(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041439
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】芳香性積層シート、芳香性架橋ゴム成形体、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20220304BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20220304BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20220304BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20220304BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B32B27/18 F
C08L21/00
C11B9/00 T
C11B9/00 C
C11B9/00 P
A61L9/01 H
A61L9/01 Q
A61L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146635
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 亘
【テーマコード(参考)】
4C180
4F100
4H059
4J002
【Fターム(参考)】
4C180AA03
4C180AA05
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4H059BA12
4H059BA23
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4J002AC031
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4J002FD140
4J002FD150
4J002FD206
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】 香りの強さの調整と香りの持続性の調整をバランスよく行うことが可能な、芳香性積層シートもしくは芳香性架橋ゴム成形体を提供する。
【解決手段】 芳香性積層シート1は、香料保持層13、及び、香料保持層13を挟持する第1層11と第2層12とを含む。香料保持層13はシート状材料から構成される。香料保持層13には香料が含侵されている。第1層11が、前記香料に含まれる香料成分の少なくとも1つを含有する架橋ゴム組成物からなる層である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料保持層、及び、香料保持層を挟持する第1層と第2層とを含む芳香性積層シートであって、
香料保持層はシート状材料から構成されるとともに、香料保持層には香料が含浸されており、
第1層が、前記香料に含まれる香料成分の少なくとも1つを含有する架橋ゴム組成物からなる層である、
芳香性積層シート。
【請求項2】
第2層が、前記香料に含まれる香料成分の少なくとも1つを含有する架橋ゴム組成物からなる層である、
請求項1に記載の芳香性積層シート。
【請求項3】
第2層が、前記香料に含まれる香料成分の透過を実質的に阻止する層である、
請求項1に記載の芳香性積層シート。
【請求項4】
積層シートの延在面に直交する方向に見て、
香料保持層の周囲が、第1層の周縁部および/または第2層の周縁部によって、閉じた環状に取り囲まれている、
請求項1に記載の芳香性積層シート。
【請求項5】
前記架橋ゴム組成物が、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む香料が添加されており、ゴム臭が感じられないゴム組成物である、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の芳香性積層シート。
【請求項6】
請求項1に記載の芳香性積層シートの製造方法であって、
未架橋ゴム組成物に前記香料成分を練りこんだ後に、シート状に圧延し、香料成分を含有するゴムシートを製造し、
かかるゴムシートを第1層として、香料保持層及び第2層と積層して、
芳香性積層シートを製造する方法。
【請求項7】
芳香性の架橋ゴム成形体であって、
架橋ゴム成形体の中心部には、香料を含む芯材が埋入されており、
前記芯材を覆い、成形体の表面に露出するように架橋ゴム層が設けられており、
前記架橋ゴム層は、前記香料に含まれる香料成分の少なくとも1つを含有する架橋ゴム組成物からなる層である、
芳香性架橋ゴム成形体。
【請求項8】
前記架橋ゴム組成物が、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む香料が添加されており、ゴム臭が感じられないゴム組成物である、
請求項7に記載の芳香性架橋ゴム成形体。
【請求項9】
請求項7に記載の芳香性架橋ゴム成形体の製造方法であって、
未架橋ゴム組成物に前記香料成分を練りこんで香料成分を含む未架橋ゴム組成物とし、
香料を芯材に含ませ、
前記芯材を覆うように、香料成分を含む未架橋ゴム組成物の成型および架橋を行う、
芳香性架橋ゴム成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香性を有する積層シート、およびその製造方法、特に架橋ゴム組成物層を含む芳香性積層シート、およびその製造方法に関するものである。また、本発明は、芳香性を有する架橋ゴム成形体、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
文具やインテリア用品、生活用品等において、香料によって香りづけを行い、製品に芳香性を与えることがある。また、芳香性を与えられた文具やインテリア用品、生活用品等の製品により、オフィスや居室、寝室等に代表される生活空間の香り環境の改善を図ることができる。
【0003】
例えば、ファイルなどの文具用品やパッケージケースなどに芳香性を与えることが行われている。特許文献1には、極性基を有する樹脂に芳香剤を添加した樹脂組成物からなる中間層と、中間層の両面に設けられる外層で構成された芳香性積層シートが開示されており、かかる芳香性積層シートにおいて、外層はポリオレフィン樹脂からなり、香料の透過性を有する。当該芳香性積層シートによれば、外層によってシートの耐傷性を改善でき、シート成型時の悪臭の発生も抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、生活用品等の物品に芳香性を与える場合、芳香が強すぎると室内等の生活空間で物品を使用することに適さなくなってしまう。一方で、芳香は香料成分の揮発により生ずるため、芳香を適度に弱めるために、香料の濃度や量を少なくすると、使用後すぐに芳香性が弱くなってしまい、芳香性の持続性が損なわれるという問題が生じやすくなる。すなわち、物品に芳香性を与えるにあたって、香りの強さと香りの持続性の間には一種のトレードオフ関係があり、両者をバランスよく調整することは難しかった。
【0006】
また、架橋ゴムを使用した製品等においては、ゴム特有の臭気が生じることがあり、ゴムを用いた製品では、いわゆるゴム臭の改善が求められる場合がある。
【0007】
本発明の目的は、香りの強さの調整と香りの持続性の調整をバランスよく行うことが可能な、芳香性積層シートもしくは芳香性架橋ゴム成形体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、不快なゴム臭を感じさせずに良い芳香を生ずる、芳香性積層シートもしくは芳香性架橋ゴム成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、鋭意検討の結果、シート状材料に香料を含ませた香料保持層の少なくとも片面を、前記香料に含まれる香料成分の少なくとも1つを含有する架橋ゴム組成物からなる層で覆って芳香性積層シートを構成すると、上記目的の少なくとも1つを達成できることを知見し、本発明を完成させた。また、発明者は、香料を含む芯材を覆いつつ、成形体の表面に露出するように架橋ゴム層が設けられた芳香性架橋ゴム成形体において、架橋ゴム層が前記香料に含まれる香料成分の少なくとも1つを含有すると、上記目的の少なくとも1つを達成できることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、香料保持層、及び、香料保持層を挟持する第1層と第2層とを含む芳香性積層シートであって、香料保持層はシート状材料から構成されるとともに、香料保持層には香料が含浸されており、第1層が、前記香料に含まれる香料成分の少なくとも1つを含有する架橋ゴム組成物からなる層である、芳香性積層シートである(第1発明)。
【0010】
