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特開2022-41390電力管理装置および複数の発電設備の発電量予測管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041390
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】電力管理装置および複数の発電設備の発電量予測管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20220304BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220304BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220304BHJP
   H02S 10/12 20140101ALI20220304BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J3/38 120
H02J3/00 170
H02S10/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146551
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000180313
【氏名又は名称】四国計測工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 克樹
(72)【発明者】
【氏名】平尾 成良
(72)【発明者】
【氏名】松野 昭弘
【テーマコード(参考)】
5F151
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5F151KA02
5G064AA04
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA02
5G066AA03
5G066AE05
5G066AE09
5G066HB06
(57)【要約】
【課題】発電設備の発電量を高い精度で予測することができる電力管理装置および複数の発電設備の発電量予測管理方法を提供する。
【解決手段】管理対象領域内の各エリアの気象情報を取得する気象情報取得手段10と、各エリアに設置された複数の発電設備2の設備情報を取得する設備情報取得手段10と、各エリアの気象情報と、各エリアに設置された複数の発電設備2の設備情報とに基づいて、各エリアの代表地点を設定する代表地点設定手段10と、各エリアの気象情報と、各エリアに設置された複数の発電設備2の設備情報とに基づいて、各エリアにおける発電設備2の単位設備容量あたりの発電量を、各エリアの発電比率として算出する発電比率算出手段10と、予測対象である対象発電設備2tの設置地点と、対象発電設備2tの周辺の複数のエリアの代表地点および発電比率とに基づいて、対象発電設備2tの発電量を予測する予測手段10と、を有する電力管理装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象領域内の各エリアの気象情報を取得する気象情報取得手段と、
各エリアに設置された複数の発電設備の設備情報を取得する設備情報取得手段と、
前記各エリアの気象情報と、前記各エリアに設置された複数の発電設備の設備情報とに基づいて、各エリアの代表地点を設定する代表地点設定手段と、
前記各エリアの気象情報と、前記各エリアに設置された複数の発電設備の設備情報とに基づいて、各エリアにおける発電設備の単位設備容量あたりの発電量を、各エリアの発電比率として算出する発電比率算出手段と、
予測対象である対象発電設備の設置地点と、前記対象発電設備の周辺の複数の前記エリアの代表地点および発電比率とに基づいて、前記対象発電設備の発電量を予測する予測手段と、を有する電力管理装置。
【請求項2】
前記エリアの気象情報は、気象条件に基づいて予測されたエリア当たりの発電量の情報を含み、
前記発電比率算出手段は、前記エリア当たりの発電量を、当該エリアに設置された複数の発電設備の設備容量の合計値で除算した値を、前記エリアの発電比率として算出する、請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項3】
