(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041539
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】吸水装置および造水装置
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20220304BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220304BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B01J20/26 D
C02F1/44 H
B01D61/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146795
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】行天 久朗
(72)【発明者】
【氏名】網代 広治
(72)【発明者】
【氏名】大浦 真歩
【テーマコード(参考)】
4D006
4G066
【Fターム(参考)】
4D006GA23
4D006KA33
4D006KD30
4D006MA03
4D006MC09
4D006PA01
4D006PB08
4G066AB05A
4G066AB09A
4G066AC17B
4G066BA03
4G066BA22
4G066BA28
4G066BA38
4G066CA43
4G066DA08
(57)【要約】
【課題】純度の高い水を効率的に吸収する。
【解決手段】吸水装置(100)は、逆浸透膜(110)と、逆浸透膜(110)を透過した水を吸収する感熱応答性ハイドロゲル(120)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜と、
前記逆浸透膜を透過した水を吸収する感熱応答性ハイドロゲルと
を備える、吸水装置。
【請求項2】
前記感熱応答性ハイドロゲルは、前記逆浸透膜の下方に配置される、請求項1に記載の吸水装置。
【請求項3】
前記感熱応答性ハイドロゲルは、多孔構造を有する、請求項1または2に記載の吸水装置。
【請求項4】
前記感熱応答性ハイドロゲルの収縮および膨張は、雰囲気環境からの熱の収受によって生じる、請求項1から3のいずれかに記載の吸水装置。
【請求項5】
前記逆浸透膜および前記感熱応答性ハイドロゲルの少なくとも一方を支持する支持部材をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の吸水装置。
【請求項6】
前記逆浸透膜と接触して配置された吸湿材をさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の吸水装置。
【請求項7】
前記吸湿材は潮解性物質を含む、請求項6に記載の吸水装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の吸水装置と、
前記吸水装置から放出された水を回収するための回収容器と
を備える、造水装置。
【請求項9】
前記回収容器は、前記吸水装置と一体化される、請求項8に記載の造水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水装置および造水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸湿材として感熱応答性ハイドロゲルを用いることが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、可逆性ハイドロゲルを表面に固定化した繊維を含む複合多孔質繊維状除湿材料が記載されている。特許文献1の複合多孔質繊維状除湿材料は、温度変化、pH変化、電場、光の強度または波長等を刺激として、空気中から吸収した水を放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開公報第2013/0309927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の複合多孔質繊維状除湿材料は、低純度の水を吸収することがある。この場合、複合多孔質繊維状除湿材料が水分の吸収および放出を繰り返すと、複合多孔質繊維状除湿材料による水の吸収性能が低下することがある。また、複合多孔質繊維状除湿材料に吸収された水の純度が低いと、複合多孔質繊維状除湿材料から放出された水を活用しづらい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、活用性の高い水を効率的に吸収可能な吸水装置および造水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、吸水装置は、逆浸透膜と、前記逆浸透膜を透過した水を吸収する感熱応答性ハイドロゲルとを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、活用性の高い水を効率的に吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】(a)~(c)は、本実施形態の吸水装置による吸水工程を説明するための模式図である。
【
図3】(a)~(d)は、本実施形態の造水装置による造水工程を説明するための模式図である。
