IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タムラ製作所の特許一覧

<>
  • 特開-連結コイル及びリアクトル 図1
  • 特開-連結コイル及びリアクトル 図2
  • 特開-連結コイル及びリアクトル 図3
  • 特開-連結コイル及びリアクトル 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041504
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】連結コイル及びリアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20220304BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
H01F37/00 M
H01F37/00 C
H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146733
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】植草 易央
【テーマコード(参考)】
5E043
【Fターム(参考)】
5E043BA01
5E043BA03
(57)【要約】
【課題】小型化された連結コイル及び当該連結コイルを備えるリアクトルを提供することにある。
【解決手段】この連結コイル1は、1本の導電線10により第1コイル11と第2コイル12と連結部2とを備えている。連結部2は、第1コイル11と第2コイル12を連結する。この連結部2は、連結部2が引き出された第1コイル11の端部11cから、当該連結部2が引き出された第2コイル12の端部12cまでの直線距離である端部間距離13Cよりも長く、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aとは反対側に折り曲げられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイル、第2コイル及び前記第1コイルと前記第2コイルを連結する連結部を備え、
前記第1コイル、前記第2コイル及び前記連結部は、一本の導電線により成形され、
前記第1コイル及び前記第2コイルは、互いの巻軸を平行にして、当該巻軸と直交する方向に並べられ、
前記連結部は、前記第1コイルと前記第2コイルの間に延び、当該連結部が引き出された前記第1コイルの端部から、当該連結部が引き出された前記第2コイルの端部までの直線距離よりも長く、前記第1コイルの胴体と前記第2コイルの胴体とは反対側に折り曲げられていること、
を特徴とする連結コイル。
【請求項2】
前記連結部は、
前記第1コイルと前記第2コイルとの間に架け渡された架線部と、
前記第1コイル及び第2コイルの前記端部から引き出されて、前記架線部の両端部に接続されている余長部と、
を有し、
前記余長部で、前記第1コイルの前記胴体と前記第2コイルの前記胴体とは反対側に折り曲げられていること、
を特徴とする請求項1記載の連結コイル。
【請求項3】
請求項1又は2記載の連結コイルと、前記連結コイルが装着された環状のモールドコアとを備え、
前記モールドコアは、前記第1コイルが装着される第1脚部と、前記第2コイルが装着される第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部を連結するヨーク部とを有し、
前記ヨーク部は、前記第1脚部との境界及び前記第2脚部の境界に、面取りされた段部を有すること、
を特徴とするリアクトル。
【請求項4】
前記ヨーク部の前記段部は、前記連結部の折り曲げられた谷側内面と同じ曲率で面取りされていることを特徴とする請求項3記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結コイル及びこれを備えるリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルはコイルとモールドコアとを有する。コイルとコアとの電気的絶縁を図るべく、通常はコアを樹脂部材で被覆して成るモールドコアにコイルがコアに装着される。このリアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する受動素子である。
【0003】
このようなリアクトルは、多種多様の用途に使用されている。代表的なリアクトルとして、昇圧リアクトル、直列リアクトル、並列リアクトル、限流リアクトル、始動リアクトル、分路リアクトル、中性点リアクトル及び消弧リアクトル等が挙げられる。
【0004】
昇圧リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等の車載用の昇圧回路に組み込まれる。直列リアクトルは、電動機回路に直列に接続し短絡時の電流を制限する。並列リアクトルは、並列回路間の電流分担を安定させる。限流リアクトルは、短絡時の電流を制限しこれに接続される。始動リアクトルは、機械を保護する電動機回路に直列に接続して始動電流を制限する。分路リアクトルは、送電線路に並列接続されて進相無効電力の補償や異常電圧を抑制する。中性点リアクトルは、中性点と大地間に接続して電力系統の地絡事故時に流れる地絡電流を制限するために使用する。消弧リアクトルは、三相電力系統の1線地絡時に発生するアークを自動的に消滅させる。
