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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041727
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】木造建物の壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 2/42 20060101AFI20220304BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20220304BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
E04C2/42 G
E04B2/56 644H
E04B1/70 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147101
(22)【出願日】2020-09-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】520336447
【氏名又は名称】土屋 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】土屋 宏
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
2E162
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001EA08
2E001FA03
2E001GA12
2E001GA42
2E001HA01
2E001HC01
2E001NA07
2E001NB03
2E001ND12
2E002FA03
2E002FB07
2E002FB16
2E002HA03
2E002MA07
2E162BA05
2E162BB07
2E162BB08
2E162CC01
2E162DA01
2E162FA01
(57)【要約】
【課題】 設置作業を容易且つ精度良く行うことを可能とすると共に、搬送時等にも曲がりやねじれが生じにくい十分な強度を有する下地パネルを用いた壁構造を提供する。
【解決手段】 本発明の一の態様にかかる木造建築の壁構造は、木造建築における柱と土台や梁などとで形成される空間を覆う壁構造であり、下地パネルと、該下地パネルを覆う壁材とを備え、前記下地パネルは、表側下地部と、裏側下地部と、これらの周縁に接合された外枠とを備え、前記表側下地部は複数の表側帯状板を所定の間隔で平行に配されて構成され、前記裏側下地部は複数の裏側帯状板を所定の間隔で平行に配されて構成され、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とが互いに交差する向きで配され、これらの交差部が接合されており、前記外枠は、矩形枠状で、複数の前記表側帯状板と前記裏側帯状板の両端部が接合されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築における柱と土台や梁などとで形成される空間を覆う壁構造であり、
下地パネルと、該下地パネルを覆う壁材と、を備え、
前記下地パネルは、
表側下地部と、裏側下地部と、これらの周縁に接合された外枠とを備え、
前記表側下地部は複数の表側帯状板を所定の間隔で平行に配されて構成され、
前記裏側下地部は複数の裏側帯状板を所定の間隔で平行に配されて構成され、
前記表側帯状板と前記裏側帯状板とが互いに交差する向きで配され、これらの交差部が接合されており、
前記外枠は、矩形枠状で、複数の前記表側帯状板と前記裏側帯状板の両端部が接合されている、
木造建築の壁構造。
【請求項2】
前記複数の表側帯状板が傾斜して平行に配されていて、
前記複数の裏側帯状板が傾斜して平行に配されている、
請求項1記載の木造建築の壁構造。
【請求項3】
前記外枠は、両端部が斜めに切断された形状の複数の枠材を短形枠状に配されて、前記枠材の切断面同士を接合することにより構成されている、
請求項1又は2記載の木造建築の壁構造。
【請求項4】
前記外枠の厚みが、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きく、
前記下地パネルと前記壁材との間に、空間が形成されている、
請求項1乃至3のいずれか1項記載の木造建築の壁構造。
【請求項5】
前記外枠の厚みが、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きく、
前記下地パネルと柱との間に、空間が形成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の木造建築の壁構造。
【請求項6】
前記外枠の厚みが、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みと同じ大きさである、
請求項1乃至3のいずれか1記載の木造建築の壁構造。
【請求項7】