【
図4】(a)~(e)は、本実施形態の吸水装置による吸水工程を説明するための模式図である。
【
図5】(a)~(d)は、本実施形態の造水装置による造水工程を説明するための模式図である。
【
図6】(a)~(e)は、本実施形態の造水装置による造水工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明による吸水装置および造水装置の実施形態を説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。なお、本願明細書では、発明の理解を容易にするため、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載することがある。例えば、Z軸方向は、鉛直方向を示し、X軸方向およびY軸方向は、水平方向を示す。
【0010】
まず、
図1を参照して、本実施形態の吸水装置100を説明する。
図1は、吸水装置100の模式図である。吸水装置100は、水を吸収できる。
【0011】
図1に示すように、吸水装置100は、逆浸透膜110と、感熱応答性ハイドロゲル120とを備える。ここでは、逆浸透膜110と感熱応答性ハイドロゲル120とは接触する。例えば、逆浸透膜110と感熱応答性ハイドロゲル120とは結合されてもよい。あるいは、逆浸透膜110と感熱応答性ハイドロゲル120とは分離可能な状態で接触してもよい。
【0012】
ここでは、より好ましい形態として、感熱応答性ハイドロゲル120は、逆浸透膜110の鉛直下方に配置されることにより、水の吸収、分離に重力が利用できる構造を示す。一例として、感熱応答性ハイドロゲル120は、逆浸透膜110に支持されてもよい。
【0013】
図1において、吸水装置100は、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120の少なくとも一方を支持する支持部材180をさらに備える。例えば、支持部材180は、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120の周囲と接する中空形状の容器である。
【0014】
支持部材180は、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120と接触して、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120を支持すると共に、吸水装置100に供給される水含有液体が感熱応答性ハイドロゲル120と直接接触することで感熱応答性ハイドロゲル120によって吸収された活用性の高い水と混合することを防ぐ。また、支持部材180は、感熱応答性ハイドロゲル120と接触することなく逆浸透膜110と接触して、逆浸透膜110を直接的に支持するとともに感熱応答性ハイドロゲル120を間接的に支持してもよい。
【0015】
例えば、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120の少なくとも一方は、支持部材180に圧入され、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120の少なくとも一方と支持部材180との界面において、支持部材180に支持されてもよい。または、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120は、支持部材180と逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120の少なくとも一方との界面において、接着剤を介して支持されてもよい。あるいは、支持部材180の内側面には、環状にわたってまたは間欠的に環状に突起が設けられ、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120のいずれかが突起の上に支持されてもよい。
【0016】
逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120は、支持部材180の内側のほぼ中央に配置される。後述するように、感熱応答性ハイドロゲル120は、低温下において水を吸収して膨張する。このため、支持部材180内において、感熱応答性ハイドロゲル120は、感熱応答性ハイドロゲル120の膨張可能な空間を有することが好ましい。
【0017】
逆浸透膜110は、いわゆるフィルターとしても機能する。このため、逆浸透膜110は、水を透過する一方で、水内に拡散する不純物を透過しない。また、逆浸透膜110は、水を透過する一方で、イオンを透過しない。例えば、逆浸透膜110は、イオンを含む溶液に逆浸透圧を印加することによって、純水を分離できるような高分子膜から形成される。
【0018】
逆浸透膜110に対象となる水含有液体を供給すると、逆浸透膜110は、イオンの透過を防ぐとともに、水を選択的に含水する。逆浸透膜110のうちの上記水含有液体と接する面とは反対側の面が感熱応答性ハイドロゲル120と接する場合、後述する相転移温度以下において、逆浸透膜110中の水は、感熱応答性ハイドロゲル中に移動する。これは、供給した水含有液体中より感熱応答性ハイドロゲル中の方が水のエネルギー的安定性が高くなるからである。結果として、水含有液体を逆浸透膜110に供給すると、逆浸透膜110は、水含有液体から水以外の成分の大部分を透過させることなく、水を透過できる。
