【0031】
ケーシング10は、円筒形状のポンプ格納管10aの内部に水中サンドポンプ11、排出ダクト14、及び高圧ジェット水流供給ダクト15を収容している。ポンプ格納管10aの側面には、メンテナンス作業用の開口部10bが形成されている。開口部10bには、メンテナンスハッチ10cが、開閉自在に取り付けられている。メンテナンスハッチ10cは、メンテナンス作業時以外は容易に開かないようにボルト及びナットで固定されている。後述する水中サンドポンプ11の設置作業は、ポンプ格納管10aの側面に対向するように設けられたメンテナンスハッチ10cを開放し、二つの開口部10bを通じて行われる。また水中サンドポンプ11、排出ダクト14、高圧ジェット水流供給ダクト15、及びその他の構成要素のメンテナンス作業も、これらの開口部10bを通じて行われる。
【0032】
ポンプ格納管10aの外周面上端部には、電動チェーンブロック31により浚渫装置1の全体を吊り下げるためのフック係合部10dが複数個(例えば4個)設けられている。ポンプ格納管10aの上面には、水中サンドポンプ11の排出ダクト14が貫通している。排出ダクト14は、排出用ホース5aと接続されている。また、ポンプ格納管10aの上面の中央寄りの位置には、水中サンドポンプ11へ給電するための電力供給ケーブル41の取り付け部10eが設けられている。ポンプ格納管10aの上面と側面との間には置換水を取り込む為のスリット(図示略)が形成されている。
【0033】
水中サンドポンプ11は、本発明でいう水中ポンプの一例に相当し、モーター収容部11aとインペラー収容部11bと堆積土砂吸引部11cとを具備している。モーター収容部11aに収容されたモーター(図示略)は、電力供給ケーブル41により供給される電力によりインペラー収容部11bに収容されたインペラー(図示略)を回転させる。堆積土砂吸引部11cには吸引口11dが設けられている。前記インペラーの回転により吸引力が発生し、矢印N3で示すように吸引口11dから堆積土砂Sと水Wの混合物が吸引される。吸引部11cの下部には、撹拌羽根11eが取り付けられている。撹拌羽根11eは、前記インペラーの回転に伴って回転し、浚渫装置1中に吸引された堆積土砂Sと水Wとを攪拌し均一化する。水中サンドポンプ11により、浚渫装置1は、最大粒形60mm程度の堆積土砂Sを吸引、排出する。
【0034】
水中サンドポンプ11は、ケーシング10のポンプ格納管10aの内部中央に取り付けられている。取り付けは、締め付けリング10f,10j及び連結板10g,10kを用いて、水中サンドポンプ11のモーター収容部11a及び吸引部11cの2か所を支持することにより行われる。具体的には、締め付けリング10fは、4枚の締め付けリング片をモーター収容部11aの周方向にフランジ結合されたものである。締め付けリング10fのフランジ結合部は、連結板10gの内端部が連結されている。一方で、連結板10gの外端部は、ポンプ支持枠10hに設けられた取り付けプレート10iに固定されている。同様にして、吸引部11cは、締め付けリング10j及び連結板10kにより支持されている。
【0035】
ポンプ格納管10aの下方には、スカート部10mが配置されている。スカート部10mは、ポンプ格納管10aよりも横方向に拡大した形状をしており、ボルト10nによりポンプ格納管10aに接続されている。スカート部10mの下面には、吸引管接合部10pが設けられている。吸引管接合部10pは、下方に突出した円筒状の突起である。吸引管接合部10pに、後述する振動吸収管17を介して吸引管13が接合されている。スカート部10mには、矢印N3で示すように、吸引管13によって吸引された堆積土砂Sが流入する。吸引管接合部10pは、吸引管13の数量に合わせて準備される。なお、スカート部10mを設けない場合には、ポンプ格納管10aの下面に吸引管接合部10pを設け、吸引管13が接合される。
【0036】