前記代表地点設定手段は、各エリア内に設置された各発電設備の設置地点における当該発電設備の設備容量を重みとして、各エリアの重心地点を算出し、算出した前記各エリアの重心地点を前記各エリアの代表地点として設定する、請求項1または2に記載の電力管理装置。
【請求項4】
前記予測手段は、前記対象発電設備から最も近い3つの前記エリアの重心地点および発電比率と、前記対象発電設備の設置地点とに基づいて、前記対象発電設備の発電量を予測する、請求項3に記載の電力管理装置。
【請求項5】
前記予測手段は、前記3つのエリアの重心地点の緯度・経度および発電比率をそれぞれx座標、y座標、z座標とした座標空間において、前記3つのエリアのxyz座標を通過する平面を算出し、前記座標空間において前記対象発電設備の設置地点の緯度・経度をx座標、y座標とした場合の当該xy座標における前記平面上のz座標の値を、前記対象発電設備の発電比率として算出し、前記対象発電設備の発電比率と設備容量とを乗じた発電量を、前記対象発電設備の発電量として予測する、請求項4に記載の電力管理装置。
【請求項6】
前記代表地点設定手段は、前記エリアに大規模発電設備が存在する場合に、当該大規模発電設備を除いた発電設備の設備情報に基づいて、前記エリアの代表地点を設定し、
前記発電比率算出手段は、前記エリアに大規模発電設備が存在する場合に、当該大規模発電設備を除いた発電設備の設備情報に基づいて、前記エリアの発電比率を算出する、請求項1ないし5のいずれかに記載の電力管理装置。
【請求項7】
管理対象領域内の各エリアの気象情報と、当該エリアに設置された複数の発電設備の設備情報とに基づいて、各エリアの代表地点を設定するとともに、各エリアにおける発電設備の単位設備容量あたりの発電量を各エリアの発電比率として算出し、
予測対象である対象発電設備の設置地点と、前記対象発電設備の周辺の複数の前記エリアの代表地点および発電比率とに基づいて、前記対象発電設備の発電量を予測する、複数の発電設備の発電量予測管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電設備や風力発電設備などの再生可能エネルギーの発電設備が複数接続された電力系統において、これら発電設備を管理する電力管理装置および多数の発電設備の発電量予測管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電設備や風力発電設備などの再生可能エネルギー発電設備が増加し、これら発電設備による発電量が増大している。気候が温暖な春・秋においては冷暖房機器に電力を使用しないために電力の需要量は低下する傾向にあり、再生可能エネルギー発電設備による発電量が増大することで、電力の供給量が需要量を超えてしまう場合がある。従来、このような場合に、火力発電設備の出力制御や、揚水発電設備の揚水への電力の使用、連系線の活用などにより、管理エリアにおける電力供給量を抑制することで、電力の需要と供給とのバランスをとることが行われていた。しかしながら、近年の再生可能エネルギー発電設備による発電量の増加により、火力発電設備による出力制御や、揚水発電設備の揚水への電力の使用、連系線の活用だけでは、電力の供給量が需要量を大きく超えてしまう場合があり、需要と供給のバランスが大きく崩れ、発電設備の自動停止や系統事故による系統分離、負荷脱落などに起因して、大規模停電の可能性が高まってきた。そのため、再生可能エネルギー発電設備の発電量を高い精度で予測し、各再生可能エネルギー発電設備における出力制御を適切に実行するニーズが高まってきている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、一定の地域をメッシュ状に区画分けし、区画ごとの風速や日射量を予測し、予測した区画ごとの風速や日射量に基づいて、各区画における発電設備の発電量を予測する技術が知られている。また、特許文献2では、観測点網において取得している風速や日照量などの観測データを用いて、観測地点以外の任意の対象地点における、観測データの補間値を、主成分分析により推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-239488号公報
