(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041664
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、プログラム、及び眼科手術システム
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
A61F9/007 200C
A61F9/007 130F
A61F9/007 130B
A61F9/007 130G
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147006
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】大月 知之
(57)【要約】
【課題】効率よく精度の高い制御を行うことが可能な制御装置、制御方法、プログラム、及び制御システムを提供すること。
【解決手段】上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る制御装置は、取得部と、制御部とを具備する。前記取得部は、手術顕微鏡によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づく、手術に関する状況情報を取得する。前記制御部は、前記状況情報に基づいて、前記手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータを制御する。これにより、効率よく精度の高い制御を行うことが可能となる。また手術の状況を画像認識から認識することにより、危険な状況を予測する精度が高まる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術顕微鏡によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づく、手術に関する状況情報を取得する取得部と、
前記状況情報に基づいて、前記手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータを制御する制御部と
を具備する制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記手術は、白内障手術又は硝子体切除術の少なくとも一方を含む
制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記治療機器は、白内障手術に用いられる治療機器であり、
前記制御パラメータは、超音波の出力に関するパラメータ、術具先端からの吸引に関するパラメータ、及び灌流液の流入量に関するパラメータの少なくとも1つを含む
制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記治療機器は、硝子体切除術に用いられる治療機器であり、
前記制御パラメータは、硝子体切除の速度に関するパラメータ、術具先端からの吸引に関するパラメータ、灌流液の流入量に関するパラメータ、及びレーザの出力に関するパラメータの少なくとも1つを含む
制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記状況情報は、前記手術の段階を含み、
前記段階は、角膜切開、前嚢切開、水晶体核の破砕、前記術具先端からの吸引、硝子体切除、及び眼内レンズの挿入の少なくとも1つを含む
制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の制御装置であって、
前記水晶体核の破砕の段階は、前記水晶体核が所定の量以上が残っている第1の段階、及び前記水晶体核が所定の量以下が残っている第2の段階を含み、
前記制御部は、前記第1の段階の場合は前記超音波の出力に関するパラメータを所定の値まで設定可能に制御し、前記第2の段階の場合は前記超音波の出力に関するパラメータを前記所定の値よりも制限された値まで設定可能に制御する
制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の制御装置であって、さらに、
前記撮影画像に基づいて、前記状況情報を認識する認識部を具備する
制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の制御装置であって、
前記認識部は、前記撮影画像に基づいて、水晶体核、後嚢、網膜、黄斑、視神経乳頭、皮質、及び患部を含む前記患者眼の部位及び前記治療機器を認識し、
前記制御部は、前記認識部により認識された前記部位の位置及び前記治療機器の位置に基づいて、前記制御パラメータを制御する
制御装置。
【請求項9】
請求項7に記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記認識部により認識された前記部位及び前記治療機器に基づいて、前記吸引に関するパラメータを制御する
制御装置。
【請求項10】
請求項7に記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記認識部により前記患者眼の水晶体核と前記治療機器が接触していないと認識された場合、前記吸引に関するパラメータを上げる
制御装置。
【請求項11】
請求項7に記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記術具先端からの吸引の段階の際に前記認識部により前記皮質が認識できない場合、前記吸引に関するパラメータを下げる
制御装置。
【請求項12】
請求項7に記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記後嚢又は前記網膜と前記治療機器との位置が所定の距離以上の場合、前記硝子体切除の速度に関するパラメータの最大値を大きくし、前記後嚢又は前記網膜と前記治療機器との位置が所定の距離以下の場合、前記硝子体切除の速度に関するパラメータの最大値を小さくする
制御装置。
【請求項13】
請求項7に記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記認識部により認識された前記黄斑の位置又は前記視神経乳頭の位置と、前記硝子体切除術に用いられる治療機器から出射されるエイミングビームの位置とに基づいて、前記レーザの出力を制御する
制御装置。
【請求項14】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記治療機器は、前記手術に関するセンサ情報を取得するセンサ部を具備し、
前記制御部は、前記センサ情報に基づいて、前記制御パラメータを制御する
制御装置。
【請求項15】
請求項7に記載の制御装置であって、さらに、
前記手術を実行するユーザに対して、前記状況情報又は前記制御パラメータの少なくとも一方を提示する提示部を具備する
制御装置。
【請求項16】
請求項15に記載の制御装置であって、
前記認識部は、前記撮影画像に基づいて、前記手術に関する危険な状況を認識し、
前記提示部は、前記危険な状況を前記ユーザに提示する
制御装置。
【請求項17】
手術顕微鏡によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づいて、手術に関する状況情報を取得し、
前記状況情報に基づいて、前記手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータを制御する
ことをコンピュータシステムが実行する制御方法。
【請求項18】
手術顕微鏡によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づく、手術に関する状況情報を取得するステップと、
前記状況情報に基づいて、前記手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータを制御するステップと
をコンピュータシステムに実行させるプログラム。
【請求項19】
患者眼を撮影可能な手術顕微鏡と、
前記患者眼の手術に用いられる治療機器と、
