(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041507
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】浴室用内装シート
(51)【国際特許分類】
E04F 15/16 20060101AFI20220304BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20220304BHJP
E04F 13/18 20060101ALI20220304BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
E04F15/16 A
E04F15/00 F
E04F13/18 A
B32B27/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146738
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松元 務
(72)【発明者】
【氏名】西山 知也
(72)【発明者】
【氏名】増田 知里
【テーマコード(参考)】
2E110
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】 白化を抑制でき、さらに、乾燥性に優れた塩化ビニル系樹脂製の浴室用内装シートを提供する。
【解決手段】 塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂として含み且つ着色された表層と、前記表層に設けられた表面保護層4と、を有する浴室用内装シートにおいて、前記表面保護層4が、マトリクス樹脂82と、前記マトリクス樹脂82に保持され且つ表面から露出したシリカ81aと、を含み、前記表面保護層4の表面における、露出したシリカの表面積割合が、2.0%~7.0%である。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂として含み且つ着色された表層と、前記表層に設けられた表面保護層と、を有し、
前記表面保護層が、マトリクス樹脂と、前記マトリクス樹脂に保持され且つ表面から露出したシリカと、を含み、
前記表面保護層の表面における、露出したシリカの表面積割合が、2.0%~7.0%である、浴室用内装シート。
【請求項2】
前記表層が、無機充填剤の主成分としてタルクを含む、請求項1に記載の浴室用内装シート。
【請求項3】
前記表層が、さらに、無機充填剤として炭酸カルシウムを含み、
前記表層に含まれる無機充填剤を100重量%としたときに、前記炭酸カルシウムが25重量%以下である、請求項2に記載の浴室用内装シート。
【請求項4】
前記表面保護層のマトリクス樹脂が、紫外線硬化型樹脂であり、
前記表層及び表面保護層が、いずれも実質的に界面活性剤を含まない、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の浴室用内装シート。
【請求項5】
前記表層の表面形状が、凹凸状とされており、
前記表面保護層が、前記表層の凸状部分の表面に設けられ、前記表層の凹状部分の表面が露出されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の浴室用内装シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内の床面などに施工される内装シート等に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の床材としては、一般に、磁器タイル、FRP及び硬質ゴムなどの硬質材料が用いられている。また、近年、浴室の床材、壁材又は天井材として、塩化ビニル系樹脂製のシート(浴室用内装シート)が用いられている。
しかしながら、塩化ビニル系樹脂の浴室用内装シートが施工された浴室を使用しているうちに、水分吸収などを原因として、内装シートの表面が白化することがある。浴室用内装シートの表面が白化した状態が続くと、外観上好ましくない。
特許文献1には、シート本体と、前記シート本体の表面に設けられた表層と、を有し、前記表層が、ポリマーとして塩化ビニル系樹脂と着色剤とを含むマスターバッチ化した着色剤と塩化ビニル系樹脂とを含む、浴室用内装シートが開示されている。また、特許文献1には、界面活性剤が含まれていると白化し易いことが指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
特許文献1には、表層に界面活性剤を配合することも開示されており、界面活性剤を配合することにより、表層を親水化して乾燥性を向上させることができる。このように界面活性剤は、内装シートの乾燥性を向上させるものの、上述のように白化させ易いというデメリットを有し、乾燥性と白化抑制はトレードオフの関係となる。乾燥性を向上させつつ白化抑制を高次元で両立できる浴室用内装シートが求められている。
なお、「乾燥性」は、水分の付着した内装シートの表面が数時間のうちに自然乾燥することをいう。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、白化を抑制でき、さらに、乾燥性に優れた塩化ビニル系樹脂製の浴室用内装シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の浴室用内装シートは、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂として含み且つ着色された表層と、前記表層に設けられた表面保護層と、を有し、前記表面保護層が、マトリクス樹脂と、前記マトリクス樹脂に保持され且つ表面から露出したシリカと、を含み、前記表面保護層の表面における露出したシリカの表面積割合が、2.0%~7.0%である。
【0007】
本発明の好ましい浴室用内装シートは、前記表層が、無機充填剤の主成分としてタルクを含む。
本発明の好ましい浴室用内装シートは、前記表層が、さらに、無機充填剤として炭酸カルシウムを含み、前記表層に含まれる無機充填剤を100重量%としたときに、前記炭酸カルシウムが25重量%以下である。
本発明の好ましい浴室用内装シートは、前記表面保護層のマトリクス樹脂が、紫外線硬化型樹脂であり、前記表層及び表面保護層が、いずれも実質的に界面活性剤を含まない。
本発明の好ましい浴室用内装シートは、前記表層の表面形状が、凹凸状とされており、前記表面保護層が、前記表層の凸状部分の表面に設けられ、前記表層の凹状部分の表面が露出されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の浴室用内装シートは、白化が抑制され、また、表面の乾燥性に優れている。
また、本発明の好ましい浴室用内装シートは、白化抑制に優れ、さらに、乾燥性に優れている上、比較的安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る浴室用内装シートの一部省略平面図。
【
