(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041446
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】紐なしマスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220304BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A41D13/11 D
A62B18/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146651
(22)【出願日】2020-09-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】520017362
【氏名又は名称】株式会社トライキッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100175787
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 龍也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 武嗣
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185AA07
2E185CC36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】皮脂や汗でマスクが外れ難く、メイク(化粧)も落ち難く、着用感が快適な紐なしマスクを提供する。
【解決手段】紐なしマスク1は、着用者の顔面の全部または一部を覆うマスク本体2と、マスク本体2を着用者の頭部に固定する、左右一対の固定部材4,6と、を備え、固定部材4,6がマスク本体2の左右の側縁部から左右外側方向に延出され、マスク本体2および固定部材4,6が可撓性を有する樹脂シートからなり、樹脂シートとして、マスク左側部を構成する第1樹脂シート8と、マスク右側部を構成する第2樹脂シート10と、を有し、第1樹脂シート8と第2樹脂シート10が重ね合わされ、マスク本体2の中心部に当たる前端部同士で結合されて一体化されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐なしマスクであって、
着用者の顔面の全部または一部を覆うマスク本体と、前記マスク本体を着用者の頭部に固定する、左右一対の固定部材と、を備え、
前記固定部材が前記マスク本体の左右の側縁部から左右外側方向に延出され、
前記マスク本体および前記固定部材が可撓性を有する樹脂シートからなり、
前記樹脂シートとして、マスク左側部を構成する第1樹脂シートと、マスク右側部を構成する第2樹脂シートと、を有し、
前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートが重ね合わされ、マスク本体の中心部に当たる前端部同士で結合されて一体化されているもの。
【請求項2】
請求項1に記載の紐なしマスクであって、
前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートを重ね合わせ、マスク本体の中心部に当たる前端部同士を貼り合わせることにより一体化されており、
前記第1樹脂シートおよび前記第2樹脂シートの前端形状が高さ方向の中央部を前方に向かって凸とする凸形状に形成され、
前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートとの貼り合わせ部形状が高さ方向の中央部を前方に向かって凸とする凸形状に形成されているもの。
【請求項3】
請求項2に記載の紐なしマスクであって、
前記第1樹脂シートおよび前記第2樹脂シートの前端形状が高さ方向の中央部を前方に向かって凸とする円弧状に形成され、
前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートとの貼り合わせ部形状が高さ方向の中央部を前方に向かって凸とする円弧状に形成されているもの。
【請求項4】
請求項2または3に記載の紐なしマスクであって、
前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートとの貼り合わせ部の縁部に沿って、前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートのいずれか一方の表面のみに折り目線が形成されているもの。
【請求項5】
請求項1に記載の紐なしマスクであって、
前記固定部材の末端部に前記マスク本体と結合可能な結合手段を有するもの。
【請求項6】
請求項5に記載の紐なしマスクであって、
前記固定部材の前記結合手段が前記固定部材の上端側および下端側の各々から高さ方向中央側に向かって形成された切り込みであり、
