(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041612
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20220304BHJP
F24F 13/15 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
F24F13/15 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146926
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】上原 信真
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA02
3L081AB01
3L081FA03
3L081FA04
3L211BA57
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】外観を確保しつつ、風向調整機能を向上した風向調整装置を提供する。
【解決手段】風向調整装置10は、ケース14と、吹出口21と、対をなす風向調整羽根25と、を有する。ケース14は、側壁16と、側壁16により囲まれ風を所定の通気方向に案内する通気路17と、を備える。吹出口21は、通気路17と連通し、風を吹き出す。対をなす風向調整羽根25は、通気方向と交差する方向において通気路17の中央部に対し互いに反対側に離れて通気路17に配置される。対をなす風向調整羽根25は、通気方向に対し角度変更可能にケース14にそれぞれ可動的に支持される。各風向調整羽根25は、板状をなす羽根本体部27と、ケース14側に支持される軸部29と、をそれぞれ備える。軸部29は、羽根本体部27に対し、通気路17の中央部の背後側、かつ、通気路17の風下端部またはその風下側に位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁と、この側壁により囲まれ風を所定の通気方向に案内する通気路と、を備えるケースと、
前記通気路と連通し、風が吹き出す開口部と、
前記通気方向と交差する方向において前記通気路の中央部に対し互いに反対側に離れてそれぞれ前記通気路に配置され、前記通気方向に対し角度変更可能に前記ケースにそれぞれ可動的に支持される対をなす風向調整羽根と、を具備し、
前記各風向調整羽根は、
板状をなす羽根本体部と、
前記ケース側に支持される軸部と、をそれぞれ備え、
前記軸部は、前記羽根本体部に対し、前記通気路の中央部の背後側、かつ、前記通気路の風下端部またはその風下側に位置する
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
開口部が形成されて通気路の下流端側に取り付けられたパネルを備え、
各風向調整羽根は、前記パネルの背後側にそれぞれ配置され、角度変更した状態で羽根本体部の一部が前記開口部内に露出する
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
通気路の中央部に配置され、対をなす風向調整羽根と連動される他の風向調整羽根をさらに具備した
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気方向に対し角度変更可能な風向調整体を備える風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整する風向調整装置がある。風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール部などの車両の各部に設置されて、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
このような風向調整装置として、通風路の高さを低くした、薄型のものの場合、上下方向の風向調整羽根の数が限られるため、風向を適切に調整することが容易でない。そこで、開口部である吹出口を有するパネルであるフィニッシャの背面側に補助用の風向調整羽根を別途配置する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような構成の場合、吹出口から補助用の風向調整羽根が目視されにくいものの、吹出口に位置する風向調整羽根と、フィニッシャの背面側に位置する風向調整羽根との吹き抜けが大きくなり、風向調整に不利となる。
【0005】