第1発明において、好ましくは、第2層が、前記香料に含まれる香料成分の少なくとも1つを含有する架橋ゴム組成物からなる層である(第2発明)。また、第1発明において、好ましくは、第2層が、前記香料に含まれる香料成分の透過を実質的に阻止する層である(第3発明)。また、第1発明において、好ましくは、積層シートの延在面に直交する方向に見て、香料保持層の周囲が、第1層の周縁部および/または第2層の周縁部によって、閉じた環状に取り囲まれている(第4発明)。また、第1発明ないし第4発明のいずれかにおいて、好ましくは、前記架橋ゴム組成物が、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む香料が添加されており、ゴム臭が感じられないゴム組成物である(第5発明)。
【0011】
また、本発明は、第1発明の芳香性積層シートの製造方法であって、未架橋ゴム組成物に前記香料成分を練りこんだ後に、シート状に圧延し、香料成分を含有するゴムシートを製造し、かかるゴムシートを第1層として、香料保持層及び第2層と積層して、芳香性積層シートを製造する方法である(第6発明)。
【0012】
また、本発明は、芳香性の架橋ゴム成形体であって、架橋ゴム成形体の中心部には、香料を含む芯材が埋入されており、前記芯材を覆い、成形体の表面に露出するように架橋ゴム層が設けられており、前記架橋ゴム層は、前記香料に含まれる香料成分の少なくとも1つを含有する架橋ゴム組成物からなる層である、芳香性架橋ゴム成形体である(第7発明)。
【0013】
第7発明において、好ましくは、前記架橋ゴム組成物が、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む香料が添加されており、ゴム臭が感じられないゴム組成物である(第8発明)。
【0014】
また、本発明は、第7発明の芳香性架橋ゴム成形体の製造方法であって、未架橋ゴム組成物に前記香料成分を練りこんで香料成分を含む未架橋ゴム組成物とし、香料を芯材に含ませ、前記芯材を覆うように、香料成分を含む未架橋ゴム組成物の成型および架橋を行う、芳香性架橋ゴム成形体の製造方法である(第9発明)。
【発明の効果】
【0015】
本発明の芳香性積層シート(第1発明)や本発明の芳香性積層シートの製造方法(第6発明)によれば、香りの強さを適度に抑えながら、長期にわたって芳香性が持続する芳香性積層シートが得られる。
また、本発明の芳香性架橋ゴム成形体(第7発明)や本発明の芳香性架橋ゴム成形体の製造方法(第9発明)によれば、香りの強さを適度に抑えながら、長期にわたって芳香性が持続する芳香性架橋ゴム成形体が得られる。
【0016】
さらに、第2発明ないし第4発明のようにした場合には、香りの強さや持続性をより調節しやすくなる。
また、さらに、第5発明の芳香性積層シートや第8発明の芳香性架橋ゴム成形体のようにした場合には、架橋ゴムを使用しているにも関わらず、不快なゴム臭を感じさせずに良い芳香を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】発明の第1実施形態の芳香性積層シートの平面図および断面図である。
【
図2】発明の第2実施形態の芳香性積層シートの平面図および断面図である。
【
図3】発明の第3実施形態の芳香性積層シートの断面図である。
【
図4】発明の第4実施形態の芳香性架橋ゴム成形体の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照しながら、まず卓上マットを例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0019】
図1は、第1実施形態の芳香性積層シートの平面図および断面図である。
芳香性積層シート1は、香料保持層13、及び、香料保持層13を挟持する第1層11と第2層12とを含む積層構造を有するシートである。芳香性積層シート1は、例えば布製の表皮層など、他の層を有していてもよい。
【0020】
香料保持層13はシート状材料から構成されるとともに、香料保持層には香料が含浸されている。シート状材料は、シート状の多孔質材料であることが好ましい。シート状の多孔質材料は、香料を含有できるものであれば特に限定されないが、例えば、繊維集合体(紙、織布、不織布、綿、木綿等)や発泡樹脂材料(発泡ゴム、発泡ウレタン、発泡ポリエチレンなど)が例示される。また、シート状材料は、多量の香料成分を保持可能な樹脂(例えば塩化ビニル樹脂)やゴム(例えばシリコーンゴム)からなるシート材でもよい。
【0021】
香料は特に限定されないが、後述するように、第1層を構成するゴム材料と相性の良い香料成分を含む香料であることが好ましい。その場合、ゴム材料のゴム臭の抑制に有利である。
【0022】
第1層11は、前記香料に含まれる香料成分の少なくとも1つを含有する架橋ゴム組成物からなる層である。すなわち、第1層11は、香料成分を含む架橋ゴムシートである。香料保持層に含まれる香料成分と、第1層に含まれる香料成分が同じであってもよい。第1層を構成する架橋ゴム組成物の詳細については後述する。
【0023】
必須ではないが、第2層12が、前記香料に含まれる香料成分の少なくとも1つを含有する架橋ゴム組成物からなる層であることが好ましい。第1層11と第2層12が同じ架橋ゴム組成物で構成されていてもよい。
【0024】
また、必須ではないが、第2層12が、前記香料に含まれる香料成分の透過を実質的に阻止する層であってもよい。香料成分の透過を実質的に阻止する層としては、PET樹脂層やブチルゴム層や金属箔層(アルミニウム箔や銅箔など)が例示される。
【0025】
必須ではないが、
図1に示すように、積層シート1の延在面に直交する方向に見て(平面図において)、香料保持層13の周囲が、第1層の周縁部および/または第2層の周縁部によって、閉じた環状に取り囲まれていることが好ましい。すなわち、香料保持層13の周縁は、第1層11の周縁部と第2層12の周縁部とによって囲まれて覆われており、外部に露出していない。本実施形態では、第1層11の周縁部と第2層12の周縁部とが互いに接合されて、香料保持層13の周縁を封止している。接合は接着剤や粘着剤によるものでもよく、架橋接着によるものであってもよい。
かかる構成は、香りをより長期にわたり維持することに貢献する。
【0026】
香料保持層の周囲が、第1層の周縁部と第2層の周縁部によって、閉じた環状に取り囲まれている具体的形態は、
図2のような形態であってもよい。
図2に示した第2実施形態の芳香性積層シート2では、1枚の架橋ゴムシートが半分に折りたたまれ、同じ架橋ゴムシートにより、第1層21と第2層22とが構成されている。そして、折りたたまれた架橋ゴムシート(第1層、第2層)の間に香料保持層23が挟み込まれ、
図2の平面図における上縁、右側縁、下縁の部分で第1層21と第2層22とが重ね合わせられて接合・封止されている。
【0027】
また、香料保持層の周囲は、
図3に示す第3実施形態の芳香性積層シート3のように、積層シートの端面に露出していてもよい。このような実施形態の芳香性積層シート3は、第1層31と香料保持層33と第2層32とを積層一体化して、その後、所定の大きさにシートをカットすることにより製造できるので、製造が効率的である。
【0028】
上記実施形態の芳香性積層シート1は、例えば以下の手順により製造できる。
まず、適切に香料成分を調合した香料を準備する。香料は香料保持層13と第1層11で同じものであってもよいが、香料の配合を異ならせてもよい。また、第2層も香料を含む場合には、第1層11と第2層12で香料の配合を異ならせ、積層シートの表と裏で異なる香りがするようにしてもよい。もちろん、第1層11と第2層12で香料の配合を同じにしてもよい。
【0029】
第1層11や第2層12となるべきゴム組成物を準備する。未架橋のゴム組成物に香料や架橋剤など、所定の配合材料を配合し、十分に混練し、香料が未架橋ゴム組成物全体にいきわたるように練りこむ。
混練した未架橋ゴム材料を、ローラー等により圧延し、所定の厚みのシート状に引き延ばし、香料を含む未架橋ゴムシートとする。
第2層を香料成分の透過を実質的に阻止する層とする場合には、PET樹脂フィルムなどを所定の大きさにカットするなどして、シート材を準備すればよい。
【0030】
香料保持層13となるべきシート状材料(特にシート状の多孔質材料)を所定の大きさにカットし、香料を含浸させる。
【0031】
第1層11や第2層12となるべき未架橋ゴムシートやシート材、および、香料保持層13となるべきシート状の多孔質材料を積層し、熱プレス等により未架橋ゴムシートを架橋しつつ、これらを一体化する。一体化のため、適宜接着剤や粘着剤を用いてもよい。
以上の工程により、上記第1実施形態の芳香性積層シート1が製造できる。
【0032】
上記製造方法の説明では、架橋と積層一体化を同時に行ったが、第1層や第2層となるべきシート材をあらかじめ架橋しておいて、その後、接着等の手段によって積層一体化するようにしてもよい。この場合、あらかじめ架橋しておいた架橋ゴムシートに香料を塗布あるいは浸漬して、架橋ゴムシートに香料を含浸させて、第1層や第2層の架橋ゴムシート材として積層してもよい。
【0033】
上記芳香性積層シート1は、例えば、卓上マットとして使用できる。花の香りがするように香料を調合しておいて、芳香性積層シート1の上に花瓶を飾るようにしておけば、芳香性積層シート1から放散される香料成分により、室内に良い花の香りがすることになる。
