(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041827
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂フィルム、粘着フィルム、化粧フィルム、化粧用粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20220304BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20220304BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20220304BHJP
C08L 23/20 20060101ALI20220304BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B7/027
C09J7/24
C08L23/20
C08L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016816
(22)【出願日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2020145757
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
(71)【出願人】
【識別番号】503048338
【氏名又は名称】ダイヤプラスフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】川口 祐二
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK07
4F100AK08
4F100AK08A
4F100AK08B
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AL09A
4F100AL09B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA21A
4F100BA21B
4F100EH20
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4F100JK07B
4F100JK08
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4F100JL11
4F100JL11C
4F100JL11E
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002BB05X
4J002BB12X
4J002BB15X
4J002BB17W
4J002BP01X
4J002GF00
4J004AB01
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA01
4J004FA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な加工性、取扱性、耐熱性、用途に応じた優れた外観および印刷層や粘着剤層等との密着性といった、これらの課題を解決したフィルムを提供する。
【解決手段】示差走査熱量測定において70℃以上170℃以下の温度範囲内に少なくとも1つ以上の結晶融解ピークを有し、さらに200℃以上の温度領域に結晶融解ピークを有し、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を0~20質量%含有する表層を有し、且つ、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を20~90質量%含有する層を有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差走査熱量測定において70℃以上170℃以下の温度範囲内に少なくとも1つ以上の結晶融解ピークを有し、さらに200℃以上の温度領域に結晶融解ピークを有し、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を0~20質量%含有する表層を有し、且つ、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を20~90質量%含有する層を有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項2】
引張弾性率が1400MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項3】
示唆走査熱量測定において70℃以上150℃以下の温度範囲内に少なくとも1つ以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂を含む、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項4】
ポリメチルペンテン系樹脂以外の熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂およびスチレン系エラストマーのいずれか1種以上を用いることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン系樹脂、及びオレフィン系エラストマーからなる群から選択されるいずれか1種以上を含む、請求項4に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項6】
以下の条件で熱機械分析を行った際に、80~165℃の範囲内で該フィルムが1500μmの伸度を示すことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
<条件>
試験片サイズ:幅4mm×長さ20mm
チャック間距離:8mm
測定雰囲気:窒素雰囲気下(窒素流量100ml/分)
昇温速度:5℃/分(開始温度:23℃、終了温度:250℃)
荷重:0.3N/mm2
【請求項7】
振動周波数1Hz、温度190℃における貯蔵弾性率E’が1.0×105Pa以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項8】
前記表層の厚みが2.0μm以上であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの、表層側の面に粘着剤層を積層してなる粘着フィルム。
【請求項10】
半導体製造工程用フィルムとして用いられる請求項9に記載の粘着フィルム。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの、表層側の面に印刷層を積層してなる化粧フィルム。
【請求項12】
請求項11に記載の化粧フィルムの印刷層側にさらに粘着剤層を積層してなる化粧用粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の化粧用粘着フィルム(テープ)、化粧シート等の基材に好適に用いられる熱可塑性樹脂フィルム、およびそのフィルムに粘着剤層を積層した粘着フィルム、印刷層を積層した化粧フィルム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の化粧用粘着フィルム(テープ)、化粧シート等には、着色性、加工性、耐傷付き性、耐候性等が優れるポリ塩化ビニル樹脂製のフィルム(以下、「PVC系フィルム」ともいう。)が基材として多用されてきた。
上記PVC系フィルムは、それ自体剛性を有しているが、粘着フィルムとして機能し得るよう、柔軟性付与の目的で可塑剤が添加される。しかしながら、用いる可塑剤によっては、粘着剤との相溶性が悪く、粘着フィルムとした場合に安定性が悪く、可塑剤のブリードアウトが著しくなるという問題がある。また、可塑剤の使用自体に規制が強まる傾向もある。
そこで、PVC系フィルムに代わる材料として、ポリオレフィン系樹脂フィルムが広く用いられてきている。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂フィルムを基材に用いた建築内外装用の化粧フィルム、自動車内外装用のマーキングフィルム等は公知であり、たとえば特許文献1、特許文献2等において、剛性が高く、折り曲げ白化が起きにくい化粧フィルムの技術等が開示されている。
これらの文献に記載されているポリプロピレン、ポリエチレンに代表される一般的なポリオレフィン系樹脂は、融点が200℃を超えることがなく、200℃近傍の高温に耐え得る樹脂としては不向きであり、また、それらを架橋させた樹脂を用いてフィルム化を行うことは極めて困難である。
【0004】
200℃以上に融点を有するポリオレフィン系樹脂としては、ポリメチルペンテン系樹脂があり、その樹脂を用いたフィルムに関する技術もすでに公知であり、用途により用いられていることが確認されている(特許文献3)。
また、ポリメチルペンテン系樹脂とポリプロピレン、ポリエチレンといった一般的なポリオレフィン系樹脂とを混合しフィルム化を行っている技術も存在する(特許文献4)。
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載の技術では、ポリメチルペンテン系樹脂を単独で用いていることから、ポリメチルペンテン系樹脂の融点以下の温度での加工は困難であると推察される。
また、特許文献4に記載の技術では、ポリメチルペンテンを含有する層がスキン層のみであり、さらに用いるポリメチルペンテン系樹脂の含有量が少ないことから、フィルムの200℃近傍における耐熱性を付与するには不十分であると考えられる。
さらに、特許文献3および特許文献4に記載の技術では、印刷層や粘着層の積層される面にポリメチルペンテン系樹脂を含むために、フィルムにそれらの層を積層した場合に、それらの層と積層されるフィルムとの間の密着性に劣るという問題がある。
【0006】
さらに、耐熱性を有するポリオレフィン系樹脂として、ポリアミドがグラフト結合したポリアミドグラフト化ポリオレフィン系樹脂を用いたポリオレフィン系樹脂フィルムの技術も存在する(特許文献5)。
