(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041631
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】固定用部材及びボルト支持構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/00 20060101AFI20220304BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20220304BHJP
【FI】
E04D13/00 K ETD
E04D13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146955
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】391013162
【氏名又は名称】株式会社屋根技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】山中 孝悦
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108KK01
2E108NN07
(57)【要約】
【課題】ボルト付部材の組立てにかかる時間を短縮してコストの増加を抑制させることが可能な固定用部材及びボルト支持構造を提供する。
【解決手段】雄ネジ部が延出しているボルト付部材に使用され、断面形状が単一の押出型材からなる固定用部材10に、平板状の本体プレート11と、本体プレート11を貫通している挿通孔12と、挿通孔12を間にして対称で本体プレート11の一方の面から延出している一対の立壁部13と、一対の立壁部13の夫々の先端から12挿通孔から離隔する方向に、且つ、本体プレート11から離隔する方向に延出している一対の延出壁部14と、一対の延出壁部14の夫々の先端から本体プレート11へ接近し、立壁部13よりも本体プレート11から離れていると共に立壁部13の延長線よりも挿通孔12側へ延出している一対の案内壁部15と、を具備させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ネジ部が延出しているボルト付部材に使用される固定用部材であって、
平板状の本体プレートと、
該本体プレートを貫通している挿通孔と、
該挿通孔を間にして対称に前記本体プレートの一方の面から延出している一対の立壁部と、
一対の該立壁部の夫々の先端から前記挿通孔から離隔する方向に、且つ、前記本体プレートから離隔する方向に延出している一対の延出壁部と、
一対の該延出壁部の夫々の先端から前記本体プレートへ接近し、前記立壁部よりも前記本体プレートから離れていると共に前記立壁部の延長線よりも前記挿通孔側へ延出している一対の案内壁部と
を具備していることを特徴とする固定用部材。
【請求項2】
前記延出壁部は、
前記立壁部の先端から前記本体プレートの一方の面と平行に前記挿通孔から離隔する方向に延出している第一壁部と、
該第一壁部の先端から前記本体プレートから離隔すると共に前記立壁部の延長線へ接近するように斜めに延出している第二壁部と
を有していることを特徴とする請求項1に記載の固定用部材。
【請求項3】
外周面に平行な二面を有する頭部と該頭部から延出している雄ネジ部とを有するボルトを支持している固定用部材を具備しているボルト支持構造であって、
前記固定用部材は、
平板状の本体プレートと、
該本体プレートを貫通し前記雄ネジ部が挿通されている挿通孔と、
該挿通孔を間にして前記頭部における平行な二面と同じ間隔をあけて前記本体プレートの一方の面から前記頭部の厚さよりも短く延出しており、該頭部が間に挿入されている一対の立壁部と、
一対の該立壁部の夫々の先端から前記挿通孔から離隔する方向に、且つ、前記本体プレートから離隔する方向に延出している一対の延出壁部と、
一対の該延出壁部の夫々の先端から前記本体プレートへ接近し、前記頭部の厚さよりも前記本体プレートから離隔していると共に前記立壁部の延長線よりも前記挿通孔側へ延出している一対の案内壁部と