【特許文献2】特許第4908972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、区画A内に設置されている発電設備であっても、区画Aと、当該区画Aに隣接する区画Bとの境界線近くに設置された発電設備の発電量を予測する場合、当該発電設備の実際の風速や日射量は、区画Aの平均的な風速や日射量と、区画Bの平均的な風速や日射量との中間値に近くなるものと考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の発明では、エリア内における発電設備の位置までは加味されず、発電設備が設置された区画Aの平均的な風速や日射量に応じて各発電設備の発電量が予測されるため、発電設備の発電量について高い予測精度が得られないという問題があった。また、特許文献2に記載の発明では、計測地点における風速や日射量などの観測データを、当該計測地点から発電設備までの距離に基づいて補間することで、各発電設備の位置における風速や日射量などを予測しているが、区画ごとの風速や日照量などを用いるものではないため、区画単位の風速や日照量などの観測データを外部システムから取得する電力管理装置においては、当該区画内に設置された各発電設備の発電量を高い精度で予測することはできないという問題があった。
【0006】
本発明は、契約条件、出力制御実績などの様々な条件を考慮して、多数の発電設備の出力制御を管理する電力管理装置において、外部システムから取得したエリア単位の出力予測値(発電量)と、各発電設備の設置地点(緯度・経度)および設備容量(定格出力容量あるいは最大発電出力)とを加味して、各発電設備の発電量を高い精度で予測することができる電力管理装置および複数の発電設備の発電量予測管理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電力管理装置は、管理対象領域内の各エリアの気象情報を取得する気象情報取得手段と、各エリアに設置された複数の発電設備の設備情報を取得する設備情報取得手段と、前記各エリアの気象情報と、前記各エリアに設置された複数の発電設備の設備情報とに基づいて、各エリアの代表地点を設定する代表地点設定手段と、前記各エリアの気象情報と、前記各エリアに設置された複数の発電設備の設備情報とに基づいて、各エリアにおける発電設備の単位設備容量あたりの発電量を、各エリアの発電比率として算出する発電比率算出手段と、予測対象である対象発電設備の設置地点と、前記対象発電設備の周辺の複数の前記エリアの代表地点および発電比率とに基づいて、前記対象発電設備の発電量を予測する予測手段と、を有する。
上記電力管理装置において、前記エリアの気象情報は、気象条件に基づいて予測されたエリア当たりの発電量の情報を含み、前記発電比率算出手段は、前記エリア当たりの発電量を、当該エリアに設置された複数の発電設備の設備容量の合計値で除算した値を、前記エリアの発電比率として算出するように構成することができる。
上記電力管理装置において、前記代表地点設定手段は、各エリア内に設置された各発電設備の設置地点における当該発電設備の設備容量を重みとして、各エリアの重心地点を算出し、算出した前記各エリアの重心地点を前記各エリアの代表地点として設定するように構成することができる。
上記電力管理装置において、前記予測手段は、前記対象発電設備から最も近い3つの前記エリアの重心地点および発電比率と、前記対象発電設備の設置地点とに基づいて、前記対象発電設備の発電量を予測するように構成することができる。
上記電力管理装置において、前記予測手段は、前記3つのエリアの重心地点の緯度・経度および発電比率をそれぞれx座標、y座標、z座標とした座標空間において、前記3つのエリアのxyz座標を通過する平面を算出し、前記座標空間において前記対象発電設備の設置地点の緯度・経度をx座標、y座標とした場合の当該xy座標における前記平面上のz座標の値を、前記対象発電設備の発電比率として算出し、前記対象発電設備の発電比率と設備容量とを乗じた発電量を、前記対象発電設備の発電量として予測するように構成することができる。
上記電力管理装置において、前記代表地点設定手段は、前記エリアに大規模発電設備が存在する場合に、当該大規模発電設備を除いた発電設備の設備情報に基づいて、前記エリアの代表地点を設定し、前記発電比率算出手段は、前記エリアに大規模発電設備が存在する場合に、当該大規模発電設備を除いた発電設備の設備情報に基づいて、前記エリアの発電比率を算出するように構成することができる。
【0008】