前記患者眼に関する撮影画像に基づく、手術に関する状況情報を取得する取得部と、
前記状況情報に基づいて、前記治療機器に関する制御パラメータを制御する制御部と
を有する制御装置と
を具備する眼科手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、眼科医療等に用いられる手術機器に適用可能な制御装置、制御方法、プログラム、及び眼科手術システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の超音波手術装置では、フットスイッチの操作により変化される患者眼の水晶体核を破砕する超音波チップの超音波パワーが所定の値に設定される。また超音波振動の使用時間に基づいて、患者眼の水晶体核の硬さが判定される。判定された水晶体核の硬さに応じて、設定された超音波パワーの値が切り替えられる。これにより、効率よく手術を行うことが図られている(特許文献1の段落[0016][0027]
図6等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
白内障手術等の眼科に関する手術では、速いペースの作業を行う場面と、後嚢等の破損などの細やかな作業が必要となる場面とが存在する。そのため、眼科用の手術機器(治療機器)において、効率よく精度の高い制御を行うことが可能とする技術が求められている。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、効率よく精度の高い制御を行うことが可能な制御装置、制御方法、プログラム、及び眼科手術システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る制御装置は、取得部と、制御部とを具備する。
前記取得部は、手術顕微鏡によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づく、手術に関する状況情報を取得する。
前記制御部は、前記状況情報に基づいて、前記手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータを制御する。
【0007】
この制御装置では、手術顕微鏡によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づく、手術に関する状況情報が取得される。状況情報に基づいて、手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータが制御される。これにより、効率よく精度の高い制御を行うことが可能となる。
【0008】
本技術の一形態に係る制御方法は、コンピュータシステムが実行する制御方法であって、手術顕微鏡によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づく、手術に関する状況情報を取得することを含む。
前記状況情報に基づいて、前記手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータが制御される。
【0009】
本技術の一形態に係るプログラムは、コンピュータシステムに以下のステップを実行させる。
手術顕微鏡によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づく、手術に関する状況情報を取得するステップ。
前記状況情報に基づいて、前記手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータを制御するステップ。
【0010】
本技術の一形態に係る眼科手術システムは、手術顕微鏡と、治療機器と、制御装置とを具備する。
前記手術顕微鏡は、患者眼を撮影可能である。
前記治療機器は、前記患者眼の手術に用いられる。
前記制御装置は、前記患者眼に関する撮影画像に基づく、手術に関する状況情報を取得する取得部と、前記状況情報に基づいて、前記治療機器に関する制御パラメータを制御する制御部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】手術システムの構成例を模式的に示す図である。
【
図2】手術顕微鏡の構成例を示すブロック図である。
【
図3】手術システムの構成例を模式的に示す図である。
【
図4】白内障手術について簡単に説明する図である。
【
図5】手術システムの機能的な構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図6】制御パラメータの基本的な制御例を示すグラフである。
【
図7】各フェイズにおける画像認識及び制御パラメータの制御例を示す模式図である。
【
図9】手術システムの機能的な他の構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図10】各フェイズにおける画像認識及び制御パラメータの制御例を示す模式図である。
【
図11】制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
[手術システムの構成例]
図1は、本技術の第1の実施形態に係る手術システムの構成例を模式的に示す図である。
【0014】
手術システム11は、眼の手術に用いられるシステムである。
図1では、手術システム11は、手術顕微鏡21及び患者用ベッド22を有する。また手術システム11は、図示しない治療機器を含む。
治療機器は、眼科医療に用いられる機器である。本実施形態では、白内障手術、又は硝子体切除に用いられる治療機器が手術システム11に含まれる。これ以外にも、手術に用いられる任意の機器が手術システム11に含まれてもよい。
【0015】
手術顕微鏡21は、対物レンズ31、接眼レンズ32、画像処理装置33、及びモニタ34を有する。
【0016】
対物レンズ31は、手術対象である患者眼を拡大観察することが可能である。
【0017】
接眼レンズ32は、患者眼から反射した光を集光し、患者眼の光学像を結像させる。
【0018】
画像処理装置33は、手術顕微鏡21の動作を制御する。例えば、画像処理装置33は、対物レンズ31を介して撮影された画像の取得、光源の照明や、ズーム倍率の変更等が可能である。
【0019】
モニタ34は、対物レンズ31を介して撮影された画像や患者の脈拍等の身体情報を表示する。
【0020】
ユーザ(例えば、術者)は、接眼レンズ32を覗き、対物レンズ31を介して患者眼を観察し、図示しない治療機器を用いて手術を行うことが可能である。
【0021】
図2は、手術顕微鏡21の構成例を示すブロック図である。
【0022】
図2に示すように、手術顕微鏡21は、対物レンズ31、接眼レンズ32、画像処理装置33、モニタ34、光源61、観察光学系62、正面画像撮影部63、断層画像撮影部64、提示部65、インタフェース部66、及びスピーカ67を有する。
【0023】
光源61は、照明光を射出し、患者眼を照明する。例えば、画像処理装置33により、照明光の光量等が制御される。
【0024】
観察光学系62は、患者眼から反射された光を接眼レンズ32及び正面画像撮影部63へと導く。観察光学系62の構成は限定されず、対物レンズ31やハーフミラー71、図示しないレンズ等の光学素子から構成されてもよい。
例えば、患者眼から反射された光は、対物レンズ31やレンズを介してハーフミラー71に入射される。ハーフミラー71に入射された光の略半分は、ハーフミラー71を透過し、提示部65を介して接眼レンズ32へと入射される。またもう一方の光の略半分は、ハーフミラー71に反射され、正面画像撮影部63へと入射される。
【0025】
正面画像撮影部63は、患者眼を正面から観察した画像である正面画像を撮影する。例えば、正面画像撮影部63は、ビデオマイクロスコープ等の撮影機器である。また正面画像撮影部63は、観察光学系62から入射された光を受光し、光電変換することで正面画像を撮影する。例えば、正面画像は、患者眼を眼軸方向と略一致する方向から撮影した画像である。
撮影された正面画像は、画像処理装置33及び後述する画像取得部81に供給される。
【0026】