図2】他の実施形態に係る浴室用内装シートの平面図。
【
図3】1つの実施形態に係る浴室用内装シートの要部拡大断面図。
【
図4】他の実施形態に係る浴室用内装シートの要部拡大断面図。
【
図5】他の実施形態に係る浴室用内装シートの要部拡大断面図。
【
図6】他の実施形態に係る浴室用内装シートの要部拡大断面図。
【
図7】他の実施形態に係る浴室用内装シートの要部拡大断面図。
【
図8】他の実施形態に係る浴室用内装シートの要部拡大断面図。
【
図9】他の実施形態に係る浴室用内装シートの要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。また、「略」は、本発明の属する技術分野において許容される範囲を意味する。
【0011】
[浴室用内装シートの形状及び層構成]
本発明の浴室用内装シートは、浴室の床面、浴室の壁面、及び浴室の天井面から選ばれる少なくとも1つの浴室の内面に使用される。特に、本発明の浴室用内装シートは、水濡れやシャンプーなどの日用品の付着に伴う白化の抑制効果に優れることから、水分が付着し易い浴室の床面に好適に使用できる。
ただし、本発明の浴室用内装シートは、浴室に用いることが好適であるが、浴室以外の用途、例えば、トイレや洗面所の床面などに使用してもよい。
【0012】
図1は、本発明の浴室用内装シート1の平面視形状の1つの実施形態を示す平面図であり、
図2は、本発明の浴室用内装シート1の平面視形状の他の実施形態を示す平面図である。なお、本明細書において、平面視は、内装シート1の表面に対して鉛直方向から見ることをいう。
図1を参照して、本発明の浴室用内装シート1は、例えば、平面視で長尺状に形成されている。長尺状に形成された内装シート1は、通常、ロールに巻かれて保管・運搬に供される。長尺状の内装シート1の形状は、特に限定されず、例えば、幅800mm~4000mmで、長さ2m~300mの細長長方形などが挙げられる。
図2を参照して、本発明の内装シート1は、平面視で枚葉状に形成されていてもよい。枚葉状に形成された内装シート1は、通常、複数枚を重ね合わせて保管・運搬に供される。枚葉状の内装シート1の形状は、特に限定されず、例えば、幅500mm~1000mm、長さ500mm~1000mmの正方形状又は長方形状などが挙げられる。
【0013】
本発明の内装シート1は、その層構成の観点では、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とし且つ着色された表層と、表層の表面側に設けられた表面保護層と、を有する。好ましくは、内装シート1は、シート本体層と、シート本体層の表面側に設けられ且つ塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする表層と、表層の表面側に設けられた表面保護層と、を有する。表面保護層の表面は、内装シート1の表面(最表面)を成している。本発明の内装シート1は、シート本体層、表層及び表面保護層以外に、必要に応じて任意の層を有していてもよく、或いは、前記任意の層を有していなくてもよい。上記好ましい内装シート1のうち、任意の層を有さない内装シート1は、シート本体層と、シート本体層の表面に直接設けられた表層と、表層の表面に直接的に設けられた表面保護層と、のみからなる。
【0014】
図3乃至
図9は、本発明の浴室用内装シート1の層構成の様々な実施形態を示す拡大断面図である。
図3乃至
図9は、
図1のIII-III線及び
図2のIII-III線で切断し且つ両側を省略した要部拡大断面図でもある。省略した両側は、同様な層構成が内装シート1の周縁にまで連続している。
図3は、代表的な層構成を示している。
図3を参照して、1つの実施形態では、内装シート1は、シート本体層2と、前記シート本体層2の表面に設けられ且つ着色された表層3と、前記表層3の表面に設けられた表面保護層4と、を有する。各層の層間は、直接的に強固に接合されている。以下の他の実施形態についても同様に、各層の層間は、直接的に強固に接合されている。なお、材質によっては層間接合強度が不十分な場合もあるため、そのような場合には、接着剤(図示せず)を介して積層される2つの層間が強固に接合される。
【0015】
他の実施形態を示す
図4を参照して、内装シート1は、シート本体層2と、前記シート本体層2の表面に設けられ且つ着色された表層3と、前記表層3の表面に設けられた表面保護層4と、前記シート本体層2の厚み方向中途部に埋設された中間層5と、を有する。
更なる他の実施形態を示す
図5を参照して、内装シート1は、シート本体層2と、前記シート本体層2の表面に設けられた中間層5と、前記中間層5の表面に設けられた表層3と、前記表層3の表面に設けられた表面保護層4と、を有する。
更なる他の実施形態を示す
図6を参照して、内装シート1は、シート本体層2と、前記シート本体層2の表面に設けられ且つ着色された表層3と、前記表層3の表面に設けられた表面保護層4と、前記シート本体層2の裏面に設けられた最裏面層6と、を有する。最裏面層6の裏面は、内装シート1の裏面(最裏面)を成している。
更なる他の実施形態を示す
図7を参照して、内装シート1は、シート本体層2と、前記シート本体層2の表面に設けられ且つ着色された表層3と、前記表層3の表面に設けられた表面保護層4と、前記シート本体層2の厚み方向中途部に埋設された中間層5と、前記シート本体層2の裏面に設けられた最裏面層6と、を有する。
【0016】
更なる他の実施形態を示す
図8を参照して、内装シート1は、シート本体層2と、前記シート本体層2の表面に設けられ且つ着色された表層3と、前記表層3の表面に設けられた表面保護層4と、前記シート本体層2の厚み方向中途部に埋設された中間層5と、を有する。
図8に示す形態では、表層3が、表面側から順に、透明樹脂層31と、透明樹脂層31の裏面に積層された着色樹脂層32と、を有する点を特徴としている。透明樹脂層31は、透明な樹脂層からなり、好ましくは、無色透明な樹脂層からなる。
なお、本発明の内装シート1の層構成は、
図3乃至
図8の実施形態に限られず、これらの実施形態から選ばれる1つ又は2つ以上の層を、それ以外の実施形態に置換又は組み合わせてもよく、或いは、
図3乃至
図8の実施形態で例示した任意の層(表層3、中間層5及び最裏面層6)以外の層を有していてもよい。例えば、
図8に示す表層3を、他の実施形態の表層3に置換してもよい。
【0017】
本発明の内装シート1は、
図3乃至
図8に示すように、表面形状が凹凸状に形成されていてもよく、或いは、
図9に示すように、表面形状が略平坦状に形成されていてもよい。
表面が略平坦状に形成されている内装シート1の表面保護層4は、実質的に隙間なく、表層3の表面側に延在されている(
図9参照)。なお、
図9の内装シート1の層構成は、便宜上、
図3の実施形態と同様であるが、
図4乃至
図8などの他の実施形態の層構成の内装シート1の表面を、略平坦状に形成してもよい。つまり、内装シート1の層構成と内装シート1の表面形状(略平坦状又は凹凸状)は、概念上別個独立しており、上記で例示した様々な層構成の内装シート1の表面を、この欄で説明する略平坦状又は凹凸状に形成できる。