本発明に係る複数の発電設備の発電量予測管理方法は、管理対象領域内の各エリアの気象情報と、当該エリアに設置された複数の発電設備の設備情報とに基づいて、各エリアの代表地点を設定するとともに、各エリアにおける発電設備の単位設備容量あたりの発電量を各エリアの発電比率として算出し、予測対象である対象発電設備の設置地点と、前記対象発電設備周辺の複数の前記エリアの代表地点および発電比率とに基づいて、前記対象発電設備の発電量を予測する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外部システムが、多数の発電設備の発電量を予測し、エリア単位などのグループを代表する数値に縮約し、当該外部システムと電力管理装置との間で情報連係する場合においても、外部システムが予測したエリア単位の発電量を、各発電設備の設置地点(緯度・経度)、設備容量などを加味して、各発電設備の発電量として多数の因子に高い精度で分解することができるため、制御目的に応じて、多数の各発電設備の発電量を再結合、再グループ化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る電力管理装置の構成図である。
図2】電力管理装置が管理する管理対象領域と、管理対象領域内の各エリアを説明するための図である。
図3】エリア内に設置された複数の発電設備の一例を示す図である。
図4】従来の発電設備の発電量の予測方法を説明するための図である。
図5】各エリアの代表地点と対象発電設備の設置地点の一例を示す図である。
図6】本実施形態に係る対象発電設備の発電比率の算出方法を説明するための図である。
図7】本実施形態に係る発電設備の発電量の予測方法を説明するための図である。
図8】本実施形態に係る発電設備の発電量予測処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る電力管理装置1の構成図である。本実施形態に係る電力管理装置1は、図1に示すように、複数の発電設備2,2~2と通信可能であり、発電設備2,2~2に出力制御の実施を要求するための出力制御情報を送信する。なお、以下においては、複数の発電設備2,2~2を総称して発電設備2とも呼ぶ。本実施形態において、発電設備2として、太陽光発電設備や風力発電設備などの再生可能エネルギー発電設備を例示して説明するが、発電設備2は再生可能エネルギー発電設備に限定されず、火力発電や水力発電などを含んでもよい。
【0012】
本実施形態に係る電力管理装置1は、図1に示すように、処理装置10と、記憶装置20と、通信装置30とを備える。以下に、電力管理装置1の各構成について説明する。
【0013】
通信装置30は、インターネット回線または専用通信回線などの電気通信回線を介して、遠隔地にある各発電設備2と通信を行い、各発電設備2に出力制御情報を送信する。本実施形態では、後述するように、処理装置10が、発電設備2に出力制御の実施を要求するための出力制御情報を生成し、通信装置30は、処理装置10により生成された出力制御情報を各発電設備2に送信する。
【0014】
また、通信装置30は、気象台などに設置された外部サーバと電気通信回線を介して通信可能であり、外部サーバから、電力管理装置1の管理対象領域における気象情報を取得する。具体的には、外部サーバは、予め定めたエリア(区画)ごとの気象情報を予測し、エリアごとの気象情報を電力管理装置1に提供するサーバであり、電力管理装置1は、電力管理装置1の管理対象領域と重複する複数のエリアの気象情報を、外部サーバから定期的に受信する。また、本実施形態において、外部サーバは、エリアごとの気象条件(雨、曇り、晴れなどの天候、日射量、風速のいずれかを含む)に基づいて、エリアごとの発電量を予測し、当該エリアごとの発電量を含む情報を、エリアごとの気象情報として、電力管理装置1に提供する。なお、図2は、電力管理装置1の管理対象領域と、管理対象領域内の各エリアを説明するための図である。また、管理対象領域は、電力管理装置1が管理する発電設備2が設置された領域を全てカバーする領域であり、たとえば近隣する複数の都道府県を含む領域とすることができる。エリアは、外部サーバが予め決めた大きさの区画・地域であり、たとえば数km四方から数百km四方の正方形の領域とすることができる。
【0015】
なお、本実施形態に係る電力管理装置1では、管理対象領域に存在する複数の発電設備2を複数のグループに分け、グループごとに出力制御を行う。当該グループは、上記エリアとは関係なく、需給バランスを維持し周波数を安定化させるとの観点から決定され、たとえば発電機周波数特性が約8%MW/Hz、負荷周波数特性が約2%MW/Hz、周波数偏差を0.5Hzとした場合に、管理対象領域の4%程度の制御規模ごとにグループ化される。本実施形態では、後述するようにエリア単位で得られる電力量を当該エリアに設置された複数の発電設備2に適切に配分して各発電設備2の発電量を予測することで、各グループにおける発電量を適切に把握することができ、グループごとの出力制御を適切に行うことを目的とする。