断層画像撮影部64は、患者眼の断面の画像である断層画像を撮影する。例えば、断層画像撮影部64は、光干渉断層系(OCT(Optical Coherence Tomography))やシャインプルークカメラである。ここで、断層画像とは、患者眼における眼軸方向と略平行な方向の断面の画像である。
撮影された断層画像は、画像処理装置33及び後述する画像取得部81に供給される。
【0027】
提示部65は、透過型の表示デバイスからなり、接眼レンズ32及び観察光学系62の間に配置される。提示部65は、観察光学系62から入射された光を透過させて接眼レンズ32に入射させる。また提示部65は、画像処理装置33から供給された正面画像及び断層画像を、患者眼の光学像に重畳又は光学像の周辺に表示してもよい。
【0028】
画像処理装置33は、正面画像撮影部63及び断層画像撮影部64から供給された、正面画像及び断層画像に対して、所定の処理が可能である。また画像処理装置33は、インタフェース部66から供給されるユーザの操作情報に基づいて、光源61、正面画像撮影部63、断層画像撮影部64、及び提示部65の制御をする。
【0029】
インタフェース部66は、コントローラ等の操作デバイスである。例えば、インタフェース部66は、ユーザの操作情報を画像処理装置33に供給する。またインタフェース部66は、外部機器との通信が可能な通信部を含んでもよい。
【0030】
図3は、手術システム11の構成例を模式的に示す図である。
図3に示すように、手術システム11は、手術顕微鏡21、制御装置80、及び超音波乳化吸引装置90を有する。手術顕微鏡21、制御装置80、及び超音波乳化吸引装置90は、有線又は無線を介して、通信可能に接続されている。各デバイス間の接続形態は限定されず、例えばWiFi等の無線LAN通信や、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を利用することが可能である。
【0031】
制御装置80は、手術顕微鏡21によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づいて、手術に関する状況情報を認識する。また、制御装置80は、状況情報に基づいて、手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータを制御する。例えば、
図3では、手術顕微鏡21から取得される正面画像及び断層画像に基づいて、状況情報が認識される。すなわち、撮影画像とは、正面画像及び断層画像を含む。
【0032】
状況情報とは、患者眼に対して行われる手術に関する種々の情報である。本実施形態では、状況情報は、手術の段階(フェイズ)を含む。例えば、
図4に示すように、患者眼に白内障手術(超音波乳化吸引)が行われる場合、以下のフェイズに分けられる。
【0033】
角膜切開:
図4の矢印A11に示すように、患者眼101の角膜102がメス等により切開され、創口103が作成されるフェイズ。
前嚢切開:創口103部分から術具が挿入され、水晶体104の前嚢部分が円形状に切開されるフェイズ。
水晶体核の破砕:
図4の矢印A12に示すように、創口103から水晶体104の切開された前嚢部分に術具が挿入され、超音波振動により水晶体104の核の破砕(乳化)が行われる。本実施形態では、水晶体104の核が所定の量以上が残っているフェイズ(第1の段階)と水晶体104の核が所定の量以下が残っているフェイズ(第2の段階)とに分けられる。
術具先端からの吸引:術具によって吸引を行うフェイズ。本実施形態では、患者眼101の廃棄物が術具先端から吸引される。廃棄物とは、例えば、破砕された水晶体104の核、灌流液、及び皮質等の手術中に吸引される患者眼の組織である。また、「術具先端からの吸引」は、「水晶体核の破砕」と同時に行われてもよい。
眼内レンズの挿入:
図4の矢印A13に示すように、水晶体104の内部に眼内レンズ105が挿入される。
【0034】
なお、上記の各フェイズがさらに段階ごとに分けられてもよい。例えば、「水晶体核の破砕」における水晶体核の残量に応じて段階1、段階2、段階3等と設定されてもよい。以下、1つのフェイズにおけるさらに細かい段階を、例えば、水晶体核の破砕1、水晶体核の破砕2と記載する。
なお、手術のフェイズは限定されず、上記以外のフェイズが各々の術者に応じて任意に変更されてもよい。もちろん使用される術具や術式も病症に応じて変更されてもよい。また局所麻酔等のフェイズがあってもよい。
【0035】
制御パラメータは、超音波の出力に関するパラメータ、術具先端からの吸引に関するパラメータ、及び灌流液の流入量に関するパラメータのうち少なくとも一つを含む。
超音波の出力に関するパラメータは、患者眼101の水晶体104の核を破砕するための超音波の出力を示すパラメータである。例えば、水晶体104を素早く破砕したい場合は、超音波の出力が最大値で出力される。
術具先端からの吸引に関するパラメータは、術具によって吸引を行う際の圧力又は吸引量を示すパラメータである。例えば、廃棄物の吸引を行う術具が後嚢を吸わないようにしたい場合、吸引する際の圧力又は吸引量が低く制御される。
灌流液の流入量に関するパラメータは、灌流液を流入させる際の流入量を示すパラメータである。例えば、患者眼101の眼球内圧を所定の値に維持するために、灌流液の量が制御される。また灌流液の流入量に関するパラメータは、灌流液が入れられた容器(ボトル94)の高さも含む。
【0036】
超音波乳化吸引装置(Phacoemulsification machine, Phaco machine)90は、白内障手術に用いられる治療機器であり、任意の構成が設けられる。例えば、
図3では主な構成として、超音波乳化吸引装置90は、表示部91、破砕部92、フットスイッチ93、及びボトル94を有する。
【0037】
表示部91は、白内障手術に関する種々の情報を表示する。例えば、現在の超音波の出力、廃棄物の吸引圧、又は正面画像等が表示される。
【0038】
破砕部92は、患者眼の水晶体の核を破砕するための超音波が出力される術具である。また破砕部92は、廃棄物を吸引するための吸引孔が設けられ、灌流液や乳化した水晶体104の核を吸引することが可能である。
また破砕部92は、灌流液を患者眼に流入させることが可能である。本実施形態では、ボトル94内の灌流液が灌流チューブ95を介し、患者眼に流入される。
【0039】
フットスイッチ93は、ペダルの踏み込み量に応じて、超音波の出力、廃棄物の吸引圧、及び灌流液の流入量の制御を行う。
【0040】
ボトル94は、患者眼に供給するための生理食塩水等の灌流液が入れられた容器である。ボトル94は、灌流液を患者眼に導くための灌流チューブ95が接続される。またボトル94は、高さを変更可能な構成を有し、患者眼の眼球内圧を適度に維持するように高さが調節される。
【0041】
これ以外にも超音波乳化吸引装置90は任意の構成が設けられてもよい。例えば、ボトル94が超音波乳化吸引装置90に内蔵され、灌流液の流入量を制御するためのポンプ等が搭載されてもよい。また例えば、患者眼に灌流液を流入させるための機器が設けられてもよい。
【0042】
図5は、手術システム11の機能的な構成例を模式的に示すブロック図である。
図5では、簡略化のため、手術顕微鏡21の一部のみが図示される。
【0043】
制御装置80は、例えばCPUやGPU、DSP等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ、HDD等の記憶デバイス等、コンピュータの構成に必要なハードウェアを有する(
図11参照)。例えばCPUがROM等に予め記録されている本技術に係るプログラムをRAMにロードして実行することにより、本技術に係る制御方法が実行される。
例えばPC等の任意のコンピュータにより、制御装置80を実現することが可能である。もちろんFPGA、ASIC等のハードウェアが用いられてもよい。
本実施形態では、CPUが所定のプログラムを実行することで、機能ブロックとしての制御部が構成される。もちろん機能ブロックを実現するために、IC(集積回路)等の専用のハードウェアが用いられてもよい。
プログラムは、例えば種々の記録媒体を介して制御装置80にインストールされる。あるいは、インターネット等を介してプログラムのインストールが実行されてもよい。