しかしながら、この特許文献5に記載の技術では、ポリオレフィン系樹脂とポリアミドグラフト化ポリオレフィン系樹脂との相溶性が十分ではないためか、異物やスジ状の外観欠陥が見受けられ、前述した半導体工程用途、自動車内外装用途といった外観管理の求められる用途への展開には改善の余地があった。
【0007】
したがって、フィルムの良好な加工性、取扱性、耐熱性、用途に応じた優れた外観および印刷層や粘着剤層等との密着性の付与といった、これらの課題を解決したフィルムの提供には改善の余地が残っているものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-36590号公報
【特許文献2】特開平11-172017号公報
【特許文献3】特開2012-228828号公報
【特許文献4】特許第5816178号公報
【特許文献5】特許第6535508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の熱可塑性樹脂フィルムを用いることで、フィルムの良好な加工性、取扱性、耐熱性、用途に応じた優れた外観および印刷層や粘着剤層等との密着性の付与といった、これらの課題を解決したフィルムを得ることができる。また、該フィルムに粘着剤層や印刷層を積層することで粘着フィルム、化粧フィルムや化粧用粘着フィルムを得ることも可能であり、それらのフィルムを半導体製造工程用、自動車内外装や自動車化粧用途にも好適に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、フィルムの良好な加工性、取扱性、耐熱性、用途に応じた優れた外観および印刷層や粘着剤層等との密着性を有する熱可塑性樹脂フィルムを鋭意検討し、それらを両立し得る熱可塑性樹脂フィルムを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
示差走査熱量測定において70℃以上170℃以下の温度範囲内に少なくとも1つ以上の結晶融解ピークを有し、さらに200℃以上の温度領域に結晶融解ピークを有し、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を0~20質量%含有する表層を有し、且つ、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を20~90質量%含有する層を有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
[2]
引張弾性率が1400MPa以下であることを特徴とする[1]に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[3]
示唆走査熱量測定において70℃以上150℃以下の温度範囲内に少なくとも1つ以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[4]
ポリメチルペンテン系樹脂以外の熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂およびスチレン系エラストマーのいずれか1種以上を用いることを特徴とする[1]~[3]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[5]
前記ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン系樹脂、及びオレフィン系エラストマーからなる群から選択されるいずれか1種以上を含む、[4]に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[6]
以下の条件で熱機械分析を行った際に、80~165℃の範囲内で該フィルムが1500μmの伸度を示すことを特徴とする[1]~[5]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
<条件>
試験片サイズ:幅4mm×長さ20mm
チャック間距離:8mm
測定雰囲気:窒素雰囲気下(窒素流量100ml/分)
昇温速度:5℃/分(開始温度:23℃、終了温度:250℃)
荷重:0.3N/mm2
[7]
振動周波数1Hz、温度190℃における貯蔵弾性率E’が1.0×105Pa以上であることを特徴とする[1]~[6]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[8]
前記表層の厚みが2.0μm以上であることを特徴とする[1]~[7]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[9]
[1]~[8]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの、表層側の面に粘着剤層を積層してなる粘着フィルム。
[10]
半導体製造工程用フィルムとして用いられる[9]に記載の粘着フィルム。
[11]
[1]~[8]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの、表層側の面に印刷層を積層してなる化粧フィルム。
[12]
[11]に記載の化粧フィルムの印刷層側にさらに粘着剤層を積層してなる化粧用粘着フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムを用いることで、フィルムの良好な加工性、取扱性、耐熱性、用途に応じた優れた外観および印刷層や粘着剤層等との密着性を有するフィルムを得ることができる。また、該フィルムに粘着剤層や印刷層を積層することで粘着フィルム、化粧フィルムや化粧用粘着フィルムを得ることも可能であり、それらのフィルムを半導体製造工程用、自動車内外装やその化粧用途にも好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0014】
本発明の1つの実施態様は、示差走査熱量測定において70℃以上170℃以下の温度範囲内に少なくとも1つ以上の結晶融解ピークを有し、さらに200℃以上の温度領域に結晶融解ピークを有し、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を0~20質量%含有する表層を有し、且つ、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を20~90質量%含有する層を有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムである(以下「本発明の熱可塑性樹脂フィルム」ともいう)。
【0015】
<熱可塑性樹脂>
本発明のフィルムを製造するために用いられる樹脂組成物には、熱可塑性樹脂が必須成分として含まれる。樹脂の入手のし易さや柔軟性、取り扱い性、経済性、適度な結晶融解ピークを有すること等の観点から、熱可塑性樹脂成分として主にポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマーが入手のし易さや得られるフィルムへの柔軟性の付与の観点から好ましい。
【0017】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。
中でも入手のし易さや樹脂の取り扱い性、得られるフィルムへの柔軟性の付与の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0018】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体、これらの混合物等が例示できる。
前記プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体としては、プロピレンとエチレンまたは他のα-オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。
前記プロピレンと共重合可能な他の単量体として用いられるα-オレフィンとしては、炭素原子数が4~12のものが好ましく、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。
これらのなかでも、耐熱性の制御や入手のしやすさの観点から、ランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)および/もしくは単独重合体(ホモポリプロピレン)を用いることが好ましい。
【0019】
オレフィン系エラストマーとは、ポリオレフィン系樹脂とゴム成分とを含んでなる軟質樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂にゴム成分が分散しているものでもよいし、互いが共重合されているものでもよい。
オレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー、エチレン-スチレン共重合体エラストマー、エチレン-ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
【0020】
前述したポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等はそれらを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。得られるフィルムの柔軟性やフィルムに加工する際の製膜性の観点から、2種以上を併用することが好ましい。
また、後述するポリメチルペンテン系樹脂との相溶性の観点から、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマーのいずれかを用いることが好ましく、それらを単独で用いてもよいし、2種を併用してもよい。
【0021】
前述したポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレイトは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であれば、得られるフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であれば、得られるフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分である。