を具備していることを特徴とするボルト支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体プレートから雄ネジ部が延出しているボルト付部材の一部を構成する固定用部材及びボルト付部材におけるボルト支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールのような屋根上設置物の設置構造として、間隔をあけて設けられている一対の載置部を有している架台と、平板状の本体プレートから雄ネジ部が延出しているボルト付部材と、を備え、一対の載置部の下方にボルト付部材の本体プレートを位置させると共に、一対の載置部の間からボルト付部材の雄ネジ部を上方へ突出させ、一対の載置部に載置されている屋根上設置物をボルト付部材の雄ネジ部を使用して架台に取付けるようにしたものを、本願発明者らは提案している(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1の技術では、本体プレートに雌ネジ部(雌ネジ孔)を形成し、そこに雄ネジ部としての六角ボルトを下から螺合させることで、ボルト付部材を組立てているため、ボルト付部材の組立てに時間がかかり、コストが増加する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、ボルト付部材の組立てにかかる時間を短縮してコストの増加を抑制させることが可能な固定用部材及びボルト支持構造の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明にかかる固定用部材は、
「雄ネジ部が延出しているボルト付部材に使用される固定用部材であって、
平板状の本体プレートと、
該本体プレートを貫通している挿通孔と、
該挿通孔を間にして対称に前記本体プレートの一方の面から延出している一対の立壁部と、
一対の該立壁部の夫々の先端から前記挿通孔から離隔する方向に、且つ、前記本体プレートから離隔する方向に延出している一対の延出壁部と、
一対の該延出壁部の夫々の先端から前記本体プレートへ接近し、前記立壁部よりも前記本体プレートから離れていると共に前記立壁部の延長線よりも前記挿通孔側へ延出している一対の案内壁部と
を具備している」ことを特徴とする。
【0007】
本発明の固定用部材は、雄ネジ部が延出しているボルト付部材に組立てる際に、頭部を有するボルトの雄ネジ部を、一対の案内壁部の間を通させた後に本体プレートの挿通孔に挿通させ、ボルトの頭部を一対の案内壁部に当接させる。そして、ボルトの頭部を相対的に本体プレートへ向かって押圧すると、一対の案内壁部に互いが離隔する方向へ力が作用することとなる。この際に、夫々の案内壁部は、一対の立壁部に対して挿通孔から離隔すると共に本体プレートから離隔する方向へ延出している延出壁部を介して、立壁部の先端に接続されていることから、延出壁部により迂回させているため、延出壁部に沿った距離の分だけ、立壁部から案内壁部までの実際の壁部を長くすることが可能となる。
【0008】
ところで、仮に、延出壁部を備えていないとすると、延出壁部の分だけ立壁部から案内壁部までの壁部の長さが短くなるため、延出壁部を備えている場合と比較して、案内壁部までの剛性が相対的に高くなる。これに対して、本構成では、延出壁部を備えていることから案内壁部までの壁部の長さを長くしているため、延出壁部を備えていない場合と比較して、案内壁部までの剛性を相対的に低くすることができる。従って、固定用部材にボルトを支持させる際に、弱い力でボルトの頭部を本体プレート側へ押圧しても、一対の案内壁部が互いに遠ざかる方向へ移動するように延出壁部を弾性変形させることができ、一対の案内壁部を越えるようにボルトの頭部を本体プレート側へ移動させることができる。
【0009】
そして、本体プレートから案内壁部までの距離をボルトの頭部の厚さよりも長くしておくことで、ボルトの頭部が一対の案内壁部を越えて本体プレート側へ移動すると、延出壁部などの弾性力により一対の案内壁部が元の状態に復帰し、ボルトの頭部が抜けることはない。つまり、固定用部材に対してボルトを脱落不能に支持させることができる。
【0010】
このように、本構成によれば、ボルトの頭部を本体プレート側へ押圧するだけで固定用部材に対してボルトを脱落不能に支持させることができるため、固定用部材から雄ネジ部が延出しているボルト付部材の組立てをワンタッチで楽に行うことができ、ボルト付部材の組立てにかかる時間を短縮してコストの増加を抑制させることができる。
【0011】
本発明に係る固定用部材は、上記の構成に加えて、
