IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オルガノ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-分離膜の洗浄方法及び水処理システム 図1
  • 特開-分離膜の洗浄方法及び水処理システム 図2
  • 特開-分離膜の洗浄方法及び水処理システム 図3
  • 特開-分離膜の洗浄方法及び水処理システム 図4
  • 特開-分離膜の洗浄方法及び水処理システム 図5
  • 特開-分離膜の洗浄方法及び水処理システム 図6
  • 特開-分離膜の洗浄方法及び水処理システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041621
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】分離膜の洗浄方法及び水処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/02 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
B01D65/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146938
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇規
(72)【発明者】
【氏名】木田 卓
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA14
4D006GA32
4D006HA61
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA56
4D006KC02
4D006KC13
4D006KC16
4D006KD01
4D006KD03
4D006KD04
4D006KD12
4D006KD15
4D006KD16
4D006KD17
4D006KE30Q
4D006LA10
4D006MA03
4D006MC54
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB02
4D006PB08
(57)【要約】
【課題】本発明は、膜閉塞を生じた分離膜の性能を十分に回復する必要時間を簡便に決定することができ、分離膜洗浄の効率化を可能とする分離膜の洗浄方法、及びこの洗浄方法を実施可能な水処理システムを提供する。
【解決手段】 分離膜を有する膜分離装置を用いた水処理システムの前記分離膜と、洗浄薬液とを接触させることを含む、分離膜の洗浄方法であって、前記接触により前記洗浄薬液中に溶出してくる膜閉塞物質濃度の変化量を指標に洗浄時間を決定し、次回以降の前記分離膜の洗浄を、前記の決定した洗浄時間に基づいて行うことを含む、分離膜の洗浄方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜を有する膜分離装置を用いた水処理システムの前記分離膜と洗浄薬液とを接触させることを含む分離膜の洗浄方法であって、
前記接触により前記洗浄薬液中に溶出してくる膜閉塞物質濃度の変化量を指標に洗浄時間を決定し、次回以降の前記分離膜の洗浄を、前記の決定した洗浄時間に基づいて行うことを含む、分離膜の洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄時間を、前記の分離膜と洗浄薬液との接触後における前記洗浄薬液中の膜閉塞物質濃度の曲変点とする、請求項1に記載の分離膜の洗浄方法。
【請求項3】
前記分離膜の初回の洗浄を、前記曲変点となる洗浄時間以降も継続して行い、次回以降の前記分離膜の洗浄を、前記の決定した洗浄時間に基づいて行う、請求項2に記載の分離膜の洗浄方法。
【請求項4】
前記分離膜と洗浄薬液との接触を、該分離膜への洗浄薬液の通液により行い、前記の洗浄薬液中に溶出した膜閉塞物質の種類に応じて、次回以降の前記分離膜の洗浄における洗浄薬液の通液方向を決定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の分離膜の洗浄方法。
【請求項5】
分離膜を有する膜分離装置を用いた水処理システムの前記分離膜と洗浄薬液とを接触させることを含む分離膜の洗浄方法であって、
被処理水または前記分離膜の濃縮水が通水されるサブ分離膜と前記洗浄薬液とを接触させ、該洗浄薬液中に溶出してくる膜閉塞物質濃度の変化量を指標に洗浄時間を決定し、前記分離膜の洗浄を、前記の決定した洗浄時間に基づいて行うことを含む、分離膜の洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄時間を、前記のサブ分離膜と洗浄薬液との接触後における前記洗浄薬液中の膜閉塞物質濃度の曲変点とする、請求項5に記載の分離膜の洗浄方法。
【請求項7】
前記分離膜と洗浄薬液との接触を、該分離膜への洗浄薬液の通液により行い、前記のサブ分離膜から洗浄薬液中に溶出した膜閉塞物質の種類に応じて、分離膜の洗浄における洗浄薬液の通液方向を決定する、請求項5又は6に記載の分離膜の洗浄方法。
【請求項8】
前記被処理水を前記分離膜に通液して得た透過水と洗浄薬原液との混合液を前記洗浄薬液として用いて、該洗浄薬液を前記分離膜に通液し、通液後の洗浄薬液を排出する請求項1~7のいずれか1項に記載の分離膜の洗浄方法。
【請求項9】
前記分離膜の透過水と洗浄薬原液とを混合して調製される洗浄薬液を用いて、複数段のバンクで構成される前記膜分離装置の最後段バンクの分離膜からその前段側バンクの分離膜へと洗浄薬液を通液し、前記洗浄時間に基づいて洗浄を行い、洗浄後の洗浄薬液を膜分離装置の系外に排出する請求項1~8のいずれか1項に記載の分離膜の洗浄方法。
【請求項10】
被処理水を処理する膜分離装置と、
洗浄薬液を前記膜分離装置に供給して分離膜に接触させる洗浄薬液供給部と、
前記分離膜に接触させた洗浄薬液中の膜閉塞物質濃度を測定する測定部と、
前記測定部によって測定した前記膜閉塞物質濃度の変化量を指標に洗浄時間を決定し、該洗浄時間を前記洗浄薬液供給部に指示する制御部と、を含む水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分離膜の洗浄方法及び水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
分離膜を用いて被処理水を処理する水処理システムでは、被処理水中の膜閉塞物質によって分離膜が徐々に閉塞されていく。分離膜の閉塞が一定程度進行すると処理効率が低下するため、一般的には酸やアルカリといった洗浄薬液を用いて膜閉塞物質を溶解除去し、分離膜を初期状態へと回復させる。洗浄薬液を用いた分離膜の洗浄条件(洗浄薬品の種類、濃度、洗浄流速、水温等)は、膜閉塞の進行度や膜閉塞物質の種類等を考慮して検討される。膜閉塞した分離膜の性能を、洗浄薬液の通液により効率的に回復する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、有機物を含有する被処理水を通水して処理する膜濾過装置の膜を、所定の通水期間後に第1の薬品洗浄工程に付し、さらに第1の薬品洗浄工程の薬品とは成分及び/又は濃度の異なる薬品を用いた第2の薬品洗浄工程にも付す、有機物含有水の膜ろ過方法が記載されている。
また、特許文献2には、透過水中の有機物濃度を測定し、その測定値に基づいて、洗浄流体の供給速度を制御することが記載されている。
