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特開2022-41852再生条件特定装置及び再生条件特定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041852
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】再生条件特定装置及び再生条件特定方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/00 20060101AFI20220304BHJP
   B22C 5/04 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B22C1/00 L
B22C5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050826
(22)【出願日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2020146916
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】野口 陽平
【テーマコード(参考)】
4E092
【Fターム(参考)】
4E092AA01
4E092AA21
4E092AA41
4E092BA04
4E092CA01
4E092CA02
4E092CA03
4E092CA04
(57)【要約】
【課題】再生される鋳物砂から溶出する粘結剤の量を目標値で維持するための再生条件を特定する技術を提供する。
【解決手段】再生条件特定装置(1)は、砂再生システムにより再生された鋳物砂から溶出する粘着剤の量から、前記砂再生システムにおける再生条件を特定する再生条件特定ステップを実行する一又は複数のプロセッサを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂再生システムにより再生された鋳物砂から溶出する粘着剤の量から、前記砂再生システムにおける再生条件を特定する再生条件特定ステップを実行する一又は複数のプロセッサを備えている、
ことを特徴とする再生条件特定装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記再生条件を示す再生条件データと、前記砂再生システムにより再生された鋳物砂から溶出する粘結剤の量を表す粘結剤データとのセットを参照して、当該再生条件データと当該粘結剤データとの関係を表す非線形の関係式を、非線形回帰アルゴリズムを用いて特定する関係式特定ステップ、を更に実行し、
前記再生条件特定ステップにおいて、前記粘結剤データ及び前記関係式を用いた演算により、前記再生条件データを特定する、
を実行する一又は複数のプロセッサを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の再生条件特定装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記再生条件特定ステップにおいて特定した再生条件データを用いて前記砂再生システムを制御する制御ステップ、を実行する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の再生条件特定装置。
【請求項4】
前記粘結剤データは、前記鋳物砂を混練する際の温度において当該鋳物砂から溶出する粘結剤の量、及び、前記温度よりも高い温度において前記鋳物砂から溶出する粘結剤の量、の少なくともいずれか一方を示すデータを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の再生条件特定装置。
【請求項5】
前記再生条件データは、前記砂再生システムにおいて前記鋳物砂と微粉とを分離するための風量、前記鋳物砂を加熱する焼却装置への前記鋳物砂の投入量、及び加熱温度、前記鋳物砂を研磨する砂研磨装置の研磨電流値、及び前記鋳物砂から残滓を除去するための風量、並びに、前記砂再生システムにより再生された再生砂と新砂とを混合する際の前記再生砂の投入量及び前記新砂の投入量、の少なくともいずれかを示すデータを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の再生条件特定装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記関係式特定ステップにおいて、遺伝的アルゴリズムによって前記非線形の関係式を特定する、
ことを特徴とする請求項2又は5に記載の再生条件特定装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記粘結剤データと前記再生条件データとの相関関係を機械学習した学習済モデルを用いて、前記再生条件データから前記粘結剤データを推定する推定ステップ、を更に実行し、
前記プロセッサは、前記関係式特定ステップにおいて、前記学習済モデルに入力した再生条件データと、前記推定ステップにおいて推定した粘結剤データとの関係を表す前記非線形の関係式を特定する、
ことを特徴とする請求項2、5又は6に記載の再生条件特定装置。
【請求項8】
一又は複数のプロセッサが、砂再生システムにより再生された鋳物砂から溶出する粘着剤の量から、前記砂再生システムにおける再生条件を特定する再生条件特定ステップ、
を含むことを特徴とする再生条件特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂再生システムが再生する鋳物砂の砂性状を管理する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳型の造型に用いる鋳物砂の砂性状を管理する技術が知られている。例えば特許文献1には、鋳物砂試験装置の測定値を活用して、従来において砂管理技術者が経験的に判断していた鋳物砂の管理方法を記述した知識ベースからデータを呼出して表示するシステムが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、ファンドリー(鋳造工場)において鋳造棄却品を削減することを目的とする砂最適化用コンピュータ利用システムが記載されている。特許文献2に記載のシステムでは、砂のpH値等のパラメータの値、パラメータ、棄却、棄却種別の相関関係をプロセッサモジュールが計算し、規範的ソリューションを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-051791号公報(1995年2月28日公開)
【特許文献2】特表2016-508882号公報(2016年3月24日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、再生された鋳物砂を用いて造型される鋳型は、鋳物砂の砂性状(特に、鋳物砂から溶出する粘結剤(バインダー)の量)によってその品質が変化する。そのため、再生される鋳物砂の砂性状、特に粘結剤の溶出量を安定させることが重要である。粘結剤の溶出量を安定させるためには、鋳物砂の再生工程における再生条件(プラントの制御パラメータ、等)を適切に設定する必要がある。しかしながら、再生条件をどのように設定すればよいかは再生工程の管理者等の経験則によるものもあり、再生条件を適切に設定して粘結剤の溶出量を安定させることは困難であった。上述の特許文献1及び2に記載の技術でも、再生される鋳物砂からの粘結剤の溶出量を適切に維持することは困難であった。
【0006】
本発明の一態様は、砂再生システムが再生する鋳物砂から溶出する粘結剤の量を目標値で維持するための再生条件を特定する技術を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る再生条件特定装置は、再生条件特定ステップを実行する一又は複数のプロセッサを備えている。また、本発明の一態様に係る再生条件特定方法は、再生条件特定ステップを含んでいる。
【0008】
そして、前記再生条件特定装置及び前記再生条件特定方法において、再生条件特定ステップは、前記プロセッサが、砂再生システムにより再生された鋳物砂から溶出する粘着剤の量から、前記砂再生システムにおける再生条件を特定するステップである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、砂再生システムが再生する鋳物砂から溶出する粘結剤の量を目標値で維持するための再生条件を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る砂管理システムの構成を示す図である。
図2図1の砂管理システムに含まれる砂再生システムの構成を示すブロック図である。
図3図1の砂管理システムに含まれる再生条件特定装置の構成を示すブロック図である。
図4図3の再生条件特定装置が実施する再生条件特定方法の流れを示すフローチャートである。
図5】遺伝的アルゴリズムを例示する図である。
図6】再生条件特定装置が実施する関係式特定ステップの流れを示すフローチャートである。
図7】再生条件特定装置が実施する処理の流れを示すフローチャートである。
図8】クロスオーバーの内容を例示する図である。
図9】サブツリー突然変異の内容を例示する図である。
図10】ホイスト突然変異の内容を例示する図である。
図11】点突然変異の内容を例示する図である。
図12】本発明の第2の実施形態に係る砂管理システムの構成を示す図である。
図13図12の砂管理システムに含まれる再生条件特定装置が実施する再生条件特定方法の流れを示すフローチャートである。
図14】学習済モデルと遺伝的アルゴリズムとを例示する図である。
図15図12の砂管理システムに含まれる機械学習装置の構成を示すブロック図である。
