(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041630
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】エアサスペンション
(51)【国際特許分類】
F16J 3/02 20060101AFI20220304BHJP
B60G 17/052 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
F16J3/02 B
B60G17/052
F16J3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146953
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】本城 祐太朗
【テーマコード(参考)】
3D301
3J045
【Fターム(参考)】
3D301AA48
3D301AA69
3D301DA14
3D301DB37
3J045AA20
3J045BA02
3J045CA10
3J045CA20
3J045EA10
(57)【要約】
【課題】高荷重に耐えつつ車高調整などが容易であり合理的な構成を有するエアサスペンションを提供する。
【解決手段】第1突出部11を持つ第1部材10と、第1部材10と近接離間し、第2突出部21を持つ第2部材20と、両端に第1開口E1と第2開口E2を持つ第1ダイアフラムD1と、両端に第3開口E3と第4開口E4を持つ第2ダイアフラムD2と、で構成され、第1開口E1を第1部材10に接続し第2開口E2を第2突出部21に接続することで、第1ダイアフラムD1が大気に接しつつ第1部材10の側に第1圧力室R1が形成され、第3開口E3を第1突出部11に接続し第4開口E4を第2突出部21に接続することで、第2ダイアフラムD2が第1圧力室R1に接しつつ第2部材20の側に第1圧力室R1よりも高圧の第2圧力室R2が形成されるエアサスペンションAS。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外面を有する第1突出部を備えた第1部材と、
前記第1部材と近接離間し、円筒状の内面および外面を有する第2突出部を備えた第2部材と、
両端に第1開口と第2開口とを有する筒状部材であり、前記第2開口を内部に折り返して前記第1開口と同じ方向に向けた第1ダイアフラムと、
両端に第3開口と第4開口とを有する筒状部材であり、前記第3開口を内部に折り返して前記第4開口と同じ方向に向けた第2ダイアフラムと、で構成され、
前記第1開口および前記第2開口を前記第1部材に向けた状態で、前記第1開口を前記第1部材に接続し、前記第2開口を前記第2突出部の外面に接続することで、前記第1ダイアフラムの一部が大気に接した状態としつつ前記第1部材の側に第1圧力室を形成すると共に、
前記第3開口および前記第4開口を前記第2部材に向けた状態で、前記第3開口を前記第1突出部の外面に接続し、前記第4開口を前記第2突出部の内面に接続することで、前記第2ダイアフラムの一部が前記第1圧力室に接した状態としつつ前記第2部材の側に前記第1圧力室よりも高圧の第2圧力室を形成してあるエアサスペンション。
【請求項2】
前記第1圧力室と前記第2圧力室とに亘る連通路と、
当該連通路を開通・遮断する切替部と、
少なくとも前記第2圧力室に空気を供給可能なポンプを備えている請求項1に記載のエアサスペンション。
【請求項3】
前記ポンプの吸引開口と前記第1圧力室とを第1連通路で接続し、
前記ポンプの吐出開口と前記第2圧力室とを第2連通路で接続し、
前記第1連通路と前記第2連通路とを接続する第3連通路に、前記切替部を備えている請求項2に記載のエアサスペンション。
【請求項4】
前記切替部を、前記第3連通路を連通する状態と、前記第3連通路を遮断すると共に前記第1圧力室を前記ポンプの吐出開口に連通する状態と、に切り替える第1ソレノイドとし、