さらに、特許文献3には、洗浄液を通液する逆浸透膜モジュールの洗浄方法において、循環している水中の洗浄薬品の濃度又は洗浄薬品濃度に対応して変動する物性値を検出して、その検出値に基づいて洗浄薬品の導入流量を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-167582号公報
【特許文献2】特開2007-244931号公報
【特許文献3】特開2009-195804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分離膜の洗浄において、分離膜を洗浄薬液に曝す時間が短すぎると膜性能を十分に回復させることができない。逆に分離膜を洗浄薬液に曝す時間が長すぎると、水処理効率が低下するだけでなく、分離膜の劣化にもつながる。
【0005】
本発明は、膜閉塞を生じた分離膜の性能を十分に回復する必要時間を簡便に決定することができ、分離膜洗浄の効率化を可能とする分離膜の洗浄方法、及びこの洗浄方法の実施に好適な水処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決された。
[1]
分離膜を有する膜分離装置を用いた水処理システムの前記分離膜と、洗浄薬液とを接触させることを含む、分離膜の洗浄方法であって、
前記接触により前記洗浄薬液中に溶出してくる膜閉塞物質濃度の変化量を指標に洗浄時間を決定し、次回以降の前記分離膜の洗浄を、前記の決定した洗浄時間に基づいて行うことを含む、分離膜の洗浄方法。
[2]
前記洗浄時間を、前記の分離膜と洗浄薬液との接触後における前記洗浄薬液中の膜閉塞物質濃度の曲変点とする、[1]に記載の分離膜の洗浄方法。
[3]
前記分離膜の初回の洗浄を、前記曲変点となる洗浄時間以降も継続して行い、次回以降の前記分離膜の洗浄を、前記の決定した洗浄時間に基づいて行う、[2]に記載の分離膜の洗浄方法。
[4]
膜閉塞を生じた前記分離膜と洗浄薬液との接触を、該分離膜への洗浄薬液の通液により行い、前記の洗浄薬液中に溶出した膜閉塞物質の種類に応じて、次回以降の膜閉塞を生じた前記分離膜の洗浄における洗浄薬液の通液方向を決定する、[1]~[3]のいずれかに記載の分離膜の洗浄方法。
[5]
分離膜を有する膜分離装置を用いた水処理システムの前記分離膜と、洗浄薬液とを接触させることを含む、分離膜の洗浄方法であって、
被処理水または前記分離膜の濃縮水が通水されるサブ分離膜と前記洗浄薬液とを接触させ、該洗浄薬液中に溶出してくる膜閉塞物質濃度の変化量を指標に洗浄時間を決定し、前記分離膜の洗浄を、前記の決定した洗浄時間に基づいて行うことを含む、分離膜の洗浄方法。
[6]
前記洗浄時間を、前記のサブ分離膜と洗浄薬液との接触後における前記洗浄薬液中の膜閉塞物質濃度の曲変点とする、[5]に記載の分離膜の洗浄方法。
[7]
膜閉塞を生じた前記分離膜と洗浄薬液との接触を、該分離膜への洗浄薬液の通液により行い、前記のサブ分離膜から洗浄薬液中に溶出した膜閉塞物質の種類に応じて、分離膜の洗浄における洗浄薬液の通液方向を決定する、[5]又は[6]に記載の分離膜の洗浄方法。
[8]
前記被処理水を前記分離膜に通液して得た透過水と洗浄薬原液との混合液を前記洗浄薬液として用いて、該洗浄薬液を前記分離膜に通液し、通液後の洗浄薬液を排出する[1]~[7]のいずれかに記載の分離膜の洗浄方法。
[9]
前記分離膜の透過水と洗浄薬原液とを混合して調製される洗浄薬液を用いて、複数段のバンクで構成される前記膜分離装置の最後段バンクの分離膜からその前段側バンクの分離膜へと洗浄薬液を通液し、前記洗浄時間に基づいて洗浄を行い、洗浄後の洗浄薬液を膜分離装置の系外に排出する[1]~[8]のいずれかに記載の分離膜の洗浄方法。
[10]
被処理水を処理する膜分離装置と、
洗浄薬液を前記膜分離装置に供給して分離膜と接触させる洗浄薬液供給部と、
前記分離膜に接触させた洗浄薬液中の膜閉塞物質濃度を測定する測定部と、
前記測定部によって測定した前記膜閉塞物質濃度の変化量を指標に洗浄時間を決定し、該洗浄時間を前記洗浄薬液供給部に指示する制御部と、を含む水処理システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の分離膜の洗浄方法によれば、膜閉塞を生じた分離膜の性能を十分に回復する必要時間を簡便に決定することができ、分離膜洗浄の効率化を可能とする。また、本発明の水処理システムは、本発明の分離膜の洗浄方法を実施するのに好適なシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る水処理システムの好ましい一実施形態(第1実施形態)を示した概略構成図である。
図2】溶解シリカ濃度と洗浄経過時間との関係を示したグラフであり、縦軸に溶解シリカ濃度(mg/L)を示し、横軸に洗浄経過時間(h)を示した。
図3】本発明に係る水処理システムの好ましい一実施形態(第2実施形態)を示した概略構成図である。
図4】本発明に係る水処理システムの好ましい一実施形態(第3実施形態)を示した概略構成図である。
図5】本発明に係る水処理システムの好ましい一実施形態(第4実施形態)を示した概略構成図である。
図6】本発明に係る水処理システムの好ましい一実施形態(第5実施形態)を示した概略構成図である。
図7】洗浄回復率(%)と洗浄経過時間(h)との関係を示したグラフであり、縦軸に洗浄回復率(%)を示し、横軸に洗浄経過時間(h)を示した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態について、必要により図面を参照して説明するが、本発明は、本発明で規定すること以外、これらの実施形態に限定されるものではない。
本発明に係る分離膜の洗浄方法(以下、単に「本発明の洗浄方法」とも称す。)の好ましい一実施形態では、被処理水の処理により膜閉塞を生じた分離膜に洗浄薬液(単に薬液ともいう。)を接触させて、分離膜を洗浄する。その際、洗浄薬液中に溶出してきた膜閉塞物質濃度の、洗浄中の経時的な変化量を指標に、膜性能を回復するため(透過水量が回復するため)に必要な洗浄時間を決定し、決定した洗浄時間に基づいて、次回以降の分離膜の洗浄を行う。
本発明において「膜閉塞を生じた分離膜」とは、分離膜の少なくとも一部に膜閉塞物質が付着している状態を意味し、分離膜全体の膜閉塞の程度は特に制限されない。膜閉塞をどの程度生じたら分離膜洗浄を開始するのかは、水処理の目的、被処理水の種類、含有成分、透過水の純度等、目的に応じて適宜に設定される。
【0010】
以下に、本発明の洗浄方法の好ましい一実施形態(第1実施形態)を、図面を参照して説明する。なお、以下では分離膜として逆浸透膜を用いた例を示すが、下記の説明は逆浸透膜以外の分離膜(例えば精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、正浸透膜、脱気膜、脱炭酸膜など)についても同様に適用される。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る洗浄方法を行うのに好適な水処理システムである。
図1に示すように、水処理システム1(1A)は、被処理水を処理する膜分離装置として、例えば逆浸透膜装置10を備える。以下、膜分離装置を逆浸透膜装置として説明し、「逆浸透膜」を「RO膜」とも称す。
逆浸透膜装置10に用いられる分離膜(逆浸透膜)は、特に限定はしないが、例えば芳香族ポリアミドを構成材料としたスパイラル型逆浸透膜が好ましい。
【0012】