吸引管13は、円筒形状を有し、ケーシング10よりも細く形成され、直径φ100mm~φ150mm、好ましくはφ100mm~φ125mm、長さ2~5m、好ましくは2~3mの鉄鋼製である。吸引管13の先端部13aは、斜めにカットされることにより先端程細くなるテーパ形状をしており、テーパ面には楕円形状の開口部13bを有している。浚渫装置1は、4本の吸引管13を具備しており、全体として蛸のような外観を有している。吸引管13の数は、4本に限られず、少なくとも1本あればよく、2本、3本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、又はそれ以上の複数本であってもよい。堆積土砂Sに沈木S1等の障害物が混在している場合、吸引管13の先端部13aは、沈木S1等の間隙に入り込み、沈木S1等を押し退けながら下降する。堆積土砂Sは、周囲の水Wと一緒に吸引管13の開口部13bから選択的に吸引される。
【0037】
高圧ジェット水流供給ダクト15は、浚渫装置1の内部において高圧ジェット水流を矢印N4で示すように送るためのものであり、上部高圧ジェット水流供給ダクト15a、環状高圧ジェット水流供給ダクト15b、高圧ジェット水流分配ダクト15c、高圧ジェット水流噴射ノズル15dを具備している。上部高圧ジェット水流供給ダクト15aは、その直径がφ100mm程度であり、ポンプ格納管10aの上面を貫通し、高圧ジェット水流供給ホース6aと連結されている。上部高圧ジェット水流供給ダクト15aは、レジューサーを有しており、ポンプ格納管10a内で細くなっており、その直径はφ40mm程度である。
【0038】
上部高圧ジェット水流供給ダクト15aの他端は、環状高圧ジェット水流供給ダクト15bに接合されている。環状高圧ジェット水流供給ダクト15bは、ポンプ格納管10aの中間の高さにおいて内周面に沿うようにして環状に配置されている。その直径は、φ40mm程度である。複数の高圧ジェット水流分配ダクト15cが、環状高圧ジェット水流供給ダクト15bから適当な間隔をおいて垂設されている。高圧ジェット水流分配ダクト15cは、吸引管13毎に高圧ジェット水流を分配するためのものであり、吸引管13の数量に合わせて準備される。吸引管13が1本である場合は、高圧ジェット水流分配ダクト15cは1本あればよい。垂設された高圧ジェット水流分配ダクト15cは、スカート部10mの下面を貫通して、吸引管13の外側面に沿うようにして下方に向けて配置されている。高圧ジェット水流分配ダクト15cの直径は、φ25mm程度である。
【0039】
吸引管13の外側面には、アングル部材13cが縦方向に溶接されている。高圧ジェット水流分配ダクト15cが、その中に収容されて、吸引管13の外側面に沿って配設されている。高圧ジェット水流噴射ノズル15dは、高圧ジェット水流を矢印N4で示す方向に噴射するためのものであり、高圧ジェット水流分配ダクト15cの下端部に連結されており、吸引管13の開口部13bの近傍に下方に向けて配置されている。発電機4により吐出ポンプ6を駆動して、高圧ジェット水流噴射ノズル15dから高圧ジェット水流を噴射させると、堆積土砂Sが掘削されると同時に攪拌される。そうすると、堆積土砂Sは、周囲の水Wと一緒に吸引管13の開口部13bから吸引される。
【0040】
吸引管13の上部には、振動装置16が設置されている。振動装置16は、堆積土砂Sを掘削する際に吸引管13を振動させ、吸引管13が堆積土砂Sに混在している沈木S1等の障害物の間隙に入り込みそれらを押し退けるのを補助するためのものであり、高圧ジェット水流を駆動力として振動を発生し、高圧ジェット水流導入ダクト16aと高圧ジェット水流流出口16bとを有している。高圧ジェット水流導入ダクト16aは、高圧ジェット水流分配ダクト15cから分岐したもので、矢印N5で示すように高圧ジェット水流を振動装置16に導入する。高圧ジェット水流流出口16bは、振動発生に利用した高圧ジェット水流を流出させるためのものである。なお、振動装置16は、本発明でいう補助装置の一例に相当する。また、振動は、本発明でいう補助する動きの一例に相当する。