また、複数の風向調整羽根により吹出口を閉塞可能な風向調整装置において、各風向調整羽根の軸部を、板状の羽根本体部における風向変更面に対してオフセットさせるものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、この構成の場合、軸部のオフセット方向がすべての風向調整羽根において同一であるため、風向調整の改善には寄与しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-51385号公報 (第5-10頁、
図1-6)
【特許文献2】特開2014-221631号公報 (第5-8頁、
図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、外観を確保しつつ、風向調整機能を向上した風向調整装置が望まれている。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、外観を確保しつつ、風向調整機能を向上した風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の風向調整装置は、側壁と、この側壁により囲まれ風を所定の通気方向に案内する通気路と、を備えるケースと、前記通気路と連通し、風が吹き出す開口部と、前記通気方向と交差する方向において前記通気路の中央部に対し互いに反対側に離れてそれぞれ前記通気路に配置され、前記通気方向に対し角度変更可能に前記ケースにそれぞれ可動的に支持される対をなす風向調整羽根と、を具備し、前記各風向調整羽根は、板状をなす羽根本体部と、前記ケース側に支持される軸部と、をそれぞれ備え、前記軸部は、前記羽根本体部に対し、前記通気路の中央部の背後側、かつ、前記通気路の風下端部またはその風下側に位置するものである。
【0011】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、開口部が形成されて通気路の下流端側に取り付けられたパネルを備え、各風向調整羽根は、前記パネルの背後側にそれぞれ配置され、角度変更した状態で羽根本体部の一部が前記開口部内に露出するものである。
【0012】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、通気路の中央部に配置され、対をなす風向調整羽根と連動される他の風向調整羽根をさらに具備したものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の風向調整装置によれば、風向調整羽根を、いずれの振り角においても羽根本体部の風下端部が開口部の内側に入ることがなく、かつ、振り時に開口部の縁部への風の衝突が生じない位置に配置することができるため、外観を確保しつつ、風向調整機能を向上できる。
【0014】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、角度変更した状態では羽根本体部の一部が開口部内に露出するので、風向をより効果的に調整できる。
【0015】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の風向調整装置の効果に加えて、対をなす風向調整羽根と他の風向調整羽根とにより風向を調整できるとともに、対をなす風向調整羽根の振り時にいずれかの風向調整羽根と他の風向調整羽根との距離が狭まることにより風向調整羽根と他の風向調整羽根との間での吹き抜け風が減少するので、風向性能がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態の風向調整装置を示す断面図であり、(a)は同上風向調整装置の風向調整羽根の中立配風位置を示し、(b)は同上風向調整装置の一方向への配風位置を示し、(c)は同上風向調整装置の他方向への配風位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図3において、10は風向調整装置である。風向調整装置10は、エアアウトレット、ベンチレータなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置10は、風が吹き出す側である風下側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側である風上側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置10は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置10は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置10の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0019】