水処理システム1Aは、被処理水(原水)が貯液される原水タンク51を備えることが好ましい。原水タンク51には、被処理水が供給されるタンク供給ライン53が接続され、原水供給ライン55を介してRO膜装置10の供給側Asが接続されることが好ましい。原水供給ライン55には送液ポンプとして第1ポンプP1が配されることが好ましい。したがって、原水タンク51に貯液されている被処理水は第1ポンプP1によってRO膜装置Aの供給側Asに圧力をかけて供給される。さらに、第1ポンプP1とRO膜装置10との間の原水供給ライン55には仕切弁V1が配されることが好ましい。本発明における「ライン」とは水が通る流路を意味する。
【0013】
RO膜装置10の濃縮水側Acには、濃縮水通水ライン41が配される。濃縮水通水ライン41には、圧力調整弁V2が配されることが好ましい。圧力調整弁V2は、背圧弁を兼ねることができる。またRO膜装置10の濃縮水側Acと洗浄薬液が貯液される薬液タンク61の受給側Brとをつなぐ薬液循環ライン62が配される。この薬液循環ライン62は、RO膜装置10の濃縮水側Acに直接接続されてもよい。薬液循環ライン62には、仕切弁V3が配されることが好ましい。さらに薬液タンク61の供給側Bsと原水供給ライン55の仕切弁V1とRO膜装置10との間に接続される薬液供給ライン63が配される。薬液供給ライン63には、薬液タンク61側より順に、第2ポンプP2、仕切弁V4が配されることが好ましい。原水供給ライン55に薬液供給ライン63が合流する合流点C1とRO膜装置10の供給側Asとの間の原水供給ライン55には、水質測定手段31に接続される水質測定ライン32が接続されることが好ましい。水質測定ライン32は、洗浄薬液が循環される場合、例えば薬液タンク61とRO膜装置10とを通る循環系の場合、この循環系のどの位置に接続されてもよい。例えば、RO膜装置の供給側As、濃縮水側Acのどちらかに接続することができる。また洗浄薬液が洗浄後にブローされる場合はRO膜装置の濃縮水側Acに接続されることが好ましい。
原水タンク51の被処理水に薬液原液を添加して洗浄薬液を調整することによって、原水タンク51を薬液タンクとして使用することも可能である。この時、薬液循環ライン62は原水タンク51に接続されることが好ましい。
また、第2ポンプP2の吐出側を軟質チューブで仕切弁V1の入口側に接続し、仕切弁V3の出口側と薬液タンク61の受給側Brとを軟質チューブで接続して仮設の薬液循環ラインとすることもできる。このように、軟質チューブを用いて薬液循環ラインを構成することによって、薬液タンクを備えた常設ラインを設ける必要は必ずしもない。
またRO膜装置10の透過水側Atには処理水通水ライン42に接続されることが好ましい。処理水通水ライン42には、RO膜装置10側から順に仕切弁V5、RO膜装置10の透過水を貯液する処理水タンク21が配されることが好ましい。
【0014】
上記水処理システム1Aにおいて、被処理水を処理するには、仕切弁V1、V5を開けた状態とし、仕切弁V3、V4を閉じた状態にする。そして第1ポンプP1は稼働状態とし、第2ポンプP2は停止状態とする。圧力調整弁V2は背圧弁としての機能が有効な状態になるように、弁の開度が調整されることが好ましい。
このような状態にて、原水タンク51から被処理水を原水供給ライン55に通水して、RO膜装置10に供給する。RO膜装置10によって被処理水を処理し、透過水を処理水通水ライン42に通水するとともに、濃縮水を濃縮水通水ライン41に通水する。そして所定時間通水し、経時的にRO膜に膜閉塞が進行した時点で、RO膜装置10のRO膜の洗浄を行うことが好ましい。洗浄開始時点におけるRO膜の膜閉塞の度合いは、目的に応じて適宜に設定される。例えば、規定の透過水量を得るために必要なRO膜装置10の操作圧が当初の15%以上となったときに、洗浄が開始される。
【0015】
本発明の洗浄方法では、下記のように、RO膜装置の洗浄中に、次回以降のRO膜の洗浄を十分にかつ効率的に行うための洗浄時間の基準を決めることができる。なお、本発明において「RO膜装置の洗浄」とは、RO膜装置のRO膜の洗浄を意味し、「RO膜の洗浄」と同義である。
【0016】
RO膜装置10の洗浄をするには、仕切弁V1、圧力調整弁V2を閉じた状態にし、仕切弁V3、V4を開けた状態にする。洗浄をほぼ無圧状態(洗浄薬液が逆浸透膜を透過しない状態)で行うので、仕切弁V5は、開けた状態であっても、閉じた状態であってもよい。ここでは、仕切弁V5は閉じた状態にすることが好ましい。そして第1ポンプP1は停止状態にし、第2ポンプP2を稼働状態にする。
このような状態で、薬液タンク61から洗浄薬液を薬液供給ライン63及び原水供給ライン55に通水し、RO膜装置のRO膜に薬液を接触させる。そして、RO膜に接触させた薬液は濃縮水通水ライン41から薬液循環ライン62に通水して薬液タンク61に戻す。
【0017】
RO膜の洗浄において、膜閉塞物質の溶出はRO膜と洗浄薬液との接触時間に依存し、通液速度は膜閉塞物質の溶出に対して支配的要素ではない。したがって、第2ポンプP2は常に稼働状態とする必要はない。例えば、薬液タンク61、薬液供給ライン63、原水供給ライン55、RO膜装置10、濃縮水通水ライン41、及び薬液循環ライン62で構成される洗浄薬液循環系(以下、単に「薬液循環系」ともいう。)を洗浄薬液で満たした後、洗浄中に第2ポンプP2を停止し、RO膜を洗浄薬液中に浸して静置したような状態としてもよい。例えば、膜閉塞物質濃度の測定に当たり、水質測定手段に薬液を送り込むときだけ、第2ポンプP2を稼働する形態としてもよい。
そして、薬液による洗浄が所定時間経過した時点(例えば、30分、2時間、3時間、4時間、それ以降は2時間ごとに12時間までの各時点)で、水質測定手段31によって、薬液中の膜閉塞物質濃度を測定する。水質測定手段31の具体例として、例えば、ThermoScientific社製の誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置、ThermoScientific社製のイオンクロマトグラフ分析装置、島津製作所社製の分光光度計などを用いることができる。これらの測定値から、RO膜と薬液との接触により薬液中に溶出した膜閉塞物質濃度の変化量を把握し、この変化量に基づいて、RO膜の性能を十分に回復するのに必要な洗浄時間を決定する。洗浄後、通常の被処理水の処理に戻すと、RO膜は経時的に膜閉塞を生じ、洗浄が必要になる。このときの洗浄は、上記で決定した洗浄時間に基づいて行う。つまり、初回、あるいは任意の時点におけるRO膜の洗浄工程において、RO膜の洗浄を行いながら、次回以降のRO膜の十分かつ効率的な洗浄のための必要時間を決定する。
本発明において「洗浄時間」とは、洗浄薬液とRO膜全体とを接触させた時点から、洗浄薬液とRO膜全体との接触が終了するまでの時間をいう。
また、被処理水中に存在する「膜閉塞物質」としては、懸濁物質、鉄、マンガン、アルミニウム、シリカ、硬度成分、有機物、微生物、微生物の代謝物等が挙げられる。
【0018】
第1実施形態にける洗浄方法において、次回以降のRO膜洗浄時間の基準は、次のようにして決定することができる。
【0019】
[洗浄時間の決定方法]
洗浄開始後、所定経過時間ごとに測定した薬液中の膜閉塞物質濃度を測定する。
図1の水処理システムを用いてRO膜を洗浄したときの、洗浄開始から30分間、2時間、3時間、4時間、それ以降は2時間ごとに12時間経過時までの各時点において、薬液中の膜閉塞物質濃度(質量濃度(mg/L))を測定した。このように、初回の洗浄を例えば12時間という長時間かけて行うことによって、膜閉塞物質濃度の増加傾向の変化(後述する曲変点)を確実にかつ正確に把握して、次回以降の洗浄時間を決定することが可能になる。以下、膜閉塞の一例として、シリカによる膜閉塞について説明する。洗浄経過時間(経過時間ともいう)における測定した溶解シリカ濃度値をプロットしたグラフの一例を図2に示す。縦軸が薬液中の溶解シリカ濃度(mg/L)、横軸が洗浄経過時間(h(時間))である。
