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特開2022-41420塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041420
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20220304BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220304BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20220304BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20220304BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220304BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20220304BHJP
   H01M 4/88 20060101ALN20220304BHJP
【FI】
B05D3/00 B
B05D7/24 303G
B05D3/12 Z
B05D7/24 301E
H01M4/04 A
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M4/88 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146603
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】510009832
【氏名又は名称】エムテックスマート株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松永 正文
【テーマコード(参考)】
4D075
5H018
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA04
4D075AA51
4D075AA76
4D075AA81
4D075AC02
4D075AC80
4D075AC82
4D075AC88
4D075AE03
4D075BB16X
4D075BB21Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB07
4D075DC19
4D075EA05
4D075EA10
4D075EA33
4D075EB12
4D075EB14
4D075EB17
4D075EB51
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC10
4D075EC22
4D075EC30
4D075EC33
4D075EC51
5H018AA01
5H018BB01
5H018BB08
5H018BB12
5H018DD05
5H018HH00
5H018HH05
5H018HH08
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL11
5H029AM12
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029HJ01
5H029HJ07
5H029HJ10
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB11
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】固形粒子をスラリーにし、かつスラリーを微粒子にして薄膜で積層する場合、低粘度のスラリーであっても、スラリーに含有する固形粒子の沈殿を防ぎ、分散状態を改良した、スラリーの塗布方法の提供。
【解決手段】スラリー22にガス混入するにあたり細かく分断して泡として混入させ、泡スラリー混合体を循環装置などで高速で循環し、低粘度のスラリーであっても固体粒子の沈殿を防ぎ、スロットノズル、圧縮気体アシストスロットノズル、スリットスプレイノズル、または2流体スプレイノズル等で対象物に塗布し、必要により対象物を加熱して、圧縮気体の噴出で気泡を潰して対象物に塗布し、または圧縮気体アシストスロットノズルの圧縮アシスト流で、泡を除去しながら塗布し、対象物上の泡スラリー混合体の気泡を必要により消去、または発泡させた気体の80パーセント以上の気体を消去する方法を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粒子または粒子と短繊維を含む液体を対象物に塗布する方法であって、少なくとも粒子または少なくとも粒子と短繊維を含む不揮発分と、少なくとも溶媒を混合しスラリーにする工程と、前記スラリーに泡を混入させ泡スラリー混合体として前記少なくとも粒子の沈殿を防止しながらスラリー循環流路を高速で循環させる工程と、該スラリー循環流路に連通した塗布装置により前記泡スラリー混合体を対象物に前記泡の少なくとも一部を消滅させながら塗布する工程からなることを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記スラリーの不揮発分の比率は65重量パーセント以下であって、そのうち固形の粒子または粒子と短繊維の重量比率は55パーセント以下で、バインダーは10重量パーセント以下であって、揮発分は35パーセント以上であって、スラリーの粘度は3000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1の塗布方法。
【請求項3】
前記スラリーの粘度は1000mPa・s以下であって、
前記泡用気体は除湿圧縮空気、アルゴン、窒素、炭酸ガスの中から少なくとも一つを選択し、パルス的に細かく分断してスラリーに混入するように供給し、前記対象物は加熱してなることを特徴とする請求項1乃至3の塗布方法。
【請求項4】
前記スラリーはバインダーを含み、溶媒は少なくとも2種類以上の溶媒からなり、少なくとも一つの溶媒はバインダーの親溶媒であって、残りの少なくとも一つの溶媒は前記親溶媒より沸点を低くし、共沸効果のある沸点が120度以下の溶媒であることを特徴とする請求項1乃至3の塗布方法。
【請求項5】
前記塗布装置と対象物までの間、または対象物上で前記スラリーに混入させた泡に含まれる気体の80パーセント以上を消滅させることを特徴とする請求項1乃至4の塗布方法。
【請求項6】