【0034】
芳香性積層シートの用途は卓上マットに限定されず、フロアマットであってもよいし、クッション、カーテン、タペストリや、文具、カバー材等であってもよい。
【0035】
上記芳香性積層シート1の作用および効果について説明する。
芳香性積層シート1においては、第1層11の架橋ゴム組成物に含まれる香料成分や、香料保持層13に含まれる香料成分が、架橋ゴム組成物の表面から徐々に空気中に放散されていく。これにより、所望の香りを積層シートに与え、室内空間等の香りを整えることができる。
【0036】
ここで、第1層11等の架橋ゴム組成物からの香料成分の放散は、ゴム組成物を通じた拡散となるため、ゆっくりしたものとなる。したがって、香料保持層13に多くの香料を保持させても、香料成分が一気に放散して香りがきつくなってしまうことが抑制される。また、香料成分の放散がゆっくりしたものとなれば、香料保持層13に保持される香料がゆっくりと染み出すことになるため、長期間にわたって香りが維持される。
すなわち、上記芳香性積層シート1によれば、香りの強さを適度に抑えながら、長期にわたって芳香性が持続する。
【0037】
また、芳香性積層シート1は、シート状であるため、カットするなどしてシートの面積を調整することにより、香りの強さを調整することができ、便利である。
【0038】
また、さらに、第2層が、第1層と同様に前記香料に含まれる香料成分の少なくとも1つを含有する架橋ゴム組成物からなる層とした場合には、香りを強めに放散しやすくなる。
【0039】
香りを強めに放散させる観点からは、香料を含有する架橋ゴム層のゴムポリマーをシリコーンゴムとすることが好ましい。
【0040】
また、香りを強めに放散させる観点からは、芳香性積層シート1の製造にあたり、未架橋ゴムに香料を練りこんだ後に架橋を行い、香料成分を含有する架橋ゴムを得るようにすることが好ましい。このようにすると、練りこまれた香料成分がゴムポリマーの間に存在して、ゴムポリマーが幾分か緩んだような状態で架橋されることになって、この緩んだような架橋状態であれば、香料が架橋ゴムを通過しやすくなるからである。
【0041】
また、第2層が、前記香料に含まれる香料成分の透過を実質的に阻止する層であれば、香料成分の放散が積層ゴムシートの片面側(第1層側)のみとなるため、芳香性をより長期にわたって維持できる。また、かかる構成とされていれば、芳香性積層シート1をテーブルの上などで使用した際に、香料成分が移行してテーブル表面に香りが残ってしまうことを予防できる。
【0042】
また、
図1や
図2の平面図に示されたように、積層シートの延在面に直交する方向に見て、香料保持層13の周囲が、第1層11の周縁部および/または第2層12の周縁部によって、閉じた環状に取り囲まれていると、香料保持層13の周縁から空気中に直接香料成分が放散してしまうことが防止され、芳香性をより長期にわたって維持できる。
【0043】
また、後述されるように、第1層11を構成する架橋ゴム組成物が、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む香料が添加されており、ゴム臭が感じられないゴム組成物であれば、芳香性積層シート1から発せられる芳香を、ゴムの異臭を感じさせない、良い香りにすることができる。
必須ではないが、第1層11を構成する架橋ゴム組成物が上記香料成分を含む場合には、香料保持層の香料にも同じ香料成分が共通して含まれることが好ましい。
【0044】
また、芳香性をより長期にわたって維持したい場合には、第1層11を構成する架橋ゴム組成物が、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)であることが好ましい。
【0045】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0046】
図4には、発明の第4実施形態である芳香性架橋ゴム成形体4の一部断面図を示す。
図4では、右側半分を断面図で、左側半分を外観図で示している。
芳香性架橋ゴム成形体4の中心部には、香料を含む芯材43が埋入されている。そして、芯材43の外周面を覆うように架橋ゴム層41が設けられている。架橋ゴム層41は、層の少なくとも一部が、成形体4の表面に露出していることが好ましい。なお、架橋ゴム層を覆うように布などの表皮層が設けられていてもよい。そして、架橋ゴム層41は、芯材に含まれる香料を構成する香料成分の少なくとも1つを含有する架橋ゴム組成物からなる層である。
【0047】
香料成分を含む架橋ゴム層41を構成するゴム組成物は、上記第1ないし第3実施形態の芳香性積層シートと同様のゴム組成物が利用できる。
また、芯材43は、所定量の香料を含みうる芯材であれば特に限定されないが、特に多孔質体(発泡樹脂成形体、素焼きの陶器、珪藻土焼成体等)や繊維集合体(綿、不織布等をプレス成型したもの等)であることが好ましい。また、芯材43は、多量の香料成分を保持できる樹脂(例えば塩化ビニル樹脂)やゴム(例えばシリコーンゴム)で構成されるものであってもよい。
また、必須ではないが、芯材43の外周面が、架橋ゴム層41に密着していることが好ましい。
【0048】
このような芳香性架橋ゴム成形体4は、例えばボール状や、人形、玩具等、特定のオブジェ状に形成されていてもよい。架橋ゴム層41の表面形状は特に限定されず、オブジェやキャラクターなどの意匠性を与えてもよい。また、架橋ゴム層41の厚みは一定であってもよいが、厚みが変化していてもよい。
【0049】
このような芳香性架橋ゴム成形体4は、例えば、注型成形や、プレス成型、射出成型などの公知の樹脂成型方法に、芯材をインサートする成型法を組み合わせることにより成型できる。また、適宜架橋ゴム層の成形および架橋を行った後に、芯材を成形体内部に押し込んでから封入するようにしてもよい。
【0050】
このような芳香性架橋ゴム成形体4によれば、好ましい芳香がゴム成形体の架橋ゴム層表面から放出され、上記第1ないし第3実施形態の芳香性積層シートと同様に、適度な芳香性が長期間にわたって維持される。
【0051】
必須ではないが、芳香性架橋ゴム成形体4においても、架橋ゴム組成物が、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む香料が添加されており、ゴム臭が感じられないゴム組成物であることが好ましく、その場合、ゴムの異臭を感じさせずに良い香りにすることができる。この場合、芯材43にも同じ香料成分を共通させて含ませておくことが好ましい。
【0052】
また、必須ではないが、芳香性架橋ゴム成形体4においても、未架橋ゴム組成物に前記香料成分を練りこんで香料成分を含む未架橋ゴム組成物とし、香料を芯材に含ませ、前記芯材を覆うように、香料成分を含む未架橋ゴム組成物の成型および架橋を行うことが好ましく、このようにすれば、香料が架橋ゴムを通過しやすくなる。
【0053】
以下、上記実施形態の芳香性積層シートの第1層11,21、31や第2層を構成した架橋ゴム組成物や、上記実施形態の芳香性架橋ゴム成形体の架橋ゴム層41を構成した架橋ゴム組成物について、より詳細に説明する。
【0054】
架橋されたゴム組成物には、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む香料が添加されていることが好ましく、架橋されたゴム組成物はゴム臭が感じられないゴム組成物であることが好ましい(第1組成物)。
【0055】
第1組成物において、好ましくは、ゴム組成物がβ-シトロネロールと酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを含む(第2組成物)。
また、第1組成物において、好ましくは、ゴム組成物が酢酸CIS-3-ヘキセニルとCIS-3-ヘキセノールを含む(第3組成物)。
また、第1組成物において、好ましくは、ゴム組成物がヘキサン酸アリルとカローンを含む(第4組成物)。
また、第1組成物において、好ましくは、ゴム組成物が、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含む(第5組成物)。
また、第1組成物において、好ましくは、ゴム組成物が、ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含む(第6組成物)。
【0056】
また、第1組成物において、好ましくは、ゴム組成物が、ジエンをモノマー成分として含んで重合されたゴムポリマーを含む(第7組成物)。
また、第1組成物において、好ましくは、架橋がイオウ架橋である(第8組成物)。また、第1組成物において、好ましくは、架橋が有機過酸化物架橋である(第9組成物)。
【0057】
上記架橋ゴム組成物(第1組成物)によれば、過度に強い芳香を追加することなく、架橋ゴムに由来する臭いが他の香りと一体となって不快なゴム臭が消え、ゴム臭が感じられない架橋ゴム組成物が提供される。
【0058】
さらに、第2組成物のように、ゴム組成物がβ-シトロネロールと酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを含む場合には、ゴム組成物の香りを、フローラル系の香りへと方向付けできる。