このグラフを用いて、隣接する2点間を結ぶ直線の傾きが急激に変化する経過時間(この経過時間を便宜上、本発明では「曲変点」と称す。この曲変点はすなわち、RO膜からの膜閉塞物質溶出量の増加率が急激に低下する点である。また、この曲変点は、後述するように洗浄時間と同義である。この曲変点を「薬液中の膜閉塞物質濃度の曲変点」とも称す。)を、次回以降のRO膜洗浄時の洗浄時間の基準とする。本発明において「次回以降の洗浄」とは、次回以降の少なくとも1回の洗浄を意味する。本発明において曲変点は、例えば次のように決定することができるが、曲変点の求め方は、本発明の効果を奏する範囲で目的に応じて適宜に設定することができる。結果、曲変点それ自体も、曲変点の決定方法に応じて変動し得るものである。
【0020】
<曲変点の決定方法>
曲変点の決定方法の一例を説明する。
図2に示すように、最初の2つのプロット(洗浄開始から30分間経過時のプロットと2時間経過時のプロット)を通る直線L1を引く。
また、隣接する各プロット間を直線でつなぐ。
洗浄開始から2時間以上経過後のある時点(経過時間A、例えば経過時間4時間)における直線L1上の膜閉塞物質濃度値(a[mg/L〕)と、経過時間Aにおける膜閉塞物質濃度値(b[mg/L])との差([a-b][mg/L])を求める。
経過時間Aにおける膜閉塞物質濃度値(b[mg/L])と、最初のプロット(30分経過時のプロット)における膜閉塞物質濃度値(c[mg/L])との差([b-c][mg/L])を求める。
[(a-b)/(b-c)]×100%が、例えば20%になる、洗浄開始からの経過時間Aが曲変点になる。この曲変点を、膜閉塞を生じたRO膜の性能を十分に回復するのに必要な洗浄時間Zであると決定する。したがって、次回以降の洗浄は、この決定された洗浄時間Zに基づいて行えば、RO膜の性能を十分に回復させることができる。
洗浄時間Zの決定における「[(a-b)/(b-c)]×100%」は、例えば、3~40%の範囲で、目的に応じて適宜に設定することができ、好ましくは5~35%、より好ましくは7~30%、さらに好ましくは8~25%の範囲で設定することができる。
また、上記以外の方法でも曲変点を求めることは可能であり、曲変点の決定は、当業者であれば適宜に行うことができる。
【0021】
ここで、本発明の洗浄方法において、曲変点を次回の洗浄時間の基準とすることの利点を説明する。
図2に示されるように、上記洗浄時間Zでは、その後も膜閉塞物質の薬液中への溶出量は増加している。つまり、洗浄時間Zにおいて、RO膜には、まだ膜閉塞物質がある程度残留している状態にある。しかし、本発明者らが、RO膜装置の任意の操作圧における純水透過水量を指標にしてRO膜の性能の回復状態(洗浄回復率)を検証したところ、後述の実施例(図7参照)で示すように、このように膜閉塞物質が一定量残留していても、RO膜の性能は十分に回復されていることがわかってきた。換言すれば、洗浄時間Zよりも長時間洗浄しても、RO膜性能の回復の状態は事実上変わらない。すなわち、薬液中に溶出した膜閉塞物質濃度の変化量を指標に洗浄時間を決定することにより、膜閉塞を生じた分離膜の性能を十分に回復する必要するのに必要な時間(実質的な最短時間)を簡便に決定することができる。
【0022】
上記の説明では、一例として、洗浄開始から30分、2時間、3時間、4時間、それ以降は2時間ごとに12時間経過までの各時点における膜閉塞物質濃度を測定してグラフ化し、洗浄時間Zを求める形態を説明したが、膜閉塞物質濃度の測定間隔は、これに限定されない。ただし、最初の測定は、薬液循環系が薬液で満たされた状態で行うこととし、この最初の測定時には、薬液循環系内においてRO膜から溶出した膜閉塞物質濃度が略均一な状態にあることが好ましい。また、この最初の測定は、洗浄開始から1時間以内とすることが好ましい。薬液循環時、膜閉塞物質の溶解に伴い薬液のpHが変化することがある。十分な洗浄効果を得るため、あらかじめ設定されたpHになるよう、薬液を追加添加してもよい。
また、2回目以降の測定は、最初の測定後、例えば30分~3時間間隔(好ましくは30分~2.5時間、さらに好ましくは30分~2時間)で行うことができる。2回目以降の測定間隔は、同じ時間でもよいし、異なってもよい。2回目以降の測定間隔をある程度短くすることにより、RO膜の性能を十分に回復するのに必要な洗浄時間(実質的な最短時間)を、より高精度に決定することができる。
また、上記の曲変点の決定における直線L1を、グラフ上の最初の3つのプロット(例えば、30分間経過時のプロットと1時間経過時のプロットと2時間経過時のプロット)を結ぶ近似直線としたり、4つ以上のプロット(例えば、30分間経過時のプロットと1時間経過時のプロットと1.5時間経過時のプロットと2時間経過時のプロット)を結ぶ近似直線としたりすることもできる。近似直線は、例えば最小二乗法を用いて引くことができる。要するに、本発明の効果を発現する曲変点を求めることができれば、その決定方法は特に制限されない。
【0023】
上記の説明は薬液中の膜閉塞物質濃度の測定を間欠的に行うものであるが、薬液中の膜閉塞物質濃度は連続的に測定(モニタリング)してもよい。
この場合、例えば、洗浄開始から30分経過時と2時間経過時のプロットを通る直線(もしくは、30分経過時から2時間経過時までの連続的な測定値のプロットに基づく近似直線)を直線L1とする。
洗浄開始から2時間経過後のある時点(経過時間A)における直線L1上の膜閉塞物質濃度値(a[mg/L])と、経過時間Aにおける膜閉塞物質濃度値(b[mg/L])との差([a-b][mg/L])を求める。
経過時間Aにおける膜閉塞物質濃度値(b[mg/L])と、最初のプロット(30分経過時のプロット)における膜閉塞物質濃度値(c[mg/L])との差([b-c][mg/L])を求める。
[(a-b)/(b-c)]×100が、例えば20%になる、洗浄開始からの経過時間Aを、膜閉塞物質を生じたRO膜の性能を十分に回復するのに必要な洗浄時間Zであると決定する。
【0024】
本発明において、「決定した洗浄時間に基づいて」「分離膜の洗浄を行う」とは、決定した洗浄時間を基準にして洗浄時間を決定していれば、実際の洗浄時間は決定した洗浄時間と同じでなくてもよい。すなわち、決定した洗浄時間だけ分離膜を洗浄する形態の他、本発明の効果を損なわない範囲で、決定した洗浄時間よりも洗浄時間を短くしてもよく、逆に長くしてもよい。
【0025】
RO膜装置10のRO膜の洗浄は、例えば、膜閉塞物質(スケール)が無機物のシリカ(二酸化ケイ素)を含む場合は、アルカリ性の薬液として、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いることで、シリカを溶解させることができる。膜閉塞物質が炭酸カルシウム(CaCO)やフッ化カルシウム(CaF)、硫酸カルシウム(CaSO)、リン酸カルシウム(Ca(PO))を含む場合は、酸性の薬液として、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)等を用いることによって、Caを溶解させることができる。膜閉塞物質が有機物の場合には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム(KOH)水溶液等を用いることが好ましい。膜閉塞物質が鉄やマンガンといった金属イオンを含む場合には、クエン酸、シュウ酸、塩酸、硫酸、硝酸等を用いることが好ましい。また、これら薬液に対して、酸化剤、界面活性剤、有機物分解酵素、キレート剤、スケール分散剤といった成分を添加してもよい。
