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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041627
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/04 20060101AFI20220304BHJP
   H01J 65/00 20060101ALI20220304BHJP
   H01J 61/16 20060101ALI20220304BHJP
   H01J 61/40 20060101ALI20220304BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20220304BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20220304BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
H01J65/04
H01J65/00 B
H01J61/16 H
H01J61/40
B01J19/12 C
A61L9/20
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146947
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152294
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 雅宜
(72)【発明者】
【氏名】福田 稔
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
4G075
5C015
5C043
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK50
4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180HH03
4C180HH17
4G075AA02
4G075AA22
4G075BB10
4G075CA15
4G075CA33
4G075CA62
4G075DA02
4G075DA03
4G075DA05
4G075DA18
4G075EB21
4G075EB32
4G075EC21
4G075FB06
5C015PP04
5C015PP06
5C043BB01
5C043CC14
5C043EC13
(57)【要約】
【課題】この発明が解決すべき課題は、誘電体バリア放電により発光する紫外線放射ランプと点灯回路から構成される光源装置であって、新規な構造を提供することにある。
【解決手段】
紫外線放射ランプ1と点灯回路Sとより構成される。ランプ1は少なくともハロゲンガスを含む発光ガスが封入された略棒状の発光管11と、この発光管11の内部において発光管の伸びる方向に放電プラズマ14が生成されるように配置された一対の電極12,13を有し、点灯回路Sはフライバック回路を構成するとともに、電極に印加されるパルス電圧の幅(W)が1000n秒以下となるよう制御することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体バリア放電により発光する紫外線放射ランプと、この紫外線放射ランプの点灯回路とより構成される光源装置において、
前記紫外線放射ランプは、少なくともハロゲンガスを含む発光ガスが封入された略棒状の発光管と、この発光管の内部において当該発光管の伸びる方向に放電プラズマが生成されるように配置された一対の電極を有し、
前記点灯回路は、フライバック回路を構成するとともに、前記一対の電極に印加されるパルス電圧の幅(W)を1000n秒以下となるよう制御することを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記点灯回路は、前記一対の電極に印加されるパルス電圧の幅(W)を800n秒以下となるよう制御することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記紫外線放射ランプは、クリプトンと塩素を封入している、もしくはクリプトンと臭素を封入していることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記紫外線放射ランプは、波長200~230nmの光を放射するとともに、それ以外のUVCの放射光をカットするフィルタを有することを特徴とするウイルスの不活化と細菌の死滅させることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光源装置に関する。特に、誘電体バリア放電により発光する紫外線放射ランプと点灯回路から構成される光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、誘電体バリア放電により発光する紫外線放射ランプを使う殺菌装置が知られている。この紫外線放射ランプは誘電体材料である発光管を介在して配置された一対の電極により、いわゆる誘電体バリア放電を発生させて、内部に封入した発光ガスに対応した光を放射するものである。発光ガスとして、Kr(クリプトン)とCl(塩素)を封入した場合には波長222nmに単一ピークを有する紫外光を発生させる。
【0003】
この種の紫外線放射ランプは、近年、人や動物への悪影響を抑制しつつ、微生物やウイルスを不活化できる光源として期待されており、医療施設、学校、役所等、頻繁に人が集まる施設や、自動車、電車、バス、飛行機、船等の乗物など、多様な場面で活用されることが期待されている。そのため、光源装置もこのような要求に対応し、小型化された装置の開発が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5979016号
