(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041846
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】粉末状セルロース、その用途及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C08B 15/08 20060101AFI20220304BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20220304BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220304BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220304BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220304BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20220304BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20220304BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
C08B15/08
C08J3/12 A CEP
A61K47/38
A61K9/20
A61K8/73
A23L29/262
A23L29/00
C08L1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043125
(22)【出願日】2021-03-17
(62)【分割の表示】P 2020147149の分割
【原出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐治 薫
(72)【発明者】
【氏名】小野 敦
【テーマコード(参考)】
4B035
4B041
4C076
4C083
4C090
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE01
4B035LG26
4B035LK09
4B035LK19
4B035LP59
4B041LC10
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4B041LP03
4C076AA36
4C076BB01
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4C083AD261
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4C083BB22
4C083CC01
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4C090AA01
4C090AA04
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4C090BA24
4C090BC08
4C090BD07
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4C090CA01
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4F070DB09
4F070DC07
4J002AB011
4J002GB00
4J002GT00
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】成形した際に、崩壊しにくい粉末状セルロースを提供すること。
【解決手段】平均粒子径が5~150μmであり、下記式(1)で表される超音波水中残存率が20~60%である粉末状セルロースである。
式(1):
超音波水中残存率(%)=[湿式測定(超音波照射あり)の体積累計50%粒子径/湿式測定(超音波照射なし)の体積累計50%粒子径]×100
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が5~150μmであり、下記式(1)で表される超音波水中残存率が20~60%である粉末状セルロース。
式(1):
超音波水中残存率(%)=[湿式測定(超音波照射あり)の体積累計50%粒子径/湿式測定(超音波照射なし)の体積累計50%粒子径]×100
【請求項2】
粉末状セルロースの下記式(2)で表される水中残存率が、70~120%である、請求項1に記載の粉末状セルロース。
式(2):
水中残存率(%)=[湿式測定(超音波照射なし)の体積累計50%粒子径/乾式測定の体積累計50%粒子径]×100
【請求項3】
乾式測定の粒子径分布のスパンが、9.0以下である、請求項1又は2に記載の粉末状セルロース。
【請求項4】
湿式測定(超音波あり)の粒子径分布のスパンが、3.0以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粉末状セルロース。
【請求項5】
