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特開2022-41855推定装置、特定装置、推定方法、特定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041855
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】推定装置、特定装置、推定方法、特定方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/00 20060101AFI20220304BHJP
   B22C 5/04 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B22C1/00 L
B22C5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054232
(22)【出願日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2020146917
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】野口 陽平
【テーマコード(参考)】
4E092
【Fターム(参考)】
4E092AA01
4E092AA21
4E092AA41
4E092BA04
4E092CA01
4E092CA02
4E092CA03
4E092CA04
(57)【要約】
【課題】鋳型の作成に関する複数のパラメータから、抗折強度の値を推定する。
【解決手段】推定装置(1)のプロセッサ(11)は、鋳型の抗折強度と、鋳型の作成に関する複数のパラメータのパラメータセットから、前記鋳型の抗折強度を推定する抗折強度推定ステップ(M11またはM31)を実行し、複数のパラメータは、原料パラメータ、混練パラメータ、および造型パラメータ、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一または複数のプロセッサを備え、
前記プロセッサは、鋳型の作成に関する複数のパラメータのパラメータセットから、前記鋳型の抗折強度を推定する第1推定ステップを実行し、
前記複数のパラメータは、
(1)前記鋳型の原料に関する原料パラメータ、
(2)前記原料の混練工程において測定または設定される混練パラメータ、および
(3)前記混練工程で作成された混練砂の造型工程において測定または設定される造型パラメータ、を含む、ことを特徴とする推定装置。
【請求項2】
前記第1推定ステップは、鋳型の抗折強度と、前記鋳型の作成に関する複数のパラメータとの関係を示す抗折強度関係式を用いて、前記パラメータセットから前記抗折強度を推定するステップであることを特徴とする、請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記抗折強度関係式は、非線形回帰アルゴリズムを用いて特定された関係式であることを特徴とする、請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記抗折強度関係式は、前記鋳型の抗折強度と、前記鋳型の作成に関する複数のパラメータとの関係を機械学習させた学習済モデルに、前記パラメータセットの具体値を入力することによって得られた出力データと、該具体値とを組み合わせたパラメータセットを用いて、非線形回帰アルゴリズムで特定された関係式であることを特徴とする、請求項2または3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記複数のパラメータのうち少なくとも一部のパラメータと、前記鋳型の作成のサイクルタイムとの関係を示す関係式であるサイクルタイム関係式に、
前記第1推定ステップにおいて推定された前記抗折強度が目標値以上である前記パラメータセットについて、該パラメータセットに含まれる前記少なくとも一部のパラメータを、前記サイクルタイム関係式に代入することで、前記サイクルタイムを推定する第2推定ステップを実行することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記複数のパラメータのうち少なくとも一部のパラメータと、前記鋳型の作成にかかるコストとの関係を示す関係式であるコスト関係式に、
前記第2推定ステップにおいて推定された前記サイクルタイムが所定時間以内である前記パラメータセットについて、該パラメータセットに含まれる前記少なくとも一部のパラメータを、前記コスト関係式に代入することで、前記コストを推定する第3推定ステップを実行することを特徴とする、請求項5に記載の推定装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記複数のパラメータのうち少なくとも一部のパラメータと、前記鋳型の作成にかかるコストとの関係を示す関係式であるコスト関係式に、
前記第1推定ステップにおいて推定された前記抗折強度が目標値以上である前記パラメータセットについて、該パラメータセットに含まれる前記少なくとも一部のパラメータを、前記コスト関係式に代入することで、前記コストを推定する第4推定ステップを実行することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記複数のパラメータのうち少なくとも一部のパラメータと、前記鋳型の作成のサイクルタイムとの関係を示す関係式であるサイクルタイム関係式に、
前記第4推定ステップにおいて推定された前記コストが所定値以下である前記パラメータセットについて、該パラメータセットに含まれる前記少なくとも一部のパラメータを、前記サイクルタイム関係式に代入することで、前記コストを推定する第5推定ステップを実行することを特徴とする、請求項7に記載の推定装置。
【請求項9】
前記原料パラメータは、前記混練工程における鋳物砂投入量、水分投入量、および添加物投入量、ならびに、鋳物砂の残留添加物量の、少なくとも一部を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項10】
前記混練パラメータは、前記鋳型の混練工程における原料の混練速度、混練時間、および混練砂の温度の、少なくとも一部を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項11】
前記造型パラメータは、鋳型の型枠への混練砂の圧入速度、型枠の温度、型枠に塗布する離型剤の量、および、混練砂の焼成時間の、少なくとも一部を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項12】
一または複数のプロセッサを備え、
前記プロセッサは、鋳型の作成に関する複数のパラメータであって、
(1)前記鋳型の原料に関する原料パラメータ、
(2)前記原料の混練工程において測定または設定される混練パラメータ、
(3)前記混練工程で作成された混練砂の造型工程において測定または設定される造型パラメータ、および、
(4)前記鋳型の抗折強度
を含む、複数のパラメータのパラメータセットから抗折強度を推定するための関係式または学習済モデルを特定する特定ステップを実行することを特徴とする、特定装置。
【請求項13】
一または複数のプロセッサが、鋳型の作成に関する複数のパラメータのパラメータセットから前記鋳型の抗折強度を推定する第1推定ステップを含み、
前記複数のパラメータは、
(1)前記鋳型の原料に関する原料パラメータ、
(2)前記原料の混練工程において測定または設定される混練パラメータ、および
(3)前記混練工程で作成された混練砂の造型工程において測定または設定される造型パラメータ、を含む、ことを特徴とする、推定方法。
【請求項14】
一または複数のプロセッサが、鋳型の作成に関する複数のパラメータであって、
(1)前記鋳型の原料に関する原料パラメータ、
(2)前記原料の混練工程において測定または設定される混練パラメータ、
(3)前記混練工程で作成された混練砂の造型工程において測定または設定される造型パラメータ、および、
(4)前記鋳型の抗折強度
を含む、複数のパラメータのパラメータセットから抗折強度を推定するための関係式または学習済モデルを特定する特定ステップを含むことを特徴とする、特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型の作成に関する複数のパラメータから、鋳型の抗折強度を推定する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳型の造型には鋳型が用いられる。鋳型は、鋳物砂に添加物を加えて混練した混練砂を型に流し入れて造型することで完成する。鋳型は、鋳造する鋳物の形状および種類に応じた抗折強度を有している必要がある。鋳型の抗折強度は、例えば鋳型の原材料の量および品質、原材料を混練する際の条件、および、混練砂を造型する際の条件等の、種々のパラメータによって変動することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-160007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、抗折強度に前述の種々のパラメータがどのような影響を与えるのかが不明であった。そのため、従来は、作成者の経験に基づいて仮設定したパラメータで、実際に鋳型の作成実験を行って、所望の抗折強度を有する鋳型を作成するための条件を特定していた。換言すると、鋳型の抗折強度は、実際に作成してみるまでは不明であった。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、鋳型の作成に関する複数のパラメータから、抗折強度の値を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る推定装置は、第1推定ステップを実行する一または複数のプロセッサを備えている。また、本発明の一態様に係る推定方法は、第1推定ステップを含んでいる。