風向調整装置10は、本体部12を備えている。本体部12は、構造部材としてのダクト部であるケース14を有する。また、本実施の形態において、本体部12は、ケース14に取り付けられる意匠部材であるパネル15を有する。
【0020】
図1(a)ないし
図1(c)及び
図2に示すように、ケース14は、側壁16を備え、この側壁16により、内部に通気路17が囲まれている。また、ケース14の一端部である後端部は、通気路17に空気を受け入れる入口18であり、ケース14の他端部である前端部は、通気路17から空気を吹き出す出口19となっている。つまり、入口18と出口19との間にこれらを連通する通気路17が形成されている。本実施の形態において、出口19には、パネル15が取り付けられている。
【0021】
側壁16は、前後方向に筒状に形成されている。図示される例では、側壁16は、角筒状に形成されている。側壁16の中心軸に平行な方向が通気路17の通気方向である。本実施の形態において、通気路17の通気方向は、前後方向であり、後方から前方に向かって通気される。すなわち、通気路17において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。
【0022】
側壁16は、通気路17の通気方向に所定長を有する。本実施の形態において、側壁16は、上下方向に扁平であり、左右方向に長手状、つまり横長に形成されている。したがって、風向調整装置10は、横型の薄型に形成されている。側壁16は、通気路17の中央部、すなわち側壁16またはケース14の中心軸を挟んで互いに対向する一対の端壁部16aと、これら一対の端壁部16a間を連結する一対の側壁部16bと、を一体的に有する。一対の端壁部16aは、上下方向に互いに対向し、一対の側壁部16bは、左右方向に互いに対向する。一対の端壁部16a,16aと一対の側壁部16b,16bとの後端部により入口18が囲まれ、一対の端壁部16a,16aと一対の側壁部16b,16bとの前端部により出口19が囲まれる。
【0023】
パネル15は、フィニッシャなどとも呼ばれるものである。パネル15は、板状に形成されている。パネル15には、出口19と連通する開口部である吹出口21が形成されている。本実施の形態において、吹出口21は、四角形状に形成されている。図示される例では、吹出口21は、左右方向に長手状、つまり横長に形成されている。図示される例では、吹出口21の開口方向は、前後方向となっている。
【0024】
図1(a)ないし
図1(c)に示すように、吹出口21に臨んで、ケース14内部の通気路17に風向調整体23が配置されている。すなわち、風向調整体23は、通気路17の下流側、本実施の形態では通気路17の出口19側に位置する。風向調整体23は、対をなす(一の)風向調整羽根25を備える。風向調整羽根25は、ルーバとも呼ばれる。各風向調整羽根25は、(一の)羽根本体部27を備える。羽根本体部27は、板状に形成されている。羽根本体部27は、少なくともいずれかの主面が、風を案内する(一の)案内面28となっている。また、各風向調整羽根25は、(一の)軸部29を備える。そして、各風向調整羽根25は、軸部29により、通気方向に対し案内面28の角度を変更可能にケース14に配置されている。図示される例では、各風向調整羽根25は、案内面28が通気方向に平行または略平行な方向から、通気方向に対して鋭角状に交差する方向に亘り、軸部29を中心として回動可能にケース14に支持される。また、
図2に示すように、各風向調整羽根25は、(一の)連結軸部31を備える。そして、複数の風向調整羽根25は、連結軸部31が連結桿であるリンク32とそれぞれ連結され、案内面28が互いに平行または略平行を維持した状態で同方向に回動するように構成されている。
【0025】
本実施の形態において、風向調整羽根25は、一対設定されている。すなわち、本実施の形態において、風向調整羽根25には、第一風向調整羽根25aと、第二風向調整羽根25bと、が設定されている。
図1(a)ないし