さらに、第3組成物のように、ゴム組成物が酢酸CIS-3-ヘキセニルとCIS-3-ヘキセノールを含む場合には、ゴム組成物の香りを、グリーン系の香りへと方向付けできる。
さらに、第4組成物のように、ゴム組成物がヘキサン酸アリルとカローンを含む場合には、ゴム組成物の香りを、フルーツ系の香りへと方向付けできる。
さらに、第5組成物のように、ゴム組成物が、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含む場合には、ゴム組成物の香りを、すがすがしくみずみずしい印象の花の香りへと方向付けできる。
さらに、第6組成物のように、ゴム組成物が、ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含む場合には、ゴム組成物の香りを、みずみずしくフレッシュな印象のフルーツや花の香りに方向付けできる。
【0059】
さらに、第7組成物ないし第9組成物によれば、架橋ゴムに由来する臭いがより効果的に消えて、ゴム臭がより感じられなくなる。
【0060】
以下、上記架橋ゴム組成物の実施形態についてより詳細に説明する。
【0061】
ゴム組成物を構成するゴムポリマーとしては、イオウや有機過酸化物などの架橋剤により架橋可能なゴムポリマーが使用できる。ゴムポリマーとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム(AR)、ブチルゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが例示されるが、これらに限定されない。ゴムポリマーはシリコーンゴムであってもよい。これらゴムポリマーを単独で、もしくは適宜混合して使用してもよい。また、ゴムポリマーに各種官能基等が導入されていてもよい。
【0062】
ゴム組成物に含まれるゴムポリマーは、ジエンをモノマー成分として含んで重合されたゴムポリマーであってもよい。そのようなゴムポリマーとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが例示されるが、これらに限定されない。
【0063】
ゴム組成物は、架橋剤としてイオウが配合されて、イオウ架橋されたものであってもよい。ゴム組成物には、所定量のイオウの他、架橋促進剤や安定剤、耐老化剤、補強材、充填材などが配合されていてもよい。
【0064】
ゴム組成物は、架橋剤として有機過酸化物が配合されて、有機過酸化物架橋されたものであってもよい。ゴム組成物には、所定量の有機過酸化物の他、架橋助剤(例えばTAIC等)、架橋促進剤や安定剤、耐老化剤、補強材、充填材などが配合されていてもよい。
【0065】
ゴム組成物の硬度は特に限定されず、例えばJIS―K 6253に規定されるデュロA硬度で30度~95度、好ましくは40度~90度程度であってもよい。また、ゴム組成物は発泡したものであってもよい。
【0066】
架橋されたゴム組成物には香料が添加されている。好ましくは、香料は、香料成分として、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む。これら香料成分は、いずれかを単独で添加してもよいが、これら香料成分のうち複数を組み合わせて添加するようにしてもよい。また、香料は、他の香料成分を含んでもよい。なお、以下の記載において、香料成分の記載として、和名や英名、CAS番号等を記載するが、香料成分は、単一の化学物質の名称で示す場合もあれば、複数の化学物質が混合された組成物の名称や、汎用される香料名で示す場合もある。
【0067】
そして、上記架橋ゴム組成物では、添加された香料の香りによりゴム臭が感じられない。ここで、ゴム臭が感じられないとは、ゴム臭の原因成分が消滅したことを意味するのではなく、臭いをかいでも、ゴム臭がしていることがわからなくなること、即ち、ゴム臭が消えたように感じることを意味する。
【0068】
すなわち、香料が配合されていない場合には、架橋されたゴム組成物では、ゴム組成物に含有される物質に由来する架橋したゴムに特有のにおい、すなわちゴム臭が生ずるものであるが、組成物ゴム組成物では、特定の香り成分を含む香料の香りとゴム組成物に由来するゴム臭とが一体にまとまった香りとして感じられ、ゴム臭を独立したにおいとして感じなくなっている。
【0069】
ここで、ゴム組成物に由来するゴム臭としては、典型的には、新品のタイヤ(例えばイオウ架橋したタイヤ)の匂いや、新品のゴムマット(例えば有機過酸化物架橋したゴムマット)の匂いが、ゴム組成物に由来するゴム臭として例示される。
【0070】
ゴム臭の原因物質(臭気成分)の詳細は定かではないが、ゴム組成物に含まれる、ゴムポリマーを重合する際に残存した低分子量成分(特にモノマー成分等)や、架橋剤や架橋助剤等の残滓や生成化合物、不純物等がゴム臭の原因物質となっているものと推定される。
ゴム臭の原因物質となりうるゴムポリマーを重合する際に残存したモノマー成分としては、例えば、ジエン成分のモノマーが例示される。また、イオウが架橋剤として使用されると、ゴム組成物中に有機イオウ化合物が生成することがあり、こうしたイオウ化合物も、ゴム臭の原因物質となりうる。また、有機過酸化物により架橋が行われると、架橋剤や架橋助剤の分解により、アミン類やアルデヒド、ケトン類が生成することがあり、これらが、ゴム臭の原因物質となりうる。こうした臭いの原因物質が組み合わされた際のにおいを、人間はいわゆるゴム臭として感じていたものと推定される。
【0071】
上記ゴム組成物の製造方法は、公知のゴム組成物の製造方法に準じる方法によることができる。ゴム組成物に香料を添加する手段は特に限定されず、架橋されたゴム組成物に対し、香料を塗布するなどして含浸させるようにしてもよい。
好ましくは、未架橋のゴム組成物に香料(香料成分)を練り込んだ後に、架橋を行って、香料が添加されたゴム組成物を製造することが好ましい。必須ではないが、香料の練りこみは、イオウや有機過酸化物の配合よりも後のタイミングもしくは同じタイミングで行われることが好ましい。香料の練りこみは、通常のゴムの練りこみと同じく、ニーダーや練りロール等により行うことができる。またゴムの架橋は、通常のゴムの架橋と同じく、架橋反応が開始・加速する所定の架橋温度以上に未架橋ゴム組成物を加熱することにより行うことができる。
【0072】
例えば、イオウを含む未架橋のゴム組成物に香料を練り込んだ後に、ゴム組成物を成形・架橋して、香料が添加され架橋されたゴム組成物を得ることができる。あるいは、有機過酸化物を含む未架橋のゴム組成物に香料を練り込んだ後に、ゴム組成物を成形・架橋して、香料が添加され架橋されたゴム組成物を得ることができる。
【0073】
未架橋のゴム組成物に香料を練り込んだ後に、架橋を行って、香料が添加されたゴム組成物を製造するようにすれば、香料がゴム組成物全体に分散して均一に配合されることになり、ゴム組成物全体にわたって、香料成分とゴム臭の原因物質の比率を一定にできる。そのため、ゴム組成物から空気中に放出される香料成分とゴム臭の原因物質の比率が長期間にわたって変化しにくく、ゴム臭が消えた良好な芳香が安定的に維持されやすくなる。
【0074】
以下、架橋ゴム組成物に添加される香料に含まれる香料成分の配合の実施形態について、より具体的かつ詳細に説明する。以下の説明において、香料成分の名称はなるべくchemical Bookに記載された名称で記載した。また、単一成分からなる合成香料等、明らかなものの一部について、各成分の英名やCAS番号をカッコ内に記載した。
【0075】
(香料配合の第1実施形態)
過度に強い香りを追加せずに、ゴム臭を特定の香りへと方向付けして感じなくさせるとの観点から、架橋ゴム組成物に添加される香料は、香料成分として、酢酸CIS-3-ヘキセニル(cis-3-hexenyl acetate: CAS-No 3681-71-8)を含むことが好ましい。酢酸CIS-3-ヘキセニルとCIS-3-ヘキセノール(cis-3-hexenol: CAS-No 928-96-1)が共に含まれる、すなわち併用されることが特に好ましい。香料成分酢酸CIS-3-ヘキセニルの添加により、ゴム臭を含むゴム組成物全体の香りが、草原や森、緑茶と言ったいわゆるグリーン系の香りへと方向付けられ、ゴム臭が感じられにくくなる。また、酢酸CIS-3-ヘキセニルとCIS-3-ヘキセノールを併用することにより、グリーン系への香りの方向付けがより顕著となる。
【0076】
また、香料に、香料成分として酢酸CIS-3-ヘキセニルを含ませる場合には、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかを共に含ませることが特に好ましい。香料成分として、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含むようにすれば、ゴム臭成分を含むゴム組成物全体の香りが、すがすがしくみずみずしい印象の花の香りへと方向付けられ、よりゴム臭が感じられにくくなる。香料成分として、これら4つの香料成分のうち3つないし4つを含ませることが特に好ましい。
【0077】