【0007】
前記推定装置、及び前記推定方法において、第1推定ステップは、前記プロセッサが、鋳型の作成に関する複数のパラメータのパラメータセットから、前記鋳型の抗折強度を推定するステップである。ここで、前記複数のパラメータとは、(1)前記鋳型の原料に関する原料パラメータ、(2)前記原料の混練工程において測定または設定される混練パラメータ、および(3)前記混練工程で作成された混練砂の造型工程において測定または設定される造型パラメータ、を含む。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る特定装置は、特定ステップを実行する一または複数のプロセッサを備えている。また、本発明の一態様に係る特定方法は、特定ステップを含んでいる。
【0009】
前記特定装置、及び前記特定方法において、特定ステップは、複数のパラメータのパラメータセットから抗折強度を推定するための関係式または学習済モデルを特定するステップである。ここで、前記複数のパラメータとは、鋳型の作成に関する複数のパラメータである。また、前記複数のパラメータとは、(1)前記鋳型の原料に関する原料パラメータ、(2)前記原料の混練工程において測定または設定される混練パラメータ、(3)前記混練工程で作成された混練砂の造型工程において測定または設定される造型パラメータ、および、(4)前記鋳型の抗折強度を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、鋳型の作成に関する複数のパラメータから、抗折強度の値を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1における、鋳型の作成工程の概要を説明する図である。
図2】前記実施形態に係る推定システムの概要図である。
図3】実施形態1に係る推定装置の構成を示すブロック図である。
図4】第1推定方法の流れを示すフローチャートである。
図5】第1推定方法におけるパラメータセットの選抜方法を模式的に示した図である。
図6】実施形態1に係る関係式特定装置の構成を示すブロック図である。
図7】鋳型の作成工程において、関係式特定装置が取得する、実パラメータ値の種類および取得タイミングを模式的に示した図である。
図8】第1特定方法の流れを示すフローチャートである。
図9】第1特定方法において実行される遺伝的アルゴリズムを例示する図である。
図10】関係式特定装置が実施する第1関係式特定ステップの流れを示すフローチャートである。
図11】第1関係式特定ステップに含まれる処理の流れを示すフローチャートである。
図12】クロスオーバーの内容を例示する図である。
図13】サブツリー突然変異の内容を例示する図である。
図14】ホイスト突然変異の内容を例示する図である。
図15】点突然変異の内容を例示する図である。
図16】実施形態2に係る第2推定方法の流れを示すフローチャートである。
図17】第2推定方法におけるパラメータセットの選抜方法を模式的に示した図である。
図18】実施形態6に係る第2特定方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の第1の実施形態について、図1図8に基づき説明する。本発明の第1の実施形態に係る抗折強度推定システムは、鋳型の抗折強度を推定するためのシステムである。なお、本実施形態における「鋳型」とは鋳物砂を原料とする砂型を意味する。また、本実施形態に係る鋳型は、中子を用いて作成される鋳型であってもよいし、中子を用いず作成される鋳型であってもよい。
【0013】
≪鋳型の作成工程≫
まず、図1を参照して、鋳物砂から鋳型が造型されるまでの工程を簡単に説明する。図1は、本実施形態における鋳型の作成工程の概要を説明する図である。鋳型は、砂投入工程C1と、混練工程C2と、造型工程C3とを経て作成される。
【0014】
砂投入工程C1は、未使用の鋳物砂、すなわち新砂に再生砂を加える工程である。鋳造後の砂塊は、解砕工程、分離工程、再生前冷却工程、砂再生工程、および再生後冷却工程を経ることで、再利用可能な再生砂となる。本実施形態では一例として、新砂と再生砂との混合物を、以降の工程における鋳物砂として使用することとする。
【0015】
混練工程C2は、砂投入工程C1にて得られた鋳物砂に添加物を加えて混練する工程である。添加物とは、例えば、水ガラスおよび樹脂等の硬化剤、ならびに、界面活性剤である。造型工程C3は、混練工程C2にて混練された鋳物砂を鋳枠に充填することによって、鋳型を造型する工程である。本実施形態では、鋳型の上部に相当する上型と鋳型の下部に相当する下型とが、それぞれ造型されるものとする。
【0016】
造型工程C3で造型された鋳型は、抜型工程と塗型工程をこの順に経ることによって、溶湯を注入可能な状態になる。抜型工程とは、造型工程C3にて造型された上型および下型を鋳枠から分離する工程である。塗型工程は、抜型工程にて取り出した上型および下型の製品面に塗型剤を塗布する工程である。なお、中子を用いて鋳型を作成する場合、造型工程C3で造型された鋳型は、抜型工程、塗型工程の後、枠合せ工程を経てもよい。枠合せ工程は、塗型工程にて塗型剤が塗布された上型と下型とを合体させることによって、鋳型を組み立てる工程である。
【0017】
なお、図1に示した工程のうち、砂投入工程C1は必須の工程ではない。例えば、鋳型の原料として再生砂を用いない場合、砂投入工程C1を行わず、混練工程C2において新砂を投入すればよい。また、造型工程C3は非加熱の工程であってもよい。例えば、造型工程C3は、混練砂を鋳枠に充填した後、加熱せずにそのまま硬化させる工程であってもよい。
【0018】
≪システム概要≫
図2は、推定システムS1の概要図である。推定システムS1は、鋳型の作成に関する複数のパラメータから、鋳型の抗折強度を推定するためのシステムである。また推定システムS1は、鋳型作成のサイクルタイム、および、鋳型作成にかかるコストの、少なくともいずれかを推定してもよい。
【0019】
鋳型の作成に関する複数のパラメータとは、例えば、前述の砂投入工程C1、混練工程C2、および造型工程C3のいずれかの工程において測定される、または設定されるパラメータである。前記複数のパラメータは、原料パラメータ、混練パラメータ、および、造型パラメータを含む。
【0020】
原料パラメータとは、鋳型の原料に関するパラメータである。例えば、原料パラメータは、混練工程C2における鋳物砂投入量、水分投入量、および添加物投入量、ならびに、前記鋳物砂の残留添加物量の少なくともいずれかであってよい。なお、「添加物投入量」とは、例えば、水ガラス投入量または樹脂投入量等の硬化剤投入量、ならびに、界面活性剤投入量の少なくとも1つを示す。原料パラメータには、これらの添加物投入量のパラメータのうち1以上のパラメータが含まれていてもよい。
【0021】
混練パラメータとは、混練工程C2において測定または設定されるパラメータである。混練パラメータは、あくまで混練工程C2のタイミングで測定または設定される値であればよく、混練工程C2と直接関連しないデータであってもよい。例えば、混練パラメータは、混練工程C2における原料の混練速度、混練時間、および混練砂の温度の少なくともいずれかであってよい。
【0022】
造型パラメータとは、造型工程C3において測定または設定されるパラメータである。造型パラメータは、あくまで造型工程C3のタイミングで測定または設定される値であればよく、造型工程C3と直接関連しないデータであってもよい。例えば、造型パラメータは、鋳型の型枠への混練砂の圧入速度、型枠の温度、型枠に塗布する離型剤の量、および、混練砂の焼成時間の少なくともいずれかであってよい。
【0023】
以降、鋳型の作成に関する複数のパラメータのことを、単に「パラメータ」とも称する。また、該複数のパラメータをまとめて、「パラメータセット」とも称する。
【0024】
(推定装置1)
推定システムS1は、少なくとも、推定装置1を含む。推定装置1は、あるパラメータセットの値で鋳型を作成した場合の、該鋳型の抗折強度を推定する。推定装置1は、抗折強度関係式F1を記憶している。抗折強度関係式F1は、鋳型の抗折強度と、鋳型に関する複数のパラメータとの関係を示す関係式である。
【0025】