長径/短径比が、3.5~8.0である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粉末状セルロース。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の粉末状セルロースを含む賦形剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の粉末状セルロースを含む成形体。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の粉末状セルロースを含む、食品添加剤。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の粉末状セルロースを含む、化粧品添加剤。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の粉末状セルロースを含む、工業用添加剤。
【請求項11】
セルロース原料の酸加水分解処理、粉砕処理の前処理及び粉砕処理を少なくとも含み、前処理は、気流式乾燥機を用いる乾燥処理を少なくとも含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の粉末状セルロースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状セルロース、その用途及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末状セルロースは、増粘性、乳化安定性、保水性、吸油性、保形性等の特徴を有する。そのため、粉末状セルロースは、食品添加剤、錠剤賦形剤、分散剤、保形剤、保水剤、ろ過助剤、充填剤、塗料・接着剤用添加剤等の用途として、食品、医薬、化粧品、建材、窯業、ゴム、プラスチック等の幅広い分野で使用されている。中でも、安全性が高いことから、食品添加剤、錠剤賦形剤の用途において汎用されている。
【0003】
粉末状セルロースの製造方法には、大別すると、化学的処理を用いた製造方法と、機械的処理を用いた製造方法の2つがある。化学的処理を用いた製造方法は、セルロース原料に硫酸、塩酸等の鉱酸を用いて加水分解処理を施し、必要に応じて粉砕処理を施す製造方法である。具体的には、120~160℃の高温下、20~45分間希酸で酸加水分解し、粉末状セルロースを得る方法(特許文献1)、2.5規定(以下、規定はNと省略)の塩酸で約15分間酸加水分解し、粉末状セルロースを得る方法(特許文献2)、各種濃度の塩酸水溶液で高温処理し、粉末状セルロースを得る方法(特許文献3)がある。
【0004】
粉末状セルロースを食品添加剤又は錠剤賦形剤として用いる場合に求められる特性の1つとして、成形物が良好な崩壊性を有していることが挙げられる。例えば、特許文献4には、粉末状セルロースの流動性に関し記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3954727号明細書
【特許文献2】米国特許第3141875号明細書
【特許文献3】特開昭53-127553号公報
【特許文献4】特許第5982874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、各文献には、粉末状セルロースの物性と、得られる成形体の崩壊性について特段記載されていない。
【0007】
本発明は、成形体とした際に、崩壊性が良好な粉末状セルロースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[11]を提供する。
[1]平均粒子径が5~150μmであり、下記式(1)で表される超音波水中残存率が20~60%である粉末状セルロース。
式(1):
超音波水中残存率(%)=[湿式測定(超音波照射あり)の体積累計50%粒子径/湿式測定(超音波照射なし)の体積累計50%粒子径]×100
[2]粉末状セルロースの下記式(2)で表される水中残存率が、70~120%である、[1]に記載の粉末状セルロース。
式(2):
水中残存率(%)=[湿式測定(超音波照射なし)の体積累計50%粒子径/乾式測定の体積累計50%粒子径]×100
[3]乾式測定の粒子径分布のスパンが、9.0以下である、[1]又は[2]に記載の粉末状セルロース。
[4]湿式測定(超音波あり)の粒子径分布のスパンが、3.0以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の粉末状セルロース。
[5]長径/短径比が、3.5~8.0である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の粉末状セルロース。
[6][1]~[5]のいずれか1項に記載の粉末状セルロースを含む賦形剤。
[7][1]~[5]のいずれか1項に記載の粉末状セルロースを含む成形体。
[8][1]~[5]のいずれか1項に記載の粉末状セルロースを含む、食品添加剤。
[9][1]~[5]のいずれか1項に記載の粉末状セルロースを含む、化粧品添加剤。
[10][1]~[5]のいずれか1項に記載の粉末状セルロースを含む、工業用添加剤。