また、香料に、香料成分として酢酸CIS-3-ヘキセニルを含ませる場合には、ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを共に含ませることが特に好ましい。香料成分として、ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含むようにすれば、ゴム臭を含むゴム組成物全体の香りが、みずみずしくフレッシュな印象のフルーツや花の香りに方向付けられ、よりゴム臭が感じられにくくなる。香料成分として、これら3つの香料成分のすべてを含ませることが特に好ましい。
【0078】
また、香料に、香料成分として酢酸CIS-3-ヘキセニルを含ませる場合には、他の香料成分として、
3,7-ジメチル-6-オクテンニトリル(Citronellyl nitrile : CAS-No 51566-62-2)、
7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン(Calone : CAS-No 28940-11-6)、
γ-デカノラクトン(Gamma decalactone : CAS-No 706-14-9)、
γ-ウンデカノラクトン(Gamma undecalactone : CAS-No 104-67-6)、
酢酸2-メチルブチル(2-methyl butyl acetate : CAS-No 624-41-9)、
オクタン酸2-プロペニル(Aldehyde c-19 : CAS-No 4230-97-1)、
ヘプタン酸アリル(Allyl heptanoate : CAS-No 142-19-8)、
酪酸1,1-ジメチル-2-フェニルエチル(D.B.C-n-butyrat : CAS-No 10094-34-5)、
DL-2-メチル酪酸エチル(Ethyl 2-methyl butyrate : CAS-No 7452-79-1)、
アセト酢酸エチル(Ethyl acet acetate : CAS-No 141-97-9)、
酪酸エチル(Ethyl butyrate : CAS-No 105-54-4)、
イソ吉草酸エチル(Ethyl iso-valerate : CAS-No 108-64-5)、
γ-ノナノラクトン(Gamma nonalactone : CAS-No 104-61-0)、
酢酸ヘキシル(Hexyl acetate : CAS-No 142-92-7)、
ヘキサン酸ヘキシル(Hexyl caproate : CAS-No 6378-65-0)、
酢酸イソアミル(Iso-amyl acetate : CAS-No 123-92-2)、
DL-2-メチル酪酸メチル(Methyl 2 methyl butyrate : CAS-No 868-57-5)、
2-メチルプロパン酸2-フェニルエチル(Phenyl ethyl iso butyrate : CAS-No 103-48-0)、
イソ酪酸2-フェノキシエチル(Phenoxy ethyl iso butyrate : CAS-No 103-60-6)、
酢酸2-(tert-ブチル)シクロヘキシル(OTBCHA : CAS-No 88-41-5)、
3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール(Ethyl linalool : CAS-No 10339-55-6)、
リンゴベース、
酢酸 3-メチル-2-ブテニル(Prenyl acetate : CAS-No 1191-16-8)、
2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸エチル(Fructone : CAS-No 6413-10-1)、
cis-3-ヘキセン-1-オール(Cis-3-hexenol : CAS-No 928-96-1)、
シクロヘキサンプロピオン酸アリル (Allyl cyclohexyl propionate : CAS-No 2705-87-5)、
プロピオン酸ブチル(Butyl propionate : CAS-No 590-01-2)、
酪酸ブチル(Butyl butyrate : CAS-No 109-21-7)、
プロピオン酸ベンジル(Benzyl propionate : CAS-No 122-63-4)
等を配合することが好ましい。これら香料成分が酢酸CIS-3-ヘキセニルと共に配合されると、ゴム組成物全体の香りがグリーン系の香りにまとまりやすい。
【0079】
また、上記香料成分に加え、さらに、
ヘキサン酸アリル(Allyl hexanoate : CAS-No 123-68-2)、
ベンズアルデヒド(Benzaldehyde : CAS-No 100-52-7)、
3-(4-イソプロピルフェニル)イソブチルアルデヒド(Cyclamen aldehyde : CAS-No 103-95-7)、
β-イオノン(Ionone beta : CAS-No 14901-07-6)、
酢酸1-フェニルエチル(Styrallyl acetate : CAS-No 93-92-5)、
1-ヘキサノール(CAS-No 111-27-3)、
n-オクタナール(CAS-No 124-13-0)、
ヘプタナール(CAS-No 111-71-7)、
ノナナール(CAS-No 124-19-6)、
クマリン(CAS-No 91-64-5)、
ダマスコンα(CAS-No 43052-87-5)、
2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール(CAS-No 18479-58-8)、
1,3,4,6,7,8ヘキサヒドロ4,6,6,7,8,8ヘキサメチルシクロペンタγ2ベンゾピラン(CAS-No 1222-05-5)、
安息香酸ベンジル(CAS-No 120-51-4)、
ゲラニオール(CAS-No 106-24-1)、
オキサシクロヘキサデセン-2-オン(Oxacyclohexadec-12-en-2-one, (12E)-)(CAS-No 111879-80-2)、
インドール(CAS-No 120-72-9)、
1-メチル-3-(2,4,4-トリメチル-1-シクロヘキセン-3-イル)-2-プロペン-1-オン(CAS-No 6901-97-9)、
イロン(CAS-No 54992-91-5)、
(2S,5S)-α,α-ジメチル-5-メチル-5β-ビニルテトラヒドロフラン-2α-メタノール(CAS-No 1365-19-1)、
リナロール(CAS-No 78-70-6)、
p-メンタン-3-オン(CAS-No 10458-14-7)、
4-(1-プロペニル)-1,2-ジメトキシベンゼン(CAS-No 93-16-3)、
ネロール(CAS-No 106-25-2)、
ネロリドール (cis-, trans-混合物)(CAS-No 7212-44-4)、
2'-アセトナフトン(CAS-No 93-08-3)、
2-フェニルエチルアルコール(CAS-No 60-12-8)、
2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール(CAS-No 28219-60-5)、
rac-(R*)-α,α,4-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-メタノール(CAS-No 8000-41-7)、
ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド (CAS-No 27939-60-2)、
イソブチルメチルテトラヒドロピラノール(Florol : CAS-No 63500-71-0)、
ジヒドロジャスモン酸メチル (cis-, trans-混合物)(Methyl dihydro jasmonate : CAS-No 24851-98-7)、
ローズ・ジャスミンベース、
オレンジ油(Orange sweet oil : CAS-No 8008-57-9)、
エチレングリコールブラシラート(MUSK T : CAS-No 105-95-3)、
(-)-アンブロキシド(AMBROXAN : CAS-No 6790-58-5)、
サリチル酸 cis-3-ヘキセン-1-イル(Cis-3-hexenyl salicylate : CAS-No 65405-77-8)、
酢酸1,1-ジメチル-2-フェニルエチル(DBCA : CAS-No 151-05-3)、
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3-エン-8-オールアセタート(Jasmacyclene : CAS-No 5413-60-5)、
酢酸3,7-ジメチル-2,6-オクタジエニル (酢酸ゲラニル)(Geranyl acetate : CAS-No 105-87-3)、
酢酸リナリル (酢酸3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-イル)(Linalyl acetate : CAS-No 115-95-7)、
ハバノライド(HABANOLIDE : CAS-No 34902-57-3, 111879-80-2)、
