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  • 特開-杭頭の連結構造及び連結方法 図1
  • 特開-杭頭の連結構造及び連結方法 図2
  • 特開-杭頭の連結構造及び連結方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041415
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】杭頭の連結構造及び連結方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20220304BHJP
   E02D 5/28 20060101ALI20220304BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20220304BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E02D5/28
E04B1/24 R
E04B1/58 503H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146592
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】513062984
【氏名又は名称】株式会社東部
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 郁男
【テーマコード(参考)】
2D041
2D046
2E125
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041CB06
2D041DB02
2D046AA14
2D046CA01
2E125AA04
2E125AA45
2E125AB16
2E125AB17
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG43
2E125AG56
2E125AG57
2E125BB02
2E125BB19
2E125BB22
2E125BB25
2E125BB31
2E125BB32
2E125BD01
2E125BE04
2E125BE08
2E125BF06
2E125BF08
2E125CA03
2E125CA13
2E125CA90
2E125EA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な方法で効率的に鋼管杭と建築物の柱脚とを直接連結する杭頭の連結構造及び連結方法を提供する。
【解決手段】建築物の柱脚ベースプレート2に対応する位置において硬質地盤に到達する鋼管杭3と、切り込み40を有する環状に形成され、鋼管杭3の杭頭近傍に水平となるように溶接された外スリーブ4と、外スリーブ4上に載置され、鋼管杭3よりも大きい内径を有する貫通孔が形成され、該貫通孔の周辺に逆開先51が形成され、柱脚ベースプレート2とともに貫通される複数のボルト孔7が形成され、前記柱脚ベースプレート2とボルトによって固定される杭頭ベースプレート5とによって構成される連結構造及び連結方法である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の柱脚ベースプレートに対応する位置において硬質地盤に到達する鋼管杭と、
切り込みを有する環状に形成され、該鋼管杭の杭頭近傍に水平となるように溶接された外スリーブと、
該外スリーブ上に載置され、前記鋼管杭よりも大きい内径を有する貫通孔が形成され、該貫通孔の周辺に逆開先が形成され、前記柱脚ベースプレートとともに貫通される複数のボルト孔が形成され、前記柱脚ベースプレートとボルトによって固定される杭頭ベースプレートとによって構成されることを特徴とする杭頭の連結構造。
【請求項2】
建築物の柱脚ベースプレートに対応する位置において、硬質地盤に到達するまで鋼管杭を貫入し、
前記埋設された鋼管杭の杭頭部近傍に、切り込みを有する外スリーブを水平となるようにタック溶接し、
中央に鋼管杭の径よりも所定値大きい内径を有する貫通孔が形成され、該貫通孔の周辺には逆開先が形成される杭頭ベースプレートを、前記外スリーブ上に載置すると共に、前記前記鋼管杭と前記貫通孔周縁とを全周開先溶接し、
前記杭頭ベースプレートと前記柱脚ベースプレートを当接させた後、必要箇所にボルト止め用の穴を貫通させ、前記杭頭ベースプレートと前記柱脚ベースプレートをボルト止めすることを特徴とする杭頭の連結方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質地盤まで貫入された鋼管杭の杭頭と例えば建築物の柱側のベースプレートとを直接連結するための鋼管杭の杭頭の連結構造及び連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2005-48512号公報)は、鋼管杭側の杭頭ベースプレートと柱側のベースプレートとがボルトでジョイントされた鋼管杭と柱のボルト連結機構における、鋼管杭への杭頭ベースプレートの取付構造であって、鋼管杭の杭頭外周部に上方突出状態となるように通され、その通孔周囲部がサブプレートの上面側において鋼管杭の杭頭外周部に溶接され、杭頭ベースプレートには鋼管杭の杭頭外周サイズよりも大きいサイズの通孔が設けられ、該杭頭ベースプレートが、そのボルト孔を柱側ベースプレートのボルト孔と一致させるように、その通孔に杭頭余長部を突出させてサブプレート上に重ねられ、その通孔周囲部がサブプレートの上面部に溶接されている鋼管杭への杭頭ベースプレートの取付構造を開示する。