【0019】
感熱応答性ハイドロゲル120は、温度に応じて膨張または収縮する。感熱応答性ハイドロゲル120は、温度に応じて相転移する。相転移温度よりも低い温度の場合、感熱応答性ハイドロゲル120は、親水性を示す。このため、感熱応答性ハイドロゲル120が逆浸透膜110を介して水含有液体に接触した状態で周囲温度が低くなると、感熱応答性ハイドロゲル120は、水を吸収して膨張する。
【0020】
一方、相転移温度以上の温度の場合、感熱応答性ハイドロゲル120は、疎水性を示す。このため、周囲温度が高くなると、感熱応答性ハイドロゲル120は、吸収した水を放出して収縮する。感熱応答性ハイドロゲル120が収縮する際には、吸熱反応によって周囲から得た熱エネルギーの一部が水の分離(放出)に用いられる。
【0021】
典型的には、相転移温度は、室温近傍であることが好ましい。例えば、相転移温度は、20℃以上50℃以下であれば、周囲の環境温度の変化サイクルを水の吸収・分離に活用できるので好適である。
【0022】
例えば、感熱応答性ハイドロゲル120は、N-イソプロピルアクリアミド(N-Isopropylacrylamide:NIPAM)の重合体を含む。例えば、NIPAMの相転移温度は32℃である。この場合、感熱応答性ハイドロゲル120は、温度が32℃よりも低いと、水を吸収して膨張する。一例として、感熱応答性ハイドロゲル120が水を吸収して膨張するように、吸水装置100の周囲温度を20℃に設定してもよい。
【0023】
また、感熱応答性ハイドロゲル120は、温度が32℃以上になると、吸収した水を放出して収縮する。一例として、感熱応答性ハイドロゲル120が水を放出して収縮するように、吸水装置100の周囲温度を50℃に設定してもよい。
【0024】
例えば、感熱応答性ハイドロゲル120としてNIPAMの重合体は、NIPAMモノマーと、架橋剤と、開始剤と用いて作製される。架橋剤の一例は、メチレンビスアクリルアミド(Methlenebisacryamide:MBAM)である。また、開始剤の一例は、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(Ammonium Peroxodisufate:APS)とテトラメチルエチレンジアミン(Tetramethylethylenediamine:TEMED)を含む。さらに添加剤として、線状ポリマーとしてポリN-イソプロピルアクリアミド(N-Isopropylacrylamide:PNIPAM)を添加してもよい。
【0025】
感熱応答性ハイドロゲル120は、多孔構造を有してもよい。感熱応答性ハイドロゲル120に複数の微小な孔が設けられることにより、感熱応答性ハイドロゲル120は、それらの孔を通じて、分離された水を効率的に外部に放出できる。
【0026】
吸水装置100の周囲温度は、熱源または冷却源を用いて変化させてもよい。例えば、吸水装置100が冷却源の側に配置された低温環境下の状態で、対象水が吸水装置100に供給され、感熱応答性ハイドロゲル120が水を吸収して膨張してもよい。また、吸水装置100が熱源の側に配置された高温環境下の状態で、感熱応答性ハイドロゲル120に吸収された水が放出されてもよい。
【0027】
また、吸水装置100の周囲温度は、周囲環境の変化に応じて変化してもよい。例えば、温度の比較的低い場所または時間(例えば、夜間)に、対象水が吸水装置100に供給され、感熱応答性ハイドロゲル120が水を吸収して膨張してもよい。また、温度の比較的高い場所または時間(例えば、昼間)に、感熱応答性ハイドロゲル120に吸収された水が放出されてもよい。
【0028】
本実施形態の吸水装置100によれば、吸水装置100には、逆浸透膜110による純水分離機能があるので、下水または泥水などの汚染水を供給しても、下水または泥水から活用性の高い高純度の水を吸収できる。また、吸水装置100に、海水または塩分濃度の高い地下水を供給しても、海水または塩分濃度の高い地下水から高純度の水を吸収できる。このように、所定条件下において水を吸収する感熱応答性ハイドロゲル120には、不要なイオンが吸収されない。したがって、感熱応答性ハイドロゲル120は、水の吸収・放出を繰り返しても性能の低下を抑制できる。
【0029】
次に、
図1および
図2を参照して、本実施形態の吸水装置100を説明する。
図2(a)~
図2(c)は、吸水装置100による吸水工程を説明するための模式図である。
【0030】
図2(a)に示すように、支持部材180の上部に、吸水装置100の吸水対象となる対象水Wsが供給される。対象水Wsは、いわゆる水と、水以外の物質とを含む。水以外の物質は、水に溶解していてもよく、溶解していなくてもよい。例えば、対象水Wsは、種々のイオンを含んでもよい。あるいは、対象水Wsは、水と不純物との混合液であってもよい。逆浸透膜110は、不純物の透過を抑制するとともに水を透過し、逆浸透膜110を透過した水が感熱応答性ハイドロゲル120に到達する。また、逆浸透膜110は、対象水Ws内のイオンをほとんど透過させることなく水を透過し、逆浸透膜110を透過した水が感熱応答性ハイドロゲル120に到達する。
【0031】