図16図15の機械学習装置が実施する機械学習方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
(砂管理システム)
本発明の第1の実施形態に係る砂管理システムS1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、砂管理システムS1の構成を示すブロック図である。
【0012】
砂管理システムS1は、鋳型の造型に用いる鋳物砂を管理するためのシステムである。砂管理システムS1は、図1に示すように、鋳造システムS11と、砂再生システムS12と、再生条件特定装置1と、データロガー2と、を備えている。
【0013】
鋳造システムS11は、鋳物砂(後述する再生砂と新砂との混合物)を用いて鋳造を行うシステムである。鋳造システムS11は、鋳物砂に粘結剤(バインダー)を含む添加物を加えて混練し、混練された鋳物砂を鋳枠に充填することによって、鋳型を造型する。粘結剤は、例えば、水ガラス等の無機材料である。造型される鋳型は例えば、主型又は中子である。また、鋳造システムS11は、鋳型に溶湯を流し込んだ後、鋳型に注入された溶湯を冷却する。冷却された溶湯は、鋳型の内部で凝固して鋳物となる。鋳造システムS11は、鋳型に振動を与えることによって、鋳型を解体して砂塊にするとともに、冷却により得られた鋳物を取り出す。
【0014】
砂再生システムS12は、鋳造システムS11にて得られた砂塊から鋳物砂を再生するシステムである。砂再生システムS12の構成については、参照する図面を代えて後述する。
【0015】
再生条件特定装置1は、再生条件特定方法M1を実施するための装置である。再生条件特定方法M1は、砂再生システムS12における再生条件を示す再生条件データと、砂再生システムS12により再生された鋳物砂から溶出する粘結剤の量を表す粘結剤データとのセットを参照して、再生条件データと粘結剤データとの関係を表す非線形の関係式を、非線形回帰アルゴリズムを用いて特定する関係式特定ステップを含む。また、再生条件特定方法M1は、粘結剤データ及び特定した関係式を用いた演算により、再生条件データを特定する再生条件特定ステップを含む。再生条件特定装置1の構成及び再生条件特定方法M1の流れの詳細については、参照する図面を代えて後述する。
【0016】
粘結剤データは、再生された鋳物砂から溶出する粘結剤の量を表すデータである。粘結剤データは、例えば、溶出バインダー量、及び、残留バインダー量、の少なくともいずれか一方を示すデータを含む。溶出バインダー量とは、鋳物砂を混練する際の温度において鋳物砂から溶出する粘結剤の量をいう。残留バインダー量とは、混練する際の温度よりも高い所定の温度において鋳物砂から溶出する粘結剤の量をいう。溶出バインダー量又は残留バインダー量は、例えば、pH、導電率又は強度により表される。
【0017】
再生条件データは、砂再生システムS12における再生条件を示すデータである。再生条件の詳細については参照する図面を代えて後述する。
【0018】
データロガー2は、粘結剤データ及び再生条件データを収集すると共に、収集した粘結剤データ及び再生条件データを再生条件特定装置1に提供する。データロガー2は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)やIPC(Industrial PC)などにより構成することができる。
【0019】
(砂再生システム)
図2は、砂再生システムS12の構成を示すブロック図である。図2に示すように、砂再生システムS12は、解砕機21、微粉抜装置22、集塵機23、流動培焼装置24、砂冷却装置25、砂研磨装置26、集塵機27、砂分級装置28、及び集塵機29を備えている。
【0020】
解砕機21は、鋳造システムS11にて得られた砂塊を解砕して砂粒にする。解砕機21の解砕により得られる砂粒の集合には、再生対象となる鋳物砂の砂粒のほかに、シリカ、水ガラス等の鋳物砂以外の微粉が含まれている。
【0021】
微粉抜装置22は、解砕機21により得られた砂粒の集合から鋳物砂以外の微粉(シリカ、水ガラス、等)を分離する。微粉抜装置22は、砂粒に送風する送風機221を備える。送風機221の送風により微粉が集塵機23に集められる。微粉抜装置22は、微粉抜装置22における風量を測定し、測定値をデータロガー2に出力する。
【0022】
集塵機23には、微粉抜装置22により砂粒から取り除かれた微粉が集まる。集塵機23は、集塵機23における風量を測定し、測定値をデータロガー2に出力する。
【0023】
流動培焼装置24は、微粉が取り除かれた粒状体の鋳物砂を加熱する焼却装置である。流動培焼装置24は、微粉抜装置22から吸引又は圧送により鋳物砂を搬送し、搬送した鋳物砂を加熱する。加熱することで水ガラスの結晶中に含まれる結晶水が蒸発する。結晶水の蒸発に伴い、水ガラスの結晶中に空隙が生じることになる。これにより、鋳物砂に含まれる水ガラス等の粘結剤が脆くなり、砂が解砕しやすくなる。
【0024】
流動培焼装置24には、予め設定された量(以下「鋳物砂投入量」とも記載する)の鋳物砂が投入される。ここで、鋳物砂投入量とは、例えば、単位時間あたり(連続処理の場合)又は1回の処理あたり(バッチ処理の場合)に流動培焼装置24に投入される鋳物砂の重量又は体積のことを指す。流動培焼装置24は、設定された鋳物砂投入量を、データロガー2に提供する。
【0025】
また、流動培焼装置24は、流動培焼装置24の加熱温度を測定し、測定値をデータロガー2に出力する。
【0026】
砂冷却装置25は、加熱された鋳物砂を冷却する。砂冷却装置25は、例えば、外気を取り込むことで、鋳物砂を冷却する空冷式冷却装置である。砂冷却装置25は、約400度の鋳物砂の温度を、次工程に適した温度(例えば、80度以下)まで低下させる。
【0027】
砂研磨装置26は、粒状体の鋳物砂同士を衝突させることにより、鋳物砂から水ガラス等の粘結剤の残滓を剥離させるとともに、鋳物砂を球形にする装置である。砂研磨装置26は、砂冷却装置25から吸引又は圧送により鋳物砂を搬送する。また、砂研磨装置26は、回転ドラム(図示略)を回転させる。回転ドラムの回転による遠心力により、鋳物砂が巻き上がり、鋳物砂同士が衝突して研磨され、残滓が除去される。砂研磨装置26により得られる鋳物砂、すなわち、表面に付着した残滓が除去された後の鋳物砂のことを、以下、「再生砂」とも記載する。砂研磨装置26は、研磨電流値を測定し、測定値をデータロガー2に出力する。
【0028】
集塵機27には、砂研磨装置26により鋳物砂から剥離された水ガラス等の残滓のうちの軽いものが集まる。集塵機27は、集塵機27における風量を測定し、測定値をデータロガー2に出力する。
【0029】
砂分級装置28は、再生砂と、再生砂から剥離された水ガラス等の残滓を分離する。また、砂分級装置28は、残滓が分離された再生砂に、新砂、すなわち、未使用の鋳物砂を加える。再生砂と新砂との混合物は、鋳造システムS11において鋳物砂として利用される。
【0030】
砂分級装置28は、再生砂に送風する送風機281を備える。送風機281の送風により残滓が集塵機29に集められる。砂分級装置28は、砂分級装置28における風量を測定し、測定値をデータロガー2に出力する。
【0031】
また、砂分級装置28には、予め設定された量(以下「再生砂投入量」とも記載する)の再生砂が投入される。ここで、再生砂投入量とは、例えば、単位時間あたり(連続処理の場合)又は1回の処理あたり(バッチ処理の場合)に砂分級装置28に投入される再生砂の重量又は体積のことを指す。砂分級装置28は、設定された再生砂投入量を、データロガー2に提供する。
【0032】
また、砂分級装置28には、予め設定された量(以下「新砂投入量」とも記載する)の新砂が投入される。ここで、新砂投入量とは、例えば、単位時間あたり(連続処理の場合)又は1回の処理あたり(バッチ処理の場合)に砂分級装置28に投入される新砂の重量又は体積のことを指す。砂分級装置28は、設定された新砂投入量を、データロガー2に提供する。
【0033】
データロガー2が砂再生システムS12から収集する再生条件データは、以下の一部又は全部のデータを含む。
・微粉抜装置22における風量
・集塵機23における風量
・流動培焼装置24への鋳物砂投入量
・流動培焼装置24の加熱温度
・砂研磨装置26の研磨電流値
・集塵機27の風量
・砂分級装置28への再生砂投入量
・砂分級装置28への新砂投入量
すなわち、データロガー2が収集する再生条件データは、微粉抜装置22及び集塵機23における風量、流動培焼装置24への鋳物砂の投入量及び加熱温度、砂研磨装置26の研磨電流値及び鋳物砂から残滓を除去するための風量、並びに、砂再生システムS12により再生された再生砂と新砂とを混合する際の再生砂の投入量及び新砂の投入量、の少なくともいずれかを示すデータを含む。
【0034】
(再生条件特定装置の構成)
再生条件特定装置1の構成について、図3を参照して説明する。図3は、再生条件特定装置1の構成を示すブロック図である。
【0035】
再生条件特定装置1は、汎用コンピュータを用いて実現されており、プロセッサ11と、一次メモリ12と、二次メモリ13と、入出力インタフェース14と、通信インタフェース15と、バス16とを備えている。プロセッサ11、一次メモリ12、二次メモリ13、入出力インタフェース14、及び通信インタフェース15は、バス16を介して相互に接続されている。
【0036】