表面形状が凹凸状に形成されている内装シート1は、その表面に、凸状部分71と、前記凸状部分71よりも下方に凹んだ凹状部分72と、を有する。凸状部分71の表面(凸状の頂面)は、例えば、滑らかな面(略平坦状、上向きに膨らんだ略円弧面状、下向き凹んだ略円弧面状など)に形成されていてもよい。また、図示例のように、凸状部分71の表面に、さらに、1つ又は複数の小さな小凸部711が形成されていてもよい。前記凸状部分71及び凹状部分72の平面視形状は、特に限定されず、適宜設定でき、例えば、梨地模様を成すように凸状部分71及び凹状部分72が形成される。凸状部分71の突出高さは、特に限定されないが、余りに大きいと凹状部分72の表面(凹状の底面)に付着した付着物を清掃し難く、余りに小さいと実質的に凹凸状とならない。かかる観点から、凸状部分71の突出高さ(凹状部分72の深さ)は、例えば、0.1mm~1mmであり、好ましくは、0.2mm~0.8mmである。
また、凹状部分72は、水が流れる水路としても機能する。凹状部分72の幅は、特に限定されないが、水が円滑に流れるようにする観点から、例えば、0.5mm~5.0mmの範囲に設定され、好ましくは、1.0mm~3.0mmの範囲に設定される。
【0018】
表面が凹凸状に形成されている内装シート1の表面保護層4は、
図3、
図5乃至
図8に示すように、凸状部分71の表面にのみ設けられていてもよく、
図4に示すように、凸状部分71の表面から凹状部分72の表面にかけて実質的に隙間なく表層3の表面側に延設されていてもよい。なお、
図3、
図5乃至
図7に示す内装シート1の表面保護層4が、実質的に隙間なく表層3の表面側に延設されていてもよく、或いは、
図4に示す内装シート1の表面保護層4が、凸状部分71の表面にのみ設けられていてもよい。
凸状部分71の表面にのみ表面保護層4が形成される場合、凹状部分72の表面は表面保護層4で覆われず露出している。この場合、表面保護層4の占有面積率は、特に限定されないが、余りに小さいと内装シート1の表面を表面保護層4によって十分に覆うことができず、乾燥性が低下するおそれがある。かかる観点から、表面保護層4の占有面積率は、60%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。なお、表面保護層4の占有面積率の上限は100%であり、占有面積率が100%の表面保護層4は、実質的に隙間なく表層3の表面側全体に設けられている。
【0019】
表面保護層4の占有面積率は、鉛直方向から内装シート1の表面を見たときの、単位面積当たりの表面保護層4が占める面積の割合をいう。例えば、内装シート1の表面のうち任意の10cm角の領域内に存する表面保護層4の総面積を計測し、表面保護層4の占有面積率(%)=表面保護層4の総面積(cm2)/100(cm2)×100、にて求めることができる。具体的には、前記占有面積率は、公知の画像処理装置を用い、表面保護層4と表層3の間で閾値を決めて二値化し、内装シート1の表面の任意の10cm角を撮影した中から表面保護層4の部分の総面積を計測することによって求めることができる。
なお、凹状部分72と凸状部分71の平面視形状が比較的大きく且つそれらの部分が平面視で矩形状や三角形状などの曲線を有さない形状である場合、表面保護層4の面積を目視にて計測し、前記式に代入して占有面積率を求めてもよい。
【0020】
[シート本体層]
シート本体層2は、内装シート1の主要部を成す層である。内装シート1は、柔軟性を有するシートから形成されていることが好ましい。柔軟なシート本体層2を有する内装シート1は、柔軟性を有し、簡易に保管・運搬でき且つ施工時に浴室内に容易に搬入できる。なお、柔軟性を有するとは、例えば、シート本体層2や内装シート1が、直径10cmの円柱状の巻芯に巻き取ることができることを意味する。
シート本体層2は、非発泡体のみから構成されていてもよいが、発泡体を含むものが好ましい。発泡体を含むシート本体層2を有する内装シート1は、入浴者の身体の一部分(膝など)が乗ったときに入浴者が痛みを感じ難く、さらに、浴室におけるヒートショックの低減及び温感を高めるため断熱性を付与することができる。なお、本明細書において、入浴者の身体の一部分(膝など)が乗ったときに入浴者が痛みを感じ難くできることを「防痛性」という。
シート本体層2の厚みは、特に限定されないが、例えば、1.5mm~10mmであり、好ましくは、1.8mm~7mmである。
【0021】
シート本体層2は、合成樹脂から構成される。好ましくは、シート本体層2は、主成分樹脂として塩化ビニル系樹脂を含む合成樹脂から構成される。塩化ビニル系樹脂製のシート本体層2は、例えば、主成分樹脂として塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を含み、必要に応じて、無機充填剤や各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
ここで、本明細書において、ある層の主成分樹脂は、層中に含まれる樹脂成分全体に対して(樹脂成分全体を100重量%とした場合)、60重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占める樹脂を意味する。
【0022】
塩化ビニル系樹脂は、少なくとも塩化ビニルの単量体(クロロエチレン)を重合させることで形成された重合体(ポリマー)である。塩化ビニル系樹脂には、クロロエチレンを単独重合させてなる重合体(ホモポリマー)だけでなく、クロロエチレン及びクロロエチレンと共重合し得る他の単量体の共重合体(コポリマー)、ホモポリマー及びコポリマーの混合物、並びに2種以上のコポリマーの混合物が含まれる。なお、混合物とは、ホモポリマーとコポリマー、又は、コポリマー同士が実質的に重合せずに混練された重合体を意味する。塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル重合体(ホモポリマー);塩素化塩化ビニル;部分架橋塩化ビニル;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体などの塩化ビニルを含む共重合体(コポリマー);ホモポリマーと1種以上のコポリマーの混合物、2種以上のコポリマーの混合物;などが挙げられる。好ましくは、塩化ビニル重合体(ホモポリマー)が用いられる。
前記塩化ビニル重合体(ホモポリマー)は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものを用いることができる。加工し易く且つ取り扱い易く、また白化し難いことから、懸濁重合法で得られる塩化ビニル重合体が好ましい。
懸濁重合法で得られる塩化ビニル重合体は、好ましくは10~100μmの微細粉末である。前記懸濁重合法による塩化ビニル重合体は、その平均重合度が600~2500程度のものが好ましく、さらに700~1500程度のものがより好ましい。塩化ビニル重合体(ホモポリマー)は、サスペンションタイプの重合体であってもよく、ペーストタイプの重合体であってもよい。
