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特開2022-41477過踏込み急発進防止アクセルペダル装置及び車両の加速・制動装置
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  • 特開-過踏込み急発進防止アクセルペダル装置及び車両の加速・制動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041477
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】過踏込み急発進防止アクセルペダル装置及び車両の加速・制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 26/02 20060101AFI20220304BHJP
   G05G 1/30 20080401ALI20220304BHJP
   G05G 5/02 20060101ALI20220304BHJP
   B60T 7/04 20060101ALI20220304BHJP
   F02D 11/10 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B60K26/02
G05G1/30 E
G05G5/02
B60T7/04 A
F02D11/10 Q
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146697
(22)【出願日】2020-09-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】519029701
【氏名又は名称】ジャパン・ハイブリットサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121795
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴亀 國康
(72)【発明者】
【氏名】杉本 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 司
【テーマコード(参考)】
3D037
3D124
3G065
3J070
【Fターム(参考)】
3D037EA01
3D037EA06
3D037EA08
3D037EB02
3D037EB04
3D037EB07
3D037EB16
3D037EB25
3D037EC01
3D037EC07
3D124AA33
3D124BB01
3D124BB07
3D124CC43
3D124DD29
3D124DD62
3G065CA02
3G065CA17
3G065JA04
3J070AA32
3J070BA10
3J070BA34
3J070BA41
3J070CB03
3J070CB37
3J070CC04
3J070DA01
3J070EA11
(57)【要約】
【課題】電子スロットル方式のアクセルペダルを採用する車両に装着可能な信頼性に優れた機械的な構造の過踏込み急発進防止アクセルペダル装置及び車両の加速・制動装置を提供する。
【解決手段】本過踏込み急発進防止アクセルペダル装置は、単独で通常の制動操作をすることができ、入力こまステムの主軸回りの安全限界回転角未満において、前記入力こまステムと出力こまステムは一体に接続されてアクセルペダル部材の操作により車両の通常の加減速操作ができ、安全限界回転角以上において前記入力こまステムと出力こまステムの一体性が解除されて前記アクセルペダル部材が初期状態に復帰するとともに、前記入力こまステムはペダルアクセル限界回転角まで主軸回りに回動してブレーキリンク機構を作動させ前記ブレーキペダルの制動操作を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に装着される基台と、その基台に装着されるフレームと、そのフレーム内に収容され前記フレームを貫通する主軸回りに回動可能な入力こまステムと、
前記主軸回りに回動可能な入力こまと出力こまを有して前記フレームに結合されてなるリミッターであって、
前記入力こまは前記入力こまステムと一体に回動するように接合され、
前記出力こまは、出力こまステムと一体に回動するように接合されており、
前記入力こまステムの主軸回りの安全限界回転角未満において前記入力こまと連結されて一体に回動し、
前記安全限界回転角に達すると、前記入力こまとの連結が解除されて自由回転するようになり、
前記安全限界回転角を越えると、前記入力こまは、アクセル限界回転角に達するまで回動するとさらなる回動が阻止されてなるリミッターと、
前記入力こまステムに結合されるペダルアクセルと、
前記基台に装着され前記出力こまステムに係合する電子スロットル方式のアクセルペダル部材と、