推定装置1は、抗折強度関係式F1に、パラメータセットの各パラメータの値を代入することにより、抗折強度関係式F1の解として、入力したパラメータセットが示す各種パラメータの値で鋳型を作成した場合の該鋳型の抗折強度を推定することができる。
【0026】
推定装置1は、あるパラメータセットの値で鋳型を作成した場合の、該鋳型の作成のサイクルタイムを推定してもよい。また、推定装置1は、あるパラメータセットの値で鋳型を作成した場合の、該鋳型の作成にかかるコストを推定してもよい。サイクルタイムを推定する場合、推定装置1はサイクルタイム関係式F2を記憶している。また、コストを推定する場合、推定装置1は、コスト関係式F3を記憶している。
【0027】
サイクルタイム関係式F2は、パラメータセットに含まれる複数のパラメータのうち、少なくとも一部のパラメータと、鋳型作成のサイクルタイムとの関係を示す関係式である。コスト関係式F3は、パラメータセットに含まれる複数のパラメータのうち少なくとも一部のパラメータと、鋳型作成にかかるコストとの関係を示す関係式である。本実施形態では、サイクルタイム関係式F2とコスト関係式F3は、予め作成され、推定装置1に記憶されていることとする。
【0028】
サイクルタイム関係式F2は、例えば、下記式1で示すことができる。
【0029】
(式1)サイクルタイム=鋳型作成の一部処理にかかる時間を示すパラメータ、および、いずれかのパラメータから算出される前記時間の、合計値
ここで、「鋳型作成の一部処理にかかる時間を示すパラメータ」とは、例えば混練時間および混練砂の焼成時間である。また、「いずれかのパラメータから算出される前記時間」とは、例えば、混練砂を鋳枠に投入するのにかかる時間である、混練砂投入時間である。式1の右辺において、各時間の単位は揃える。混練砂投入時間は、混練砂投入量に混練砂の圧入速度を乗じることで算出されてもよい。なお、混練砂投入量として、鋳物砂投入量、水分投入量、および添加物投入量の合計値を用いてもよい。
【0030】
式1の右辺には、砂投入工程C1にかかる時間を示すパラメータが加算されてもよい。また、式1の右辺には、鋳物砂投入時間、水分投入時間、および添加物投入時間が加算されてもよい。これら3つのパラメータはそれぞれ、混練機に鋳物砂、水分、および添加物を投入するのにかかる時間を示す。これら3つのパラメータはそれぞれ、パラメータセットに含まれる鋳物砂投入量、水分投入量、および、添加物投入量に、パラメータセットに含まれる鋳物砂投入速度、水分投入速度、および添加物投入速度を乗じることで算出されてもよい。
【0031】
また、コスト関係式F3は、例えば、下記式2で示すことができる。
【0032】
(式2)コスト=鋳型の原料の量に関するパラメータ×各原料の単位量当たりの値段
ここで、鋳型の原料の量に関するパラメータとは、例えば、鋳物砂投入量、水分投入量、および添加物投入量である。なお、量の単位は、値段の単位量と揃える。また、式2の右辺には、鋳型の作成工程C1~C3において施設の維持管理および装置の稼働等にかかる、電気料金を加算してもよい。
【0033】
推定装置1は、サイクルタイム関係式F2に、パラメータセットの少なくとも一部のパラメータの値を代入する。これにより、サイクルタイム関係式F2の解として、入力したパラメータセットが示す各種パラメータの値で鋳型を作成した場合のサイクルタイムを推定することができる。
【0034】
推定装置1は、コスト関係式F3に、パラメータセットの少なくとも一部のパラメータの値を代入する。これにより、コスト関係式F3の解として、入力したパラメータセットが示す各種パラメータの値で鋳型を作成した場合のコストを推定することができる。
【0035】
本実施形態では、推定装置1は、前述の抗折強度、サイクルタイム、およびコストを推定することとする。本実施形態に係る推定装置1は、これら3種の値を推定したときの推定値と、閾値(後述する、目標値、所定時間、および所定値)とを比較することにより、抗折強度、サイクルタイム、およびコストが所定の条件を満たすようなパラメータセットを特定することができる。
【0036】
なお、パラメータセットが示す各種パラメータの値は、ユーザの入力操作に応じて用意されてもよいし、推定装置1が定めてもよい。本実施形態では、各種パラメータの値は、推定装置1がランダムに定めることとする。
【0037】
なお、推定装置1が各パラメータの値をランダムに定める場合、ユーザの入力操作によって、該ランダム値の取り得る範囲が定められていてもよい。また、推定装置1が各種パラメータの値をランダムに定める場合、膨大な数のパラメータセットが生成される可能性がある。そのため、推定装置1が各種パラメータの値をランダムに定める場合、生成するパラメータセットの個数が予め定められていてもよい。また、該パラメータセットの生成個数は、ユーザが自由に変更可能であってよい。
【0038】
推定装置1は、ユーザの入力操作に従って、規定個数のパラメータセットのうち、該パラメータセットが示すパラメータで鋳型を作成した場合に、目標値以上の抗折強度が得られるパラメータセットを選抜する。なお、以降の説明では、抗折強度の目標値を、単に目標値とも称する。また、目標値以上の抗折強度が得られるパラメータセットのことを「一次選抜パラメータセット」とも称する。なお、目標値が取り得る範囲は特に限定されない。また、目標値はユーザの入力操作に応じて適宜定められてよい。
【0039】
推定装置1は、一次選抜パラメータセットから、サイクルタイムが所定時間以内であるパラメータセットをさらに選抜する。以降、一次選抜パラメータセットから更に選抜を行ったパラメータセットのことを「二次選抜パラメータセット」と称する。本実施形態では、一次選抜パラメータセットのうち、サイクルタイムが所定時間以内であるパラメータセットが、二次選抜パラメータセットである。なお、所定時間の具体値は特に限定されない。また、前述の所定時間、すなわちサイクルタイムの閾値は、ユーザの入力操作に応じて適宜定められてよい。
【0040】
推定装置1は、二次選抜パラメータセットから、コストが所定値以下になるパラメータセットを特定する。もしくは、推定装置1は、二次選抜パラメータセットから、コストが最も低くなるパラメータセットを1つ特定してもよい。すなわち、推定装置1は、抗折強度が目標値以上であって、サイクルタイムが所定時間以内であり、かつ、コストが所定値以下(または、最も低い)パラメータセットを特定する。
【0041】
以上の処理によれば、推定装置1は、目標値以上の抗折強度を有し、かつ、サイクルタイムが所定時間内であり、コストが所定値以下であるパラメータセットを特定することができる。抗折強度、サイクルタイム、およびコストの閾値はユーザが設定可能であるため、推定装置1は、抗折強度、サイクルタイム、およびコストについてユーザが所望する条件を満たすパラメータセット(目的パラメータセット)を特定することができる。推定装置1は、この目的パラメータセットを、ユーザに提示してもよい。
【0042】
(関係式特定装置2、データロガー3、および製造装置4)
推定システムS1は、関係式特定装置(特定装置)2、データロガー3、および製造装置4を含んでいてもよい。製造装置4は、図1に示した砂投入工程C1、混練工程C2、および造型工程C3の少なくともいずれかに配備された装置である。推定システムS1において、製造装置4は1台であっても複数台であってもよい。各製造装置4はそれぞれ、データロガー3と接続しており、鋳型作成時の実際の各種パラメータの値をデータロガー3に送信する。以降、鋳型作成時の実際のパラメータの値のことを、実パラメータ値とも称する。
【0043】
データロガー3は、製造装置4から、実パラメータ値を収集する装置である。推定システムS1において、データロガー3は、1台であっても複数台であってもよい。また、データロガー3が複数台存在する場合、各データロガー3は、製造装置4ごとに、または、鋳型の作成工程ごとに、実パラメータ値を収集してよい。データロガー3は、関係式特定装置2と接続しており、関係式特定装置2に、収集した実パラメータ値を送信する。また、データロガー3は、作成された鋳型の抗折強度を測定する装置(例えば、後述する抗折強度計48)から、該抗折強度(すなわち、実際の鋳型の抗折強度)を受信して、関係式特定装置2に送信してもよい。
【0044】
関係式特定装置2は、抗折強度関係式F1を作成する装置である。本実施形態に係る関係式特定装置2は、まず、学習用データセットDSを教師データとして用いた機械学習によって、パラメータセットと、抗折強度との関係を学習した学習済モデルLMを構築する。ここで、教師データは、実パラメータ値のパラメータセットと、該実パラメータ値で作成した鋳型の、実際の抗折強度との組み合わせから成るデータである。
【0045】
本実施形態に係る関係式特定装置2は、次に、所定のアルゴリズムを用いて、構築した学習済モデルLMの入力値と出力値との関係を表す非線形の関係式を特定する。すなわち、関係式特定装置2は、学習済モデルLMの入力値と出力値との関係を関係式として可視化させる。ここで関係式特定装置2が特定した関係式が抗折強度関係式F1である。関係式特定装置2は、特定した抗折強度関係式F1を推定装置1に送信する。