前記塗布装置はスプレイ装置であって該スプレイ装置の上流から下流までの間に溶媒を加えてスラリーの粘度を低下させて対象物に塗布することを特徴とする請求項5の塗布方法。
【請求項7】
前記対象物がロール・ツー・ロールでハンドリングする長尺の基材であって、塗布装置は該基材と直行または略直行して配置されたスロットノズル、圧縮気体アシストスロットノズル、スリットスプレイノズル、または少なくとも複数の2流体スプレイノズルを備えたヘッドから少なくとも一つを選択してなることを特徴とする請求項1乃至6の塗布方法。
【請求項8】
前記対象物がロール・ツー・ロールでハンドリングする長尺の基材であって、塗布装置は該基材と直行または略直行して配置されたスロットノズル、圧縮気体アシストスロットノズル、スリットスプレイノズル、または少なくとも複数の2流体スプレイノズルを備えたヘッドから少なくとも一つを選択してなることを特徴とする請求項1乃至6の塗布方法。
【請求項9】
前記対象物が2次電池用集電体であってスラリーが2次電池電極用スラリーであって、2次電池の電極を形成することを特徴とする請求項1乃至7の2次電池の製造方法または2次電池。
【請求項10】
前記対象物を集電体、電極層、固体電解質層から選択し、
スラリーが電極用スラリーまたは固体電解質スラリーであることを特徴とする請求項1乃至6の全固体電池の製造方法または全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池に係る。
特に本発明の塗布する材料は液体であって、該液体には粒子や短繊維が含有し一般的にはスラリーやディスパージョンとして表現される。スラリー等にバインダーや増粘剤は含まれても含まれなくても良い。また塗膜性能に悪影響を与える界面活性剤や分散剤は極力含まない方が良い。
特にメジアン径のD50が10マイクロメートルを超える粒子を含有する液体は粒子の比重が高いほど或いは凝集するほど沈降しやすい。ナノメートルオーダーの直径で、特に細い短繊維例えば単層カーボンナノチューブや繊維長が一般的にそれより長いカーボンナノファイバー等はそれらが膜厚方向、つまり縦方向に有効に対して、横方向に展開しその導電性に寄与するグラフェンやそれらの複合材料は溶媒等を加えてディスパージョンやスラリーにして均一に分散しても、更に他の液体例えば活物質スラリー等に混合すると凝集しやすいなどのそれぞれ別の課題が発生するので解決する必要があった。
前者は樹脂分などのバインダーや増粘剤の含有量が少なくかつ粘度が例えば3000mPa・s以下、或いは2000mPa・s以下更には1000mPa・s以下の場合は固形粒子の沈降が著しく塗布した場合、経時的な品質不良の問題があった。
本発明は、スラリーやディスパージョン系などの液体をハンドリングし塗布する方法に効果的であり、更に燃料電池または燃料電池の製造方法、2次電池または製造或いは全固体電池またはその製造に特徴を発揮できる。
燃料電池の電極では所望するマクロポアやメソポア必要によりマイクロポアを形成し、マイクロポア、メソポア、マクロポアなどを残存させることが重要である。
逆に全固体電池の電極や電解質層形成ではボイドは無い方が好ましかった。リチウムイオン2次電池の電極の活物質の充放電での性能向上のため集電体から離れるに従い電解質液に接する密度分布が傾斜の電極形成が求められているがポア(気泡空間)が微細な高密度から順に連続的に、あるいは段階的に所望する密度で形成する必要があった。
本発明では電極形成プロセスや全固体電池などの電解質形成プロセス、或いはスラリーなどの液体の塗布方法を限定するものでない。
本発明による塗布とは特に限定しないが、ロールコート、スロットノズル(スロットダイ)コート、スラリー等を粒子にして細長いスリット溝から噴出するスリットノズルコート、スクリーンプリンティング、カーテンコート、ディスペンサー塗布、インクジェット、スプレイノズルによるスプレイ、ベル或いはディスクを高速回転して遠心力で霧にする回転霧化を含む霧化(含む繊維化)施与、霧化粒子を静電気で帯電させ付着させる(含む繊維化)施与等の粒子や繊維を対象物に直接あるいは吸引などを利用して間接的に塗布するための工法を含み、マイクロカーテンコートも含む。対象物は薬剤や化学製等の粉粒体でも、物体でも、長尺WEBなどのフィルム等でも良く、対象物の材質、形状、重量、数量等を含め限定しない。
マイクロカーテンコートとは本発明者により発明された方法であって、広角スプレイパターンのエアレススプレイノズル(例えば米国ノードソン社製のクロスカットノズル)で液体などを0.05~0.7MPa程度の比較的低圧でスプレイし、霧になる前のマイクロ的液膜(マイクロカーテン)の部分を使用して対象物とスプレイノズルを相対移動して塗布する方法であってオーバースプレイ粒子は発生せず100パーセントの液体の塗着効率が期待できる。ノズルチップ先端から末広がりに液体が液膜で引き延ばされ最終的には三角形または釣り鐘状の液膜底辺両端から不安定な比較的長い液流や大きな液滴になる。尚圧力が例えば3.5MPa・s程度以上の液圧では上記液膜の三角形の液膜は小さくなり、液膜の下流は大気圧との衝突で液滴は徐々に小さくなり、小流量広角スプレイノズルの場合250ミリメートル程度離れるとスプレイ粒子径は例えば20マイクロメートル前後にできる。一方液膜による塗布などでは比較的前記低圧にして液滴などになる前の液膜(カーテン)の最大底辺幅より上流で塗布するのが理想でノズルの種類(流量やパターン幅等)や液圧、粘度等で最大底辺幅が変化するので5乃至20ミリメートル程度の幅の所望する流量の液膜で塗布するのが一般的である。粒子を含まない溶液の場合対象物とエアレスノズルの相対移動は30m/min. 程度の中程度の速度で良く、60m/min.程度あるいはそれ以上のスピード例えば100m/min.或いはそれ以上のスピードでも例えば高沸点溶媒で溶媒蒸発が遅いとスピードが速くなっても薄膜になりながらレベリングするだけなので追従できる。しかし三角形等液膜の両辺の端の流量は中心部の流量の一般的に10倍以上の筋であり、対象物が常温であると樹脂溶液などの流量が多い筋は対象物上で溶液の表面張力或いは対象物の濡れによりレベリングして均一な厚みのウエット塗膜になる。一方スラリーの固形粒子を含む液体はその筋に固形粒子等が集中することになり粒子を多く含むため対象物への塗布後はチクロトロピック流体であるのでレベリングしづらく上記三角形の液膜部両端の筋が堆積したまま残り2本の粒子が盛り上がった塗膜のストライプラインが残る。