「前記延出壁部は、
前記立壁部の先端から前記本体プレートの一方の面と平行に前記挿通孔から離隔する方向に延出している第一壁部と、
該第一壁部の先端から前記本体プレートから離隔すると共に前記立壁部の延長線へ接近するように斜めに延出している第二壁部と
を有している」ことを特徴としても良い。
【0012】
本構成は、立壁部と案内壁部との間の延出壁部を、第一壁部と第二壁部とで構成することにより、それらの境で折れ曲がった形態としている。そして、一対の案内壁部にボルトの頭部を当接させて、ボルトの頭部を相対的に本体プレート側へ押圧することで、夫々の案内壁部を介して一対の第二壁部の先端側に互いが離隔する方向へ力を作用させると、第一壁部と第二壁部との境、つまり、延出壁部の折れ曲がっている部位にその力が集中し易くなる。これにより、延出壁部の折れ曲がっている部位を中心にして第二壁部が回転するように変形することとなり、延出壁部を圧縮変形させたり引張変形させたりする場合と比較して、弱い力でも変形させることが可能となり、固定用部材に対してワンタッチで楽にボルトを支持させてボルト付部材に組立てることができる。
【0013】
本発明に係るボルト支持構造は、
「外周面に平行な二面を有する頭部と該頭部から延出している雄ネジ部とを有するボルトを支持している固定用部材を具備しているボルト支持構造であって、
前記固定用部材は、
平板状の本体プレートと、
該本体プレートを貫通し前記雄ネジ部が挿通されている挿通孔と、
該挿通孔を間にして前記頭部における平行な二面と同じ間隔をあけて前記本体プレートの一方の面から前記頭部の厚さよりも短く延出しており、該頭部が間に挿入されている一対の立壁部と、
一対の該立壁部の夫々の先端から前記挿通孔から離隔する方向に、且つ、前記本体プレートから離隔する方向に延出している一対の延出壁部と、
一対の該延出壁部の夫々の先端から前記本体プレートへ接近し、前記頭部の厚さよりも前記本体プレートから離隔していると共に前記立壁部の延長線よりも前記挿通孔側へ延出している一対の案内壁部と
を具備している」ことを特徴とする。
【0014】
本構成によれば、上記と同様の作用効果を奏することができる。加えて、一対の立壁部の間隔を、ボルトの頭部の平行な二面の間隔と同じにしているため、ボルトの頭部を、平行な二面が一対の立壁部と夫々対面するように一対の立壁部の間に位置させることで、ボルトの空回りを阻止することができる。また、案内壁部をボルトの頭部の厚さよりも本体プレートから離隔させているため、本体プレートと案内壁部との間の頭部が抜けることはく、固定用部材に対してボルトを脱落不能に支持させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の効果として、ボルト付部材の組立てにかかる時間を短縮してコストの増加を抑制させることが可能な固定用部材及びボルト支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は本発明の具体的な実施形態である固定用部材の正面図であり、(b)は(a)の固定用部材の斜視図であり、(c)は(b)を上下反転させて示す固定用部材の斜視図である。
【
図2】(a)は固定用部材の平面図であり、(b)は固定用部材の正面図であり、(c)は固定用部材の右側面図であり、(d)は固定用部材の底面図である。
【
図3】(a)は固定用部材にボルトを支持させる前の状態を正面から示す説明図であり、(b)は固定用部材の挿通孔にボルトの雄ネジ部を挿通させて頭部を一対の案内壁部に当接させた状態を示す説明図であり、(c)はボルトの頭部を一対の一対の案内壁部を越えて本体プレート側へ移動させることで固定用部材に支持されてボルト付部材に組立てた状態を示す説明図である。
【
図4】屋根上に取付けられている架台に装着されている固定用部材とボルトとを組立てたボルト付部材と押え金具とを示す分解斜視図である。
【
図5】固定用部材とボルトとを組立てたボルト付部材を使用して屋根上に取付けられている架台に押え金具を介して屋根上設置物を取付けている状態を正面から示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態である固定用部材10、及びボルト支持構造について、
図1乃至