【0016】
記憶装置20は、各発電設備2の設備情報を記憶している。具体的には、記憶装置20は、各発電設備2の設置地点(緯度・経度)、設備容量、および種別情報を記憶している。発電設備2の種別情報とは、発電設備2が大規模発電設備であるか否かの種別を含む。なお、大規模発電設備とは、管理対象領域の系統容量規模からみて、発電機周波数特性、負荷周波数特性に基づく周波数制御目標分解能から最適化され、制御する束、いわゆるグループ化の単位規模が設計されて、数万kW以上となる。なお、管理対象領域が更に大きい場合は、数十万kWであっても良い。
【0017】
処理装置10は、各発電設備2の発電量を予測し、予測した各発電設備2の発電量に基づいて、各発電設備2に出力制御を要求する出力制御情報を生成することで、各発電設備2の出力制御を管理する。また、本実施形態に係る電力管理装置1では、各発電設備2の設置地点(緯度・経度)まで考慮し、各発電設備2の発電量を予測することを特徴としており、これにより、各発電設備2の発電量の予測精度を高めることができる。
【0018】
ここで、図3は、エリア内に設置された複数の発電設備2の一例を示す図である。電力管理装置1が管理する管理対象領域には、複数の発電設備2が設置されており、図3に示すように、エリアAごとに複数の発電設備2が設置されている。たとえば、図3に示す例では、1つのエリアA2において24個の発電設備2が設置されている。従来の発電設備2の発電量の予測方法では、エリアA当たりの発電量を、当該エリアAに存在する発電設備2の設備容量で按分した発電量を、各発電設備2の発電量として予測していた。そのため、従来では、図4(A),(B)に示すように、各発電設備2の発電量の予測値(図4(B))が、各発電設備2の設備容量(図4(A))に比例した値となり、以下に説明するように、エリアA内における各発電設備2の設置地点(緯度・経度)の違いによる気象条件の違いが、各発電設備2の発電量に反映されず、発電量を高い精度で予測できないという問題があった。
【0019】
すなわち、たとえば図3に示すように、同じエリアAでも曇りの領域と晴れの領域に分かれている場合、予測対象の対象発電設備2tは、曇りの領域に位置するか、晴れの領域に位置するかで、その発電量が変動することが予想されるが、従来の発電方法では、エリア単位の気象情報に基づくエリア単位の発電量を、エリア内に設置された各発電設備2の設備容量で按分した値であるため、エリアA内における各発電設備2の設置地点(緯度・経度)の違いによる気象条件の違い(曇りの領域に位置するか、晴れの領域に位置するかなど)が、各発電設備2の発電量に反映されなかった。また、図5に示す例において、対象発電設備2tは、エリアA2内に設置されているが、エリアA2とエリアA4との境界線近くに位置するため、対象発電設備2tの実際の日射量および風速は、エリアA2の日射量および風速と、エリアA4の日射量および風速のそれぞれ中間程度の値となると考えられる。しかしながら、従来の発電量の予測方法では、エリアA2の平均的な日射量や風速に基づいて、対象発電設備2tの発電量が予測されるため、エリアA内における各発電設備2の設置地点(緯度・経度)の違いによる気象条件の違いが各発電設備2の発電量に反映されず、発電設備2の発電量を高い予測精度で予測できなかった。
【0020】
これに対して、本実施形態では、後述するように、エリア内における対象発電設備2tの設置地点(緯度・経度)まで考慮して、対象発電設備2tの発電量を予測することで(たとえば、図5に示す対象発電設備2tであれば、エリアA2とエリアA4との境界線近くの位置に応じて対象発電設備2tの発電量を予測することで)、対象発電設備2tの発電量を、対象発電設備2tの設置地点の気象条件を考慮した、より高い精度で予測することができる。
【0021】
このように、本実施形態に係る処理装置10は、エリア内の各発電設備2の設置地点(緯度・経度)まで加味して各発電設備2の発電量を予測するために、各エリアの気象情報を取得する気象情報取得機能と、各発電設備2の設備情報を取得する設備情報取得機能と、各エリアの代表地点を設定する代表地点設定機能と、各エリアの発電比率を算出する発電比率算出機能と、対象発電設備2tの発電量を予測する発電量予測機能とを有する。以下に、処理装置10が備える各機能について説明する。
【0022】