前記マスク本体の左右の側縁部に前記切り込みと係合可能なフック部が形成されているもの。
【請求項7】
請求項1に記載の紐なしマスクであって、
前記固定部材の高さ方向中央部に、前記固定部材に発生する応力を逃がす脆弱部が形成されているもの。
【請求項8】
請求項1に記載の紐なしマスクであって、
前記固定部材の高さ方向中央部に、前記固定部材の長手方向に沿って打ち抜き部が形成され、前記固定部材が前記打ち抜き部を挟んで上下2本に分離した構造となっているもの。
【請求項9】
請求項1に記載の紐なしマスクであって、
前記樹脂シートが、透明樹脂シートによって構成されているもの。
【請求項10】
請求項1に記載の紐なしマスクであって、
前記マスク本体が、着用者の鼻および口を覆い、着用者の目を覆わない形状に構成されているもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳掛け紐のない紐なしマスクの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウィルス感染症の流行により、感染防止手段としてのマスクの重要性が増している。マスクにより、他者から着用者への飛沫感染または着用者から他者への飛沫感染を有効に防止することができるからである。
【0003】
ところで、従来のマスクは耳掛け紐により着用者の頭部に固定することが一般的であった。しかし、耳掛け紐は耳に紐が食い込み、耳が痛くなる等、装着時の快適さに欠けるという問題があった。
【0004】
そこで、近年、耳掛け紐を有しないマスクが提案されている。例えば、マスク本体の顔面に相対する面の周辺部に粘着層を形成した複数のテープを設けて顔面に装着可能とした、紐なしマスクが提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、マスクの本体部と、その周囲部分に設けられた吸盤とを備え、この吸盤を顔面へ押し付けて前記本体部の周囲部分を顔面へ吸着させることにより、前記本体部を顔面へ直接固定するマスクが提案されている(特許文献2)。
【0006】
更に、アンカー部材を顔面の複数ヶ所へ貼り付けておき、このアンカー部材に対してマスク本体部の取付部を係合等で着脱自在に支持することにより、マスクの本体部を顔面へ固定するマスクが提案されている(特許文献3)。
【0007】
また、マスク本体と、マスク本体を顔面上で支持する支持体とを備え、支持体が顔面を含む頭部の一部を挟持して支持するばね挟持体であるマスクが提案されている(特許文献4)。
【0008】
更に、ほぼ半球状の面に形成したマスク本体の両側に本体の曲面の延長で内側に湾曲した顔面を弾性挟持する挟持部を延設した多目的マスクが提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3223201号
【特許文献2】特許第4197688号
【特許文献3】特許第4684318号
【特許文献4】特許第3062188号
【特許文献5】特許第3742418号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に記載の紐なしマスク、特許文献2に記載のマスクまたは特許文献3に記載のマスクは顔面に直接的にマスクを固定する部材を貼り付ける構造であるため、皮脂や汗でマスクが外れ易い;メイク(化粧)が落ち易い;といった課題があった。
【0011】
また、特許文献4に記載の多目的マスクまたは特許文献5に記載のマスクは、支持体または挟持部から発生する弾性力によって着用者の顔面(頬等)を強く挟み付ける構造であるため、頬やこめかみに支持体または挟持部が食い込み、頬やこめかみが痛くなる等、装着時の快適さに欠けるという問題があった。
【0012】
本発明は、前記のような従来技術が有する課題を解決するものである。すなわち、本発明は、皮脂や汗でマスクが外れ難く、メイク(化粧)も落ち難く、着用感が快適な紐なしマスクを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記従来技術、特に特許文献4に記載の多目的マスクまたは特許文献5に記載のマスクの課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。そして、前記多目的マスク等を装着時した際に締め付けの不快感を生ずる原因は、着用者の顔面を挟み付ける支持体(または挟持部)とカップ状に成形されたマスク本体と一体性が高く、マスク本体に前記支持体等の動きが拘束されている点;前記支持体等の剛性が高く、変形し難い点;によるものであることを見出した。
【0014】
そこで、本発明者は、前記支持体(または挟持部)に相当する、左右一対の固定部材を可撓性の高い樹脂シートで構成すること;マスク本体を左右の樹脂シートから構成し、その樹脂シートを重ね合わせ、マスク本体の中心部に当たる前端部同士を結合し一体化すること;によって、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、前記課題は以下に示す本発明によって解決される。