【0005】
リアクトルには連結コイルが配されることがある。連結コイルは、大電流領域において高いインダクタンス値を得るため、2個のコイルを並列状に形成し、双方のコイルを流れる電流の方向が互いに逆向きになるように連結している。この連結コイルは、1本の導電線から成形される場合がある。即ち、1本の導電線の片側領域を用いて1個目のコイルを成形し、同じ導電線の他方側領域を用いて2個目のコイルを成形する。2個のコイルの成形に用いた範囲に挟まれた残りの導電線部分が2個のコイルを連結する連結部になる。
【0006】
リアクトルは、連結コイルの他に環状のモールドコアを備えており、連結コイルはモールドコアに装着される。従って、連結コイルが備える両コイルの間隔や向き等の配置精度が問題となる。そこで、2つのコイルを連結する連結部を、導電線を成形するための導電線送り誤差を吸収するためのオフセット部として用いる案が提案されている(例えば特許文献1参照。)。2つのコイルの配置を整えるために必要な導電線の長さを、連結部から供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4812641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
連結コイルの連結部をオフセット部として用いる場合、2つのコイルの配置を整えるために必要な導電線が足らなくならないように、連結部は長めに設定される。そのため、2つのコイルの配置を整えるために用いられなかった余長部分は連結部に残る。そうすると、連結コイルの成形完了後、連結部は2つのコイルを接続するのに必要な長さ以上を有し、2つのコイルの胴体から突き出して配置されることになる。
【0009】
近年、電気回路の集積化により、リアクトルや連結コイルについてもいっそうの小型化が要請されている。しかしながら、この連結コイルは、連結部がコイルの胴体から突き出した分、大型化している。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、小型化された連結コイル及び当該連結コイルを備えるリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような課題を解決するため、本発明のリアクトルは、第1コイル、第2コイル及び前記第1コイルと前記第2コイルを連結する連結部を備え、前記第1コイル、前記第2コイル及び前記連結部は、一本の導電線により成形され、前記第1コイル及び前記第2コイルは、互いの巻軸を平行にして、当該巻軸と直交する方向に並べられ、前記連結部は、前記第1コイルと前記第2コイルの間に延び、当該連結部が引き出された前記第1コイルの端部から、当該連結部が引き出された前記第2コイルの端部までの直線距離よりも長く、前記第1コイルの胴体と前記第2コイルの胴体とは反対側に折り曲げられていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、連結部がコイルの巻軸と直交する方向に胴体から突き出さず、連結コイルが小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】連結コイルの第1の斜視図である。
図2】連結コイルの第2の斜視図である。
図3】連結コイルを用いたリアクトルの斜視図である。
図4】リアクトルが備える連結コイルの連結部を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る連結コイルについて図面を参照しつつ説明する。図1は、連結コイル1の第1の斜視図である。図2は、図1とは反対側から見た連結コイル1の第2の模式図である。図1及び図2に示すように、連結コイル1は、第1コイル11と第2コイル12とを備えている。第1コイル11と第2コイル12は、連結部2で繋がっている。この連結コイル1は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品の構成要素である。
【0015】
第1コイル11及び第2コイル12は、エナメル被覆された銅線等の導電線10による筒状の巻回体である。第1コイル11及び第2コイル12は、胴体11a及び胴体12aを有する。胴体11a及び胴体12aは、導電線10を巻軸13Aに沿って1ターンごとに巻位置をずらしながら螺旋状に巻回することで形成された巻回体である。第1コイル11及び第2コイル12は、螺旋状のエッジワイズコイルである。螺旋状のエッジワイズコイルは、平角状の導電線10の幅広面がコイルの巻軸13Aとの直交方向に拡がるように、導電線10が巻回されて成る。
【0016】
第1コイル11及び第2コイル12は、互いの巻軸13Aを平行に延ばし、両巻軸13Aと直交する並び方向13Bに沿って隣り合って並設されている。即ち、第1コイル11及び第2コイル12は、互いの胴体11a、胴体12bの一側面を一定の距離を保って対面させて並設されている。尚、第1コイル11及び第2コイル12が並設されたとき、第1コイル11及び第2コイル12の巻回方向は同一になっている。
【0017】