プログラムが記録される記録媒体の種類等は限定されず、コンピュータが読み取り可能な任意の記録媒体が用いられてよい。例えば、コンピュータが読み取り可能な非一過性の任意の記憶媒体が用いられてよい。
【0044】
図5に示すように、制御装置80は、画像取得部81、認識部82、制御部83、及びGUI(Graphical User Interface)提示部84を有する。
【0045】
画像取得部81は、患者眼の撮影画像を取得する。本実施形態では、画像取得部81は、手術顕微鏡21の正面画像撮影部63及び断層画像撮影部64から、正面画像及び断層画像を取得する。
取得された正面画像及び断層画像は、認識部82、及び超音波乳化吸引装置90の表示部91に出力される。
【0046】
認識部82は、患者眼に関する撮影画像に基づいて、手術に関する状況情報を認識する。本実施形態では、正面画像及び断層画像に基づいて、現在行われている手術のフェイズが認識される。例えば、正面画像内のメスや破砕部等の術具に基づいて(例えば使用されている術具の種類に基づいて)、手術のフェイズが認識される。また例えば、断層画像に基づいて、術具が後嚢や網膜を傷つける可能性がある状況(危険状況)か否かが認識される。
危険状況は、手術に関する危険な状況である。例えば、後嚢を吸引している(後嚢破損の可能性がある)状況が挙げられる。後嚢破損の場合、画像取得部81により取得される撮影画像から認識部82により皮質が認識されない状況が該当する。
【0047】
また本実施形態では、認識部82は、状況情報及び危険状況に関する学習が行われた学習済みモデルに基づいて、撮影画像の状況情報又は危険状況を認識する。具体例は後述する。
なお、状況情報や危険状況を認識する方法は限定されない。例えば、機械学習により撮影画像の解析が行われてもよい。これ以外にも画像認識、セマンティックセグメンテーション、画像信号の解析等が用いられてもよい。
認識された状況情報及び危険状況は、制御部83及びGUI提示部84に出力される。
【0048】
本実施形態では、学習済みモデルは、白内障手術の場合、「術具先端からの吸引」及び「水晶体核の破砕」のフェイズと、該フェイズにおける超音波の出力に関するパラメータ、術具先端からの吸引に関するパラメータ、及び灌流液の流入量に関するパラメータとが紐づけられたデータを学習データとする学習を行って生成される識別機である。
【0049】
なお、学習済みモデルを得るための学習モデルの学習方法は限定されない。例えば、DNN(Deep Neural Network:深層ニューラルネットワーク)等を用いた任意の機械学習アルゴリズムが用いられてもよい。例えばディープラーニング(深層学習)を行うAI(人工知能)等が用いられてもよい。
例えば、上記の認識部により画像認識が行われる。学習済みモデルは、入力された情報に基づいて機械学習を行い、認識結果を出力する。また、認識部は、学習済みモデルの認識結果に基づいて、当該入力された情報の認識を行う。
学習手法には、例えばニューラルネットワークやディープラーニングが用いられる。ニューラルネットワークとは、人間の脳神経回路を模倣したモデルであって、入力層、中間層(隠れ層)、出力層の3種類の層から成る。
ディープラーニングとは、多層構造のニューラルネットワークを用いたモデルであって、各層で特徴的な学習を繰り返し、大量データの中に潜んでいる複雑なパターンを学習することができる。
ディープラーニングは、例えば撮影画像内のオブジェクトを識別する用途として用いられる。例えば、画像や動画の認識に用いられる畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)等が用いられる。
また、このような機械学習を実現するハードウェア構造としては、ニューラルネットワークの概念を組み込まれたニューロチップ/ニューロモーフィック・チップが用いられ得る。
本実施形態では、認識部82に組み込まれた学習済みモデルに基づいて、フェイズにおける適切な制御パラメータが制御部83に出力される。
【0050】
ここで学習済みモデルの具体例を以下に記載する。
【0051】
具体例1:入力データが「撮影画像」、教師データが「水晶体核の破砕の各段階1~5」。
具体例1では、入力された撮影画像の各々に対して、該撮影画像の状況情報が付与される。すなわち、撮影画像の各々に対して状況情報が付与されたデータを学習データとする学習が行われ、学習済みモデルが生成される。例えば、水晶体の核の残量が80%の撮影画像に対して、水晶体核の破砕2のフェイズと情報が付与される。また例えば、水晶体の核の残量が20%の場合、水晶体核の破砕5のフェイズと情報が付与される。すなわち、水晶体の核の残量を参照してフェイズの細かい段階が決定される。また撮影画像に対して、どの段階のフェイズが該当するかは、術者(眼科医)等の眼科に関わる人によりアノテーションされる。なお、水晶体の核の残量に対して、任意のフェイズが設定されてもよい。もちろん5段階に限定されない。
上記の学習済みモデルに基づいて、認識部82は、撮影画像の各フェイズを認識することができる。
なお、具体例1で入力される撮影画像は、患者眼の角膜部のみが撮影された画像でもよい。これにより、学習に不必要な学習データを除くことで、精度を高めることができる。
なお、入力される撮影画像から、角膜部に該当する箇所が切り出されてもよい。
【0052】
具体例2:入力データが「撮影画像」、教師データが「皮質吸引の各段階1~5」。
具体例2では、入力された撮影画像の各々に対して、ユーザにより該撮影画像の状況情報が付与される。例えば、皮質の残量が20%の撮影画像に対して、フェイズが皮質吸引5と情報が付与される。また撮影画像に対して、どの段階のフェイズが該当するかは、術者等の眼科に関わる人によりアノテーションされる。
上記の学習済みモデルに基づいて、認識部82は、撮影画像の各フェイズを認識することができる。
なお、具体例2で入力される撮影画像は、患者眼の角膜部のみが撮影された画像でもよい。
【0053】
具体例3:入力データが「撮影画像」で教師データが「皮質吸引の有無」又は入力データが「撮影画像及び治療機器に搭載されるセンサ(後述するセンサ部96)のセンシング結果」で教師データが「後嚢の吸引の有無」。
具体例3における第一の学習方法では、撮影画像において術具先端に皮質が存在している場合には「皮質吸引有り」、術具先端に皮質が存在していない場合には「皮質吸引無し」という教師データを与え、撮影画像に基づいて皮質吸引の有無を判定するような学習をさせる。認識部82ではこの学習結果をもとに、撮影画像から皮質吸引の有無を判定し、「皮質吸引無し」の判定時にセンサのセンシング結果として吸引量の低下が見られる場合には、(撮影画像からの判定は容易ではないが)術具先端において後嚢が吸引されているものと認識する。
具体例3における第二の学習方法では、入力データとしては「撮影画像及び治療機器に搭載されるセンサ(後述するセンサ部96)のセンシング結果」が与えられ、それぞれの入力データに対して実際に後嚢吸引が有ったか否かが教師データとして与えられる。認識部82ではこの学習結果をもとに「撮影画像及び治療機器に搭載されるセンサ(後述するセンサ部96)のセンシング結果」から直接後嚢吸引の有無を認識する。
なお、この場合、後嚢が吸引されている際の撮影画像及びセンシング結果が入力データとして必要となる。その際に、実際に手術時に後嚢が吸引されている撮影画像が用いられてもよいし、仮想的に後嚢が吸引されている状態が再現された画像が学習に用いられてもよい。
なお、具体例3で入力される撮影画像は、患者眼の角膜部のみが撮影された画像でもよい。
【0054】
制御部83は、状況情報に基づいて、制御パラメータを制御する。本実施形態では、認識部82により認識されたフェイズに応じて、制御パラメータが制御される。
例えば、白内障手術の場合、認識部82による画像認識から、水晶体の核が所定の量以上が残っているフェイズ(第1の段階)と認識される。このフェイズの場合、制御部83は、水晶体の核を素早く除去するために、第1の段階における出力可能な超音波の最大値を例えば超音波乳化吸引装置90の有する最大出力値に設定する。また、水晶体の核が所定の量以下が残っているフェイズでは、後嚢を破損させる危険な状況にならないように、出力可能な超音波の最大値を第1の段階における出力可能な超音波の最大値よりも制限された値(低い値)に設定する。