【0022】
ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂の結晶融解ピークは、示差走査熱量測定により測定した値として、70℃以上170℃以下の範囲内にあることが好ましい。70℃以上170℃以下の範囲に結晶融解ピークを有することで、得られるフィルムの200℃以下の温度での加工性を良好とすることが可能となる。より好ましくは72℃以上168℃以下、さらに好ましくは75℃以上165℃以下の範囲内である。また、70℃以上150℃以下の範囲に結晶融解ピークを有する材料を用いることにより、フィルムの200℃以下の温度での加工性をさらに向上させることが可能となる。
ここで、示差走査熱量測定の条件としては、通常、昇温速度10℃/分で25℃から250℃まで昇温した後、冷却速度10℃/分で25℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温するものである。
【0023】
ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂の強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が100~2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が100~2000MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。
より好ましくは150~1900MPaの範囲内、さらに好ましくは200~1800MPaの範囲内である。
【0024】
ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂の含有量としては、後述するポリメチルペンテン系樹脂の含有量に応じて適宜選択することができる。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには、200℃以上の結晶融解ピークを付与する目的で、200℃以上に結晶融解ピークを有する樹脂として、前述した各種ポリオレフィン系樹脂との相溶性の観点から、上記したポリオレフィン系樹脂に加えて、ポリメチルペンテン系樹脂を配合することが好ましい。ポリメチルペンテン系樹脂とは、メチルペンテンをモノマーとする単独重合体またはその他のモノマーとの共重合体を意味する。具体例としては、4-メチルペンテン-1とプロピレンと共重合可能な他の単量体として例示したα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。
【0026】
ポリメチルペンテン系樹脂が、共重合体である場合は、共重合に用いられるα-オレフィン成分の含有量が20質量%以下であることが好ましい。20質量%以下とすることで、結晶融解ピークの低下を抑制することが可能となる。より好ましくは10質量%以下である。
【0027】
ポリメチルペンテン系樹脂のメルトフローレイトは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、260℃の温度条件下、荷重5.0kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~35g/10分である。
【0028】
ポリメチルペンテン系樹脂の結晶融解ピークは、示差走査熱量測定により測定した値として、210℃以上を示すことが好ましい。210℃以上の結晶融解ピークを有することで、得られるフィルムに耐熱性を付与することが十分に可能となる。より好ましくは215℃以上、さらに好ましくは220℃以上である。
ここで、示差走査熱量測定の条件としては、前述したものと同様の方法を用いることができる。
【0029】
ポリメチルペンテン系樹脂の強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が100~2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が100~2000MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは150~1900MPaの範囲内、さらに好ましくは200~1800MPaの範囲内である。
【0030】
ポリメチルペンテン系樹脂の含有量としては、得られるフィルムの表層と他の層の各層おいて異なる含有量となるため、後述する熱可塑性樹脂フィルムの項にて詳しく述べるものとする。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムに用いられる樹脂組成物には、上記、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂及びポリメチルペンテン系樹脂以外の樹脂として、必要に応じて、スチレン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂等を添加することもできる。
【0032】
スチレン系エラストマーとは、下記式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
X-(Y-X)n …(I)
(X-Y)n …(II)
一般式(I)および(II)におけるXはスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロックで、式(I)においては分子鎖両末端で重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、Yとしてはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロックおよび部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの中から選ばれた少なくとも1種である。また、nは1以上の整数である。
【0033】
スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-水添ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-水添イソプレンジブロック共重合体、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-イソプレンジブロック共重合体等が挙げられ、その中でもスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体が好適である。また、スチレン-エチレン・ブチレン-結晶性オレフィン共重合体であるブロック共重合体を用いることもできる。
スチレン系エラストマーのメルトフローレイト(230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値)は、0.1~10g/10分であることが好ましく、0.15~9g/10分であることがより好ましく、0.2~8g/10分であることが特に好ましい。スチレン系エラストマーのメルトフローレイトが0.1g/10分未満および、10g/10分を越えるとポリオレフィン系樹脂との相溶性の低下や製膜性の悪化により、十分な柔軟性やエキスパンド性が発現しない場合がある。
【0034】
スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、タフプレンA、タフプレン125、アサプレンT-438、アサプレンT-439、タフテックH1221、タフテックH1041、タフテックH1052、タフテックH1053、タフテックH1517(以上、旭化成社製)、セプトン4099、セプトンHG252、セプトン8004、セプトン8006、セプトン8007L、セプトンHG252、セプトンV9461、セプトンV9475、ハイブラー7311、ハイブラー7125F、ハイブラー5127、ハイブラー5125(以上、クラレ社製)、ダイナロン1320P、ダイナロン4600P、ダイナロン8300P、ダイナロン8903P、ダイナロン9901P(以上、JSR社製)等が挙げられる。
【0035】
上記スチレン系エラストマーは、1種類のエラストマーを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。複層フィルムを得る際の製膜性や、得られる複層フィルムの柔軟性や取扱い性、エキスパンド性を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。複層フィルムの製膜性や、得られるフィルムの性能の観点から、2種類以上を併用することがより好ましい。
【0036】
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα-オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加物も用いることができる。
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムに用いられる樹脂組成物にスチレン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂を添加する場合は、スチレン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂の含有量は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂の含有量、ポリメチルペンテン系樹脂の含有量に応じて適宜選択することができる。
【0038】
<その他成分>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムに用いられる樹脂組成物には、前述したポリオレフィン系樹脂やポリメチルペンテン系樹脂等の熱可塑性樹脂成分以外に耐熱性や耐候性等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