【0015】
[1]紐なしマスク:
本発明は、紐なしマスクであって、着用者の顔面の全部または一部を覆うマスク本体と、前記マスク本体を着用者の頭部に固定する、左右一対の固定部材と、を備え、前記固定部材が前記マスク本体の左右の側縁部から左右外側方向に延出され、前記マスク本体および前記固定部材が可撓性を有する樹脂シートからなり、前記樹脂シートとして、マスク左側部を構成する第1樹脂シートと、マスク右側部を構成する第2樹脂シートと、を有し、前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートが重ね合わされ、マスク本体の中心部に当たる前端部同士で結合されて一体化されているもの;である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の紐なしマスクは、皮脂や汗でマスクが外れ難く、メイク(化粧)も落ち難く、着用感が快適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の紐なしマスクの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す紐なしマスクを畳んだ状態を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す紐なしマスクの一方の固定部材を内側に曲げ込んだ状態を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す紐なしマスクの一方の固定部材をマスク本体に係合させた状態を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図1に示す紐なしマスクの双方の固定部材をマスク本体に係合させた状態を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図1に示す紐なしマスクの双方の固定部材をマスク本体に係合させ、更に開いた状態を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図1に示す紐なしマスクを着用する方法を模式的に示す図である。
【
図8】
図1に示す紐なしマスクを着用した状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照しながらさらに具体的に説明する。但し、本発明は特許請求の範囲に記載された要件を満たす全ての形態を包含し、図面に示された形態のみに限定されるものではない。
【0019】
[1]本発明の特徴:
本発明の紐なしマスクは、
図1に示す紐なしマスク1のように、左右一対の固定部材4,6を備えている。
【0020】
紐なしマスク1は、
図7および
図8に示すように、固定部材4,6によって着用者の頭部を挟み込むようにしてマスク本体1を着用者の頭部に固定することができる。従って、耳掛け紐を有する従来のマスクのように耳に紐が食い込み、耳が痛くなることはない。また、例えば、美容室で来店者に紐なしマスク1を着用させた場合、耳掛け紐やストラップが髪の一部を覆ってカットやパーマの際に邪魔になることがない。
【0021】
また、本発明の紐なしマスクは、
図1に示す紐なしマスク1のように、固定部材4,6によって着用者の頭部を挟み込む構造である。
【0022】
このような構造であれば、特許文献1乃至3に記載の技術のような粘着層、吸盤、アンカー部材等の着用者の顔面に直接的にマスクを固定する部材を貼り付ける必要がない。従って、皮脂や汗でマスクが外れ難く、メイク(化粧)も落ち難い。
【0023】
更に、本発明の紐なしマスクは、
図1に示す紐なしマスク1のように、固定部材4,6が可撓性の高い樹脂シートで構成されている。
【0024】
固定部材4,6は着用者の頭部を挟み込んだ際に着用者の頭部形状に追従するように撓み変形をし、着用者の頭部にソフトに接触する。また、固定部材4,6は変形容易であることから、マスク本体2との一体性が低く、マスク本体2とは独立して挙動する。このため、特許文献4または5に記載の技術の支持体、挟持部のように、マスクを着用した際に顔面を強く挟み付けられることがなく、快適な着用感を得られる。
【0025】
更にまた、本発明の紐なしマスクは、
図1に示す紐なしマスク1のように、第1樹脂シート4と第2樹脂シート6を重ね合わせ、マスク本体2の中心部に当たる前端部同士を結合して一体化している。
【0026】
このように、樹脂シートを重ね合わせて結合することにより、第1樹脂シート4、第2樹脂シート6に内向きに閉じようとする力が発生し、この力により固定部材に着用者の頭部を挟み込む力を付与している。しかも、マスク本体2も可撓性を有する樹脂シートからなる。このため、特許文献4または5に記載の技術のように剛性が高い支持体、挟持部を内向きに曲げ込み、これらのバネ力をもって着用者の頭部を挟み込むものと比較して、顔面を挟み付ける力は弱く、快適な着用感を得られる。