斜めに配置された前記裏側帯状小巾板間の斜めに延設する隙間を介して空気は上昇すると共に、斜めに固定されている前記表側帯状小巾板間の斜めに延設する隙間を蛇行するように斜行して空気が流通する、
請求項6記載の木造建築の壁構造。
【請求項8】
木造建築における柱と土台や梁などとで形成される空間を覆う壁に用いる下地パネルであり、
表側下地部と、裏側下地部と、これらの周縁に接合された外枠とを備え、
前記表側下地部は複数の表側帯状板を所定の間隔をおいて傾斜して平行に配されて構成され、
前記裏側下地部は複数の裏側帯状板を所定の間隔をおいて傾斜して平行に配されて構成され、
前記表側帯状板と前記裏側帯状板とが互いに交差する向きで配され、これらの交差部が接合されており、
前記外枠は、矩形枠状で、複数の前記表側帯状板と前記裏側帯状板の両端部が接合されている、
木造建築の壁に用いる下地パネル。
【請求項9】
前記外枠の厚みが、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きい、
請求項8記載の木造建築の壁に用いる下地パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建物の壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、木造建築物の壁面の仕上げには、壁面に沿って取り付けた下地構成材の表面をモルタルやサイディング、あるいは漆喰や土塗りなどの表面仕上げ材で覆って仕上げる工法が採用されている。
【0003】
かかる方法に用いる下地構成材は、多くの場合、施工現場においてそれぞれの壁の仕上げに対応して構成されており、例えば、木摺り下地、ラス張り下地などの下地や、合金下地などの各種面材を用いた下地材などが従来から用いられていた。
【0004】
かかる壁下地において、前記木摺り下地やラス張り下地は、建築現場において用意された小巾板を柱や間柱に対して、所定の間隔をおいて一枚一枚水平に止め付ける下地処理に多くの手間と時間とを要していた。また、この小巾板が水平の向きに止め付けられるため、この小巾板間にある隙間内の空気の上昇による通気に難があり耐久性が劣ることとなり、形成される壁の壁耐力に限界があった。
【0005】
また、前記合板などの面材下地材を用いて構成される壁下地にあっては、十分な強度は得られるが、その下地構成部における通気に難があり、また、この下地を合板で構成した場合、接着剤層の存在等により透湿抵抗が高く、通湿性を阻害する不具合が認められた。
【0006】
かかる各壁下地における不具合を解消し、十分な強度と通気が得られる壁仕上用下地パネルとして特許文献1には、薄い小巾板を多数の正方形の角孔をあけ、小巾板を上下に斜めに重ね合わせて、接着剤と釘打ち併用で貼り合わせ製作した土壁用小舞代用壁下地板が開示されている。当該小巾板を上下に斜めに重ね合わせた結合で籠の目のようにできた非常に丈夫で且つ壁体の筋交い補強の補助ともなり、建物が構造上強固になるものである。
【0007】
また、特許文献2には、表側下地板と裏側下地板を構成する帯状小巾板の交差部において互いに連通しつつ、大きな隙間の容積を有することで、当該隙間に位置する空気を上下方向及び左右方向に移動させつつスムースに通気させ、またこの隙間に漏水した水分を速やかに流れ落とさせて容易に排除することができる壁仕上用下地構造が開示されている。
【0008】
この公知技術は、表側下地板と裏側下地板を互いに交差するように相反する方向に傾斜させるとともに、該交差部において上記表側下地板と裏側下地板とを接合してなる壁仕上用下地パネルを、建物の外壁面に沿って設けた柱や間柱等の構造躯体に取り付け、且つ取り付けた前記壁仕上用下地パネルの下端部には、基礎との間に介在し、互いに交差する異相方向に傾斜して配置された隙間に通気を流入させる通気水切を設け、該通気水切から流入した通気を、前記壁仕上用下地パネルの隙間に沿って上昇させて排出させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭61-71730号
【特許文献2】特許第3162676号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された下地パネルは、搬送時や持ち運び時に曲がりやねじれが生じるなど、強度や移動が猥雑などの課題があった。また、曲がりやねじれが生じた場合、下地パネルの寸法が変わるなどの課題があった。
【0011】