【0026】
上記薬液洗浄後は、仕切弁V1、圧力調整弁V2を開けた状態とし、仕切弁V3、V4を閉じた状態とする。
そして、原水タンク51から被処理水を原水供給ライン51に通水して、RO膜装置10に供給する。RO膜装置10によって被処理水を処理し、透過水を処理水通水ライン42に通水するとともに、濃縮水を濃縮水通水ライン41に通水する。このとき、被処理水やRO処理水を低圧でRO膜装置に通水して洗浄薬液を押し流す、いわゆるフラッシング工程を入れてもよい。
【0027】
次に、本発明の洗浄方法の別の好ましい一実施形態(第2実施形態)を、図面を参照して説明する。
第2実施形態に係る洗浄方法は、膜分離装置の被処理水または濃縮水を通水するサブ膜分離装置の分離膜に付着した膜閉塞物質を、膜分離装置に模して洗浄する。このサブ膜分離装置の洗浄に用いた洗浄薬液中の膜閉塞物質濃度の測定値に基づいて、膜分離装置の分離膜の洗浄時間を決定する。そして、決定した洗浄時間に基づいて膜分離装置を洗浄する。
【0028】
以下に、第2実施形態に係る洗浄方法を実施するのに好適な水処理システムを、図3を参照して説明する。
図3に示すように、水処理システム1(1B)は、前述の第1実施形態の水処理システム1A(図1参照)において、水質測定手段31と水質測定ライン32を配さず、濃縮水通水ライン41から分岐するサブモジュール101を付加することが好ましい。第2実施形態では、サブモジュール101のサブRO膜装置110の洗浄によって、RO膜装置10の洗浄時間を決める。そのため、サブRO膜装置110には、RO膜装置10と同種のRO膜を用いることが好ましい。
【0029】
濃縮水通水ライン41には、濃縮水通水ライン41から分岐する薬液循環ライン62とRO膜装置10の濃縮水側Acとの間から分岐してサブRO膜装置110の供給側SAsに接続される濃縮水供給ライン155が接続されることが好ましい。したがって、サブRO膜装置110の供給側SAsに供給される濃縮水はサブRO膜装置110の供給側SAsに圧力をかけて供給される。さらに、濃縮水供給ライン155には仕切弁V6が配されることが好ましい。
【0030】
サブRO膜装置110の濃縮水側SAcには、濃縮水通水ライン141が配される。濃縮水通水ライン141には、圧力調整弁V7が配されることが好ましい。圧力調整弁V7は、背圧弁を兼ねることができる。またサブRO膜装置110の濃縮水側SAcとサブ薬液タンク161の受給側SBrとをつなぐ薬液循環ライン162が配される。この薬液循環ライン162は、サブRO膜装置110の濃縮水側SAcに直接接続されてもよい。薬液循環ライン162には、仕切弁V8が配されることが好ましい。さらにサブ薬液タンク161の供給側SBsと、濃縮水供給ライン155の仕切弁V6とサブRO膜装置110との間には接続される薬液供給ライン163が配される。薬液供給ライン163には、サブ薬液タンク161側より順に、第3ポンプP3、仕切弁V9が配されることが好ましい。薬液循環ライン162の分岐点B1とサブRO膜装置110の濃縮水側SAcとの間の濃縮水通水ライン141には、水質測定手段131に接続される水質測定ライン132が接続されることが好ましい。
またサブRO膜装置110の透過水側SAtには処理水通水ライン142が接続されることが好ましい。処理水通水ライン142には、仕切弁V10が配されることが好ましい。
【0031】
上記水処理システム1Bによって被処理水を処理するには、仕切弁V1、V5、V6、V10を開けた状態とし、仕切弁V3、V4、V8、V9を閉じた状態とする。圧力調整弁V2、V7は、背圧弁としての機能が有効な状態になるように、弁の開度が調整されることが好ましい。第1ポンプP1は稼働状態とし、第2ポンプP2、第3ポンプP3は停止状態とする。
このようにして、原水タンク51から被処理水を原水供給ライン55に通水して、RO膜装置10に供給する。RO膜装置10によって被処理水を処理し、透過水を処理水通水ライン42に通水するとともに、濃縮水を濃縮水通水ライン41に通水する。その際、濃縮水通水ライン41から濃縮水をサブモジュール101に通水する。濃縮水の一部は濃縮水通水ライン41から濃縮水供給ライン155に通水され、サブRO膜装置110に供給される。サブRO膜装置の透過水は処理水通水ライン142に通水され、濃縮水は濃縮水通水ライン141に通水される。サブRO膜装置110には水処理システム1Bでもっとも不純物の多い水が通水されるため、RO膜装置10よりも膜閉塞の負荷は高くなる。
【0032】
RO膜装置10に被処理水を通水した状態で、サブRO膜装置110の洗浄を実施する。
具体的には、仕切弁V1、V5、V8、V9を開けた状態にし、仕切弁V3、V4、V6、圧力調整弁V7を閉じた状態にする。このようにして、RO膜装置10の濃縮水がサブモジュール101に通水されないようにして、サブモジュール101の洗浄を行う。このサブモジュール101の洗浄の際、薬液はサブRO膜装置110のRO膜をほとんど透過しないため、仕切弁V10は、開けた状態であっても、閉じた状態であってもよいが、仕切弁V10は閉じた状態にすることが好ましい。圧力調整弁V2は、背圧弁としての機能が有効な状態になるように、弁の開度が調整されることが好ましい。第1ポンプP1、第3ポンプP3は稼働状態とし、第2ポンプP2は停止状態とする。
【0033】
このようにして、原水タンク51から被処理水を原水供給ライン51に通水し、RO膜装置10に供給して被処理水を処理し、透過水を処理水通水ライン42に通水するとともに、濃縮水を濃縮水通水ライン41に通水する。その際、サブモジュール101では、サブRO膜装置110の洗浄を行う。すなわち、サブ薬液タンク161の薬液を薬液供給ライン163、濃縮水供給ライン155に通水して、サブRO膜装置110に供給する。そして、サブRO膜装置110のRO膜に薬液を接触させて、RO膜を洗浄する。洗浄した後の薬液は濃縮水通水ライン141、薬液循環ライン162に通水され、サブ薬液タンク161に戻される。
【0034】
サブモジュール101によるサブRO膜装置110の洗浄において、上述した第1実施形態の洗浄時間の決定方法に従って洗浄時間を決定する。そして、この洗浄時間を、RO膜装置10を洗浄するときの洗浄時間とする。RO膜装置10の洗浄方法は、第1実施形態と同様である。
サブRO膜装置110のRO膜(サブRO膜)の閉塞は、RO膜装置10のRO膜の閉塞よりも早いため、サブRO膜装置110で決定された洗浄時間に基づきRO膜装置10を洗浄することにより、RO膜装置10のRO膜を十分に、より確実に、かつ短時間で洗浄することができる。
RO膜装置10の洗浄は、サブモジュール101で洗浄時間を決定してから、数日以内、好ましくは1日~15日以内、より好ましくは1日~10日以内で実施するのが望ましい。
【0035】
なお、図3の形態の変形例として、サブモジュール101に、RO膜装置10の濃縮水ではなく、RO膜装置10の被処理水を供給する形態とすることもできる。つまり、RO膜装置10とサブRO膜装置110の両装置が、ともに被処理水を処理する形態とすることもできる。この場合、サブモジュール101を用いたRO膜装置10の洗浄は、RO膜装置10の洗浄を、より模したものとなる。この変形例において、被処理水をサブモジュール101に供給する配管、仕切弁等の構成は、目的に応じて適宜に設計すればよい。
【0036】
次に、本発明に係る別の膜分離装置の洗浄方法の好ましいさらに別の実施形態(第3実施形態)を、図面を参照して具体的に説明する。