二次メモリ13には、再生条件特定プログラムP1、粘結剤データ及び再生条件データが格納されている。プロセッサ11は、二次メモリ13に格納されている再生条件特定プログラムP1、粘結剤データ及び再生条件データを一次メモリ12上に展開する。そして、プロセッサ11は、一次メモリ12上に展開された再生条件特定プログラムP1に含まれる命令に従って、再生条件特定方法M1に含まれる各ステップを実行する。一次メモリ12上に展開された粘結剤データと再生条件データとは、再生条件特定方法M1の関係式特定ステップM11(後述)をプロセッサ11が実行する際に利用される。なお、再生条件特定プログラムP1が二次メモリ13に格納されているとは、ソースコード、又は、ソースコードをコンパイルすることにより得られた実行形式ファイルが二次メモリ13に記憶されていることを指す。
【0037】
プロセッサ11として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。プロセッサ11は、「演算装置」と呼ばれることもある。
【0038】
また、一次メモリ12として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。一次メモリ12は、「主記憶装置」と呼ばれることもある。また、二次メモリ13として利用可能なデバイスとしては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ODD(Optical Disk Drive)、FDD(Floppy(登録商標) Disk Drive)、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。二次メモリ13は、「補助記憶装置」と呼ばれることもある。なお、二次メモリ13は、再生条件特定装置1に内蔵されていてもよいし、入出力インタフェース14又は通信インタフェース15を介して再生条件特定装置1と接続された他のコンピュータ(例えば、クラウドサーバを構成するコンピュータ)に内蔵されていてもよい。なお、本実施形態においては、再生条件特定装置1における記憶を2つのメモリ(一次メモリ12及び二次メモリ13)により実現しているが、これに限定されない。すなわち、再生条件特定装置1における記憶を1つのメモリにより実現してもよい。この場合、例えば、そのメモリの或る記憶領域を一次メモリ12として利用し、そのメモリの他の記憶領域を二次メモリ13として利用すればよい。
【0039】
入出力インタフェース14には、入力デバイス及び/又は出力デバイスが接続される。入出力インタフェース14としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、ATA(Advanced Technology Attachment)、SCSI(Small Computer System Interface)、PCI(Peripheral Component Interconnect)などのインタフェースが挙げられる。入出力インタフェース14に接続される入力デバイスとしては、データロガー2が挙げられる。再生条件特定方法M1において取得するデータは、データロガー2を介して再生条件特定装置1に入力され、一次メモリ12に記憶される。また、入出力インタフェース14に接続される入力デバイスとしては、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、又は、これらの組み合わせが挙げられる。また、入出力インタフェース14に接続される出力デバイスとしては、ディスプレイ、プロジェクタ、プリンタ、スピーカ、ヘッドホン、又は、これらの組み合わせが挙げられる。再生条件特定方法M1においてユーザに提供する情報は、これらの出力デバイスを介して再生条件特定装置1から出力される。なお、再生条件特定装置1は、ラップトップ型コンピュータのように、入力デバイスとして機能するキーボードと、出力デバイスとして機能するディスプレイとを、それぞれ内蔵してもよい。或いは、再生条件特定装置1は、タブレット型コンピュータのように、入力デバイス及び出力デバイスの両方として機能するタッチパネルを内蔵していてもよい。
【0040】
通信インタフェース15には、ネットワークを介して他のコンピュータが有線接続又は無線接続される。通信インタフェース15としては、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などのインタフェースが挙げられる。利用可能なネットワークとしては、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、又は、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。再生条件特定方法M1において再生条件特定装置1が他のコンピュータ(例えば、データロガー2)から取得するデータ(例えば、粘結剤データ、再生条件データ)、及び、再生条件特定方法M1において再生条件特定装置1が他のコンピュータに提供するデータは、これらのネットワークを介して送受信される。
【0041】
なお、本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ11)を用いて再生条件特定方法M1を実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて再生条件特定方法M1を実行する構成を採用してもよい。この場合、連携して再生条件特定方法M1を実行する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、バスを介して相互に通信可能に構成されていてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたプロセッサと、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサとが、連携して再生条件特定方法M1を実行する態様などが考えられる。
【0042】
また、本実施形態においては、再生条件特定方法M1を実行するプロセッサ(プロセッサ11)と同じコンピュータに内蔵されたメモリ(二次メモリ13)に粘結剤データ及び再生条件データを格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、再生条件特定方法M1を実行するプロセッサと異なるコンピュータに内蔵されたメモリに粘結剤データ及び再生条件データを格納する構成を採用してもよい。この場合、粘結剤データ及び再生条件データを格納するメモリが内蔵されたコンピュータは、再生条件特定方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータとネットワークを介して相互に通信可能に構成される。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたメモリに粘結剤データ及び再生条件データを格納し、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサが再生条件特定方法M1を実行する態様などが考えられる。
【0043】
また、本実施形態においては、単一のメモリ(二次メモリ13)に粘結剤データ及び再生条件データを格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のメモリに粘結剤データ及び再生条件データを分散して格納する構成を採用してもよい。この場合、粘結剤データ及び再生条件データを格納する複数のメモリは、単一のコンピュータ(再生条件特定方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータであってもよいし、そうでなくてもよい)に設けられていてもよいし、複数のコンピュータ(再生条件特定方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータを含んでいてもよいし、そうでなくてもよい)に分散して設けられていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成する複数のコンピュータの各々に内蔵されたメモリに粘結剤データ及び再生条件データを分散して格納する構成などが考えられる。
【0044】
(粘結剤データの測定方法)
砂再生システムS12により生成される、再生砂と新砂との混合物である鋳物砂の粘結剤データを測定する測定方法の一例について説明する。
【0045】
粘結剤データの測定は砂再生システムS12の管理者等のユーザにより行われてもよくまた、粘結剤データを測定する装置が粘結剤データの測定処理を実行してもよい。ユーザが行う場合、ユーザは、再生された鋳物砂の一部を採取し、採取した鋳物砂を、温度の管理された純水に満たされた電極付き測定用カップに所定量投入する。ユーザは、投入された鋳物砂を純水の中で所定時間かき混ぜて粘結剤を溶出させ、pHを測定する。または、ユーザは、電極に電圧を印加して導電率を測定する。ユーザは、測定されたpH又は導電率を表す粘結剤データをデータロガー2に入力する。
【0046】
測定装置が粘結剤データを測定する場合、測定装置(図示略)は、再生された鋳物砂の一部を採取し、採取した鋳物砂を、温度の管理された純水に満たされた電極付き測定用カップに所定量投入する。測定装置は、投入された鋳物砂を純水の中で所定時間かき混ぜて粘結剤を溶出させ、pHを測定する。または、測定装置は、電極に電圧を印加して導電率を測定する。測定装置は、測定されたpH又は導電率を表す粘結剤データをデータロガー2に出力する。
【0047】
別の粘結剤データの測定方法について説明する。再生された鋳物砂の一部を採取し、採取した鋳物砂を温度の管理された純水に満たされた測定用カップに所定量投入する。測定装置は、投入された鋳物砂を純水の中で所定時間かき混ぜて粘結剤を溶出させる。その後、この鋳物砂でテストピースを造型し、テストピースの強度を測定する。このテストピースの強度が粘着剤データとなる。粘着剤データは、前述と同様にユーザがデータロガー2に入力してもよく、測定装置がデータロガー2に出力してもよい。
【0048】