【0027】
[2]紐なしマスク:
以下、
図1および
図2を参照しながら、本発明の紐なしマスクについて説明する。
図1および
図2に示す紐なしマスク1は、マスク本体2と、左右一対の固定部材4,6と、を備えている。
【0028】
[2-1]マスク本体:
紐なしマスク1はマスク本体2が着用者の鼻および口を覆い、着用者の目を覆わない形状に構成されている。
【0029】
但し、本発明において、マスク本体は着用者の顔面の全部または一部を覆うものであれば足りる。例えば、マスク本体が着用者の顔面のうち鼻および口以外の部分(例えば目の部分)を覆う形状のものであってもよいし、マスク本体が着用者の顔面の全部を覆う形状のもの(フェイスガード、フェイスシールドと称される)であってもよい。
【0030】
[2-2]固定部材:
図示の紐なしマスク1は左右一対の固定部材4,6を備えている。固定部材4,6はマスク本体1を着用者の頭部に固定するための部材である。
【0031】
固定部材4,6はマスク本体2の左右の側縁部から左右外側方向に延出されている。着用者の鼻および口を覆うマスク本体2に比して、固定部材4,6は幅狭の帯状に形成されている。但し、本発明において、固定部材はマスク本体を着用者の頭部に固定するという機能を発揮する限り、その形状は図示のような形状に限定されず、いかなる形状であってもよい。
【0032】
図示の紐なしマスク1は固定部材4,6の高さ方向中央部に、固定部材4,6に発生する応力を逃がす脆弱部22,24が形成されている。具体的には、固定部材4,6の高さ方向中央部に、固定部材4,6の長手方向に沿って打ち抜き部が形成され、固定部材4,6が打ち抜き部を挟んで上下2本に分離した構造となっている。
【0033】
このような構造とすると、固定部材4,6の可撓性や形状追従性が高まり、着用者の頭部形状にフィットし易くなる。従って、マスク本体2をより確実に固定することができ、紐なしマスク1が着用者の頭部から外れ難くなる。
【0034】
[2-3]樹脂シート:
図示の紐なしマスク1はマスク本体2および固定部材4,6が可撓性を有する樹脂シートからなる。この樹脂シートとしては、マスク左側部を構成する第1樹脂シート8と、マスク右側部を構成する第2樹脂シート10と、を有する。
【0035】
「可撓性を有する」とは、手で容易に曲げられる程度の柔軟性があることを意味する。ここに言う「マスク左側部」、「マスク右側部」とは、紐なしマスクを着用した着用者を正面から見た際に、左側に位置する部分を「マスク左側部」、右側に位置する部分を「マスク右側部」と称することにする。
【0036】
図示の紐なしマスク1においては、第1樹脂シート8と第2樹脂シート10とが別体として構成されている。但し、本発明においては、第1樹脂シートと第2樹脂シートとが一体的なシートとして構成されていても良い。
【0037】
図示の紐なしマスク1は樹脂シート(第1樹脂シート8、第2樹脂シート10)が、透明樹脂シートによって構成されている。
【0038】
少なくともマスク本体2を透明樹脂シートで構成することにより、着用者の表情を視認することができるという利点がある。例えば、接客サービスの提供者が着用すれば、着用者の表情が伝わり、サービス利用者に安心感を与えることができる。また、美容室の来店者に着用してもらえば、美容師は着用者の顔の輪郭を見ながらカットやパーマを行うことができ、仕上がり状態をイメージしながら作業を進めることができる。
【0039】
但し、前記のような効果を必要としないのであれば、樹脂シートが透明樹脂シートである必要はない。目的に応じて、透光性を有する(半透明の)樹脂シートや着色した樹脂シートを用いることもできる。
【0040】
樹脂シート(第1樹脂シート8、第2樹脂シート10)はPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる厚さ0.25mmのシートである。
【0041】
但し、適度な可撓性を有する限り、樹脂シート6の材質は特に限定されない。例えば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)等、従来公知の樹脂素材の中から適宜選択して用いればよい。厚さについても適度な可撓性を発揮する限り特に制限はない。例えば、0.2mmから0.5mmのもの等を好適に用いることができる。
【0042】
[2-4]第1樹脂シートと第2樹脂シートの結合構造:
図示の紐なしマスク1は第1樹脂シート8と第2樹脂シート10が同一形状に形成されている。そして、その第1樹脂シート8と第2樹脂シート10が重ね合わされ、マスク本体2の中心部に当たる前端部同士で結合されて一体化されている。より具体的には、第1樹脂シート8と第2樹脂シート10を重ね合わせ、マスク本体2の中心部に当たる前端部同士を貼り合わせることにより一体化されている。