4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン(Raspberry ketone : CAS-No 5471-51-2)、
α-ヘキシルシンナムアルデヒド(α-Hexyl cinnamic aldehyde : CAS-No 101-86-0)、
2-エチル-3-ヒドロキシ-4-ピロン(Ethyl maltol : CAS-No 4940-11-8)、
などを配合してもよい。
これら香料を適宜追加して組み合わせることにより、ゴム臭を感じにくくしながら、まとまりよいグリーン系の香りが全体の香りとして実現されうる。
【0080】
(香料配合の第2実施形態)
過度に強い香りを追加せずに、ゴム臭を特定の香りへと方向付けして感じなくさせるとの観点から、上記架橋ゴム組成物に添加される香料は、香料成分として、β-シトロネロール(citronellol: CAS-No 106-22-9),酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル(4-tert-Butylcyclohexyl acetate: CAS-No 32210-23-4),ヘプタン酸アリル(Allyl heptanoate: CAS-No 142-19-8)のいずれかを含むことが好ましい。中でも、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを共に含むことが特に好ましい。香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかを添加することにより、ゴム臭成分を含むゴム組成物全体の香りが、ユリやスズランといったいわゆるフローラル系のすがすがしい香りへと方向付けられ、ゴム臭が感じられにくくなる。香料成分として、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのうち2つ、もしくは3つを含むことが特に好ましい。香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを併用すると、特にフローラル系の香りへの方向付けが顕著なものとなる。
【0081】
また、香料に、香料成分として、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル、ヘプタン酸アリルのいずれかを含ませる場合には、酢酸CIS-3-ヘキセニルを共に含ませることが特に好ましい。これにより、ゴム臭成分を含むゴム組成物全体の香りが、みずみずしい花束のような香りへと方向付けられ、ゴム臭が感じられにくくなる。
【0082】
香料に、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかを含ませる場合には、他の香料成分として、
2-フェニルエチルアルコール(phenethyl alcohol : CAS-No 60-12-8)、
ゲラニオール(geraniol : CAS-No 106-24-1)、
酢酸2-メチルブチル(2-methyl butyl acetate : CAS-No 624-41-9)、
オクタン酸2-プロペニル(Aldehyde c-19 : CAS-No 4230-97-1)、
cis-3-ヘキセン-1-オール(Cis-3-hexanol : CAS-No 928-96-1)、
酢酸cis-3-ヘキセニル(cis-3-hexenyl acetate : CAS-No 3681-71-8)、
酪酸1,1-ジメチル-2-フェニルエチル(D.B.C-n-butyrat : CAS-No 10094-34-5)、
DL-2-メチル酪酸エチル(Ethyl 2-methyl butyrate : CAS-No 7452-79-1)、
アセト酢酸エチル(Ethyl acet acetate : CAS-No 141-97-9)、
酪酸エチル(Ethyl butyrate : CAS-No 105-54-4)、
イソ吉草酸エチル(Ethyl iso-valerate : CAS-No 108-64-5)、
γ-デカノラクトン(Gamma decalactone : CAS-No 706-14-9)、
γ-ノナノラクトン(Gamma nonalactone : CAS-No 104-61-0)、
γ-ウンデカノラクトン(Gamma undecalactone : CAS-No 104-67-6)、
酢酸ヘキシル(Hexyl acetate : CAS-No 142-92-7)、
ヘキサン酸ヘキシル(Hexyl caproate : CAS-No 6378-65-0)、
酢酸イソアミル(Iso-amyl acetate : CAS-No 123-92-2)、
DL-2-メチル酪酸メチル(Methyl 2 methyl butyrate : CAS-No 868-57-5)、
2-メチルプロパン酸2-フェニルエチル(Phenyl ethyl iso butyrate : CAS-No 103-48-0)、
イソ酪酸2-フェノキシエチル(Phenoxy ethyl iso butyrate : CAS-No 103-60-6)、
酢酸2-(tert-ブチル)シクロヘキシル(OTBCHA : CAS-No 88-41-5)、
3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール(Ethyl linalool : CAS-No 10339-55-6)、
リンゴベース、
酢酸 3-メチル-2-ブテニル(Prenyl acetate : CAS-No 1191-16-8)、
2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸エチル(Fructone : CAS-No 6413-10-1)、
シクロヘキサンプロピオン酸アリル (Allyl cyclohexyl propionate : CAS-No 2705-87-5)、
プロピオン酸ブチル(Butyl propionate : CAS-No 590-01-2)、
酪酸ブチル(Butyl butyrate : CAS-No 109-21-7)、
プロピオン酸ベンジル(Benzyl propionate : CAS-No 122-63-4)
等を配合することがより好ましい。これら香料成分がβ-シトロネロールや酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルと共に配合されると、ゴム組成物全体の香りがフローラル系の香りにまとまりやすい。
【0083】
また、上記香料成分に加え、さらに、
クマリン(coumarin : CAS-No 91-64-5)、
p-アニスアルデヒド(anisaldehyde : CAS-No 123-11-5)、
テトラヒドロリナロール(tetrahydrolinalool : CAS-No 78-69-3)、
2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール(santalinol : CAS-No 28219-60-5)、
2-アセチル-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン(Amber Fleur : CAS-No 54464-57-2)、
イソブチルメチルテトラヒドロピラノール(Florol : CAS-No 63500-71-0)、
ジヒドロジャスモン酸メチル (cis-, trans-混合物)(Methyl dihydro jasmonate : CAS-No 24851-98-7)、
ローズ・ジャスミンベース、
オレンジ油(Orange sweet oil : CAS-No 8008-57-9)、
エチレングリコールブラシラート(MUSK T : CAS-No 105-95-3)、
(-)-アンブロキシド(AMBROXAN : CAS-No 6790-58-5)、
サリチル酸 cis-3-ヘキセン-1-イル(Cis-3-hexenyl salicylate : CAS-No 65405-77-8)、
酢酸1,1-ジメチル-2-フェニルエチル(DBCA : CAS-No 151-05-3)、
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3-エン-8-オールアセタート(Jasmacyclene : CAS-No 5413-60-5)、
酢酸3,7-ジメチル-2,6-オクタジエニル (酢酸ゲラニル)(Geranyl acetate : CAS-No 105-87-3)、
酢酸リナリル (酢酸3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-イル)(Linalyl acetate : CAS-No 115-95-7)、
ハバノライド(HABANOLIDE : CAS-No 34902-57-3, 111879-80-2)、
4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン(Raspberry ketone : CAS-No 5471-51-2)