図5を参照して詳細に説明する。本実施形態の固定用部材10は、断面形状が単一の押出型材からなり、詳細は後述するが、頭部2aに平行な二面を有するボルト2を支持させることで、固定用部材10からボルト2の雄ネジ部2bが延出しているボルト付部材1(
図3乃至
図5を参照)に組立てることができるものである。
【0018】
固定用部材10は、平板状の本体プレート11と、本体プレート11を貫通している挿通孔12と、挿通孔12を間にして対称で本体プレート11の一方の面から延出しており押出方向と直交する方向に離隔している一対の立壁部13と、一対の立壁部13の夫々の先端から挿通孔12から離隔する方向に、且つ、本体プレート11から離隔する方向に延出している一対の延出壁部14と、一対の延出壁部14の夫々の先端から本体プレート11へ接近し、立壁部13よりも本体プレート11から離れていると共に立壁部13の延長線よりも挿通孔12側へ延出している一対の案内壁部15と、を具備している。
【0019】
この固定用部材10は、立壁部13、延出壁部14、及び案内壁部15が、同じ厚さに形成されている。なお、
図2では、本体プレート11を破線で示している。
【0020】
本体プレート11は、一対の立壁部13の間の部位において、他の部位よりも厚肉となるように立壁部13と同じ方向へ膨出している厚肉部11aを有している。また、本体プレート11は、厚肉部11aが膨出している面とは反対側の面において、押出方向と直交する方向の両端付近で夫々が窪んでいる凹部11bと、一対の凹部11bの中央で突出している凸部11cと、を有している。厚肉部11a、凹部11b、及び凸部11cは、ともに押出方向に延びている。
【0021】
挿通孔12は、本体プレート11の中央で厚肉部11aの部位を貫通している。挿通孔12は、内径がボルト2の雄ネジ部2bの外径よりも若干大きく、ボルト2の頭部2aよりも小径に形成されている。
【0022】
一対の立壁部13は、厚肉部11aにボルト2の頭部2aが当接している状態で、その頭部2aの厚さよりも短く本体プレート11から突出している(
図5を参照)。一対の立壁部13の間隔は、後述するボルト2の頭部2aの外周面に設けられている平行な二面と同じ間隔である。
【0023】
延出壁部14は、立壁部13の先端から本体プレート11の一方の面と平行に挿通孔12とは反対側へ延出している第一壁部14aと、第一壁部14aの先端から本体プレート11から遠ざかると共に立壁部13の延長線へ接近するように斜めに延出している第二壁部14bと、を有している。更に、本実施形態では、延出壁部14に、第二壁部14bの先端から第一壁部14aと平行に立壁部13の延長線付近まで延出している第三壁部14cを有しており、第三壁部14cの先端から案内壁部15が延出している。
【0024】
延出壁部14において、第一壁部14aと第二壁部14bとは角度θをなしている。角度θは、45度~75度の範囲内である。θをこの範囲内とする理由は、詳細は後述するが、一対の案内壁部15にボルト2の頭部2aを当接させて本体プレート11側へ押圧した時に一対の案内壁部15が互いに遠ざかる方向へ延出壁部14を変形させ易くするためであると共に、延出壁部14における本体プレート11から遠ざかる方向への突出量が大きくなることを抑制するためである。
【0025】
一対の案内壁部15は、その先端から本体プレート11の厚肉部11aまでの距離が、ボルト2の頭部2aの厚さよりも僅かに長くなるように形成されている(
図3(c)及び
図5を参照)。
【0026】
本実施形態の固定用部材10は、上述したように、案内壁部15を、立壁部13から外側の領域へ延出している延出壁部14を介して、立壁部13に接続している。つまり、立壁部13から案内壁部15までの直線距離を必要最小限にしつつ、立壁部13に対して挿通孔12から離隔すると共に本体プレート11から離隔する方向へ延出している延出壁部14により迂回させることで、延出壁部14に沿った距離の分だけ、立壁部13から案内壁部15までの実際の壁部の長さを長くしている。これにより、立壁部13の先端から直接に案内壁部15を延出させた場合と比較して、立壁部13から延出壁部14を介した案内壁部15までの壁部全体の剛性を低くすることができる。
【0027】
本実施形態の固定用部材10は、アルミニウム合金のような金属の押出型材を、所望の長さに切断し、挿通孔12をプレス加工又は切削加工したものである。固定用部材10は、押出方向の長さが30mm~150mm、一対の立壁部13が離隔している方向の長さが20mm~50mm、本体プレート11の面に垂直な方向の長さが15mm~20mm、である。本実施形態では、角度θを60度としている。