【0043】
図示の紐なしマスク1においては、第1樹脂シート8と第2樹脂シート10を熱融着により貼り合わせている。但し、貼り合わせの方法は特に限定されない。例えば、第1樹脂シートと第2樹脂シートを粘着剤により貼り合わせても良い。
【0044】
また、本発明においては、第1樹脂シートと第2樹脂シートがその前端部同士で結合されて一体化されていれば足りる。即ち、第1樹脂シートと第2樹脂シートを必ずしも貼り合わせる必要はない。例えば、第1樹脂シートと第2樹脂シートが一体的なシートとして構成されていて、その幅方向中央部分で折り曲げられたような構造であっても良い。
【0045】
図示の紐なしマスク1においては、第1樹脂シート8および第2樹脂シート10の前端形状が高さ方向の中央部を前方に向かって凸とする凸形状(より具体的には円弧状)に形成されている。そして、第1樹脂シート8と第2樹脂シート10との貼り合わせ部12の形状が高さ方向の中央部を前方に向かって凸とする凸形状(より具体的には円弧状)に形成されている。ここに言う「高さ方向」とは、マスク本体の上下方向を意味する。
【0046】
このような構造とすると、第1樹脂シートおよび第2樹脂シートの前端形状および第1樹脂シートと第2樹脂シートとの貼り合わせ部の形状を直線状とした場合に比して、第1樹脂シートと第2樹脂シートが内向きに閉じる力が強まり、固定部材の着用者頭部への締付け力が増す点において好ましい。
【0047】
第1樹脂シートおよび第2樹脂シートの前端形状、第1樹脂シートと第2樹脂シートとの貼り合わせ部の形状は凸形状とすればよく、例えば折れ線状としてもよい。但し、図示の紐なしマスク1のように円弧状とすると、第1樹脂シート8と第2樹脂シート10を左右に開き易く、第1樹脂シート8と第2樹脂シート10の破損を有効に防止することができる。
【0048】
図示の紐なしマスク1は第1樹脂シート8と第2樹脂シート10との貼り合わせ部12の縁部に沿って、第1樹脂シート8と第2樹脂シート10のいずれか一方(具体的には第1樹脂シート8)の表面のみに折り目線が形成されている。このような構造は、第1樹脂シート8と第2樹脂シート10を開こうとすると折り目線が形成されている第1樹脂シート8のみが折れ、容易かつ安定的に第1樹脂シート8と第2樹脂シート10を開くことができる。なお、折り目線は樹脂シートの表面を押圧して押し込むことにより形成することができる。
【0049】
[2-5]結合手段:
図示の紐なしマスク1は固定部材4,6の末端部にマスク本体2と結合可能な結合手段14,16を有する。具体的には、固定部材4,6の結合手段14,16が固定部材4,6の上端側および下端側の各々から高さ方向中央側に向かって形成された切り込みであり、マスク本体2の左右の側縁部に切り込みと係合可能なフック部18,20が形成されている。フック部18,20は高さ方向に向かって形成された長穴である。
【0050】
このような構造とすると、固定部材4,6の末端部を内側に曲げ込み、マスク本体2の左右の側縁部に結合させ、固定部材4,6をループ状とすることができる。固定部材4,6をループ状とすることで、固定部材の柔軟性、形状追従性を向上させつつ、着用者の頭部を挟み込む力も増すことができる。
【0051】
本発明における結合手段はマスク本体と結合可能である限り、その形態は切り込みと長穴の組み合わせに限定されない。例えば、固定部材の末端部に粘着部を形成して、マスク本体と結合可能としても良いし、固定部材の末端部とマスク本体の左右の側縁部に面状ファスナーやスナップボタンを付設して固定部材とマスク本体とを結合可能としても良い。
【0052】
[3]使用方法:
本発明の紐なしマスクは以下のようにして使用する。
【0053】
(1)
図2に示すように、閉じた状態の紐なしマスク1を用意する。
【0054】
(2)
図1に示すように、紐なしマスク1のマスク本体2および固定部材4,6を左右に開く。
【0055】
(3)
図3に示すように、紐なしマスク1の固定部材4を内側に曲げ込む。
【0056】
(4)
図4に示すように、固定部材4をマスク本体2のフック部(長穴)に挿入し、固定部材4の係合部材(切り込み)を利用して、固定部材4とマスク本体2の側縁部とを係合させる。
【0057】
(5)
図5に示すように、固定部材6もマスク本体2のフック部(長穴)に挿入し、固定部材6の係合部材(切り込み)を利用して、固定部材6とマスク本体2の側縁部とを係合させる。
【0058】
(6)
図6に示すように、マスク本体2を左右に開く。
【0059】
(7)
図7に示すように、紐なしマスク1を着用者26の鼻および口を覆うように宛がう。
【0060】
(8)