などを配合してもよい。
これら香料を適宜追加して組み合わせることにより、ゴム臭を感じにくくしながら、まとまりよくすがすがしいフローラル系の香りが全体の香りとして実現されうる。
【0084】
(香料配合の第3実施形態)
過度に強い香りを追加せずに、ゴム臭を特定の香りへと方向付けして感じなくさせるとの観点から、上記架橋ゴム組成物に添加される香料は、香料成分として、ヘキサン酸アリル(Allyl hexanoate: CAS-No 123-68-2),カローン(Calone: CAS-No 28940-11-6)のいずれかを含むことが好ましい。これら香料成分の添加により、ゴム臭を含むゴム組成物全体の香りが、パイナップルやモモといったいわゆるフルーツ系の甘酸っぱい香りへと方向付けられ、ゴム臭が感じられにくくなる。香料成分として、ヘキサン酸アリル,カローンの双方を含むことが特に好ましく、フルーツ系の香りへの方向付けがより顕著なものとなる。
【0085】
また、香料に、香料成分としてヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含ませる場合には、酢酸CIS-3-ヘキセニルを共に含ませることが特に好ましい。これにより、ゴム臭成分を含むゴム組成物全体の香りが、みずみずしいフルーティーな香りへと方向付けられ、ゴム臭が感じられにくくなる。
【0086】
香料に、香料成分としてヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含ませる場合には、他の香料成分として、
cis-3-ヘキセン-1-オール(cis-3-hexenol : CAS-No 928-96-1)、
酢酸cis-3-ヘキセニル(cis-3-hexenyl acetate : CAS-No 3681-71-8)、
オクタン酸2-プロペニル(Aldehyde c-19 : CAS-No 4230-97-1)、
酪酸エチル(Ethyl n-butyrate : CAS-No 105-54-4)、
γ-ウンデカノラクトン(Gamma undecalactone : CAS-No 104-67-6)、
酢酸ヘキシル(Hexyl acetate : CAS-No 142-92-7)、
酢酸イソアミル(Iso-amyl acetate : CAS-No 123-92-2)、
酢酸2-(tert-ブチル)シクロヘキシル(OTBCHA : CAS-No 88-41-5)、
3,7-ジメチル-6-オクテンニトリル(Citronellyl nitrile : CAS-No 51566-62-2)、
γ-デカノラクトン(Gamma decalactone : CAS-No 706-14-9)
等を配合することがより好ましい。これら香料成分がヘキサン酸アリルやカローンと共に配合されると、ゴム組成物全体の香りがフルーツ系の香りにまとまりやすい。
【0087】
また、上記香料成分に加え、さらに、
α-ヘキシルシンナムアルデヒド(α-Hexyl cinnamic aldehyde : CAS-No 101-86-0)、
2-エチル-3-ヒドロキシ-4-ピロン(Ethyl maltol : CAS-No 4940-11-8)、
1,3,4,6,7,8ヘキサヒドロ4,6,6,7,8,8ヘキサメチルシクロペンタγ2ベンゾピラン(Galaxolide : CAS-No 1222-05-5)、
ベンズアルデヒド(Benzaldehyde : CAS-No 100-52-7)、
3-(4-イソプロピルフェニル)イソブチルアルデヒド(Cyclamen aldehyde : CAS-No 103-95-7)、
β-イオノン(Ionone beta : CAS-No 14901-07-6)、
酢酸1-フェニルエチル(Styrallyl acetate : CAS-No 93-92-5)
などを配合してもよい。
これら香料を適宜追加して組み合わせることにより、ゴム臭を感じにくくしながら、まとまりよくフルーツ系の香りが全体の香りとして実現されうる。
【0088】
以上のように、架橋ゴム組成物に香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含ませると、ゴム組成物のゴム臭が消える。すなわち、ゴム臭を感じなくすることができる。ゴム臭を感じなくなるメカニズムの詳細は不明であるが、ゴム臭の原因物質である、モノマー成分や有機イオウ化合物、アミン類などといった、ゴムに特有の臭気成分と、上記香料成分が、鼻で同時に感じられた際に、ゴム臭とは別のにおい/香りとして認識されやすくなって、ゴム臭が感じられなくなるものと推定される。
【0089】
このような、ゴム臭を他の香りに認識させて消す作用は、香料成分β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンやこれら香料成分の固有の組み合わせに特有の性質であることを発明者らは発見した。他の香料成分、例えば、クマリンやオイゲノールといった香料成分では、ゴム臭の臭気成分との相性が悪いのか、香料の香りがする一方で、ゴム臭はゴム臭として感じられ、香料のいい香りとゴム臭の不快な香りが混じった香りとして感じられてしまい、うまくゴム臭が消えない。
【0090】
なお、ゴムには多様な種類があり、それぞれのゴム臭は厳密には異なっているが、ゴム臭の主要な原因物質は、ゴム組成物に含まれるモノマー成分や、イオウ架橋により生ずる有機イオウ化合物や、過酸化物架橋の際に生ずるアミン類やアルデヒド、ケトン類であることが多く、これらは多様なゴムのゴム臭に共通する臭気成分となっている。従って、上記香料成分β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンを含ませることにより、多様なゴム組成物のゴム臭を消すことができる。
【0091】
例えば、ゴム組成物が、ジエンをモノマー成分として含んで重合されたゴムポリマーを含む場合には、ジエンモノマーや関連する低分子量化合物が、架橋されたゴム組成物中に残存しやすい。これらジエンモノマーはゴム組成物のゴム臭の原因物質として典型的な臭気成分となる。後述する実施例(配合例)の評価結果からも明らかなように、上記香料成分β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンは、ゴム組成物が、ジエンをモノマー成分として含んで重合されたゴムポリマーを含む場合にも、効果的にゴム臭を消すことができる。なお、本段落以降における実施例/比較例とは、架橋ゴム組成物を発明の対象とした際の実施例/比較例を意味する。
【0092】
例えば、ゴム組成物の架橋がイオウ架橋である場合には、イオウ架橋により生ずる有機イオウ化合物が、架橋されたゴム組成物中に残存しやすい。有機イオウ化合物はゴム組成物のゴム臭の原因物質として典型的な臭気成分となる。後述する実施例の評価結果からも明らかなように、上記香料成分β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンは、ゴム組成物の架橋がイオウ架橋である場合にも、効果的にゴム臭を消すことができる。
【0093】
例えば、ゴム組成物の架橋が有機過酸化物架橋である場合には、有機過酸化物架橋により生ずるアミン類やアルデヒド、ケトン類が、架橋されたゴム組成物中に残存しやすい。これらアミン類やアルデヒド、ケトン類は、ゴム組成物のゴム臭の原因物質として典型的な臭気成分となる。後述する実施例の評価結果からも明らかなように、上記香料成分β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンは、ゴム組成物の架橋が有機過酸化物架橋である場合にも、効果的にゴム臭を消すことができる。
【0094】
上記香料成分β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンを含むゴム組成物により各種ゴム製品を製造すれば、ゴム製品から不快なゴム臭ではなく好ましい香気を発するようにできる。例えば、マットを上記ゴム組成物により製造すれば、マットからゴム臭が消える一方で、いい香りが出るようになって、特に室内で使用するマットに適したマットになる。
【0095】
得られた架橋ゴム組成物は、ゴム臭が他の香りになって消えている点を除けば、通常のイオウ架橋されたゴム組成物と同様に取り扱い、使用することができる。ゴム組成物の用途は、例えば、ゴムシートやマットレス、枕、クッション材、ゴム製ダクト、ゴムチューブ、ゴムホース、スポーツ用品、ゴムバンド、アクセサリ等、人間の生活空間に近い場所でゴム部材が使用される用途にも好ましく使用できる。ゴム組成物が利用される分野は特に制限されない。
【実施例0096】
以下、添加する香料成分の具体的な配合例と、各配合例において、ゴム臭が香料の香りと一体化されてどのような香りになって、ゴム臭として感じられなくなったのかを例示する。
【0097】
(香料の調整)
以下のように、各実施例や比較例のゴム組成物に配合する香料を調製した。各香料の配合において、配合量は重量部で示しており、微量な香料成分は記載を表から省略し、代表的な微量香料成分を説明した。また、各香料には、溶剤としてジオクチルフタレートをそれぞれ適量配合し、粘度等を調整した。