前記ポンプの吸引開口と前記第1連通路との間に、前記吸引開口と前記第1連通路とを連通する状態と、前記第1連通路を遮断し前記吸引開口を外部に連通する状態と、に切り替える第2ソレノイドを備えている請求項3に記載のエアサスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を封入するダイアフラムを備え、封入する空気の圧力に応じて高さやばね定数を調整可能なエアサスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このようなエアサスペンションとしては例えば特許文献1(〔0006〕~〔0008〕段落および
図2参照)に示すものがある。この技術は、大型化を招くことなく耐荷重やばね定数を向上したエアサスペンションを得ようとするものであり、空気を封入するダイヤフラムの内部に、コイルばねを併せ持つものである。
【0003】
具体的には、このエアサスペンションは、互いに近接する一方の部材にピストンを備え、他方の部材に固定板を備えて、ピストンと固定板とに亘って筒状のダイヤフラムを取り付けてある。さらに、ダイヤフラムによって形成される空気室の内部にコイルスプリングが内蔵してある。このコイルスプリングのうち、ピストンに接続される部位は、ピストンを包囲するように取り付けられ、かつ、ダイヤフラムがピストンの外周に垂れ下がった状態で形成される垂下部の内部に位置するように取り付けられる。
【0004】
このように構成することで、内蔵ばねは、空気室の容積減少時などにピストンの外周に垂れ下がるデッドスペースとしての垂下部の内部に配置される。その結果、ダイヤフラムの径を増大することなく、内蔵ばねをダイヤフラムの内部に配置し、エアサスペンションの耐荷重やばね定数を向上することができるとのことである。
【0005】
また、内蔵ばねをピストンの外周に垂れ下がる垂下部から立ち上げて、ピストンの上面を超えて空気室内部に配置できるので、内蔵ばねのばね長の設定自由度が向上する。さらに、内蔵ばねをピストンの外周に垂れ下がる垂下部から立ち上げることができるので、ダイヤフラムの内壁近傍に内蔵ばねを配置でき、エアサスペンションの形状が安定するとの記載もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のエアサスペンションは、ダイアフラムによる荷重負担と、コイルスプリングによる荷重負担とを加えることで耐荷重を増大することができる。しかし、仮に、コイルスプリングが補助的に機能し、ダイヤフラムが主となって荷重負担を行うとすると、最大荷重に対処するのはダイヤフラムとなる。その場合、ダイヤフラムが所定の強度を備えている必要があるが、材料の選択や素材の厚みなどを選択するにしても限界がある。また、仮に使用に耐えうる材料が存在するにしてもコストが高まるなど改善すべき点が残る。
【0008】
一方、ダイヤフラムが補助的に機能し、コイルスプリングが主となる場合には、それはエアサスペンションではなくコイルスプリングであるから、エアサスペンションならではのばね特性が得られず、車高の調整なども困難となる。
【0009】
このような実情に鑑み、従来から、高荷重に耐えつつ車高調整などが容易であり合理的な構成を有するエアサスペンションが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(特徴構成)
本発明に係るエアサスペンションは、
円筒状の外面を有する第1突出部を備えた第1部材と、
前記第1部材と近接離間し、円筒状の内面および外面を有する第2突出部を備えた第2部材と、
両端に第1開口と第2開口とを有する筒状部材であり、前記第2開口を内部に折り返して前記第1開口と同じ方向に向けた第1ダイアフラムと、
両端に第3開口と第4開口とを有する筒状部材であり、前記第3開口を内部に折り返して前記第4開口と同じ方向に向けた第2ダイアフラムと、で構成され、
前記第1開口および前記第2開口を前記第1部材に向けた状態で、前記第1開口を前記第1部材に接続し、前記第2開口を前記第2突出部の外面に接続することで、前記第1ダイアフラムの一部が大気に接した状態としつつ前記第1部材の側に第1圧力室を形成すると共に、
前記第3開口および前記第4開口を前記第2部材に向けた状態で、前記第3開口を前記第1突出部の外面に接続し、前記第4開口を前記第2突出部の内面に接続することで、前記第2ダイアフラムの一部が前記第1圧力室に接した状態としつつ前記第2部材の側に前記第1圧力室よりも高圧の第2圧力室を形成してある点に特徴を有する。