[11]セルロース原料の酸加水分解処理、粉砕処理の前処理及び粉砕処理を少なくとも含み、前処理は、気流式乾燥機を用いる乾燥処理を少なくとも含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の粉末状セルロースの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、錠剤等の成形体とした際に、崩壊性の良好な粉末状セルロースを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書中、「AA~BB」の表記は、AA以上BB以下を示すものとする。
【0011】
[粉末状セルロース]
本発明の粉末状セルロースは、以下の物性を有することが好ましく、通常は以下の物性のうち所定の平均粒子径及び超音波水中残存率を少なくとも有する。これにより、崩壊性が良好な成形体を得ることができる。
【0012】
<粒子径分布、平均粒子径、粒子径分布のスパン>
粉末状セルロースの粒子径分布は、体積蓄積分布の積算値が10%、50%、90%となるときの粒子径分布(10%径、50%径、90%径、それぞれ、D.10、D.50、D.90)として表すことができる。本明細書において粒子径分布は、測定原理としてレーザー散乱法を用いて、湿式測定(超音波照射あり)、湿式測定(超音波照射なし)、又は乾式測定にて得られる値である。
【0013】
粒子径分布のスパンは、粒子径分布の広さを示す数値である。粉末状セルロースの形状に影響するものと推測され、本発明においては粉末状セルロースの粒子形状(球状、棒状、折れ曲がった棒状など)や、繊維凝集などの状態を総合的に表す指標といえる。粒度分布のスパンが適切な範囲である粉末状セルロースは、適度な繊維長、繊維幅を有し、成形した際に繊維どうしが結合することで、崩壊しにくい。
【0014】
粒子径分布のスパンは、各方法により得られるD.10、D.50、D.90を下記式(3)に代入して算出する。
式(3):粒子径分布のスパン=((D.90)-(D.10))/(D.50)
【0015】
-湿式測定(超音波照射なし)の条件-
本明細書において湿式条件(超音波照射なし)とは、試料に加水後超音波照射を行わずにそのまま粒子径を測定する条件を言う。湿式条件(超音波照射なし)のD.10、D.50、D.90、スパンの好ましい範囲は以下のとおりである。
D.10は、通常5μm以上、10.0μm以上又は14.0μm以上、好ましくは15.0μm以上、より好ましくは15.5μm以上である。上限は、通常40.0μm以下又は25.0μm以下、好ましくは24.0μm以下、より好ましくは23.0μm以下である。
D.50(平均粒子径)は、通常、5.0μm以上、10.0μm以上、20.0μm以上、30.0以上、40.0μm以上又は45.0μm以上、好ましくは50.0μm以上又は55.0μm以上、より好ましくは57.0μm以上、より好ましくは60.0μm以上である(但し、D.10よりも大きい値である)。これにより、粉末状セルロースの凝集性の上昇及びこれに起因する粉体流動性の低下を抑制でき、作業性の悪化を抑制できる。上限は、通常150.0μm以下、140.0μm以下、130.0μm以下、120μm以下又は110.0μm以下、好ましくは100μm以下、95.0μm以下又は90.0μm以下、より好ましくは85.0μm以下、更に好ましくは83.0μm以下である。これにより、崩壊性が良好な成形体を得ることができる。
D.90は、通常、100.0μm以上、110.0μm以上又は115.0μm以上、好ましくは120.0μm以上、125.0μm以上又は130.0μm以上、より好ましくは135μm以上、更に好ましくは140.0μm以上である(但し、D.50よりも大きい値である)。上限は、250.0以下、240.0μm以下、又は230μm以下、好ましくは220μm以下又は210μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは195μm以下である。
粒子径分布のスパンは、通常1.5以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.9以上、更に好ましくは2.0以上である。上限は、通常4.0以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、より好ましくは2.3以下である。
【0016】
-湿式測定(超音波照射あり)-
本明細書において湿式条件(超音波照射あり)とは、試料に加水後超音波照射を行ってから粒子径を測定する条件を言う。湿式(超音波あり)の場合のD.10、D.50、D.90、スパンの好ましい範囲は以下のとおりである。
D.10は、通常1.0μm以上、3.0μm以上又は5.0μm以上、好ましくは7.0μm以上又は8.0μm以上、より好ましくは9.0μm以上、更に好ましくは10.5μm以上である。上限は、通常20.0μm以下又は18.0μm以下、好ましくは15.0以下、より好ましくは13.0μm以下である。