そこで、このような課題に鑑み、発明者は木造建築の柱や梁など軸組の空間に設置する壁構造において、壁の設置作業を容易且つ精度良く行うことを可能とすると共に、搬送時等にも曲がりやねじれが生じにくい十分な強度を有する下地パネルを用いた壁構造を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一の態様にかかる木造建築の壁構造は、木造建築における柱と土台や梁などとで形成される空間を覆う壁構造であり、下地パネルと、該下地パネルを覆う壁材とを備え、前記下地パネルは、表側下地部と、裏側下地部と、これらの周縁に接合された外枠とを備え、前記表側下地部は複数の表側帯状板を所定の間隔で平行に配されて構成され、前記裏側下地部は複数の裏側帯状板を所定の間隔で平行に配されて構成され、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とが互いに交差する向きで配され、これらの交差部が接合されており、前記外枠は、矩形枠状で、複数の前記表側帯状板と前記裏側帯状板の両端部が接合されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、複数の表側と裏側の帯状板を交差して並列し、かつ、外枠を備える下地パネルとすることで、搬送時等にも曲がりやねじれが生じにくい十分な強度を有するので、搬送時及び設置時に従来よりも容易且つ精度良く行うことが可能となる。また、複数の表側と裏側の帯状板を交差して並列しているため、通気性も確保することができる。
【0014】
また、この壁構造に用いる下地パネルは、予め工場等において、複数の平行に配置された帯状板からなる表側下地部と裏側下地部とが、表側帯状板と裏側帯状板の各交差部において接合されて、パネル化された部材として製作しておくことが可能であり、これを所望の大きさ及び形状に切断加工して用いることも可能である。この場合、手間のかかる作業を要することなく、施工現場において容易かつ迅速に下地パネルの取付け作業を行うことができ、工期を短縮することが可能である。
【0015】
また、この壁構造に用いる下地パネルは、表側下地部を構成する複数の表側帯状板及び裏側下地部を構成する複数の裏側帯状板が、各々所定の間隔をおいて平行に配置され、互いに交差するように相反する方向に配置されるので、各帯状板間に傾斜した隙間が形成される。すなわち、この壁下地の厚さ方向に、該壁下地材の表側帯状板群と裏側帯状板群とが構成する格子目状の孔が貫通状態に構成される。これらによって、当該隙間に位置する空気を上下方向及び左右方向に移動することができ、壁構造全体に良好な通気性をもたらすことが可能になる。また、この隙間に漏水した水分を速やかに流れ落とさせて容易に排除することも可能になる。
【0016】
また、この木造建築の壁構造は、前記複数の表側帯状板が傾斜して平行に配されていて、前記複数の裏側帯状板が傾斜して平行に配されている。この構成によれば、帯状板が傾斜しているため、横と縦の帯状板とする場合に比較して、上下方向に空気が流れる際に、横の帯状板による空気の遮断が起こりづらく、壁内を空気がスムーズに流通可能となる。
【0017】
さらに、複数の表側帯状板と裏側帯状板が、互いに交差接合しながら傾斜してラチス状に配置されることになる。したがって、表側下地部を構成する表側帯状板及び裏側下地部を構成する裏側帯状板は、斜めに設置されて筋交いのように機能し、柱間に取り付けられた下地パネルに、構造用耐力部材としての強度を発揮させることも可能になる。また、表側下地部と裏側下地部の周縁に外枠が接合されていることにより、下地パネルの強度を上げることや、帯状板に使用される木材の経時変化による下地パネルの歪みによる寸法変化を規制され全体として安定した形状を保持することも可能となる。
【0018】
さらに、複数の表側帯状板及び裏側帯状板が等間隔で配置されることにより、垂直方向あるいは水平方向における、下地パネルを留めるために使用する釘やビスの打ち込み間隔を一定にすることが可能である。また、特に各帯状板を、水平方向に対して45度の角度で傾斜させておけば、水平方向及び垂直方向のどちらにおいても下地パネルを留めるための釘やビスの打ち込み間隔を一定にすることが可能になる。
【0019】
また、この木造建築の壁構造は、外枠が、両端部が斜めに切断された形状の複数の枠材を短形枠状に配されて、前記枠材の切断面同士を接合することにより構成されている。この構成により、上下並びに左右のいずれの荷重にも強くなり、下地パネルの強度及び耐久性を向上する。これにより、搬送時等の曲がりやねじれがより生じにくいより強度の高い下地パネルとなる。
【0020】
ここで、本発明のもう一つの目的として、従来よりも通気性を確保して快適な空間を形成することを目的とする。そこで、本発明の一の態様にかかる木造建築の壁構造は、前記外枠の厚みが、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きく、前記下地パネルと前記壁材との間に、空間が形成されていることを特徴とする。
【0021】
従来の下地パネルの場合、下地パネルとモルタル等その他の壁材とが密着した構造となるところ、この構成によれば、外枠の厚みにより、帯状板とその他の壁材との間に空間が形成されるため、従来よりも通気性を確保して快適な室内空間とすることができる。
【0022】
また、この木造建築の壁構造は、前記外枠の厚みが前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きく、前記下地パネルと柱との間に空間が形成されている構成とすることもできる。また、下地パネルと柱との間、及び、下地パネルと壁材との間の双方に空間が形成された構成としてもよい。
【0023】
また、この木造建築の壁構造は、前記外枠の厚みが前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みと同じ大きさである構成とすることもできる。