【0055】
ここで
図6を用いて、制御の基本例を説明する。
図6は、制御パラメータの基本的な制御例を示すグラフである。
図6に示すように、縦軸を制御パラメータの出力、横軸をフットスイッチの踏み込み量を示す。また
図6では、「水晶体核の破砕」のフェイズを例とする。すなわち、縦軸は、超音波の出力を示す。
【0056】
図6Aは、水晶体核の破砕1の場合の制御例を示すグラフである。
図6Aに示すように、ユーザは、フットスイッチ93を最大(100%)まで踏み込むことで、超音波を最大値まで出力することができる。
図6Aでは、水晶体核が十分に残っている段階のため、ユーザがフットスイッチ93を踏み込むことで、超音波の最大値が高い数値、例えば、超音波乳化吸引装置90の有する最大出力値(100%)まで出力することが可能である。もちろん出力される超音波は常に100%ではなく、ユーザの操作(フットスイッチ93の踏み込み量)に応じて、出力される超音波の値は任意に変更される。
【0057】
図6Bは、水晶体核の破砕4の場合の制御例を示すグラフである。
図6Bに示すように、水晶体核の残量が少ない状態のため、超音波の出力の最大値が制御される。例えば、後嚢等を破損しないように、超音波の最大値が超音波乳化吸引装置90の有する最大出力値よりも低い値(例えば、30%)に制御される。
また超音波の出力の最大値が抑えられるため、
図6Aに示す直線(実線)の傾きよりも、
図6Bに示す直線(実線)の傾きが緩やかになる。すなわち、フットスイッチ93の踏み込み量に応じた、超音波の出力の値の変動が小さくなる。これにより、より細かい正確な出力制御が可能となる。
【0058】
なお、制御方法は限定されず、各フェイズにおける制御パラメータの出力の最大値が任意に設定されてもよい。またフットスイッチ93の踏み込み量が制御されてもよい。例えば、フットスイッチ93を最大限に踏み込んだ場合に、踏み込み量が50%に対応した制御パラメータが出力されてもよい。
また超音波乳化吸引装置90の有する最大出力値が制御されていることを示す情報が表示部91に表示されてもよい。例えば、現在の出力可能な超音波の最大値が、超音波乳化吸引装置90の有する最大出力値の30%であることを示す情報が表示部91に表示される。
【0059】
GUI提示部84は、ユーザに手術に関する種々の情報を提示する。本実施形態では、GUI提示部84は、現在の状況情報、制御されている制御パラメータ、及び危険状況をユーザが視認可能なGUIを超音波乳化吸引装置90の表示部91又は手術顕微鏡21のモニタ34に提示する。
【0060】
図5に示すように、超音波乳化吸引装置90は、表示部91、破砕部92、フットスイッチ93、及びボトル94に加え、センサ部96及びボトル調節部97を有する。本実施形態では、制御部83により、破砕部92から出力される超音波の出力、破砕部92の吸引圧又は吸引量、ボトル94の高さ(灌流液の流入圧)等が制御される。
【0061】
センサ部96は、破砕部92に搭載されるセンサデバイスである。例えば、センサ部96は、圧力センサであり、廃棄物を吸引する破砕部92の吸引圧を測定する。センサ部96により測定されたセンシング結果は、制御部83に供給される。またセンサ部96により測定されたセンシング結果が表示部91に表示されてもよい。
【0062】
ボトル調節部97は、ボトル94の高さを調節可能な駆動機構である。例えば、灌流液の流入量を多くする場合、ボトル94の高さが高く調節される。
【0063】
なお、本実施形態において、認識部82は、手術顕微鏡によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づいて、手術に関する状況情報を認識する認識部に相当する。
なお、本実施形態において、制御部83は、状況情報に基づいて、前記手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータを制御する制御部に相当する。
なお、本実施形態において、GUI提示部84は、手術を実行するユーザに対して、状況情報又は制御パラメータの少なくとも一方を提示する提示部に相当する。
なお、本実施形態において、超音波乳化吸引装置90は、白内障手術に用いられる治療機器に相当する。
なお、本実施形態において、手術システム11は、患者眼を撮影可能な手術顕微鏡と、患者眼の手術に用いられる治療機器と、患者眼に関する撮影画像に基づいて、手術に関する状況情報を認識する認識部と、状況情報に基づいて、治療機器に関する制御パラメータを制御する制御部とを有する制御装置とを具備する眼科手術システムに相当する。
【0064】
図7は、各フェイズにおける画像認識及び制御パラメータの制御例を示す模式図である。
【0065】
図7Aは、水晶体核の破砕のフェイズを示す模式図である。
図7Aに示すように、認識部82は、撮影画像内の術具(破砕部92)から現在のフェイズが「水晶体核の破砕」と認識する。
制御部83は、認識部82による認識結果に基づいて、破砕部92に出力される超音波の出力を超音波乳化吸引装置90の有する最大出力値に制御する。
例えば、認識部82による画像認識から患者眼101の水晶体の核の残量が多いと認識された場合、破砕部92から出力される超音波の出力の最大値が超音波乳化吸引装置90の有する最大出力値に制御される。また例えば、認識部82による画像認識から患者眼101の水晶体の核が少ないと認識された場合、すなわち、水晶体の核が所定の量以下が残っているフェイズ(第2の段階)の場合、破砕部92から出力される超音波の出力の最大値が第1の段階における出力可能な超音波の最大値よりも低い値に設定される。
なお、超音波の出力の制限方法は限定されない。例えば、超音波の出力の変動を小さくしてもよい。すなわち、フットスイッチ93の踏み込み量に対して、超音波の出力の変動が小さく制御されてもよい。また制限される超音波の出力の最大値は、機械学習又はユーザにより最適な値に制御されてもよい。
【0066】
図7Bは、術具先端からの吸引のフェイズを示す模式図である。
図7Bに示すように、認識部82は、撮影画像内の術具(例えば、皮質111を吸引する吸引部112)から現在のフェイズが「術具先端からの吸引」と認識する。なお、
図7Bでは、吸引部112により皮質111が吸引されている。
制御部83は、認識部82による認識結果に基づいて、吸引部112の吸引圧又は吸引量を制御する。例えば、皮質111の量が十分に残っている場合、吸引部112の吸引圧又は吸引量の最大値が超音波乳化吸引装置90の有する最大出力値に制御される。
また認識部82による画像認識から皮質111が認識されない場合、制御部83は、後嚢を吸引する可能性があるため、吸引部112の吸引圧又は吸引量を下げる。
なお、認識部82は、センサ部96により測定された吸引部112の吸引圧及び吸引量に基づいて、皮質111が十分に吸引されたか否かを認識してもよい。
【0067】
以上、本実施形態に係る制御装置80は、手術顕微鏡21によって撮影される患者眼101に関する撮影画像に基づいて、手術に関する状況情報が認識される。状況情報に基づいて、白内障手術に用いられる超音波乳化吸引装置90に関する制御パラメータが制御される。これにより、効率よく精度の高い制御を行うことが可能となる。
【0068】
従来、白内障手術では、超音波乳化吸引により水晶体核が除去される。また水晶体核を素早く除去したい場合や、後嚢等を傷つけずに操作したい場合など超音波の出力を細やかに行いたい。しかし、超音波の出力は、フットスイッチの踏み込み加減と一対一に対応している。このため、細やかな制御が難しい。
【0069】
そこで本技術では、画像認識により手術の段階が認識され、段階に応じた制御が実行される。これにより、効率よく精度の高い、状況に応じた細やかな出力制御が可能となる。また手術の状況を画像から機械学習で判定することにより、危険な状況を予測する精度が高まる。
【0070】
<第2の実施形態>