また霧化(繊維化)施与とはスプレイによる粒子化外に、固形微粒子を含む液体などを超音波等により液面を振動して霧化したり、エレクトロスピニングなどのスピンや、回転体による遠心力で粒子化したり繊維化したりして塗布することである。またスプレイや他の方法例えばバブリングの液膜破裂などで粒子化したり、他の物体などに衝突させて生じた微粒子をキャリヤーガスで運び、そのまま塗布することができる。粒子等は帯電して塗布することができる。或いは別の圧縮ガスで粒子群を高速で引き延ばしジェット化して極細パターンで施与する方法や、二流体スプレイの応用のメルトブローン方式などを液体に応用して広幅で高速のラインスピードの対象物に対応した粒子や繊維をつくりだす方法も含まれる。前記超音波霧化や遠心霧化では霧化した粒子の方向性が不安定であるので不活性ガスのアルゴンや窒素など必要によりドライな圧縮エアなどの圧縮ガスの力を借りて(air assist)対象物にそれらを付着あるいは塗布する工法も本発明には含まれる。本発明ではこれらを総称して以下スプレイとして説明する。
【背景技術】
【0002】
機能性材料の対象物の塗布は薄膜が主流になってきている。
有機系太陽電池ではペロブスカイト太陽電池が有力でペロブスカイト系薬液をインクジェット法により300mm x 300mmの広い面積に薄膜で塗布するなどの試作がなされている。また燃料電池では触媒量の低減の開発が進み、例えば白金触媒或いは白金コバルト触媒などの金属触媒量はカソード電極で平方センチメートル当たり0.3ミリグラム以下同じくアノードは0.05ミリグラムと極めて少ない量が求められている。これら白金は数ナノメートルと小さいが比重は20以上もあるので、白金を担持するカーボン粒子も数十ナノメートルの1次粒子で、アイオノマーの例えばナフィオン溶液などの電解質溶液も固形分は5乃至10%でかつ不揮発分トータル含有量も微量であるので上記の微量な固形分膜にするには塗布膜を極薄膜にする必要があった。あるいは通常の固形分5乃至15パーセントを1乃至3パーセントあるいはそれ以下にする必要さえあった。その場合溶媒量が多いので、一般的に電解質膜は溶媒特に湿気等で膨潤しやすく、また固形分の粒子径が小さくても比重が重いのでカーボンと電解質溶液で生じる凝集体の影響もあり、沈殿させない工夫が必要であった。
また2次電池の活物質粒子や全固体電池の活物質粒子や電解質粒子更には導電助剤のカーボンなどの微粒子やカーボンナノチューブ特に単層カーボンナノチューブ(SWCNT)やカーボンナノファイバー(CNT)はフッ化ビニリデン(PVDF)などのバインダーやその溶媒例えばノルマルメチルピロリドン(NMP)などからなるスラリーと混合すると凝集したり均一に分散できない傾向にあった。
【0003】
特許文献1は本発明者等による発明で主にLED分野向けの蛍光体スラリーの沈殿を防止するため二つの容器を移動する。スラリーに泡を混入させて沈殿を防止する方法が開示されている。
また特許文献2等には加熱溶融した熱可塑性接着剤に窒素ガスなどの気体を泡として混入させ加圧し、加圧状態では見えない程度の微細な泡に十分混合し、吐出装置で対象物に塗布して大気圧に戻ることで発泡させ、塗布表面が大気で冷えることにより、少なくとも表面は素早く軟化点以下になることで発泡体を形成できる。そのため内部まで完全に常温まで戻っても泡の混入により弾性体化できるので特にガスケット目的で多く採用されている。
【0004】
特許文献1ではアプリケーション上、小型装置であって、二つの小型容器間を移動している容器内下部のスラリーに泡を混入する方法にしたため、かつ比較的容器内圧力も低かったため、泡が移動した容器内液面で脱泡しやすく低粘度のスラリーの場合特に泡の混入効率が悪く、また泡スラリー混合体システムに密度センサー等を用いずにシンプルにしたため時として泡とスラリーの混入比率のバラツキが生じていた。
【0005】
文献2の方法においては例えば120乃至200℃程度で加熱溶融したホットメルト接着剤に泡を混入し吐出装置で対象物に泡混入ホットメルト接着剤等として吐出して例えばガスケット目的で泡を大きくさせながら冷却し発泡体を製造することを主な目的としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-107355
【特許文献2】特開昭53-017645
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はスラリー内に混合し泡スラリー混合体として高速で循環し、泡の力も借りてスラリー内の固形粒子や短繊維の沈殿を防ぎ、分散状態を改良してスラリー内粒子、必要により加えたバインダーや増粘剤、溶媒からなるスラリーと泡の混合状態を均一にして吐出装置または塗布装置まで移動し、吐出装置または塗布装置以降は不必要な泡は消去する、あるいは必要により微量例えば泡の20パーセント以下を意図的に残存させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は高付加価値の塗布方法、燃料電池の電極を形成した燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の電極を形成した2次電池の製造方法または2次電池、次世代2次電池、特に全固体電池や全固体空気電池等の電極や固体電解質を形成した次世代2次電池製造方法または次世代2次電池を提供することである。
本発明で例えば全固体電池の場合、正極または負極用活物質粒子と電解質用粒子または短繊維を独立してスラリーにしそれぞれの装置で、所望する順番に積層塗布することができる。薄膜にしてできるだけ多層にすると理想的な混合塗布ができるので効果的である。あるいは必要により全部の粒子等をまたは必要によりそれ等を選択して混合してスラリーにして、薄膜で積層しても良い。スラリーの泡の混入または混合は吐出装置または塗布装置の最先端までの間で混合して良く、或いはより好ましくはポンプなどでスラリー泡混合体を高速で循環させて均一な混合体にして吐出または塗布装置で対象物に塗布したら良い。本発明による高速とは0.3m/s.以上で例えば1.5m/s.でもそれ以上でも良い。また循環回路の途中にスタティックミキサーやダイナミックミキサーあるいは本発明者が過去より提案している衝突混合手段などを設置してスラリーと気体の混合を促進させると短時間で所望する泡スラリー混合体ができるので尚良い。本発明では高粘度あるいは高固形分のスラリーに泡を混入させて粒子等が沈殿しにくい状態にし、塗布装置の直前或いは塗布装置内、更には塗布装置外で溶媒と混合し、低粘度にして素早く対象物に塗布することができる。そのため低粘度スラリーの弱点である沈殿の課題を解決できるので特にプレイなどによる微粒子化での薄膜塗布には好適である。