具体例としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染顔料、結晶核剤、紫外線吸収剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するために前述したもの以外のエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてもよい。
【0039】
紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
光安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
帯電防止剤としては、公知のものを使用可能であるが、フィルムへの長期的な帯電防止性の付与と表面へのブリードアウトにより起こる不具合の抑制のため高分子型帯電防止剤を用いることが好ましい。高分子帯電防止剤の具体例としては、公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を用いることができ、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によってブロック共重合体を形成しているもの等を挙げることができる。
滑剤やアンチブロッキング剤としては、前述したポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れ、得られるフィルムの表面へのブリードアウトによる不具合や長期的な耐傷付き性や滑り性の付与を可能にすることから、シリコーン-オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
【0040】
<熱可塑性樹脂フィルム>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を0~20質量%含有する表層を有し、且つ、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を20~90質量%含有する層を有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムである。
【0041】
熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を0~20質量%の量を含有する層を表層とすることで、表層面に印刷層や粘着剤層等を積層する場合において、印刷層や粘着剤層と該フィルムとの密着性を十分なものとすることが可能となる。表層に含まれるポリメチルペンテン系樹脂の含有量は、フィルムの用途、耐熱性や経済性の観点から適宜選択することができ、より好ましくは熱可塑性樹脂100質量%中に0~15質量%の範囲内、さらに好ましくは熱可塑性樹脂100質量%中に0~10質量%の範囲内であり、表層においては、ポリメチルペンテン系樹脂は任意成分である。
ここで、上記の「熱可塑性樹脂100質量%」とは、表層に含まれる熱可塑性樹脂(即ち、前項で詳述したポリメチルペンテン系樹脂以外の熱可塑性樹脂の成分)及びポリメチルペンテン系樹脂の含有量の合計が100質量%であることを意味する。
【0042】
表層に用いる熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ポリメチルペンテン系樹脂以外の熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂およびスチレン系エラストマーのいずれか1種以上を含有する。
ここで、ポリメチルペンテン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂としては、前項で詳述した、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂を用いることができ、好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、及びオレフィン系エラストマーからなる群から選択されるいずれか1種以上が用いられ、より好ましくは、ポリプロピレン系樹脂、及びオレフィン系エラストマーからなる群から選択されるいずれか1種以上が用いられる。これらポリオレフィン系樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、スチレン系エラストマーとしては、前項で詳述したものを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
表層に用いる熱可塑性樹脂組成物が、ポリメチルペンテン系樹脂以外の熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーを含有する場合は、両者の含有率は、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーの含有量の合計に対して、好ましくは、100:0~50:50(=ポリオレフィン系樹脂:スチレン系エラストマー)である。
表層に用いるポリメチルペンテン系樹脂以外の熱可塑性樹脂中のスチレン系エラストマーの含有量を0質量%以上50質量%以下とすることで、複層フィルムに柔軟性を付与しつつ、且つスチレン系エラストマーに起因するフィルム表層のタック感を抑制することができ、複層フィルムを生産する際のロール等へのフィルムの貼りつきを抑制し、工程通過性を良好なものとすることができる。
含有量の割合の範囲として、より好ましくは、100:0~55:45、さらに好ましくは、100:0~60:40(=ポリオレフィン系樹脂:スチレン系エラストマー)である。
【0044】
また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムにおいて、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を20~90質量%含有する層(以下「層A」とも言う。)を設けることが重要である。かかる層を設けることにより、得られるフィルムに耐熱性と優れた外観を付与することができる。ポリメチルペンテン系樹脂を熱可塑性樹脂100質量%中に20質量%以上とすることで、得られるフィルムに十分な耐熱性を付与することが可能となり、90質量%以下とすることでフィルムの外観の悪化を抑制することが可能となり好ましい。ポリメチルペンテン系樹脂の含有量は、より好ましくは熱可塑性樹脂100質量%中に22~68質量%、さらに好ましくは熱可塑性樹脂100質量%中に25~65質量%である。また、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を20~90質量%含有する層は、単一もしくは複数の層からなるものであってもよく、複数の層からなる場合は、各層の組成は同一であっても異なるものであってもよい。
ここで、上記の「熱可塑性樹脂100質量%」とは、上記の層Aに含まれるポリオレフィン系樹脂(即ち、前項で詳述したポリメチルペンテン系樹脂以外の熱可塑性樹脂の成分)及びポリメチルペンテン系樹脂の含有量の合計が100質量%であることを意味する。
【0045】
層Aに用いる熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ポリメチルペンテン系樹脂以外の熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂およびスチレン系エラストマーのいずれか1種以上を含有する。
即ち、層Aに用いる熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、樹脂成分として、(1)ポリメチルペンテン系樹脂及びポリオレフィン系樹脂、(2)ポリメチルペンテン系樹脂及びスチレン系エラストマー、(3)ポリメチルペンテン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマー、を含有する。
ここで、ポリメチルペンテン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂を用いることができ、好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、及びオレフィン系エラストマーからなる群から選択されるいずれか1種以上が用いられ、より好ましくは、ポリプロピレン系樹脂、及びオレフィン系エラストマーからなる群から選択されるいずれか1種以上が用いられる。これらポリオレフィン系樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、スチレン系エラストマーとしては、前項で詳述したものを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
層Aに用いる熱可塑性樹脂組成物が、ポリメチルペンテン系樹脂以外の熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーを含有する場合は、両者の含有率は、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーの含有量の合計に対して、好ましくは、100:0~20:80(=ポリオレフィン系樹脂:スチレン系エラストマー)である。
層Aに用いるポリメチルペンテン系樹脂以外の熱可塑性樹脂中のスチレン系エラストマーの含有量を0質量%以上80質量%以下とすることで、得られる複層フィルムの耐熱性を損なうことなく、柔軟性を付与することが可能となる。
含有量の割合の範囲として、より好ましくは、100:0~25:75、さらに好ましくは、100:0~30:70(=ポリオレフィン系樹脂:スチレン系エラストマー)である。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂100質量%中にポリメチルペンテン系樹脂を20~90質量%含有する層を中間層として、表層と、任意に反対側の面に裏層を設けてもよい。裏層を付与することで、耐熱性や耐候性といった必要な性能をフィルムに付与することが容易である。また、裏層は中間層や表層と同一組成であっても、異なる組成であってもよく、単一もしくは複数の層からなるものであってもよい。