ブレーキペダルに結合されるブレーキコネクタと、
一端が前記入力こまステムに他端が前記ブレーキコネクタに軸支され、前記入力こまステムの主軸回りの安全限界回転角から前記アクセル限界回転角未満のペダルアクセル限界回転角の範囲において作動するブレーキリンク機構と、を有してなる過踏込み急発進防止アクセルペダル装置。
【請求項2】
ブレーキリンク機構は、一端のリンク軸を介して相互に回動するリンクブレーキとリンクアクセルとを有し、前記リンクブレーキの他端はブレーキコネクタから垂下するリンク支持部に保持されるリンクピンに軸支され、前記リンクアクセルの他端は入力こまステムから延在するリンクアームに軸支されてなることを特徴とする請求項1に記載の過踏込み急発進防止アクセルペダル装置。
【請求項3】
リンクアクセルとリンクブレーキは、リンク軸周りに閉じる方向に作用するリンクバネが設けられてなることを特徴とする請求項2に記載の過踏込み急発進防止アクセルペダル装置。
【請求項4】
アクセルペダル部材は、アクセルポジションセンサーを内蔵するペダル本体と、先端部が傾斜面を有するレバーと、そのレバーの先端部に結合される係合管と、を有してなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の過踏込み急発進防止アクセルペダル装置。
【請求項5】
ペダルアクセルの、入力こまステムの主軸周りの回動に抗するアクセルバネのバネ力を調整する踏力調整機構を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の過踏込み急発進防止アクセルペダル装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の過踏込み急発進防止アクセルペダル装置と、ブレーキペダルと、を有する車両の加速・制動装置であって、
前記ブレーキペダルは、単独で通常の制動操作をすることができ、
前記過踏込み急発進防止アクセルペダル装置は、入力こまステムの主軸回りの安全限界回転角未満において、前記入力こまステムと出力こまステムは一体に接続されてアクセルペダル部材の操作により車両の通常の加減速操作ができ、安全限界回転角以上において前記入力こまステムと出力こまステムの一体性が解除されて前記アクセルペダル部材が初期状態に復帰するとともに、前記入力こまステムはペダルアクセル限界回転角まで主軸回りに回動してブレーキリンク機構を作動させ前記ブレーキペダルの制動操作を行う車両の加速・制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意図しない加速(意図せず予期もしていない時の強い力での加速で、静止状態または非常に低速の初期速度から急に加速するものであってブレーキ効力の喪失を伴っているもの)に係る車両の事故防止を図る過踏込み急発進防止アクセルペダル装置及び車両の加速・制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故防止対策として衝突被害軽減制御制動装置の車両への装着が進められており、自動ブレーキ制御技術がその中心技術になっている。この衝突被害軽減制御制動装置は、車両に搭載したレーダー等の運転情報検知装置からの情報を人工知能等により解析して運転者に警告し、また自動的にブレーキを作動させて衝突の回避等を図ることができるとされる。この一方、駐停車又は発進時の際の若者や年配者によるアクセルとブレーキの踏み間違いなどの運転ミスによる事故が社会問題化しており、かかるアクセルとブレーキの踏み間違いは意図しない加速を伴いやすく大きな事故につながりやすい。
【0003】
アクセルとブレーキの踏み間違い防止装置として、衝突被害軽減制御制動装置による開発が進められているが、衝突被害軽減制御制動装置は本来障害物を検知して衝突を回避するという技術である。このため、急発進操作や急加速操作が通常の運転操作であるか又は運転ミスであるのかの判定が容易でないという問題がある。例えば、特許文献1では所定の車速と衝突時間において自動ブレーキを作用させるようにしている。また、特許文献2では、運転者の驚愕状態を検出し、所定の驚愕の度合いとアクセルペダルの操作速度により自動ブレーキを作動させるようにしている。
【0004】