【0028】
続いて、上記の固定用部材10を使用したボルト付部材1の組立方法について、主に
図3を参照して説明する。ボルト付部材1は、本体プレート11から雄ネジ部2bが延出しているものであり、固定用部材10にボルト2を支持させることにより組立てられるものである。なお、頭部2aに平行な二面を有するボルト2としては、六角ボルト、四角ボルト、根角ボルト、を例示することができる。ここでは、ボルト2として六角ボルトを図示している。
【0029】
ボルト付部材1への組立ては、まず、固定用部材10の本体プレート11における一対の立壁部13などが延出している面に対して、雄ネジ部2bの先端が対面するようにボルト2を向けた状態にする(
図3(a)を参照)。この状態からボルト2の雄ネジ部2bを、一対の案内壁部15の間を通して本体プレート11の挿通孔12に挿通させ、ボルト2の頭部2aを一対の案内壁部15に当接させる(
図3(b)を参照)。
【0030】
そして、ボルト2の頭部2aを本体プレート11へ向かって押圧すると、一対の案内壁部15同士の間隔が本体プレート11へ向かって狭くなっているため、一対の案内壁部15に対して互いが離隔する方向へ力が作用することとなる。
【0031】
この際に、固定用部材10では、立壁部13と案内壁部15との間の延出壁部14を、第一壁部14aと第二壁部14bとの境で折れ曲がった形態としているため、一対の案内壁部15を介して一対の第二壁部14bの先端側に互いが遠ざかる方向への力が作用すると、第一壁部14aと第二壁部14bとの境、つまり、延出壁部14の折れ曲がっている部位にその力が集中し易くなる。また、固定用部材10では、上述したように、延出壁部14により立壁部13から案内壁部15までの壁部全体の剛性が低くなっている。
【0032】
これにより、延出壁部14の折れ曲がっている部位を中心にして第二壁部14bが回転するように弾性変形し、ボルト2の頭部2aが一対の案内壁部15を越えて本体プレート11側へ移動することとなる。この際に、ボルト2の頭部2aが一対の立壁部13の間に挿入されるように、ボルト2をその頭部2aの平行な二面が一対の立壁部13と夫々対面するように向ける。
【0033】
ボルト2の頭部2aが本体プレート11側へ移動すると、一対の案内壁部15に対する押圧が解除されるため、延出壁部14などの弾性力により一対の案内壁部15が元の状態に復帰する(
図3(c)を参照)。これにより、本発明のボルト支持構造が構築される。
【0034】
この状態では、ボルト2の頭部2aの移動軌跡内に一対の案内壁部15の一部が位置しており、ボルト2の頭部2aが抜けることはなく、固定用部材10に対してボルト2が脱落不能に支持されてボルト付部材1に組立てられた状態となる。また、ボルト付部材1に組立てた状態では、ボルト2の頭部2aの一部が一対の立壁部13の間に挿入されていると共に、頭部2aの平行な二面が一対の立壁部13と夫々対面しており、ボルト2が空回りすることはない。
【0035】
続いて、上記の固定用部材10とボルト2とを組立てたボルト付部材1の使用方法について説明する。ボルト付部材1は、例えば、
図4及び
図5に示すように、屋根構造体3上に取付けられている架台20に太陽電池モジュールのような屋根上設置物4を載置し、押え金具30により屋根上設置物4を架台20へ押圧して取付ける際に使用されるものである。
【0036】
架台20は、平板状の基部21と、基部21から間隔をあけて上方へ平行に延出している一対の立設部22と、一対の立設部22の上端から互いに接近する内方へ延出している一対の載置部23と、一対の載置部23の夫々の途中から下方へ突出している一対の突出部24と、一対の立設部22の夫々の上端から下方の部位で互いに接近する内方へ載置部23と平行に延出している一対の棚部25と、を有している。架台20は、基部21の面と平行で、一対の立設部22が離隔している方向と直交する方向へ、単一の断面形状で延出している。
【0037】
また、架台20は、単一の断面形状で延出している方向の一方の端部付近において、一対の載置部23の夫々の下面から半球状に突出している一対のストッパ26を、更に有している。
【0038】