【0003】
特許文献2(特開2006-336414号公報)は、溶接作業や杭頭切断面の平滑化作業が不要であり、鋼管杭の傾きや芯ずれを容易に処理でき、且つ、杭頭の水平レベルを調整できる杭頭キャップ、鋼管杭の杭頭構造、建築物の構造、及び鋼管杭の杭頭処理方法を提供するもので、本鋼管杭の杭頭構造は、地盤に打ち込まれた鋼管杭の杭頭の内部に内蓋が設置され、鋼管杭の杭頭を覆い、その杭頭より大形で、グラウト材が注入される注入孔が穿設され、鋼管杭の杭径より若干大きい内径を有する円筒部を具備する杭頭キャップが鋼管杭の杭頭に嵌装され、杭頭キャップの円筒部の下端と鋼管杭外周面との隙間をふさぐようにシール材が設けられ、注入孔から注入されたグラウト材が鋼管杭の杭頭と杭頭キャップとの間に充填されたものである。
【0004】
特許文献3(特開2010-281081号公報)は、頭部に上部構造物取付部材を固着する鋼管杭の施工方法において、施工現場で鋼管杭に上部構造物取付部材を溶接する必要のない施工方法を提供するもので、事前にボルトの挿入孔を形成したプレートと鋼管杭を用意し、工場等において鋼管杭に上部構造物取付部材用のプレートを溶接して固着し、そのプレート付鋼管杭を施工現場に半有して地盤に埋設し、そのプレートと上部構造物の支柱を取り付けたプレートをボルトとナットによって結合するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-48512号公報
【特許文献2】特開2006-336414号公報
【特許文献3】特開2010-281081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される取付構造では、サブプレートを下方から受ける受けは、基本的に鋼管杭の杭頭外周部に溶接により固定され、鋼管杭の杭頭外周部とサブプレートは第1溶接部によって固定され、サブプレートと杭頭ベースプレートは、第2溶接部と第3溶接部によって固定される。このように、特許文献1に開示される取付構造では、受けの溶接を含めると4箇所の溶接が必要となる。
【0007】
また、特許文献3に開示される施工方法では、工場等において鋼管杭の頭部にプレートを溶接により固着してプレート付き鋼管杭を作製し、このプレート付き鋼管杭を回転させながら圧入あるいは打設するものである。この場合、堅い地盤までの深度は場所によって異なることから、鋼管杭を確実に固い地盤まで到達させるためには、事前に堅い地盤までの深度を計測し、それに対応する鋼管杭の長さを決定しておく必要があり、またプレートの水平を常に維持しながら作業を進めなければならないという難しさがある。
【0008】
さらに、特許文献2に開示される杭頭処理方法では、鋼管杭の傾きや芯ずれを容易に処理するために、杭頭キャップを設けるものであり、杭頭キャップ内にはエポキシ系樹脂やモルタル等の経時硬化性充填材が注入される。さらに杭頭キャップの下端部と鋼管杭との間には、経時硬化性充填材の漏れを防止するために、シール材によって閉塞されるが、このシール材はコーキング材やシーリング材、テープ等であることが開示される。この杭頭処理方法では、杭頭キャップと鋼管杭の間は、エポキシ系樹脂やモルタル等の経時硬化性充填材によって埋められているが、エポキシ系樹脂やモルタルは、建築物からの圧縮荷重には十分に耐えうる能力を有するが、引っ張り荷重に対しては大きな課題を生じる。
【0009】
このため、本発明は、建築物からの圧縮荷重及び引っ張り荷重にいずれにも十分な強度を有する鋼管杭と建築物の柱脚とを直接連結する杭頭の連結構造及び連結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る杭頭の連結構造は、建築物の柱脚ベースプレートに対応する位置において硬質地盤に到達する鋼管杭と、切り込みを有する環状に形成され、該鋼管杭の杭頭近傍に水平となるように溶接された外スリーブと、該外スリーブ上に載置され、前記鋼管杭よりも大きい内径を有する貫通孔が形成され、該貫通孔の周辺に逆開先が形成され、前記柱脚ベースプレートとともに貫通される複数のボルト孔が形成され、前記柱脚ベースプレートとボルトによって固定される杭頭ベースプレートとによって構成されることにある。
【0011】
また、本発明に係る杭頭の連結方法は、(1) 建築物の柱脚ベースプレートに対応する位置において、硬質地盤に到達するまで鋼管杭を貫入し、(2)前記埋設された鋼管杭の杭頭部近傍に、切り込みを有する外スリーブを水平となるようにタック溶接し、(3)中央に鋼管杭の径よりも所定値大きい内径を有する貫通孔が形成され、該貫通孔の周辺には逆開先が形成される杭頭ベースプレートを、前記外スリーブ上に載置すると共に、(4)前記前記鋼管杭と前記貫通孔周縁とを全周開先溶接し、(5)前記杭頭ベースプレートと前記柱脚ベースプレートを当接させた後、必要箇所にボルト止め用の穴を貫通させ、(6)前記杭頭ベースプレートと前記柱脚ベースプレートをボルト止めするものである。
【0012】
また、鋼管杭が許容範囲で傾斜している場合に、前記外スリーブを、地面に水平となるように鋼管杭にタック溶接し、鋼管杭の杭頭先端も水平に切断し、前記外スリーブに杭頭ベースプレートを載置し、該杭頭ベースプレートの貫通孔の逆開先と鋼管杭の間を全周溶接することによって杭頭ベースプレートを地面に水平に位置するように鋼管杭に固定することができるものである。これによって、鋼管杭の杭頭ベースプレートと柱脚ベースプレートとを全面接合させることが可能となるものである。