しかしながら、かかる衝突被害軽減制御制動装置に基づくアクセルとブレーキの踏み間違い事故防止方法又は装置は必ずしも十分でなく、装置コストが高くなるという問題がある。このため、アクセルとブレーキの踏み間違い事故防止方法又は装置に限ったアクセルの誤操作対策装置が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献3に、車体に固定された水平基材の水平部に第一立上り部材と第二立上り部材がともにその下端部が軸支されて併設され、前記第一立上り部材は下端部に延在するアクセルペダルと、上端部に挿通され押圧されてピン先が突出する係止ピントを備え、前記第二立上り部材は上端部に結着されたアクセルワイヤーと、前記係止ピンに係合する連係爪を備えてなるアクセルペダル踏込力伝達部材と、前記水平基材の垂直部に軸支される連係揺動部材と、その連係揺動部材の下端部にブレーキペダルに結着されるブレーキワイヤと、上端部に前記係止ピンに止めネジで固着されたリング材のリング穴に挿通されるブレーキピンを備えてなるペダル連係機構とを有し、前記アクセルペダルの回動量が所定範囲内では前記係止ピントのピン先と連係爪は係合しているが、所定範囲を越えるとその係合が解除されるとともに、前記ブレーキワイヤを介してブレーキがかかるようになっているアクセルペダル誤動作解消装置が提案されている。
【0006】
特許文献4に、フレームを貫通する主軸回りに回動可能な入力こまと出力こまとを有し、前記フレームに結合されてなるリミッターと、前記入力こまに接合されたペダルステムとそのペダルステム下端部に接合されたペダルと、前記出力こまに接合され、アクセルワイヤーが接続されるアクセルレバーと、前記フレームに一体に結合されて上方に起立するエクステンドアームと、を有してなるアクセルペダル本体と、上端部の副軸において前記エクステンドアームを軸支し、下端部にブレーキペダルに一体に接合されるアームコネクター及び前記フレームの前面に当接するコンタクトプレートを備えるブレーキコネクトアームと、を有し、前記リミッターの入力こまは、主軸回りの限界回転角未満において前記出力こまと一体に連結され、限界回転角以上において前記出力こまとの連結が解除され、その出力こまは初期状態に復帰するとともに、前記入力こまの主軸回りのさらなる回動が阻止されてなる過踏込み急発進防止アクセルペダル装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-62604号公報
【特許文献2】特開2012-91739号公報
【特許文献3】特開2012-166699号公報
【特許文献4】特許第6618160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に提案のアクセルペダル誤動作解消装置は、水平基材を介して第一立上り部材、第二立上り部材、連係揺動部材及びブレーキペダルに結着されるブレーキワイヤが巧みにリンク結合されている。そして、係止ピンと連係爪の係合又は離脱により、アクセルペダル踏込力の伝達及び解除操作、ブレーキワイヤによるブレーキの開放及び作動開始操作が行われる。このため、このアクセルペダル誤動作解消装置は作動が係止ピンと連係爪の係合又は離脱に依存しており、作動の安定性に欠ける恐れがある。
【0009】
特許文献4に提案の過踏込み急発進防止アクセルペダル装置は、主軸回りに回動する入力こまに一体に接合されたペダルステムとペダルからなるいわばアクセルペダルにより通常アクセル操作とともに、異常アクセル操作時にブレーキコネクトアームのコンタクトプレートを介しブレーキ操作を行うリミッターを有するので機械的な簡単な構造で経済的な構造の過踏込み急発進防止アクセルペダル装置を構成することができる。しかしながら、メカニカルワイヤ方式のアクセルペダルを採用する車両においては、アクセルワイヤーとの配設構造を考慮すると車両毎に異なる過踏込み急発進防止アクセルペダル装置が求められる恐れがある。また、近時採用が増大しているアクセルポジションセンサーを内蔵する電子スロットル方式のアクセルペダルを採用する車両にも装着可能な過踏込み急発進防止アクセルペダル装置が求められている。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点及び要請に鑑み、電子スロットル方式のアクセルペダルを採用する車両に装着可能な簡単な構造で作動が安定しており、経済的で信頼性に優れた機械的な構造の過踏込み急発進防止アクセルペダル装置及び車両の加速・制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る過踏込み急発進防止アクセルペダル装置は、車体に装着される基台と、その基台に装着されるフレームと、そのフレーム内に収容され前記フレームを貫通する主軸回りに回動可能な入力こまステムと、前記主軸回りに回動可能な入力こまと出力こまを有して前記フレームに結合されてなるリミッターであって、前記入力こまは前記入力こまステムと一体に回動するように接合され、前記出力こまは、出力こまステムと一体に回動するように接合されており、前記入力こまステムの主軸回りの安全限界回転角未満において前記入力こまと連結されて一体に回動し、前記安全限界回転角に達すると、前記入力こまとの連結が解除されて自由回転するようになり、前記安全限界回転角を越えると、前記入力こまは、アクセル限界回転角に達するまで回動するとさらなる回動が阻止されてなるリミッターと、前記入力こまステムに結合されるペダルアクセルと、前記基台に装着され前記出力こまステムに係合する電子スロットル方式のアクセルペダル部材と、ブレーキペダルに結合されるブレーキコネクタと、一端が前記入力こまステムに他端が前記ブレーキコネクタに軸支され、前記入力こまステムの主軸回りの安全限界回転角から前記アクセル限界回転角未満のペダルアクセル限界回転角の範囲において作動するブレーキリンク機構と、を有してなる。