【0041】
振動装置16の種類としては、例えば、高圧ジェット水流により内蔵されたローラー(図示略)を回転させるローラーバイブレーターが挙げられる。その他、高圧ジェット水流によりボール、タービン等を回転させたり、ピストンを駆動したりするボールバイブレーター、タービンバイブレーター、又はピストンバイブレーター等が挙げられる。また、振動装置16は、高圧ジェット水流を駆動力として利用するものに限られず、例えば、エアー圧を利用するものを使用してもよい。また、モーターの回転軸に取り付けたアンバランスウエイトの加振力により振動を発生させる振動モーターを使用してもよい。
【0042】
吸引管13は、振動吸収管17を介して吸引管接合部10pに接合されている。振動吸収管17の材質は、例えば、ゴム製である。振動吸収管17は、振動装置16により吸引管13に発生した振動をスカート部10m及びポンプ格納管10aに伝えにくくするためのものである。また、振動吸収管17は、吸引管13を矢印N6で示すように揺動可能にする。堆積土砂Sに沈木S1等の障害物が混在している場合、吸引管13の先端部13aは、沈木S1等の間隙に入り込み、沈木S1等を押し退け、回避しながら下降する。振動吸収管17は、吸引管13の数量に合わせて準備される。吸引管13が1本である場合は、振動吸収管17は1本あればよい。このように、振動吸収管17は、吸引管13と同様、少なくとも1本あればよく、2本、3本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、又はそれ以上の複数本であってもよい。
【0043】
[浚渫方法]
浚渫システムDS1を用いたダム湖ALの浚渫作業の一例を説明する。図4に示すように、ダム湖ALは、ダム7によって堰き止められたものである。ダム7は、取水口70を備えている。取水口70の前面には、鉄製の格子71が嵌め込まれている。格子71は、大きなごみが取水口70に入り込むのを防止するためのものである。ダム湖ALの湖底には、上流から流れてきた土砂が堆積した堆積土砂Sが溜まっている。ダム湖ALに堆積土砂Sが溜まると、貯水量が減少し、取水口70が詰まる恐れがある。堆積土砂Sには、土砂と一緒に流れてきた沈木S1等の障害物が混在している。
【0044】
先ず、図4に示すように、浚渫装置1を吊り下げ架台3の天井部30近くに吊り下げた状態で、押し船等により浚渫用台船2及び堆積土砂貯留用台船2Aを目的の地点に移動させる。
【0045】
次に、図5に示すように、浚渫装置1を電動チェーンブロック31により矢印N1で示す方向に垂直に水中へ降ろしていく。吸引管13が水底に達すると、そのことが吸引管13の先端部13a付近に配置されたセンサ(図示略)に検知され、吐出ポンプ6、及び水中サンドポンプ11が駆動を開始する。駆動を開始した吐出ポンプ6により生成された高圧ジェット水流は、矢印N4で示す方向に高圧ジェット水流供給ホース6a及び高圧ジェット水流供給ダクト15を経て高圧ジェット水流噴射ノズル15dから噴射し、堆積土砂Sを掘削する。その際、堆積土砂Sは、細かく粉砕され、浮き上がる。
【0046】
図3及び図5に示すように、浮き上がった堆積土砂Sは、水中サンドポンプ11により発生した吸引力により、吸引管13の開口部13bから矢印N3で示す方向に水Wと一緒に吸引され、吸引管13を経てスカート部10mに集められる。スカート部10mに集められた堆積土砂Sは、撹拌羽根11eによって均一化される。均一化された堆積土砂Sと水Wの混合物は、吸引口11dから水中サンドポンプ11中に吸引され、排出ダクト14及び排出用ホース5aを経由して堆積土砂貯留槽5に排出される。
【0047】
次に、図6に示すように、浚渫装置1は、堆積土砂Sと水Wとの混合物を吸引、排出しながらダム湖ALの底部を矢印N1で示すように掘り下げて行く。堆積土砂Sには沈木S1が含まれており、浚渫装置1は、吸引管13を振動させることにより、沈木S1の間に入り込み、これらを押し退け又は回避しながら下方に進んで行く。浚渫装置1が、吸引管13の長さ分下降し、それ以上下降しにくくなったら、電動チェーンブロック31を駆動させて矢印N2で示すように浚渫装置1を上方向に一旦吊り上げ、浚渫用台船2及び堆積土砂貯留用台船2Aを次の地点へ横移動させる。