裏層に用いられる熱可塑性樹脂組成物の詳細は、表層に用いる熱可塑性樹脂組成物、中間層(層A)に用いる熱可塑性樹脂組成物について上記で詳述した内容と同様である。
【0048】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、示差走査熱量測定において70℃以上170℃以下の温度範囲内に少なくとも1つ以上の結晶融解ピークを有し、さらに200℃以上の温度領域に結晶融解ピークを有することが重要である。
70℃以上170℃以下の範囲内に結晶融解ピークを有することで、200℃以下の温度での加工性を良好とすることが可能となる。より好ましくは70℃以上160℃以下、さらに好ましくは70℃以上150℃以下の範囲内である。
ここで、示差走査熱量測定の条件としては、前述したものと同様の方法を用いることができる。
【0049】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、JIS K6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して採取した試験片を用い、JIS K7127を参照した次の条件;23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機にて、引張速度:50mm/分、で測定した際の引張弾性率が1400MPa以下であることが好ましい。
1400MPa以下とすることで、本発明の熱可塑性樹脂フィルムに印刷層や粘着剤層を積層する際の加工性や、粘着剤層を有する本発明の熱可塑性樹脂フィルムを自動車外装等の3次元形状を有する物品に貼り合わせる工程での取扱性や作業性、半導体製造工程における取扱性を良好に保つことが可能となる。より好ましくは1350MPa以下、さらに好ましくは1300MPa以下である。得られる熱可塑性樹脂フィルムの引張弾性率の調整は、前述した熱可塑性樹脂の種類や添加量の調整、後述するフィルムの成形方法や成形時の条件を変更することで可能となる。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、溶融押出成形法を用いることが好ましい。溶融押出成形法の中でも、Tダイを有する押出機より溶融状態の樹脂を押出し、冷却固化させてフィルムを得るTダイ成形法がより好ましい。
フィルムを得るためには、複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法とすることが好ましい。複数の押し出し機を利用した共押出Tダイ成形法を用いることで、複層のフィルムを得ることが可能であり、さらに全ての押出機から同一の樹脂を押出すことで単層のフィルムを得ることも可能となる。
共押出Tダイ成形法としては、マルチマニホールドダイを用いて、複数の樹脂層をフィルム状としたのち、Tダイ内で接触させて複層化させてフィルムを得る方法と、フィードブロックと称する溶融状態の樹脂を合流させる装置を用い、複数の樹脂を合流させ密着した後、複層のフィルムを得る方法が挙げられる。
【0051】
フィルムには必要に応じて、片面または両方の面にプラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法による表面処理を行ってもよい。得られるフィルムの用途に応じて、片面または両方の面に表面処理を行うかを選択することができる。
【0052】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの厚みは特に制限されるものではないが、30~400μmであることが好ましい。上記範囲内とすることで、フィルムの取扱い性およびその後の加工性を良好に維持することができる。より好ましくは50~350μm、さらに好ましくは70~300μmである。
【0053】
また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムにおいて、表層の厚みが全体の厚みの5~40%の範囲内とすることが好ましい。5%以上とすることで、各種添加剤を表層に添加した場合の添加剤の性能を十分に発現させることが可能となり、40%以下とすることで、複層フィルムを得る際の製膜性や経済性を良好に保つことが可能となり好ましい。より好ましくは5~35%、さらに好ましくは5~30%の範囲内である。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの破断伸度としては、JIS K6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して採取した試験片を用い、JISK7127を参照した次の条件、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機にて、引張速度:300mm/分で測定した際の引張破断伸度が、150%以上であることが好ましい。引張破断伸度が150%以上であれば、溶融押出成形時のフィルムを引き取る際のフィルムの破断による不具合や、これに続く印刷層や粘着剤層を積層する工程においても同様の不具合を抑制させることができるため好ましい。より好ましくは250%以上、さらに好ましくは350%以上である。
【0055】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、以下の条件による熱機械分析を行った際に、80~165℃の範囲内で該フィルムが1500μmの伸度を示すことを好ましい。
【0056】
<条件>
試験片サイズ:幅4mm×長さ20mm
チャック間距離:8mm
測定雰囲気:窒素雰囲気下(窒素流量100ml/分)
昇温速度:5℃/分(開始温度:23℃、終了温度:250℃)
荷重:0.3N/mm2
【0057】
80~165℃の範囲内で1500μmの伸度を示すことで、該フィルムを粘着フィルムとした際の、該フィルムを加熱し被着体に貼り合わせる工程の被着体への追従性を向上させることが可能となる。より好ましくは90~165℃の範囲内、さらに好ましくは100~165℃の範囲内である。
【0058】
また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの190℃における貯蔵弾性率が、1.0×105Pa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上を示すことで、該フィルムを粘着フィルムとした際の、該フィルムを加熱し被着体に貼り合わせる工程においてフィルムが溶融しきることなく形状を保持できることから取り扱い性や工程通過性を良好に保つことが可能となる。より好ましくは2.0×105Pa以上、さらに好ましくは3.0×105Pa以上である。
【0059】
<粘着フィルム>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには、表層に粘着剤層を積層することで、粘着フィルムとすることができる(以下「本発明の粘着フィルム」ともいう)。
粘着剤層として用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
【0060】
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着剤層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムである基材フィルムと粘着剤層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
粘着剤層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0061】
<化粧フィルム>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには、表層に印刷層を積層し、化粧フィルムとすることができる(以下「本発明の化粧フィルム」ともいう)。
化粧フィルムを構成する、印刷層は、公知の方法で形成できる。例えば、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法、ロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法、フレキソグラフ印刷法等が挙げられる。また、蒸着法を用いることもできる。
印刷の柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ、メタリック等からなる絵柄が挙げられる。
印刷層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
本発明の化粧フィルムにおいて、印刷層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、基材フィルムと印刷層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
印刷層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0062】
<化粧用粘着フィルム>
本発明の化粧フィルムには、必要に応じて、該印刷層にさらに粘剤着層を積層して化粧用粘着フィルムとすることができる。
該化粧用粘着フィルムを被着体に貼着させることで、被着体の美麗な外観を付与することが可能となり、自動車内外装の化粧用途、その他の成形体や積層体、建築内外装用途等に用いることが可能となる。
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、良好な加工性、取扱性、耐熱性、用途に応じた優れた外観および印刷層や粘着剤層等との密着性を有するものである。さらに、該フィルムに粘着剤層や印刷層を積層することで粘着フィルムや化粧フィルムを得ることも可能であり、それらのフィルムを自動車化粧用、半導体製造工程用といった各種用途にも好適に用いることができる。