処理装置10の気象情報取得機能は、気象条件などから予測演算する外部サーバから、電力管理装置1の管理対象領域内における各エリアの気象情報を取得する。上述したように、外部サーバは、電力管理装置1の管理対象領域内のエリアごとの気象情報を提供しており、気象情報取得機能は、通信装置30を介して、各エリアの気象情報を外部サーバから取得する。また、上述したように、外部サーバは、各エリアにおける気象条件(曇り、雨、晴れなどの天気や気候、日射量や風速など)に基づいて、エリアごとの発電量を予測し、エリアごとの発電量を気象情報として電力管理装置1に提供している。そのため、電力管理装置からみると、気象情報は、気象条件が反映されたエリア当たりの発電量として、外部サーバから取得されることとなる。また、外部サーバから取得する気象情報は、エリアごとの気象条件(曇り、雨、晴れなどの天気や気候、日射量や風速など)を含む構成とすることもできる。なお、本実施形態において、外部サーバは、エリア当たりの発電量を気象情報として提供する場合に、大規模発電設備を除いたエリア当たりの発電量を予測し、大規模発電設備を除いたエリア当たりの発電量を電力管理装置1に提供する。
【0023】
設備情報取得機能は、記憶装置20に記憶された各発電設備2の設備情報を取得する。本実施形態において、設備情報取得機能は、発電設備2の設置地点(緯度・経度)、設備容量および種別情報を含む情報を、発電設備2の設備情報として、記憶装置20から取得する。
【0024】
代表地点設定機能は、設備情報取得機能により取得された各発電設備2の設置地点(緯度・経度)および設備容量の情報に基づいて、エリアごとに、各発電設備2の設置地点における各発電設備2の設備容量を重みとした、各エリアの重心地点を、各エリアの代表地点として算出する。たとえば、エリアに発電設備2~2のm個の発電設備2が設置されており、各発電設備2~2の緯度をX~X、経度をY~Y、設備容量をG~Gとした場合に、代表地点設定機能は、下記式1に示すように、当該エリアの重心地点を、当該エリアの代表地点として算出することができる。
【数1】
なお、代表地点設定機能によりエリアの重心地点を算出する場合、メガソーラー発電所などの大規模な発電設備2については、エリアの重心地点の算出から除外することが好ましい。
【0025】
発電比率算出機能は、気象情報取得機能により取得されたエリアごとの発電量と、設備情報取得機能により取得された各エリアの発電設備2の設備容量の合計値とに基づいて、各エリアにおける発電設備2の単位設備容量当たりの発電量を、当該エリアの発電比率として算出する。具体的には、発電比率算出機能は、下記式2に示すように、各エリア当たりの発電量を、各エリアの発電設備2の発電容量の合計値で除算した値を、当該エリアの発電比率として算出する。
【数2】
なお、発電比率算出機能によりエリアの発電比率を算出する場合も、メガソーラー発電所などの大規模な発電設備2については、エリアの発電比率の算出対象から除外することが好ましい。
【0026】
発電量予測機能は、代表地点設定機能により設定された各エリアの代表地点と、発電比率算出機能により算出された各エリアの発電比率と、設備情報取得機能により取得した各発電設備2の設置地点とに基づいて、対象発電設備2tの発電量を予測する。具体的には、発電量予測機能は、まず、対象発電設備2tの周辺のエリアAの代表地点ACのうち、対象発電設備2tから最も近い3つのエリアAの代表地点ACを抽出する。たとえば、図5に示す例において、発電量予測機能は、対象発電設備2tの周辺のエリアA1~A4の代表地点AC1~A4のうち、対象発電設備2tに最も近い3つのエリアA1,A2,A4の代表地点AC1,AC2,AC4を抽出する。
【0027】
そして、発電量予測機能は、図6に示すように、抽出した3つのエリアAの代表地点AC(緯度・経度)および発電比率をそれぞれx座標,y座標,z座標とした座標空間において、3つの各エリアAのxyz座標を通過する平面Pを算出する。たとえば、図6に示す例において、発電量予測機能は、3つのエリアA1,A2,A4の代表地点AC1,AC2,AC4の緯度・経度およびエリア発電比率をそれぞれxyz座標とした、3つのxyz座標(x1,y1,z1)、(x2,y2,z2)、(x4,y4,z4)を通過する平面Pを算出する。なお、図6は、本実施形態に係る対象発電設備2tの発電比率を算出する方法を説明するための図である。また、平面Pの算出方法は、公知の方法を用いることができる。
【0028】