【0048】
その位置で再度浚渫装置1を矢印N1で示す方向に降下させ、堆積土砂Sの掘削、除去作業を行う。先に堆積土砂Sを除去した位置に残った沈木S1等は重機等を用いて除去する。沈木S1等を除去した位置においても必要に応じて更に堆積土砂Sの掘削、除去作業を繰り返し行うことで吸引管13の長さを超える深い所まで堆積土砂Sの浚渫を行う。同様にして、目的の深さまで、浚渫する区画内の堆積土砂Sの掘削、除去作業を繰り返す。
【0049】
本実施形態によれば、浚渫装置1は、ケーシング10の下方に吸引管13を具備している。吸引管13は、ケーシング10よりも細く、先端部13aが斜めカットにより先端に向けて細い尖頭形状になっている。そのため、ダム湖ALの堆積土砂Sに多くの沈木S1が混入している場合であっても、吸引管13の先端部13aは、沈木S1の間に入り込み且つ沈木S1を押し退けながら、開口部13bから堆積土砂Sを選択的に吸引する。これにより、浚渫装置1は、沈木S1等の障害物が混在している場合であっても堆積土砂Sを掘削、吸引、排出しつつ深い所まで降下することができるので、堆積土砂Sの浚渫作業を効率的に行うことができる。その結果、工期の短縮、コストの削減を図ることができる。
【0050】
また、先端部13aは、先端に向けて細くなる形状を有しているので、沈木S1の間に入り込み且つ沈木S1を押し退ける動作を効率的に行うことができる。
【0051】
また、吸引管13は、先端部13aの開口部13bの近傍に高圧ジェット水流噴射ノズル15dを具備している。高圧ジェット水流噴射ノズル15dから高圧ジェット水流を噴射させると、堆積土砂Sが掘削されると同時に攪拌され、水Wと一緒に吸引管13の開口部13bから吸引される。そのため、堆積土砂Sが相当に硬いか粘性の高いものであっても、排出処理することができる。吸引管13の開口部13bの近傍に高圧ジェット水流噴射ノズル15dが配置されているため、濁水が生じにくい。これにより、環境に影響を及ぼし難い浚渫作業を行うことができる。
【0052】
また、高圧ジェット水流分配ダクト15cは、吸引管13の外側面に縦方向に溶接されたアングル部材13cの中に収容されている。よって、高圧ジェット水流分配ダクト15cは、吸引管13の外側面に沿って配設されている。これにより、高圧ジェット水流分配ダクト15cは、吸引管13による浚渫作業を妨げることなく矢印N4で示すように高圧ジェット水流を供給することができる。
【0053】
また、ポンプ格納管10aと吸引管13との間には、スカート部10mが配置されている。吸引管13の開口部13aから吸引された堆積土砂Sは、スカート部10mに集められる。スカート部10mに集められた堆積土砂Sは、撹拌羽根11eによって均一化される。均一化された堆積土砂Sと水Wの混合物は、水中サンドポンプ11、排出ダクト14及び排出用ホース5a中で目詰まりを防止し、円滑に堆積土砂貯留槽5に排出される。また、スカート部10mは、ケーシング10の下部において横方向に拡大した形状を有している。よって、スカート部10mの下面には、より多くの吸引管13を取り付けることができる。これにより、浚渫作業の効率化を図ることができる。
【0054】
また、吸引管13の上部に設置された振動装置16は、堆積土砂Sを掘削する際に吸引管13を振動させ、吸引管13が堆積土砂Sに混在している沈木S1等の障害物をずらすことにより、これらを押し退けるのを補助する。これにより、浚渫装置1は、沈木S1等の障害物が混在している場合であっても効率良く堆積土砂Sを掘削、吸引、排出することができる。
【0055】