本発明の方法では二流体スプレイ以外に回転霧化や気体に二酸化炭素を選択し超臨界性流体にすることで容易に微粒子化できる。前記二流体スプレイの一種の圧縮気体を利用するメルトブローン方式やエアアシストスロットノズルを含む二流体スプレイ全般、細く細長い溝から広幅で噴霧できるスリットスプレイノズルなど少なくとも一つを選択することで特に広幅で長尺な対象物にも比較的早いスピードで粒子化して塗布できる。本発明では泡で粒子の沈殿を防止し塗布装置の下流で泡を容易に消去しながら塗布することもできる。
本発明では配管内を移動する泡スラリー混合体の配管外で流量を検出できる流量計による流量検知と本発明者が発明したWO2013108669の工法である対象物に塗布する前に塗布重量測定物体に塗布し計測する方法を組み合わせ、それらを管理して品質管理とすることができる。前記流量計の代わりに密度計を設置しても良い。容積式ポンプを採用することで密度計の密度との関連から、循環液圧が一定なら泡の単位体積当たりの混入量の品質管理もできる。そのため単位面積当たりの塗布重量を正確に管理した方法で行うことになる。また随時管理を要望する場合は、それぞれのスラリーの流量を、あるいはそれぞれの吐出装置前または後の或いは両方の循環ラインの流量変化を、パイプなどの流路外から管理できる市販の流量計装置等などを採用して管理できる。特にパルス的スプレイでは液圧の波形管理がしやすく液圧落ち込みを大きくすることもできて流量変化をチェックし易いので効果的である。更に前記塗布重量測定装置でのデーターとの整合性は所望するタイミングで確認することができる。そのため例えば電極の細かい部位までそれぞれの材料の塗布重量を常にまたは瞬時に管理でき、高性能、高品質の電極等を形成することができる。
【0009】
本発明は少なくとも粒子または粒子と短繊維を含む液体を対象物に塗布する方法であって、少なくとも粒子または少なくとも粒子と短繊維を含む不揮発分と、少なくとも溶媒を混合しスラリーにする工程と、前記スラリーに泡を混入させ泡スラリー混合体として前記少なくとも粒子の沈殿を防止しながらスラリー循環流路を高速で循環させる工程と、該スラリー循環流路に連通した塗布装置により前記泡スラリー混合体を対象物に前記泡の少なくとも一部を消滅させながら塗布する工程からなることを特徴とする塗布方法を提供する。
【0010】
本発明は前記スラリーの不揮発分の比率は65重量パーセント以下であって、そのうち固形の粒子または粒子と短繊維の重量比率は55パーセント以下で、バインダーは10重量パーセント以下であって、揮発分は35パーセント以上であって、スラリーの粘度は3000mPa・s以下であることを特徴とする塗布方法を提供する。
【0011】
本発明の前記スラリーの粘度は1000mPa・s以下であって、
前記泡用気体は除湿圧縮空気、アルゴン、窒素、炭酸ガスの中から少なくとも一つを選択し、パルス的に細かく分断してスラリーに混入するように供給し、前記対象物は加熱してなることを特徴とする塗布方法を提供する。
【0012】
本発明の前記スラリーはバインダーを含み、溶媒は少なくとも2種類以上の溶媒からなり、少なくとも一つの溶媒はバインダーの親溶媒であって、残りの少なくとも一つの溶媒は前記親溶媒より沸点を低くし、共沸効果のある沸点が120度以下の溶媒であることを特徴とする塗布方法を提供する。
【0013】
本発明は前記塗布装置と対象物までの間、または対象物上で前記スラリーに混入させた泡に含まれる気体の80パーセント以上を消滅させることを特徴とする塗布方法を提供する。
【0014】
本発明の前記塗布装置はスプレイ装置であって該スプレイ装置の上流から下流までの間に溶媒を加えてスラリーの粘度を低下させて対象物に塗布することを特徴とする塗布方法を提供する
【0015】
本発明は前記対象物がロール・ツー・ロールでハンドリングする長尺の基材であって、塗布装置は該基材と直行または略直行して配置されたスロットノズル、圧縮気体アシストスロットノズル、スリットスプレイノズル、または少なくとも複数の2流体スプレイノズルを備えたヘッドから少なくとも一つを選択してなることを特徴とする塗布方法を提供する。
【0016】
本発明は前記対象物が燃料電池用電解質膜またはガス拡散層であって、スラリーは白金触媒ナノ粒子を含む固形分0.5乃至15重量パーセントの電極用インクであって膜電極複合体を形成することを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池。
【0017】
本発明は前記対象物が燃料電池用電解質膜またはガス拡散層であって、スラリーは白金触媒ナノ粒子を含む固形分0.5乃至15重量パーセントの電極用インクであって膜電極複合体を形成することを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池。
【0018】
本発明は前記対象物を集電体、電極層、固体電解質層から選択し、スラリーが電極用スラリーまたは固体電解質スラリーであることを特徴とする全固体電池の製造方法または全固体電池を提供する。
【0019】
本発明では粒子や短繊維の数量、形状、種類、比重を問わない。
【0020】
また本発明ではバインダーや溶媒の種類を問わない。燃料電池のアイオノマーなどの電解質溶液例えばデュポン社のナフィオン溶液や2次電池の正極のフッ化ビニリデン(PVDF)や負極のスチレンブタジエンラバー(SBR)等のバインダー、それ以外に例えば高沸点の増粘剤として用いられるグリセリン等を用いることができる。グリセリンはエタノールや2プロパノールなどとの低沸点溶媒で共沸効果が期待できる。更に本発明では対象物の加熱や真空下でのスラリーの施与または塗布後真空下に移動することにより溶媒や増粘剤の揮発を促進させることができる。
【0021】
更に本発明では2次電池の種類を問わない。リチウムイオン2次電池で良くナトリウムイオン2次電池でも良い。
【0022】
また本発明の2次電池は次世代2次電池の全固体電池で良く、更には全固体空気電池で良い。
【0023】
また本発明では固体電解質粒子である硫化物系、酸化物系の種類を問わず、正極用または負極用活物質粒子の種類、形状を問わない。
【0024】
本発明では燃料電池の数ナノメートルの白金粒子を担持する多孔質カーボンはその表面のメソポアやマクロポアの中に白金を担持し、経時的にアイオノマーの接触による被毒を少なくでき、パルス的スプレイなどによる積層で電極にマイクロポア、メソポア、マクロポアを形成できる。かつ界面の接触面積も大きくできるので電池性能を上げることができる。