図2(b)に示すように、吸水装置100の周囲温度が低温であると、感熱応答性ハイドロゲル120は、逆浸透膜110を透過した水を吸収して膨張する。例えば、感熱応答性ハイドロゲル120は、2倍以上20倍以下の体積まで膨張する。逆浸透膜110を透過した水はイオンおよび不純物を含まないため、感熱応答性ハイドロゲル120は、対象水Wsから高純度の水を吸収する。このため、吸水装置100は、純度の高い水を吸収できる。
【0032】
周囲温度が低温である場合、感熱応答性ハイドロゲル120は、吸収した水を引き続き保持する。感熱応答性ハイドロゲル120は、一般にイオンなどの不純物が取り込まれると内部構造や化学的安定性の変化によって水の吸水・分離能力が低下するが、本発明の構成では高純度の水を吸収するため、感熱応答性ハイドロゲル120は、水の吸収に繰り返し使用できる。
【0033】
例えば、周囲温度を高温に変化させると、感熱応答性ハイドロゲル120は、吸収した水を放出して収縮する。このため、感熱応答性ハイドロゲル120から、純度の高い水が放出される。さらに、周囲温度を高温に変化させることにより、吸水装置100を初期状態に戻すことができ、吸水装置100を再び利用できる。
【0034】
図2(c)に示すように、吸水装置100の周囲が高温に変化すると、感熱応答性ハイドロゲル120は、先に吸収した水を放出して収縮する。感熱応答性ハイドロゲル120の収縮および膨張は、雰囲気環境からの熱の収受によって生じる。感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水は空気中に蒸発してもよい。これにより、感熱応答性ハイドロゲル120に吸収された高純度の水が蒸発するため、感熱応答性ハイドロゲル120中に溶存残渣を残さず、高純度の水蒸気によって空気中の湿度を調整できる。
【0035】
本実施形態の吸水装置100は、高純度の水を吸収する。このため、感熱応答性ハイドロゲル120に、水以外の不純物を吸収することが抑制され、感熱応答性ハイドロゲル120を複数回繰り返して使用できる。
【0036】
なお、吸水装置100の周囲が高温に変化する際に、逆浸透膜110の上に対象水Wsがあると、感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水が逆浸透膜110中を逆流して対象水Wsと混合して元の状態に戻ることがある。このため、吸水装置100の周囲が高温になる前に、逆浸透膜110の上の対象水Wsを排出することが好ましい。これにより、高温環境下において感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水が対象水Wsに戻ることを抑制できる。
【0037】
なお、
図1および
図2を参照して上述した説明では、吸水装置100は、水を吸収または放出したが、感熱応答性ハイドロゲル120は、水を吸収する一方で、不純物およびイオンをほとんど吸収しない。このように、感熱応答性ハイドロゲル120には、高純度の水が吸収されるため、感熱応答性ハイドロゲル120から放出される水を回収し、この水を活用することが可能となる。例えば、感熱応答性ハイドロゲル120に吸収された水は、飲料水、生活水または農業水として好適に利用できる。したがって、吸水装置100は、造水装置として利用されてもよい。
【0038】
次に、
図1~
図3を参照して、本実施形態の造水装置100Aを説明する。
図3(a)~
図3(d)は、造水装置100Aによる造水工程を説明するための模式図である。
図3の造水装置100Aは、感熱応答性ハイドロゲル120に一旦吸収された水を感熱応答性ハイドロゲル120から放出して活用する点を除いて、
図1および
図2を参照して吸水装置100について上述した説明と同様であり、冗長を避ける目的で重複する記載を省略する。
【0039】
図3(a)に示すように、造水装置100Aは、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120を備える。逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120は、支持部材180内に配置される。
【0040】
図3(a)に示すように、支持部材180の上部に対象水Wsが供給される。供給された対象水Wsは、種々のイオンを含んでもよい。このとき、逆浸透膜110は、対象水Ws内のイオンをほとんど透過することなく水を透過する。
【0041】
図3(a)に示すように、周囲温度が低温の場合、感熱応答性ハイドロゲル120は、逆浸透膜110を透過した水を吸収して膨張する。例えば、感熱応答性ハイドロゲル120は、2倍以上20倍以下の体積まで膨張する。このように、造水装置100Aは、純度の高い水を吸収できる。
【0042】
図3(b)に示すように、周囲温度が高温に変化すると、感熱応答性ハイドロゲル120は、吸収していた水を放出して収縮する。放出された水がその場に滞留して感熱応答性ハイドロゲル120と接していると、次に周囲温度が下がった時、対象水Wsからだけでなく、放出された水から水分を再吸収してしまう。それを防ぐため、ここでは、感熱応答性ハイドロゲル120は、支持部材180の内側面の中央に配置されており、感熱応答性ハイドロゲル120は、逆浸透膜110の鉛直下方に配置される。このため、感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水の少なくとも一部は、重力にしたがって支持部材180の内部に落ちる。これにより、支持部材180に、回収水Wgが貯留される。このように、支持部材180を回収容器として用いて回収水Wgを回収してよい。このような重力による自然落下を利用する方法の他にも、感熱応答性ハイドロゲル120の表面に滲み出た放出水を振動または遠心力を利用して機械的に分離する方向、あるいは、感熱応答性ハイドロゲル120の一部分を押圧して感熱応答性ハイドロゲル120内部の微細孔に放出された水を絞り出すような方法も有効であることは言うまでもない。