また、吸引管13は、振動吸収管17を介してスカート部10mに接合されている。振動吸収管17は、振動装置16により吸引管13に発生した振動をスカート部10m及びポンプ格納管10aに伝えにくくする。これにより、振動発生によるポンプ格納管10a、それに格納された水中サンドポンプ11等、及びスカート部10mの損傷の未然防止、安定した堆積土砂Sの掘削、吸引、排出を図ることができる。
【0056】
また、振動吸収管17は、スカート部10m下面の吸引管接合部10pにおいて、吸引管13を揺動可能にする。これにより、吸引管13の先端部13aは沈木S1等の障害物を回避可能となる。これにより、吸引管13は、沈木S1等の障害物を回避しつつ下降することができ、堆積土砂Sの掘削、吸引、排出の効率化を図ることができる。
【0057】
また、吸引管13は、複数設けられているので、堆積土砂Sの浚渫作業を効率的に実施することができる。
【0058】
また、浚渫システムDSは、吸引管13を有する浚渫装置1と堆積土砂貯留槽5とがコンパクトに繋げられ一体となって水上を移動可能な構成を有しているため、施工場所が狭小な作業空間を強いられる場所や大型機械の搬入出、組み立て・設置が困難な場所であって且つ水底に堆積土砂Sと沈木S1等の障害物が混在している場合であっても、効率良く選択的に堆積土砂Sを掘削、吸引、排出することができる。
【0059】
<第2の実施形態>
図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係る浚渫装置1Aを説明する。浚渫装置1Aにおいて、第1の実施形態に係る浚渫装置1の構成要素と同一又は類似の機能を有する構成要素には、浚渫装置1と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。図7に示すように、浚渫装置1Aにおいて、高圧ジェット水流供給ダクト15Aは、環状高圧ジェット水流供給ダクト15bから垂設された高圧ジェット水流分配ダクト15Acが吸引管13の内部に収容されており、高圧ジェット水流噴射ノズル15Adが開口部13bの内側に配置されている点で第1の実施形態と相違している。高圧ジェット水流分配ダクト15Acは、吸引管13毎に高圧ジェット水流を分配するためのものであり、吸引管13の数量に合わせて準備される。高圧ジェット水流噴射ノズル15Adは、開口部13bから下方に若干突出するように配置されている。但し、高圧ジェット水流噴射ノズル15Adは、開口部13bの高さに配置されてもよいし、吸引管13の内部に収容されていてもよい。
【0060】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0061】
また、本実施形態においては、外側面に設置する構造物を少なくすることができる。これにより、吸引管13は、堆積土砂Sを吸引しつつ沈木S1を押し退ける際に、抵抗少なく深い所まで降下することができる。また、高圧ジェット水流分配ダクト15Acは、吸引管13による浚渫作業を妨げることなく矢印N4で示すように高圧ジェット水流を供給することができる。
【0062】
<第3の実施形態>
図8を参照して、本発明の第3の実施形態に係る浚渫装置1Bを説明する。浚渫装置1Bにおいて、第1の実施形態に係る浚渫装置1の構成要素と同一又は類似の機能を有する構成要素には、浚渫装置1と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。図8に示すように、浚渫装置1Bにおいて、吸引管13Bの先端部13Baは、先端程細くなる円錐状の尖頭形状に形成されている。本実施形態は、この点で第1の実施形態と相違している。先端部13Baの傾斜面には、複数の楕円形状の開口部13Bbが形成されている。開口部13Bbは、堆積土砂Sを吸引するためのものである。高圧ジェット水流供給ダクト15Bは、環状高圧ジェット水流供給ダクト15bから垂設された高圧ジェット水流分配ダクト15Bcが吸引管13Bの内部に収容されている。高圧ジェット水流分配ダクト15Bcは、吸引管13B毎に高圧ジェット水流を分配するためのものであり、吸引管13Bの数量に合わせて準備される。高圧ジェット水流噴射ノズル15Bdが開口部13Bbの一つに配置されている。なお、先端部13Baの形状は、円錐状に限らず、3角錐、4角錐、5角錐、6角錐、又はそれ以上の角錐であってもよい。