【実施例0064】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0065】
[使用材料]
<熱可塑性樹脂>
<ポリオレフィン系樹脂>
ポリメチルペンテン(A):
三井化学社製:「RT18」(ポリメチルペンテン系樹脂、260℃、5.0kgにおけるメルトフローレイト:26g/10分、融点:232℃、単独フィルムの引張弾性率:1640MPa)
ポリメチルペンテン(B):
三井化学社製:「MX002」(ポリメチルペンテン系樹脂、260℃、5.0kgにおけるメルトフローレイト:21g/10分、融点:224℃、単独フィルムの引張弾性率:1110MPa)
ランダムポリプロピレン:
日本ポリプロ社製、「PC630A」(ランダムポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:7.5g/10分、融点:135℃、単独フィルムの引張弾性率:500MPa)
ホモポリプロピレン:
日本ポリプロ社製、「FY6HA」(ホモポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:2.4g/10分、融点:169℃、単独フィルムの引張弾性率:900MPa)
オレフィン系エラストマー:
日本ポリプロ社製、「ウェルネクスRFX4V」(オレフィン系エラストマー、230℃、2.16kgでのメルトフローレイト:6.0g/10分、融点:127℃、単独フィルムの引張弾性率:250MPa)
ポリアミドグラフト化ポリオレフィン系樹脂:
アルケマ社製、「アポリヤLP21H」(ポリアミドグラフト化ポリオレフィン系樹脂、230℃、2.16kgでのメルトフローレイト:10g/10分、融点:216℃、単独フィルムの引張弾性率:180MPa)
<スチレン系エラストマー>
スチレン系エラストマー(A):
旭化成社製、「タフテックH1221」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:4.5g/10分、スチレン成分含有量:12質量%、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体)
スチレン系エラストマー(B):
クラレ社製、「ハイブラー7311」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:2.0g/10分、スチレン成分含有量:12質量%、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体)
【0066】
<樹脂組成物の調製>
上記の熱可塑性樹脂を用いて、表1の記載に基づき各層の熱可塑性樹脂成分の配合量をそれぞれ合計で100質量%とし、それらをドライブレンドし混合した。目視にて均一に混合できていることを確認し、フィルム成形用樹脂組成物を作成した。
【0067】
<複層フィルムの製膜方法>
3台の東芝機械製単軸押出機(外層用:35φmm,L/D=25mm、中間層用:50φmm,L/D=32、外層用:35φmm,L/D=25mm)のそれぞれのホッパーにドライブレンドした原料を投入し、表層用、中間層用、裏層用それぞれの押出機温度を210~265℃に設定し、フィードブロック部にて、表層/中間層/裏層の3層構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定265℃リップ開度0.5mm)から押出した。厚み構成は、表1に記載の厚み(各層の合計で150μm)になるよう各押出機回転数を設定した。
押出された溶融樹脂は、鏡面状の冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度約30℃)にて冷却固化後、両面にコロナ処理を実施し巻き取りを行い、厚みが約150μmの2種3層もしくは3種3層の樹脂層からなるフィルムを得た。
また、本発明では、冷却ロール側の面を表層と表現している。
【0068】
[フィルムの外観]
得られたフィルムの外観を以下の判定基準を用いて目視により評価した。
◎:異物やスジ状欠陥が認められない
〇:異物やスジ状欠陥は僅かに認められる
△:異物やスジ状欠陥が認められる
×:異物やスジ状欠陥が顕著に確認され使用不可
【0069】
[インキの密着性(α)]
以下に記載の大日精化工業社製のオレフィン系建材フィルム用インキを倉敷紡績(株)製、グラビア印刷試験機「GP-2」、印刷プレート「54L6階調」を用い、フィルムの表層側に塗布を行った。塗布後のフィルムを40℃で5日間エージングし、インキによる印刷層が積層された化粧フィルムを得た。
得られた化粧フィルムの印刷層にセロテープを貼り、それを剥離することで印刷層と熱可塑性樹脂フィルムとの密着性を以下の基準により評価した。
◎:6階調全てのインキが残り、剥離が認められない
〇:4~5階調のインキが残り、1~2階調の剥離が認められる
△:2~3階調のインキが残り、3~4階調の剥離が認められる
×:インキの残りが1階調以下
【0070】
<大日精化工業社製のオレフィン系建材フィルム用インキ>
「SBM-NT95墨(M)」を100質量部、「PTC-LT硬化剤(K)」を3質量部用い、それらを混合・撹拌しインキを調製した。
「SBM-NT95墨(M)」:ポリウレタン系樹脂、ケトン/エステル/アルコール類からなる溶剤および顔料としてカーボンブラックを含有する塗料「PTC-LT硬化剤(K)」:ポリウレタン系樹脂用硬化剤
【0071】
[インキの密着性(β)]
以下に記載のDICグラフィックス(株)製の塩ビ化粧フィルム用インキを倉敷紡績(株)製、グラビア印刷試験機「GP-2」、印刷プレート「54L6階調」を用い、フィルムの表層側に塗布を行った。塗布後のフィルムを40℃で5日間エージングし、インキによる印刷層が積層された化粧フィルムを得た。
得られた化粧フィルムの印刷層にセロテープを貼り、それを剥離することで印刷層と熱可塑性樹脂フィルムとの密着性を以下の基準により評価した。
◎:6階調全てのインキが残り、剥離が認められない
〇:4~5階調のインキが残り、1~2階調の剥離が認められる
△:2~3階調のインキが残り、3~4階調の剥離が認められる
×:インキの残りが1階調以下
【0072】
<DICグラフィックス(株)製の塩ビ化粧フィルム用インキ>
「VTP-NT40黄(A)」を95質量部、「AT-NT溶剤」を5質量部用い、それらを混合・撹拌しインキを調製した。
「VTP-NT40黄(A)」:塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体およびアクリル系樹脂の混合物と溶剤としてメチルイソブチルケトンからなる塗料
「AT-NT溶剤」:酢酸ブチル/酢酸エチル/メチルエチルケトンの混合物
【0073】
[引張弾性率]
得られた複層フィルムから、JISK6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、JISK7127を参照した次の条件、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS-X)を用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。
引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0074】
[引張破断伸度]
得られたフィルムから、JISK6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ-L)を用いて、引張速度300mm/分にて引張破断伸度(%)を測定した。
引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0075】
[結晶融解ピーク]
示差走査熱量測定装置(メトラー・トレド社製 DSC823e)を用い、各実施例で得られたフィルムの約5mgを、昇温速度10℃/分で25℃から250℃まで昇温した後、冷却速度10℃/分で25℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した際に測定されたチャートから結晶融解ピークを算出した。
【0076】
[1500μm伸長時の温度]
150μmのフィルムを以下の測定装置および条件を用い、1500μm伸長時の温度を測定した。
【0077】
<測定条件>
装置:熱機械分析装置TMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)
試験片サイズ:幅4mm×長さ20mm
チャック間距離:8mm
測定雰囲気:窒素雰囲気下(窒素流量100ml/分)
昇温速度:5℃/分(開始温度:23℃、終了温度:250℃)
荷重:0.3N/mm2
[190℃の貯蔵弾性率(E’)]
動的粘弾性測定装置(アイティ計測制御(株)製、「DVA-200」)を用いて、フィルムのMD方向を引張にて、チャック間距離25mm、歪0.1%、周波数1Hz、昇温速度3℃/minの条件で温度範囲-50~250℃までを測定し、該フィルムの190℃における貯蔵弾性率(E’)を算出した。
【0078】
[実施例1]
表層、中間層、裏層に用いるポリオレフィン系樹脂としてポリメチルペンテン(A)およびランダムポリプロピレンを用い、2種3層からなるフィルムを得た。また、各種熱可塑性樹脂は表1に記載の通りの配合量とした。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は870MPaであり、引張破断伸度は500%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に135℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は134℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は3.0×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0079】
[実施例2]
ポリメチルペンテン(A)およびランダムポリプロピレンを表1の配合量とし、