図1(c)に示すように、第一風向調整羽根25aと第二風向調整羽根25bとは、通気方向と交差する方向において通気路17の中央部、すなわち側壁16またはケース14の中心軸に対し互いに反対側に離れてそれぞれ配置されている。すなわち、第一風向調整羽根25aと第二風向調整羽根25bとは、通気路17の中央部を基準として、一側と他側とに偏倚している。また、第一風向調整羽根25a及び第二風向調整羽根25bは、吹出口21の縁部に近接して配置されている。さらに、第一風向調整羽根25a及び第二風向調整羽根25bは、吹出口21の縁部21a,21bに対し、吹出口21の中央部とは反対側、つまり外側に位置している。
【0026】
本実施の形態において、第一風向調整羽根25aは、通気路17の中央部に対し、上側に偏倚し、第二風向調整羽根25bは、通気路17の中央部に対し、下側に偏倚している。第一風向調整羽根25aは、羽根本体部27の風下端部が吹出口21の上側の縁部21aに対して通気方向の上流側である風上側に所定距離の位置に近接し、第二風向調整羽根25bは、羽根本体部27の風下端部が吹出口21の下側の縁部21bに対して通気方向の上流側である風上側に所定距離の位置に近接する。図示される例では、第一風向調整羽根25a及び第二風向調整羽根25bは、
図1(a)に示す中立配風位置、すなわち通気路17の通気方向に沿って空気を案内する位置において、吹出口21の正面から見て案内面28が吹出口21の縁部21a,21bと面一、または、縁部21a,21bに隠れる位置となっている。第一風向調整羽根25aは、羽根本体部27の下側にのみ案内面28を有し、羽根本体部27の上側は空気の案内に基本的に寄与しない。同様に、第二風向調整羽根25bは、羽根本体部27の上側にのみ案内面28を有し、羽根本体部27の下側は空気の案内に基本的に寄与しない。なお、本実施の形態において、吹出口21の縁部21a,21bは、それぞれ吹出口21からの空気の吹出方向、つまり下流側である前側に向かって、吹出口21を徐々に拡大するように傾斜している。
【0027】
軸部29は、羽根本体部27に対し、通気路17の中央部の背後側に偏倚(オフセット)し、かつ、通気路17の風下端部(前端部)またはその風下側に偏倚(オーバーハング)して位置する。すなわち、軸部29は、羽根本体部27の背面側、つまり案内面28とは反対側の位置にある。また、軸部29は、羽根本体部27の風下端部の通気方向と直交する方向への仮想線と重なる位置(風下端部の前端エッジの延長線上)、または、風下端部に対してさらに前方に突出する位置にある。本実施の形態において、第一風向調整羽根25aの軸部29は、羽根本体部27の風下端部に対して前側(通気方向の下流側)上方に突出する位置に配置され、第二風向調整羽根25bの軸部29は、羽根本体部27の風下端部に対して前側(通気方向の下流側)下方に突出する位置に配置されている。本実施の形態において、軸部29は、羽根本体部27に突設された突出部33に形成されている。
【0028】
また、軸部29は、羽根本体部27の両側にそれぞれ形成されている。本実施の形態において、軸部29は、ケース14の一部をなすスペーサ35に回動可能に支持されている。スペーサ35は、ケース14の側壁16に取り付けられている。スペーサ35は、下流側に向かい、通気路17の中央部側に徐々に傾斜するように形成されている。
図2に示すように、スペーサ35には、軸部29が回動可能に挿入される軸受部36が形成されている。本実施の形態において、スペーサ35には、第一スペーサ35aと第二スペーサ35bとが設定されている。第一スペーサ35aは、第一風向調整羽根25aの軸部29を回動可能に支持し、第二スペーサ35bは、第二風向調整羽根25bの軸部29を回動可能に支持する。第一スペーサ35aは、ケース14の側壁16の上側の端壁部16aとパネル15の背面側すなわち後側とに亘り配置されている。また、第二スペーサ35bは、ケース14の側壁16の下側の端壁部16aとパネル15の背面側すなわち後側とに亘り配置されている。
【0029】
また、連結軸部31は、羽根本体部27に対し、軸部29から離れた位置に形成されている。本実施の形態において、連結軸部31は、羽根本体部27の軸部29とは反対側の端部側に位置する。連結軸部31は、羽根本体部27に対し、通気路17の中央部の背後側に偏倚(オフセット)し、かつ、通気路17の風上端部(後端部)に対し、風下側に偏倚(オーバーハング)して位置する。すなわち、連結軸部31は、羽根本体部27の背面側、つまり案内面28とは反対側の位置にある。また、連結軸部31は、羽根本体部27の風上端部の通気方向と直交する方向への仮想線と重なる位置(風上端部の後端エッジの延長線上)、または、風上端部に対して前方に突出する位置にある。