(再生条件特定方法の流れ)
再生条件特定方法M1の流れについて、図4を参照して説明する。図4は、再生条件特定方法M1の流れを示すフローチャートである。
【0049】
再生条件特定方法M1は、関係式特定ステップM11と、関係式出力ステップM12と、判定ステップM13と、再生条件特定ステップM14と、制御ステップM15と、を含んでいる。
【0050】
関係式特定ステップM11は、プロセッサ11が、砂再生システムS12における再生条件を示す再生条件データx1,x2,…,xnと、砂再生システムS12により再生された鋳物砂から溶出する粘結剤の量を表す粘結剤データyとのセットを参照して、再生条件データと粘結剤データとの関係を表す非線形の関係式を、非線形回帰アルゴリズムを用いて特定するステップである。本実施形態において、プロセッサ11は、遺伝的アルゴリズムを用いて関係式y=f(x1,x2,…,xn)を特定する。なお、関係式特定ステップM11の具体例については、参照する図面を代えて後述する。
【0051】
関係式出力ステップM12は、プロセッサ11が、関係式特定ステップM11にて特定した関係式y=f(x1,x2,…,xn)を出力するステップである。本実施形態において、プロセッサ11は、関係式y=f(x1,x2,…,xn)をディスプレイに出力(表示)する。このとき、プロセッサ11は、関係式を表すグラフをディスプレイに表示してもよい。
【0052】
ディスプレイに出力された関係式y=f(x1,x2,…,xn)を目視により確認したユーザは、再生条件特定装置1が特定した関係式y=f(x1,x2,…,xn)が適切な関係式であるか否かを判断する。そして、この判断を終えたユーザは、判断結果を再生条件特定装置1に入力するためのユーザ操作を行う。
【0053】
判定ステップM13は、プロセッサ11が、関係式特定ステップM11にて特定した関係式y=f(x1,x2,…,xn)が適切な関係式であるか否かを、上述したユーザ操作に応じて判定するステップである。判定ステップM13にて「適切な関係式である」と判定された場合、プロセッサ11は、後述する再生条件特定ステップM14を実行する。一方、判定ステップM13にて「適切な関係式でない」と判定された場合、プロセッサ11は、前述した関係式特定ステップM11以降の処理を再び実行する。なお、関係式特定ステップM11以降の処理を再び実行する場合、プロセッサ11は、関係式特定ステップM11において用いる粘結剤データ及び再生条件データのセットを変更したり、遺伝的アルゴリズムで用いるパラメータを変更したりする処理を行ってもよい。
【0054】
再生条件特定ステップM14は、関係式特定ステップM11にて特定された関係式y=f(x1,x2,…,xn)を用いて、粘結剤データyを目標値に一致させるために、再生条件データx1,x2,…,xnをどのような値に設定すれば良いかを特定するステップである。すなわち、本実施形態において、プロセッサ11は、粘結剤データ及び関係式を用いた演算により、再生条件データを特定する。
【0055】
本実施形態において、プロセッサ11は、関係式y=f(x1,x2,…,xn)に、粘結剤データyの目標値を代入することによって、再生条件データx1,x2,…,xnを未知数とする方程式を得る。そして、プロセッサ11は、この方程式を解くことによって、再生条件データx1,x2,…,xnの設定値を得る。なお、未知数である再生条件データx1,x2,…,xnの個数が2個以上である場合、上記の方程式の解を一意に決定することはできない。この場合、プロセッサ31は、上記の方程式の解の少なくとも何れか1つを、再生条件データx1,x2,…,xnの設定値とする。
【0056】
制御ステップM15は、プロセッサ11が、再生条件データの値が再生条件特定ステップM14にて特定した設定値になるよう、砂再生システムS12を制御するステップである。すなわち、本実施形態において、プロセッサ31は、再生条件特定ステップM14にて特定した再生条件データを用いて砂再生システムS12を制御する。
【0057】
本実施形態において、プロセッサ11は、風量が再生条件特定ステップM14にて特定した設定値になるよう、微粉抜装置22、砂研磨装置26、及び砂分級装置28を制御する。また、プロセッサ31は、鋳物砂投入量及び加熱温度が再生条件特定ステップM14にて特定した設定値になるよう、流動培焼装置24を制御する。また、プロセッサ31は、研磨電流値が再生条件特定ステップM14にて特定した設定値になるよう、砂研磨装置26を制御する。また、プロセッサ31は、再生砂投入量及び新砂投入量が再生条件特定ステップM14にて特定した設定値になるよう、砂分級装置28を制御する。
【0058】
なお、本実施形態においては、粘結剤データyと再生条件データx1,x2,…,xnとの関係を表す非線形の関係式を特定するためのアルゴリズムとして、遺伝的アルゴリズムを用いている。しかしながら、本発明は、これに限定されない。すなわち、粘結剤データyと再生条件データx1,x2,…,xnとの関係を表す非線形の関係式を特定するためのアルゴリズムとして、ロジスティック回帰等の遺伝的アルゴリズム以外の非線形回帰アルゴリズムを用いてもよい。
【0059】
(関係式特定ステップの具体例)
再生条件特定方法M1に含まれる関係式特定ステップM11の具体例について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、遺伝的アルゴリズムGAを例示する図である。図6は、プロセッサ11が実行する関係式特定ステップM11の流れを例示するフローチャートである。図5の例では、遺伝的アルゴリズムGAは、第一世代G1~第四世代G4を含む。
【0060】
本具体例に係る関係式特定ステップM11においては、遺伝的アルゴリズムを用いて関係式y=f(x1,x2,…,xn)を特定する。ここで、遺伝的アルゴリズムとは、解の候補を遺伝子で表現した個体iを複数用意し、適応度Diの高い個体iを優先的に選択して交叉、突然変異などの操作を繰り返しながら解を探索するアルゴリズムのことを指す。本実施形態において、個体iは、非線形の関係式をツリー構造で表したものであり、関係式に含まれる演算子及び引数がツリーのノードで表される。
適応度Diは適応度関数によって与えられる。
【0061】
プロセッサ11は、所定のモジュール(以下、「Aモジュール」という)を用いて関係式特定ステップM11を実行する。Aモジュールは、遺伝的アルゴリズムを実行するモジュールである。Aモジュールでは、プロセッサ31は、まず、新しいデータを予測するために、既知の独立変数とそれらの従属変数ターゲットの間の関係を表す単純なランダム式の母集団を作成することから始める。次に、プロセッサ31は、遺伝子操作を受ける集団から最も適した個体を選択することにより、集団を進化させて次の世代の集団を生成する。上記の操作により、上記関係を最もよく示す関係式が特定される。
【0062】
本具体例では、Aモジュールとして、遺伝的プログラミングを実行するモジュールが用いられる。遺伝的プログラミングとは、遺伝的アルゴリズムを拡張したものであり、遺伝子型の表現としてツリー構造を用いる。なお、図6に示す関係式特定ステップM11の流れは例示であり、遺伝的アルゴリズムGAを用いた関係式の特定方法は図6に示した方法に限定されるものではない。遺伝的アルゴリズムGAを用いた関係式の特定方法として、他の種々の手法が採用され得る。
【0063】
ステップM121において、プロセッサ31は、粘結剤データ及び再生条件データを取得する。本動作例では、プロセッサ31は、二次メモリ33に記憶された粘結剤データ及び再生条件データを読み出すことにより、粘結剤データ及び再生条件データを取得する。
【0064】
ステップM122において、プロセッサ11は、遺伝的アルゴリズムGAで用いるパラメータ(以下「個体パラメータ」という)を取得する。個体パラメータは例えば、生成個体数N、トーナメントサイズNt、交叉確率Pc、突然変異確率Pms、進化世代数Ng、構文木に用いる演算子Oj、構文木の最大の深さd、事象発生確率Pk1~Pk5を含む。各個体パラメータの値は例えば、ユーザが再生条件特定装置1に入力する。
【0065】
生成個体数Nは、集合に含める個体iの数を表す。トーナメントサイズNtは、現世代の集合からランダムに選択する個体iの数である。突然変異確率Pmsは、遺伝子が突然変異をする確率である。構文木に用いる演算子Oiは、例えば、Max、Min、sqrt(ルート)、log(自然対数)、+、-、×、÷、sin(ラジアン)、cos(ラジアン)、tan(ラジアン)、abs、neg、invである。Maxは、最大値を選択する演算子である。Minは、最小値を選択する演算子である。negは符号をマイナスにする演算子である。invはゼロに近い引数を0にする演算子である。
【0066】
事象発生確率Pk1~Pk5は、次世代の集合を進化させる操作として操作m1~m5がそれぞれ選択される確率である。プロセッサ11は、操作m1~m5のいずれかの方法で次世代の集合を進化させる。事象発生確率Pk1~Pk5の総和は1とする。一例として、事象発生確率Pk1、Pk2、Pk3、Pk4、Pk5の値は、それぞれ、「0.1」、「0.2」、「0.3」、「0.4」、「0.1」である。操作m1~m5については参照する図面を代えて後述する。
【0067】
ステップM123において、プロセッサ11は、指定された個体パラメータ(構文木に用いる演算子Oi、構文木の最大の深さd、等)に基づいて、N個の個体iをランダムに生成し、最初の現世代となるN個の個体iの集合を生成する。
【0068】
ステップM124において、プロセッサ11は、現世代の集合に含まれる個体iのそれぞれの適応度Diを算出する。適応度Diは、適応度関数によって与えられる。
【0069】