【0011】
(効果)
本構成のエアサスペンションは、低圧の第1圧力室を形成する第1ダイアフラムと、これより高圧の第2圧力室を形成する第2ダイアフラムとを備えている。エアサスペンションのダイアフラムは、耐圧性能の関係で内外の圧力差を所定の値に設定する必要がある。
【0012】
この点、本構成であれば、第2ダイアフラムについては第2圧力室の圧力が高圧でも、第2ダイアフラムの反対面は第1圧力室に接するため、第2ダイアフラムの内外の圧力差を少なくすることができる。
【0013】
よって、本構成であれば、同じ素材のダイアフラムを用いながら内部圧力が高く、内部圧力の変動幅の大きなエアサスペンションを構成することができる。よって、例えば重量の大きな車両に適用した場合でも、サスペンション機能の設定範囲が広いエアサスペンションを得ることができる。
【0014】
(特徴構成)
本発明に係るエアサスペンションは、前記第1圧力室と前記第2圧力室とに亘る連通路と、当該連通路を開通・遮断する切替部と、少なくとも前記第2圧力室に空気を供給可能なポンプを備えていると好都合である。
【0015】
(効果)
本構成であれば、ポンプによって空気を第2圧力室に供給して第2圧力室の圧力を高めることができる。その後、ポンプの駆動を停止し、連通路を所定時間だけ連通させることで第2圧力室の空気を第1圧力室に移動させることができ、第1圧力室の圧力を高めることができる。このとき、第1圧力室に流通させる空気量を調節することで第1圧力室と第2圧力室との圧力差を設定することができる。
【0016】
さらに連通路を遮断し、第2圧力室に空気を追加供給することで、第2圧力室の圧力を第1圧力室の圧力よりもさらに高めることができる。
【0017】
本構成であれば、仮にエアサスペンションの空気が減少した場合でも、空気の補充が可能である。また、補充の際には、第1圧力室の内圧と第2圧力室の内圧とをある程度の範囲で調節することができる。よって、ばね定数を所定の範囲で調整することができ、第1部材と第2部材との距離を変更して例えば車高を調節可能なエアサスペンションを得ることができる。
【0018】
(特徴構成)
本発明に係るエアサスペンションにあっては、前記ポンプの吸引開口と前記第1圧力室とを第1連通路で接続し、前記ポンプの吐出開口と前記第2圧力室とを第2連通路で接続し、前記第1連通路と前記第2連通路とを接続する第3連通路に、前記切替部を備えておくことができる。
【0019】
(効果)
本構成であれば、切替部を遮断状態としつつポンプを駆動することで第1圧力室の空気を第2圧力室に移動させることができ、第1圧力室と第2圧力室との圧力差を高めることができる。
【0020】
その後、ポンプを停止し、切替部を開通状態とすることで第2圧力室から第1圧力室に空気が戻るため、双方の圧力室の圧力を近付けることができる。
【0021】
このように、第1圧力室の空気と第2圧力室の空気を互いに流通可能とすることで、エアサスペンション全体のばね定数を変えることができ、第1部材と第2部材との距離を変化させてエアサスペンションの高さを変更することができる。
【0022】
(特徴構成)
本発明に係るエアサスペンションにあっては、前記切替部を、前記第3連通路を連通する状態と、前記第3連通路を遮断すると共に前記第1圧力室を前記ポンプの吐出開口に連通する状態と、に切り替える第1ソレノイドとし、前記ポンプの吸引開口と前記第1連通路との間に、前記吸引開口と前記第1連通路とを連通する状態と、前記第1連通路を遮断し前記吸引開口を外部に連通する状態と、に切り替える第2ソレノイドを備えていると好都合である。
【0023】
(効果)
本構成であれば、第1ソレノイドを、第1圧力室とポンプの吐出開口とを接続する状態とし、第2ソレノイドを、ポンプの吸引開口を外部に連通する状態とすることで、第1圧力室の空気を排出することができる。また、この状態でポンプを稼働させることで第1圧力室や第2圧力室に外部の空気を取り込むことも可能となる。よって、本構成であれば、エアサスペンションのばね定数やサスペンション高さをより広範囲に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係るエアサスペンションを示す説明図
【