【0012】
上記発明において、ブレーキリンク機構は、一端のリンク軸を介して相互に回動するリンクブレーキとリンクアクセルとを有し、前記リンクブレーキの他端はブレーキコネクタから垂下するリンク支持部に保持されるリンクピンに軸支され、前記リンクアクセルの他端は入力こまステムから延在するリンクアームに軸支されてなるものとすることができる。そしてリンクアクセルとリンクブレーキは、リンク軸周りに閉じる方向に作用するリンクバネが設けられてなるものがよい。
【0013】
アクセルペダル部材は、アクセルポジションセンサーを内蔵するペダル本体と、先端部が傾斜面を有するレバーと、そのレバーの先端部に結合される係合管と、を有してなるものとすることができる。
【0014】
また、上記発明において、ペダルアクセルの、入力こまステムの主軸周りの回動に抗するアクセルバネのバネ力を調整する踏力調整機構を有するのがよい。
【0015】
また、上記の過踏込み急発進防止アクセルペダル装置を用いて車両の加速・制動装置を構成することができる。すなわち、上記過踏込み急発進防止アクセルペダル装置と、ブレーキペダルと、を有する車両の加速・制動装置であって、前記ブレーキペダルは、単独で通常の制動操作をすることができ、前記過踏込み急発進防止アクセルペダル装置は、入力こまステムの主軸回りの安全限界回転角未満において、前記入力こまステムと出力こまステムは一体に接続されてアクセルペダル部材の操作により車両の通常の加減速操作ができ、安全限界回転角以上において前記入力こまステムと出力こまステムの一体性が解除されて前記アクセルペダル部材が初期状態に復帰するとともに、前記入力こまステムはペダルアクセル限界回転角まで主軸回りに回動してブレーキリンク機構を作動させ前記ブレーキペダルの制動操作を行う車両の加速・制動装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子スロットル方式のアクセルペダルを採用する車両に装着可能な経済的で信頼性に優れた機械的な構造の過踏込み急発進防止アクセルペダル装置及び車両の加速・制動装置を提供することができる。また、本過踏込み急発進防止アクセルペダル装置は、車両に装着されたブレーキペダルをそのまま使用することができ、また車両に装着された電子スロットル方式のアクセルペダルをアクセルペダル部材として利用し、そのまま車両に設置することができる。また、必要に応じ、アクセルペダル部材をもとのアクセルペダルに容易に改修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る過踏込み急発進防止アクセルペダル装置をブレーキペダルに装着した状態を示す説明図である。
図2図1の平面図である。
図3図2のA部分の分解図である。
図4】本発明に係る過踏込み急発進防止アクセルペダル装置の各構成部品を示す説明図である。
図5】本発明に係る過踏込み急発進防止アクセルペダル装置のブレーキリンク機構の構成及び作動の初期状態を示す説明図である。(a)は側面図、(b)は平面図、(c)はリンク部分図である。
図6図5に示すブレーキリンク機構において、ブレーキを踏み込んだときの状態を示す説明図(a)と、アクセル異常操作時における状態を示す説明図である。
図7】本発明に係る過踏込み急発進防止アクセルペダル装置におけるリミッターの構成を示す説明図である。(a)はC-C断面図、(b)はA-A断面図を示す。
図8】本発明のリミッターに係るハウジングのハウジングガイド部と出力こまとの関係を示す説明図である。(a)はハウジングのハウジングガイド部を示す平面図、(b)は出力こま本体部分の端面を示す図面である。(c)はハウジングに出力こまを挿入した状態を示す説明図である。
図9】本発明のリミッターに係る入力側こまの構成を示す説明図である。(a)は平面図、(b)はA-A断面図である。
図10】本発明に係るリミッターの作動状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を基に説明する。図1~4は、本発明に係る過踏込み急発進防止アクセルペダル装置の構成を示す。本過踏込み急発進防止アクセルペダル装置は、図1又は2に示すように基台1に装着されており、車両に標準装着されている電子スロットル方式のアクセルペダルが配設さる箇所にそのまま装着することができる。この基台1に装着されアクセルペダル部材2は、当該アクセルペダルのペダル下のレバー部分を傾斜面を有するように切断したものを使用することができる。すなわち、アクセルペダル部材2は、図4に示すようにアクセルポジションセンサーを内蔵するペダル本体2aと、先端部が傾斜面を有するレバー2bと、その先端部分に結合される係合管2cを有するものとすることができる。ブレーキペダル3は、車両に標準装着されているものをそのまま使用することができる。なお、主軸は、主軸ピン16の中心を貫通している。