ステップM125において、プロセッサ11は、現世代の集合からトーナメントサイズNtの数の個体iをランダムに取り出し、その中で最も適応度Diの高い個体iを選択し、次世代の集合に追加する。ステップM125において選択された個体i、すなわち、次世代の集合に追加された個体iを「勝者ツリー」ともいう。
【0070】
プロセッサ11は、次世代の個体数が現世代と同じN個になるまで、すなわち次世代の個体数がNに達していない間は(ステップM126;NO)、ステップM125の処理を繰り返す。プロセッサ11は、次世代の個体数がNに達すると(ステップM126;YES)ステップM127の処理を実行する。
【0071】
ステップM127において、プロセッサ11は、次世代の集合を進化させる処理を実行する。なお、ステップM127の詳細については、参照する図面を代えて後述する。
【0072】
ステップM130において、プロセッサ11は、次世代の集合を現世代の集合に上書きする。ステップM131において、プロセッサ11は、進化世代数Ngに達したかを判定する。進化世代数Ngに達していない場合(ステップM131;NO)、プロセッサ11はステップM124の処理に戻る。一方、進化世代数Ngに達している場合(ステップM131;YES)、プロセッサ11は、ステップM132の処理に進む。
【0073】
ステップM132において、プロセッサ11は、現世代の集合に含まれる個体iの中から適応度Diが最も高い個体iを特定する。以上の処理により、プロセッサ11は、粘結剤データと再生条件データの関係を表す非線形の関係式を特定する。
【0074】
図7は、プロセッサ11が実行するステップM127の流れを例示するフローチャートである。ステップM201において、プロセッサ11は、ユーザにより設定された事象発生確率Pk1~Pk5に基づき、操作m1~m5のいずれかを選択する。操作m1を選択した場合(ステップM201;「操作m1」)、プロセッサ11は、ステップM202の処理に進む。操作m2を選択した場合(ステップM201;「操作m2」)、プロセッサ11は、ステップM211の処理に進む。操作m3を選択した場合(ステップM201;「操作m3」)、プロセッサ11は、ステップM221の処理に進む。操作m4を選択した場合(ステップM201;「操作m4」)、プロセッサ11は、ステップM231の処理に進む。操作m5を選択した場合(ステップM201;「操作m5」)、プロセッサ11は、処理を終了する。
【0075】
操作m1は、クロスオーバーである。クロスオーバーとは、個体間で遺伝物質を混合する方法である。クロスオーバーの場合、ステップM202において、プロセッサ11は、次世代の集合に含まれる勝者ツリーについて、各勝者ツリーに含まれるサブツリーをランダムに選択する。
【0076】
ステップM203において、プロセッサ11は、ドナー用の次世代の集合を生成する。ステップM203の処理の内容は、図6のステップM123~M125の内容と同様である。すなわち、プロセッサ11は、まず、ユーザにより指定された個体パラメータに基づいて、N個の個体iをランダムに生成し、N個の個体iの集合(以下「ドナー集合」という)を生成する。次いで、プロセッサ11は、ドナー集合に含まれる個体iのそれぞれの適応度Diを算出する。次いで、プロセッサ11は、ドナー集合からトーナメントサイズNtの数の個体iをランダムに取り出し、その中で最も適応度Diの高い個体iを選択し、次世代のドナー集合に追加する。この処理により選択される個体iを「ドナーツリー」ともいう。プロセッサ11は、次世代のドナーツリーの数がNになるまで、ドナーツリーの選択処理を繰り返す。
【0077】
ステップM204において、プロセッサ11は、ドナーツリーに含まれるサブツリー(以下「ドナーサブツリー」という)をランダムに選択する。
【0078】
ステップM205において、プロセッサ11は、勝者ツリーにおいてサブツリーの入れ替えを行う。本実施形態では、プロセッサ11は、勝者ツリーからステップM202で選択したサブツリー取り除き、そのサブツリーがあった箇所にステップM203で選択したドナーサブツリーを移植する。すなわち、プロセッサ11は、勝者ツリーに含まれるサブツリーをドナーサブツリーで置換する。このサブツリーが置換された勝者ツリーが、次世代の子孫(個体)となる。
【0079】
操作m2は、サブツリーを突然変異させる操作である。サブツリーを突然変異させることにより、絶滅した機能とオペレーターを集団に再導入し、多様性を維持することができる。この場合、ステップM211において、プロセッサ11は、勝者ツリーに含まれるサブツリーをランダムに選択する。
【0080】
ステップM212において、プロセッサ11は、サブツリーをランダムに生成する。ステップM213において、プロセッサ11は、勝者ツリーにおいてサブツリーの入れ替えを行う。本実施形態では、プロセッサ11は、勝者ツリーからステップM202で選択したサブツリーを取り除き、取り除いたサブツリーがあった箇所に、ステップM212で生成したサブツリーを移植する。すなわち、プロセッサ11は、勝者ツリーに含まれるサブツリーをステップM212で生成したサブツリーで置換する。このサブツリーが置換された勝者ツリーが、次世代の子孫(個体)となる。
【0081】
操作m3は、ホイスト突然変異である。ホイスト突然変異は、ツリーの膨らみと戦う突然変異操作である。ステップM221において、プロセッサは、勝者ツリーに含まれるサブツリーをランダムに選択する。ステップM222において、プロセッサ11は、ステップM221で選択したサブツリーに含まれるサブツリーをランダムに選択する。
【0082】
ステップM223において、プロセッサ11は、ステップM222で選択したサブツリーを、元のサブツリー(ステップM221で選択したサブツリー)の位置まで巻き上げる。このサブツリーが巻き上げられた勝者ツリーが、次世代の子孫(個体)となる。
【0083】
操作m4は、点突然変異である。点突然変異は、多様性を維持するために、絶滅した関係式と演算子を集団に再導入する操作である。ステップM231において、プロセッサ11は、勝者ツリーのノードをランダムに選択する。ステップM232において、プロセッサ11は、ステップM231で選択したノードを、他のノードに置換する。これにより、勝者ツリーの表す関係式は、元のノードと同じ数の引数を必要とする他の関係式に置き換えられる。置き換えにより得られる勝者ツリーが、次世代の子孫(個体)となる。
【0084】
操作m5は、再生である。この場合、勝者ツリーは複製され、変更されることなく次の世代に含められる。
【0085】
図8図11は、勝者ツリーに対して行われる操作の内容を例示する図である。図8は、操作m1(クロスオーバー)の内容を例示する図である。図8の例では、勝者ツリーtr11のサブツリーtr111が、ドナーツリーtr12のサブツリーtr121で置換され、勝者ツリーtr13となる。勝者ツリーtr13が、次世代の子孫(個体)となる。
【0086】
図9は、操作m2(サブツリー突然変異)の内容を例示する図である。図9の例では、勝者ツリーtr11のサブツリーtr111が、サブツリーtr22で置換され、勝者ツリーtr23となる。勝者ツリーtr23が、次世代の子孫(個体)となる。
【0087】
図10は、操作m3(ホイスト突然変異)の内容を例示する図である。図10の例では、勝者ツリーtr11のサブツリーtr1121が、サブツリーtr112の位置まで巻き上げられ、勝者ツリーtr31となる。勝者ツリーtr31が、次世代の子孫(個体)となる。
【0088】
図11は、操作m4(点突然変異)の内容を例示する図である。図11の例では、勝者ツリーtr11に含まれるノードn21及びノードn34が、ノードn421及びノードn434に置換され、勝者ツリーtr41となる。勝者ツリーtr41が、次世代の子孫(個体)となる。
【0089】
以上説明したように本実施形態によれば、再生条件特定装置1が、非線形回帰アルゴリズムによって、粘結剤データと再生条件データとの関係を表す非線形の関係式を特定し、粘結剤データの目標値を関係式に代入して演算することにより、再生条件データを特定する。これにより、砂再生システムS12が再生する鋳物砂の砂性状を安定させるための再生条件データを特定することができる。
【0090】
[第2の実施形態]
(砂管理システムの構成)
本発明の第2の実施形態に係る砂管理システムS2の構成について、図12を参照して説明する。図12は、砂管理システムS2の構成を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0091】
砂管理システムS2は、鋳造システムS11と、砂再生システムS12と、再生条件特定装置1Bと、データロガー2と、機械学習装置5と、を備えている。これらのうち、鋳造システムS11、砂再生システムS12、データロガー2は、上述の第1の実施形態と同様の構成を有する。
【0092】
機械学習装置5は、機械学習方法M2を実施するための装置である。機械学習方法M2は、データロガー2から提供されたデータを用いて学習用データセットDS(粘結剤データと再生条件データとのセット)を構築すると共に、学習用データデータセットを用いた機械学習(教師あり学習)によって学習済モデルLM1を構築するための方法である。学習済モデルLM1としては、例えば、畳み込みニューラルネットワークや再帰型ニューラルネットワークなどのニューラルネットワークモデル、線形回帰などの回帰モデル、又は、回帰木などの木モデルなどのアルゴリズムを用いることができる。機械学習装置5の構成及び機械学習方法M2の流れの詳細については、参照する図面を代えて後述する。
【0093】
学習済モデルLM1は、入力データと出力データとの相関関係を機械学習した学習済モデルである。学習済モデルLM1の入力は、上述の再生条件データx1,x2,…,xnを含む。学習済モデルLM1の出力は、上述の粘結剤データyを含む。
【0094】
〔再生条件特定装置〕