【0063】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0064】
また、本実施形態においては、外側面に設置する構造物を少なくすることができる。よって、吸引管13Bは、堆積土砂Sを吸引しつつ沈木S1を押し退ける際に、抵抗少なく深い所まで降下することができる。また、先端部13Baが先端程細くなる円錐状の尖頭形状に形成されているので、真っすぐに下降しやすい。これにより、安定した堆積土砂Sの掘削、吸引、排出を図ることができる。
【0065】
<第4の実施形態>
図9を参照して、本発明の第4の実施形態に係る浚渫装置1Cを説明する。浚渫装置1Cにおいて、第1の実施形態に係る浚渫装置1の構成要素と同一又は類似の機能を有する構成要素には、浚渫装置1と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。
【0066】
浚渫装置1Cは、水中サンドポンプ11に代えて、ジェットリフトポンプ11Cを具備している。ジェットリフトポンプ11Cは、本発明でいう水中ポンプの他の例に相当する。ジェットリフトポンプ11Cは、ジェットリフトポンプ駆動管11Caと堆積土砂吸引部11Ccとを具備している。堆積土砂吸引部11Ccには吸引口11Cdが設けられている。ジェットリフトポンプ駆動管11Caには高圧ジェット水流供給部11Cbが設けられている。高圧ジェット水流供給部11Cbには、環状高圧ジェット水流供給ダクト15bから分配されたポンプ駆動用高圧ジェット水流供給ダクト15Ceを介して、矢印N7で示すように高圧ジェット水流が供給される。この高圧ジェット水流を駆動力として吸引力が発生し、矢印N3で示すように吸引管13から堆積土砂Sと水Wの混合物が吸引され、それが更にポンプ格納管10aの内部で堆積土砂吸引部11Ccの吸引口11Cdから吸引される。
【0067】
ジェットリフトポンプ11Cは、ポンプ格納管10aの内部に取り付けられている。取り付けは、締め付けリング10Cf,10Cj及び連結板10Cg,10Ckを用いて、ジェットリフトポンプ11Cのジェットリフトポンプ駆動管11Ca及び堆積土砂吸引部11Ccの2か所を支持することにより行われる。具体的には、締め付けリング10Cfは、4枚の締め付けリング片をジェットリフトポンプ駆動管11Caの周方向にフランジ結合されたものである。締め付けリング10Cfのフランジ結合部は、連結板10Cgの内端部が連結されている。一方で、連結板10Cgの外端部は、ポンプ支持枠10hに設けられた取り付けプレート10iに固定されている。同様にして、堆積土砂吸引部11Ccは、締め付けリング10Cj及び連結板10Ckにより支持されている。
【0068】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
また、本実施形態においては、ジェットリフトポンプ11Cの内部にインペラーのような構造物を設けていないので、比較的大きな粒形(例えば、最大粒形200mm程度)の土砂を含む堆積土砂Sを吸引することができる。
【0070】
また、ジェットリフトポンプ11Cは、ジェットリフトポンプ駆動管11Caとポンプ駆動用高圧ジェット水流供給ダクト15Ceから成る極めて簡単な構造を有している。これにより、浚渫装置1Cは、故障が少ないという利点を有する。
【0071】
<第5の実施形態>
図10を参照して、本発明の第5の実施形態に係る浚渫装置1Dを説明する。浚渫装置1Dにおいて、第1の実施形態に係る浚渫装置1の構成要素と同一又は類似の機能を有する構成要素には、浚渫装置1と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。
【0072】