本実施の形態において、第一風向調整羽根25aの連結軸部31は、羽根本体部27の風上端部に対して前側(通気方向の下流側)上方に配置され、第二風向調整羽根25bの連結軸部31は、羽根本体部27の風上端部に対して前側(通気方向の下流側)下方に配置されている。連結軸部31の中心軸と軸部29の中心軸とを結ぶ仮想線は、案内面28に対し平行または略平行となっている。すなわち、連結軸部31と軸部29とは、案内面28からの距離が等しく、または、略等しく、羽根本体部27の案内面28とは反対側の主面に対して通気路17の中央部の背後側に離れて位置している。本実施の形態において、連結軸部31は、羽根本体部27に突設された軸受突出部37に形成されている。連結軸部31は、羽根本体部27の一側に形成されている。連結軸部31は、軸部29と平行または略平行に形成されている。連結軸部31は、
図2に示すように、リンク32に形成された連結軸受部38に回動可能に遊嵌されて支持されている。連結軸受部38は、丸穴状に形成されている。
【0030】
さらに、
図1(a)ないし
図1(c)及び
図2に示すように、本実施の形態において、風向調整体23は、他の風向調整羽根41を備える。他の風向調整羽根41は、中央ルーバとも呼ばれる。図示される例では、他の風向調整羽根41は、対をなす風向調整羽根25の間、好ましくは通気路17の中央部に重なって配置されている。他の風向調整羽根41は、他の羽根本体部43を備える。他の羽根本体部43は、板状に形成されている。他の羽根本体部43は、それぞれの主面が、風を案内する(他の)案内面45,46となっている。また、他の風向調整羽根41は、他の軸部47を備える。そして、他の風向調整羽根41は、他の軸部47により、通気方向に対し案内面45,46の角度を変更可能にケース14に配置されている。図示される例では、他の風向調整羽根41は、案内面45,46が通気方向に平行または略平行な方向から、通気方向に対して鋭角状に交差する方向に亘り、他の軸部47を中心として回動可能にケース14に支持される。また、他の風向調整羽根41は、他の連結軸部49を備える。そして、他の風向調整羽根41は、他の連結軸部49がリンク32と連結され、対をなす風向調整羽根25と連動されて、対をなす風向調整羽根25と同方向に回動するように構成されている。
【0031】
また、他の軸部47は、他の羽根本体部43の厚み方向の中央部に位置する。他の軸部47は、他の羽根本体部43の風下端部近傍に位置する。本実施の形態において、他の軸部47は、軸部29よりも通気方向の下流側、つまり前側に位置している。他の軸部47は、他の羽根本体部43の両側にそれぞれ形成されている。本実施の形態において、他の軸部47は、ケース14の側壁16の側壁部16b(
図2)に回動可能に支持されている。そして、他の軸部47がケース14の側壁16の側壁部16b(
図2)に支持された位置で、他の羽根本体部43の風下端部が吹出口21の開口面上、または、開口面よりも通気方向の上流側である後側の位置にある。
【0032】
また、他の連結軸部49は、他の羽根本体部43に対し、他の軸部47から離れた位置に形成されている。図示される例では、他の連結軸部49は、他の羽根本体部43の厚み方向の中央部に位置する。他の連結軸部49は、他の羽根本体部43の一側に形成されている。他の連結軸部49は、他の軸部47と平行または略平行に形成されている。他の連結軸部49は、
図2に示すように、リンク32に形成された他の連結軸受部51に回動可能に挿入されて支持されている。
【0033】
さらに、他の風向調整羽根41には、風向調整体23の回動方向を乗員などが手動操作する操作ノブ53が形成されている。本実施の形態において、操作ノブ53は、他の羽根本体部43の風下端部に一体的に突設されて吹出口21に露出している。
【0034】
そして、風向調整装置10を組み立てる際には、リンク32により第一風向調整羽根25a、第二風向調整羽根25b、及び、他の風向調整羽根41を軸連結した風向調整体23について、第一風向調整羽根25aの軸部29と第二風向調整羽根25bの軸部29とを、第一スペーサ35aの軸受部36と第二スペーサ35bの軸受部36とにより回動可能に支持する。次いで、これら風向調整体23及び第一スペーサ35a、第二スペーサ35bを、ケース14の内部に組み込んで、他の風向調整羽根25の他の軸部47をケース14の側壁16に回動可能に支持する。そして、ケース14にパネル15を組み付けて、風向調整装置10を構成する。
【0035】
図1(a)に中立(ニュートラル)配風位置を示し、