【特許文献2】特許第6025756号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようする課題は、誘電体バリア放電により発光する紫外線放射ランプと点灯回路から構成される光源装置であって、新規な構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る光源装置は、誘電体バリア放電により発光する紫外線放射ランプと、この紫外線放射ランプの点灯回路より構成される。紫外線放射ランプは、少なくともハロゲンガスを含む発光ガスが封入された略棒状の発光管と、この発光管の内部において当該発光管の伸びる方向に放電プラズマが生成されるように配置された一対の電極を有し、点灯回路はフライバック回路を構成するとともに、前記一対の電極に印加されるパルス電圧の幅(W)が1000n秒以下となるよう制御することを特徴とする。
【0007】
また、前記点灯回路は、一対の電極に印加されるパルス電圧の幅(W)が800n秒以下となるよう制御することを特徴とする。
また、紫外線放射ランプは、クリプトンと臭素、もしくは、クリプトンと臭素を封入していることを特徴とする。
また、紫外線放射ランプは、波長200~230nmの光を放射するとともに、それ以外のUVCの放射光をカットするフィルタを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る光源装置は、フライバック型点灯回路により、紫外線放射ランプの一対の電極に印加されるピークパルス電圧波形の電圧値ゼロにおける幅を1000n秒以下と制御させることで、発光管の長手方向に放電プラズマが生成されるランプ形態であっても、放電を安定させることができる。
【0009】
さらに、本発明に係る光源装置は、フライバック型点灯回路により、紫外線放射ランプの一対の電極に印加されるピークパルス電圧波形の電圧値ゼロにおける幅を800n秒以下と制御することで、紫外光の放射効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る光源装置の全体構成を示す。
図2】本発明に係るエキシマランプの拡大図を示す。
図3】本発明に係るエキシマランプの拡大図を示す。
図4】本発明に係る光源装置のランプに印加される電圧は波形を示す。
図5】本発明に係る光源装置の実験結果を示す。
図6】本発明に係る光源装置の実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に係る光源装置の全体構成を示す。光源装置は紫外線放射ランプ1(以下、単に「ランプ」ともいう)と点灯回路Sより構成される、ランプ1の両電極は、トランス2の二次巻線に電気的に接続される。トランス2の一次巻線には、商用電源や直流電源から電力が供給される入力回路3が接続される。トランス2の一次巻線の他端には、FET素子などのスイッチング素子4が接続されており、スイッチング素子4のゲートには制御回路5が接続されている。この回路は、一般的に、昇圧フライバック回路と言われており、スイッチング素子4のオフタイミングに対応してトランス2の二次巻線に高い電圧波形が周期的に発生する。点灯回路Sはトランス2、入力回路3、スイッチング素子4、制御回路5より構成される。
【0012】
図2は本発明に係る紫外線放射ランプの拡大図を示す。(a)はランプの外観図、(b)はランプの内部構造、(c)は(a)のA-A断面図を示す。ランプ1は全体が棒状の発光管11よりなり、その両端に一対の電極12、13が存在する。発光管11は誘電体材料である石英ガラスからなり、内部に放電用ガスとして、クリプトンと塩素が封入されている。両電極に電圧が印加されると、(b)に示すように、発光管11の内部においてプラズマ14が発生して放電柱を形成する。この放電により、封入ガスがエキシマ状態となって波長222nmのUVC光を発生させる。本発明に係る紫外線放射ランプは、誘電体バリア放電を利用した発光を行うもので誘電体バリア放電ランプとも言うし、あるいは、エキシマランプとも言われる。
【0013】
ここで、本実施例では、ランプ1を保持するV字形状の保持台が電極を構成している。このため、発光管11を電極12,電極13上に設置することでランプ構造が形成される。放電プラズマ14は、ランプ1の長手方向に伸びるように発生するが、電極と発光管の接触関係によっては、放電が不安定になりやすい。しかし、本発明は、後述するように、ランプに印加する電圧波形を工夫することで改善している。
【0014】
また、本発明の光源装置を殺菌装置の光源として使用する場合は、いわゆるUVC(200nm~280nm以下)を放射するランプであることが望ましい。特に、臭素とクリプトンを封入した場合は波長208nmに単一波長を有するUVCが放射されるし、塩素とクリプトンを封入した場合は波長222nmに単一波長を有するUVCが放射される。波長200~230nmの光は、人体や動物に照射しても、その細胞核に悪影響を及ぼすことはない。このため、これらの紫外線放射ランプを使うことで、人体への影響を回避しつつ、ウイルスや微生物を不活化できる光源装置を提供できる。また、波長200~230nm以外のUVC光をカットするフィルタを設けるで、人体での影響をより確実に回避できる。ランプ1について、数値例をあげると、発光管11は、定格電力12W、全長40mm、発光管径φ6mmである。
【0015】
図3は、本発明に係る紫外線放射ランプの他の実施形態を示す。(a)はランプの外観図、(b)はランプの内部構造を示す。このランプは、図2に示したランプと比較して、電極構造が異なる。すなわち、電極12、電極13は帯状の薄肉金属片が発光管11を巻き付くように形成されている。各電極には、トランスと電気的に接続される給電線121、131が接続されている。この構造では、電極と発光管の接触状態が部分的に不均一となる場合があり、部分的には電極が発光管表面から離れている状態もありえる。このため、放電が不安定になりやすい。しかし、本発明では、後述するように、ランプに印加する電圧波形を工夫することで改善している。なお、複写機用光源には印刷電極を採用する場合もあるが、本実施形態では小型で安価なランプを目指し、図2図3に示した電極構造を採用している。
【0016】