再生条件特定装置1Bは、データ収集装置111を備える。データ収集装置111は、学習済モデルLM1への入力データと学習済モデルLM1からの出力データとを一時的に保持し、次段の非線形回帰アルゴリズム(例えば、遺伝的アルゴリズムGA)に保持した入力データと出力データとを同期させて入力する。データ収集装置111は例えば、半導体メモリ、ハードディスク等の情報記憶手段(例えば、二次メモリ13)と入出力手段を備えたバッファである。なお、図12の例では、データ収集装置111が再生条件特定装置1Bに含まれる構成を例示しているが、データ収集装置111が再生条件特定装置1Bと別体の装置として構成されていてもよい。また、データ収集装置111は、ハードウェア単体で構成されてもよく、また、ハードウェアとソフトウェアとにより構成されてもよい。
【0095】
データ収集装置111が再生条件特定装置1Bと別体の装置として構成される場合、データ収集装置111は、例えばメモリ(図示略)とプロセッサ(図示略)とを含む。
【0096】
再生条件特定装置1Bは、再生条件特定方法MB1を実施する。再生条件特定方法MB1の流れの詳細については、参照する図面を代えて後述する。再生条件特定装置1Bの二次メモリ13には、再生条件特定プログラムP2、粘結剤データ及び再生条件データに加えて、学習済モデルLM1が格納されている。プロセッサ11は、二次メモリ13に格納されている学習済モデルLM1を一次メモリ12上に展開する。一次メモリ12上に展開された学習済モデルLM1は、再生条件特定方法MB1の推定ステップMB11(後述)をプロセッサ11が実行する際に利用される。なお、学習済モデルLM1が二次メモリ13に格納されているとは、学習済モデルLM1を規定するパラメータが二次メモリ13に格納されていることを指す。
【0097】
〔再生条件特定方法の流れ〕
再生条件特定方法MB1の流れについて、図13を参照して説明する。図13は、再生条件特定方法MB1の流れを示すフローチャートである。再生条件特定方法MB1は、推定ステップMB11、関係式特定ステップMB12、関係式出力ステップM12、判定ステップM13、再生条件特定ステップM14、制御ステップM15、を含む。これらのステップのうち、関係式出力ステップM12、判定ステップM13、再生条件特定ステップM14、制御ステップM15の処理は、上述の第1の実施形態において図4で説明した各ステップの処理と同じである。
【0098】
推定ステップMB11は、プロセッサ11が、学習済モデルLM1を用いて、入力データから出力データを推定するステップである。推定ステップMB11において、プロセッサ11は、データロガー2が収集した再生条件データを取得し、取得した再生条件データx1,x2,…,xnを含む入力データを学習済モデルLM1に入力することにより、出力データを取得する。学習済モデルLM1が出力する出力データは、上述の粘結剤データを含む。学習済モデルLM1に入力された入力データと、学習済モデルLM1から出力された出力データとは、データ収集装置111に一時的に保持される。
【0099】
関係式特定ステップMB12は、プロセッサ11が、学習済モデルLM1に入力した再生条件データと、推定ステップMB11において推定した粘結剤データとの関係を表す非線形の関係式を、遺伝的アルゴリズムGAにより特定するステップである。データ収集装置111は、一時的に保持していた学習済モデルLM1の入力データと出力データとを、遺伝的アルゴリズムGAに時間的同期をつけて入力する。このように、データ収集装置111は、学習済モデルLM1のデータを纏めて(ある程度の情報単位にして)次段の遺伝的アルゴリズムGAに入力する、一種のバッファとして動作する。
【0100】
図14は、学習済モデルLM1と遺伝的アルゴリズムGAとを例示する図である。学習済モデルLM1は、複数の層により構成されるディープニューラルネットワークである。学習済モデルLM1は、入力データが入力される入力層LX、隠れ層LY、出力データを出力する出力層LZを含む複数の層を含む。各層は複数のノードがエッジで結ばれる構造となっている。
【0101】
各層は、活性化関数と呼ばれる関数を持ち、エッジは重みを持つことができる。各ノードの出力値は、そのノードと接続する前の層のノードの出力値から計算される。すなわち、前の層のノードの出力値、接続エッジの重みの値、そして層が持つ活性化関数から各ノードの出力値が計算される。
【0102】
図14の例において、入力層LXは、ノードX1、X2、X3、X4を含む。すなわち、この例で、学習済モデルLM1に入力される入力データは、ノードX1、X2、X3、X4の出力値x1、x2、x3、x4を含む。
【0103】
隠れ層LYは、ノードY1、Y2、Y3を含む。ノードY1、Y2、Y3の出力値y1、y2、y3は、隠れ層LYの前の層である入力層LXのノードの出力値x1、x2、x3、x4から計算される。
【0104】
出力層LZは、ノードZ1を含む。ノードZ1の出力値z1は、出力層LZの前の層である隠れ層LYのノードの出力値y1、y2、y3、y4から計算される。すなわち、この例で、学習済モデルLM1の出力データは、ノードZ1の出力値z1である。
【0105】
データ収集装置111は、学習済モデルLM1への入力データと学習済モデルLM1の出力データを一時的に保持し、保持したデータを次段の遺伝的アルゴリズムGAに入力する。
【0106】
関係式特定ステップMB12における関係式の特定方法は、上述した第1の実施形態で示した関係式特定ステップM11の特定方法と同様である。関係式を特定すると、プロセッサ11は、関係式出力ステップM12及び判定ステップM13を実行する。また、プロセッサ11は、再生条件特定ステップM14に進み、粘結剤データを、特定した関係式に代入して演算することにより、再生条件データを特定する。また、制御ステップM15において、プロセッサ11は、特定した再生条件データを用いて砂再生システムS12を制御する。
【0107】
本実施形態によれば、再生条件特定装置1は、遺伝的アルゴリズムGAにより特定した非線形の関係式を用いて、学習済モデルLM1の出力を推定し、推定した学習済モデルLM1の出力を用いて、粘着剤データを目標値で維持するための再生条件を特定する。すなわち、再生条件特定装置1は、学習済モデルLM1を用いることなく、入力データから再生条件を推定することができる。
【0108】
また、本実施形態では、データ収集装置111が学習済モデルLM1の入力データと出力データとをバッファリングし、遺伝的アルゴリズムGAに時間的同期をつけて入力する。学習済モデルLM1からの出力と遺伝的アルゴリズムGAへの入力の時間的同期を図ることができるため、次段の遺伝的アルゴリズムGAが最終解を出力するまでの時間を先読みすることができる。
【0109】
また、本実施形態では、データ収集装置111が、学習済モデルLM1のデータを纏めて(ある程度の情報単位にして)次段の遺伝的アルゴリズムGAに入力する一種のバッファとして働く。これにより、次段の遺伝的アルゴリズムGAの世代演算処理において無駄なメモリ空間及び無駄な演算処理を削減でき、遺伝的アルゴリズムの世代演算処理を効率化できる。
【0110】
〔機械学習装置の構成〕
機械学習装置5の構成について、図15を参照して説明する。図15は、機械学習装置5の構成を示すブロック図である。
【0111】
機械学習装置5は、汎用コンピュータを用いて実現されており、プロセッサ51と、一次メモリ52と、二次メモリ53と、入出力インタフェース54と、通信インタフェース55と、バス56とを備えている。プロセッサ51、一次メモリ52、二次メモリ53、入出力インタフェース54、及び通信インタフェース55は、バス56を介して相互に接続されている。
【0112】
二次メモリ53には、機械学習プログラムP5及び学習用データセットDSが格納されている。学習用データセットDSは、教師データDS1,DS2…の集合である。教師データDS1,DS2…は、粘結剤データと再生条件データとのセットである。プロセッサ51は、二次メモリ53に格納されている機械学習プログラムP5を一次メモリ52上に展開する。そして、プロセッサ51は、一次メモリ52上に展開された機械学習プログラムP5に含まれる命令に従って、機械学習方法M2に含まれる各ステップを実行する。二次メモリ53に格納された学習用データセットDSは、機械学習方法M2の学習用データセット構築ステップM21(後述)にて構築され、機械学習方法M2の学習済モデル構築ステップM22(後述)において利用される。また、機械学習方法M2の学習済モデル構築ステップM22にて構築された学習済モデルLM1も、二次メモリ53に格納される。なお、機械学習プログラムP5が二次メモリ53に格納されているとは、ソースコード、又は、ソースコードをコンパイルすることにより得られた実行形式ファイルが二次メモリ53に記憶されていることを指す。また、学習済モデルLM1が二次メモリ53に格納されているとは、学習済モデルLM1を規定するパラメータが二次メモリ53に格納されていることを指す。
【0113】
プロセッサ51として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。プロセッサ51は、「演算装置」と呼ばれることもある。
【0114】