【0046】
なお、「所定のアルゴリズム」の種類は特に限定されない。「所定のアルゴリズム」とは、例えば、非線形回帰アルゴリズムである。さらに言えば、非線形回帰アルゴリズムの具体的な種類も特に限定されない。本実施形態では、非線形回帰アルゴリズムの一例として、遺伝的アルゴリズムを用いて学習済モデルLMの入出力を非線形の関係式(抗折強度関係式F1)に可視化することとする。しかしながら、学習済モデルLMは、ロジスティック回帰等、遺伝的アルゴリズム以外の非線形回帰アルゴリズムを用いて可視化されてもよい。
【0047】
(推定装置1の要部構成)
推定装置1の構成について、図3を参照して説明する。図3は、推定装置1の構成を示すブロック図である。
【0048】
推定装置1は、汎用コンピュータを用いて実現されており、プロセッサ11と、一次メモリ12と、二次メモリ13と、入出力インタフェース(IF)14と、通信インタフェース15と、バス16とを備えている。プロセッサ11、一次メモリ12、二次メモリ13、入出力インタフェース14、および通信インタフェース15は、バス16を介して相互に接続されている。
【0049】
二次メモリ13には、第1推定プログラムP1、抗折強度関係式F1、サイクルタイム関係式F2、および、コスト関係式F3が格納されている。プロセッサ11は、二次メモリ13に格納されている第1推定プログラムP1、抗折強度関係式F1、サイクルタイム関係式F2、および、コスト関係式F3を一次メモリ12上に展開する。そして、プロセッサ11は、一次メモリ12上に展開された第1推定プログラムP1に含まれる命令に従って、第1推定方法M1に含まれる各ステップを実行する。一次メモリ12上に展開された抗折強度関係式F1は、第1推定方法M1の抗折強度推定ステップM11(後述)をプロセッサ11が実行する際に利用される。また、一次メモリ12上に展開されたサイクルタイム関係式F2は、第1推定方法M1のサイクルタイム推定ステップM13(後述)をプロセッサ11が実行する際に利用される。また、一次メモリ12上に展開されたコスト関係式F3は、第1推定方法M1のコスト推定ステップM15(後述)をプロセッサ11が実行する際に利用される。なお、第1推定プログラムP1が二次メモリ13に格納されているとは、ソースコード、または、ソースコードをコンパイルすることにより得られた実行形式ファイルが二次メモリ13に記憶されていることを指す。
【0050】
プロセッサ11として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、または、これらの組み合わせを挙げることができる。プロセッサ11は、「演算装置」と呼ばれることもある。
【0051】
また、一次メモリ12として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。一次メモリ12は、「主記憶装置」と呼ばれることもある。また、二次メモリ13として利用可能なデバイスとしては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ODD(Optical Disk Drive)、FDD(Floppy(登録商標) Disk Drive)、または、これらの組み合わせを挙げることができる。二次メモリ13は、「補助記憶装置」と呼ばれることもある。なお、二次メモリ13は、推定装置1に内蔵されていてもよいし、入出力インタフェース14または通信インタフェース15を介して推定装置1と接続された他のコンピュータ(例えば、クラウドサーバを構成するコンピュータ)に内蔵されていてもよい。なお、本実施形態においては、推定装置1における記憶を2つのメモリ(一次メモリ12および二次メモリ13)により実現しているが、これに限定されない。すなわち、推定装置1における記憶を1つのメモリにより実現してもよい。この場合、例えば、そのメモリの或る記憶領域を一次メモリ12として利用し、そのメモリの他の記憶領域を二次メモリ13として利用すればよい。
【0052】
入出力インタフェース14には、入力デバイスおよび/または出力デバイスが接続される。入出力インタフェース14としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、ATA(Advanced Technology Attachment)、SCSI(Small Computer System Interface)、PCI(Peripheral Component Interconnect)などのインタフェースが挙げられる。入出力インタフェース14に接続される入力デバイスとしては、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、または、これらの組み合わせが挙げられる。第1推定方法M1においてユーザから取得するデータは、これらの入力デバイスを介して推定装置1に入力され、一次メモリ12に記憶される。また、入出力インタフェース14に接続される出力デバイスとしては、ディスプレイ、プロジェクタ、プリンタ、スピーカ、ヘッドホン、または、これらの組み合わせが挙げられる。第1推定方法M1においてユーザに提供する情報は、これらの出力デバイスを介して推定装置1から出力される。なお、推定装置1は、ラップトップ型コンピュータのように、入力デバイスとして機能するキーボードと、出力デバイスとして機能するディスプレイとを、それぞれ内蔵してもよい。或いは、推定装置1は、タブレット型コンピュータのように、入力デバイスおよび出力デバイスの両方として機能するタッチパネルを内蔵していてもよい。
【0053】
通信インタフェース15には、ネットワークを介して他のコンピュータが有線接続または無線接続される。通信インタフェース15としては、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などのインタフェースが挙げられる。利用可能なネットワークとしては、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、または、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。第1推定方法M1において推定装置1が他のコンピュータ(例えば、関係式特定装置2)から取得するデータ(例えば、抗折強度関係式F1)、および、第1推定方法M1において推定装置1が他のコンピュータに提供するデータは、これらのネットワークを介して送受信される。
【0054】
なお、本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ11)を用いて第1推定方法M1を実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて第1推定方法M1を実行する構成を採用してもよい。この場合、連携して第1推定方法M1を実行する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、バスを介して相互に通信可能に構成されていてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたプロセッサと、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサとが、連携して第1推定方法M1を実行する態様などが考えられる。
【0055】
また、本実施形態においては、第1推定方法M1を実行するプロセッサ(プロセッサ11)と同じコンピュータに内蔵されたメモリ(二次メモリ13)に抗折強度関係式F1、サイクルタイム関係式F2、およびコスト関係式F3を格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、第1推定方法M1を実行するプロセッサと異なるコンピュータに内蔵されたメモリに抗折強度関係式F1、サイクルタイム関係式F2、およびコスト関係式F3を格納する構成を採用してもよい。この場合、抗折強度関係式F1、サイクルタイム関係式F2、および、コスト関係式F3を格納するメモリが内蔵されたコンピュータは、第1推定方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータとネットワークを介して相互に通信可能に構成される。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたメモリに抗折強度関係式F1、サイクルタイム関係式F2、およびコスト関係式F3を格納し、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサが第1推定方法M1を実行する態様などが考えられる。
【0056】