本技術に係る第2の実施形態の制御装置について説明する。これ以降の説明では、上記の実施形態で説明した手術顕微鏡21及び制御装置80等における構成及び作用と同様な部分については、その説明を省略又は簡略化する。
【0071】
上記の実施形態では、手術システム11に超音波乳化吸引装置90が含まれた。これに限定されず、眼の手術に関する種々の治療機器が超音波乳化吸引装置90の代わりに用いられてもよい。以下、硝子体切除に関する具体的な説明を行う。
【0072】
上記の実施形態では、白内障手術におけるフェイズに応じて、制御パラメータの制御が行われた。これに限定されず、硝子体切除におけるフェイズに応じて制御パラメータの制御が実行されてもよい。
硝子体切除の場合、以下のフェイズに分けられる。
眼球切開:硝子体を切除するための術具を挿入可能な穴が患者眼に開けられるフェイズ。典型的には、硝子体を切除するための硝子体カッター、眼球内に光を照射する光ファイバー、及び灌流液を流入する器具を挿入するため、3つの穴があけられる。
術具挿入:開けられた穴に術具が挿入されるフェイズ。
硝子体切除:硝子体カッターにより硝子体が切除されるフェイズ。本実施形態では、後嚢又は網膜と硝子体カッターとの位置が所定の距離以上のフェイズと、後嚢又は網膜と硝子体カッターとの位置が所定の距離以下のフェイズに分けられる。
レーザ照射:レーザプローブにより、網膜裂孔等の病変部等に対してレーザが照射されるフェイズ。
【0073】
上記の実施形態では、制御パラメータは、超音波の出力に関するパラメータ、術具先端からの吸引に関するパラメータ、及び灌流液の流入量に関するパラメータの少なくとも1つが含まれた。これに限定されず、制御パラメータは手術に関する任意のパラメータが含まれてもよい。第2の実施形態では、制御パラメータは、硝子体切除の速度に関するパラメータ、及びレーザの出力に関するパラメータの少なくとも一方を含む。
硝子体切除の速度に関するパラメータは、硝子体カッターの硝子体を切除する際の速度を示すパラメータである。例えば、1秒あたりに硝子体カッターの刃が往復する回数(カットレート)がパラメータとなる。
レーザの出力に関するパラメータは、レーザプローブから出力されるレーザの出力を示すパラメータである。本実施形態では、レーザの出力に関するパラメータの制御は、レーザの強度、及びレーザの出射を禁止することを含む。
【0074】
上記の実施形態では、白内障手術における状況情報及び危険状況に基づいて、制御パラメータが制御された。これに限定されず、硝子体切除における状況情報及び危険状況に基づいて、制御パラメータが制御されてもよい。
例えば、硝子体切除における危険状況は、硝子体切除のためのレーザが黄斑に照射される可能性がある状況が含まれる。
また例えば、硝子体切除の場合、認識部82による画像認識から、後嚢又は網膜と硝子体カッターとの位置が所定の距離以上のフェイズと認識される。このフェイズの場合、制御部83は、硝子体を素早く除去するためにカットレートを高くする。また、後嚢又は網膜と硝子体カッターとの位置が所定の距離以下のフェイズでは、後嚢又は網膜を傷つける可能性があるため、カットレートや術具先端からの吸引に関するパラメータの最大値が小さくなるように制御される。
【0075】
また制御部83は、危険状況に基づいて、制御パラメータを制御する。例えば、認識部82により網膜と硝子体カッターの距離が近い場合、カットレートが小さくなるように制御される。また例えば、黄斑との所定の距離以内にエイミングビームが接近した場合、レーザの照射が禁止される。
【0076】
上記の実施形態では、認識部82により、具体例1~3に示す学習済みモデルに基づいて、各フェイズの認識が行われた。これ以外にも、様々な機械学習が行われてもよい。
ここで学習済みモデルの他の具体例を以下に記載する。
【0077】
具体例4:入力データが「撮影画像」、教師データが「術具先端の位置」。
具体例4では、入力された撮影画像から、術具先端の位置が検出される。すなわち、入力された撮影画像に対して、術具先端の位置の検出結果が学習される。例えば、セグメンテーション等から術具先端の位置が学習される。
上記の学習済みモデルに基づいて、認識部82は、撮影画像の術具先端の位置を認識することができる。
また撮影画像により、術具の位置と、網膜の撮影画像における正面位置及び視差からの深さ情報とから、術具と網膜とまでの距離が推定される。
またフェイズは、一定時間以内の推定された術具と網膜とまでの距離の平均値から設定される。
なお、フェイズにおけるさらに細かい段階が、閾値処理で設定されてもよい。また制御パラメータが、距離の平均値から最大値が決定されてもよい。
【0078】
具体例5:入力データが「撮影画像」、教師データが「術具先端の位置、向き、エイミングビームの位置、又は目の部位」。
具体例5では、入力された撮影画像から、術具先端の位置、向き、エイミングビームの位置、又は目の部位が検出される。例えば、入力された撮影画像の、術具先端を示す点及び該術具先端の向きが分かる範囲、例えば1mmの距離を示す点の2点が学習される。また例えば、セマンティックセグメンテーションにより、エイミングビーム、前眼、後眼、黄斑、又は視神経乳頭等の位置が学習される。
すなわち、上記の学習済みモデルに基づいて、認識部82は、撮影画像から、術具先端の位置、向き、エイミングビームの位置、又は目の部位を認識することができる。
なお、学習に用いられる点の数は限定されず、術具先端を示す1点のみでもよい。
また上記の学習を用いて、制御部83は、以下の2つのモードの制御を行う。第1のモードは、撮影画像からエイミングビームと眼の部位(黄斑や視神経乳頭)とが重なっていることが検出された場合、レーザの出射を禁止するモード。第2のモードは、レーザプローブ等の術具先端から、術具の向きに撮影画像上で一定距離以内に目の部位があることが撮影画像から検出された場合、レーザの出射を禁止するモード。
【0079】
図8は、硝子体切除の様子を示す概略図である。
図8に示すように、図示しない網膜に裂孔115がある患者眼101に対して、術具120及び眼内用照明器125が挿入される。なお、
図8では、灌流液を流入するための管は図示しない。また
図8では、術具120や眼内用照明器125を出し入れする際のガイドとなる筒状のトロッカ130が患者眼101上に配置される。
【0080】
術具120は、硝子体切除の各フェイズに応じたものが使用される。本実施形態では、術具120として、硝子体カッター及びレーザプローブが挿入される場合のフェイズ(「硝子体切除」及び「レーザ照射」)に着目する。もちろん鉗子、バックフラッシュニードル、ILM(internal limiting membrane:内境界膜)鑷子等が挿入されてもよい。
【0081】
眼内用照明器125は、患者眼101の内部を照明する。例えば、眼内用照明器125は、照明光源及び光ファイバーを有する。照明光源は、例えば広い範囲の眼底の観察を必要とする網膜硝子体手術等の患者眼101の内部を照射するための照明光を発する。光ファイバーは、照明光源から出射された照明光を導光し、患者眼101の内部に出射する。
【0082】
図9は、手術システム11の機能的な他の構成例を模式的に示すブロック図である。
図9に示すように、手術システム11は、手術顕微鏡21、制御装置80、及び硝子体切除装置140を有する。
手術顕微鏡21、制御装置80、及び硝子体切除装置140は、有線又は無線を介して、通信可能に接続されている。各デバイス間の接続形態は限定されず、例えばWiFi等の無線LAN通信や、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を利用することが可能である。
【0083】
硝子体切除装置140は、硝子体切除に用いられる治療機器であり、任意の構成が設けられる。例えば、
図8では主な構成として、硝子体切除装置140は、表示部91、センサ部141、硝子体カッター142、レーザプローブ143、及びボトル調節部97を有する。なお、表示部91及びボトル調節部97については、超音波乳化吸引装置90と同じ構成のため説明は省略する。
なお、本実施形態において、硝子体切除装置140は、硝子体切除術に用いられる治療機器に相当する。
