(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041525
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】軒樋支持具
(51)【国際特許分類】
E04D 13/072 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
E04D13/072 501J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146765
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌司
(57)【要約】 (修正有)
【課題】施工現場で取付足部と樋支持部とを固定具で締めることなく、軒先からの出寸法を調整することができる軒樋支持具を提供する。
【解決手段】軒先に固定される固定部2と、該固定部に連結されて軒先の前方に突出するように配される取付足部7と、該取付足部の前端部の下方に配された、軒樋8を支持する樋支持部73とを備える軒樋支持具1において、前記固定部は、調整部4と、該調整部の前方に配され、かつ、前記取付足部が連結されている固定基部3とを有し、前記固定基部の側部31には、上下方向に並んだ2つの軸孔32が設けられ、該軸孔の一方は、上下方向に延びる長孔状とされ、前記調整部は、2つの分離固定部5と、該分離固定部と前記固定基部との間に配され、かつ、2つのアーム部61,61が支点62で交差するクロスリンク機構6とを有し、連結部61aは、前記軸孔の長手方向に沿ってスライド可能に連結されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒先に固定される固定部と、該固定部に連結されて軒先の前方に突出するように配される取付足部と、該取付足部の前端部の下方に配された、軒樋を支持する樋支持部とを備える軒樋支持具において、
前記固定部は、調整部と、該調整部の前方に配され、かつ、前記取付足部が連結されている固定基部とを有し、
前記固定基部の側部には、上下方向に並んだ2つの軸孔が設けられ、
該軸孔の一方は、上下方向に延びる長孔状とされ、
前記調整部は、2つの分離固定部と、該分離固定部と前記固定基部との間に配され、かつ、2つのアーム部が支点で交差するクロスリンク機構とを有し、
該クロスリンク機構は、後端部側に設けられた連結部が前記分離固定部に回動自在に連結され、前端部側に設けられた連結部が前記固定基部の前記軸孔に回動自在に連結され、かつ、前記固定基部の長孔状の前記軸孔に連結される前記連結部は、前記軸孔の長手方向に沿ってスライド可能に連結されていることを特徴とする軒樋支持具。
【請求項2】
請求項1において、
前記固定部は、幅方向に並んだ2つの前記調整部を有し、前記クロスリンク機構の前記支点の各々を両端部で連結する連結軸をさらに有することを特徴とする軒樋支持具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記アーム部は長尺体よりなり、
前記アーム部は、他方のアーム部の長手方向に沿ってスライド移動可能であることを特徴とする軒樋支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒先に固定される固定部と、該固定部に連結されて軒先の前方に突出するように配される取付足部と、該取付足部の前端部の下方に配された、軒樋を支持する樋支持部とを備える軒樋支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軒先からの軒樋の出寸法を調整できる軒樋支持具が知られている(たとえば、特許文献1)。このような軒樋支持具では、取付足部の下方に配された樋支持部を、取付足部に形成された長孔に沿って所望の位置にスライド移動させることで、軒先からの軒樋の出寸法を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような軒樋支持具では、施工現場で作業者が樋支持部の出寸法を調整してから取付足部と樋支持部とを固定具等で締めて固定する必要がある。そのため、施工現場で固定具を緩めたり締めたりして樋支持部の位置を調節して固定しなければならない。