【0019】
アクセルペダル部材2の係合管2cは、例えばレバー2bに螺結により結合される。この係合管2cが以下に説明する出力こまステム15に押圧されるように係合しているので、ペダルアクセル14の操作によりアクセル操作を行うことができる。出力こまステム15の係合管2cとの係合部分は、アクセル異常操作時に出力こまステム15が初期状態に復帰するときに衝撃的接触をするので、これを緩和するためにダンパー159を設けるのがよい。また、アクセルペダル部材2の操作感度は、調整ボルト116により調整することができる(図4)。なお、アクセルペダル部材2は、切断したペダルを係合管2cを介して又はそのまま結合し、容易に標準装着時の電子スロットル方式のアクセルペダルの状態に復元することができる。アクセル操作とは、通常行われる車両の加減速操作をいう。アクセル異常操作とは、アクセルペダルの意図しない加速を伴う操作をいう。
【0020】
本過踏込み急発進防止アクセルペダル装置は、基台1に装着されるフレーム11と、そのフレーム内に収容され前記フレーム11を貫通する主軸回りに回動可能な入力こまステム12と、主軸回りに回動可能な入力こま132と出力こま134を有してフレーム11に結合されてなるリミッター13を有している(図3)。このリミッター13において、入力こま134は、入力こまステム12と一体に回動するように接合され、出力こま134は、出力こまステム15と一体に回動するように接合される。本例の場合は、入力こまステム12は一体に結合された主軸ピンガイド125を有しており、主軸ピンガイド125が入力こま132に接合されるとともに、アクセルバネ17のガイドになっている。出力こまステム15は一体に結合された出力こまキャップ155を有しており、出力こまキャップ155が出力こま134に接合されるようになっている。そして、出力こま134は、入力こまステム12の主軸回りの安全限界回転角未満において、入力こま132と連結されて一体に回動する。しかし、前記安全限界回転角に達すると、入力こまと132との連結が解除される。このため出力こま134は自由回転するようになる。一方、入力こま132は、前記安全限界回転角に達した後も主軸回りに回動し、アクセル限界回転角に達するまで回動することができ、その後はさらなる回動が阻止されるようになっている。
【0021】
そして、本過踏込み急発進防止アクセルペダル装置は、入力こまステム12に結合されるペダルアクセル14と、上述の基台1に装着され出力こまステム15に係合するアクセルペダル部材2と、ブレーキペダル3に結合されるブレーキコネクタ20と、一端が入力こまステム12に他端がブレーキコネクタ20に軸支され、入力こまステム12の前記主軸回りの安全限界回転角からアクセル限界回転角未満のペダルアクセル限界回転角の範囲において作動するブレーキリンク機構25と、を有している。
【0022】
ペダルアクセル14は、入力こまステム12に螺結することができ、入力こまステム12とペダルアクセル14は、一体となっていわば通常のアクセルペダルとして作用する。このペダルアクセル14の踏力の調整は、アクセルバネ17の一端部を固定する固定ピン175の取付け位置を調整することにより行うことができる(図3)。この取付け位置の調整は、例えば、固定ピン取付用穴を入力こまステム12に所定箇所設けることによって行われる。
【0023】
ブレーキコネクタ20は、車両に既設のブレーキペダルに装着することができるようになっている。本例の場合は、既設のブレーキペダルに設けられた穴を利用してブレーキコネクタ20をブレーキペダル3に結合する。ブレーキコネクタ20は、それから垂下するリンク支持部22を有し、そのリンク支持部22にリンクピン252が取付ボルト259により脱着可能になっている。ブレーキコネクタ20は、リンクピン252を取り外した状態でブレーキペダル3に装着することができる(図1図4)。既設のブレーキペダルが穴等を備えていない場合は、ブレーキコネクタ20の構成を図1(b)に示すようにすることができる。本ブレーキコネクタ20は、外観が上記のリンク支持部22に似ているが、ブラケット23を有している。このブレーキコネクタ20は、ブラケット23と固定ボルト205によりブレーキペダル3のアームに固定される。固定ボルト205は緩止め用のナット206を有する。ブラケット23は、ブレーキペダル3のアームに密着するように傾斜面を有している。ブレーキコネクタ20にブラケット23を取り付ける固定ボルト203の取付穴はバカ穴になっている。
【0024】