【0084】
硝子体カッター142は、患者眼101の硝子体を切除及び吸引が可能である。本実施形態では、制御装置80の制御部83により、硝子体カッター142のカットレートや、吸引圧又は吸引量が制御される。また硝子体カッター142は、センサ部141を搭載し、術具先端から吸引する際の吸引量又は吸引圧を測定する。
例えば、「硝子体切除」のフェイズで、後嚢又は網膜と硝子体カッター142との位置が所定の距離以上の場合、制御部83は、硝子体カッター142のカットレートの最大値となるように硝子体切除の速度に関するパラメータを制御する。また例えば、後嚢又は網膜と硝子体カッター142との位置が所定の距離以下の場合、制御部83は、硝子体カッター142のカットレートの硝子体切除の速度に関するパラメータの最大値を小さくする。
【0085】
レーザプローブ143は、網膜裂孔等の病変部に対してレーザを照射する。例えば、レーザプローブ143は、特定の波長のレーザを網膜に当てることで網膜を凝固させることが可能である。またレーザプローブ143は、レーザが当たる箇所を示すエイミングビームを照射する。ユーザは、エイミングビームの位置からレーザが当たる箇所を撮影画像から確認することができる。
本実施形態では、制御部83により、レーザプローブ143のレーザの出射が制御される。例えば、認識部82によりエイミングビームが黄斑との所定の距離以内に接近したと認識された場合、制御部83によりレーザの出射が禁止される。
【0086】
図10は、各フェイズにおける画像認識及び制御パラメータの制御例を示す模式図である。
【0087】
図10Aは、硝子体切除のフェイズを示す模式図である。
図10Aに示すように、認識部82は、撮影画像内の術具(硝子体カッター142)から現在のフェイズが「硝子体切除」と認識する。
制御部83は、認識部82による認識結果に基づいて、硝子体カッター142のカットレートを制御する。後嚢又は網膜と硝子体カッター142との位置が所定の距離以上の場合、カットレートの最大値が大きくされる。例えば、カットレートの最大値が硝子体切除装置140の有する最大出力値に設定される。
後嚢又は網膜と硝子体カッター142との位置が所定の距離以下の場合、カットレートの最大値を小さくする。例えば、カットレートの最大値が硝子体切除装置140の有する最大出力値よりも低い値に制御される。
なお、カットレートの制御方法は限定されない。例えば、カットレートの変動を小さくしてもよい。また例えば、制限されるカットレートの最大値は、機械学習又はユーザにより最適な値に制御されてもよい。また例えば、「硝子体切除」のフェイズが開始された時間から経過時間に応じて最大値が小さくなるように制御されてもよい。
【0088】
図10Bは、レーザ照射のフェイズを示す模式図である。
図10Bに示すように、画像取得部81により、レーザプローブ143、エイミングビーム145、黄斑151、及び視神経乳頭152が撮像された撮影画像150が取得される。
認識部82は、撮影画像内の術具(レーザプローブ143)から現在のフェイズが「レーザ照射」と認識する。
制御部83は、エイミングビーム145が黄斑151から所定の距離(点線155)以内に入った場合、レーザプローブ143のレーザの出射を禁止する。
エイミングビーム145が視神経乳頭152から所定の距離以内に入った場合にレーザプローブ143のレーザの出射を禁止するようにしてもよい。この場合基準となる点線155は視神経乳頭の周囲に設定されることになる。
またGUI提示部84は、点線155がユーザに視認可能なGUIを表示部91に出力する。エイミングビーム145が点線155の内側に入る前と入った後で点線155の色を変える(例えば緑から赤に変える)ようにしてもよい。これによりユーザは出射の禁止された領域にエイミングビーム145が入ったことを理解することができる。またレーザの出射は禁止せず、点線155の視認可能なGUIの提示のみを行うようにしてもよい。これにより、ユーザが黄斑151や視神経乳頭152にレーザを照射する危険性が抑制される。
【0089】
<その他の実施形態>
本技術は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0090】
上記の実施形態では、状況情報及び危険状況に基づいて、制御パラメータが制御された。これに限定されず、様々な状況に応じて制御パラメータが制御されてもよい。例えば、水晶体の核の除去がある程度進んだ状況とする。この状況に、水晶体の核の欠片と破砕部92とが一定距離内、かつ接触していない状況では、吸引圧又は吸引量を相対的に上げてもよい。また例えば、水晶体の核の欠片と破砕部92とが接触した場合、吸引圧又は吸引量を下げる制御が行われてもよい。
【0091】
上記の実施形態では、状況情報及び危険状況が画像認識により認識された。これに限定されず、任意の方法で状況情報及び危険状況が認識されてもよい。例えば、廃棄物を吸引する際の吸引圧及び吸引量が測定され、センシング結果から手術に関する状況が認識又は推定されてもよい。例えば、後嚢が吸引されている場合、廃棄物の吸引量が減ることから、認識部82により危険状況と認識されてもよい。
【0092】
上記の実施形態では、フェイズ毎に、出力される制御パラメータの最大値が制御された。これに限定されず、例えば、破砕部92又は硝子体カッター142と網膜等の傷つけてはいけない眼の部位との距離に応じて、最大値が制御されてもよい。
【0093】
図11は、制御装置80のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0094】
制御装置80は、CPU161、ROM162、RAM163、入出力インタフェース165、及びこれらを互いに接続するバス164を備える。入出力インタフェース165には、表示部166、入力部167、記憶部168、通信部169、及びドライブ部170等が接続される。
【0095】
表示部166は、例えば液晶、EL等を用いた表示デバイスである。入力部167は、例えばキーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、その他の操作装置である。入力部167がタッチパネルを含む場合、そのタッチパネルは表示部166と一体となり得る。
【0096】
記憶部168は、不揮発性の記憶デバイスであり、例えばHDD、フラッシュメモリ、その他の固体メモリである。ドライブ部170は、例えば光学記録媒体、磁気記録テープ等、リムーバブルの記録媒体171を駆動することが可能なデバイスである。
【0097】
通信部169は、LAN、WAN等に接続可能な、他のデバイスと通信するためのモデム、ルータ、その他の通信機器である。通信部169は、有線及び無線のどちらを利用して通信するものであってもよい。通信部169は、制御装置80とは別体で使用される場合が多い。
本実施形態では、通信部169により、ネットワークを介した他の装置との通信が可能となる。
【0098】
上記のようなハードウェア構成を有する制御装置80による情報処理は、記憶部168またはROM162等に記憶されたソフトウェアと、制御装置80のハードウェア資源との協働により実現される。具体的には、ROM162等に記憶された、ソフトウェアを構成するプログラムをRAM163にロードして実行することにより、本技術に係る制御方法が実現される。
【0099】
プログラムは、例えば記録媒体171を介して制御装置80にインストールされる。あるいは、グローバルネットワーク等を介してプログラムが制御装置80にインストールされてもよい。その他、コンピュータ読み取り可能な非一過性の任意の記憶媒体が用いられてよい。
【0100】
通信端末に搭載されたコンピュータとネットワーク等を介して通信可能な他のコンピュータとが連動することにより本技術に係る制御方法、プログラム、及び眼科手術システムが実行され、本技術に係る制御装置80が構築されてもよい。
【0101】
すなわち本技術に係る制御装置、制御方法、プログラム、及び眼科手術システムは、単体のコンピュータにより構成されたコンピュータシステムのみならず、複数のコンピュータが連動して動作するコンピュータシステムにおいても実行可能である。なお、本開示において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれもシステムである。