浚渫装置1Dは、水中サンドポンプ11に代えて、エアーリフトポンプ11Dを具備している。エアーリフトポンプ11Dは、本発明でいう水中ポンプの他の例に相当する。エアーリフトポンプ11Dは、揚水管11Daと堆積土砂吸引部11Dcとを具備している。堆積土砂吸引部11Dcには吸引口11Ddが設けられている。揚水管11Daには、エアー供給部11Dbが設けられている。ポンプ格納管10aの上面の中央寄りの位置には、エアーリフトポンプ11Dへエアーを供給するためのエアー供給ダクト11Deを取り付けるためのエアー供給ダクト取り付け部10Deが設けられている。エアー供給ダクト11Deは、浚渫装置1Dの外部に設けられたエアーポンプ(図示略)からエアー供給部11Dbに矢印N8で示すようにエアーを供給するためのものである。このエアーを駆動力として吸引力が発生し、矢印N3で示すように吸引管13から堆積土砂Sと水Wの混合物が吸引され、それが更にポンプ格納管10aの内部で堆積土砂吸引部11Dcの吸引口11Ddから吸引される。
【0073】
エアーリフトポンプ11Dは、ポンプ格納管10aの内部に取り付けられている。取り付けは、締め付けリング10Df,10Dj及び連結板10Dg,10Dkを用いて、エアーリフトポンプ11Dの揚水管11Da及び堆積土砂吸引部11Dcの2か所を支持することにより行われる。具体的には、締め付けリング10Dfは、4枚の締め付けリング片をエアーリフトポンプ駆動管11Daの周方向にフランジ結合されたものである。締め付けリング10Dfのフランジ結合部は、連結板10Dgの内端部が連結されている。一方で、連結板10Dgの外端部は、ポンプ支持枠10hに設けられた取り付けプレート10iに固定されている。同様にして、堆積土砂吸引部11Dcは、締め付けリング10Dj及び連結板10Dkにより支持されている。
【0074】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0075】
また、本実施形態においては、エアーリフトポンプ11Dの内部にインペラーのような構造物を設けていないので、比較的大きな粒形(例えば、最大粒形200mm程度)の土砂を含む堆積土砂Sを吸引することができる。
【0076】
また、エアーリフトポンプ11Dは、揚水管11Daとエアー供給ダクト11Deから成る極めて簡単な構造を有している。これにより、浚渫装置1Dは、故障が少ないという利点を有する。
【0077】
<第6の実施形態>
図11及び図12を参照して、本発明の第6の実施形態に係る浚渫装置1Eを説明する。浚渫装置1Eにおいて、第1の実施形態に係る浚渫装置1の構成要素と同一又は類似の機能を有する構成要素には、浚渫装置1と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。
【0078】
図11に示すように、浚渫装置1Eは、振動装置16に代えて、回転装置16Eを具備している点で、浚渫装置1と相違している。回転装置16Eは、本発明でいう補助装置の他の例に相当する。回転装置16Eは、吸引管13Eを回転させるためのものである。回転装置16Eは、吸引管13E上部に設置されている。回転装置16Eは、堆積土砂Sを掘削する際に吸引管13Eを矢印N9で示すように回転させ、吸引管13Eが堆積土砂Sに混在している沈木S1等の障害物の間に入り込み、これらの障害物を押し退け又は回避するのを補助するためのものである。回転は、本発明でいう補助する動きの他の例に相当する。回転装置16Eは、高圧ジェット水流を駆動力として吸引管13Eを回転させ、高圧ジェット水流導入ダクト16Eaと高圧ジェット水流流出口16Ebとを有している。高圧ジェット水流導入ダクト16Eaは、高圧ジェット水流分配ダクト15Ecから分岐したものである。高圧ジェット水流流出口16Ebは、回転に利用した高圧ジェット水流を流出させるためのものである。高圧ジェット水流導入ダクト16Eaは、矢印N10で示すように、高圧ジェット水流を回転装置16Eに供給する。
【0079】