【0023】
無機充填剤は、主として、加工性を改善し、製品コストを下げる目的に配合される。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、マイカなどが挙げられる。シート本体層2には、無機充填剤として汎用的な炭酸カルシウムを用いることが好ましく、特に、無機充填剤として炭酸カルシウムのみを用いることがより好ましい。
無機充填剤の量は、特に限定されず、シート本体層2の全体を100重量%とした場合、例えば、5重量%~60重量%であり、好ましくは、10重量%~40重量%である。
【0024】
可塑剤は、主として塩化ビニル系樹脂の柔軟性を向上させることを目的に配合される。可塑剤としては、例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤などが挙げられる。好ましくは、可塑剤としては、多価カルボン酸系可塑剤が用いられ、より好ましくはフタル酸エステルが用いられ、特に好ましくはフタル酸ジオクチルが用いられる。
可塑剤の量は、特に限定されず、シート本体層2の全体を100重量%とした場合、例えば、20重量%~70重量%であり、好ましくは、25重量%~60重量%である。
シート本体層2は、塩化ビニル系樹脂、無機充填剤及び可塑剤以外に、任意の適切な添加剤が含まれていてもよい。添加剤の量は、特に限定されないが、シート本体層2の全体を100重量%とした場合、例えば、1重量%~20重量%である。
前記添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、着色剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、抗菌剤、防かび剤などが挙げられる。
シート本体層2は、界面活性剤を含んでいてもよいが、好ましくは、実質的に界面活性剤を含まない。界面活性剤を含んでいると、水分が取り込まれやすくなる。
なお、前記実質的に界面活性剤を含まないとは、シート本体層2の製造時に不用意に又は不可避的に界面活性剤が混入する場合を許容する意味である。この実質的に含まない場合の界面活性剤の含有量は、シート本体層2の全体を100重量%とした場合、3重量%以下であり、好ましくは、1重量%以下である。
【0025】
[表層]
表層3は、内装シート1の表面に色彩を表出させる。具体的には、表層3は、任意の色彩で着色されている部分を含み、その着色が内装シート1の色彩上のデザインを構成している。前記着色は、1色でもよく、2色以上でもよい。また、表層3の色彩によるデザインは、均等な1色のみによる単一柄、濃淡を付けた1色による濃淡模様、2色以上の色柄模様、2色以上で且つ濃淡を付けた2色以上の濃淡色柄模様、1色又は2色以上で文字や数字を含む模様などが挙げられる。
表層3の層構成としては、着色樹脂層、着色樹脂層と透明樹脂層が積層された2層以上の積層体などが挙げられる。前記着色樹脂層としては、デザイン印刷(デザインが表れた薄膜を含む)が施された樹脂層(例えば、印刷フィルム)、着色剤を含み且つ自身が色彩を有する樹脂層(例えば、着色フィルム)、樹脂と着色剤を含む着色樹脂成形物をチップ化し且つそのチップをシート状に成形した樹脂層(例えば、着色チップフィルム)などが挙げられる。前記透明樹脂層としては、透明な樹脂層(例えば、透明フィルム)などが挙げられる。
表層3の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.05mm~1.5mmであり、好ましくは、0.1mm~1.0mmである。
【0026】
材質の観点では、表層3の樹脂層は、主成分樹脂としての塩化ビニル系樹脂と、着色剤とを含み、さらに、必要に応じて、可塑剤、無機充填剤、各種添加剤を含む。
表層3の樹脂層に含まれる塩化ビニル系樹脂としては、上記[シート本体層]の欄で記載したようなものを適宜選択して用いることができ、例えば、塩化ビニル重合体(ホモポリマー)を用いることが好ましい。表層3の塩化ビニル重合体は、その平均重合度が600~2500程度のものが好ましく、さらに700~1500程度のものがより好ましい。
表層3の樹脂層に含まれる可塑剤としては、上記[シート本体層]の欄で記載したようなものを適宜選択して用いることができる。可塑剤の量は、特に限定されず、表層3の全体を100重量%とした場合、例えば、5重量%~50重量%であり、好ましくは、10重量%~40重量%である。
着色剤は、顔料又は染料であり、表層3に微量含まれる。表層3が上述のデザイン印刷が施された樹脂層を有する場合には、少なくともデザイン印刷に着色剤が含有される。
表層3が添加剤を含む場合、その量は特に限定されないが、表層3の全体を100重量%とした場合、例えば、1重量%~20重量%である。
【0027】
製品コストを抑制できることから、表層3は、無機充填剤を含んでいることが好ましい。無機充填剤の量は、特に限定されず、表層3の全体を100重量%とした場合、例えば、5重量%~60重量%であり、好ましくは、10重量%~40重量%である。
無機充填剤としては、上記[シート本体層]の欄で例示したようなものが挙げられるが、白化抑制の観点から、無機充填剤の主成分(以下、「無機充填剤の主成分」を「主成分無機充填剤」という)としてタルクを用いることが好ましい。主成分無機充填剤としてタルクを含む表層3を用いることにより、製品コストを抑制しつつ、白化を抑制できる内装シート1を得ることができる。ここで、表層3の主成分無機充填剤は、表層中に含まれる無機充填剤全体に対して(無機充填剤全体を100重量%とした場合)、50重量%以上、好ましくは51重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上を占める無機充填剤を意味する。
タルクは、含水珪酸マグネシウムであり、滑石とも呼ばれる鉱物の粉末である。タルクの平均粒子径は、特に限定されないが、余りに小さいと、塩化ビニル系樹脂などの材料と混合した際に分散不良を生じるおそれがあり、余りに大きいと、シート本体層2の強度が低下するおそれがある。かかる観点から、タルクの平均粒子径は、例えば、0.5μm~30μmであり、好ましくは、10μm~30μmである。タルクの平均粒子径は、体積平均粒子径であり、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定したメジアン径D50をいう。
【0028】
表層3に無機充填剤を含有させる場合、実質的にタルクのみでもよく、或いは、タルクとタルク以外の無機充填剤の併用でもよい。比較的安価であることから、タルク以外の無機充填剤としては、炭酸カルシウムを含むものを用いることが好ましく、特に、炭酸カルシウムのみを用いることがより好ましい。タルクと炭酸カルシウムを併用することにより、製品コストをさらに抑制できる。タルクと炭酸カルシウムを含む無機充填剤(タルク以外の無機充填剤)とを併用する場合、炭酸カルシウムが余りに多いと、白化抑制効果が低下し、余りに少ないと併用する意義がない。かかる観点から、この場合には、炭酸カルシウムが、表層3に含まれる無機充填剤全体を100重量%としたときに、25重量%以下であることが好ましく、さらに、20重量%以下がより好ましい。