このように、施工現場で樋支持部の位置調整をするため、固定具を締め忘れて緩んだ状態のまま軒樋が取り付けられるおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みて提案されたもので、その目的は、施工現場で取付足部と樋支持部とを固定具で締めることなく、軒先からの出寸法を調整することができる軒樋支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の軒樋支持具は、軒先に固定される固定部と、該固定部に連結されて軒先の前方に突出するように配される取付足部と、該取付足部の前端部の下方に配された、軒樋を支持する樋支持部とを備える軒樋支持具において、前記固定部は、調整部と、該調整部の前方に配され、かつ、前記取付足部が連結されている固定基部とを有し、前記固定基部の側部には、上下方向に並んだ2つの軸孔が設けられ、該軸孔の一方は、上下方向に延びる長孔状とされ、前記調整部は、2つの分離固定部と、該分離固定部と前記固定基部との間に配され、かつ、2つのアーム部が支点で交差するクロスリンク機構とを有し、該クロスリンク機構は、後端部側に設けられた連結部が前記分離固定部に回動自在に連結され、前端部側に設けられた連結部が前記固定基部の前記軸孔に回動自在に連結され、かつ、前記固定基部の長孔状の前記軸孔に連結される前記連結部は、前記軸孔の長手方向に沿ってスライド可能に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の軒樋支持具は、上述した構成とされるため、軒先に固定部を取り付けることによって、取付足部と樋支持部とを固定具で締めることなく、軒先からの出寸法を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る軒樋支持具の模式的斜視図である。
【
図2】(a)(b)は、本実施形態に係る軒樋支持具の概略的側面図、(c)は、(b)の概略的平面図である。
【
図3】(a)は、他の実施形態に係る軒樋支持具の概略的側面図、(b)は、概略的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。まず、軒樋支持具の基本構成について説明する。なお、軒樋支持具が建物に固定されている状態を基準にして、前後方向(建物側を後ろ方向、それとは反対側を前方向)、幅方向(建物に対する見付の方向と一致する方向)、上下方向等を規定する。また、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
【0010】
軒樋支持具1は、軒先Aに固定される固定部2と、固定部2に連結されて軒先Aの前方に突出するように配される取付足部7と、取付足部7の前端部の下方に配された、軒樋8を支持する樋支持部73とを備える。固定部2は、調整部4と、調整部4の前方に配され、かつ、取付足部7が連結されている固定基部3とを有する。固定基部3の側部31には、上下方向に並んだ2つの軸孔32が設けられており、軸孔32の一方は、上下方向に延びる長孔状とされる。調整部4は、2つの分離固定部5と、分離固定部5と固定基部3との間に配され、かつ、2つのアーム部61,61が支点62で交差するクロスリンク機構6とを有する。クロスリンク機構6は、後端部側に設けられた連結部61bが分離固定部5に回動自在に連結され、前端部側に設けられた連結部61aが固定基部3の軸孔32に回動自在に連結され、かつ、固定基部3の長孔状の軸孔32Aに連結される連結部61aは、軸孔32Aの長手方向に沿ってスライド可能に連結されている。
以下、詳しく説明する。
【0011】
固定部2は、固定基部3と、調整部4とを備える。固定基部3は、板材からなり、前後方向に板面が向く本体部30と、本体部30の幅方向両端部が後方に折曲されて板面が幅方向に向いている側部31,31とを備えている。側部31には、上下方向に並んだ2つの軸孔32,32が設けられている。本実施形態では、上側の軸孔を32A、下側の軸孔を32Bと符号を付している。そして、上側の軸孔32Aは、上下方向に延びる長孔状とされ、下側の軸孔32Bは、丸孔状とされている。
【0012】
調整部4は、2つの分離固定部5とクロスリンク機構6とを有する。
図1、
図2(c)に示すように、分離固定部5は板材が平面視してL字状に折曲されて形成されている。具体的には、分離固定部5は、前後方向に板面が向き、固着具9が挿通される挿通孔51aを有し軒先Aに固定される固定面51と、固定面51の幅方向内側の端部から前方向に折曲されて板面が幅方向に向き、アーム部61の後端部側の連結部61bに接続される接続部52とを有する。