第3実施形態の膜分離装置の洗浄方法では、洗浄後の薬液中の膜閉塞物質の濃度とともに、膜閉塞物質の種類も判別する。そして、薬液中の膜閉塞物質の濃度変化に基づいて次回以降の膜分離装置の洗浄時間を決定し、さらに洗浄に用いる薬液の通水方向も決定する。
【0037】
以下に、第3実施形態の膜分離装置の洗浄方法の行うのに好適な膜分離装置を含む水処理システムについて、図4を参照して具体的に説明する。
図4に示すように、水処理システム1(1C)は、前述の第1実施形態の水処理システム1Aにおいて、原水供給ライン55の仕切弁V1とRO膜装置10との間から薬液循環ライン(第1薬液循環ライン)62に通水する第2薬液循環ライン64が配されることが好ましい。また薬液供給ライン(第1薬液供給ライン)63の、第2ポンプP2と仕切弁V4との間から、濃縮水通水ライン41へと接続する第2薬液供給ライン65が配されることが好ましい。第2薬液供給ライン65には、仕切弁V11が配されることが好ましく、第2薬液循環ライン64には仕切弁V12が配されることが好ましい。
この水処理システム1CのRO膜装置10は、複数段のバンク(図示せず)で構成される。
【0038】
上記水処理システム1Cにおいて、被処理水を処理するには、前述の第1実施形態と同様に弁操作及びポンプ稼働を行う。そして所定時間、被処理水をRO膜装置10に通水した後、RO膜装置10の洗浄を行うことが好ましい。洗浄は以下のように行う。その際、洗浄後の薬液について膜閉塞物質の種類と濃度変化を測定する。
【0039】
例えば、薬液中に溶出した膜閉塞物質の中に、無機物が多く、有機物がそれより少ない場合には、RO膜装置10の洗浄は、被処理水を処理する際の通水方向とは逆方向の通水により行うことが好ましい。すなわち、次のような弁操作及びポンプ稼働を行うことが好ましい。
仕切弁V11、V12を開けた状態とし、仕切弁V1、V3、V4を閉じた状態とする。また、圧力調整弁V2は閉じた状態にする。洗浄をほぼ無圧状態(洗浄薬液が逆浸透膜をほとんど透過しない状態)で行うため、圧力調整弁V5は、開けた状態であっても、閉じた状態であってもよいが、閉じることが好ましい。そして第1ポンプP1の稼働は停止状態とし、第2ポンプP2を稼働状態とする。
【0040】
このような状態で、薬液タンク61内の洗浄薬液を薬液供給ライン63から第2薬液供給ライン65に通液する。そして濃縮水通水ライン41を通液して、複数段のバンクで構成される最後段のバンクのRO膜の濃縮水側から洗浄薬液を供給することにより、洗浄薬液は最後段バンクの供給側へと通液される。さらにその前段側のバンクのRO膜の濃縮水側へと順次に通液させることができる。最終的に、最前段のバンクの濃縮側からその供給側へと洗浄薬液を通液させることができる。
このようにして、各バンクのRO膜に洗浄薬液を接触させ、膜閉塞物質を溶出させる。その後、洗浄薬液は、原水供給ライン55から第2薬液循環ライン64、第1薬液循環ライン62を通って薬液タンク61に戻されることが好ましい。洗浄時には、第2ポンプP2を稼働状態とするが、洗浄薬液がRO膜装置10のRO膜を透過しない程度の供給圧力にて稼働することが好ましい。
【0041】
RO膜を閉塞させた膜閉塞物質はシリカ等の無機物が主体の場合、膜閉塞は、後段側のバンクにおいてより顕在化する。したがって、上記のように、最後段のバンク側から新しい洗浄薬液を供給することにより、膜閉塞をより効率的に回復させることができる。
【0042】
また、膜閉塞物質が有機物の場合には、第1実施形態と同様に洗浄薬液を通液して洗浄を行えばよい。有機物は前段側のバンクに蓄積しやすいからである。この場合、仕切弁V3、V4を開けた状態にして、仕切弁V1、V11、V12、圧力調整弁V2を閉じた状態にすればよい。そして、第1実施形態と同様に、洗浄薬液をRO膜装置10に向けて通液すればよい。
【0043】
洗浄時間は、第1実施形態と同様にして決定することができる。また、第2実施形態のように、水処理システム1Cのようにサブシステム101を設けることもでき、この場合には、第2実施形態において説明した形態に準じて、洗浄時間を決定することができる。
上記水処理システム1Cでは、ラインを切り替えることによって洗浄薬液のRO膜装置への通液方向を変更する形態を説明したが、ポンプサプライラインがビニルチューブのような軟質材料の場合には、第2ポンプP2の繋ぎこみ先を原水供給ライン55又は濃縮水通水ライン41に変更することでも対応できる。
【0044】
第3実施形態では、RO膜装置10に対して一方向から洗浄薬液を通液した後、その逆方向からの通液によりさらにRO膜装置10を洗浄することもできる。この場合、トータルの洗浄時間を、上記の決定された洗浄時間に基づくものとする。
【0045】
次に、本発明に係る別の膜分離装置の洗浄方法のさらに別の好ましい実施形態(第4実施形態)を、図面を参照して具体的に説明する。
第4実施形態の膜分離装置の洗浄方法では、分離膜を透過した透過水(処理水)と洗浄薬原液とを混合して得た薬液を用いて、これを用いて分離膜の洗浄を行い、洗浄後の薬液を系外に排出する。膜分離装置の洗浄時間は、前述の第1実施形態で説明した決定方法を適用することができる。
【0046】
以下に、第4実施形態の膜分離装置の洗浄方法を行うのに好適な膜分離装置を含む水処理システムについて、図5を参照して具体的に説明する。
図5に示すように、水処理システム1(1D)は、前述の第1実施形態の水処理システム1Aにおいて、薬液循環ライン62を用いず、処理水通水ライン42に、処理水タンク21より下流側に第3ポンプP3、仕切弁V13を配する、そして、第3ポンプP3と仕切弁V13との間の処理水通水ライン42から、原水供給ライン55に接続するように透過水供給ライン43を配したものである。透過水供給ライン43の原水供給ライン55への接続は、仕切弁V1からRO膜装置10の間の原水供給ライン55であれば、どの位置であってもよく、薬液供給ライン63と合流点C1で合流してもよい。また、水質測定手段31に接続される水質測定ライン32は濃縮水通水ライン41に接続されることが好ましい。
【0047】
上記水処理システム1Dにおいて、RO膜装置10の洗浄をするには、以下のような弁操作及びポンプ稼働を行うことが好ましい。すなわち、圧力調整弁V2、仕切弁V14を開けた状態にして、仕切弁V1、仕切弁V13を閉じた状態にする。仕切弁V5は、開けた状態であっても、閉じた状態であってもよく、閉じることが好ましい。そして第1ポンプP1の稼働は停止し、第2ポンプP2及び第3ポンプP3を稼働する。
洗浄時間は、後述するように、前述の第1実施形態にて説明した洗浄時間の決定方法によって決定することができ、この決定した洗浄時間を指標にしてRO膜装置10の洗浄が行われる。
水処理システム1DのRO膜装置10の洗浄では、第3ポンプP3を稼働して、処理水タンク21に貯液されている処理水を無圧で原水供給ライン55に供給する。このとき薬注ポンプである第2ポンプP2を稼働し、薬液タンク61から洗浄薬原液を原水供給ライン55に供給する。ここで、洗浄薬原液と透過水とを混合して洗浄薬液とし、この洗浄薬液がRO膜装置10に供給される。その際、洗浄薬原液と透過水との混合比を調整することによって、洗浄薬液中の薬品濃度を調整することができる。RO膜装置10を通った洗浄薬液は、そのまま濃縮水通水ライン41からブローされる。
所定時間、第2、第3ポンプP2、P3を稼働状態としてから、第2、第3ポンプP2、P3の稼働停止状態にし、圧力調整弁V2、仕切弁V14を閉じる。この操作によって、洗浄薬液でRO膜装置10のRO膜を浸漬洗浄することもできる。
【0048】