【0029】
表層3は、界面活性剤を含んでいてもよいが、水分を取り込んで表層3が白化することを抑制するために、実質的に界面活性剤を含まないことが好ましい。前記実質的に界面活性剤を含まないとは、表層3の製造時に不用意に又は不可避的に界面活性剤が混入する場合を許容する意味である。この実質的に含まない場合の界面活性剤の含有量は、表層3の全体を100重量%とした場合、3重量%以下であり、好ましくは、1重量%以下である。
なお、表層3が、着色樹脂層と透明樹脂層が積層された2層以上の積層体からなる場合、着色樹脂層及び透明樹脂層から選ばれる少なくとも一方が、上述の塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂層であり、好ましくは、いずれも塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂層である。着色樹脂層及び透明樹脂層の双方が塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂層であれば、両者を容易に積層接合でき且つ綺麗なデザインを表出できる。なお、透明樹脂層は、良好な透明性を確保するため、無機充填剤を実質的に含まないことが好ましい。
着色樹脂層及び透明樹脂層から選ばれる一方(例えば、透明樹脂層)が、上述の塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂層でない場合、その材質は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレートなどのエステル系樹脂などが挙げられる。
【0030】
[表面保護層]
表面保護層4は、内装シート1の最も表面(最も上側)に設けられた層である。本発明の表面保護層4は、シート本体層2への水分の侵入を抑制するバリア的な機能を有すると共に、内装シート1に良好な乾燥性を付与する。表面保護層4は、表層3の色彩を視認できるようにするため、透明であり、好ましくは無色透明である。
表面保護層4は、シリカと、マトリクス樹脂と、を含む。
シリカの平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、0.01μm~20μmであり、好ましくは、0.1μm~15μmである。この範囲内のシリカを用いることにより、水馴染み性を向上できる。平面視形状及び立体形状が、不定形又は球形などのシリカを用いることができるが、水馴染み性を向上できることから、不定形のシリカを用いることが好ましい。
前記シリカの平均粒子径は、SEM画像から次のように計測して得られる。
表面保護層4の表面の任意の箇所を、1000倍に拡大して撮像したSEM写真を得て、そのSEM画像の中の任意の100平方μmの中に表出しているシリカの中から、任意の10個を抽出し、それらのシリカの粒径を計測する。シリカが不定形の場合、最大幅と最小幅の平均値を粒子径とする。10個のシリカの粒子径の平均を算出して、前記シリカの平均粒子径とする。
【0031】
マトリクス樹脂は、表面保護層4を構成する樹脂であって、脱落しないようにシリカを保持する。マトリクス樹脂は、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂などの電離線硬化型樹脂などが挙げられる。耐傷付き性に優れていることから、マトリクス樹脂は、紫外線硬化型樹脂などの電離線硬化型樹脂を主成分樹脂とするものが好ましい。
電子線硬化型樹脂としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物などの不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレートなどのメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレートなどの紫外線硬化型樹脂などが挙げられ、ウレタンアクリレートを用いることが好ましい。
表面保護層4は、シリカ及びマトリクス樹脂以外に、任意の適切な添加剤が含まれていてもよい。前記添加剤としては、上記シート本体層2で例示したようなものが挙げられる。
【0032】
表面保護層4は、界面活性剤を含んでいてもよいが、水分を取り込んで表面保護層4やシート本体層2が白化することを抑制するために、実質的に界面活性剤を含まないことが好ましい。また、表面保護層4が白化することを抑制するために、表面保護層4は、実質的に炭酸カルシウムを含まないことが好ましい。
なお、前記実質的に界面活性剤又は炭酸カルシウムを含まないとは、表面保護層4の製造時に不用意に又は不可避的に界面活性剤又は炭酸カルシウムが混入する場合を許容する意味である。この実質的に含まない場合の界面活性剤又は炭酸カルシウムの含有量は、表面保護層4の全体を100重量%とした場合、3重量%以下であり、好ましくは、1重量%以下である。
【0033】
表面保護層4に含まれる無数のシリカのうち、いくつかのシリカは、マトリクス樹脂に保持されつつ表面保護層4の表面(マトリクス樹脂の表面)から露出されている。
図10は、表面保護層4の表面に対して鉛直方向から見た表面保護層4の表面を模式的に表した拡大平面図であり、
図11は、その断面図である。なお、
図11においては、シート本体層2などを表さず、表面保護層4のみを表している。
図10及び
図11を参照して、いくつかのシリカ81aは、表面保護層4の表面40から部分的に露出しており、いくつかのシリカ81bは、表面保護層4の内部に埋没している。通常、複数のシリカ81aは、平面視で、無秩序な配置で露出している。露出したシリカ81aは、マトリクス樹脂82に保持され、表面保護層4の構成要素の1つになっている。従って、表面保護層4の表面40は、マトリクス樹脂82を海とし、いくつかのシリカ81aを島とする海島状となっている。なお、
図10において、便宜上、シリカ81aの露出部分に無数のドットを付している。
【0034】
本発明者らは、表面保護層4から露出している複数のシリカ81a(厳密には、シリカ81aの露出部分)が表面保護層4の表面においてどの程度の割合で露出しているかによって乾燥性が顕著に相違することを見出した。
前記表面保護層4の表面の単位面積当たりにおける露出したシリカ81aの表面積の割合(以下、「表面積割合」という)は、例えば、表面保護層の表面SEM観察による元素分析にて測定したシリカのケイ素質量%で代用的に表すことができる。
表面保護層の表面に存在するケイ素は、シリカの露出部分に依拠していると推定される。表面に存在している元素の質量%のうちケイ素の質量%を計測し且つその割合を求めることにより、単位面積当たりにおけるシリカの露出部分の表面積割合を特定できると考えられる。
【0035】