【0102】
コンピュータシステムによる本技術に係る制御装置、制御方法、プログラム、及び眼科手術システムの実行は、例えば、状況情報の認識、制御パラメータの制御等が、単体のコンピュータにより実行される場合、及び各処理が異なるコンピュータにより実行される場合の両方を含む。また所定のコンピュータによる各処理の実行は、当該処理の一部又は全部を他のコンピュータに実行させその結果を取得することを含む。
【0103】
すなわち本技術に係る制御装置、制御方法、プログラム、及び眼科手術システムは、1つの機能をネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成にも適用することが可能である。
【0104】
各図面を参照して説明した認識部、制御部等の各構成、通信システムの制御フロー等はあくまで一実施形態であり、本技術の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本技術を実施するための他の任意の構成やアルゴリズム等が採用されてよい。
【0105】
なお、本開示中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。上記の複数の効果の記載は、それらの効果が必ずしも同時に発揮されるということを意味しているのではない。条件等により、少なくとも上記した効果のいずれかが得られることを意味しており、もちろん本開示中に記載されていない効果が発揮される可能性もある。
【0106】
以上説明した各形態の特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。
【0107】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)
手術顕微鏡によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づく、手術に関する状況情報を取得する取得部と、
前記状況情報に基づいて、前記手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータを制御する制御部と
を具備する制御装置。
(2)(1)に記載の制御装置であって、
前記手術は、白内障手術又は硝子体切除術の少なくとも一方を含む
制御装置。
(3)(1)に記載の制御装置であって、
前記治療機器は、白内障手術に用いられる治療機器であり、
前記制御パラメータは、超音波の出力に関するパラメータ、術具先端からの吸引に関するパラメータ、及び灌流液の流入量に関するパラメータの少なくとも1つを含む
制御装置。
(4)(1)に記載の制御装置であって、
前記治療機器は、硝子体切除術に用いられる治療機器であり、
前記制御パラメータは、硝子体切除の速度に関するパラメータ、術具先端からの吸引に関するパラメータ、灌流液の流入量に関するパラメータ、及びレーザの出力に関するパラメータの少なくとも1つを含む
制御装置。
(5)(1)から(4)のうちいずれか1つに記載の制御装置であって、
前記状況情報は、前記手術の段階を含み、
前記段階は、角膜切開、前嚢切開、水晶体核の破砕、前記術具先端からの吸引、硝子体切除、及び眼内レンズの挿入の少なくとも1つを含む
制御装置。
(6)(5)に記載の制御装置であって、
前記水晶体核の破砕の段階は、前記水晶体核が所定の量以上が残っている第1の段階、及び前記水晶体核が所定の量以下が残っている第2の段階を含み、
前記制御部は、前記第1の段階の場合は前記超音波の出力に関するパラメータを所定の値まで設定可能に制御し、前記第2の段階の場合は前記超音波の出力に関するパラメータを前記所定の値よりも制限された値まで設定可能に制御する
制御装置。
(7)(1)から(6)のうちいずれか1つに記載の制御装置であって、さらに、
前記撮影画像に基づいて、前記状況情報を認識する認識部を具備する
制御装置。
(8)(7)に記載の制御装置であって、
前記認識部は、前記撮影画像に基づいて、水晶体核、後嚢、網膜、黄斑、視神経乳頭、皮質、及び患部を含む前記患者眼の部位及び前記治療機器を認識し、
前記制御部は、前記認識部により認識された前記部位の位置及び前記治療機器の位置に基づいて、前記制御パラメータを制御する
制御装置。
(9)(7)又は(8)に記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記認識部により認識された前記部位及び前記治療機器に基づいて、前記吸引に関するパラメータを制御する
制御装置。
(10)(7)から(9)のうちいずれか1つに記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記認識部により前記患者眼の水晶体核と前記治療機器が接触していないと認識された場合、前記吸引に関するパラメータを上げる
制御装置。
(11)(7)から(10)のうちいずれか1つに記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記術具先端からの吸引の段階の際に前記認識部により前記皮質が認識できない場合、前記吸引に関するパラメータを下げる
制御装置。
(12)(7)から(11)のうちいずれか1つに記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記後嚢又は前記網膜と前記治療機器との位置が所定の距離以上の場合、前記硝子体切除の速度に関するパラメータの最大値を大きくし、前記後嚢又は前記網膜と前記治療機器との位置が所定の距離以下の場合、前記硝子体切除の速度に関するパラメータの最大値を小さくする
制御装置。
(13)(7)から(12)のうちいずれか1つに記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記認識部により認識された前記黄斑の位置又は前記視神経乳頭の位置と、前記硝子体切除術に用いられる治療機器から出射されるエイミングビームの位置とに基づいて、前記レーザの出力を制御する
制御装置。
(14)(1)から(13)のうちいずれか1つに記載の制御装置であって、
前記治療機器は、前記手術に関するセンサ情報を取得するセンサ部を具備し、
前記制御部は、前記センサ情報に基づいて、前記制御パラメータを制御する
制御装置。
(15)(7)から(14)のうちいずれか1つに記載の制御装置であって、さらに、
前記手術を実行するユーザに対して、前記状況情報又は前記制御パラメータの少なくとも一方を提示する提示部を具備する
制御装置。
(16)(15)に記載の制御装置であって、
前記認識部は、前記撮影画像に基づいて、前記手術に関する危険な状況を認識し、
前記提示部は、前記危険な状況を前記ユーザに提示する
制御装置。
(17)
手術顕微鏡によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づいて、手術に関する状況情報を取得し、
前記状況情報に基づいて、前記手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータを制御する
ことをコンピュータシステムが実行する制御方法。
(18)
手術顕微鏡によって撮影される患者眼に関する撮影画像に基づく、手術に関する状況情報を取得するステップと、
前記状況情報に基づいて、前記手術に用いられる治療機器に関する制御パラメータを制御するステップと
をコンピュータシステムに実行させるプログラム。
(19)
患者眼を撮影可能な手術顕微鏡と、
前記患者眼の手術に用いられる治療機器と、
前記患者眼に関する撮影画像に基づく、手術に関する状況情報を取得する取得部と、
前記状況情報に基づいて、前記治療機器に関する制御パラメータを制御する制御部と
を有する制御装置と
を具備する眼科手術システム。
【符号の説明】
【0108】
11…手術システム
21…手術顕微鏡
80…制御装置
82…認識部
83…制御部
84…GUI提示部
90…超音波乳化吸引装置
96…センサ部
140…硝子体切除装置