【0098】
(香料1)
表1に示すような配合で香料1を調製した。この香料はβ-シトロネロールと酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを含んでおり、前記第2実施形態の香料配合に対応する。表1の香料成分の記載では、配合量が1重量部未満の微量な香料成分の記載は省略した。
【0099】
【0100】
(香料2)
表2に示すような配合で香料2を調製した。この香料はヘキサン酸アリルとカローンと酢酸CIS-3-ヘキセニルを含んでおり、前記第3実施形態もしくは第1実施形態の香料配合に対応する。表2の香料成分の記載では、配合量が1重量部未満の微量な香料成分の記載は省略した。
【0101】
【0102】
(香料3)
表3に示すような配合で香料3を調製した。この香料はCIS-3-ヘキセノールと酢酸CIS-3-ヘキセニルを含んでおり、前記第1実施形態の香料配合に対応する。
この香料は、表3の香料成分の他に、配合量が1重量部未満の微量な香料成分として、インドール、n-オクタナールなどを含んでいる。表3の香料成分の記載では、他の微量な香料成分の記載は省略した。
【0103】
【0104】
(香料4)
表4に示すような配合で香料4を調製した。この香料は酢酸CIS-3-ヘキセニルとヘプタン酸アリルを含んでおり、前記第1実施形態もしくは第2実施形態の香料配合に対応する。表4の香料成分の記載では、配合量が1重量部未満の微量な香料成分の記載は省略した。
【0105】
【0106】
(対比香料1)
表5に示すような配合で対比香料1を調製した。この対比香料はβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンを含まない。この香料は、特許文献:特開平7-69003号)の表2に記載されている従来技術の香料配合に対応する。
【0107】
【0108】
(対比香料2)
表6に示すような配合で対比香料2を調製した。この対比香料はβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンを含まない。具体的には、この香料は、前記香料1(表1)の香料配合から、β-シトロネロールと酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを除いたものに対応する対比香料である。
【0109】
【0110】
(ゴム組成物サンプルの調製)
表7、表8に示すようなゴムの種類(アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、架橋方法(イオウ架橋、有機過酸化物架橋)、香料の組み合わせで、各香料と未架橋ゴム組成物を練りロールにより混練した。表中の数字は重量部である。
なお、イオウ架橋するゴム組成物には、加工助剤(ステアリン酸等)や架橋促進剤(ノクセラーDM-P等)等を添加している。また、有機過酸化物架橋の架橋剤はパーオキサイド(パーヘキサ等)や架橋促進剤(活性亜鉛華等)等を添加している。
【0111】
混練した未架橋ゴム組成物を厚さ2mmのシート状にロール成形して、ギアオーブンにより加熱して架橋し、各実施例、比較例の架橋されたゴム組成物を得た。ゴムや香料の欄の数値は重量部である。また、比較例4、比較例5、比較例6は、香料を配合していないゴム組成物であり、これら比較例はゴム臭がする通常のゴム組成物の例として作成した。
【0112】
【0113】
【0114】
作成された各架橋ゴム組成物製のシートを、10cmx10cmの大きさに切り出して香り評価サンプルを作成し、香りの評価を行った。香りの評価はゴムの製造に関与する一般人3名(A,B,C)、および香気の鑑定や調香等、香りに関連する業務に携わる者3名の評価者(D,E,F)により行った。各評価者は、それぞれ、比較例4,5,6のゴム臭を確認したのちに、実施例やその他の比較例の評価サンプルのにおいを順不同に嗅いで、各評価サンプルの評価を付けた。
【0115】
各サンプルに対する香り評価試験の評価項目は「ゴム臭の有無(ゴム臭がわかるか/感じるか?)」と「香り/においの良さ」、「香り/においのつよさ」である。全般に評点の数字が大きいほど、人間の生活空間における香りとして適している。評点と評価レベルの対応を表9に示す。一般人の評価者は、においの印象や強さについてコメントした。また、調香師である評価者は、各評価サンプルが、どのような臭いに感じられるかについて、より具体的な言葉で表現し、コメントした。
【0116】
「ゴム臭の有無」
評価サンプルの匂いを嗅いだ際に、「新品のタイヤの匂い」等を連想させるようなゴム臭を感じたかどうかを、「1:ゴム臭そのものである/2:ゴム臭がするとわかる/3:気を付けるとゴム臭がわかる/4:集中しないとゴム臭がわからない/5:ゴム臭がわからない」の5段階評価で評点を付けた。評点4および評点5であると、一般の人にはゴム臭がほとんど感じられないレベルである。
【0117】
「香り/においの良さ」
評価サンプルの全体の香りの調子や調和度、違和感などを総合して、よい香りかどうかを、「1:嫌な臭い/2:変な臭い/3:普通の臭い/4:良い香り/5:とても良い香り」の5段階評価で評点を付けた。
【0118】
「香り/においの強さ」
評価サンプルの香りがどのくらい強く感じられたかを評価し、きついにおいに感じられた際には、評価時にその旨コメントするようにした。
【0119】
【0120】
各実施例、各比較例に対する評価結果を表10ないし表14に示す。表10、表11は、一般人の評価結果である。表10が実施例に対する一般人(A,B,C)の評価結果であり、表11が各比較例に対する一般人の評価結果である。
表12には、香りの評価に関する業務に携わる3人の評価者(D,E,F)の評点の平均値と評価コメントを示している。それぞれの評価者の評点は表13、表14に示している。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
これら表に示された評価結果によれば、実施例1ないし実施例6の架橋ゴム組成物の評価サンプルでは、ゴム臭がほとんど消えて感じられなくなっている。また、これら実施例では、ゴム組成物の香りが好ましいものとなっている。特に、一般人の評価では、実施例ではほとんどゴム臭が感じられなくなっている。調香師による評価では、調香師の臭いを感知する能力が非常に高いため、一般人と比べると、評点が下がる傾向がみられるが、それでもなお、ほとんどゴム臭がわからないとの評価結果となった。
【0127】
また、これら実施例では、架橋ゴム組成物の香りの強さ(全体的なレベル)はそれほど強くなく、はっきりとした香りやほのかな香りがする香りのレベルになっていた。すなわち、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む香料が添加されていれば、添加する香料の香りを極端に強くしなくても、ゴム臭を感じなくすることができる。
【0128】
一方、比較例1、比較例2では、各実施例と同じレベルで所定量の香料が添加されたにも関わらず、ゴム臭がわかりやすい。これら比較例では、調香師だけでなく、一般人にもゴム臭が感じられてしまう。その結果、香料の香りとゴム臭とが混じったような変な臭いがするようになってしまっている。そして、感じられるにおいのレベルもやや鼻につくレベルとなってしまっている。すなわち、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかが香料に含まれていないと、ゴム臭が消えにくいことがわかった。
【0129】
比較例3は、ゴム臭が感じられなくなることを意図し、香料の添加量を極端に多くした評価サンプルである。この評価サンプルでは、ゴムに添加できる限界の量をほぼ超える程度まで香料を加えている。この評価サンプルでは、加硫したゴムの表面に香料成分がブリードアウトしているようにべたつくようになっており、ゴム製品として実用的なレベルを外れてしまっている。しかしながら、この比較例3では、ややゴム臭がわかりにくくはなったものの、意図した香りでゴム臭を消すには至らず、「ゴム臭が消えていない」「全体の臭いがきつい」との評価が出た。ゴムに対する配合量を変化させた比較サンプルも試したが、対比香料1や対比香料2を用いた比較評価サンプルでは、「ゴム臭が感じられない」という評価が得られ、かつ実用的なサンプルは得られなかった。
すなわち、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかが香料に含まれないと、添加する香料の香りをあまり強くしなくてもゴム臭が感じられなくなるようにはできないことが、これら比較例によりわかった。
【0130】
また、実施例1、実施例5、実施例6の評価結果を比べると、いずれの評価サンプルも同様にゴム臭が感じられなくなり、適度なレベルの良い香りがするとの評価結果が得られている。これらのことから、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む香料が添加されていれば、ゴムの種類や架橋方法が変わっても、同様に、ゴム臭が消せることが示された。