表面保護層4の表面における露出したシリカの表面積割合は、前記元素分析にて測定したシリカのケイ素質量%で、2.0%~7.0%であり、好ましくは、2.5%~6.0%であり、より好ましくは、3.0%~5.0%である。前記範囲内であることにより、乾燥性に優れた内装シート1を構成できる。
表面SEM観察による元素分析にて測定したシリカのケイ素質量%は、走査電子顕微鏡(SEM)にて画像撮影を行い、EDS(エネルギー分散型X線分析)にて元素マッピングを行うことで算出できる。なお、ケイ素質量%は、表面に存在しているケイ素の濃度である。
【0036】
表面保護層4の厚みは、特に限定されないが、余りに小さいと水分侵入抑制効果を十分に発揮できないおそれがあり、余りに大きいと表面保護層4の形成が困難となる。かかる観点から、表面保護層4の厚みは、例えば、10μm~0.5mmであり、好ましくは、15μm~0.4mmである。
【0037】
[中間層]
中間層5は、シート本体層2の剛性を高め、且つシート本体層2に寸法安定性を付与するための層である。中間層5は、必要に応じて設けられる。中間層5は、シート本体層2の補強の観点から、繊維を含む層が好ましい。この繊維含有層としては、例えば、無機繊維、天然繊維及び/又は樹脂繊維からなる不織布、無機繊維、天然繊維及び/又は樹脂繊維からなるフェルト、及び、無機繊維、天然繊維及び/又は樹脂繊維からなる織布などが挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられ、天然繊維としては、綿、麻などが挙げられ、樹脂繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維などが挙げられる。好ましくは、中間層5としては、ガラス繊維を含む不織布又は織布が用いられる。繊維含有層の繊維の目付は、特に限定されないが、例えば、10g/m2~100g/m2である。中間層5の厚みは、特に限定されないが、通常、0.1mm~0.4mm程度である。
【0038】
[最裏面層]
最裏面層6は、シート本体層2の裏面に必要に応じて設けられる。
最裏面層6は、特に限定されず、様々なものを使用できるが、例えば、繊維含有層を用いることができる。最裏面層6として使用する繊維含有層としては、上記中間層5で例示したようなものが挙げられる。最裏面層6は、中間層5と同じものを使用してもよいが、通常、中間層5とは異なるものが使用される。
【0039】
[内装シートの製造例]
本発明の浴室用内装シート1は、例えば、次のような手順で得ることができる。
ここでは、
図3に示す層構成の内装シート1の製造例を簡単に説明する。
塩化ビニル系樹脂、可塑剤、無機充填剤及び必要に応じて添加剤を配合した材料を準備する。各材料の配合割合は、上述の通りである。配合した材料を混合し、ペースト成形法などでシート状に成形することによって、シート本体層2を得ることができる。成形法は、これに限られず、カレンダー成形法などであってもよい。
同様に、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、無機充填剤及び必要に応じて添加剤を配合した材料を準備する。各材料の配合割合は、上述の通りである。配合した材料を混合し、塩化ビニル系樹脂の溶融温度以上に加熱して溶融させた後、カレンダー成形法などでシート状に成形する。これに着色剤を添加した場合には、着色フィルムとなり、着色剤を添加しなかった場合には、デザイン印刷を施す。このようにして表層3を得ることができる。
シート本体層2と表層3を重ね合わせ、所定温度で加熱加圧することにより、表層3/シート本体層2からなる積層体が得られる。必要に応じて、この積層体の表面(表層3の表面)を、エンボスローラなどのエンボス加工機によってエンボス加工し、積層体の表面に梨地模様などの凹凸を形成する。この凹凸状に形成した表面に、表面保護層4を形成する。例えば、紫外線硬化型樹脂に適量のシリカが配合された塗工液を、前記積層体の表面に塗布し、紫外線を照射することにより、表面保護層4/表層3/シート本体層2からなる内装シート1を得ることができる。塗工方法は、特に限定されず、グラビアローラを用いた塗工、コータを用いた塗工などが挙げられる。前記塗工液中のシリカの配合量を適宜設定することにより、上述の範囲でシリカが露出した表面保護層4を形成できる。
【0040】
[内装シートの使用例]
本発明の浴室用内装シート1は、浴室の床面、浴室の壁面、及び浴室の天井面などに施工される。内装シート1は、通常、接着剤を介して浴室の床面などに貼り付けて使用される。
本発明の内装シート1は、塩化ビニル系樹脂製の表層3に無機充填剤を配合しているので、製品コストを抑えることができる。つまり、表層3に比較的安価な無機充填剤を配合することにより、相対的に樹脂量を低減でき、引いては製品コストを抑えることができる。
また、タルクは白化の原因になり難く、表層3に水分が侵入しても、表層3が白化し難く、また、白化したとしても、その後に水分が無くなると、表層3の白化が速やかに消失する。このため、本発明によれば、白化の抑制された内装シート1を提供できる。特に、表層3に含まれる無機充填剤が実質的にタルクのみからなる場合には、水分で白化し難く、また、白化した場合でもそれが速やかに消失するので、白化抑制機能に優れている。さらに、水分が付着する表面保護層4に、実質的に炭酸カルシウムや界面活性剤を含ませないことにより、表面保護層4が白化することも抑制できる。
【0041】
一方、前述のように実質的に界面活性剤を含まない表面保護層4は、その表面に付着した水分が蒸発し難くなる。詳しくは、表面保護層4が界面活性剤を含む場合、水分が親水性の界面活性剤に馴染むので、付着した水分が表面保護層4の表面に大きく拡がって薄い水膜を成すようになる。このため、付着した水分が比較的短時間で蒸発するようになる。実質的に界面活性剤を含まない表面保護層4にあっては、界面活性剤の前記作用を期待できないが、前述のように、表面保護層4が白化することを抑制できる利点がある。
本発明においては、表面保護層4の表面において所定の占有面積でシリカが露出している。かかる表面保護層4が設けられていることにより、乾燥性が向上する。その原理は明確ではないが、次のように推定される。前記表面保護層4によれば、水滴滑落時(表面保護層4の表面に付着した水滴がその表面を滑りながら流れる時)の後退角が小さく且つ接触半径が大きくなり、水滴滑落時に水分が拡がり易くなる。さらに、水滴が流れる際に、表面保護層4の表面に水分が削り取られて水滴が小さくなっていく。このような作用により、乾燥性が向上すると考えられる。
このため、本発明によれば、白化を抑制しつつ乾燥性に優れた内装シート1を提供できる。
【0042】
なお、より短時間で乾燥させる(例えば、自然乾燥で6時間でほぼ乾燥する)ためには、大きな水滴が床シートの上に残らないことが重要となる。
図3、
図5乃至