【0043】
本実施形態の造水装置100Aは、
図2に示した吸水装置100の支持部材180を回収容器として用いる。このように、造水装置100Aは、吸水装置100と回収容器とを一体化することにより、対象水Wsから純度の高い水を回収水Wgとして回収する。回収水Wgは、不純物またはイオンをほとんど含まないため、飲料水、生活水または農業水として好適に利用できる。
【0044】
なお、
図3(b)に示すように、周囲温度が高温に変化する前に、支持部材180の上部に供給された対象水Wsを排出することが好ましい。これにより、感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水が逆浸透膜110を透過して対象水Wsに戻ることを抑制できる。
【0045】
このように、本実施形態の造水装置100Aは、周囲温度が低くなることにより、高純度の水を吸収し、周囲温度が高くなることにより、吸収した水を放出する。このため、高純度の水を比較的低いランニングコストで取得できる。
【0046】
また、本実施形態の造水装置100Aによれば、造水装置100Aに、対象水Wsとして下水または泥水を供給することにより、下水または泥水から高純度の水を吸収して、高純度の水を回収水Wgとして回収できる。このため、対象水Wsが比較的汚れていたとしても、対象水から清浄な水を回収水Wgとして効率的に抽出できる。
【0047】
さらに、本実施形態の造水装置100Aによれば、造水装置100Aに、対象水Wsとして海水または塩分濃度の高い地下水を供給することにより、塩分濃度の高い水から高純度の水を吸収して、高純度の水を回収水Wgとして回収できる。このため、対象水Wsの塩分濃度が比較的高くても、対象水から淡水を回収水Wgとして回収できる。したがって、上下水道に関するインフラの整備が比較的不充分な国または地域でも、衛生的に利用可能な水を提供できる。
【0048】
なお、
図3(b)では、支持部材180内に配置された感熱応答性ハイドロゲル120から水が放出されたが、本実施形態はこれに限定されない。感熱応答性ハイドロゲル120は、支持部材180から分離された状態で水を放出してもよい。
【0049】
図3(c)に示すように、感熱応答性ハイドロゲル120は、支持部材180から別の回収容器180Aまで移動された後で、周囲温度を高温に変化させてもよい。この場合、感熱応答性ハイドロゲル120に吸収されていた水を回収容器180Aにおいて回収水Wgとして回収できる。このとき、感熱応答性ハイドロゲル120は、逆浸透膜110と分離されてもよい。あるいは、感熱応答性ハイドロゲル120は、逆浸透膜110の少なくとも一部と接触してもよい。
【0050】
あるいは、
図3(d)に示すように、感熱応答性ハイドロゲル120は、温度変化以外の手法によって水を回収してもよい。例えば、感熱応答性ハイドロゲル120から水を回収する際に、感熱応答性ハイドロゲル120に力を付与することによって感熱応答性ハイドロゲル120から水を回収してもよい。例えば、感熱応答性ハイドロゲル120を押圧して感熱応答性ハイドロゲル120から水を回収してもよい。あるいは、感熱応答性ハイドロゲル120を遠心分離機に配置し、遠心分離によって感熱応答性ハイドロゲル120から水を回収してもよい。
【0051】
なお、
図2を参照した上述の説明では、吸水装置100は、供給された対象水Wsから高純度の水を吸収したが、本実施形態はこれに限定されない。吸水装置100は、空気中の水分を吸収してもよい。
【0052】
次に、
図1~
図4を参照して、本実施形態の吸水装置100を説明する。
図4(a)~
図4(e)は、吸水装置100による吸水工程を説明するための模式図を示す。
図4に示した吸水装置100は、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120に加えて、吸湿材130をさらに備える点を除いて、
図1および
図2を参照して上述した吸水装置100と同様であり、冗長を避ける目的で重複する記載を省略する。
【0053】
図4(a)に示すように、本実施形態の吸水装置100は、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120に加えて、吸湿材130をさらに備える。吸湿材130は、空気中の水分を吸収する。吸湿材130は、固体および液体のいずれであってもよい。
【0054】
典型的には、吸湿材130は、逆浸透膜110の鉛直上方に配置される。吸湿材130は、空気中の水分を吸収する。吸湿材130は、空気中の水分の吸収に伴って少なくとも部分的に液化してもよい(潮解してもよい)。あるいは、吸湿材130は、潮解することなく、固体のまま空気中の水分を吸収してもよい。
【0055】