また、一次メモリ52として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。一次メモリ52は、「主記憶装置」と呼ばれることもある。また、二次メモリ53として利用可能なデバイスとしては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ODD(Optical Disk Drive)、FDD(Floppy Disk Drive)、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。二次メモリ53は、「補助記憶装置」と呼ばれることもある。なお、二次メモリ53は、機械学習装置5に内蔵されていてもよいし、入出力インタフェース54又は通信インタフェース55を介して機械学習装置5と接続された他のコンピュータ(例えば、クラウドサーバを構成するコンピュータ)に内蔵されていてもよい。なお、本実施形態においては、機械学習装置5における記憶を2つのメモリ(一次メモリ52及び二次メモリ53)により実現しているが、これに限定されない。すなわち、機械学習装置5における記憶を1つのメモリにより実現してもよい。この場合、例えば、そのメモリの或る記憶領域を一次メモリ52として利用し、そのメモリの他の記憶領域を二次メモリ53として利用すればよい。
【0115】
入出力インタフェース54には、入力デバイス及び/又は出力デバイスが接続される。入出力インタフェース54としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、ATA(Advanced Technology Attachment)、SCSI(Small Computer System Interface)、PCI(Peripheral Component Interconnect)などのインタフェースが挙げられる。入出力インタフェース54に接続される入力デバイスとしては、データロガー2が挙げられる。機械学習方法M2において取得するデータは、データロガー2を介して機械学習装置5に入力され、一次メモリ52に記憶される。また、入出力インタフェース54に接続される入力デバイスとしては、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、又は、これらの組み合わせが挙げられる。機械学習方法M2においてユーザから取得するデータは、これらの入力デバイスを介して機械学習装置5に入力され、一次メモリ52に記憶される。また、入出力インタフェース54に接続される出力デバイスとしては、ディスプレイ、プロジェクタ、プリンタ、スピーカ、ヘッドホン、又は、これらの組み合わせが挙げられる。機械学習方法M2においてユーザに提供する情報は、これらの出力デバイスを介して機械学習装置5から出力される。なお、機械学習装置5は、ラップトップ型コンピュータのように、入力デバイスとして機能するキーボードと、出力デバイスとして機能するディスプレイとを、それぞれ内蔵してもよい。或いは、機械学習装置5は、タブレット型コンピュータのように、入力デバイス及び出力デバイスの両方として機能するタッチパネルを内蔵していてもよい。
【0116】
通信インタフェース55には、ネットワークを介して他のコンピュータが有線接続又は無線接続される。通信インタフェース55としては、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などのインタフェースが挙げられる。利用可能なネットワークとしては、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、又は、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。機械学習装置5が他のコンピュータ(例えば、再生条件特定装置1)に提供するデータ(例えば、学習済モデルLM1)は、これらのネットワークを介して送受信される。
【0117】
なお、本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ51)を用いて機械学習方法M2を実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて機械学習方法M2を実行する構成を採用してもよい。この場合、連携して機械学習方法M2を実行する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、バスを介して相互に通信可能に構成されていてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたプロセッサと、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサとが、連携して機械学習方法M2を実行する態様などが考えられる。
【0118】
また、本実施形態においては、機械学習方法M2を実行するプロセッサ(プロセッサ51)と同じコンピュータに内蔵されたメモリ(二次メモリ53)に学習用データセットDSを格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、機械学習方法M2を実行するプロセッサと異なるコンピュータに内蔵されたメモリに学習用データセットDSを格納する構成を採用してもよい。この場合、学習用データセットDSを格納するメモリが内蔵されたコンピュータは、機械学習方法M2を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータとネットワークを介して相互に通信可能に構成される。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたメモリに学習用データセットDSを格納し、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサが機械学習方法M2を実行する態様などが考えられる。
【0119】
また、本実施形態においては、単一のメモリ(二次メモリ53)に学習用データセットDSを格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のメモリに学習用データセットDSを分散して格納する構成を採用してもよい。この場合、学習用データセットDSを格納する複数のメモリは、単一のコンピュータ(機械学習方法M2を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータであってもよいし、そうでなくてもよい)に設けられていてもよいし、複数のコンピュータ(機械学習方法M2を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータを含んでいてもよいし、そうでなくてもよい)に分散して設けられていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成する複数のコンピュータの各々に内蔵されたメモリに学習用データセットDSを分散して格納する構成などが考えられる。
【0120】
また、本実施形態においては、再生条件特定方法M1及び機械学習方法M2を異なるプロセッサ(プロセッサ11及びプロセッサ51)を用いて実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、再生条件特定方法M1及び機械学習方法M2を同一のプロセッサを用いて実行してもよい。この場合、機械学習方法M2を実行することによって、このプロセッサと同じコンピュータに内蔵されたメモリに学習済モデルLM1が格納さる。そして、このプロセッサは、再生条件特定方法M1を実行する際に、このメモリに格納された学習済モデルLM1を利用し、関係式及び再生条件を特定する。
【0121】
〔機械学習方法の流れ〕
機械学習方法M2の流れについて、図16を参照して説明する。図16は、機械学習方法M2の流れを示すフローチャートである。
【0122】
機械学習方法M2は、学習用データセット構築ステップM21と、学習済モデル構築ステップM22と、を含んでいる。
【0123】
学習用データセット構築ステップM21は、プロセッサ51が、教師データDS1,DS2,…の集合である学習用データセットDSを構築するステップである。各教師データDSi(i=1,2,…)には、粘結剤データ、及び再生条件データが含まれている。教師データDSiに含まれる粘結剤データは、学習済モデルLM1に入力する入力データと同様のデータである。学習用データセット構築ステップM21において、プロセッサ51は、再生条件特定装置1と同様の方法でこのデータを取得する。また、教師データDSiには、再生条件データが含まれる。学習用データセット構築ステップM21において、プロセッサ11は、粘結剤データと、再生条件データとを関連付けて二次メモリ13に格納する。以上のプロセスをプロセッサ11が繰り返すことによって、学習用データセットDSが構築される。
【0124】
学習済モデル構築ステップM22は、プロセッサ51が、学習済モデルLM1を構築するステップである。学習済モデル構築ステップM22において、プロセッサ51は、学習用データセットDSを用いた教師あり学習によって、学習済モデルLM1を構築する。そして、プロセッサ11は、構築した学習済モデルLM1を二次メモリ53に格納する。
【0125】
〔まとめ〕
態様1に係る再生条件特定装置は、砂再生システムにより再生された鋳物砂から溶出する粘着剤の量から、前記砂再生システムにおける再生条件を特定する再生条件特定ステップを実行する一又は複数のプロセッサを備えている。
【0126】
上記の構成によれば、再生条件特定装置は、砂再生システムが再生する鋳物砂の砂性状を目標値で維持するための再生条件データを特定する。
【0127】
態様2に係る再生条件特定装置は、態様1に係る再生条件特定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様2に係る再生条件特定装置において、前記プロセッサは、前記再生条件データと、前記砂再生システムにより再生された鋳物砂から溶出する粘結剤の量を表す粘結剤データとのセットを参照して、当該再生条件データと当該粘結剤データとの関係を表す非線形の関係式を、非線形回帰アルゴリズムを用いて特定する関係式特定ステップ、を更に実行し、前記再生条件特定ステップにおいて、前記粘結剤データ及び前記関係式を用いた演算により、前記再生条件データを特定する。