【発明の効果】
【0013】
以上の方法において、例えば鋼管杭が少し傾斜した場合には、鋼管杭の水平切断面は楕円形状となるが、外スリーブに切り込みが入っていることから、外スリーブの径や形状を変えることができるので、外スリーブを水平にすることでき、柱脚ベースプレートを保持する杭頭ベースプレートを水平に配置することができるものである。
【0014】
また、杭頭ベースプレートの上方に向けて拡径する逆開先と鋼管杭間を全周溶接することから、鋼管杭と杭頭ベースプレートの溶接を開先部分で行うことができるため、両者を強固に接合できるものである。また、これによって、外スリーブと鋼管杭との間のタック溶接、鋼管杭と杭頭ベースプレートの間の全周開先溶接の2回の溶接で杭頭ベースプレートと鋼管杭とを連結することができるという効果を有する。
【0015】
さらに、鋼管杭側の杭頭ベースプレートと建築物側の柱脚ベースプレートとを当接させた後、固定用のボルト孔を形成することから、両者のボルト穴の整合性をとる必要がないことから、作業が簡略化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る杭頭の連結構造を示す分解斜視図である。
図2】本発明に係る杭頭の連結方法を示す説明図である。
図3】本発明に係る杭頭の連結方法において、鋼管杭が斜めになった場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る杭頭の連結構造は、建築物の柱脚と地盤に埋設された鋼管杭とを直接連結するものである。以下、本発明の実施例について図面により説明する。
【実施例0018】
本発明に係る杭頭の連結構造1は、例えば図1に示すように、建築物の柱脚20に固定される柱脚ベースプレート2と、この柱脚ベースプレート2と対応する位置に硬質地盤に達するまで回転貫入される鋼管杭3と、該鋼管杭3に杭頭近傍に水平に固定される外スリーブ4と、該外スリーブ4上に載置され、前記柱脚ベースプレート2と接合固定される杭頭ベースプレート5とによって構成される。
【0019】
前記外スリーブ4は、鋼管杭3の径より若干大きめの内径を有する所定の幅の環状体であり、大きさや形状を変化させることを可能にするために、切り込み40が形成される。この外スリーブ4は、鋼管杭3の杭頭近傍、杭頭から杭頭ベースプレート5の幅に対応した寸法だけ下方において、前記柱脚ベースプレート2に対応して水平となるように、切り込み4の幅を調整してタック溶接により鋼管杭3の外周に固定されるものである。
【0020】
前記杭頭ベースプレート5は、鋼管杭3の外径よりも大きい内径、例えば鋼管杭の外径よりも3%前後大きい内径を有する貫通孔50を有し、この貫通孔50の内周縁には、下方に位置する前記内径から上方にかけて拡径するように逆開先51が形成される。
【0021】
以上の構成の鋼管杭の杭頭の連結構造は、下記する方法によって作製されるものである。
【0022】
通常、鋼管杭3は、図2(a)で示すように前記柱脚20に対応する場所に、硬質地盤に届くまで回転貫入される。尚、図中6は、地表面を示す。
【0023】
図2(b)では、回転貫入された鋼管杭3の杭頭部30近傍に外スリーブ4を水平となるように嵌め込み、タック溶接で固定する。尚、図2(b),(c),(d)において41で示すものは、タック溶接の溶接痕を示すものである。
【0024】
そして、図2(c)で示すように、前記外スリーブ4上に杭頭ベースプレート5が載置され、その貫通孔50の逆開先51と鋼管杭3との間が全周溶接され、固定される。図中51は全周溶接痕である。
【0025】
また、図3(a)に示すように、鋼管杭3が斜めに貫入された場合にも。外スリーブ4は水平となるように嵌め込まれ、タック溶接で固定される。この場合、外スリーブ4の切れ込み40は少し開かれることによって、傾斜した鋼管杭3に対応する。その後、杭頭部30は、水平となるように切断又は研磨されることが好ましい。
【0026】
図3(b)では、前記杭頭ベースプレート5が、外スリーブ4に載置されるので、杭頭ベースプレート5は、鋼管杭3に対して垂直ではなく、鉛直線に対して垂直となるように配置され、逆開先51と鋼管杭3との間が全周溶接され、固定される。この全周溶接の場合、逆開先51と鋼管杭3の隙間から漏れる溶接は、前記外スリーブ4によって受けられるので、この部分において鋼管杭3、逆開先51及び外スリーブ4が固定される。これによって、本発明に係る連結構造及び方法では、外スリーブ4と鋼管杭3のタック溶接、鋼管杭3と逆開先51との全周溶接の2回の溶接で杭頭ベースプレート5を鋼管杭3に固定できるため、連結作業を簡略化することができるものである。
【0027】
図2(c)及び図3(b)の状態で、柱脚ベースプレート2が杭頭ベースプレート5上に当接される。この場合、柱脚20と鋼管杭3とのズレdが、所定の範囲内、例えば1/100以内又は鋼管杭3の内径の1/2以内であればよい。
【0028】
これによって、図2(d)で示すように、柱脚ベースプレート2と杭頭ベースプレート5が当接された後、所定の位置にボルト孔7を穿設して、これにボルトを通してナットで固定することによって、柱脚20と鋼管杭3とを連結することができるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 連結構造
2 柱脚ベースプレート
3 鋼管杭
4 外スリーブ
5 杭頭ベースプレート
6 地表面
7 ボルト孔
20 柱脚
30 杭頭部
40 切り込み
41 タック溶接痕
50 貫通孔
51 逆開先
52 全周溶接痕

図1
図2
図3