さらに、発電量予測機能は、上記座標空間において、対象発電設備2tの設置地点の緯度・経度をx座標、y座標とした場合の当該xy座標における平面P上のz座標の値を、対象発電設備2tの発電比率として算出する。たとえば、図6に示す例において、発電量予測機能は、平面Pを算出した座標空間において、対象発電設備2tの設置地点の緯度・経度をx座標(xt)、y座標(yt)とした場合、このxy座標(xt,yt)における平面P上のz座標(zt)の値を、対象発電設備2tの発電比率として算出することができる。なお、対象発電設備2tの設置地点が、図5に示すように、当該対象発電設備2tから最も近い3つのエリアの代表地点を結んだ三角形の範囲内に入らない場合もある。そのような場合でも、平面Pは無限の広さを有するものとして扱うことで、このような対象発電設備2tのP平面上のz座標を算出することができ、対象発電設備2tの発電比率を算出することができる。そして、発電量予測機能は、算出した対象発電設備2tの発電比率と、対象発電設備2tの設備容量とを乗じた値を、対象発電設備2tの発電量として予測する。
【0029】
このように、本実施形態では、エリア単位の気象情報に基づいて対象発電設備2tの発電量を予測するのではなく、対象発電設備2tの設置地点に基づいて、対象発電設備2tの発電比率を求め、対象発電設備2tの発電量を予測することで、対象発電設備2tの設置地点(緯度・経度)に応じた発電量を高い精度で予測することができる。ここで、図7(A)は、図4(B)と同様に、従来の発電設備により予測した各発電設備の発電量を示す図であり、図7(B)は、本実施形態に係る発電設備により予測した各発電設備の発電量を示す図である。従来の発電設備2の発電量の予測方法では、エリア単位の気象情報に基づくエリア単位の発電量を各発電設備2の設備容量で按分した値を各発電設備2の発電量として予測するため、図4(A),(B)および図7(A)に示すように、各発電設備2の発電量は、各発電設備2の設備容量に比例した値となる。これに対して、本実施形態に係る発電設備2の発電量の予測方法では、上述したように、対象発電設備2tの設置地点(緯度・経度)まで考慮して発電量が予測される。そのため、たとえば図3に示すように、同じエリアA内において曇りの領域と晴れの領域とが分かれている場合、図7(B)に示すように、曇りの領域に位置する発電設備2qの発電量は従来の予測方法で予測した発電量よりも小さな値で予測することができ、また晴れの領域に位置する発電設備2pの発電量は従来の予測方法で予測した発電量よりも大きな値で予測することができる。また、エリアの境界線近くに設置された発電設備2についても、各エリアの代表地点からの距離に応じた発電比率で発電量が予測されるため、従来の予測方法で予測した発電量よりも高い精度の発電量を予測することができる。
【0030】
次に、本実施形態に係る発電量予測処理について説明する。図8は、本実施形態に係る発電量予測処理を示すフローチャートである。なお、図8に示す発電量予測処理は、たとえば、所定時間(たとえば24時間)ごとに、処理装置10により繰り返し実行される。
【0031】
まず、ステップS101では、気象情報取得機能により、気象条件などから予測演算する外部サーバから、エリアごとの発電量(出力予測値)の取得が行われる。また、ステップS102では、設備情報取得機能により、記憶装置20が参照され、各発電設備2の設置地点(緯度・経度)、設備容量および設備種別を含む設備情報の取得が行われる。
【0032】
ステップS103では、代表地点設定機能により、ステップS102で取得した設備情報に含まれる、発電設備2の設置地点および設備容量の情報に基づいて、各発電設備2の設置地点における各発電設備2の設備容量を重みとした、各エリアの重心地点(緯度・経度)が、各エリアの代表地点として算出され、設定される。なお、エリアの重心地点は、エリア内の発電設備の新設や撤去、あるいはエリア内の発電設備の発電容量の変更がない場合、変動しないため、ステップS103の処理は、エリアの重心地点が変更される事象が生じた場合のみ実施する構成とすることができる。
【0033】
ステップS104では、発電比率算出機能に基づいて、ステップS101で取得した各エリアでの発電量と、ステップS102で取得した各エリアにおける各発電設備の設備情報とに基づいて、各エリアの発電比率の算出が行われる。具体的には、発電比率算出機能は、上記式2に示すように、エリア当たりの発電量の予測値を、当該エリアにおける発電設備2の設備容量の合計値で除算することで、エリアごとの発電比率を算出することができる。
【0034】