本実施形態の架台20は、アルミニウム合金のような金属の押出型材を所望の長さに切断したものである。架台20は、その押出方向の長さが100mm~250mm、一対の立設部22が離隔している方向の長さが75mm~100mm、高さが25mm~50mm、である。
【0039】
架台20は、一対のストッパ26が設けられている押出方向の端部側を屋根の軒側へ向けた状態で、防水シート5を間にしてビス6により屋根構造体3に取付けられる。なお、架台20は、屋根の傾斜方向と横方向へ、夫々間隔をあけて複数が取付けられる。
【0040】
押え金具30は、四角形で平板状の基板部31と、基板部31の二辺から下方へ延出している一対の脚板部32と、一方の脚板部32の上端から上方へ延出している腕板部33と、腕板部33の上端から基板部31と平行に外方へ延出している押板部34と、を有している。押え金具30は、基板部31の中央に、ボルト付部材1の雄ネジ部2bが通過可能な挿通孔35が貫通している。
【0041】
本実施形態の押え金具30は、アルミニウム合金のような金属の押出型材を所望の長さに切断したものに、挿通孔35を加工したものである。押え金具30は、その押出方向の長さが60mm~100mmである。
【0042】
ボルト付部材1の使用方法は、まず、ボルト付部材1を、屋根構造体3に取付けられている架台20の棟側に位置させる。この際に、雄ネジ部2bの先端が上方を向くように固定用部材10(ボルト2の頭部2a)を下にした状態で、固定用部材10の押出方向を屋根の傾斜方向と平行に向ける。ボルト付部材1では、固定用部材10を下にしても、ボルト2の頭部2aが一対の案内壁部15の先端に当接し、固定用部材10からボルト2が下方へ抜けることはない。
【0043】
そして、ボルト付部材1を軒側へ移動させて、固定用部材10を、架台20における一対の載置部23と一対の棚部25との間に挿入する。この状態では、ボルト付部材1の本体プレート11が一対の棚部25に載置されていると共に、ボルト付部材1の雄ネジ部2bが、架台20の一対の載置部23の間から上方へ突出している。また、ボルト付部材1における固定用部材10の一対の凹部11b内には、架台20の一対の突出部24が夫々挿入されている。これにより、ボルト付部材1が、一対の突出部24にガイドされ雄ネジ部2bが一対の載置部23の間の中央に位置すると共に、架台20に対して雄ネジ部2bが軸芯周りに回転することはない。
【0044】
なお、架台20に支持されているボルト付部材1が、屋根の傾斜により軒側へスライドしても、一対の載置部23の下面から夫々突出しているストッパ26に固定用部材10の本体プレート11が当接するため、それ以上のスライドが阻止され、架台20からボルト付部材1が軒側へ抜けることはない。
【0045】
ボルト付部材1を架台20に支持させた状態で、一対の載置部23に屋根上設置物4を載置する。ここでは、雄ネジ部2bよりも棟側の部位に載置する。そして、押え金具30を、押板部34が棟側へ延出するように向けた状態で、基板部31の挿通孔35に、ボルト付部材1の雄ネジ部2bを挿通し、押板部34を屋根上設置物4の上面に当接させる。その後、基板部31から上方に突出している雄ネジ部2bに、平座金7及びバネ座金8を挿通した上で、ナット9を螺合し、ナット9を回転させて下方へ移動させる。
【0046】
この際に、ボルト2の頭部2aの平行な二面が、固定用部材10の一対の立壁部13と夫々対面しているため、ナット9を回転させることでボルト2が回転しようとしても、頭部2aの平行な二面が一対の立壁部13に夫々当接し、ボルト2がナット9と一緒に回転することはない。これにより、ボルト2に対してナット9を相対的に回転させることができる。
【0047】
そして、ナット9を回転させて雄ネジ部2bに沿って下方へ移動させると、平座金7及びバネ座金8を介して押え金具30の基板部31の上面に当接する。更にナット9を回転させると、屋根上設置物4の上面に当接している押え金具30の押板部34によってナット9の下方への移動が規制されるため、雄ネジ部2bを介してボルト2が上方へ移動することとなり、ボルト2の頭部2aが固定用部材10の本体プレート11に当接する。その後、一対の棚部25に載置されている本体プレート11が、頭部2aと一緒に上方へ移動して架台20における一対の載置部23に当接する。
【0048】