厚み構成は、2.3μm/145.4μm/2.3μm(各層の合計で150μm)になるよう各押出機回転数を設定した以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は870MPaであり、引張破断伸度は500%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に135℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は135℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は3.1×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0080】
[実施例3]
ポリメチルペンテン(A)、ランダムポリプロピレンおよびホモポリプロピレンを表1に記載の通り用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は900MPaであり、引張破断伸度は500%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に132℃と158℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は135℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は3.1×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0081】
[実施例4]
ポリメチルペンテン(A)、ランダムポリプロピレンおよびオレフィン系エラストマーを表1に記載の通り用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は860MPaであり、引張破断伸度は510%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に132℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は134℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は3.0×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0082】
[実施例5]
ポリメチルペンテン(A)およびランダムポリプロピレンを表1に記載の通り用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は880MPaであり、引張破断伸度は460%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に135℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に231℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は138℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は3.2×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0083】
[実施例6]
ポリメチルペンテン(A)、ランダムポリプロピレンおよびホモポリプロピレンを表1に記載の通り用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥が僅かに認められるものの、使用は可能であり、外観の良好なフィルムであった。引張弾性率は1000MPaであり、引張破断伸度は420%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に135℃と158℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は160℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は3.7×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0084】
[実施例7]
ポリメチルペンテン(A)およびランダムポリプロピレンを表1に記載の通り用い、裏層にもポリメチルペンテン(A)を含有させた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は900MPaであり、引張破断伸度は500%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に132℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は140℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は3.1×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0085】
[実施例8]
ポリメチルペンテン(B)およびランダムポリプロピレンを表1に記載の通り用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は600MPaであり、引張破断伸度は520%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に135℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に224℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は130℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は1.3×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0086】
[実施例9]
ポリメチルペンテン(A)およびランダムポリプロピレンを表1に記載の通り用い、表層にもポリメチルペンテン(A)を10質量%含有させた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は900MPaであり、引張破断伸度は500%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
しかしながら、本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示したものの、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においては、2~3階調のみしかインキの残りが見られず、表層にポリメチルペンテン系樹脂を含むことから、インキの種類によっては僅かに密着性に劣る結果となった。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に132℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は134℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は3.2×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの十分な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0087】
[実施例10]
ポリメチルペンテン(A)およびランダムポリプロピレンを表1に記載の通り用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムにはポリメチルペンテン系樹脂が多く含有されていることから、樹脂に起因する異物やスジ状の欠陥が認められ、外観に劣るフィルムであった。引張弾性率は1420MPaであり、引張破断伸度は350%を示したことから、弾性率が高いために加工性に劣るフィルムであると想定される。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に132℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。
また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は190℃であり、該フィルムの加工温度領域が高くなり、加工性に劣るものと推定される。
190℃における貯蔵弾性率(E’)は4.2×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、ポリメチルペンテン系樹脂が多いために外観に劣り、弾性率が高く、1500μm伸長時の温度も高いために加工性に劣ると推定されるものの、190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから耐熱性に優れ、且つインキとの十分な密着性を有するフィルムが得られた。
【0088】
[実施例11]
ポリメチルペンテン(B)、ランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(A)を表1に記載の通り用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は380MPaであり、引張破断伸度は470%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に135℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に224℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は124℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は8.5×105Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0089】