【0013】
クロスリンク機構6は、2つのアーム部61,61が支点62で交差して構成されている。本実施形態では、アーム部61,61同士が長手方向の略中心部で交差するように支点62が構成されている。アーム部61の前端部側の連結部61aは、軸孔32に回動自在に連結される。本実施形態では、長孔状の軸孔32Aに連結されるアーム部を61A、丸孔状の軸孔32Bに連結されるアーム部を61Bと符号を付している。アーム部61Aは前方に上がり傾斜して、アーム部61Bは前方に下がり傾斜するように交差して設けられている。本実施形態では、固定部2は、上述した調整部4が幅方向に並んで構成され、クロスリンク機構6の支点62の各々を両端部64aで連結する丸棒状の連結軸64を有している。なお、図面では、アーム部61Aがアーム部61Bよりも幅方向外側に配されているが、特に限定されることはない。
【0014】
取付足部7は、固定基部3の上方から前方に突出するように設けられた本体部71と、本体部71から前方に段落ち形成された支持連結部72とを有する。支持連結部72の下方には、支持連結部72に当接して配されている樋支持部73がリベット等で連結して配されている。樋支持部73は、前後方向に延びて形成され、前端部に軒樋8の前耳81が係止される前耳保持部73aと、後端部に軒樋8の後耳82が係止される後耳保持部73bとを有する。
【0015】
アーム部61A,61Bは、前端部側の連結部61aが固定基部3に回動自在に連結され、後端部側の連結部61bが分離固定部5の接続部52に回動自在に連結されている。さらにアーム部61Aの前端部側の連結部61aは、長孔状の軸孔32Aの長手方向に沿ってスライド可能に連結されている。そして、アーム部61A,61Bは支点62で交差するように連結されている。そのため、
図2(a)(b)に示すように、アーム部61A,61Bが交差してできた回動角度θを異ならせることによって、軒先Aからの軒樋支持具1の出具合を調整することができる。回動角度θが大きいほど、軒先Aからの出寸法が小さくなり、回動角度θが小さくなるほど、軒先Aからの出寸法が大きくなる。
次に、本実施形態の軒樋支持具1の軒先Aに対する取付態様について、
図2を参照して説明する。
【0016】
軒先Aからの出寸法を小さくしたい場合は、
図2(a)に示すように回動角度θが大きくなるように上下に並ぶ分離固定部5,5間の距離hを大きくする。また、軒先Aからの出寸法を大きくしたい場合は、
図2(b)に示すように回動角度θが小さくなるように、上下に並ぶ分離固定部5,5間の距離hを小さくする。軒樋支持具1の軒先Aからの出寸法が定まったら、固着具9を分離固定部5の挿通孔51aに挿通させて、軒樋支持具1を軒先Aに固定させる。
【0017】
軒樋支持具1は、支点62を軸にしてアーム部61,61同士と、アーム部61の前端部側の連結部61aと固定基部3の軸孔32と、アーム部61の後端部側の連結部61bと分離固定部5の接続部52とが、それぞれ回動自在に連結されている。これにより軒樋支持具1は、軒先Aからの出寸法を無段階で調整することができ、長孔状の軸孔32Aの長手方向の長さだけ調整できる。
【0018】
そして、軒樋支持具1は、分離固定部5の固定面51が軒先Aに固定されることで、アーム部61,61の回動が固定され、それにより、軸孔32Aに連結している連結部61aも位置が固定され、その結果、軒樋支持具1は安定した固定状態で維持される。
【0019】
そのため、取付足部と樋支持部とがスライド自在に連結されている従来のような軒樋支持具とは異なり、軒樋支持具1は、軒先Aからの出寸法を調整して軒先Aに固定することで、固定具で締めることなく回動が固定される。
【0020】
次に
図3に示す変形例について説明する、なお、上述の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、共通する構成や効果等の説明は省略する。
図3の軒樋支持具1は、アーム部61A,61Bは長尺体よりなり、それぞれ互いの長手方向に沿ってスライド移動可能に構成されている。具体的に説明すると、