第1コイル11及び第2コイル12は、同一方向の端面から引出線11b及び引出線12bが引き出されている。また、第1コイル11及び第2コイル12は、同一方向の他端面が連結部2で繋がっている。図2に示すように、第1コイル11、第2コイル12及び連結部2は、同一の一本の導電線10を成形することで形成されている。一本の導電線10の第1巻線範囲10aを巻回して第1コイル11を成形していく。また、一本の導電線10の第1巻線範囲10aとは反対側の第2巻線範囲10bを巻回して第2コイル12を成形していく。また、一本の導電線10の第1巻線範囲10aと第2巻線範囲10bの間の第3範囲10cが連結部2に形作られる。
【0018】
図2に示すように、連結部2は、第1コイル11と第2コイル12の同一方向の端面にある端部11cと端部12cとの間を接続している。第1コイル11の端部11cと第2コイル12の端部12cは、螺旋状の巻回軌跡に沿った巻回の端部である。連結部2は、第1コイル11の端部11cを基端にして延びる余長部22と、第2コイル12の端部12cを基端にして延びる余長部22と、両余長部22を繋ぐ架線部21を備えている。架線部21は、第1コイル11と第2コイル12とを架け渡して延び、両余長部22を繋ぐ。この架線部21は、第1コイル11の端部11cと第2コイル12の端部12cの直線距離である端部間距離13Cと同一の長さを有する。
【0019】
第1コイル11から延びる余長部22の基端側は、巻軸13Aと直交した方向、且つ第2コイル12の端部12cの方向とは異なる方向に引き出される。余長部22は、途中に屈曲部23を有し、余長部22の途中から架線部21側が、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aとは反対側の胴体反対方向24に折り曲げられている。第1コイル11から延びる余長部22の延び先先端は、架線部21と直角に接続される。
【0020】
同様に、第2コイル12から延びる余長部22の基端側は、巻軸13Aと直交した方向、且つ第1コイル11の端部11cの方向とは異なる方向に引き出される。この余長部22は、途中に屈曲部23を有し、余長部22の途中から架線部21側が、巻軸13Aに沿って、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aとは反対側の胴体反対方向24に折り曲げられている。第2コイル12から延びる余長部22の延び先先端は、架線部21と直角に接続される。
【0021】
総じて、第1コイル11側から出発して連結部2を辿ると、まず第1コイル11の端部11cから、巻軸13Aと直交した方向、且つ第2コイル12の端部12cの方向とは異なる方向に余長部22が引き出される。余長部22は、途中で巻軸13Aに沿って、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aとは反対側の胴体反対方向24に折れ曲がる。そして、余長部22の延び先先端は、架線部21の端部に直角に繋がる。
【0022】
架線部21は、巻軸13Aに沿って、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aから離れた位置に延在している。架線部21は、第1コイル11の端部11cと第2コイル12の端部12cの直線距離である端部間距離13C分だけ、第2コイル12に向かって巻軸13Aと直交して延びる。架線部21の端部は、第2コイル12の端部12cと巻軸13A方向で重なる位置に達する。
【0023】
第2コイル12に繋がる余長部22は、架線部21の端部から巻軸13Aに沿って第2コイル12の胴体12aに近づく方向に延びる。この余長部22は、途中で巻軸13Aと直交する方向に折れ曲がって、第1コイル11の端部11cの方向とは異なる方向から第2コイル12の端部12cに至る。
【0024】
即ち、この連結部2は、連結部2が引き出された第1コイル11の端部11cから、連結部2が引き出された第2コイル12の端部12cまでの直線距離である端部間距離13Cよりも長く、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aとは反対側の胴体反対方向24に折り曲げられている。また、この連結部2は、余長部22に屈曲部23を有し、余長部22の途中で折り曲げられている。
【0025】
この連結部2は、第1コイル11と第2コイル12を電気的に連結するだけではなく、第1コイル11と第2コイル12の成形中の線材送り誤差を吸収するオフセット部である。余長部22は、第1コイル11と第2コイル12の成形中の線材送り誤差を吸収するために予め長めに取られており、第1コイル11と第2コイル12の並設位置は余長部22の長さを用いて調整される。換言すれば、余長部22は、第1コイル11と第2コイル12の成形中の線材送り誤差を吸収した後の余りである。
【0026】
ここで、仮に、この余長部22を第1コイル11の端部11cや第2コイル12の端部12cから直線的に延ばし続けると、巻軸13Aと直交する平面に第1コイル11の胴体11aや第2コイル12の胴体12aを投影した投影領域よりも、架線部21が突き出してしまう。そのため、連結コイル1は、巻軸13Aと直交する方向に大きくなってしまう。また、仮に、連結部2を、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aの側面に沿うように折り曲げる場合、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aの側面と連結部2との間に冶具を挟み込んで、連結部2を折り曲げるために、冶具の厚み分だけ、連結部2を折り畳むことができない。
【0027】