また、本実施形態においては、単一のメモリ(二次メモリ13)に抗折強度関係式F1を格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のメモリに抗折強度関係式F1を分散して格納する構成を採用してもよい。この場合、学習済モデルLMを格納する複数のメモリは、単一のコンピュータ(第1推定方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータであってもよいし、そうでなくてもよい)に設けられていてもよいし、複数のコンピュータ(第1推定方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータを含んでいてもよいし、そうでなくてもよい)に分散して設けられていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成する複数のコンピュータの各々に内蔵されたメモリに学習済モデルLMを分散して格納する構成などが考えられる。
【0057】
≪第1推定方法M1の流れ≫
第1推定方法M1の流れについて、図4および図5を参照して説明する。図4は、第1推定方法M1の流れを示すフローチャートである。また、図5は、第1推定方法M1におけるパラメータセットの選抜方法を模式的に示した図である。第1推定方法M1は、パラメータセット作成ステップM10と、抗折強度推定ステップ(第1推定ステップ)M11と、抗折強度選抜ステップM12と、サイクルタイム推定ステップ(第2推定ステップ)M13と、サイクルタイム選抜ステップM14と、コスト推定ステップ(第3推定ステップ)M15と、コスト選抜ステップM16と、を含む。
【0058】
パラメータセット作成ステップM10は、プロセッサ11が、以降の処理の対象となるパラメータセットを作成するステップである。プロセッサ11は、例えば、各パラメータを、ユーザが規定する値の範囲でランダムに定めることで、1つのパラメータセットを作成する。プロセッサ11は、パラメータセットを予め定められた個数作成すると、次の抗折強度推定ステップM11を実行する。
【0059】
抗折強度推定ステップM11は、プロセッサ11が、各パラメータセットで鋳型を作成したときの抗折強度を、抗折強度関係式F1を用いて推定するステップである。具体的には、図5に示す通り、プロセッサ11は、各パラメータセットを抗折強度関係式F1に入力することで、抗折強度関係式F1の解として、抗折強度の推定値を得る。プロセッサ11は、パラメータセット作成ステップM10で作成された全てのパラメータセットについて抗折強度の推定が実行されると、プロセッサ11は、抗折強度選抜ステップM12を実行する。
【0060】
抗折強度選抜ステップM12は、抗折強度推定ステップM11において特定された抗折強度が目標値以上であるパラメータセットを選抜するステップである。プロセッサ11は、パラメータセット作成ステップM10で作成されたパラメータセットから、抗折強度が目標値以上であるパラメータセットを選抜し、これを一次選抜パラメータセットとする。プロセッサ11は、一次選抜パラメータセットについて、次の処理であるサイクルタイム推定ステップM13を実行する。
【0061】
サイクルタイム推定ステップM13は、プロセッサ11が、サイクルタイム関係式F2を用いて、一次選抜パラメータセットそれぞれが示すパラメータで鋳型を作成したときのサイクルタイムを推定するステップである。具体的には、図5に示す通り、プロセッサ11は、一次選抜パラメータセットが示すパラメータ値を、それぞれサイクルタイム関係式F2に入力することで、サイクルタイム関係式F2の解として、サイクルタイムの推定値を得る。なお、パラメータセットの全てのパラメータがサイクルタイム関係式F2の変数として含まれているとは限らない。すなわち、プロセッサ11は、一次選抜パラメータセットが示すパラメータの少なくとも一部を、サイクルタイム関係式F2に入力することで、該一次選抜パラメータセットで鋳型を作成したときのサイクルタイムを推定してよい。全ての一次選抜パラメータセットについてサイクルタイムの推定が実行されると、プロセッサ11は、サイクルタイム選抜ステップM14を実行する。
【0062】
サイクルタイム選抜ステップM14は、サイクルタイム推定ステップM13において特定されたサイクルタイムが所定時間以内であるパラメータセットを選抜するステップである。プロセッサ11は、一次選抜パラメータセットから、サイクルタイムが所定時間以内であるパラメータセットを選抜し、これを二次選抜パラメータセットとする。プロセッサ11は、二次選抜パラメータセットについて、次の処理であるコスト推定ステップM15を実行する。
【0063】
コスト推定ステップM15は、プロセッサ11が、コスト関係式F3を用いて、各パラメータセットで鋳型を作成したときのコストを推定するステップである。具体的には、図5に示す通り、プロセッサ11は、二次選抜パラメータセットが示すパラメータ値を、それぞれコスト関係式F3に入力することで、コスト関係式F3の解として、コストの推定値を得る。なお、パラメータセットの全てのパラメータがコスト関係式F3の変数として含まれているとは限らない。すなわち、プロセッサ11は、二次選抜パラメータセットが示すパラメータの少なくとも一部を、コスト関係式F3に入力することで、該二次選抜パラメータセットで鋳型を作成したときのコストを推定する。全ての二次選抜パラメータセットについてコストの推定が実行されると、プロセッサ11は、コスト選抜ステップを実行する。
【0064】
コスト選抜ステップM16は、コスト推定ステップM15において特定されたコストが所定値以下のパラメータセットを選抜するステップである。プロセッサ11は、二次選抜パラメータセットから、コストが所定値以下のパラメータセットを選抜し、これを目的パラメータセットと決定する。なお、コスト選抜ステップM16において、プロセッサ11は、二次選抜パラメータセットから、コストが最も低くなるパラメータセットを1つだけ選抜して目的パラメータセットとしてもよい。
【0065】
以上の処理によれば、推定装置1は、目標値を満たす抗折強度が得られるパラメータセットを特定することができる。また、以上の処理によれば、推定装置1は、サイクルタイムが所定時間以内であるパラメータセットを特定することができる。また、以上の処理によれば、推定装置1は、コストが所定値以下であるパラメータセットを特定することができる。
【0066】
さらに言えば、推定装置1は、上述した第1推定方法M1の順で抗折強度、サイクルタイム、およびコストの推定と、各推定の後のパラメータセットの選抜を行う。これにより、推定装置1は、目標とする抗折強度が得られ、サイクルタイムが所定時間以内であり、かつ、コストが所定値以下であるパラメータセットを特定することができる。したがって、ユーザは、所望の抗折強度、サイクルタイム、およびコストの条件を満たすための各種パラメータの値を、実験を経ることなく特定することができる。
【0067】
なお、第1推定方法M1は、抗折強度推定ステップM11にて推定した抗折強度を出力する第1出力ステップを含んでいてもよい。また、第1推定方法M1は、サイクルタイム推定ステップM13にて推定したサイクルタイムを出力する第2出力ステップを含んでいてもよい。また、第1推定方法M1は、コスト推定ステップM15にて推定したコストを出力する第3出力ステップを含んでいてもよい。第1~第3出力ステップにおいて、プロセッサ11は、推定した抗折強度、サイクルタイム、またはコストをディスプレイに出力する。これにより、推定システムS1のユーザは、あるパラメータセットが示すパラメータで鋳型を作成した場合の抗折強度、サイクルタイム、またはコストを知ることができる。また、第1推定方法M1は、目的パラメータセットが示す各種パラメータの値を、製造装置4の設定値として設定する条件設定ステップを含んでいてもよい。
【0068】
≪関係式特定装置2の要部構成≫
関係式特定装置2の構成について、図6を参照して説明する。図6は、関係式特定装置2の構成を示すブロック図である。
【0069】
関係式特定装置2は、汎用コンピュータを用いて実現されており、プロセッサ21と、一次メモリ22と、二次メモリ23と、入出力インタフェース24と、通信インタフェース25と、バス26とを備えている。プロセッサ21、一次メモリ22、二次メモリ23、入出力インタフェース24、および通信インタフェース25は、バス26を介して相互に接続されている。
【0070】
二次メモリ23には、第1関係式特定プログラムP2および学習用データセットDSが格納されている。学習用データセットDSは、教師データDS1,DS2…の集合である。プロセッサ21は、二次メモリ23に格納されている第1関係式特定プログラムP2を一次メモリ22上に展開する。そして、プロセッサ21は、一次メモリ22上に展開された第1関係式特定プログラムP2に含まれる命令に従って、第1特定方法M2に含まれる各ステップを実行する。二次メモリ23に格納された学習用データセットDSは、第1特定方法M2の学習用データセット構築ステップM21(後述)にて構築され、第1特定方法M2の学習済モデル構築ステップM22(後述)において利用される。また、第1特定方法M2の学習済モデル構築ステップM22にて構築された学習済モデルLMも、二次メモリ23に格納される。なお、第1関係式特定プログラムP2が二次メモリ23に格納されているとは、ソースコード、または、ソースコードをコンパイルすることにより得られた実行形式ファイルが二次メモリ23に記憶されていることを指す。また、学習済モデルLMが二次メモリ23に格納されているとは、学習済モデルLMを規定するパラメータが二次メモリ23に格納されていることを指す。