図3(a)に示すように、アーム部61A,61Bには、長手方向に沿って長孔63が設けられており、長孔63,63が交差するように幅方向に重ねて配されており、長孔63,63に挿通して連結軸64が配されている。これにより連結軸64は、長孔63内をスライド自在に移動することが可能となる。
【0021】
また、
図3(b)に示すように、アーム部61B,61B間には、連結軸64の外周面を覆うように、雄ネジ部65Aと、雌ネジ部65Bとにより構成されたロック機構65が配されている。雄ネジ部65A,雌ネジ部65Bは円管状の部材であり、アーム部61B,61B間の半分程度の長さかそれよりも若干長く形成されている。雄ネジ部65Aには、幅方向内側の外周面に雄ネジ65Aaが設けられており、雌ネジ部65Bには、幅方向内側の内周面に雌ネジ部(不図示)が設けられており、雌ネジ部65Bの雌ネジ部に雄ネジ部65Aの雄ネジ65Aaが螺合されることでロック機構65が構成される。雌ネジ部65Bが雄ネジ部65Aの雄ネジ65Aaに沿って回転させることによって、雄ネジ部65Aの幅方向外側の他端部65Abと、雌ネジ部65Bの幅方向外側の他端部65Bbとが、幅方向に互いに接近又は遠ざかるように雄ネジ部65Aと雌ネジ部65Bとが移動する。雄ネジ部65Aの他端部65Abと雌ネジ部65Bの幅方向外側の他端部65Bbとが幅方向に互いに遠ざかってアーム部61B,61Bに強固に接触することによって、連結軸64の長孔63のスライド移動が規制されるロック状態となる。ようするに、ロック機構65は、アーム部61B,61Bに対して突っ張り棒のように突っ張って固定される。その他の構成は、
図1,2に示す軒樋支持具1と略同一の構成とされる。
【0022】
図3(a)に示すように、軒樋支持具1は、傾斜している軒先A’であっても、軒先A’の出寸法を調整可能、かつ、地面(不図示)に対して樋支持部73が略平行となるように軒先A’に固定することができる。具体的に説明すると、軒樋支持具1の軒先A’からの出寸法を調整したら、分離固定部5を軒先A’に固着具(不図示)で固定させる。そして、ロック機構65を調節して連結軸64のロックが解除された状態で、樋支持部73が地面(不図示)に対して略平行となるように位置させる。樋支持部73が地面に対して略平行となったら、その状態を維持したままロック機構65を調整して連結軸64の長孔63に対するスライド移動をロックさせる。分離固定部5が軒先A’に固定され、かつ、連結軸64の長孔63に対するスライド移動がロックされることによって、アーム部61,61同士と、アーム部61の前端部側の連結部61aと固定基部3の軸孔32と、アーム部61の後端部側の連結部61bと分離固定部5の接続部52とは、回動動作することなく、軒樋支持具1は安定した固定状態で維持される。
【0023】
このように、
図3に示す軒樋支持具1は、ロック機構65の調整を必要としているが、傾斜している軒先A’であっても、軒先A’からの出寸法を調整可能、かつ、地面(不図示)に対して樋支持部73が略平行となるように固定することができる。
【0024】
本発明の軒樋支持具1は、上述した各実施形態や図面に示すものに限定されることはなく、軒樋支持具1の構成や各部材の材質及び形状等は、適宜設計されればよい。例えば図面において固定基部3の側部31の上側の軸孔32が長孔状とされているが、代わりに下側の軸孔32が長孔状であってもよい。また、長孔状の軸孔32の長手方向の長さも図面に示すものに限定されることはなく、図面のものよりも長くても短くてもよい。長孔状の軸孔32が長いほど、軒先Aからの出寸法の調整幅を大きくすることができ、逆に長孔状の軸孔32が短いほど、軒先Aからの出寸法の調整幅が小さくなる。
【0025】
また、
図3の連結軸64の長孔63に対するスライド移動がロックされる機構としては、
図3に示したロック機構65に限定されることはない。例えば、ロック機構65を設けずに、連結軸64の両端部64a,64aのそれぞれに設けたナットの締結により、アーム部61,61の回動を個別に固定するものでもよい。また、長孔状の軸孔32Aに連結されている連結部61aに、スライド移動をロックする部材を設けてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 軒樋支持具
2 固定部
3 固定基部
31 側部
32,32A,32B 軸孔
4 調整部
5 分離固定部
6 クロスリンク機構
61,61A,61B アーム部
61a,61b 連結部
64 連結軸
7 取付足部
8 軒樋
A,A’ 軒先