仮に本発明でスロットノズルを使用して低固形分例えば7重量パーセントの固形分インクで粘度を上げるために沸点が約400℃のグリセリンを添加してスロットノズル出口での電解質膜(PEM)などの対象物への連続膜での塗布時、WET塗布厚みは泡がカバーしてくれ、塗布後PEMへの塗布反対面からの加熱或いは吸着加熱で瞬間的にインク粘度を下げることができるので最終的に泡を脱泡することで薄膜あるいは所望する分布の膜厚で微細な凹凸のある連続膜、更には密なポーラス(斑)状に塗布ができる。泡が無いと粗いポーラス上の塗布しかできない。
【0025】
本発明では泡スラリー混合体の施与は真空下で適用することもできる。
本発明では塗布装置の開閉バルブの下流のノズル内等のキャビティーを極限まで少なくすることができる。通常開閉バルブ下流のキャビティー部の泡スラリー混合体は前記バルブの閉で圧力差によりノズル等の外部に引き出され泡の爆発的発泡でのスラリー成分の大きな液滴のスピッティが発生するが本発明ではその現象も抑えることができる。特に本発明ではキャビティー内、必要によりノズル外部にも別回路のガス噴出手段を設けスピッティング流に衝突させることで高速の間欠塗布であるパルス的スプレイも可能にする。また塗布時対象物を加熱することもできる。本発明では塗布時、泡スラリー混合体のスラリーのバインダーや増粘剤が対象物で加熱され粘度が急激に低下し同時にバインダーの凝集力が低下するので脱泡や泡の破裂が促進され、溶媒も急速に揮発するので、更に2種類以上の溶媒の共沸による溶媒の揮発が促進され適度なソルベントバランス等も駆使して所望する塗膜を形成できる。例えば塗膜表面を粒子の堆積による凹凸のドライな塗膜状態にすることができる。一方沸点の高い溶媒を所望する量残留させてオーブンなどの後乾燥で塗膜表面のバインダーをレベリングさせ所望するなだらかな表面状態にすることもできる。例えば小さい粒子とバインダーをレベリングさせて表面を均すことにもつながる。更に特に真空下で対象物に前記泡スラリー混合体を施与することでドライな状態の塗布膜を得ることができるし、所望するスピードに対応することもできる。
【0026】
本発明の2次電池の製造方法、例えば正極の製造方法によれば例えば三元系(NCM)の活物質と導電助材とPVDFとPVDFの親溶媒であるNMPとを混合してスラリーにして
更に泡を混合して集電体のアルミニューム箔に塗布できるが、活物質のスラリーと泡の泡スラリー混合体と導電助材のカーボン微粒子やカーボンナノファイバー、必要により泡を混入した単層カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーの溶媒とのディスパージョン(分散液)は別々のスプレイなどの塗布装置で交互に薄膜で積層塗布して正極を形成できる。前記導電助剤分散液には微量のバインダーまたは/及び泡を混入しても良い。本発明では沸点の高い溶媒でも揮発を促進するため集電体を加熱ドラムや加熱テーブル、加熱吸着ドラムや加熱吸着テーブルで吸着して溶媒蒸発による気化熱での温度低下を防止し、ドラム等の内部から加熱しているので前記スラリー等を塗布し瞬時に溶媒を揮発できる。また本発明では集電体に近い方の電極の密度は前記泡を消去しながら離れるほど泡を所望する量残存させながら電極の密度を段階的または連続的に変化させる傾斜塗布もできる。その場合複数塗布装置例えばスロットノズル、圧縮気体アシストスロットノズル、スプレイノズル装置等が選択でき、かつそれぞれのスラリーへの泡の混入もそれぞれ所望する電極膜の内部構造を考慮して有り無を選択して行うことができる。
【0027】
また本発明では前記2次電池の電極形成の代わりに、全固体電池の電解質粒子を付加した電極形成や、電解質層形成でも同じように電解質層用スラリーに泡を混合し沈殿防止に応用できる。
【0028】
更に本発明では例えば活物質粒子などの単種あるいは複数種の粒子や導電助剤の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)やカーボンナノファイバー(CNF)、グラフェンなどの短繊維や微粒子カーボンを混合した単一スラリーで積層塗布することもできるが、それに限定するものでなく種類の異なる複数のスラリーや複数の導電助剤のディスパージョンなどを作成しそれに対応した複数の塗布装置を使用して所望する分布の電極形成ができる。更にそれらに泡の混合を選択することができる。
【0029】
また特に導電助剤のSWCNTやCNF等の短繊維は電極の膜の厚み方向に短繊維が植毛のように立たせる(垂直方向に立たせて垂直方向の電子などの移動をサポートする)ことが効果的なので、本発明の泡有り無しに関係なく、単独のスラリーまたはディスパージョンにして例えば植毛のように静電気を利用して、或いはエレクトロスピニングなどの装置を使用して目的を達成できる。電極膜の横方向の展開にはグラフェン単独或いはSWCNT等の組み合わせが効果的である。特に本発明者が提唱する独立した種類の異なるスラリーやディスパージョン等を独立した装置で薄膜あるいは微量に交互に幾重にも積層することが肝要である。本発明では仮に溶媒がNMPなどの高沸点溶媒であってもパルス的スプレイ等で気体とスプレイ粒子の比率を気体リッチにでき、微粒子や短繊維の気体との接触を増やしながら方向性をもって塗布できる。またディスパージョンやスラリー等を加熱したり、スプレイ微粒子などを移動するキャリヤーガス等を加熱して溶媒蒸気を揮発させることができる。そのため本発明では導電助剤のディスパージョンなどの固形分は0.5 パーセント或いはそれ以下、更には 0.05パーセント或いはそれ以下で好適にハンドリングできパルス的スプレイや静電気を付加して電極内の電子等の移動を効率的にサポートできる。
【0030】
さらに本発明では負極に効果的な金属シリコン粒子や酸化シリコン(SiOx)粒子の膨張収縮による性能低下を防止するため強力な粘着効果持つバインダー等で理想的には微細な繊維のクモの巣的構造体でシリコン粒子等を部分的に覆いポーラスカーボンのポーラス部、SWCNT、カーボンナノカップ内に強力に付着するようにできる。つまりシリコン粒子の膨張収縮でも前記カーボン構造体あるいはマクロポアカーボンのマクロの孔に担持され強力な粘着剤または表面積が広い粘着繊維などでそれらを更に保持できる。前記を別々のヘッドで粒子にして積層させてシリコン表面に部分的に粘着粒子または不織布的な繊維(蜘蛛の巣状)にしてカーボン構造体とシリコンやSiOxに付着させながら電極層を形成もできる。特に粘着剤をスプレイ、または微粒子にして移動させシリコン表面に部分的に付着させるにはインパクトをもったパルス的方法が最適である。粘着剤溶液または粘着剤のエマルジョンに負極活物質のカーボン粒子などを添加してスラリーにし、施与することもできる。