一方、本実施形態の連結コイル1の連結部2は、巻軸13Aに沿う方向に倒れ込ませてある。しかも、本実施形態の連結コイル1の連結部2は、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aとは反対側の胴体反対方向24に折り曲げられている。この場合、冶具が第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aの側面と干渉することがなく、冶具の位置を自由に設定できる。
【0028】
従って、連結部2を、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aの側面との段差が小さくなるように折り畳んだり、当該側面と面一になるように折り畳んだりすることができる。よって、この連結コイル1は、巻軸13Aと直交する方向に、第1コイル11の胴体11aや第2コイル12の胴体12aから突き出す量がゼロ又は小さくなるので、巻軸13Aと直交する方向に小型化が達成されている。
【0029】
尚、連結部2を、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aの側面に沿うように折り曲げようとすると、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aに冶具が接触し、導電線10を被覆するエナメル膜を破ってしまう虞がある。一方の本実施形態の連結コイル1では、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aとは反対側の胴体反対方向24に折り曲げられているので、冶具で導電線10のエナメル膜を破る虞が抑制され、連結コイル1の信頼性が高まる。
【0030】
図3は、この連結コイル1を用いたリアクトル4の斜視図である。リアクトル4は、連結コイル1に加えてモールドコア3を備えている。連結コイル1はモールドコア3に装着されている。このモールドコア3は、電流導通により連結コイル1が発生させた磁束を通す閉磁気回路となる。
【0031】
モールドコア3は、環状の磁性体が内蔵され、この磁性体の表面を樹脂で被覆して成る。磁性体としては、フェライトコア、積層鋼板、圧粉磁心又はメタルコンポジット等が挙げられる。メタルコンポジットは、磁性粉末と樹脂とが混練され成型されて成る。樹脂は、磁性体と連結コイル1との絶縁部材であり、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合であり、熱伝導性のフィラーが混入されていてもよい。
【0032】
このモールドコア3は、第1脚部31と第2脚部32と一対のヨーク部33とを備えている。第1脚部31と第2脚部32は平行に配置されている。一方のヨーク部33は、第1脚部31と第2脚部32の一方端部を繋ぎ、他方のヨーク部33は、第1脚部31と第2脚部32の他方端部を繋ぐ。これにより、モールドコア3は1つの環形状を有している。第1脚部31と第1コイル11とが嵌合し、第2脚部32と第2コイル12とが嵌合している。
【0033】
図3に示すように、連結コイル1の連結部2は、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aとは反対側の胴体反対方向24に折れ曲がり、一方のヨーク部33の表面に沿っている。リアクトル4の巻軸13A方向に沿った全長は、ヨーク部33間の距離で決まり、第1コイル11と第2コイル12の成形中の線材送り誤差を吸収するための連結部2がヨーク部33から巻軸13A方向に突き出すことはない。従って、リアクトル4の全長は、連結部2の折れ曲がりによって大型化しない。
【0034】
図4は、リアクトル4が備える連結コイル1の連結部2を拡大した拡大図である。図4に示すように、ヨーク部33は、第1脚部31と第2脚部32よりも厚い。ここでいう厚みは、巻軸13Aにも並び方向13B(図1参照)にも直交する方向であり、連結部2の余長部22が第1コイル11及び第2コイル12から引き出された方向である。そのため、ヨーク部33には、第1脚部31及び第2脚部32の境界に段部33aを有する。
【0035】
この段部33aは、ヨーク部33の内面33dと側面33cで画成されている。内面33dは、ヨーク部33を画成する面のうち、第1脚部31及び第2脚部32と接続された、巻軸13Aと直交する面である。側面33cは、ヨーク部33を画成する面のうち、内面33dと連続し、巻軸13Aに沿って延在し、第1コイル11及び第2コイル12の並び方向13Bに拡がる面であり、連結部2が倒れ込む面である。
【0036】
段部33aは、内面33dと側面33cで画成される角が面取りされ、面取り部33bが形成されている。面取り部33bによって、連結部2の屈曲部23の谷側内面23a、即ち面取り部33bと対向している面に段部33aが鋭角に当たらず、連結部2のエナメル被覆を剥いでしまう虞を抑制できる。従って、面取り部33bは角が湾曲するR面取りが好ましいが、C面取り等のその他の面取りであっても段部33aが直角の角を有する場合と比べると、連結部2を損傷させる虞が低減する。
【0037】
この面取り部33bの曲率は、連結部2の屈曲部23の谷側内面23aの曲率と一致することが好ましく、モールドコア3に連結コイル1を嵌め込んだとき、連結部2がヨーク部33の内面33d、面取り部33b及び側面33cと精度良く当接する。そのため、連結部2をヨーク部33に対して浮かずに配置できる。