浚渫装置1Eにおいて、吸引管13Eは、先端部13Eaが先端程細くなる円錐状の尖頭形状に形成されている。先端部13Eaの傾斜面には、複数の楕円形状の開口部13Ebが形成されている。開口部13Ebは、堆積土砂Sを吸引するためのものである。高圧ジェット水流供給ダクト15Eは、環状高圧ジェット水流供給ダクト15bから垂設された高圧ジェット水流分配ダクト15Ecが吸引管13Eの内部に収容されている。高圧ジェット水流分配ダクト15Ecは、吸引管13E毎に高圧ジェット水流を分配するためのものであり、吸引管13Eの数量に合わせて準備される。高圧ジェット水流噴射ノズル15Edが、先端部13Eaの頂点部に配置されている。吸引管13Eが回転している時に、高圧ジェット水流分配ダクト15Ecは、回転しないように構成されている。なお、先端部13Eaの形状は、円錐状に限らず、3角錐、4角錐、5角錐、6角錐、又はそれ以上の角錐であってもよい。
【0080】
図12に示すように、回転装置16Eの内部において、吸引管13Eの外周部に複数の羽根13Edが形成されている。羽根13Edは、矢印N10で示す方向に高圧ジェット水流導入ダクト16Eaから導入された高圧ジェット水流を受けて、吸引管13Eを矢印N9で示す方向に回転させる。吸引管13Eは、回転することにより堆積土砂Sに混在している沈木S1等の障害物の間に入り込み、これらの障害物を押し退け、回避する。浚渫装置1Eは、堆積土砂Sを掘削、吸引、排出しながら降下する。
【0081】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0082】
また、吸引管13Eの上部に設置された回転装置16Eは、堆積土砂Sを掘削する際に吸引管13Eを回転させ、吸引管13Eが堆積土砂Sに混在している沈木S1等の障害物を押し退けるのを補助する。これにより、浚渫装置1Eは、沈木S1等の障害物が混在している場合であっても効率良く堆積土砂Sを掘削、吸引、排出することができる。
【0083】
また、吸引管13Eは、先端部13Eaの頂点部に高圧ジェット水流噴射ノズル15Edを具備している。高圧ジェット水流噴射ノズル15Edから高圧ジェット水流を噴射させると、堆積土砂Sが掘削されると同時に浮き上がり、水Wと一緒に吸引管13Eの開口部13Ebから吸引される。そのため、堆積土砂Sが相当に硬いか粘性の高いものであっても、排出処理することができる。浚渫装置1Eは、吸引管13Eの開口部13Ebの近傍に高圧ジェット水流噴射ノズル15Edが配置されているため、濁水を生じにくく、環境に影響を及ぼし難い。
【0084】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る浚渫装置の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。また、上述した各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0085】
浚渫装置1を水中に吊り下げるための設備は、図1に示した浚渫用台船2に設置された吊り下げ架台3に設けられた電動チェーンブロック31に限定されない。例えば、組立式クレーン台船上に積込みクレーンを設置し、この積み込みクレーンにより浚渫装置1を水中に降下させたり、上昇させたりする構成としてもよい。
【符号の説明】
【0086】
S 堆積土砂
S1 沈木(障害物)
1,1A,1B,1C,1D,1E 浚渫装置
10 ケーシング
10m スカート部
10p 吸引管接合部
11 水中サンドポンプ(水中ポンプ)
11C ジェットリフトポンプ(水中ポンプ)
11D エアーリフトポンプ(水中ポンプ)
13,13B,13E 吸引管
13a,13Ba,13Ea 先端部
13b,13Bb,13Eb 開口部
15c,15Ac,15Bc,15Ec 高圧ジェット水流分配ダクト
15d,15Ad,15Bd,15Ed 高圧ジェット水流噴射ノズル
16 振動装置(補助装置)
16E 回転装置(補助装置)
17 振動吸収管