図8に示すように、表面が凹凸状に形成され且つ表面保護層4が凸状部分71の表面にのみ設けられている場合、凸状部分71は、表面保護層4のシリカが露出しており、凹状部分72は表層3(例えば、塩化ビニル系樹脂及びタルクを含む表層3)が露出している。大量の水分が表面保護層4の表面に掛った際には、その水分は凹状部分72から大きな水流となって排水口へ流れる。他方、凸状部分71の表面に残存した水滴は、上記表面保護層4の作用によって拡げられ、数時間で乾燥するようになる。なお、凹状部分72で表層3が露出しているため、表層3が直接的に水分と接触し、表層3に水分が取り込まれ易くなるが、主成分無機充填剤としてタルクを使用しているので、凹状部分72で露出した表層3の白化も抑制できる。
【実施例0043】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0044】
<表層の形成材料>
(1)サスペンションタイプの塩化ビニル樹脂:(株)カネカ製の商品名「S-1001」。重合度1050。
(2)可塑剤:フタル酸ジオクチル(新日本理化(株)製、商品名「サンソサイザーDOP」)。
(3)タルク:日本タルク(株)の商品名「MS-KY」。
(4)炭酸カルシウム:三共精粉(株)商品名「エスカロン#200」。
(5)安定剤:エポキシ化大豆油(三和合成化学(株)製、商品名「ケミサイザー T-4000」)、Ba-Zn系安定剤((株)ADEKA製、商品名「アデカスタブ NPS-309」)。
(6)界面活性剤:アニオン系界面活性剤(三洋化成工業(株)製、商品名「ケミスタツト2500」)。
(7)抗菌剤・防かび剤:(株)シナネンゼオミック製、商品名「ESSENGUARD10」。
(8)着色剤:酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄及びジアゾイエローの混合物。
【0045】
<表層A及びBの作製>
上記形成材料を、表1に示す割合で配合し、十分に混合した後、ロール温度を150℃に設定したカレンダー成形機にて、厚み0.4mmのシート状に作製した。このようにして厚み0.4mmの表層A及びBをそれぞれ作製した。
表層A及びBは、いずれも、全体的に濃いベージュ色を呈していた。
【0046】
[実施例1]
ペーストタイプの塩化ビニル樹脂((株)カネカ製の商品名「カネビニールペースト PSL31」。重合度1000。)を100重量部、可塑剤(フタル酸ジオクチル。新日本理化(株)製、商品名「サンソサイザーDOP」)を50重量部、炭酸カルシウム(三共精粉(株)製の商品名「エスカロン#200」)を30重量部で配合した材料を十分に混合した後、オーブン温度を200℃に設定したペースト成形機にて、厚み3.1mmのシート状に作製した(厚み3.1mmのシート本体層を作製した)。このシート本体層の表面に、前記表層Aを積層し、温度を150℃に設定した熱プレス機にて加熱加圧することにより、表層A/シート本体層からなる積層体を作製した。この積層体の表面全体(表層Aの表面全体)に亘って、シリカを含む紫外線硬化型塗工液(この塗工液は、ウレタンアクリレートとアクリレートモノマーを含む紫外線硬化型樹脂に、平均粒子径3.4μmのシリカが約6重量%含まれている)を、グラビアローラを用いて塗工し、紫外線を照射した。このようにして表層Aの表面に厚み20μmの無色透明な表面保護層を形成し、表面保護層/表層/シート本体層からなる内装シートを作製した。
【0047】
表面保護層の表面をSEM(走査電子顕微鏡)で拡大撮像して観察したところ、シリカが点在して露出していた。また、下記方法に従い、実施例1の内装シートの表面保護層の、表面SEM観察による元素分析にてシリカのケイ素質量%を測定した。その結果を表2に示す。
【0048】
<表面保護層の表面における露出シリカの表面積割合の特定>
表面保護層の表面SEM観察による元素分析にて、シリカのケイ素質量%を測定した。
具体的には、走査電子顕微鏡(卓上走査電子顕微鏡。(株)日立製作所H製の製品名「TM4000Plus」)を用いて、電圧設定15kVにて、表面保護層の表面を画像撮影し、その画像をEDS(エネルギー分散型X線分析)にて元素マッピングすることにより算出した。
なお、露出シリカの表面積割合を特定するために、表面保護層の表面SEM観察による元素分析にて測定したシリカのケイ素質量%を用いた理由は次の通りである。
表面保護層の表面を撮像し、その二次元の画像から単位面積当たりに占めるシリカの面積を計測することも考えられる。しかし、シリカのうち、表面(マトリクス樹脂である紫外線硬化型樹脂の表面)から露出している部分は、立体的であるため、二次元的な画像から算出することは正確でない。また、表面保護層に含まれる元素のうち、ケイ素は、シリカのみに依拠している。
【0049】
【0050】
[実施例2乃至6及び比較例1乃至3]
シリカの含有量を変えた塗工液を用いて表面保護層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2乃至6及び比較例1乃至3の内装シートをそれぞれ作製した。
実施例2乃至6及び比較例1乃至3の内装シートの表面保護層の表面についても、実施例1と同様に、上述の表面SEM観察による元素分析にてシリカのケイ素質量%を測定し、シリカの表面積割合を特定した。その結果を表2に示す。
【0051】
[比較例4]
表層Aに代えて表層Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面保護層/表層/シート本体層からなる内装シートを作製した。その内装シートの表面保護層の表面についても、実施例1と同様に、上述の表面SEM観察による元素分析にてシリカのケイ素質量%を測定し、シリカの表面積割合を特定した。その結果を表2に示す。
【0052】
[比較例5]
表面保護層を形成せず、表層A/シート本体層からなる積層体そのものを比較例5の内装シートとした。
【0053】
[比較例6]
表面保護層を形成せず、表層B/シート本体層からなる積層体を比較例6の内装シートとした。
【0054】
[水馴染み性及び乾燥性の評価]
各実施例及び比較例の内装シートから、縦×横=297mm×210mmを切り出してそれぞれ試験片を得た。
試験片を水平に置き、その試験片の表面(試験片の表面は、表面保護層が形成されている内装シートについては表面保護層の表面であり、表面保護層が形成されていない内装シートについては表層の表面である。以下同じ)に、霧吹きを用いて、概ね150g/m2となるように水を満遍なく吹き付けた。その後、目視にて表面の水馴染み性を観察した。それらの結果を表2に示す。なお、水馴染み性とは、試験片の表面において、水が横方向に拡がり、水膜の厚みが小さい状態となっていることをいう。
表2の表面の水馴染み欄の「◎」は、水が表面に非常に馴染んでいると判断した場合を表し、「○」は、水が表面にある程度馴染んでいると判断した場合を表し、「×」は、水が弾かれていると判断した場合を表す。
【0055】
次に、水馴染み性を行なった後の試験片を十分に乾燥させた後、その試験片に前記と同様にして水を吹き付けた後、その試験片を、温度23℃、湿度50%RHで放置し、表面の水が無くなるまでの時間を計測した。それらの結果を表2に示す。
表2の乾燥性欄の「◎」は、乾燥時間が3時間以下を表し、「○」は、乾燥時間が6時間以下を表し、「×」は、乾燥時間が6時間を越えたことを表す。