【0128】
上記の構成によれば、再生条件特定装置は、砂再生システムが再生する鋳物砂の砂性状を目標値で維持するための再生条件データを特定する。
【0129】
態様3に係る再生条件特定装置は、態様1又は2に係る再生条件特定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様3に係る再生条件特定装置において、前記プロセッサは、前記再生条件特定ステップにおいて特定した再生条件データを用いて前記砂再生システムを制御する制御ステップ、を実行する。
【0130】
上記の構成によれば、再生条件特定装置は、特定した再生条件データを用いて砂再生システムを制御することにより、砂再生システムが再生する鋳物砂の砂性状を安定させることができる。
【0131】
態様4に係る再生条件特定装置は、態様2に係る再生条件特定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様4に係る再生条件特定装置において、前記粘結剤データは、前記鋳物砂を混練する際の温度において当該鋳物砂から溶出する粘結剤の量を表す溶出バインダー量、又は、前記温度よりも高い温度において前記鋳物砂から溶出する粘結剤の量を表す残留バインダー量、の少なくともいずれか一方を示すデータを含んでいる。
【0132】
上記の構成によれば、再生条件特定装置は、砂再生システムが再生する鋳物砂の溶出バインダー量又は残留バインダー量を安定させることができる。
【0133】
態様5に係る再生条件特定装置は、態様2に係る再生条件特定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様5に係る再生条件特定装置において、前記再生条件データは、前記砂再生システムにおいて前記鋳物砂と微粉とを分離するための風量、前記鋳物砂を加熱する焼却装置への前記鋳物砂の投入量、及び加熱温度、前記鋳物砂を研磨する砂研磨装置の研磨電流値、及び前記鋳物砂から残滓を除去するための風量、並びに、前記砂再生システムにより再生された再生砂と新砂とを混合する際の前記再生砂の投入量及び前記新砂の投入量、の少なくともいずれかを示すデータを含んでいる。
【0134】
上記の構成によれば、再生条件特定装置は、鋳物砂の砂性状を目標値で維持するための再生条件として、砂再生システムにおいて鋳物砂と微粉とを分類するための風量、鋳物砂を加熱する焼却装置への鋳物砂の投入量、及び加熱温度、鋳物砂を研磨する砂研磨装置の研磨電流値、及び鋳物砂から残滓を除去するための風量、並びに、砂再生システムにより再生された再生砂の量及び新砂量、の少なくともいずれか一つを特定することができる。
【0135】
態様6に係る再生条件特定装置は、態様2又は5に係る再生条件特定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様6に係る再生条件特定装置において、前記プロセッサは、前記関係式特定ステップにおいて、遺伝的アルゴリズムによって前記非線形の関係式を特定する。
【0136】
上記の構成によれば、再生条件特定装置は、砂再生システムが再生する鋳物砂の砂性状を目標値で維持するための再生条件データを特定することができる。
【0137】
態様7に係る再生条件特定装置は、態様2、5又は6に係る再生条件特定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様7に係る再生条件特定装置において、前記プロセッサは、前記粘結剤データと前記再生条件データとの相関関係を機械学習した学習済モデルを用いて、前記粘結剤データから前記再生条件データを推定する推定ステップ、を更に実行し、前記プロセッサは、前記関係式特定ステップにおいて、前記学習済モデルに入力した粘結剤データと、前記推定ステップにおいて推定した再生条件データとの関係を表す前記非線形の関係式を特定する。
【0138】
上記の構成によれば、再生条件特定装置は、学習済モデルを用いることなく、砂再生システムが再生する鋳物砂の砂性状を目標値で維持するための再生条件データを特定することができる。
【0139】
態様8に係る再生条件特定方法は、一又は複数のプロセッサが、砂再生システムにより再生された鋳物砂から溶出する粘着剤の量から、前記砂再生システムにおける再生条件を特定する再生条件特定ステップ、を含んでいる。
【0140】
上記の構成によれば、砂再生システムが再生する鋳物砂の砂性状を安定させるための再生条件データを特定することができる。
【0141】
〔付記事項1〕
上述の各実施形態では、再生条件特定ステップM14において、プロセッサ11は、関係式y=f(x1,x2,…,xn)に粘結剤データyの目標値を代入することによって、再生条件データx1,x2,…,xnを未知数とする方程式を得た。そして、プロセッサ31は、この方程式を解くことによって、再生条件データx1,x2,…,xnの設定値を得た。関係式に代入するデータは、上述した実施形態で示したものに限られない。例えば、粘結剤データyの目標値に加えて、再生条件データx1,x2,…,xnの一部の設定値が上記関係式に代入されてもよい。この場合、プロセッサ31は、関係式に各値を代入することにより得られる方程式を解くことにより、再生条件データx1,x2,…,xnの残りの設定値を得る。
【0142】
〔付記事項2〕
上述の第2の実施形態では、学習済モデルLM1として、教師あり学習により機械学習された学習済モデルを用いたが、教師なし学習により機械学習された学習済モデルが用いられてもよい。教師なし学習により機械学習された学習済モデルについても、プロセッサ11が、学習済モデルの入力と出力との関係を表す非線形の関係式を、遺伝的アルゴリズムにより特定する。
【0143】
〔付記事項3〕
上述の第2の実施形態では、機械学習装置5が、学習済モデルLM1を構築したが、学習済モデルLM1は、機械学習装置5以外の他の装置により予め構築されていてもよい。この場合、再生条件特定装置1は、他の装置により予め構築された学習済モデルを用いて上述の再生条件特定方法MB1を実施する。
【0144】
〔付記事項4〕
上述の第2の実施形態では、再生条件データx1,x2,…,xnを入力とし、粘結剤データyを出力とする学習済モデルLM1を用いたが、本発明に係る学習済モデルは上述した実施形態で示したものに限られない。学習済モデルは、例えば、再生条件データの一部及び粘結剤データを入力とし、再生条件データのうちのいずれかを出力とする学習済モデルであってもよい。また、学習済モデルは、例えば、粘結剤データを入力とし、再生条件データを出力とする学習済モデルであってもよい。
【0145】
〔付記事項5〕
上述の第2の実施形態では、プロセッサ11が、学習済モデルの入力データと出力データとの関係を表す非線形の関係式を解の候補とする遺伝的アルゴリズムにより、当該関係式を特定したが、入力データと出力データとの関係を表す関係式の特定方法は上述の第2の実施形態で示した方法に限られない。例えば、プロセッサ11が、入力データを表す数値と隠れ層に属する一部又は全部のノードの各々の出力値との関係を表す非線形の第1の関係式、及び、当該ノードの各々の出力値と出力データを表す数値との関係を表す非線形の第2の関係式を解の候補とする遺伝的アルゴリズムにより、当該第1の関係式及び当該第2の関係式を特定してもよい。この場合、プロセッサ11は、例えば特定した第1の関係式と第2の関係式との連立方程式を解くことにより、入力データを表す数値と出力データを表す数値との関係を表す非線形の関係式を特定する。
【0146】
また、学習済モデルの入力データと出力データとの関係を表す非線形の関係式を特定するためのアルゴリズムは、遺伝的アルゴリズムに限られず、他の非線形アルゴリズムであってもよい。一例として、プロセッサ11は、入力データと出力データとの関係を表す非線形の関係式を、モンテカルロ法を用いて特定してもよい。この場合、一例として、プロセッサ11は、関係式の長さ、および、関係式の要素(変数や演算子など)をランダムに選択することによって複数の関係式を作成し、作成した複数の関係式のなかから、最も誤差の小さい関係式を選択することによって、入力データから出力データを導出する関係式を構築する。
【0147】
また、上述の第2の実施形態では、プロセッサ11が学習済モデルLM1の入力と出力との関係を表す非線形の関係式を非線形回帰により特定し、特定した関係式に粘着剤の量を代入して演算することにより、再生条件を特定した。再生条件を特定する方法は上述した実施形態で示したものに限られない。一例として、プロセッサ11は、学習済モデルLM1に粘着剤データを入力して得られる再生条件データが表す再生条件を特定してもよい。
【0148】
〔付記事項6〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる他の実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0149】
1、1B 再生条件特定装置
2 データロガー
5 機械学習装置
11、51 プロセッサ
12、52 一次メモリ
13、53 二次メモリ
14、54 入出力インタフェース
15、55 通信インタフェース
16、56 バス
M1、MB1 再生条件特定方法
M11、MB12 関係式特定ステップ
M12 関係式出力ステップ
M13 判定ステップ
M14 再生条件特定ステップ
M15 制御ステップ
M2 機械学習方法
M21 学習用データセット構築ステップ
M22 学習済モデル構築ステップ
MB11 推定ステップ
S1、S2 砂管理システム
S11 鋳造システム
S12 砂再生システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16