ステップS105では、発電比率算出機能により、ステップS104で算出したエリアごとの発電比率と、ステップS103で取得した各エリアの代表地点との紐付けが行われる。そして、ステップS106では、発電比率算出機能により、ステップS105で紐付けられた各エリアの代表地点および発電比率と、ステップS102で取得した対象発電設備2tの設置地点とに基づいて、対象発電設備2tの発電比率を算出する処理が行われる。具体的には、発電比率算出機能は、まず、対象発電設備2tから最も近い3つのエリアの代表地点を抽出する。そして、発電比率算出機能は、抽出した3つのエリアの代表地点の緯度・経度および発電比率をそれぞれx座標、y座標、z座標とした座標空間において、これら3つのエリアのxyz座標が面上に位置する平面Pを算出する。そして、発電比率算出手段は、上記座標空間において、対象発電設備2tの緯度・経度をx座標、y座標とした場合に、当該xy座標における平面P上となるz座標を、対象発電設備2tの発電比率として算出する。
【0035】
ステップS107では、発電量測定機能により、ステップS106で算出された対象発電設備2tの発電比率と、ステップS102で取得した対象発電設備2tの設備情報に含まれる、対象発電設備2tの設備容量とを乗じた値が、対象発電設備2tの発電量として算出される。さらに、ステップS108では、発電量測定装置により、全ての発電設備2の発電量の予測が行われたか判断される。全ての発電設備2の発電量が予測されていない場合には、ステップS106に戻り、発電量が予測されてない発電設備2を対象発電設備2tに設定し、ステップS106,S107が繰り返される。そして、全ての発電設備2の発電量を予測した場合に、図8の発電設備発電量予測処理が終了する。なお、本実施形態においては、全ての発電設備2の発電量を予測する構成を例示したが、たとえば、予め定めた一定数の発電設備2の発電量のみを予測する構成とすることもできる。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る電力管理装置1においては、管理対象領域内の各エリアの気象情報と、各エリアに設置された複数の発電設備2の設備情報とに基づいて、各エリアの代表地点(緯度・経度)を設定するとともに、各エリアにおける発電設備2の単位設備容量あたりの発電量を各エリアの発電比率として算出することで、対象発電設備2tの設置地点(緯度・経度)と、対象発電設備2tの周辺の複数のエリアの代表地点および発電比率とに基づいて、対象発電設備2tの発電量を予測する。これにより、本実施形態では、各エリアの代表地点と対象発電設備2tの設置地点との位置関係に基づいて、対象発電設備2tの発電量を予測することができるため、対象発電設備2tの発電量をより高い精度で予測することができる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
たとえば、上述した実施形態では、処理装置10が、気象条件などから予測演算する外部サーバから、エリアごとの気象条件に基づくエリアごとの発電量を、各エリアの気象情報として取得する構成を例示したが、この構成に限定されず、気象条件などから予測演算する外部サーバから、エリアごとの気象条件を取得し、処理装置10において、取得したエリアごとの気象条件に基づいて、エリアごとの発電量を予測する構成とすることができる。この場合、処理装置10は、エリアごとの気象条件(曇り、雨、晴れなどの天気や気候、日射量や風速など)に、各エリアに設定された各発電設備2の設備容量の情報を加味して、エリアごとの発電量を予測することで、エリアごとの発電量をより高い精度で予測することができる。
【0039】
また、上述した実施形態では、各エリア内に設置された各発電設備2の設置地点における各発電設備2の設備容量を重みとした各エリアの重心地点を、各エリアの代表地点として設定する構成を例示したが、この構成に限定されず、各エリア内の特定の地点(たとえばエリアの中心地点)を、各エリアの代表地点として設定する構成としてもよい。また、上述した実施形態では、各エリアの代表地点および各発電設備2の設置地点を緯度・経度で表しているが、各エリアの代表地点および各発電設備2の設置地点は、緯度・経度に限定されず、独自の地点情報を用いることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1…電力管理装置
10…処理装置
20…記憶装置
30…通信装置
2…発電設備
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8