図1(b)に上振り配風位置を示し、
図1(c)に下振り配風位置を示す。それぞれの位置において、通気路17を通過する風は、第一風向調整羽根25aの案内面28と他の風向調整羽根41の案内面45とにより案内されるとともに、第二風向調整羽根25bの案内面28と他の風向調整羽根41の案内面46とにより案内され、第一風向調整羽根25aと他の風向調整羽根41との間、及び、第二風向調整羽根25bと他の風向調整羽根41との間を通過して、吹出口21から吹き出される。
【0036】
図1(a)に示すように、中立配風位置においては、第一風向調整羽根25aの案内面28と、第二風向調整羽根25bの案内面28とが、それぞれ吹出口21の縁部21a,21bに対し吹出口21の正面側から見て吹出口21の内側に進出していない。つまり、中立配風位置においては、風向調整羽根25が吹出口21側に見えない。そのため、乗員などの使用者側からは、あたかも吹出口21に他の風向調整羽根41のみが配置されているスリムな外観となり、風向調整装置10の外観を向上できる。
【0037】
この中立配風位置から、乗員などの使用者が操作ノブ53を摘み、例えば
図1(b)に示すように、上振り配風位置へと風向調整体23を動作させると、他の風向調整羽根41が他の軸部47を中心として回動し、他の風向調整羽根41とリンク32を介して連結されている風向調整羽根25が軸部29を中心として回動する。このとき、風向調整羽根25は、羽根本体部27に対して軸部29がケース14側である外側、かつ、下流側にオフセットされているため、第一風向調整羽根25aにおいては、軸部29を中心として、羽根本体部27が通気路17の中央部へと進出して風上端部側が吹出口21内に露出すると同時に、風下端部側が下流側下方、つまりパネル15の背面及び吹出口21の縁部21aへと接近するようにせり出して移動することとなる。
【0038】
風向調整羽根25は、中立配風位置において風向調整羽根25の羽根本体部27の風下端部とパネル15との間に所定距離の隙間が空いているため、上記のように第一風向調整羽根25aが吹出口21側にせり出してもパネル15と干渉することがなく、第一風向調整羽根25aの風下端部と吹出口21の縁部21aとの隙間が小さくなり、見栄えがよくなる。特に、風向調整装置10が車室のルーフなど乗員の視点よりも上方に配置されている場合には、上側の第一風向調整羽根25aの羽根本体部27と吹出口21の縁部21aとの隙間が極小となることで、良好な見栄えを得ることができる。また、第一風向調整羽根25aの案内面28は、吹出口21の縁部21aと同一面、または、略同一面の位置となるので、案内面28に沿って流れる風が吹出口21の縁部21aと衝突して散乱することがない。さらに、第一風向調整羽根25aは、この第一風向調整羽根25aと同方向に回動した他の風向調整羽根41に対して距離が狭まり、案内面28も上流側が吹出口21に通気方向の投影に対して相対的に下がるとともに、案内面28,45間が狭くなることにより、第一風向調整羽根25aと他の風向調整羽根41との間において吹き抜け風が減少する。また、上振り配風位置では、第一風向調整羽根25aの突出部33がパネル15と平行または略平行な位置となる。
【0039】
また、第二風向調整羽根25bにおいては、軸部29を中心として、羽根本体部27が通気路17の中央部から離れると同時に、風下端部側が上流側上方、つまりパネル15の背面及び吹出口21の縁部21bから離れるように移動し、他の風向調整羽根41に対して相対的に接近し、案内面28,46間が狭められる。そこで、これら案内面28,46に沿って、通気路17の下部の風を、下方から吹出口21に向かって案内できる。下側の第二風向調整羽根25bの羽根本体部27と吹出口21の縁部21bとの隙間は広がることになるものの、特に、風向調整装置10が車室のルーフなど乗員の視点よりも上方に配置されている場合には、乗員の視点からは目視されにくく、外観が問題となりにくい。
【0040】
一方、中立配風位置から、乗員などの使用者が操作ノブ53を摘み、例えば
図1(c)に示すように、下振り配風位置へと風向調整体23を動作させると、他の風向調整羽根41が他の軸部47を中心として回動し、他の風向調整羽根41とリンク32を介して連結されている風向調整羽根25が軸部29を中心として回動する。このとき、風向調整羽根25は、羽根本体部27に対して軸部29がケース14側である外側、かつ、下流側にオフセットされているため、第二風向調整羽根25bにおいては、軸部29を中心として、羽根本体部27が通気路17の中央部へと進出して風上端部側が吹出口21内に露出すると同時に、風下端部側が下流側上方、つまりパネル15の背面及び吹出口21の縁部21bへと接近するようにせり出して移動することとなる。