図2】第2実施形態に係るエアサスペンションを示す説明図
【
図3】第3実施形態に係るエアサスペンションを示す説明図
【
図4】第4実施形態に係るエアサスペンションを示す説明図
【
図5】第5実施形態に係るエアサスペンションを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
(概要)
本発明に係るエアサスペンションASは、伸縮するダイアフラムを用いて圧力室を形成するものであり、ダイアフラムの取り付け構造を工夫することで、通常のダイアフラム素材を用いながら、高圧下での使用に耐えるものである。以下には、本発明のエアサスペンションASに係る実施形態を順に示す。
【0026】
〔第1実施形態〕
図1には、第1実施形態に係るエアサスペンションASを示す。このエアサスペンションASは、第1ダイアフラムD1と第2ダイアフラムD2を組み合わせ、低圧の第1圧力室R1と、これよりも高圧の第2圧力室R2を組み合わせたものである。
【0027】
具体的には、エアサスペンションASを構成する本体部分として、円筒状の外面を有する第1突出部11を備えた第1部材10と、この第1部材10と近接離間し、円筒状の内面および外面を有する第2突出部21を備えた第2部材20と、を有する。
【0028】
これら第1部材10と第2部材20とに対して第1ダイアフラムD1および第2ダイアフラムD2を取り付ける。第1ダイアフラムD1は、両端に第1開口E1と第2開口E2とを有する筒状部材であり、第2開口E2を内部に折り返して第1開口E1と同じ方向に向けたものである。第2ダイアフラムD2は、両端に第3開口E3と第4開口E4とを有する筒状部材であり、第3開口E3を内部に折り返して第4開口E4と同じ方向に向けたものである。
【0029】
第1ダイアフラムD1については、第1開口E1部および第2開口E2部を第1部材10に向けた状態で、第1開口E1部を第1部材10に接続し、第2開口E2部を第2突出部21の外面に接続する。第1部材10は、例えば平板状の第1基部12に、第1突出部11としての円筒状の第1内側突出部11aが突設してある。第1内側突出部11aは、後述する第2圧力室R2に延出している。また、第1内側突出部11aと同軸心で外方の位置には、第1基部12から突出する第1外側突出部11bが設けてある。第1ダイアフラムD1の第1開口E1は、第1外側突出部11bのうち例えば第1基部12に最も近い側に接続する。一方、第1ダイアフラムD1の第2開口E2は、後述の第2突出部21の先端近傍に接続する。
【0030】
これらの構成により、第1部材10の側に第1圧力室R1が形成される。第1ダイアフラムD1の一部は大気に接した状態となる。第1外側突出部11bは、第1ダイアフラムD1が伸縮方向に対して直行する方向に膨出変形するのを防止する。これにより、第1ダイアフラムD1の伸縮方向に沿った変位量が最大に確保される。
【0031】
第2ダイアフラムD2については、第3開口E3および第4開口E4を第2部材20に向けた状態で、第3開口E3を第1内側突出部11aの外面に接続し、第4開口E4を第2突出部21の内面に接続する。第2部材20は、例えば平板状の第2基部22に、円筒状の第2突出部21が設けてある。第2ダイアフラムD2の第4開口E4は、第2突出部21のうち例えば第2基部22に最も近い側に接続する。一方、第2ダイアフラムD2の第3開口E3は、第1内側突出部11aの先端近傍に接続する。
【0032】
これにより、第2ダイアフラムD2の一部が第1圧力室R1に接した状態となり、第2部材20の側に第2圧力室R2が形成される。この構成により、第2圧力室R2は第1圧力室R1よりも高圧に設定することができる。第2突出部21は、第2ダイアフラムD2が伸縮方向に対して直行する方向に膨出変形するのを防止する。これにより、第2ダイアフラムD2の伸縮方向に沿った変位量が最大に確保される。
【0033】
エアサスペンションASの耐圧性能は、主にダイアフラムの耐久性に左右される。これには、ダイアフラムの両面が接する空間どうしの圧力差が大きく影響する。
図1の例では、
(大気圧 ≦ 第1圧力室R1の内圧P
1 ≦ 第2圧力室R2の内圧P
2)
と設定できる。
【0034】