ブレーキリンク機構25は、図1図5に示すように、一端のリンク軸255を介して相互に回動するリンクブレーキ253とリンクアクセル254とを有し、リンクブレーキ253の他端はブレーキコネクタ20のリンク支持部22に保持されるリンクピン252に軸支されている。そして、リンクアクセル254の他端は入力こまステム12から延在するリンクアーム124に軸支されている。図5は、ブレーキリンク機構25の初期状態を示し、点a0はリンクアクセル254のリンクアーム124による軸支点、b0はリンクブレーキ253のリンクピン252による軸支点を示す。調整ボルト115(図4)によって軸支点a0の配設位置を調整することができ、ブレーキリンク機構25の作動タイミング、作動範囲を調整することができる。また、図5(c)に示すように、リンクアクセル254はリンク軸255の部分でリンクブレーキ253を挟み込むように一対になっているのがよい。これにより作動が安定する。また、リンクブレーキ253とリンクアクセル254の屈曲状態が逆転しないようにリンクバネ256を設けるのがよい。リンクブレーキ253及びリンクアクセル254のリンクピン252への取付位置を調整するために調整ワッシャ257を設けることができる(図4)。
【0025】
図6(a)に示すように、ブレーキペダル3を踏み込むと、リンクブレーキ253とリンクアクセル254はリンク軸255回りに回転し、リンクブレーキ253のリンクピン252による軸支点b0は点bEに移動する。しかし、リンクアクセル254のリンクアーム124による軸支点a0は不動である。すなわち、ブレーキ操作においては、軸支点a0が固定されリンク軸255回りにリンクアクセル254とリンクアーム124が屈曲するのみであり、本過踏込み急発進防止アクセルペダル装置においてブレーキ操作は通常の車両のように行われる。
【0026】
一方、アクセル操作においては、ペダルアクセル14の踏み込みが入力こまステムの主軸回りの安全限界回転角未満である場合(通常のアクセル操作)においては、リンクブレーキ253とリンクアクセル254は未だ屈曲した状態にある。しかし、ペダルアクセル14の踏み込みが入力こまステムの主軸回りの安全限界回転角に達すると、図6(b)に示すように、リンクブレーキ253とリンクアクセル254は一直線状態になり、リンクアクセル254のリンクアーム124による軸支点は点a0から点aSに至る。すなわち、ペダルアクセル14の通常の踏み込みにおいては、入力こま132と出力こま134は一体になって主軸回りを回動し、リンクアーム124によるリンクアクセル254の軸支点は点aSに達せず、点a0と点aSの間を揺動する。この点a0と点aSの間の揺動は、約10°の入力こまステムの主軸回りの回動に相当する。
【0027】
ペダルアクセル14を踏み抜いて(一杯に踏み込む状態)入力こまステム12の主軸回りの回転が安全限界回転角に達すると、リミッター13は、その入力こま132と出力こま134の連結が解除され、出力こま134は自由回転するようになる。このため、出力こまステム15はアクセルペダル部材2のレバー2b部分を押圧することができなくなり、アクセルペダル部材2が初期状態に復帰するとともに、出力こまステム15が初期状態に復帰する。このとき、ブレーキリンク機構25のリンクブレーキ253とリンクアクセル254は一直線状態になっているから、さらにペダルアクセル14が踏み込まれると、その踏み込み量に応じてブレーキペダル3が作動しブレーキ操作が行われる。このブレーキ操作は、リンクアクセル254の軸支点aEまで行われる。リンクアクセル254の軸支点が点aEに達した状態は、ペダルアクセル14を踏み抜いた状態であり、この入力こまステム12の主軸回りの回動角がペダルアクセル限界回転角とされる。本ブレーキリンク機構25においては、ブレーキ作動は、ブレーキ開始(ストップランプの点灯)からブレーキ踏込みまでの1/3程度の踏込み量が好ましい。ブレーキペダル3が一杯に踏み込まれると、運転者が意図していない作動なので危険を伴う場合があるからである。なお、ブレーキリンク機構は、リンクの替わりにワイヤーを用いたワイヤー形式のものとすることもできる。
【0028】
リミッター13の構成について以下に説明する。図7~9は、本例のリミッター13の構成示し、リミッター13の初期状態(アクセル操作及びブレーキ操作なしの状態)を示す。本リミッター13は、図7に示すように、ハウジング131に入力こま132、係合子133、出力こま134及びばね135が収容された構成をしている。ハウジング131は、図8(a)に示すようにハウジングガイド部131aを有している。ハウジングガイド部131aは、摺動台部a1とそれよりも一段高くなった環状の台座部a2を有している。摺動台部a1は、ハウジング131の内部に扇状に広がる本体部分の左端に突出する外周が次第に拡径する傾斜部a11と、これに続く環状部a12を有している。環状部a12の外周は、台座部a2の外周と同じ半径(ra)を有している。
【0029】