一般的に吸湿材や含水材料中の水の安定化エネルギーは、それらの物質と平衡して存在する大気中の水蒸気圧と対応する。吸湿材130は、その平衡水蒸気圧が感熱応答性ハイドロゲル120の平衡水蒸気圧よりも高く、雰囲気(空気中)の平衡水蒸気圧よりも低い材料から選ばれる。後述するように、雰囲気(空気中)の水分は、吸湿材130に吸収される。また、吸湿材130に吸収された水分は、逆浸透膜110を通って感熱応答性ハイドロゲル120に吸収される。
【0056】
吸湿材130は、いわゆる潮解性物質であることが好ましい。例えば、吸湿材130は、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化ナトリウム、酢酸カリウム、硝酸マグネシウム、糖、硝酸ニッケル、硝酸鉄(III)、臭化コバルト、硝酸アンモニウム、二クロム酸ナトリウム、塩化鉄(II)、二クロム酸アンモニウム、塩化ニッケル、塩化ストロンチウム、塩化銅(I)、硝酸銅(I)、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1つを含んでもよい。
【0057】
また、吸湿材130は、ゼオライト、シリカゲル、アルミナおよび吸水性樹脂から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0058】
また、吸湿材130は、吸湿性を示す液体であってもよい。例えば、吸湿材130は、濃硫酸またはリン酸を含んでもよい。
【0059】
図4(b)に示すように、吸湿材130は、空気中の水分を吸収する。吸湿材130は、水分を吸収して溶解してもよい。あるいは、吸湿材130は、微視的に水分を吸収してもよい。
【0060】
吸湿材130の平衡水蒸気圧は、雰囲気(空気中)の平衡水蒸気圧よりも低いため、雰囲気(空気中)の水分は、エネルギー的により安定な状態になるように吸湿材130に吸収される。
【0061】
逆浸透膜110は、水を透過する一方で、イオンを透過しない。また、感熱応答性ハイドロゲル120の平衡水蒸気圧は、吸湿材130の平衡水蒸気圧よりも低い。このため、吸湿材130が空気中から吸った水分は、逆浸透膜110を透過して感熱応答性ハイドロゲル120に到達する。
【0062】
図4(c)に示すように、吸水装置100の周囲が低温であると、感熱応答性ハイドロゲル120は、逆浸透膜110を透過した水を吸収して膨張する。例えば、感熱応答性ハイドロゲル120は、2倍以上20倍以下の体積まで膨張する。このようにして、吸水装置100は、純度の高い水を吸収できる。
【0063】
感熱応答性ハイドロゲル120の平衡水蒸気圧は、吸湿材130の平衡水蒸気圧よりも低いため、吸湿材130に吸収された水分は、エネルギー的により安定な状態になるように逆浸透膜110を透過して感熱応答性ハイドロゲル120に吸収される。
【0064】
なお、逆浸透膜110は、イオンをほとんど透過しないため、吸湿材130が空気中の水分を吸収してイオンが発生したとしても、感熱応答性ハイドロゲル120は、イオンを吸収することなく水を吸収できる。一例として、吸湿材130が塩を含む場合でも、感熱応答性ハイドロゲル120は、高純度の水を吸収できる。
【0065】
その後、
図4(d)に示すように、吸水装置100の周囲が高温に変化すると、感熱応答性ハイドロゲル120は、先に吸収した水を放出して収縮する。感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水は空気中に蒸発されてもよい。あるいは、後述するように、感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水を活用してもよい。なお、吸水装置100の周囲が高温に変化する際に、逆浸透膜110の上に吸湿材130があると、感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水が吸湿材130に吸収されるおそれがある。このため、吸水装置100の周囲が高温になる前に、逆浸透膜110の上の吸湿材130を取り除くことが好ましい。
【0066】
例えば、
図4(e)に示すように、吸水装置100の周囲が高温になる前に、逆浸透膜110の上の吸湿材130を取り除く。これにより、高温環境下において感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水が、吸湿材130に戻ることを抑制できる。
【0067】
なお、
図4を参照して上述した説明では、吸水装置100は、吸湿材130を介して空気中の水分を吸収した。感熱応答性ハイドロゲル120に吸収された水には不純物があまり含まれていないことから、感熱応答性ハイドロゲル120に吸収された水は、飲料水、生活水または農業水として好適に利用できる。このため、吸水装置100は、造水装置として用いられてもよい。
【0068】
次に、
図1~
図5を参照して、本実施形態の造水装置100Aを説明する。
図5(a)~
図5(d)は、造水装置100Aによる造水工程を説明するための模式図を示す。
図5の造水装置100Aは、感熱応答性ハイドロゲル120に一旦吸収された水を感熱応答性ハイドロゲル120から回収して活用する点を除いて、
図4を参照して吸水装置100について上述した説明と同様であり、冗長を避ける目的で重複する記載を省略する。
【0069】