尚、第1実施形態では、第1圧力室R1と第2圧力室R2とは完全に独立である。そのため、例えば、夫々の圧力室に対しては個別に空気を充填できるように空気注入用のニップルNなどを設けておけばよい。
【0035】
ダイアフラムの耐久性は、何れかの面に作用する圧力の絶対値ではなく、内外面に作用する圧力の差によって決定される。よって、第1ダイアフラムD1の素材と第2ダイアフラムD2の素材とが同じであっても、第2圧力室R2の圧力をより高く設定することができる。このように、本構成であれば、同じ素材のダイアフラムを用いながら内部圧力が高く、内部圧力の変動幅の大きなエアサスペンションASを構成することができる。これにより、サスペンション機能の設定範囲が広く確保でき、重量の大きな車両に対しても適用可能なエアサスペンションASを得ることができる。
【0036】
〔第2実施形態〕
図2には、第2実施形態のエアサスペンションASを示す。ここでは、第1圧力室R1と第2圧力室R2とに亘る連通路Wを設けるとともに、この連通路Wを開通・遮断する切替部Sを備えている。さらに、少なくとも第2圧力室R2に空気を供給可能なポンプpを備えている。
【0037】
連通路Wとしては、例えば耐圧ホースなどを用いて第1圧力室R1と第2圧力室R2とを連通する。さらに、この連通路Wの途中に、オン・オフバルブや、ソレノイドバルブなどを設けて、連通路Wを開通・遮断できる切替部Sを設ける。
図2では、開通状態と遮断状態とに切り替え可能な第1ソレノイドバルブS1(以下、第1ソレノイドS1と称する)を用いた例を示している。
【0038】
さらに、第2圧力室R2にはポンプpを接続する。このポンプpは、必要に応じて第2圧力室R2に高圧空気を注入する。ポンプpの制御は、制御部ECUからの制御信号により動作させる。制御部ECUは、車両の車高を調節したい使用者のマニュアル操作に基づいての動作信号の発信が可能である。また、第2圧力室R2の内圧が予め設定された値を下回った際等にも自動的に動作信号を発することができる。これら制御のために、第1圧力室R1には第1圧力計G1が設けられ、第2圧力室R2には第2圧力計G2が設けられている。
【0039】
本構成であれば、第1ソレノイドS1を遮断状態としつつポンプpを稼働させることで、第2圧力室R2の圧力設定および微調整が可能になる。さらに、ポンプpの駆動を停止したのち、連通路Wを所定時間だけ連通させることで第2圧力室R2の空気を第1圧力室R1に移動させることができ、第1圧力室R1の圧力を高めることができる。第1圧力室R1に流通させる空気量を調節することで第1圧力室R1と第2圧力室R2との圧力差を設定することができる。さらに連通路Wを遮断し、第2圧力室R2に空気を追加供給することで、第2圧力室R2の圧力をさらに高めることができる。
【0040】
本構成であれば、仮にエアサスペンションASの空気が減少した場合でも、空気の補充が可能である。また、補充の際には、第1圧力室R1の内圧と第2圧力室R2の内圧とをある程度の範囲で調節することができる。よって、ばね定数を所定の範囲で調整することができ、第1部材10と第2部材20との距離を変更して例えば車高を調節可能なエアサスペンションASを得ることができる。
【0041】
〔第3実施形態〕
図3には、切替部Sに対してポンプpを並列に設けた例を示す。つまり、切替部Sの上流側と下流側とにポンプpを接続する。これにより、本実施形態では、ポンプpの吸引開口pbと第1圧力室R1とが第1連通路W1で接続され、ポンプpの吐出開口paと第2圧力室R2とが第2連通路W2で接続され、切替部Sが第1連通路W1と第2連通路W2とから分岐した第3連通路W3に置かれることになる。
【0042】
尚、
図3では、第1圧力室R1の第1圧力計G1、および、第2圧力室R2の第2圧力計G2、制御部ECUの図示は省略してある。
【0043】
本構成であれば、切替部Sを遮断状態とし、ポンプpを休止状態とすることで、エアサスペンションASの定常使用状態が得られる。つまり、第2圧力室R2の内圧P2を第1圧力室R1の内圧P1に対して所定の値に設定した定常状態でエアサスペンションASを使用することができる。
【0044】
この状態から例えば、エアサスペンションASの車高を変更したいとき、切替部Sを所定時間だけ連通状態とし、第2圧力室R2の空気を第1圧力室R1に移動させる。