[実施例12]
ポリメチルペンテン(A)、ランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(A)を表1に記載の通り用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は560MPaであり、引張破断伸度は480%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に134℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は133℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は3.4×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0090】
[実施例13]
ポリメチルペンテン(A)、ランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(B)を表1に記載の通り用いた以外は、実施例2と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は460MPaであり、引張破断伸度は520%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に132℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は128℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は2.6×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0091】
[実施例14]
ポリメチルペンテン(A)、ランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(B)を表1の配合量とし、厚み構成は、22.5μm/105μm/22.5μm(各層の合計で150μm)になるよう各押出機回転数を設定した以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は490MPaであり、引張破断伸度は510%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に135℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は129℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は2.0×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0092】
[実施例15]
ポリメチルペンテン(B)、ランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(A)を表1に記載の通り用いた以外は、実施例2と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は340MPaであり、引張破断伸度は470%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に132℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に224℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は117℃であった。さらに、190℃における貯蔵弾性率(E’)は1.1×106Paであり、200℃近傍においても十分な弾性率を保持し、形状を保持していることが確認された。
上記に示す通り、優れた外観、インキとの良好な密着性、70~170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピーク、80~165℃の範囲内の十分なフィルムの伸長および190℃における十分な貯蔵弾性率を有していることから、必要な性能と外観を両立したフィルムが得られた。
【0093】
[比較例1]
ポリメチルペンテン(A)およびランダムポリプロピレンを表1に記載の通り用い、表層にもポリメチルペンテン(A)を30質量%含有させた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に良好なフィルムであったが、本フィルムの表層側に設けたインキの密着性を確認したところ、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示したものの、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においては、1階調以下しかインキの残りが見られず、ポリメチルペンテン系樹脂を多く含む場合は、インキの種類によっては密着性に著しく劣る結果となった。
【0094】
[比較例2]
ポリメチルペンテン(A)およびランダムポリプロピレンを表1に記載の通り用い、表層にもポリメチルペンテン(A)を80質量%含有させた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには表層にポリメチルペンテン系樹脂が多く含有されていることから、樹脂に起因する異物やスジ状の欠陥が認められ、外観に劣るフィルムであった。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性を確認したところ、オレフィン系建材フィルム用インキおよび塩ビ化粧フィルム用インキのいずれの場合においても、1階調以下しかインキの残りが見られず、表層にポリメチルペンテン系樹脂を多く含む場合は、インキの種類によらず密着性に著しく劣る結果となった。
【0095】
[比較例3]
ポリメチルペンテン(A)およびランダムポリプロピレンを表1に記載の通り用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は620MPaであり、引張破断伸度は590%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に135℃の結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に231℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1
500μm伸長時の温度は122℃であった。
しかしながら、152℃でフィルムが溶融してしまったことから、190℃における貯蔵弾性率(E’)は測定できず、200℃近傍においてフィルム形状の保持が困難であることが確認された。
上記に示す通り、200℃以上の融点を有するものの、ポリメチルペンテンの含有量が少ないことから耐熱性に劣るものであった。
【0096】
[比較例4]
ランダムポリプロピレンのみを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。
引張弾性率は500MPaであり、引張破断伸度は750%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、オレフィン系建材フィルム用インキの場合、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、塩ビ化粧フィルム用インキの場合においても、4~5階調のインキの残りが観察され、いずれのインキを用いた場合でも良好な密着性を有することを確認した。
さらに、本フィルムは、70~170℃の範囲内に135℃の結晶融解ピークを示したものの、ポリメチルペンテン系樹脂を含まないことから、200℃以上の範囲に結晶融解ピークは観察されなかった。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は120℃であったが、ポリメチルペンテン系樹脂を含まないために、140℃でフィルムが溶融してしまったことから、190℃における貯蔵弾性率(E’)は測定できず、200℃近傍においてフィルム形状の保持が困難であることが確認された。
上記に示す通り、200℃以上の融点を有さないことから耐熱性に劣るものであった。
【0097】
[比較例5]
ランダムポリプロピレンおよびポリアミドグラフト化ポリオレフィン系樹脂を表1に記載の通りの配合量として用いた以外は、実施例1と同様に行った。
このフィルムは、ランダムポリプロピレンとポリアミドグラフト化ポリオレフィン系樹脂との相溶性が十分ではなかったと推察され、異物やスジ状の欠陥が顕著に認められたことから、外観に顕著に劣るフィルムであることが確認された。
【0098】
【0099】
[実施例16]
アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成した。
その粘着剤層を有するセパレータを、実施例1で得られたフィルムの表層側の面に貼り合わせることで、該フィルムと粘着剤層とを有する粘着フィルムを得た。
【0100】
[実施例17]
アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成した。
その粘着剤層を有するセパレータを、実施例1で作成したオレフィン系建材フィルム用インキを積層したフィルムの印刷層側の面に貼り合わせることで、印刷層および粘着剤層を有する化粧用粘着フィルムを得た。
【0101】
[産業上の利用可能性]
本発明の熱可塑性樹脂フィルムを用いることで、フィルムの良好な加工性、取扱性、耐熱性、用途に応じた優れた外観および印刷層や粘着剤層等との密着性を有するフィルムを得ることができる。また、該フィルムに粘着剤層や印刷層を積層することで粘着フィルム、化粧フィルムや化粧用粘着フィルムを得ることも可能であり、それらのフィルムを半導体製造工程用、自動車内外装やその化粧用途にも好適に用いることができる。