【0024】
また、この木造建築の壁構造は、斜めに配置された前記裏側帯状小巾板間の斜めに延設する隙間を介して空気は上昇すると共に、斜めに固定されている前記表側帯状小巾板間の斜めに延設する隙間を蛇行するように斜行して空気が流通する。
【0025】
本発明の一の態様にかかる木造建築の壁に用いる下地パネルは、木造建築における柱と土台や梁などとで形成される空間を覆う壁に用いる下地パネルであり、表側下地部と、裏側下地部と、これらの周縁に接合された外枠とを備え、前記表側下地部は複数の表側帯状板を所定の間隔をおいて傾斜して平行に配されて構成され、前記裏側下地部は複数の裏側帯状板を所定の間隔をおいて傾斜して平行に配されて構成され、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とが互いに交差する向きで配され、これらの交差部が接合されており、前記外枠は、矩形枠状で、複数の前記表側帯状板と前記裏側帯状板の両端部が接合されていることを特徴とする。
【0026】
また、この下地パネルは、前記外枠の厚みが前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、木造建築の柱や梁など軸組の空間に設置する壁構造において、壁の設置作業を容易且つ精度良く行うことを可能とすると共に、搬送時等にも曲がりやねじれが生じにくい十分な強度を有する下地パネルを用いた壁構造を提供することができる。また、下地パネルを構成する外枠の厚みを表側帯状板と裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きくすれば、下地パネルと壁材や柱との間に空間を形成でき、通気性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の下地パネルの斜視図である。
図2】本発明の下地パネルの上段の説明図である。
図3】本発明の下地パネルの下段の説明図である。
図4】本発明の下地パネルの正面図である。
図5】本発明の下地パネルを用いた壁構造の構成を示す一部破断斜視図である。
図6】本発明の下地パネルを用いた壁構造の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態にかかる木造建築の壁構造を図面に基づき説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0030】
本実施形態の壁構造に用いる下地パネル1は、建築物の壁仕上用下地材として柱間に取り付けて使用される下地構成材であって、図1に示すように、接合一体化される表側下地板10と裏側下地板11とこれらの周縁に接合された外枠12とを備える。
【0031】
図2に示すように、表側下地板10は、複数の表側帯状小巾板13を所定の隙間15をおいて傾斜して平行に配置することにより構成される。また、図3に示すように、裏側下地板11は、複数の裏側帯状小巾板14を所定の隙間16をおいて傾斜して平行に配置することにより構成される。
【0032】
また、図5に示すように、下地パネル1は、表側下地板10を構成する表側帯状小巾板13と裏側下地板11を構成する裏側帯状小巾板14とを、互いに交差するように相反する方向に傾斜させるよう配置するとともに、各交差部17において表側下地板10と裏側下地板11とを接着剤等で接合一体化してなる。
【0033】
かかる下地パネル1は、工場等において予め製作され、壁面に取り付けるのに適した所望の大きさを有し、かつ所望の強度及び剛性を備えた短形形状のパネル部材として、施工現場まで容易に搬送することが可能である。また、外枠12を設けることにより搬送時に下地パネル1が、散けることや角の欠け、曲がりやねじれを防止することが可能となる。
【0034】
表側下地板10を構成する表側帯状小巾板13と、裏側下地板11を構成する裏側帯状小巾板14は、巾が80~100mmで、厚さが9~12mmの大きさの平坦な短形断面形状を有する、木製の板部材である。公知の各種材料で形成されたものを使用することができ、無垢材や、木質板(合板、集成材等)を使用することを例示する。無垢材として杉や檜などの間伐材を利用すると、低コストに実施できるとともに林業促進にもなる。
【0035】
本実施形態によれば、表側下地板10を構成する複数の表側帯状小巾板13と、裏側下地板11を構成する複数の裏側帯状小巾板14は、35~50mmの間隔15,16をおいて、水平方向に対して45度の角度で傾斜するよう平行に配置されるとともに、表側下地板10を構成する表側帯状小巾板13と裏側下地板11を構成する裏側帯状小巾板14とが、互いに交差するようにして、垂直線に対して対称な異なる方向に相反して傾斜配置される。すなわち、表側帯状小巾板13と裏側帯状小巾板14は各々直角に交差し、45度傾いた格子状に配置されることになる。
【0036】
なお、表側下地板10を構成する表側帯状小巾板13及び前記裏側下地板14を構成する裏側帯状小巾板14は、典型的には、木表を互いに接合面として当該木表相互を交差部17において接着剤による接着等によって一体に接合して当該下地パネル1を構成している。