入力こま132は、図9に示すように、本体132aにピンb132b、受台132c、ピンd132d及びピンe132eを有する。ピンb132bには係合子133が装着され、係合子133はピンb132bを中心にして回動する。受台132cは、その前面部が係合子133の頭部から作用する押圧力を支えるように曲面になっており、その上面部が係合子133の尾部の座面になっている。ピンd132dには、ねじりコイルばねからなるばね135が装着され、ばね135の両端部がピンe132eと係合子133の尾部に支持されるようになっている。このばね135により、係合子133の頭部は以下に説明する出力こま134の起立部134c(図8(b))を押圧するようになる。なお、本体132aはハウジングガイド131aの台座部a2に当接して高さ位置が規定されている。
【0030】
出力こま134は、図7(b)、図8(b)に示すように幅狭の環状部134aと、幅広の環状部134bを有している。幅広の環状部134bの外周は半径raで、その外周はハウジングガイド部131aの環状部a12の外周と同一の円周上にある。出力こま134の幅狭の環状部134aと幅広の環状部134bの境界の起立部134cは、図7(b)に示すように、係合子133と係合している。幅狭の環状部134aの先端部134dはハウジングガイド部131aの台座部a2に当接している。なお、出力こま134は、アクセルペダル部材2のレバー2bが所定の反力を生じるように取り付けられ、矢印L方向に回動しようとする回転力が作用する状態になっている。
【0031】
ペダルアクセル14が踏み込まれ、入力こまステム12が主軸回りに回動すると、入力こま132が主軸回りに矢印R方向に回動(加速回転)し、係合子133と係合している出力こま134が矢印R方向に回動(加速回転)する。すなわち、ペダルアクセル14の踏み込みに対応して、入力こま132と出力こま134は一体になって加速回転する。一方、ペダルアクセル14の踏み込みを緩めると、アクセルペダル部材2のレバー2bからの反力により、入力こま132と出力こま134は一体になって加速回転と逆の減速(矢印L方向)回転をする。
【0032】
ペダルアクセル14がさらに踏み込まれると、係合子133は、図10(a)の一点鎖線(133A)に示すようにハウジングガイド部131aの傾斜部a11に達し、その傾斜部a11に沿って移動する(図8(a))。そして係合子133が環状部a12に達すると、係合子133は出力こま134の幅広の環状部134bの外周と同じ円周上にあり、係合子133が出力こま134の起立部134cから外れる。すなわちこの状態が、入力こまステム12の主軸回りの回転が安全限界回転角に達したときである。出力こまステム15は自由回転するようになり、アクセルペダル部材2が初期状態に復帰するとともに、出力こまステム15(出力こま134)が初期状態に復帰するときの状態である。
【0033】
ペダルアクセル14が安全限界回転角を越えて更に踏み込まれると、係合子133の頭部は
初期位置に復帰した出力こま134の幅広の環状部134bの外周に沿って、ハウジングガイド部131aの摺動台部a1の上面を回動する。この回動は、ペダルアクセル14を踏み抜き、入力こまステム12の主軸回りの回動がペダルアクセル限界回転角に達すると停止する。このときの状態を図10(b)に示す。なお、出力こま134の幅広の環状部134bは、係合子133がペダルアクセル限界回転角に達するときに充分な長さがあればよい。リミッター13において、係合子133がハウジングガイド部131aの台座部a2に当接すると、入力こまステム12の主軸回りの回動は阻止される。すなわち、これにより出力こま134の主軸回りのアクセル限界回転角が定まる。
【符号の説明】
【0034】
1 基台
2 アクセルペダル部材
3 ブレーキペダル
11 フレーム
115 調整ボルト
116 調整ボルト
12 入力こまステム
124 リンクアーム
125 主軸ピンガイド
13 リミッター
131 ハウジング
131a ハウジングガイド部
132 入力こま
132a 本体
132b ピンb
132c 受台
132d ピンd
132e ピンe
133、133A 係合子
134 出力こま
134a 幅狭の環状部
134b 幅広の環状部
134c 起立部
135 ばね
14 ペダルアクセル
15 出力こまステム
155 出力こまキャップ
159 ダンパー
16 主軸ピン
17 アクセルバネ
175 固定ピン
20 ブレーキコネクタ
203 固定ボルト
205 固定ボルト
206 ナット
22 リンク支持部
23 ブラケット
25 ブレーキリンク機構
252 リンクピン
253 リンクブレーキ
254 リンクアクセル
255 リンク軸
256 リンクバネ
257 調整ワッシャ
259 固定ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10