図8に示すように、着用者26に紐なしマスク1が装着される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の紐なしマスクは、例えば、飲食店、理美容室をはじめとする接客サービス用のマスクとして利用することができる。特に、理美容室の来店者用マスクとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
1: 紐なしマスク
2: マスク本体
4,6: 固定部材
8: 第1樹脂シート
10: 第2樹脂シート
12: 貼り合わせ部
14,16: 結合手段
18,20: フック部
22,24: 脆弱部
26: 着用者
【手続補正書】
【提出日】2021-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐なしマスクであって、
着用者の顔面の全部または一部を覆うマスク本体と、前記マスク本体を着用者の頭部に固定する、左右一対の固定部材と、を備え、
前記固定部材が前記マスク本体の左右の側縁部から左右外側方向に延出され、
前記マスク本体および前記固定部材が可撓性を有する樹脂シートからなり、
前記樹脂シートとして、マスク左側部を構成する第1樹脂シートと、マスク右側部を構成する第2樹脂シートと、を有し、
前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートが重ね合わされ、マスク本体の中心部に当たる前端部同士で結合されて一体化されており、
前記固定部材の末端部に前記マスク本体と結合可能な結合手段を有するもの。
【請求項2】
請求項1に記載の紐なしマスクであって、
前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートを重ね合わせ、マスク本体の中心部に当たる前端部同士を貼り合わせることにより一体化されており、
前記第1樹脂シートおよび前記第2樹脂シートの前端形状が高さ方向の中央部を前方に向かって凸とする凸形状に形成され、
前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートとの貼り合わせ部形状が高さ方向の中央部を前方に向かって凸とする凸形状に形成されているもの。
【請求項3】
請求項2に記載の紐なしマスクであって、
前記第1樹脂シートおよび前記第2樹脂シートの前端形状が高さ方向の中央部を前方に向かって凸とする円弧状に形成され、
前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートとの貼り合わせ部形状が高さ方向の中央部を前方に向かって凸とする円弧状に形成されているもの。
【請求項4】
請求項2または3に記載の紐なしマスクであって、
前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートとの貼り合わせ部の縁部に沿って、前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートのいずれか一方の表面のみに折り目線が形成されているもの。
【請求項5】
請求項1に記載の紐なしマスクであって、
前記固定部材の前記結合手段が前記固定部材の上端側および下端側の各々から高さ方向中央側に向かって形成された切り込みであり、
前記マスク本体の左右の側縁部に前記切り込みと係合可能なフック部が形成されているもの。
【請求項6】
請求項1に記載の紐なしマスクであって、
前記固定部材の高さ方向中央部に、前記固定部材に発生する応力を逃がす脆弱部が形成されているもの。
【請求項7】
請求項1に記載の紐なしマスクであって、
前記固定部材の高さ方向中央部に、前記固定部材の長手方向に沿って打ち抜き部が形成され、前記固定部材が前記打ち抜き部を挟んで上下2本に分離した構造となっているもの。
【請求項8】
請求項1に記載の紐なしマスクであって、
前記樹脂シートが、透明樹脂シートによって構成されているもの。
【請求項9】
請求項1に記載の紐なしマスクであって、
前記マスク本体が、着用者の鼻および口を覆い、着用者の目を覆わない形状に構成されているもの。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
[1]紐なしマスク:
本発明は、紐なしマスクであって、着用者の顔面の全部または一部を覆うマスク本体と、前記マスク本体を着用者の頭部に固定する、左右一対の固定部材と、を備え、前記固定部材が前記マスク本体の左右の側縁部から左右外側方向に延出され、前記マスク本体および前記固定部材が可撓性を有する樹脂シートからなり、前記樹脂シートとして、マスク左側部を構成する第1樹脂シートと、マスク右側部を構成する第2樹脂シートと、を有し、前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートが重ね合わされ、マスク本体の中心部に当たる前端部同士で結合されて一体化されており、前記固定部材の末端部に前記マスク本体と結合可能な結合手段を有するもの;である。