さらに、本発明では前記のように数十乃至数百ナノメートル必要により数ナノメートルの金属シリコンや酸化シリコンをマクロポーラスカーボンの空孔の中にまたは前記カーボン構造体に担持して、更に例えば網の目状の微細なカーボンや同じく微細なクモの巣状や短繊維を作り出した粘着剤等のサポートで2次電池の充放電時のシリコンの膨張収縮による脱落を押さえることができる。
【0031】
また本発明では対象物を加熱することができる。加熱温度はバインダーの粘度を急激に低下させ、泡を膨張させ、破裂させることができるので30乃至200℃が好まく更には50乃至150℃が好ましい。更に対象物を吸着でき例えば加熱吸着ドラムを内部から加熱できるので、溶媒の気化熱による温度低下を防止できるので溶媒の蒸発を促進できる。特にスプレイなどで微粒子化したスラリーの溶媒分は対象物に接触し濡れさせるのと同時に蒸発させることができる。溶媒を95%以上蒸発させるまでの時間は5秒以内が良く、より理想的には2秒以内である。
【0032】
本発明ではスラリーの泡を2流体のガス圧とスピードで圧し潰し、粒子化して対象物に付着させる際、パルス的に行い塗布ヘッドの先端と対象物との距離を例えば50ミリメートル以内に近づけることにより、スプレイ粒子のインパクトを上げることができるので高密度な固形粒子の堆積ができる。
【発明の効果】
【0033】
上記のように本発明によれば性能の高い塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施の形態に係る容器内のスラリーを第一のポンプで下流に移動し同じくガスボンベの下流に移動したガスを合流し混合し気体スラリー混合体をポンプで吸引し循環回路で循環し循環流路に塗布ヘッドを配置した略断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る容器内のスラリー加圧気体で加圧し下流に移動し同じくガスボンベの下流に移動したガスを合流し混合し気体スラリー混合体をポンプで吸引し循環回路で循環し循環流路に塗布ヘッドを配置した略断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係わる容器内のスラリーに下部から気体を泡にして混入させ、泡がスラリー面に上昇しにくい構造にし、泡とスラリーの混合体を撹拌させて集約し混合体をポンプで吸引して循環させ循環の途中に塗布機を設置し、循環の出口は泡とスラリーの混合体に流入させ容器内スラリーごとの泡スラリー混合体の循環システムにした略断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る加圧した第1の容器内のスラリーに気体の泡を混入させ、撹拌装置で泡スラリーの大雑把な混合体にして塗布装置を経由して加圧しないまたは第1の容器内圧力より低い第2の容器内1の容器に移動させ、第2の容器内の泡スラリー混合体をポンプで第1の容器内圧力より高い圧力で第1の容器に移動させ、泡スラリー混合体の循環移動システムとして泡スラリー混合体をより緻密な混合体にする略断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る泡スラリー混合体を塗布装置の一種のスロットノズルで塗布するに際し、対象物の移動方向側のスロットノズルから圧縮気体を流出または噴出して泡を圧し潰しながら対象物にスラリーを塗布している略断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る泡スラリー混合体を塗布装置の一種のスロットノズルで対象物にスラリーを塗布するに際し、スロットノズルの両側から圧縮気体を流出または噴出して泡を圧し潰しながら対象物にスラリーを塗布している略断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る泡スラリー混合体をエアレスノズルからスプレイした主に液膜スプレイパターンの略断面図、および対象物に液膜で塗布した際の平面図及び略断面図である。尚泡が無いスラリーを本方法で塗布することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は発明の理解を容易にするための一例にすぎない。
【0036】
図面は本発明の好適な実施の形態を概略的に示している。
【0037】
図1において容器1内のスラリー2は下流の第1のポンプ3で吸引し配管110を経由して次工程に送られる。スラリー2は図示していない撹拌装置で撹拌しても良い。特に粒子の比重が重い場合は撹拌手段等で撹拌した方が良い。圧縮気体はボンベ4より調圧手段であるレギュレーター5で所望する圧力に調圧できる。スラリーと気体は逆流防止弁であるチェックバルブ6、7等を経由して合流する。合流後は混合装置8で泡スラリー混合体として混合し第2のンプ4で配管10、塗布装置101、102、塗布装置からの戻り配管103を経由して循環バルブ104を経由して再び第2のポンプ9で吸引され循環回路が形成される。塗布装置101,102で消費された量が自動的に混合装置8から送り込まれ、自動循環システムが構築される。簡単なシステムにする場合、第2のポンプは自動的に消費した材料を吸い込み加圧するバランスフィード方式のプランジャーポンプが理想である。
勿論容積式ポンプでも良い。
一方第1のポンプは例えば回転する電動スパーギヤなどの容積ポンプの方が気体との容積比率を調整しやすいので良い。
気体の送り込みは図示していないミリ秒またはマイクロ秒単位で開閉する超精密自動開閉バルブで微細な泡を間欠的に高速で送り込む方式が良い。
【0038】
図2において容器21内のスラリー22は図示していない圧搾エアや不活性ガス源のレギュレーター23で調圧され加圧されている。下流の第1のポンプ3で吸引し配管110を経由して次工程に送られる。
スラリー22は図示していない撹拌装置で撹拌しても良い。特に粒子の比重が重い場合は撹拌手段等で撹拌した方が良い。圧縮気体はボンベ25より調圧手段であるレギュレーター25で所望する圧力に調圧できる。スラリーと気体は自動開閉バルブ26、27等を経由して合流する。合流後は混合装置28で泡スラリー混合体として混合しポンプ29で配管200、塗布装置201、202、塗布装置からの戻り配管203を経由して循環バルブ204を経由して再びポンプ29で吸引され循環回路が形成される。塗布装置201,202で消費された量が自動的に混合装置28側から送り込まれ、自動循環システムが構築される。循環回路には泡とスラリーがち密に分散されるように混合装置や分散装置 例えばスタティックミキサー、ダイナミックミキサー、本発明者が発明した衝突混合方式を採用できる。簡単なシステムにする場合、ポンプ29は自動的に消費した材料を吸い込み加圧するバランスフィード方式の加圧気体駆動のプランジャーポンプが理想である。