この状態で、更にナット9を回転させて締め付けると、基板部31を介して押え金具30の押板部34が、屋根上設置物4を架台20(一対の載置部23)へ押圧し、架台20に屋根上設置物4が取付けられた状態となる。ボルト付部材1は、上記のようにして使用される。
【0049】
なお、上記では、架台20として、一対の突出部24を備えているものを示したが、一対の突出部24を備えていないものとしても良い。この場合、本体プレート11に凸部11cが設けられているため、凸部11cを目安にすることで、一対の載置部23の間の中央にボルト2(雄ネジ部2b)を位置させ易い。
【0050】
このように、本実施形態の固定用部材10によれば、ボルト2の頭部2aを本体プレート11側へ押圧するだけで固定用部材10に対してボルト2を脱落不能に支持させることができるため、固定用部材10から雄ネジ部2bが延出しているボルト付部材1の組立てをワンタッチで楽に行うことができ、ボルト付部材1の組立てにかかる時間を短縮してコストの増加を抑制させることができる。
【0051】
また、本実施形態の固定用部材10によれば、押出型材により形成していることから、立壁部13などを切削加工により形成する場合と比較して、容易に形成することができ、ボルト付部材1の製造にかかるコストの増加を抑制させることができる。
【0052】
更に、本実施形態の固定用部材10によれば、立壁部13と案内壁部15との間の延出壁部14を、第一壁部14aと第二壁部14bとの境で折れ曲がった形態としているため、案内壁部15を介して第二壁部14bの先端側に力を作用させると、第一壁部14aと第二壁部14bとの境、つまり、延出壁部14の折れ曲がっている部位にその力を集中させ易い。これにより、延出壁部14の折れ曲がっている部位を中心にして第二壁部14bが回転するように変形することとなり、延出壁部14を圧縮変形させたり引張変形させたりする場合と比較して、弱い力でも変形させることが可能となり、固定用部材10に対してワンタッチで楽にボルト2を支持させることができる。
【0053】
また、本実施形態の固定用部材10によれば、一対の立壁部13の間隔を、ボルト2の頭部2aの平行な二面の間隔と同じにしているため、ボルト2の頭部2aを、平行な二面が一対の立壁部13と夫々対面するように一対の立壁部13の間に位置させることで、ボルト2の空回りを阻止することができる。
【0054】
また、本実施形態の固定用部材10によれば、延出壁部14において、第二壁部14bの先端から第一壁部14aと平行に延出する第三壁部14cを有しているため、第二壁部14bの先端から案内壁部15を延出させるようにした場合と比較して、固定用部材10における本体プレート11から遠ざかる方向への突出量が大きくなることを抑制することができる。
【0055】
更に、本実施形態の固定用部材10によれば、固定用部材10に対してボルト2を脱落不能に支持させることができるため、例えば、予め工場でボルト付部材1に組立てておいても、輸送時や使用時にボルト2が抜けることはなく、現場での作業時間を短縮させることができる。
【0056】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。なお、以下では、構成が同じ部位については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0057】
例えば、上記の実施形態では、固定用部材10を、金属の押出型材により形成したものを示したが、これに限定するものではなく、合成樹脂の押出型材により形成しても良い。
【0058】
また、上記の実施形態では、延出壁部14として、第一壁部14a、第二壁部14b、及び第三壁部14c、で構成したものを示したが、これに限定するものではなく、第二壁部14bの先端から案内壁部15が延出するように、延出壁部14を第一壁部14aと第二壁部14bとで構成しても良い。
【0059】
また、上記の実施形態では、延出壁部14として、折れ曲がった形態のものを示したが、これに限定するものではなく、湾曲した形態のものとしても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 ボルト付部材
2 ボルト
2a 頭部
2b 雄ネジ部
10 固定用部材
11 本体プレート
12 挿通孔
13 立壁部
14 延出壁部
14a 第一壁部
14b 第二壁部
14c 第三壁部
15 案内壁部