【0056】
これらの結果から、水が横方向に拡がり水馴染み性が良いものほど、乾燥性が向上することが判る。
実施例1乃至6と比較例1乃至3の対比から、表面保護層の表面において、シリカの露出が小さいと、良好な水馴染み性及び乾燥性を得られないことが判る。
実施例1乃至6の傾向から、表面におけるシリカの表面積割合が大きいほど、水馴染み性及び乾燥性が向上すると推定されるが、余りに大きいと、表面保護層が脆くなる可能性があり、さらに、防汚性、意匠性、透明性及び防痛性が低下するおそれがあると考えられる。このため、シリカの表面積割合の上限は、7.0%以下が良い。比較例4及び6の内装シートの表面保護層は、界面活性剤を含有しているので、その表面は水馴染み性及び乾燥性に優れているが、白化抑制効果が極端に低下している(表2の比較例4及び6の初期の色差ΔE参照)。
【0057】
[吸水白化の試験]
塩化ビニル樹脂を含む層は、水分と長時間接触することによって白化することが知られている。以下、水分と長時間接触することによって白化することを「吸水白化」という。吸水白化によって、内装シートの表面の見た目が変化するので、ここでは、吸水させた後に、表面を目視にて観察すると共に、表面の色差(ΔE)を時間を開けて測定した。
【0058】
具体的には、実施例及び比較例の内装シートから、縦×横=100mm×100mmを切り出してそれぞれ試験片を得た。
試験片を40℃の温水に24時間浸漬した後、その表面の色差(ΔE)を測定した(以下、初期の色差という)。その初期の色差の結果を表2の「初期」に示す。前記初期の色差は、温水浸漬前の試験片の表面の色と浸漬後の試験片の表面の色の差である。浸漬後については、表面に付着している水滴を拭き取った上で計測した。色差(ΔE)は、色差計(日本電色工業(株)製の商品名「Color Meter ZE2000」)を用いて測定した、JIS Z8729に従ったL*a*b*表色系(L*:明度、a*b*:色度)による色差である。なお、ΔE={(L-L0)2+(a-a0)2+(b-b0)2}1/2で求められる。
【0059】
また、前記初期の色差を測定する直前に、表面の状態を目視で観察した。その結果を表2の吸水白化に示す。表2の吸水白化欄の「○」は、白化が目立たなかったことを表し、「△」は、白化がやや目立ったことを表し、「×」は、白化が目立ったことを表す。
【0060】
初期の色差を測定した後、その試験片を、さらに温度23℃、湿度50%RHで1時間放置した後、同様に、試験片の表面の色差(ΔE)を計測した(1時間放置後の色差)。前記1時間放置後の色差は、温水浸漬前の試験片の表面の色と1時間放置後の試験片の表面の色の差である。その結果を表2に示す。なお、ΔEは、その値が小さいほど、白化していないことを示す指標である。
1時間放置後の表面を目視で観察したところ、比較例6を除いて、温水浸漬前の試験片の表面の色に戻っており、白化を確認できなかった。
【0061】
界面活性剤は、吸水を促し、白化を誘因する要素となり得るところ、界面活性剤を含まない表層Aを有する例は、吸水白化を抑制できることが判る。
【0062】
【0063】
[日用品白化の試験]
塩化ビニル樹脂を含む層は、シャンプー、リンス、ボディソープなどの界面活性剤を含む日用品と接触することによって、層表面が白くなる所謂白化を起こすことがある。この白化は、水分の少ない状態や水分との接触時間が短い条件でも発生するため、上述の吸水白化とは異なるメカニズムで発生する、異なる現象と考えられる。両者を区別するために、以下、本明細書においては界面活性剤を含む日用品と接触することによって起こる白化を「日用品白化」という。また、吸水白化は可逆的な現象であるところ、日用品白化は界面活性剤を含む日用品を除去するとある程度は白化が低下する場合が見受けられるものの白化の低下が小さいため、不可逆的な現象と考えられる。なお、日用品白化及び吸水白化は、いずれも、樹脂の屈曲や衝撃、傷付きのような物理な破壊によって生じる白化、表面凹凸による光拡散によって生じる白化、樹脂の熱変性によって生じる白化、などとは発生原理が異なる現象である。
【0064】
具体的には、各実施例及び比較例の内装シートから、縦×横=100mm×100mmを切り出してそれぞれ試験片を3枚準備した。
1つの試験片の表面に、市販のシャンプー(花王(株)製の商品名「メリット」)を、約1ミリリットル滴下し、それを約10平方cmに押し広げた後、温度23℃、湿度50%RH下で、24時間放置した後、シャンプーを拭き取り、水洗し、表面の水分が無くなるまで自然乾燥した。乾燥後、その表面の状態を目視で観察した。
2つ目の試験片を用いたこと、及び、シャンプーに代えて市販のリンス(花王(株)製の商品名「メリット」)を用いたこと以外は、同様にして、乾燥後の試験片の表面の状態を目視で観察した。
3つ目の試験片を用いたこと、及び、シャンプーに代えて市販のボディソープ(ダウ社製の商品名「ボディウォッシュプレミアム」)を用いたこと以外は、同様にして、乾燥後の試験片の表面の状態を目視で観察した。それらの結果を表2に示す。
表2の日用品欄の「○」は、白化していなかったことを表し、「△」は、凝視すると白化が確認されたことを表し、「×」は、直ちに白化が視認されたことを表す。
【0065】
[参考例1乃至3]
上記形成材料を、表1に示す割合で配合し、十分に混合した後、ロール温度を150℃に設定したカレンダー成形機にて、厚み0.4mmのシート状に作製した。このようにして厚み0.4mmの表層C乃至Eをそれぞれ作製した。表層C乃至Eは、いずれも、全体的に濃いベージュ色を呈していた。
【0066】
実施例1と同様にして、シート本体層を作製し、このシート本体層の表面に、前記表層Cを積層し、温度を150℃に設定した熱プレス機にて加熱加圧することにより、表層C/シート本体層からなる積層体を作製し、参考例1の積層体とした。
表層Cを表層Dに代えたこと以外は、参考例1と同様にして、参考例2の積層体を作製した。
表層Cを表層Eに代えたこと以外は、参考例1と同様にして、参考例3の積層体を作製した。
【0067】
[吸水白化及び日用品白化の試験]
参考例1乃至3の積層体の表面(表層C乃至Eの表面)の吸水白化及び日用品白化を、上記[吸水白化の試験]及び[日用品白化の試験]と同様にして、測定及び観察した。その結果を表3に示す。
【0068】
【0069】
参考例の結果から、無機充填剤を2種類用いた場合、タルクの比率が大きく且つ炭酸カルシウムの比率が小さいほど、吸水白化及び日用品白化を抑制できることが判る。
また、比較例6と参考例2及び3との対比から、表層が界面活性剤を含む場合であっても、無機充填剤としてタルクを使用することにより、吸水白化及び日用品白化を抑制できることが判る。
参考例1乃至3の積層体の表面に、実施例1乃至6の表面保護層を形成した場合には、乾燥性に優れ、吸水白化が抑制された内装シートを得ることができると推定される。好ましくは、参考例2及び3の積層体の表面に、実施例1乃至6の表面保護層を形成した場合、乾燥性に優れ、吸水白化及び日用品白化が抑制された内装シートを得ることができると推定される。