【0037】
なお、外枠12は、両端部が斜めに切断された形状の複数の枠材を短形枠状に配されて、枠材の切断面同士を接着剤による接着等によって一体に接合することにより構成されている。本実施形態では、一例として両端部が略45度に切断された枠材を用いている。
【0038】
この構成により、上下並びに左右のいずれの荷重にも強くなり、下地パネルの強度及び耐久性を向上する。これにより、搬送時等の曲がりやねじれがより生じにくいより強度の高い下地パネルとなる。
【0039】
そして上述のように構成された本実施形態の下地パネル1によれば、施工現場に運搬されて、壁仕上用の下地構成材として縦長に設置されると、複数の表側帯状小巾板13と裏側帯状小巾板14が、互いに交差接合しながら傾斜してラチス状に配置され筋交いのように機能し、柱間に取り付けられた下地パネル1に、構造用耐力部材としての強度を発揮させることが可能になる。
【0040】
かかる表側帯状小巾板13と裏側小巾板14とが互いの交差部17において接合一体とされている下地パネル1にあっては、当該下地パネル1における表側下地板10を構成する各表側帯状小巾間と、裏側下地板11を構成する各裏側帯状小巾板間に、それぞれ傾斜状の隙間15,16が備えられており、この隙間15,16によって、適度の換気機能をもたらすことが可能になる。
【0041】
また、表側下地板10を構成する表側帯状小巾板13間の隙間15と、裏側下地板11を構成する裏側帯状小巾板14間の隙間16もまた、互いに交差するように相反する方向に傾斜して配置される。また、下地パネル1の厚さ方向に、格子目状の交差部18が貫通状態に備えられことになり、空気を効率良く上昇させつつ下地パネル1の全体の通気を容易かつ効果的に図ることが可能になり、かつ適度の通湿機能を当該壁構造20にもたらすことが可能になる。
【0042】
さらに、複数の帯状小巾板が各々45度傾斜して等間隔で配置されていることにより、下地パネル1を留めるために使用する釘やビスの打ち込み間隔を一定にすることが可能になり、これによって取り付け作業を一層容易かつ精度良く行うことが可能になる。
【0043】
本実施形態に用いられる下地パネル1を使用した壁構造によれば、図5に示すように、壁構造20は、建物の外壁面に沿って縦横に設けた柱や間柱等の躯体21に、上記下地パネル1を釘やビス等を打ち込んで固定し、その表面を覆って防水シート22が取り付けられ、さらにラス23を設置してモルタル24を施工することによって、建築物の外壁の壁構造20が形成されることになる。
【0044】
防水シート22は、建物の外壁用の防水シートとして公知の各種のシート材料を用いることができ、ラス23は、例えばメタルラス、縦線及び横線を格子状に接合したラス等の公知の種々のラス網部材を用いることができる。
【0045】
また、本実施形態では、一例として、図6(a)に示すように下地パネル1と壁材を構成する防水シート22との間に隙間がほとんどない状態で下地パネル1を設置している。このようにして、柱21間に固定された本実施形態に用いられる下地パネル1は、斜めに配置された裏側帯状小巾板14間の斜めに延設する隙間16を介して空気は上昇すると共に、斜めに固定されている表側帯状小巾板13間の斜めに延設する隙間15を蛇行するよう斜行して空気が流通する。
【0046】
また、本実施形態によれば、下地パネル1は、間隔をおいて平行に配置された複数の表側帯状小巾板13と複数の裏側帯状小巾板14とを互いに交差させた状態で接合一体化してなるものであり、表側帯状小巾板13、裏側帯状小巾板14間の隙間部分15,16を経て空気を上昇させる通気層を形成することができるので、壁に水が浸入した場合でも、当該水は通気層を通過する空気によって乾燥させることが可能になり、水が長期間保持されないようにして、下地パネル1にカビが発生することや壁体内部の結露の発生を効果的に防ぐことが可能になる。
【0047】
そして、本実施形態における壁構造20によれば、下地パネル1を用いて形成されているため、容易に施工することができるとともに、通気性や排水性が良好で耐久性に優れ、また構造用耐力部材としての強度を十分に発揮することもできる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。特に、上記した実施形態では、下地パネル1の外枠12の厚みと、表側帯状小巾板13と裏側帯状小巾板14を併せた厚みとが略同寸とし、下地パネル1と壁材との間に隙間がほとんどない状態の例であるが、本発明はこれに限られない。
【0049】
すなわち、図6(b)(c)(d)に示すように、外枠12の厚みが表側帯状小巾板13と裏側帯状小巾板14を併せた厚みよりも大きい構成とし、下地パネル1と壁材や柱との間に隙間を形成する構成とすることができる。このようにすれば、従来よりも通気性を向上した壁構造とすることができる。
【0050】
また、表側下地板と裏側下地板を構成する複数の帯状小巾板は、必ずしも水平方向に対して45度の角度で傾斜させる必要はない。また、下地パネルの平面形状は、柱間の大きさや形状に合わせて適宜設計することができる。さらに、垂直線に対して対称な方向に必ずしも傾斜させる必要はない。