勿論容積式ポンプでも良い。液体が高いほど循環回路内の泡は小さくなり溶解に近い状態になるため透明の耐圧硝子越しに確認しても人の目で泡を確認することは難しい。
気体の送り込みは自動開閉バルブ27をミリ秒またはマイクロ秒単位で開閉することで微細な泡を間欠的に高速で多量送り込むことができる。
【0039】
図3は容器31内のスラリー32は撹拌装置34で撹拌され所望する分散状態を維持できる。気体は気体容器36から容器31下方に向けて気体圧力を調圧するレギュレーター35を経由して容器31内に流路がつながる自動開閉バルブ37経由で移動し、容器内に侵入する。気体は自動開閉バルブ37で細かく分断されスラリー32とで所望する泡スラリー混合体を形成する。泡は容器上部に移動しにくくするための立体的遮蔽プレートであるフード305が設けられている。
気体はスラリーの比重に対応して比重の重いものを選択できる。例えばアルゴンや二酸化炭素は窒素より比重が重いので容器31内スラリー上面まで到達するのに時間がかかるので好適である。
気体は複数独立して例えば容器31内スラリー32に放出し混合して使用することができる。
泡スラリー混合体はポンプ38で吸引され加圧されて配管39を経由して更に塗布装置301を経由して戻り配管302、循環量を調整する循環バルブ303を経由して容器31内の遮蔽プレート305より下まで移動し撹拌装置34で混合される。循環バルブより下流はポンプ38の吸引口付近に戻しても良い。循環回路内には図示しない混合手段や分散手段を設けることができるので泡スラリー混合体はち密な混合状態にして塗布装置301で塗布できる。
【0040】
図4は第1の容器41のスラリー42は容器41が所望する圧力に設定された圧縮気体のレギュレーター400で加圧されている。容器41内スラリーは撹拌装置44で撹拌されている。前記のように気体は複数の比重の重いものを選択できる。
加圧されたスラリー42は容器下部と連通している流路47用配管で塗布装置48を経由して第2の容器401に流入する。第2の容器のスラリー402は配管403でポンプ405で吸引され配管406で第1の容器の下部に噴出される。
ポンプ405にスラリー402が吸引される配管403の途中に泡(気体)供給の自動開閉バルブ420が設置されている。ボンベ46の気体は所望する圧力にレギュレーター45で調圧されている。第2の容器401は第1の容器より低い圧力に加圧されていても良い。また第2の容器401内のスラリーは撹拌装置403で撹拌できる。
また第2容器401内のスラリー402の図示しないレベルセンサーが下限を検知したら自動的にポンプ405の作動を停止できる。一方第1の容器内スラリーのレベルが低下したら図示していないレベルセンサーで検知して循環システムと塗布を停止できスラリーを充填できる。スラリーの充填は別のスラリー自動供給システムで自動的に供給できるし、第1の容器41の上蓋等を外して手動で供給もできる。尚第1の容器41から第2の容器401へのスラリーまたは泡スラリー混合体の移動は塗布装置48の流路47、49とは別の内部抵抗の少ない第2の流路430を設けることができる。第2の流路430の抵抗を少なくするには流路の断面積を大きくする、流路を短くする、および両方を採用することにより可能になる。例えば移動する塗布装置の流路の内径を4ミリメートルのPFAチューブを使用する場合、第2の流路の内径は例えば6ミリメートルまたは8ミリメートルあるいはそれ以上で良い。また塗布装置用流路47,49や第2の流路430の例えば上流にスタティックミキサーや動力を使用するダイナミックミキサーなどの混合装置460,470を設置することができる。経時的にポンプで405で吸引し加圧した泡スラリー混合体は加圧配管406に設置した混合装置で混合し、第1の容器の圧力より高い圧力で噴出し、流路47,49必要により第2の流路430を経由して第2の容器401に流入し更にポンプで吸引される循環回路が形成され泡スラリー混合体は経時的によりち密な泡スラリー混合体として塗布装置48で塗布できる。第1容器41のスラリー42上面は圧縮気体と縁切りするためプランジャーを設けることができる。
【0041】
図5は圧縮気体(エア)アシストスロットノズルの先端部断面図である。図示が無い塗布装置の自動開閉バルブの下流のスロットノズル52を示している。泡スラリー混合体はスロットノズル52内ではクリアランスが狭く圧力がかかっているので泡スラリー混合体の泡は膨張しない。しかしノズルを出た瞬間泡は膨張する。スロットノズル52先端に向けて、また対象物に塗布された瞬間の泡スラリー膜56に向けて圧縮気体が流路53を通過し先端ノズルから噴出され好適に泡を圧し潰しながら塗膜56を形成する。対象物を加熱することで塗布された泡スラリー混合体の特にバインダーや増粘剤の粘度が下がり、泡も膨張し圧縮気体で泡を圧し潰しやすくなり、溶媒がNMPなどの高沸点であっても蒸発が促進される。
【0042】
図6は圧縮気体(エア)アシストスロットノズルの変形のスロットノズル62先端部である。スロットノズルからの泡スラリー混合体の吐出流の両サイドから圧縮気体を圧縮流路から噴出している。そのため泡を圧し潰しながら対象物に塗布する以外に、スプレイしてスラリーをスプレイ粒子にしながら塗布することができる。
スロットノズル長は100ミリメートル、 500ミリメートル、 1000ミリメートル、 2000ミリメートルあるいはそれ以上でも良い。スロットノズル長と同程度の幅にスラリーを対象物上に塗布できる。スラリーを粒子化して塗布したい場合はスロット流の吐出幅を決定するシムの開口部を短冊状に作成し無数の開口(細かいストライプ状に流出する)長さを例えば50マイクロメートル、或いは200マイクロメートル、更には500マイクロメートル、或いは1ミリメートルに形成して非開口部長を5ミリメートル、10ミリメートルなどにすることができる。シム厚みも例えば100マイクロメートル、 150マイクロメートル、 200マイクロメートル
あるいはそれ以上にできる。
スラリーのみでなく両サイドの気体の噴出口も液の開口部と同じ考えで加工し、液開口長さが200マイクロメートルの時それより少し長くする例えば前後に100マイクロメートルにすることで圧縮気体の使用量を大幅に削減できる。
それぞれの開口部からのスラリーの粒子化した噴出パターンが干渉しないように、例えば200マイクロメートル四角の開口部が5乃至50ミリメートルピッチ内の所望するピッチ例えば15ミリメートルに数多くの開口部を加工できる。