【0038】
以上のように、この連結コイル1は、第1コイル11と第2コイル12と連結部2とを備えている。第1コイル11と第2コイル12と連結部2は1本の導電線10により成形されている。第1コイル11及び第2コイル12は、互いの巻軸13Aを平行にして、当該巻軸13Aと直交する方向に並べられている。そして、この連結部2は、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aとは反対側に折り曲げられているようにした。
【0039】
これにより、第1コイル11と第2コイル12の成形中の線材送り誤差を吸収するオフセット部として連結部2を有し、連結部2が第1コイル11の端部11cから第2コイル12の端部12cまでの直線距離である端部間距離13Cよりも長くとも、連結部2を、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aの側面との段差が小さくなるように折り畳んだり、当該側面と面一になるように折り畳んだりすることができる。従って、この連結コイル1は、巻軸13Aと直交する方向に、第1コイル11の胴体11aや第2コイル12の胴体12aから突き出す量がゼロ又は小さくなるので、巻軸13Aと直交する方向に小型化が達成される。
【0040】
また、連結部2を、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aに倒れ込ませるようにした場合と比べて、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aが連結部2を折り曲げる冶具の配置を制限せず、冶具を自由に配置できるので、第1コイル11の胴体11aや第2コイル12の胴体12aから突き出す量をゼロ又はより小さくできる。更に、冶具で第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aのエナメル被覆が剥がされる虞が低減し、連結コイル1の信頼性に優れる。
【0041】
この連結部2は、第1コイル11と第2コイル12とを架け渡して延びる架線部21と、第1コイル11及び第2コイル12の端部11c及び端部12cから引き出されて、架線部21の両端部に接続されている余長部22とを有する。そして、連結部2は、余長部22で、第1コイル11の胴体11aと第2コイル12の胴体12aとは反対側に折り曲げられているようにした。
【0042】
これにより、連結部2を折り曲げる場所は余長部22に限られるので、折り曲げる力を小さくでき、精度良く折り曲げることができる。但し、これに限らず、余長部22の長さによっては、架線部21の長さ方向に沿って架線部21を折り曲げたり、余長部22から架線部21と折れ曲がる境界部分25(図2参照)で折り曲げたりするようにしてもよい。もっとも、架線部21を長さ方向に沿って折り曲げる場合には曲げ加工を要する領域が長く延びてしまい、また境界部分25は、余長部22の端部から架線部21を延長するためにエッジワイズ曲げ加工により変形済みである。そのため、余長部22に屈曲部23を作出するほうが、容易に高精度の折り曲げ加工を施すがことができる点で好ましい。また、架線部21や架線部21と余長部22の境界部分25で折り曲げることにならないように、導電線10中に、第1コイル11と第2コイル12の成形中の線材送り誤差を吸収するために必要な長さ以上に余長部22を設定しておき、連結コイル1の成形処理を行うようにしてもよい。
【0043】
また、この連結コイル1を備えるリアクトル4は、連結コイル1が装着された環状のモールドコア3を備えている。このモールドコア3は、第1コイル11が装着される第1脚部31と第2コイル12が装着される第2脚部32とを連結するヨーク部33とを有し、ヨーク部33は、第1脚部31との境界及び第2脚部32の境界に、面取りされた段部33aを有するようにした。これにより、連結コイル1をモールドコア3に装着する際、折り曲げられた連結部2を段部33aが強く引っ掻いて、導電線10のエナメル膜を剥がしてしまう虞が低減し、リアクトル4の信頼性が向上する。
【0044】
また、この段部33aは、連結部2の折り曲げられた谷側内面23aと同じ曲率で面取りされているようにした。これにより、モールドコア3に連結コイル1を嵌め込んだとき、連結部2がヨーク部33の内面33d、面取り部33b及び側面33cと精度良く当接する。そのため、連結部2をヨーク部33に対して浮かずに配置できる。
【0045】
以上、本発明の実施形態は例として提示したものであって、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態やその変形は本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 連結コイル
10 導電線
10a 第1巻線範囲
10b 第2巻線範囲
10c 第3範囲
11 第1コイル
11a 胴体
11b 引出線
11c 端部
12 第2コイル
12a 胴体
12b 引出線
12c 端部
13A 巻軸
13B 並び方向
13C 端部間距離
2 連結部
21 架線部
22 余長部
23 屈曲部
23a 谷側内面
24 胴体反対方向
25 境界部
3 モールドコア
31 第1脚部
32 第2脚部
33 ヨーク部
33a 段部
33b 面取り部
33c 側面
33d 内面
4 リアクトル
図1
図2
図3
図4