上記水処理システム1DのRO膜洗浄では、洗浄薬液を循環させない、いわゆるワンパス洗浄である。
ワンパス洗浄の洗浄時間は、前述の第1実施形態にて説明した洗浄時間の決定方法と同様にして決定されることが好ましい。この洗浄時間を決定するには、先ず、薬液タンク61から洗浄薬液を薬液供給ライン63及び原水供給ライン55に通水し、RO膜装置のRO膜に薬液を接触させる。そして、薬液による洗浄が所定時間経過した時点(例えば、洗浄開始から30分、2時間、3時間、4時間、それ以降は2時間ごとに12時間経過までの各時点)で、水質測定手段31によって、薬液中の膜閉塞物質濃度を測定する。これらの測定値から、RO膜と薬液との接触により薬液中に溶出した膜閉塞物質濃度の変化量を把握し、この変化量に基づいて、RO膜の性能を十分に回復するのに必要な洗浄時間を決定する。図示していないが、第1実施形態と同様にして薬液循環ラインを設けて、上記ワンパス洗浄の洗浄時間を決定する際に用いた薬液を薬液タンク61に戻す形態とすることができる。
【0049】
次に、本発明に係る別の膜分離装置の洗浄方法の好ましいさらに別の実施形態(第5実施形態)を、図面を参照して具体的に説明する。
第5実施形態の膜分離装置の洗浄方法では、膜分離装置の透過水に洗浄薬液を注入して得た洗浄薬液を用いて、複数段のバンクで構成される膜分離装置の後段側バンクの分離膜から前段側バンクの分離膜にかけて順に洗浄を行う。この洗浄は、第1実施形態と同様に、その前の洗浄工程において決定された洗浄時間に基づいて行う。洗浄後の薬液は膜分離装置の系外に排出する。
【0050】
以下に、第5実施形態の膜分離装置の洗浄方法の行うのに好適な膜分離装置を含む水処理システムについて、図6を参照して具体的に説明する。
図6に示すように、水処理システム1(1E)は、前述の第4実施形態の水処理システム1Dにおいて、第2薬液供給ライン65、透過水供給ライン44、ブローライン45が付加されている。第2薬液供給ライン65は、第2ポンプP2と仕切弁V18との間の薬液供給ライン63から分岐して、RO膜装置10と圧力調整弁V2との間の濃縮水通水ライン41に接続していることが好ましい。第2薬液供給ライン65の濃縮水通水ライン41への接続は、RO膜装置10から仕切弁V2の間の濃縮水通水ライン41であれば、どの位置であってもよく、透過水供給ライン44と合流点C2で合流してもよい。第2薬液供給ライン65には仕切弁V17が配されていることが好ましい。透過水供給ライン44は濃縮水通水ライン41に合流する。透過水供給ライン44には、仕切弁V15が配されていることが好ましい。また、ブローライン45は、透過水供給ライン43から系外に向かって接続されている。ブローライン45には仕切弁V16が配されていることが好ましい。
【0051】
上記水処理システム1EのRO膜装置10の洗浄をするには、以下のような弁操作及びポンプ稼働を行うことが好ましい。すなわち、仕切弁V15~V17を開けた状態にし、仕切弁V1、圧力調整弁V2、仕切弁V13、V14、V18を閉じた状態にする。そして第1ポンプP1は停止状態にし、第2ポンプP2及び第3ポンプP3を稼働状態にする。
すなわち、第3ポンプP3を稼働状態にして、処理水タンク21に貯液されている処理水を無圧でRO膜装置10に供給する。このとき薬注ポンプである第2ポンプP2を稼働状態にし、洗浄薬原液を濃縮水通水ライン41に供給する。濃度調整された薬液がRO膜装置10の最後段のバンクの濃縮側に供給される。RO膜装置10を通った薬液は、そのまま、ブローライン45を通じてブローされる。
【0052】
上記水処理システム1EのRO膜洗浄では、洗浄薬液を循環させない、いわゆるワンパス洗浄である。このワンパス洗浄の洗浄時間は、前述の第1実施形態ないし第4実施形態にて説明した洗浄時間の決定方法によって決定することができる。
【0053】
上記第5実施形態の水処理システム1Eでは、濃縮水通水ライン41内にてRO膜装置10の透過水と洗浄薬原液とを混合して薬液として用いる。得られた薬液は濃縮水通水ライン41を通液し、複数段のバンクで構成される最後段のバンクの濃縮側へと供給され、第3実施形態と同様にして、最終的に、最前段のバンクの濃縮側からその供給側へと薬液を通液させることができる。
洗浄後の洗浄薬液は、原水供給ライン55から透過水供給ライン43、次いでブローライン45に通水されてブローされる。洗浄時には、第2ポンプP2を稼働状態とするが、洗浄薬液がRO膜装置10のRO膜を透過しない程度の供給圧力にて稼働することが好ましい。
【0054】
水処理システム1Eでは、膜閉塞物質の種類に応じて、好適な洗浄方法を選択することができる。つまり、無機物が多い膜閉塞物質の場合には、水処理システム1Eの構成が有効である。一方、有機物が多い膜閉塞物質の場合には、第4実施形態の水処理システム1Dの構成が有効である。
このようにして、無機物の膜閉塞物質や有機物の膜閉塞物質を効率よく洗浄して、RO膜から除去することが可能になる。
なお、弁操作やポンプ稼働によって、無機物の洗浄後に有機物の洗浄を行ってもよく、逆に、有機物の洗浄後に無機物の洗浄を行ってもよい。
【0055】
上記水処理システム1Eでは、ラインを切り替えることによって洗浄薬液の供給方法を変更していたが、ポンプサプライラインがビニルチューブのような軟質材料の場合には、第2ポンプP2の繋ぎこみ先を原水供給ライン55又は濃縮水通水ライン41に変更することでも対応できる。
【0056】
上述した各水処理システムは、本発明の洗浄方法を実施可能に組み込んだ本発明の水処理システムの一例である。本発明の水処理システムは、通常使用時(被処理水の処理時)においては、本発明の効果を損なわない範囲で、一般的な水処理システムの種々の構成を適用することができる。例えば、被処理水の前処理システムを有してもよく、また、サブシステムを繋げて超純水製造装置の形態とすることもできる。
【0057】
すなわち、本発明の水処理システムは、
被処理水を処理する膜分離装置と、
洗浄薬液を前記膜分離装置に供給して分離膜と接触させる洗浄薬液供給部と、
前記分離膜に接触させた洗浄薬液中の膜閉塞物質の濃度を測定する測定部と、
前記測定部によって測定した前記膜閉塞物質濃度の変化量を指標に洗浄時間を決定し、該洗浄時間を前記洗浄薬液供給部に指示する制御部と、を含む。
【0058】
本発明の上記水処理システムの構成と、第1~第5実施形態の構成との関係を以下に示す。
水処理システム1A、1Bにおいて、洗浄薬液供給部は、薬液タンク61、薬液循環ライン62、薬液供給ライン63、原水供給ライン55、濃縮水通水ライン41、第2ポンプP2、仕切弁V1、V3、V4、圧力調整弁V2によって構成されている。
水処理システム1Cにおいて、洗浄薬液供給部は、薬液タンク61、第1薬液循環ライン62、第1薬液供給ライン63、第2薬液循環ライン64、第2薬液供給ライン65、原水供給ライン55、濃縮水通水ライン41、第2ポンプP2、仕切弁V1、V3、V4、V11、V12、圧力調整弁V2によって構成されている。
水処理システム1Dにおいて、洗浄薬液供給部は、薬液タンク61、薬液供給ライン63、原水供給ライン55、濃縮水通水ライン41、処理水通水ライン42、透過水供給ライン43、処理水タンク21、第2、第3ポンプP2、P3、仕切弁V1、V13、V14、圧力調整弁V2によって構成されている。
水処理システム1Eにおいて、洗浄薬液供給部は、薬液タンク61、第1薬液供給ライン63、第2薬液循環ライン44、第2薬液供給ライン65、原水供給ライン55、濃縮水通水ライン41、処理水通水ライン42、透過水供給ライン43、処理水タンク21、第2、第3ポンプP2、P3、仕切弁V1、V13~V18、圧力調整弁V2によって構成されている。