広幅例えば1メートル以上の例えば2次電池の集電体である銅箔やアルミ箔或いはステンレススティール箔のような広幅で長尺の対象物であっても、噴出部は制限されるがスロットノズルは対象物と直行して高速でショートトラバース(例えば前記の条件では7.5ミリメートル)できるので高速ラインスピードでもパルス塗布で所望する例えば全面をカバーできる。この方法はスラリーに泡を混入させなくても本発明分野だけでなく多方面、例えば溶液のスプレイや熱可塑性接着剤の繊維化であるメルトブローンなどにも応用できる。
【0043】
図7-aはエアレススプレイノズル71から比較的低い液圧(0.15乃至0.6MPa程度)で比較的低粘度の泡スラリー混合体をスプレイしている。
エアレススプレイノズル71先端から液膜72が三角形になり、やがて液膜が壊れて両端に不安定な液の塊の筋74や液膜の下流に大きな液滴75が発生する。ライン73近辺の液膜で対象物等に塗布するのが一般的である。ライン73の液膜の流量分布両端が多い流れの76,78になり、中央は流量の少ない流れ77になる。流量は垂直にセットしたコルゲートペーパーに沸点の比較的高い溶媒からなるスラリーを液膜で瞬間的に塗布して流れる流量分布を測定できる。沸点が比較的高い溶媒の泡がないスラリーを同一条件で塗布しても同じような結果になる。
図7-bは対象物700と前記ライン73の位置の液膜を相対移動させ、泡スラリー混合体液膜を対象物700に塗布した平面図である。塗布瞬間は対象物上には液膜両端の流量の多い箇所76と78と流量の少ない箇所77が出現する。
図7-cではエアレススプレイノズル71‘の液膜と対象物700が相対移動することで対象物上に泡スラリー混合体の塗膜ができる。対象物700が加熱されている、あるいは沸点の低い溶媒の場合、あるいはその両方で塗布流量分布は前記ノズルの液膜の流量分布に類似した両端の流量が多い乾燥膜になる。スラリーの溶媒の沸点を高くし、対象物700が室温あるいはそれ以下にした場合、液膜両端のウエットで流量分布多(厚膜)76’、78‘の個所は表面張力で中央部で流量分布少(薄膜)77'の個所へ流動して移行し比較的平坦な膜にすることができる。
また対象物を加熱や真空などで両端の分布を素早くセットした膜の上から例えばノズル71‘をピッチ送りして厚膜の部分をずらして重ね塗りできる。 ずらした分布76’、78’、77’で塗り重ねることになり、液圧を下げることなどで液膜の3角形の角度を狭くしてパターン当たりの薄い箇所を狭くして細かい凹凸の塗布パターンを形成できる。この方法は泡を混入しないスラリーにも効果的である。燃料電池の電極形成では1個の2流体スプレイの10倍以上のスピードに対応でき、かつ生産スピードも同じく高められる。塗着効率がほぼ100パーセントであるので特に高価な白金触媒の燃料電池の電極形成に効果的である。また2次電池の電極形成にもスロットノズルより電極の表面積を向上できるので効果的である。燃料電池電極形成スラリーは固形分を3パーセント以下、アノードでは1パーセント以下にして単位面積当たりの白金量を少なくすることができる。勿論のこと電極インクが低固形分で低粘度であれば触媒の沈殿を防止する上で泡スラリー混合体を高速で循環することは効果的である。
また本発明ではマイクロカーテンコートにエアアシスト機能を付加して塗布分布の両端の流量を少なくして中央の流量を増やすこともできる。
【0044】
本発明では生産性を上げるために例えば200乃至2000ミリメートル幅のスロットノズルなどで対象物に対して高速スピードに対応した塗布ができる。泡を残したい場合はスロットノズルの塗布だけで良い。対象物支持するバックロールは加熱しても良い。更にスロットノズルと相対移動する対象物はバックロールを例えば30乃至200℃に加熱してバックロールからの熱伝導で加熱し、または対象物を加熱吸着ロールで吸引しながら加熱することで泡スラリー混合体の脱泡の加速と溶媒の蒸発を加速させることができる。また泡をスピードを持って圧し潰しながら塗布したい場合は、圧縮気体アシストスロットノズルで片側或いは両サイドから圧縮気体を噴出しながら塗布することができる。対象物は前記のように加熱することでバインダーや増粘剤などの粘度が下がり脱泡と溶剤の蒸発を促進できる。特に溶媒の沸点がNMPのように200℃を超える溶媒が含まれる場合スラリーの塗膜表面の乾燥が促進されないので所望する膜を作成できる。プレスロールを特に直後に付加または加圧の強弱を手動又は自動で調整することによりマイクロバブルの含有状態も選択できることになる。
【0045】
本発明では泡スラリー混合体を予め容器内で泡スラリー混合体として作成し循環装置で圧送し塗布装置経由でタンクに戻して循環システムを形成し対象物に塗布することができる。
容器内の泡スラリー混合体が少なくなったら予めスタンバイしている別な容器の泡スラリーを自動的に循環回路に導くこともできるのでライン稼働を停止させる必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば沈降しやすいスラリーであっても、泡スラリー混合体として、粒子などの沈降を防止し、更に低粘度スラリーであっても粒子の沈殿を防ぎ、スラリーと同じ質量の塗布量では泡の分流量を少なくできるので薄膜での塗布も可能になる。
【符号の説明】
【0047】
1、21、31、41、 容器
2、22、32、42、 スラリー
3、9、29、38、405 ポンプ
4、25、36,46 圧縮気体
5、23、24、35、45 レギュレーター
6、26 液体開閉バルブ
7、27、37、420 気体開閉バルブ
8、28、450,460、470 混合装置
10、39、200、406 液配管(ポンプから)
33、43 泡
34、44、403 撹拌装置
47 配管(塗布装置へ)
48、101,102、201、202、301 塗布装置
49 配管(塗布装置から)
51、61 泡スラリー混合体
52、62 スロットノズル先端
53、63、63‘ 圧縮気体流路
54、64 泡膨張
55、65、700 対象物
56、66 塗膜
71、71‘ エアレススプレイノズル
72 液膜(マイクロカーテン)
73 ライン
74 液筋
75 大きな液滴
76、76‘、78、78‘ 両端流量分布(多)
77、77‘、 中央部流量分布(少)
103、203、302 配管(ポンプ戻り)
104、204、303 循環バルブ
305 フード
404 配管(スラリー)
407 配管(気体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7