【0041】
風向調整羽根25は、中立配風位置において風向調整羽根25の羽根本体部27の風下端部とパネル15との間に所定距離の隙間が空いているため、上記のように第二風向調整羽根25bが吹出口21側にせり出してもパネル15と干渉することがなく、第二風向調整羽根25bの風下端部と吹出口21の縁部21bとの隙間が小さくなり、見栄えがよくなる。特に、風向調整装置10が車室のインストルメントパネルなど乗員の視点よりも下方に配置されている場合には、下側の第二風向調整羽根25bの羽根本体部27と吹出口21の縁部21bとの隙間が極小となることで、良好な見栄えを得ることができる。また、第二風向調整羽根25bの案内面28は、吹出口21の縁部21bと同一面、または、略同一面の位置となるので、案内面28に沿って流れる風が吹出口21の縁部21bと衝突して散乱することがない。さらに、第二風向調整羽根25bは、この第二風向調整羽根25bと同方向に回動した他の風向調整羽根41に対して距離が狭まり、案内面28,46間が狭くなることにより、第二風向調整羽根25bと他の風向調整羽根41との間において吹き抜け風が減少する。また、下振り配風位置では、第二風向調整羽根25bの突出部33がパネル15と平行または略平行な位置となる。
【0042】
また、第一風向調整羽根25aにおいては、軸部29を中心として、羽根本体部27が通気路17の中央部から離れると同時に、風下端部側が上流側下方、つまりパネル15の背面及び吹出口21の縁部21aから離れるように移動し、案内面28も上流側が吹出口21に通気方向の投影に対して相対的に上がるとともに、他の風向調整羽根41に対して相対的に接近し、案内面28,45間が狭められる。そこで、これら案内面28,45に沿って、通気路17の上部の風を、上方から吹出口21に向かって案内できる。上側の第一風向調整羽根25aの羽根本体部27と吹出口21の縁部21aとの隙間は広がることになるものの、特に、風向調整装置10が車室のインストルメントパネルなど乗員の視点よりも下方に配置されている場合には、乗員の視点からは目視されにくく、外観が問題となりにくい。
【0043】
このように、一実施の形態によれば、通気路17の中央部に対し互いに反対側に離れて通気路17に配置した対をなす風向調整羽根25の軸部29を、羽根本体部27に対し、通気路17の中央部の背後側、かつ、通気路17の風下端部またはその風下側に配置したので、風向調整羽根25(第一風向調整羽根25a及び第二風向調整羽根25b)を、いずれの振り角においても羽根本体部27の風下端部が吹出口21の内側に入ることがなく、かつ、振り時に吹出口21の縁部21a,21bへの風の衝突が生じない位置に配置することができる。そのため、外観を確保しつつ、風向調整機能を向上できる。
【0044】
また、風向調整羽根25の振り角を複数のリンクなどにより制御する構成と比較して、部品点数を増加させることなく、すなわちコストアップすることなく、外観を確保しつつ、風向性能を向上させることができる。
【0045】
さらに、各風向調整羽根25(第一風向調整羽根25a及び第二風向調整羽根25b)は、角度変更しない状態(中立配風位置)では吹出口21から各風向調整羽根25が露出せず、外観を確保できるとともに、角度変更した状態では羽根本体部27の一部が吹出口21内に露出するので、風向をより効果的に調整できる。
【0046】
また、通気路17の中央部に、対をなす風向調整羽根25と連動される他の風向調整羽根41を配置することで、対をなす風向調整羽根25と他の風向調整羽根41とにより風向を調整できるとともに、対をなす風向調整羽根25の振り時にいずれかの風向調整羽根25と他の風向調整羽根41との距離が狭まることにより風向調整羽根25と他の風向調整羽根41との間での吹き抜け風が減少するので、風向性能がさらに向上する。
【0047】
さらに、吹出口21に一枚の他の風向調整羽根41のみが露出し、対をなす風向調整羽根25はパネル15の背面側に隠れる配置となることで、すっきりとした外観を有する風向調整装置10を構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 風向調整装置
14 ケース
15 パネル
16 側壁
17 通気路
21 開口部である吹出口
25 風向調整羽根
27 羽根本体部
29 軸部
41 他の風向調整羽根