図5(a)に示すように、造水装置100Aは、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120に加えて吸湿材130を備える。逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120は、支持部材180内に配置される。ここでは、吸湿材130は、逆浸透膜110の上に配置される。
【0070】
図5(b)に示すように、吸湿材130は、空気中の水分を吸収する。吸湿材130は、微視的に水分を吸収してもよい。あるいは、吸湿材130は、水分を吸収して溶解してもよい。
【0071】
なお、感熱応答性ハイドロゲル120自体が吸湿性を有してもよい。ただし、典型的には、吸湿材130は、感熱応答性ハイドロゲル120よりも高い吸湿性を有するため、吸湿材130は、感熱応答性ハイドロゲル120よりも空気中の水分を効率的に吸収する。
【0072】
図5(c)に示すように、造水装置100Aの周囲が低温であると、感熱応答性ハイドロゲル120は、逆浸透膜110を透過した水を吸収して膨張する。例えば、感熱応答性ハイドロゲル120は、2倍以上20倍以下の体積まで膨張する。このようにして、造水装置100Aは、純度の高い水を吸収できる。
【0073】
感熱応答性ハイドロゲル120の平衡水蒸気圧は、吸湿材130の平衡水蒸気圧よりも低いため、吸湿材130に吸収された水分は、エネルギー的により安定な状態になるように逆浸透膜110を透過して感熱応答性ハイドロゲル120に吸収される。
【0074】
なお、逆浸透膜110は、イオンをほとんど透過しないため、吸湿材130が空気中の水分を吸収してイオンが発生したとしても、感熱応答性ハイドロゲル120は、イオンを吸収することなく水を吸収できる。一例として、吸湿材130が塩を含む場合でも、感熱応答性ハイドロゲル120は、高純度の水を吸収できる。
【0075】
図5(d)に示すように、造水装置100Aの周囲が高温に変化すると、感熱応答性ハイドロゲル120は、吸収した水を放出する。ここでは、感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水は、支持部材180の底部に回収水Wgとして回収される。このように、造水装置100Aは、空気中から純度の高い水を回収水Wgとして回収する。回収水Wgは、不純物またはイオンをほとんど含まないため、飲料水、生活水または農業水として好適に利用できる。
【0076】
また、本実施形態の造水装置100Aによれば、空気中の水分を吸収して、高純度の水を回収する。このため、水不足の地域(例えば、砂漠地域)においても水の供給が可能となり、砂漠近郊における農業生産を実現できる。
【0077】
上述したように、造水装置100Aの周囲温度が高温に変化する際に、吸湿材130が、逆浸透膜110を介して感熱応答性ハイドロゲル120と接触していると、感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水が吸湿材130に戻って吸収されることがある。このため、造水装置100Aが水を放出する際に、吸湿材130を移動させることなく、感熱応答性ハイドロゲル120と吸湿材130とが接触しないように逆浸透膜110を分離してもよい。
【0078】
次に、
図1~
図6を参照して、本実施形態の造水装置100Aを説明する。
図6(a)~
図6(e)は、造水装置100Aによる造水工程を説明するための模式図である。
図6(a)~
図6(e)に示す造水装置100Aは、逆浸透膜110を2つに分離する点を除いて、
図5(a)~
図5(d)を参照して上述した造水装置100Aと同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する記載を省略する。
【0079】
図6(a)に示すように、造水装置100Aは、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120に加えて吸湿材130を備える。逆浸透膜110、感熱応答性ハイドロゲル120および吸湿材130は、支持部材180内に配置される。
【0080】
図6(a)に示した造水装置100Aにおいて、逆浸透膜110は、第1層110aと、第2層110bとを有する。第1層110aは、第2層110bに対して鉛直上方に位置する。ここでは、第2層110bは、第1層110aと接触しているが、第2層110bは、第1層110aに対して移動可能である。逆浸透膜110の第2層110bは、感熱応答性ハイドロゲル120と接触する。第2層110bは、感熱応答性ハイドロゲル120とともに一体的に移動する。第2層110bは、感熱応答性ハイドロゲル120と結合してもよい。
【0081】
例えば、第1層110aは、支持部材180と接触する。第1層110aは、支持部材180に圧入されるか、または、接着剤を介して固定される。
【0082】
第2層110bの側方に、弾性体110eが接着される。弾性体110eは、第2層110bと支持部材180との間に配置され、第2層110bは、弾性体110eを介して支持部材180と接触する。第2層110bおよび弾性体110eは、支持部材180に圧入される。弾性体110eにより、第2層110bは、支持部材180内を移動できる。
【0083】
図6(b)に示すように、吸湿材130は、空気中の水分を吸収する。吸湿材130は、微視的に水分を吸収してもよい。あるいは、吸湿材130は、水分を吸収して溶解してもよい。
【0084】