【0059】
測定部は、上記第1、第2実施形態で説明した水質測定手段31である。
制御部(図示せず)は、水質測定手段31で取得した測定値に基づいて、上記洗浄時間の決定方法を実施し、その洗浄時間を洗浄薬液供給部に指示して、指示した洗浄時間で洗浄を実施させるものである。
【0060】
本発明の水処理システムにおいて、分離膜は通常はRO膜である。すなわち、膜分離装置は通常はRO膜装置である。RO膜装置はバンク構成が1段であっても、1段目のバンクで得られたRO濃縮水を次段のバンクに供給するような、多段式であってもよい。また、バンクには並列に配置された複数のベッセルを備えることが好ましい。さらにベッセルには複数のエレメントを備えることが好ましい。
【0061】
本発明の水処理システムに用いられるRO膜装置に使用されるRO膜は、使用用途や被処理水水質、求められる透過水水質、回収率等によって適宜に選定することができ、極超低圧型、超低圧型、低圧型、中圧型、高圧型のいずれのRO膜であってもよい。RO膜としては、芳香族ポリアミドを構成材料としたスパイラル型逆浸透膜が好ましい。
低圧~超低圧型RO膜として、例えば、日東電工社製ESシリーズ(ES15-D8、ES20-U8)(商品名)、HYDRANAUTICS社製ESPAシリーズ(ESPAB、ESPA2、ESPA2-LD-MAX)(商品名)、CPAシリーズ(CPA5-MAX、CPA7-LD)(商品名)、東レ社製TMGシリーズ(TMG20-400、TMG20D-440)(商品名)、TM700シリーズ(TM720-440、TM720D-440)(商品名)、ダウケミカル社製BWシリーズ(BW30HR、BW30XFR-400/34i)、SGシリーズ(SG30LE-440、SG30-400)、FORTILIFE(登録商標)CR100などが挙げられる。
高圧型RO膜としては、例えば、HYDRANAUTICS社製SWCシリーズ(SWC4、SWC5、SWC6)(商品名)、東レ社製TM800シリーズ(TM820V、TM820M)(商品名)、ダウケミカル社製SWシリーズ(SW30HRLE、SW30ULE)(商品名)などを挙げることができる。
【0062】
本発明の水処理システムは、純水を製造する純水製造システム、工場からの排水や下水処理水を処理する排水回収システム、原水を減容化するための膜濃縮システムとして好適に用いることができる。特に、被処理水が排水である排水回収システムは、頻繁な洗浄が必要であることが多く、本発明を好適に用いることができる。
【実施例0063】
[実験例1]
以下に、本発明の分離膜の洗浄方法によって求めた洗浄時間が十分な洗浄が行える洗浄時間であることを実証する。
<実験方法>
導電率1680μS/cm、pH=7.5、Ca=13ppm、イオン状シリカ41ppm、アルミニウム0.1ppm、TOC4.1ppmである下水2次処理水を原水とし、前処理として除濁膜による濁質除去を実施した。その後、図1に示した実施形態の水処理システム1Aを用いて、前処理を行った被処理水をRO膜装置に通水した。回収率は55%で運転を行った。RO膜は、Hydranautics製LFC3-4040を用いた。運転時間約1500h(時間)経過後のRO膜に対して、水酸化ナトリウムを用いてpH=12に調整した洗浄液を接触させる薬品洗浄を実施した。所定の時間の薬品洗浄を実施後、洗浄廃液中の溶解シリカ濃度を、モリブデン青吸光光度法によって分析した。洗浄に供した薬液量は、同一とし、洗浄時間ごとの溶解シリカ濃度をプロットした。その結果を図2に示した。さらに、薬品洗浄前、および各洗浄時間の薬品洗浄終了後、原水タンク51内の液を純水に置換したのち、RO装置10に通水した。操作圧を第1ポンプP1の出力および圧力調整弁(背圧弁)V2の開度調整により、RO装置10への供給圧力を0.75MPaに調整し、そのときの純水透過流量を測定した。純水には、電気抵抗率1MΩ・cmの純水を用いた。そして得られた純水透過水量と、新品膜の純水透過水量の比より、以下の式より洗浄回復率を算出した。洗浄回収率は下記式によって求めた。
洗浄回復率%=
100×(洗浄前又は各洗浄時間における透過水量)/(新品膜の透過水量)
【0064】
詳細な手順として、まず、運転時間約1500h(時間)経過後のRO膜の純水透過水量を測定し、洗浄前の洗浄回復率を算出した。その後、pH=12に調整したアルカリ洗浄液を用いて、RO膜装置10と薬液タンク61とを薬液循環ライン62、薬液供給ライン63等によってつなぐ循環系にアルカリ洗浄液を流通させて循環系内の純水をアルカリ洗浄液によって置換した。そして循環系をアルカリ洗浄液にて満たした状態でアルカリ洗浄(アルカリ洗浄液への浸漬)を30分間実施し、循環系内の洗浄廃液中の溶解シリカ濃度を水質測定手段31により測定した。この測定値(A)を、洗浄時間30分後の溶解シリカ濃度としてプロットした。
その後、上述の通りに純水透過水量を計測した。
次いで、上記と同様にして循環系内の純水をアルカリ洗浄液によって置換し、循環系をアルカリ洗浄液にて満たした状態でアルカリ洗浄(アルカリ洗浄液への浸漬)を90分間実施した。その後、循環系内の洗浄廃液中の溶解シリカ濃度を水質測定手段31により測定した。この測定値(B)と上記測定値(A)の合算値を、アルカリ洗浄2h(時間)後の溶解シリカ濃度としてプロットした。以下、同様の手順で、アルカリ洗浄を計12h(時間)まで行い、各洗浄時間における洗浄廃液中の溶解シリカ濃度を分析してプロットした。図2に示すように、洗浄時間が10時間を超えてもなお、溶解シリカ濃度が上昇していることがわかった。
【0065】
アルカリ洗浄を行った際の、洗浄経過時間に対する溶解シリカ濃度と洗浄回復率を測定・算出し、図2および図7に示した。
【0066】
[結果]
図2に示す通り、溶解シリカ濃度は4h(時間)の時点で曲変点が確認された。また、図7に示す通り、4hにおける洗浄回復率は、95%強であった。洗浄時間2h洗浄を実施した場合、90%程度の洗浄回復率であり、洗浄回復率が十分ではなかった。また、12h洗浄を実施した場合、洗浄回復率は4hと変わらなかった。つまり、本実施例では透過水量を十分に回復させるための洗浄時間は曲変点である4時間で足り、透過水量の回復のために4時間を越える長時間の洗浄(例えば、図2の溶解シリカ濃度プロファイルに基づく12hの洗浄)は不要であることがわかった。
このように、曲変点を指標とすることにより、十分な洗浄回復率を達成する必要最小限の洗浄時間を決定でき、分離膜の洗浄工程を効率化できることがわかった。
【符号の説明】
【0067】
1、1A~1E 水処理システム
10 逆浸透膜装置(RO膜装置)
21 処理水タンク
31、131 水質測定手段
32、132 水質測定ライン
41 濃縮水通水ライン
42 処理水通水ライン
43、44透過水供給ライン
45 ブローライン
51 原水タンク
53 タンク供給ライン
55 原水供給ライン
61 薬液タンク
62 薬液循環ライン(第1薬液循環ライン)
63 薬液供給ライン(第1薬液供給ライン)
64 第2薬液循環ライン
65 第2薬液供給ライン
101 サブモジュール
110 サブRO膜装置
141 濃縮水通水ライン
155 濃縮水供給ライン
161 サブ薬液タンク
162 薬液循環ライン
163 薬液供給ライン
As、SAs 供給側
Ac、SAc 濃縮水側
At、SAt 透過水側
B1 分岐点
C1、C2 合流点
P1 第1ポンプ
P2 第2ポンプ
P3 第3ポンプ
V1、V3~V6、V8~V18 仕切弁
V2、V7 圧力調整弁

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7