【0071】
プロセッサ21として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、または、これらの組み合わせを挙げることができる。プロセッサ21は、「演算装置」と呼ばれることもある。
【0072】
また、一次メモリ22として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。一次メモリ22は、「主記憶装置」と呼ばれることもある。また、二次メモリ23として利用可能なデバイスとしては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ODD(Optical Disk Drive)、FDD(Floppy(登録商標) Disk Drive)、または、これらの組み合わせを挙げることができる。二次メモリ23は、「補助記憶装置」と呼ばれることもある。なお、二次メモリ23は、関係式特定装置2に内蔵されていてもよいし、入出力インタフェース24または通信インタフェース25を介して関係式特定装置2と接続された他のコンピュータ(例えば、クラウドサーバを構成するコンピュータ)に内蔵されていてもよい。なお、本実施形態においては、関係式特定装置2における記憶を2つのメモリ(一次メモリ22および二次メモリ23)により実現しているが、これに限定されない。すなわち、関係式特定装置2における記憶を1つのメモリにより実現してもよい。この場合、例えば、そのメモリの或る記憶領域を一次メモリ22として利用し、そのメモリの他の記憶領域を二次メモリ23として利用すればよい。
【0073】
入出力インタフェース24には、入力デバイスおよび/または出力デバイスが接続される。入出力インタフェース24としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、ATA(Advanced Technology Attachment)、SCSI(Small Computer System Interface)、PCI(Peripheral Component Interconnect)などのインタフェースが挙げられる。入出力インタフェース24に接続される入力デバイスとしては、データロガー3が挙げられる。また、入出力インタフェース24に接続される入力デバイスとしては、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、または、これらの組み合わせが挙げられる。第1特定方法M2においてユーザから取得するデータは、これらの入力デバイスを介して関係式特定装置2に入力され、一次メモリ22に記憶される。また、入出力インタフェース24に接続される出力デバイスとしては、ディスプレイ、プロジェクタ、プリンタ、スピーカ、ヘッドホン、または、これらの組み合わせが挙げられる。第1特定方法M2においてユーザに提供する情報は、これらの出力デバイスを介して関係式特定装置2から出力される。なお、関係式特定装置2は、ラップトップ型コンピュータのように、入力デバイスとして機能するキーボードと、出力デバイスとして機能するディスプレイとを、それぞれ内蔵してもよい。或いは、関係式特定装置2は、タブレット型コンピュータのように、入力デバイスおよび出力デバイスの両方として機能するタッチパネルを内蔵していてもよい。
【0074】
通信インタフェース25には、ネットワークを介して他のコンピュータが有線接続または無線接続される。通信インタフェース25としては、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などのインタフェースが挙げられる。利用可能なネットワークとしては、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、または、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。関係式特定装置2が他のコンピュータ(例えば、推定装置1)に提供するデータ(例えば、学習済モデルLM)は、これらのネットワークを介して送受信される。
【0075】
なお、本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ21)を用いて第1特定方法M2を実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて第1特定方法M2を実行する構成を採用してもよい。この場合、連携して第1特定方法M2を実行する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、バスを介して相互に通信可能に構成されていてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたプロセッサと、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサとが、連携して第1特定方法M2を実行する態様などが考えられる。
【0076】
また、本実施形態においては、第1特定方法M2を実行するプロセッサ(プロセッサ21)と同じコンピュータに内蔵されたメモリ(二次メモリ23)に学習用データセットDSを格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、第1特定方法M2を実行するプロセッサと異なるコンピュータに内蔵されたメモリに学習用データセットDSを格納する構成を採用してもよい。この場合、学習用データセットDSを格納するメモリが内蔵されたコンピュータは、第1特定方法M2を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータとネットワークを介して相互に通信可能に構成される。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたメモリに学習用データセットDSを格納し、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサが第1特定方法M2を実行する態様などが考えられる。
【0077】
また、本実施形態においては、単一のメモリ(二次メモリ23)に学習用データセットDSを格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のメモリに学習用データセットDSを分散して格納する構成を採用してもよい。この場合、学習用データセットDSを格納する複数のメモリは、単一のコンピュータ(第1特定方法M2を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータであってもよいし、そうでなくてもよい)に設けられていてもよいし、複数のコンピュータ(第1特定方法M2を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータを含んでいてもよいし、そうでなくてもよい)に分散して設けられていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成する複数のコンピュータの各々に内蔵されたメモリに学習用データセットDSを分散して格納する構成などが考えられる。
【0078】
≪実パラメータ値の取得例≫
図7は、鋳型の作成工程において、関係式特定装置2が、データロガー3を介して各製造装置4から取得する、実パラメータ値の種類および取得タイミングを模式的に示した図である。図7に示す鋳型製造ラインには、製造装置4として鋳物砂性状測定装置40と、造型機47とが含まれている。造型機47は、鋳物砂投入装置41と、添加物投入装置42と、注水装置43と、混練機44と、混練砂性状測定装置45と、金型46と、を含む。また、造型機47には、抗折強度計48が取付けられている。鋳物砂性状測定装置40と、鋳物砂投入装置41と、添加物投入装置42と、注水装置43と、混練機44と、混練砂性状測定装置45とは、図1に示した混練工程C2における製造装置4であるともいえる。金型46は、図1に示した造型工程C3における製造装置4である。
【0079】
鋳物砂性状測定装置40は、鋳物砂の砂性状(以下、「鋳物砂性状」とも記載する)を測定するための装置である。本実施形態では、鋳物砂性状測定装置40は、鋳物砂性状として、鋳物砂の残留添加物量を測定する。ここで、鋳物砂の残留添加物量とは、例えば、単位重量または単位体積の鋳物砂に含まれる硬化剤の重量または体積のことを指す。また、鋳物砂性状測定装置40は、鋳物砂性状として、鋳物砂の温度および水分量の少なくとも一方を測定してもよい。ここで、鋳物砂の水分量とは、例えば、単位重量または単位体積の鋳物砂に含まれる水分の重量または体積のことを指す。鋳物砂性状測定装置40は、測定した鋳物砂性状を、データロガー3に提供する。
【0080】