図3に示すように、第1圧力室R1の有効面積が第2圧力室R2の有効面積よりも大きい場合、第2圧力室R2の空気を第1圧力室R1に移動させた場合、第2圧力室R2の高さの減少量が、第1圧力室R1の高さの増大量よりも大きくなり、エアサスペンションASの全体の高さが減少することが多い。よって、この場合は、車高を減少させる調整となる。この調整は、第1圧力室R1の内圧P
1および第2圧力室R2の内圧P
2が等しくなるまで可能である。
【0045】
次に、切替部Sである第1ソレノイドS1を遮断状態とし、ポンプpを駆動させることで、第1圧力室R1の空気を第2圧力室R2に復帰させることができる。これにより、第2圧力室R2の内圧P2が高まり、エアサスペンションASの高さが当初の高さあるいはそれ以上に高くなる。
【0046】
このように、第1圧力室R1の空気と第2圧力室R2の空気を互いに流通可能とすることで、エアサスペンションAS全体のばね定数を変えることができ、第1部材10と第2部材20との距離を変化させてエアサスペンションASの高さを変更することができる。
【0047】
〔第4実施形態〕
図4には、低圧側の第1圧力室R1の空気を積極的に排出できるよう、切替部Sである第1ソレノイドS1に第1圧力室R1の空気を排出するモードを設定し、第1連通路W1に第2ソレノイドS2を加えた例を示す。
【0048】
具体的には、第1ソレノイドS1の選択モードとして、第3連通路W3を遮断するとともに、第1圧力室R1を大気解放するモードを加えた。そのために、第2連通路W2のうちポンプpの吐出開口paの近傍と第1ソレノイドS1とを第4連通路W4で接続した。第1ソレノイドS1は、例えば無通電時には第3連通路W3を遮断するように構成されている。これに合わせて、第1連通路W1におけるポンプpの吸引開口pbの近傍に第2ソレノイドS2を設け、第1連通路W1を連通するモードと、第1連通路W1を遮断するとともにポンプpの吸引開口pbを大気解放するモードとの切り替えを可能にした。第2ソレノイドS2は、例えば無通電時には第1連通路W1が連通するように構成されている。
【0049】
その他には、チェック弁Cを二つ設けた。一つは、第2連通路W2のうち、第3連通路W3との接続部と第4連通路W4との接続部との間に、ポンプpから第2圧力室R2に向けて流通可能に設けた。もう一つは、第4連通路W4に、第1ソレノイドS1からポンプpに向けて流通可能に設けた。
【0050】
尚、
図4では、第1圧力室R1の第1圧力計G1、および、第2圧力室R2の第2圧力計G2、制御部ECUの図示は省略してある。
【0051】
本構成であれば、以下のようなエアサスペンションASの高さ調整およびばね定数の調整が可能である。
図4(a)は、通常使用の状態を示している。ここでは、第1ソレノイドS1によって第3連通路W3を遮断し、第2ソレノイドS2によって第1連通路W1を連通状態とする。この設定であれば、第1圧力室R1と第2圧力室R2とは連通せず、第1圧力室R1の空気も排出されることはない。
【0052】
また、この状態であれば、ポンプpを駆動することで、第1圧力室R1の空気を第2圧力室R2に移動させて、エアサスペンションASの高さを増すことも可能である。
【0053】
図4(b)は、第1ソレノイドS1が連通状態にある。これにより、第2圧力室R2の空気が第1圧力室R1に移動して双方の圧力差が縮小し、エアサスペンションASの高さが減少する。所定の空気量が移動したのち第1ソレノイドS1は再度遮断状態とされる。
【0054】
図4(c)は、第1ソレノイドS1において第3連通路W3を再び遮断状態とし、
図4(b)で第1圧力室R1に移動させた空気をポンプpの稼働により再び第2圧力室R2に戻す状態を示している。これにより、エアサスペンションASが元の高さに復帰する。第1圧力室R1および第2圧力室R2の空気が外部に逃げない限り、
図4(a)と
図4(c)の状態を繰り返すことでエアサスペンションASの高さ調整が可能である。
【0055】
図4(d)は、第1ソレノイドS1が第4連通路W4に接続された状態となり、第2ソレノイドS2がポンプpを大気解放させる状態を示すものである。ポンプpそのものが完全な密封性を有さない場合、この状態で第1圧力室R1の空気が外部に排出される。一方、ポンプが密封性に優れた型式のものである場合には、ポンプを積極的に逆稼働させることで、第1圧力室R1の空気を外部に排出することができる。これにより、エアサスペンションASの車高が大幅に低くなる。また、ばね定数が低下して例えば車両の乗り心地が柔らかいものになる。