D.50は、通常5以上、10.0μm以上又は15.0μm以上、好ましくは17μm以上、18.0μm以上又は20.0μm以上、より好ましくは23.0μm以上又は25.0μm以上、更に好ましくは26.0μm以上である(但し、D.10よりも大きい値である)。上限は、通常70.0μm以下、60.0μm以下又は50.0μm以下、好ましくは45.0μm以下又は40.0μm以下、より好ましくは35.0μm以下、更に好ましくは31.0μm以下である。
D.90は、通常、50.0μm以上、55.0μm以上又は60.0μm以上、好ましくは63μ.0m以上、より好ましくは65.0μm以上、更に好ましくは68μm以上である(但し、D.50よりも大きい値である)。上限は、180.0μm以下又は160.0μm以下、好ましくは140.0μm以下又は120.0μm以下、より好ましくは100.0μm以下、更に好ましくは90.0μm以下である。
粒子径分布のスパンは、通常1.5以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.9以上、更に好ましくは2.0以上である。上限は、通常3.0以下、好ましくは2.8以下、より好ましくは2.6以下である。
【0017】
-乾式測定-
本明細書において乾式測定とは、試料に加水せずそのまま粒子径を測定する条件を言う。乾式測定の場合のD.10、D.50、D.90、スパンの好ましい範囲は以下のとおりである。
D.10は、通常1.0μm以上、3.0μm以上又は5.0μm以上、好ましくは7.0μm以上又は10.0μm以上、より好ましくは13.0μm以上、更に好ましくは16.0μm以上である。上限は、通常40.0μm以下又は35.0μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは25.0μm以下、更に好ましくは23.0μm以下である。
D.50は、通常5.0μm以上、10.0μm以上又は15.0μm以上、好ましくは20.0μm以上、25.0μm以上又は30.0μm以上、より好ましくは35.0μm以上又は40.0μm以上、更に好ましくは43.0μm以上である(但し、D.10よりも大きい値である)。上限は、通常100.0μm以下、95.0μm以下又は93.0μm以下、好ましくは90.0μm以下、より好ましくは85.0μm以下である。
D.90は、通常、70.0μm以上、90.0μm以上又は100μ.0m以上、好ましくは110.0μm以上、より好ましくは120.0μm以上、更に好ましくは130.0μm以上である(但し、D.50よりも大きい値である)。上限は、260.0μm以下又は250.0μm以下、好ましくは240.0μm以下又は230.0μm以下、より好ましくは220.0μm以下である。
粒子径分布のスパンは、通常1.5以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.9以上、更に好ましくは2.0以上である。上限は、通常9.0以下、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは7.0以下である。
【0018】
上記の範囲を満たすことにより、錠剤化した際に錠剤と水とが接する比表面積を適度な範囲に調節でき、ある程度の錠剤硬度を維持でき、かつ崩壊性が良好な粉末状セルロースを得ることができる。
【0019】
<超音波水中残存率>
粉末状セルロースの超音波水中残存率は、通常60%以下、好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下である。下限は、通常20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上である。超音波残存率が上記の範囲であることにより、経口投与すると飲み込み等嚥下の際の動的な振動による崩壊性が高まるものと予測され、適所での吸収効率の向上が期待できる。
【0020】
超音波残存率は、粉末状セルロースの超音波照射後のサイズの、照射前のサイズに対する比率(%)であり、前記のD.50から下記式(1)に代入して算出する。
式(1):
超音波水中残存率(%)=[湿式測定(超音波照射あり)のD.50/湿式測定(超音波照射なし)のD.50]×100
【0021】
<水中残存率>
粉末状セルロースの水中残存率は、通常70%以上、好ましくは80以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。上限は、通常120%以下、好ましくは115%以下である。
【0022】
水中残存率は、粉末状セルロースの湿式処理後のサイズの、処理前のサイズに対する比率(%)であり、前記のD.50から下記式(2)に代入して算出する。
式(2):
水中残存率(%)=[湿式測定(超音波照射なし)のD.50/乾式測定のD.50]×100
【0023】
<長径/短径比(L/D)>
粉末状セルロースの長径/短径比(L/D)は、通常3.5~7.0であり、好ましくは3.5~6.5であり、より好ましくは4.0~6.0である。
【0024】
L/Dは、粉末状セルロースの形状に影響するものと推測され、粉末状セルロースの粒子形状(球状、棒状、折れ曲がった棒状など)、繊維凝集等の状態を総合的に表す指標といえる。L/Dが、前述する好ましい範囲であると、適度な繊維長、及び繊維幅を有し、成形した際に繊維どうしが結合することで、崩壊しにくいものとなる。