図4は、本発明に係る光源装置における、ゲート駆動信号、トランスの1次電流波形、トランスの2次電圧波形、トランスの2次電流波形を示す。フライバック回路を構成しているので、スイッチング素子に供給されるゲート駆動信号がオフになると、トランス2の二次巻線には単一ピークの電圧波形が発生して、ランプ電流も流れる。以後、ゲート駆動信号のオンオフタイミングに合わせて、同一の波形が繰り返し周期的に発生する。
【0017】
図5は放電柱の安定性に関する実験結果を示す。すなわち、ランプへの印加電圧のパルス幅と放電柱のふらつきに関する実験の結果を示す。縦軸は放電柱のフラツキ(位置的安定性)を示し、横軸はパルス電圧幅(ナノ秒)を示している。実験は、図2に示した構造のランプを使い、放電柱のフラツキは、放電状態を目視にて10秒程度観察するとともに、観察時間内において、放電が安定し続けたものを「安定」、不安定に変動し続けたものを「不安定」と判断している。なお、パルス電圧幅は、電圧値ゼロにおける幅であり、図4にて「W」で示すものである。また、パルス電圧幅の調整は、トランスの二次巻線のインダクタンスを変化させている。
【0018】
図5に示す実験結果より、パルス電圧幅が1000ns以下である場合に、放電柱は、ほぼ安定していることが確認できた。一方で、1000nsを超える場合には、放電柱は安定したり、不安定であったりである。この結果、本発明のような、放電プラズマが発光管の伸びる方向に形成されるランプ構造において、フライバック方式で電圧を供給する方式においては、パルス電圧幅Wを1000n秒以下に設定することで、放電柱を良好に安定できることがわかる。
【0019】
パルス電圧幅を調整する方法としては、トランスのインダクタンスを調整する方法以外に、スイッチン素子に印加する信号で調整する方法、トランスのコアギャップを調整する方法がある。
【0020】
図6はUV照度値に関する実験結果を示す。すなわち、ランプへの印加電圧のパルス幅と発光効率に関する実験を示す。縦軸は波長200nm~230nmの積分値を示し、横軸はパルス電圧幅(ナノ秒)を示している。なお、図5に示した実験と同様に、パルス電圧幅は、電圧値ゼロにおける幅であり、図4にて「W」で示すものである。また、パルス電圧幅の調整は、トランスの二次巻線のインダクタンスを変化させている。
【0021】
図6に実験結果のグラフを示すが、数値と記載すると、パルス幅837n秒においてUV照度4.5(mW/cm)、パルス幅785n秒においてUV照度4.6(mW/cm)、パルス幅732n秒においてUV照度4.9(mW/cm)、パルス幅695n秒においてUV照度5.0(mW/cm)、パルス幅646n秒においてUV照度5.0(mW/cm)である。
【0022】
この結果、パルス電圧幅が750~800ns付近において、UV照度値が急激に変化することが分かる。従って、パルス電圧幅が800ns以下である場合にUV照度値は4.5(mW/cm)と高く、また、パルス電圧幅が750ns以下である場合にUV照度値は4.8(mW/cm)と高いことが分かる。
【0023】
このように、パルス電圧幅とUV照度値の関係について、パルス電圧幅Wが小さいと電圧の変化は急激になり、発光管を構成する石英ガラス(誘電体材料)のインピーダンスが低下して、石英ガラスでの電位ロスが少なくなるので、その分、効率的に放電空間内に電圧が供給できて効率が上がるものと推測できる。
【0024】
図5図6に示す実験結果は、図2図3に示す放電ランプであって、少なくとも全長100mm以下の場合は多少の設計仕様が異なったとしても、概ね同一の結果を得ることができる。
【0025】
なお、図1に示す光源装置の構成において、ランプ1を複数個、例えば4個、並列に接続することも可能である。この場合は、トランスの2次巻線に発生する電圧波形を複数のランプに等しく供給できる。
【0026】
ここで、本発明はフライバック型回路を採用することを特徴としている。一般に、誘電体バリア放電を利用した放電ランプの点灯装置では、正弦波や矩形パルス波の電圧をランプに供給することが多い。これは、従来から知られている誘電体バリア放電を利用した放電ランプは、一般に、全長は100mm以上と大きいものが多く、また、電極間に安定的に放電を発生させるためには、KVレベルの高い電圧が必要となるからである。その一方で、本発明に係る光源装置は小型化の要請に答えるために、ランプも小型化しており、また、フライバック式の点灯回路を採用している。数値例をあげると定格ランプ電力が数十W、例えば20W以下となる。
【0027】
本発明に係る光源装置は、誘電体バリア放電により発光する紫外線放射ランプと、この紫外線放射ランプの点灯回路とより構成されており、紫外線放射ランプは、少なくともハロゲンガスを含む発光ガスが封入された略棒状の発光管と、この発光管の内部において当該発光管の伸びる方向に放電プラズマが生成されるように配置された一対の電極を有しえちる。そして、点灯回路は、フライバック回路を構成するとともに、ランプの一対の電極に印加されるパルス電圧の幅(W)を1000n秒以下に制御することで、電極間に発生する放電柱を安定させることができる。
【0028】
さらに、本発明に係る光源装置は、一対の電極に印加されるパルス電圧の幅(W)を800n秒以下に制御することで、UV照度値を高めることができる。
【0029】
さらに、本発明に係る光源装置は、紫外線放射ランプがクリプトンと塩素を封入すること波長222nmにピーク値を有するUVC光を放射することができて、また、クリプトンと臭素を封入すること波長207nmにピーク値を有するUVC光を放射することができる。
【0030】
さらに、本発明に係る光源装置は、波長200~230nmの光以外のUVCの放射光をカットするフィルタを設けることで、ウイルスを不活化させて細菌を死滅させるとともに、人体への影響をより確実に回避することでできる。
【符号の説明】
【0031】
1 エキシマランプ
2 トランス
3 入力回路
4 スイッチング素子
5 駆動回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6