【0056】
図4(e)は、
図4(d)の状態のままポンプpを稼働させるものである。ポンプpの稼働によって第2連通路W2および第4連通路W4の圧力が高まる。この圧力は第1圧力室R1の圧力よりも高いから、第4連通路W4については、チェック弁Cが機能して空気の流通は停止する。一方、第2連通路W2からは第2圧力室R2に空気が供給される。エアサスペンションASの高さを大幅に上げたい場合には、この状態で第2圧力室R2に多くの空気を供給し、その後、
図4(b)の状態にして第2圧力室R2の空気を第1圧力室R1に移動させる。このあと更に
図4(e)の状態にして第2圧力室R2に空気を供給すればよい。これにより、エアサスペンションASの全体の高さおよびばね定数を大幅に高めることができる。
【0057】
このように、第1ソレノイドS1および第2ソレノイドS2を構成することで、エアサスペンションASの高さおよびばね定数を大幅に変更することができる。
【0058】
〔実施例〕
表1は、
図2乃至
図4に示すエアサスペンションASにおいて、当初、第1圧力室R1の内圧P
1を第2圧力室R2の内圧P
2よりも小さく設定しておいたものを、両室を連通させて同じ内圧P’としたときの、エアサスペンションASの反力の変化を計算したものである。
【表1】
【0059】
例1と例2とでは、双方の圧力室の体積V1、V2と、有効面積A1、A2とを異ならせている。大きく区別すると、例1では、第1圧力室R1の体積V1が第2圧力室R2の体積V2よりも大きい場合であり、例2は、反対に第2圧力室R2の体積V2を大きく構成した例である。
【0060】
表1の結果からは、例1では、第1圧力室R1と第2圧力室R2とを連通させることで、シリンダ全体が発生させる反力は3(P2A2)から2.92(P2A2)に低下した。これに対して、例2では、1.5(P2A2)から1.63(P2A2)に増大する。尚、計算を簡単にするために第1圧力室R1と第2圧力室R2との連通前後において全体の体積(V1+V2)は一定とした。
【0061】
このように、第1圧力室R1と第2圧力室R2とを連通させる効果は、エアサスペンションASの構成に応じて変化する。よって、取付対象である車両等の使用目的に応じて、エアサスペンションASの構成は適宜設定するのが好ましい。
【0062】
〔その他の実施形態〕
図5に示すように、第3連通路W3のうち第1ソレノイドS1と第2連通路W2との間の位置、および、第4連通路W4にオリフィスOR1,OR2を設けることができる。尚、
図5中には、オリフィスOR3が記載してあるが、先ずはオリフィスOR3がない場合を想定する。オリフィスOR1は、第1圧力室R1と第2圧力室R2との連通速度を低下させる。第4連通路W4に設けたオリフィスOR2は第1圧力室R1の空気の排出速度を低下させる。これら二つのオリフィスOR1,OR2を設けることでエアサスペンションASの高さ調整速度を調整することができる。
【0063】
なお、これら二つのオリフィスOR1,OR2に代えて、第3連通路W3のうち第1ソレノイドS1と第1連通路W1との間の位置にオリフィスOR3を設けると、上記二つのオリフィスOR1,OR2の機能を一度に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のエアサスペンションは、例えば特に積載荷重が大きな車両や、車高の調整幅を大きく確保したい車両に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
11 第1突出部
10 第1部材
20 第2部材
21 第2突出部
AS エアサスペンション
D1 第1ダイアフラム
D2 第2ダイアフラム
E1 第1開口
E2 第2開口
E3 第3開口
E4 第4開口
p ポンプ
pa 吐出開口
pb 吸引開口
R1 第1圧力室
R2 第2圧力室
S 切替部
S1 第1ソレノイド
S2 第2ソレノイド
W 連通路
W1 第1連通路
W2 第2連通路
W3 第3連通路