図6(c)に示すように、造水装置100Aの周囲が低温であると、感熱応答性ハイドロゲル120は、逆浸透膜110を透過した水を吸収して膨張する。造水装置100Aは、純度の高い水を吸収できる。
【0085】
感熱応答性ハイドロゲル120の平衡水蒸気圧は、吸湿材130の平衡水蒸気圧よりも低いため、吸湿材130に吸収された水分は、エネルギー的により安定な状態になるように逆浸透膜110を透過して感熱応答性ハイドロゲル120に吸収される。
【0086】
その後、
図6(d)に示すように、逆浸透膜110の第1層110aと第2層110bとが分離するように移動させる。ここでは、第2層110bは、感熱応答性ハイドロゲル120とともに鉛直下方に移動する。このため、逆浸透膜110は、第1層110aと第2層110bとに空間的に分離される。
【0087】
その後、
図6(e)に示すように、造水装置100Aの周囲が高温に変化すると、感熱応答性ハイドロゲル120は、吸収した水を放出する。ここでは、感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水は、支持部材180の底部に回収水Wgとして回収される。このように、造水装置100Aは、対象水Wsから純度の高い水を回収水Wgとして回収する。回収水Wgは、不純物またはイオンをほとんど含まないため、飲料水、生活水または農業水として好適に利用できる。
【0088】
また、逆浸透膜110の第1層110aと第2層110bとが分離しているため、感熱応答性ハイドロゲル120は、逆浸透膜110を介して逆浸透膜110と接触していない。このため、吸湿材130を取り除くことなく、感熱応答性ハイドロゲル120から放出された水が逆浸透膜110に戻ることを抑制できる。
【0089】
なお、
図1~
図6を参照して上述したように、逆浸透膜110を透過した水が感熱応答性ハイドロゲル120に吸収される。このため、逆浸透膜110は感熱応答性ハイドロゲル120と密着することが好ましい。
【0090】
一例として、逆浸透膜110は、感熱応答性ハイドロゲル120と圧着されてもよい。あるいは、逆浸透膜110は、感熱応答性ハイドロゲル120と化学的に結合してもよい。
【0091】
逆浸透膜110を感熱応答性ハイドロゲル120と圧着する場合、逆浸透膜110に対して感熱応答性ハイドロゲル120を配置した状態においてプレス機で圧力を印加して逆浸透膜110を感熱応答性ハイドロゲル120と圧着してもよい。
【0092】
逆浸透膜110を感熱応答性ハイドロゲル120と化学的に結合する場合、グラフト重合を利用して逆浸透膜110と結合した感熱応答性ハイドロゲル120を作製してもよい。例えば、逆浸透膜110の表面に重合開始剤を添加した後、感熱応答性ハイドロゲル120の原料となるモノマーと架橋剤とを添加することで逆浸透膜110と結合した感熱応答性ハイドロゲル120を作製できる。あるいは、逆浸透膜110とは別に感熱応答性ハイドロゲル120を作製し、逆浸透膜110と感熱応答性ハイドロゲル120とを結合剤を介して結合してもよい。
【0093】
なお、典型的には、感熱応答性ハイドロゲル120は、等方的に膨張する。ただし、感熱応答性ハイドロゲル120は、異方的に膨張するように形成されることが好ましい。例えば、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120が鉛直方向に並んで配置される場合、感熱応答性ハイドロゲル120は鉛直方向に沿って異方的に膨張することが好ましい。この場合、逆浸透膜110および感熱応答性ハイドロゲル120の接触面積は、感熱応答性ハイドロゲル120の膨張の有無にかかわらず、ほぼ一定にできる。例えば、面内に配向したポリマーから形成されたシートを複数重ねて逆浸透膜110の上に配置して圧接することにより、異方的な感熱応答性ハイドロゲル120を作製してもよい。
【0094】
上述したように、造水装置100Aにおいて、感熱応答性ハイドロゲル120に吸収された水を充分に回収することが好ましい。この場合、感熱応答性ハイドロゲル120は、多孔構造を有することが好ましい。一例として、感熱応答性ハイドロゲル120を作製した後に、針状の突起物などを用いるなどして感熱応答性ハイドロゲル120に複数の孔を形成してもよい。例えば、多孔構造の平均孔径は、10μm以上1mm以下であってもよく、孔の平均長さは、長いほど良い。相転移に伴う感熱応答性ハイドロゲル120の収縮により放出される液体水は、感熱応答性ハイドロゲル120の内部に形成したこれら複数の孔を通って効率的に排出される。
【0095】
上述したように、吸水装置100および/または造水装置100Aは、空気中または塩水、汚濁水などの水含有液体から活用可能な液体の水を効率的に吸収・分離できる。吸水装置100および/または造水装置100Aの更なる活用局面としては、吸水装置100および/または造水装置100Aは、作動環境の温度に応じて環境から収受した熱をドライビングフォースとして水の吸収、分離、造水を行ってもよい。
【0096】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、吸水装置および造水装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0098】
100 吸水装置
100A 造水装置
110 逆浸透膜
120 感熱応答性ハイドロゲル
130 吸湿材