【符号の説明】
【0051】
1 下地パネル
10 表側下地板
11 裏側下地板
12 外枠
13 表側帯状小巾板
14 裏側帯状小巾板
15 表側帯状小巾板間の隙間
16 裏側帯状小巾板間の隙間
17 帯状小巾板の交差部
18 隙間の交差部
20 壁構造
21 柱や間柱
22 防水シート
23 ラス
24 モルタル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築における柱と土台や梁などとで形成される空間を覆う壁構造であり、
下地パネルと、該下地パネルを覆う壁材と、を備え、
前記下地パネルは、
表側下地部と、裏側下地部と、これらの周縁に接合された外枠とを備え、
前記表側下地部は複数の表側帯状板を所定の間隔で平行に配されて構成され、
前記裏側下地部は複数の裏側帯状板を所定の間隔で平行に配されて構成され、
前記表側帯状板と前記裏側帯状板とが互いに交差する向きで配され、これらの交差部が接合されており、
前記外枠は、矩形枠状で、複数の前記表側帯状板と前記裏側帯状板の両端部が接合されていて、
前記外枠の厚みが、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きく、
前記下地パネルと前記壁材との間に、空間が形成されている、
木造建築の壁構造。
【請求項2】
前記複数の表側帯状板が傾斜して平行に配されていて、
前記複数の裏側帯状板が傾斜して平行に配されている、
請求項1記載の木造建築の壁構造。
【請求項3】
前記外枠は、両端部が斜めに切断された形状の複数の枠材を短形枠状に配されて、前記枠材の切断面同士を接合することにより構成されている、
請求項1又は2記載の木造建築の壁構造。
【請求項4】
前記下地パネルと柱との間に、空間が形成されている、
請求項1乃至のいずれか1項記載の木造建築の壁構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項の木造建築の壁構造に用いる下地パネルであり、
前記外枠の厚みが、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きく、
前記木造建築の壁構造に設置した時に、前記壁材との間に空間が形成される、
木造建築の壁構造に用いる下地パネル。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の一の態様にかかる木造建築の壁構造は、木造建築における柱と土台や梁などとで形成される空間を覆う壁構造であり、下地パネルと、該下地パネルを覆う壁材とを備え、前記下地パネルは、表側下地部と、裏側下地部と、これらの周縁に接合された外枠とを備え、前記表側下地部は複数の表側帯状板を所定の間隔で平行に配されて構成され、前記裏側下地部は複数の裏側帯状板を所定の間隔で平行に配されて構成され、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とが互いに交差する向きで配され、これらの交差部が接合されており、前記外枠は、矩形枠状で、複数の前記表側帯状板と前記裏側帯状板の両端部が接合されていて、前記外枠の厚みが、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きく、前記下地パネルと前記壁材との間に、空間が形成されていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
この構成によれば、複数の表側と裏側の帯状板を交差して並列し、かつ、外枠を備える下地パネルとすることで、搬送時等にも曲がりやねじれが生じにくい十分な強度を有するので、搬送時及び設置時に従来よりも容易且つ精度良く行うことが可能となる。また、複数の表側と裏側の帯状板を交差して並列しているため、通気性も確保することができる。また、本発明のもう一つの目的として、従来よりも通気性を確保して快適な空間を形成することを目的とする。そこで、本発明の一の態様にかかる木造建築の壁構造は、前記外枠の厚みが、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きく、前記下地パネルと前記壁材との間に、空間が形成されていることを特徴とする。従来の下地パネルの場合、下地パネルとモルタル等その他の壁材とが密着した構造となるところ、この構成によれば、外枠の厚みにより、帯状板とその他の壁材との間に空間が形成されるため、従来よりも通気性を確保して快適な室内空間とすることができる。下地パネルを構成する外枠の厚みを表側帯状板と裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きくすれば、下地パネルと壁材との間に空間を形成でき、通気性を向上することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
本発明の一の態様にかかる木造建築の壁構造に用いる下地パネルは、前記外枠の厚みが、前記表側帯状板と前記裏側帯状板とを併せた厚みよりも大きく、前記木造建築の壁構造に設置した時に、前記壁材との間に空間が形成されていることを特徴とする。