鋳物砂投入装置41は、予め設定された投入量(以下、「鋳物砂投入量」とも記載する)の鋳物砂を混練機44に投入するための装置である。ここで、鋳物砂投入量とは、例えば、単位時間あたり(連続処理の場合)または1回の処理あたり(バッチ処理の場合)に混練機44に投入する鋳物砂の重量または体積のことを指す。鋳物砂投入装置41は、設定された鋳物砂投入量を、データロガー3に提供する。
【0081】
添加物投入装置42は、予め設定された投入量(以下、「添加物投入量」とも記載する)の添加物を混練機44に投入するための装置である。添加物投入量とは、例えば、単位時間あたり(連続処理の場合)または1回の処理あたり(バッチ処理の場合)に混練機44に投入する添加物の重量または体積のことを指す。本実施形態に係る添加物投入装置42では、添加物投入量として、硬化剤投入量と、界面活性剤投入量とが予め設定されている。また、添加物投入装置42は、設定された硬化剤投入量および界面活性剤投入量を、データロガー3に提供する。
【0082】
注水装置43は、予め設定された投入量(以下、「水分投入量」とも記載する)の水分を混練機44に投入するための装置である。ここで、水分投入量とは、例えば、単位時間あたり(連続処理の場合)または1回の処理あたり(バッチ処理の場合)に混練機44に投入する水分の重量または体積のことを指す。注水装置43は、設定された水分投入量を、データロガー3に提供する。
【0083】
混練機44は、予め設定された混練条件に従って、鋳物砂に添加物及び水分を混練する装置である。混練条件としては、例えば、混練羽根の回転数(連続処理及びバッチ処理の場合)及び回転時間(バッジ処理の場合)が挙げられる。混練羽根の回転数とは、例えば、単位時間あたりに混練羽根が回転する回数のことを指す。また、混練羽根の回転時間とは、例えば、1回の処理において混練羽根が回転する時間のことを指す。本実施形態では、混練羽根の回転数のことを、「混練速度」であるとみなす。また、本実施形態では、混練羽根の回転時間を、「混練時間」であるとみなす。混練機44は、設定された混練条件を、データロガー3に提供する。
【0084】
混練砂性状測定装置45は、混練砂の砂性状(以下、「混練砂性状」とも記載する)を測定するための装置である。本実施形態では、混練砂性状測定装置45は、混練砂性状として、混練砂の温度を測定する。また、混練砂性状測定装置45は、混練砂性状として、混練砂の温度、水分量、コンパクタビリティ(CB値)、及び通気度のうち少なくとも1つを測定してもよい。なお、混練砂の水分量とは、例えば、単位重量または単位体積の混練砂に含まれる水分の重量または体積のことを指す。また、混練砂のコンパクタビリティとは、混練砂の粒子表面層の水分状態を表す値であり、生砂評価指標として用いられる値である。また、混練砂の通気度とは、例えば、鋳型内から逃げるガス(水素、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素等)の通りやすさのことを指す。混練砂性状測定装置45は、測定した混練砂性状を、データロガー3に提供する。
【0085】
混練機44で混練された混練砂は、金型46に注入される。混練機44には圧入速度センサが取り付けられており、金型46への混練砂の圧入速度が測定される。圧入速度センサは、測定した圧入速度をデータロガー3に提供する。
【0086】
金型46は、鋳型を造型するための型枠である。なお、本実施形態では鋳型の型枠を金型としているが、本発明において鋳型の型枠の材質は金属製に限定されない。金型46には、種々の造型センサが取り付けられている。造型センサは、造型工程に係る各種パラメータを測定する1以上のセンサである。本実施形態では、造型センサは、混練砂の焼成時間、金型46の温度、および、金型46に塗布する離型剤の量を測定する。造型センサは、測定した各種パラメータをデータロガー3に提供する。
【0087】
また、金型46には、抗折強度計48が取り付けられている。抗折強度計48は、造型工程を経て出来上がった鋳型の抗折強度を測定する装置である。抗折強度計48は測定した抗折強度をデータロガー3に提供する。
【0088】
データロガー3は、前述した製造装置4から提供されたパラメータを収集して関係式特定装置2に提供する。すなわち、図7に示すように、データロガー3は、原料パラメータと、混練パラメータと、造型パラメータとを関係式特定装置2に提供する。また、データロガー3は、これらの実パラメータ値で実際に作成された鋳型の、実際の抗折強度を、抗折強度計48から取得する。データロガー3は、取得した、実際の抗折強度を、関係式特定装置2に提供する。
【0089】
関係式特定装置2は、1回の鋳型の作成が行われる度にデータロガー3から取得したパラメータを1つのパラメータセットとして記録してもよいし、所定のタイミングで、複数のパラメータセットを一括して作成および記録してもよい。混練がk回繰り返されると、1回目~k回目までに取得したパラメータを用いて、k個のパラメータセットが関係式特定装置2に蓄積される。その後、関係式特定装置2は、第1関係式特定ステップ(特定ステップ)M24を含む第1特定方法M2を実施する。第1関係式特定ステップM24は、蓄積されたパラメータセットを参照して、該パラメータセットに含まれる各種パラメータと、抗折強度との関係を表す非線形の関係式である、抗折強度関係式F1を特定するステップである。抗折強度関係式F1は、例えば、z=f(x1,x2,…,xn)の形で示される。ここで、zは抗折強度を示す。また、x1、x2、…xnはそれぞれ、パラメータセットに含まれるパラメータを示す。関係式特定装置2の構成及び第1特定方法M2の流れについては、参照する図面を代えて後述する。
【0090】
≪第1特定方法M2の流れ≫
第1特定方法M2の流れについて、図8を参照して説明する。図8は、第1特定方法M2の流れを示すフローチャートである。
【0091】
第1特定方法M2は、学習用データセット構築ステップM21と、学習済モデル構築ステップ(第1構築ステップ)M22と、推定データセット作成ステップM23と、第1関係式特定ステップM24とを含んでいる。
【0092】
学習用データセット構築ステップM21は、プロセッサ21が、教師データDS1,DS2,…の集合である学習用データセットDSを構築するステップである。
【0093】
各教師データDSi(i=1,2,…)はそれぞれ、データロガー3を介して収集したパラメータセットの実パラメータ値(すなわち、原料パラメータ、混練パラメータ、および造型パラメータ)と、実際の抗折強度の値との組み合わせから成る教師データである。なお、教師データDSiのパラメータセットに含まれるパラメータの種類は、学習済モデルLMに入力するパラメータセットに含まれるパラメータと同種である。プロセッサ21は教師データの作成を繰り返すことによって学習用データセットDSを構築する。
【0094】
学習済モデル構築ステップM22は、プロセッサ21が、学習済モデルLMを構築するステップである。学習済モデル構築ステップM22において、プロセッサ21は、学習用データセットDSを用いた教師あり学習によって、学習済モデルLMを構築する。そして、プロセッサ21は、構築した学習済モデルLMを二次メモリ23に格納する。学習済モデルLMの構築および格納が完了すると、プロセッサ21は、次の推定データセット作成ステップM23を実行する。
【0095】
推定データセット作成ステップM23は、プロセッサ32が、後述する第1関係式特定ステップM24において、遺伝的アルゴリズムを用いて関係式を特定する際に使用する推定データセットを作成するステップである。推定データセットは、複数の推定データEDSの集合である。プロセッサ21は、学習済モデル構築ステップM22において構築した学習済モデルLMに、ランダム、または規定のパラメータセットの値を入力することで、該学習済モデルLMから出力として抗折強度を得る。プロセッサ21は、得られた抗折強度(すなわち、推定された抗折強度)と、学習済モデルLMに入力した各種パラメータの値とを対応付けたデータを、1つの推定データEDSとする。プロセッサ21は、作成した推定データEDSを二次メモリ23に記憶させる。このような推定データEDSの作成および記憶を1回以上繰り返すことによって、推定データセットが作成される。
【0096】
プロセッサ21は、第1関係式特定ステップM24において使用する分だけ、学習済モデルLMを用いて推定データセットを作成する。第1関係式特定ステップM24の実行に必要な推定データセットが準備できると、プロセッサ21は、次の第1関係式特定ステップM24を実行する。
【0097】
第1関係式特定ステップM24は、非線形回帰アルゴリズムを用いて学習済モデルLMの入力値と出力値の関係を示す関係式を特定するステップである。
【0098】
本具体例に係る第1関係式特定ステップM24では、非線形回帰アルゴリズムの一種として、遺伝的アルゴリズムを用いて関係式z=f(x1,x2,…,xn)を特定する。ここで、遺伝的アルゴリズムとは、解の候補を遺伝子で表現した個体iを複数用意し、適応度Diの高い個体iを優先的に選択して交叉、突然変異などの操作を繰り返しながら解を探索するアルゴリズムのことを指す。本実施形態において、個体iは、非線形の関係式をツリー構造で表したものであり、関係式に含まれる演算子及び引数がツリーのノードで表される。適応度Diは適応度関数によって与えられる。