【0025】
L/Dは、以下の条件で算出した値である。光学顕微鏡を用いて、粉末状セルロースを100倍の倍率で観察し、無作為に選んだ140本の粉末状セルロースのL及びDを計測し、それぞれのL/Dを算出する。算出したL/Dのうち、上下それぞれ20の値を除いた合計100個の粉末状セルロースの平均値として算出する。なお、長径(L)とは、光学顕微鏡で観察した粉末状セルロースの繊維幅の最大長をいう。また、短径(D)とは、光学顕微鏡で観察した粉末状セルロースの繊維幅の長径と直交する最小値をいう。粉末状セルロースが折れ曲がり構造をとる場合、Lは、折れ曲がった状態での繊維幅の最大長である。Lは、通常35以上、好ましくは40以上、より好ましくは41以上である。上限は、通常60以下、好ましくは55以下、より好ましくは53以下である。Dは、通常6以上、好ましくは7以上、より好ましくは8以上である。上限は、15以下であればよく、特に限定されない。L/Dと共にLが上記範囲内であることで、より崩壊性が向上するので好ましい。L/Dの測定は、粉末状セルロースの、赤外線水分計(ケット科学研究所製、FD-720型、1g、105℃)で測定した粉体水分が3.0~4.0%であることを確認してから行う。
【0026】
[粉末状セルロースの製造方法]
粉末状セルロースの製造方法としては、セルロース原料から粉末状セルロースを得る方法であれば特に限定されないが、例えば、少なくとも粉砕処理を含む方法が挙げられ、不純物が少ない粉末状セルロースが得られやすい点で、酸加水分解処理をさらに行う方法が好ましい。
【0027】
<セルロース原料>
セルロース原料は、通常は天然由来のセルロースであり、パルプが好ましく、木材由来のパルプがより好ましい。木材由来のパルプとしては、例えば、広葉樹由来のパルプ、針葉樹由来のパルプが挙げられる。木材由来のパルプの調製方法としては、例えば、パルプ化法(蒸解法)による処理を含む方法が挙げられる。パルプ化法(蒸解法)による処理により着色物質であるリグニンが溶解して取り除かれ、白色度の高いパルプを得ることができる。パルプ化法(蒸解法)としては、例えば、サルファイト蒸解法、クラフト蒸解法、ソーダ・キノン蒸解法、オルガノソルブ蒸解法が挙げられ、環境面から、クラフトパルプが好ましい。
【0028】
パルプの調製方法においては、パルプ化法(蒸解法)に加え、さらに漂白処理を行うことが好ましい。これにより、白色度のより高いパルプが得られる。漂白処理方法としては、例えば、任意に通常の方法で脱リグニンしたパルプに対し、塩素処理(C)、二酸化塩素漂白(D)、アルカリ抽出(E)、次亜塩素酸塩漂白(H)、過酸化水素漂白(P)、アルカリ性過酸化水素処理段(Ep)、アルカリ性過酸化水素・酸素処理段(Eop)、オゾン処理(Z)、キレート処理(Q)、及びこれらの2以上の処理の組み合わせを施す方法が挙げられる。2以上の処理の組み合わせ(シーケンス)としては、例えば、D-E/P-D、C/D-E-H-D、Z-E-D-PZ/D-Ep-D、Z/D-Ep-D-P、D-Ep-D、D-Ep-D-P、D-Ep-P-D、Z-Eop-D-D、Z/D-Eop-D、Z/D-Eop-D-E-D(シーケンス中の「/」は、「/」の前後の処理を洗浄なしで連続して行なうことを意味する)が挙げられる。漂白処理は、上記の例に限定されることなく、一般的に使用される方法でもよい。漂白処理を経たパルプは、通常は流動状態(流動パルプ)である。パルプの白色度は、ISO 2470に基づいて、80%以上が好ましい。
【0029】
<酸加水分解処理>
酸加水分解処理に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸が挙げられる。酸濃度は、特に限定されないが、重合度及び白色度の維持の観点から、従来の粉末状セルロース製造の酸加水分解処理の際の酸濃度より低いことが好ましく、0.4~2.0Nがより好ましく、0.5~1.5Nがより好ましい。酸濃度が0.4N未満であると、酸によるセルロースの解重合が抑制されセルロースの重合度の低下を軽減できるが、微細化が困難となる場合がある。一方、2.0Nを超えると、セルロースの解重合が進み微細化が容易となるため、粉体流動性は向上するが、重合度の低下に伴い錠剤硬度が低下する(成形した際に、崩壊しやすくなる)場合がある。酸加水分解処理の反応条件は特に限定されないが、反応温度は通常80~100℃、反応時間は通常30分~3時間である。
【0030】
酸加水分解処理に先立ち、セルロース原料について前処理を行ってもよい。例えば、セルロース原料のスラリー化(分散液の調製)、セルロース原料濃度の調整が挙げられる。セルロース原料の濃度は、通常、分散液に対し3~10重量%(固形分換算)である。セルロース原料が漂白処理を経た流動パルプの場合、通常、加水分解前にパルプ濃度を高める処理を行うことが多い。セルロース原料濃度の調整(濃縮)には、スクリュープレス、ベルトフィルター等の脱水機を用いてもよい。酸加水分解処理は、セルロース原料のスラリーに対して行われてもよいが、シート状のセルロース原料に対し行われてもよい。セルロース原料がパルプのドライシートの場合、通常、パルプをほぐしてから酸加水分解処理を行う。パルプをほぐす際には、ロールクラッシャー等の解砕機を用いてもよい。
【0031】
<中和・洗浄・脱液・乾燥処理>
加水分解処理後、得られる処理物は、粉砕処理の前に適宜前処理を経る。前処理としては例えば、中和、洗浄、脱液、乾燥処理が挙げられ、中和、洗浄、脱液、乾燥処理をこの順に行うことが好ましい。中和処理は、アルカリ剤を添加して行えばよい。脱液処理は通常は固液分離処理であり、加水分解処理物から廃酸を分離できる。さらに、加水分解物は、乾燥(脱水)処理を経てもよい。これにより、固形分濃度を調整でき、粉末状セルロースの物性値の制御が容易にできる。固形分濃度は、通常、15%以上、好ましくは20%以上に調整される。乾燥は、気流式乾燥機を用いることが好ましい。これにより、加水分解後の処理物がケーキ状固体、スラリー、溶液等の態様にかかわらず、これらを気流中に分散しながら高速の熱風を当てることができ、かつ、ドライヤー内部の減圧効果を利用でき、瞬時に乾燥できる。また、熱風に触れる時間が極めて短いため、製品温度を低く保つことができ、熱に敏感な製品や融点の低い製品の乾燥に最適である。気流式乾燥機による乾燥の条件は特に限定されず、適宜設定できるが、一例を挙げると以下のとおりである。出口乾燥温度は、通常80~180℃、好ましくは90℃~160℃である。給気量は、通常150~350m3/h、好ましくは160~320m3/hである。
一方、噴霧乾燥機を用いる場合、では噴霧し熱風で瞬時に乾燥させ顆粒物を生成する。そのため、水分量が少ない固形状・半固形状の対象物ものの乾燥には適さないことが多く、また気流式乾燥機による乾燥よりも粒子が瞬間的に高熱に暴露されやすく、製品への影響が懸念される。
【0032】
<粉砕処理>
粉砕処理は、前工程を経た処理物を機械的に粉砕する処理である。粉砕と同時、又は粉砕後に、分級処理を行ってもよい。
【0033】
粉砕機としては、以下を例示できる。
カッティング式ミル:メッシュミル(株式会社ホーライ製)、アトムズ(株式会社山本百馬製作所製)、ナイフミル(パルマン社製)、カッターミル(東京アトマイザー製造株式会社製)、CSカッタ(三井鉱山株式会社製)、ロータリーカッターミル(株式会社奈良機械製作所製)、ターボカッター(フロイント産業株式会社製)、パルプ粗砕機(株式会社瑞光製)、及びシュレッダー(神鋼パンテック株式会社製)等。
ハンマー式ミル:ジョークラッシャー(株式会社マキノ製)、ハンマークラッシャー(槇野産業株式会社製)、及びマイクロパルペライザ(ホソカワミクロン社製)。
衝撃式ミル:パルベライザ(ホソカワミクロン株式会社製)、ファインインパクトミル(ホソカワミクロン株式会社製)、スーパーミクロンミル(ホソカワミクロン株式会社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン株式会社製)、ファインミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、CUM型遠心ミル(三井鉱山株式会社製)、イクシードミル(槇野産業株式会社製)、ウルトラプレックス(槇野産業株式会社製)、コントラプレックス(槇野産業株式会社製)、コロプレックス(槇野産業株式会社製)、サンプルミル(株式会社セイシン製)、バンタムミル(株式会社セイシン製)、アトマイザー(株式会社セイシン製)、トルネードミル(日機装株式会社製)、ネアミル(株式会社ダルトン製)、HT形微粉砕機(株式会社ホーライ製)、自由粉砕機(株式会社奈良機械製作所製)、ニューコスモマイザー(株式会社奈良機械製作所製)、ターボミル(フロイント産業株式会社製)、ギャザーミル(株式会社西村機械製作所製)、スパーパウダーミル(株式会社西村機械製作所製)、ブレードミル(日清エンジニアリング株式会社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング株式会社製)、Npaクラッシャー(三庄インダストリー株式会社製)、ウイレー粉砕機(株式会社三喜製作所製)、パルプ粉砕機(株式会社瑞光製)、ヤコブソン微粉砕機(神鋼パンテック株式会社製)、及びユニバーサルミル(株式会社徳寿工作所製)。
気流式ミル:CGS型ジェットミル(三井鉱山株式会社製)、ミクロンジェット(ホソカワミクロン株式会社製)、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)、クロスジェットミル(株式会社栗本鐵工所製)、超音速ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、カレントジェット(日清エンジニアリング株式会社製)、ジェットミル(三庄インダストリー株式会社製)、エバラジェットマイクロナイザ(株式会社荏原製作所製)、エバラトリアードジェット(株式会社荏原製作所製)、セレンミラー(増幸産業株式会社製)、ニューミクロシクトマット(株式会社増野製作所製)、及びクリプトロン(川崎重工業株式会社製)。
竪型ローラーミル:竪型ローラーミル(シニオン株式会社製)、縦型ローラーミル(シェフラージャパン株式会社製)、ローラーミル(コトブキ技研工業株式会社製)、VXミル(株式会社栗本鐵工所)、KVM型竪形ミル(株式会社アーステクニカ)、及びISミル(株式会社IHIプラントエンジニアリング)。
これらの中では、微粉砕性に優れることから、ジョークラッシャー(株式会社マキノ製)、パルベライザ(ホソカワミクロン株式会社製)、スーパーミクロンミル(ホソカワミクロン株式会社製)、トルネードミル(日機装株式会社製)、自由粉砕機(株式会社奈良機械製作所製)、ターボミル(フロイント産業株式会社製)、スパーパウダーミル(株式会社西村機械製作所製)、ブレードミル(日清エンジニアリング株式会社製)、超音速ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、又はカレントジェット(日清エンジニアリング株式会社製)が好ましい。
【0034】
粉砕処理、又は必要に応じて行う分級処理の条件は、所望の粉末状セルロースが得られるように適宜設定できる。例えば、粉砕条件(例えば、処理時間、投入量)と粉末状セルロースの所望の物性とから作成した検量線を参照して、処理条件を調整できる。
【0035】
粉砕処理の際、必要に応じて、少なくとも1つの他の成分(例えば、有機成分、無機成分)を酸加水分解処理物とともに粉砕処理に供してもよい。これにより、粉末状セルロースに機能性を付与、又は機能性を向上させることができる。他の成分の配合量は、適量を適宜選定すればよい。
【0036】
粉末状セルロースは、必要に応じて、化学的処理が施されていてもよい。化学的処理は、セルロース原料の重合度を大幅に損なうおそれのない処理が好ましい。化学的処理の時期は、セルロース原料に対して(酸加水分解処理の前に)行ってもよいし、粉砕処理の際に行ってもよい。
【0037】
〔粉末状セルロースの用途〕
粉末状セルロースは、成形体の賦形剤として用いることができる。これにより、成形体は良好な崩壊性を示すことができ、有効成分とともに粉末状セルロースを含む成型体は、良好な徐放性を示すことができる。成形体の剤型としては、例えば、錠剤が挙げられる。
【0038】
粉末状セルロースは、食品添加剤として用いることができる。これにより、食品の物性を改良し、又は品質を向上させることができる。食品としては、例えば、シュレッドチーズ、フライ製品、パン粉、ハムやソーセージのケーシングやそれらのピックル液、チキンサラダ、粉末調味料、練り製品、人工米、グミ製品、スープ類、ハンバーグ、餃子、焼き菓子、ソフトクリーム、から揚げ、パン、ドーナッツ、ホイップクリーム等の加工食品が挙げられる。
【0039】
粉末状セルロースの他の用途としては、例えば、衛生用品/化粧品添加剤(例えば、洗顔剤、歯磨剤、ファンデーション用)、工業用添加剤(例えば、ポリプロピレン、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の樹脂用)、ろ過助剤(例えば、レアメタル、食品用)、塗料/接着剤添加剤(例えば、ウレタン塗料用)、飼料(例えば、ペットフード、釣り餌)が挙げられる。
【実施例0040】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、本願は勿論、かかる実施例に限定され
るものではない。本願の実施例における試験方法を、次に示す。なお、物性値等の測定方法は、別途記載がない限り、上記に記載した測定方法である。
【0041】
<錠剤硬度>
粉末状セルロース100%の錠剤は、以下のようにして作製した。試料0.3gを、臼(市橋精機(株)製、直径8mm)に入れ、直径8mmの杵(市橋精機(株)製)で圧縮した。粉末状セルロース100%を40MPaで圧縮し、その応力を10秒間保持し、錠剤を作製した。圧縮機は、エナパック社製、HANDTAB-100を使用した。
【0042】
作製した錠剤を、シュロインゲル硬度計(フロイント産業社製、MT50型)を用いて、破壊したときの荷重を測定した。荷重は、錠剤の直径方向に加えた。試料5個の平均値で算出した。
【0043】
<錠剤崩壊性>
粉末状セルロース100%の錠剤は、以下のようにして作製した。試料0.3gを、臼(市橋精機社製、直径8mm)に入れ、直径8mmの杵(市橋精機社製)で圧縮した。粉末状セルロース100%を5MPaで圧縮し、その応力を10秒間保持し、錠剤を作製した(圧縮機はエナパック社製、HANDTAB-100を使用した)。
【0044】
作製した錠剤を試験管に入れ、純水20mlを加えた。振動機(アドバンテック東洋社製、振とう機TBK型)で3時間振動した後、75μm(JIS規格Z8801ワイヤー)を通過させ、残渣を回収した。残渣を105℃で乾燥し、重量を求め、作製した錠剤の重量に対する割合を求めた。測定は3回行い、その平均値を算出した。錠剤崩壊性が40%以下の場合良好、40%超65%以下の場合やや良好、65%超の場合不良、とそれぞれ判断できる。
【0045】
<粒子径分布、平均粒子径、粒子径分布のスパン>
レーザー回析式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、スペクトリス社マルバーンパナリティカル事業部)を用いた。測定原理としてレーザー散乱法を用いて、乾式測定、湿式測定(超音波照射あり)、及び湿式測定(超音波照射なし)による粒子径分布を測定した。粒度分布を体積蓄積分布として表した場合に、体積蓄積分布の積算値が10%、50%、90%である値を、それぞれ粒子径分布D.10、D.50、D.90とした。湿式(超音波照射なし)のD.50を平均粒子径とした。また、前記の式(3)により、粒子径分布のスパンを算出した。
【0046】
乾式測定は、供給口内に、散乱強度が1%未満となるように試料を添加して以下の条件で行った。
・分散ユニット:Aero5
・空気圧:2bar
・フィードレート:25
【0047】
湿式測定は、3500rpmで攪拌されている水中の測定部に、散乱強度が10%程度になるように試料を添加して行った。超音波を照射する場合、下記条件に基づいて水中の試料に超音波を当ててから湿式測定を行った。
・モード:連続
・強度:100%
・時間:600秒
【0048】
粒子径分布の解析は、いずれの測定条件の場合も以下の条件で行った。
・解析:汎用
・解析感度:強調
・光散乱モデル:Mie理論
【0049】
<超音波水中残存率、水中残存率>
超音波水中残存率及び水中残存率は、上記測定値、並びに前記式(1)及び(2)から算出した。
【0050】
<長径(L)、短径(D)、長径短径比(L/D)>
JIS試験用ふるい(東京スクリーン社製:75μm)にて粉末状セルロース1gを分級し、観察用試料を調整した。光学顕微鏡を用いて、観察用試料を100倍の倍率で観察し、無作為に選んだ140本の粉末状セルロースの長径(L)及び短径(D)を計測し、それぞれの長径/短径比(L/D)を算出した。Lは最大径を、D2は最小径をそれぞれ表す。算出した長径/短径比(L/D)のうち、上下20の値を除いた合計100個の粉末状セルロースの平均値として算出した。
【0051】
<粉末状セルロースの調製>
<実施例1>
無塩素漂白パルプを、パルプ濃度5.5%、塩酸濃度1.2Nにおいて95℃で2時間、加水分解反応させた。加水分解反応が終了した後、水酸化ナトリウムで中和し、工業用水で洗浄した後、脱液した。これを、固形分が25%以上になるように脱水し、出口乾燥温度100℃、給気量180m3/hで1時間、気流式乾燥機にて送風乾燥し、酸加水分解処理パルプを得た。得られた酸加水分解処理パルプを、ハンマーミル(ホソカワミクロン社製、マイクロパルペライザAP-S型)を用いて機械的に適宜粉砕・分級を行い、平均粒子径61.3μmの粉末状セルロースを得た。
【0052】
<実施例2>
気流式乾燥機の出口乾燥温度を150℃、給気量を180m3/hとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒子径80.3μmの粉末状セルロースを得た。
【0053】
<実施例3>
気流式乾燥機の出口乾燥温度を100℃、給気量を310m3/hとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒子径82.2μmの粉末状セルロースを得た。
【0054】
<実施例4>
気流式乾燥機の出口乾燥温度を150℃、給気量を270m3/hとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒子径63.2μmの粉末状セルロースを得た。
【0055】
<比較例1>
無塩素漂白パルプを、パルプ濃度5.5%、塩酸濃度0.15Nにおいて95℃で2時間、加水分解反応させた。加水分解反応が終了した後、水酸化ナトリウムで中和し、工業用水で洗浄した後、脱液した。これを、固形分が25%以上になるように脱水した。脱水物をプラネターミキサー(井上製作所製)で混練し、60℃の温度条件下で約1日、防爆式送風乾燥機で送風乾燥し、酸加水分解処理パルプを得た。得られた酸加水分解処理パルプを、ハンマーミル(ホソカワミクロン社製、AP-S型)を用いて機械的に適宜粉砕・分級を行い、平均粒子径42.3μmの粉末状セルロース(比較例1)を得た。
【0056】
<比較例2>
無塩素漂白パルプを、パルプ濃度5.5%、塩酸濃度0.30Nにおいて95℃で2時間、加水分解反応させた。加水分解反応が終了した後、水酸化ナトリウムで中和し、工業用水で洗浄した後、脱液した。これを、固形分が50%以上になるように脱水した。脱水物をプラネターミキサー(井上製作所製)で混練し、60℃の温度条件下で約1日、防爆式送風乾燥機で送風乾燥し、酸加水分解処理パルプを得た。得られた酸加水分解処理パルプを、ハンマーミル(ホソカワミクロン社製、AP-S型)を用いて機械的に適宜粉砕・分級を行い、平均粒子径31.1μmの粉末状セルロース(比較例2)を得た。
【0057】
各サンプルの物性値、測定値を表1に示す。
【0058】
【0059】
表1から明らかなとおり、比較例1~2の粉末状セルロースは、超音波水中残存率が60%を超えており、錠剤崩壊性に劣っていたのに対し、実施例1~4の粉末状セルロースは、いずれも、超音波水中残存率が20~60%と比較的低く、錠剤崩壊性が良好であった。これらの結果は、本発明の粉末状セルロースが、錠剤等の成形体とした際の崩壊性が良好であり、経口投与すると飲み込み等嚥下の際の動的な振動による崩壊性が高まるものと予測され、適所での吸収効率の向上が期待できることを示している。