【0099】
プロセッサ21は例えば、所定のプログラムモジュールを用いて、第1関係式特定ステップM24を実行する。以降、該所定のプログラムモジュールのことは、単にAモジュールと称する。Aモジュールは、遺伝的アルゴリズムに係る処理を記述したプログラムモジュールである。なお、Aモジュールは公知のライブラリであってもよい。プロセッサ11は、Aモジュールに記述されたプログラムを実行することによって、以下の処理を行う。
【0100】
まず、プロセッサ11は、新しいデータを予測するために、既知の独立変数と、それらの独立変数に従属する従属変数ターゲットとの間の関係を表すランダム式を作成する。プロセッサ11は該ランダム式を複数個作成して、ランダム式の母集団を作成する。この母集団が、遺伝子操作を受ける1世代目の集団である。
【0101】
次に、プロセッサ11は、ランダム式の集団から最も適合した個体を選択する。すなわち、集団の中で、独立変数と従属変数との間の関係を最も適切に表しているランダム式を、最適個体として選択する。次に、プロセッサ11は、集団を進化させて次の世代の集団を生成する。このとき、最適個体は進化させず、そのまま次の世代の集団に加えてもよい。以上の操作を繰り返すことにより、生物の適者生存のように、独立変数と、従属変数との間の関係を適切に表すランダム式を、該独立変数と従属変数との間の関係式として特定することができる。
【0102】
本具体例では、Aモジュールとして、遺伝的プログラミングを実行するモジュールが用いられる。遺伝的プログラミングとは、遺伝的アルゴリズムを拡張したものであり、遺伝子型の表現としてツリー構造を用いる。なお、図10に示す第1関係式特定ステップM24の流れは例示であり、遺伝的アルゴリズムGAを用いた関係式の特定方法は、図10に示した方法に限定されるものではない。遺伝的アルゴリズムGAを用いた関係式の特定方法として、他の種々の手法が採用されてもよい。
【0103】
(第1関係式特定ステップM24の具体例)
図9図15を参照して、第1関係式特定ステップM24の具体例について説明する。図9は、遺伝的アルゴリズムGAを例示する図である。図10は、プロセッサ21が実行する第1関係式特定ステップM24の流れを示すフローチャートである。図9の例では、遺伝的アルゴリズムGAは、第一世代G1~第四世代G4を含む。
【0104】
ステップM121において、プロセッサ21は、推定データセットを取得する。本動作例では、プロセッサ21は、二次メモリ23に記憶された推定データセットを読み出すことにより、該推定データセットを取得する。
【0105】
ステップM122において、プロセッサ21は、遺伝的アルゴリズムGAで用いるパラメータ(以下「個体パラメータ」という)を取得する。個体パラメータは例えば、生成個体数N、トーナメントサイズNt、交叉確率Pc、突然変異確率Pms、進化世代数Ng、構文木に用いる演算子Oj、構文木の最大の深さd、事象発生確率Pk1~Pk5を含む。各個体パラメータの値は例えば、ユーザが関係式特定装置2に入力する。
【0106】
生成個体数Nは、集合に含める個体iの数を表す。トーナメントサイズNtは、現世代の集合からランダムに選択する個体iの数である。突然変異確率Pmsは、遺伝子が突然変異をする確率である。構文木に用いる演算子Oiは、例えば、Max、Min、sqrt(ルート)、log(自然対数)、+、-、×、÷、sin(ラジアン)、cos(ラジアン)、tan(ラジアン)、abs、neg、invである。Maxは、最大値を選択する演算子である。Minは、最小値を選択する演算子である。negは符号をマイナスにする演算子である。invはゼロに近い引数を0にする演算子である。
【0107】
事象発生確率Pk1~Pk5は、次世代の集合を進化させる操作として操作m1~m5がそれぞれ選択される確率である。プロセッサ21は、操作m1~m5のいずれかの方法で次世代の集合を進化させる。事象発生確率Pk1~Pk5の総和は1とする。一例として、事象発生確率Pk1、Pk2、Pk3、Pk4、Pk5の値は、それぞれ、「0.1」、「0.2」、「0.3」、「0.4」、「0.1」である。操作m1~m5については参照する図面を代えて後述する。
【0108】
ステップM123において、プロセッサ21は、指定された個体パラメータ(構文木に用いる演算子Oi、構文木の最大の深さd、等)に基づいて、N個の個体iをランダムに生成し、最初の現世代となるN個の個体iの集合を生成する。本実施形態において、N個の個体iはそれぞれ、ランダムに作成された関係式z=f(x1,x2,…,xn)である。
【0109】
ステップM124において、プロセッサ21は、現世代の集合に含まれる個体iのそれぞれの適応度Diを算出する。適応度Diは、適応度関数によって与えられる。本実施形態において、適応度Diは、例えば、個体iのランダム式に、各推定データが示すパラメータ値または抗折強度を代入したときの他方の値が、各推定データにおける該他方の値との近似度合いに基づいて算出されてもよい。
【0110】
ステップM125において、プロセッサ21は、現世代の集合からトーナメントサイズNtの数の個体iをランダムに取り出し、その中で最も適応度Diの高い個体iを選択し、次世代の集合に追加する。ステップM125において選択された個体i、すなわち、次世代の集合に追加された個体iを「勝者ツリー」ともいう。
【0111】
プロセッサ21は、次世代の個体数が現世代と同じN個になるまで、すなわち次世代の個体数がNに達していない間は(ステップM126;NO)、ステップM125の処理を繰り返す。プロセッサ21は、次世代の個体数がNに達すると(ステップM126;YES)ステップM127の処理を実行する。
【0112】
ステップM127において、プロセッサ21は、次世代の集合を進化させる処理を実行する。なお、ステップM127の詳細については、参照する図面を代えて後述する。
【0113】
ステップM130において、プロセッサ21は、次世代の集合を現世代の集合に上書きする。ステップM131において、プロセッサ21は、進化世代数Ngに達したかを判定する。進化世代数Ngに達していない場合(ステップM131;NO)、プロセッサ21はステップM124の処理に戻る。一方、進化世代数Ngに達している場合(ステップM131;YES)、プロセッサ21は、ステップM132の処理に進む。
【0114】
ステップM132において、プロセッサ21は、現世代の集合に含まれる個体iの中から適応度Diが最も高い個体iを特定する。以上の処理により、プロセッサ21は、推定データEDSに含まれる複数のパラメータおよび抗折強度の関係を表す、非線形の関係式を特定する。
【0115】
図11は、プロセッサ21が実行するステップM127の流れを例示するフローチャートである。ステップM201において、プロセッサ21は、ユーザにより設定された事象発生確率Pk1~Pk5に基づき、操作m1~m5のいずれかを選択する。操作m1を選択した場合(ステップM201;「操作m1」)、プロセッサ21は、ステップM202の処理に進む。操作m2を選択した場合(ステップM201;「操作m2」)、プロセッサ21は、ステップM211の処理に進む。操作m3を選択した場合(ステップM201;「操作m3」)、プロセッサ21は、ステップM221の処理に進む。操作m4を選択した場合(ステップM201;「操作m4」)、プロセッサ21は、ステップM231の処理に進む。操作m5を選択した場合(ステップM201;「操作m5」)、プロセッサ21は、処理を終了する。
【0116】
操作m1は、クロスオーバーである。クロスオーバーとは、個体間で遺伝物質を混合する方法である。クロスオーバーの場合、ステップM202において、プロセッサ21は、次世代の集合に含まれる勝者ツリーについて、各勝者ツリーに含まれるサブツリーをランダムに選択する。
【0117】
ステップM203において、プロセッサ21は、ドナー用の次世代の集合を生成する。ステップM203の処理の内容は、図11のステップM123~M125の内容と同様である。すなわち、プロセッサ21は、まず、ユーザにより指定された個体パラメータに基づいて、N個の個体iをランダムに生成し、N個の個体iの集合(以下「ドナー集合」という)を生成する。次いで、プロセッサ21は、ドナー集合に含まれる個体iのそれぞれの適応度Diを算出する。次いで、プロセッサ21は、ドナー集合からトーナメントサイズNtの数の個体iをランダムに取り出し、その中で最も適応度Diの高い個体iを選択し、次世代のドナー集合に追加する。この処理により選択される個体iを「ドナーツリー」ともいう。プロセッサ21は、次世代のドナーツリーの数がNになるまで、ドナーツリーの選択処理を繰り返す。
【0118】
ステップM204において、プロセッサ21は、ドナーツリーに含まれるサブツリー(以下「ドナーサブツリー」という)をランダムに選択する。
【0119】
ステップM205において、プロセッサ21は、勝者ツリーにおいてサブツリーの入れ替えを行う。本実施形態では、プロセッサ21は、勝者ツリーからステップM202で選択したサブツリー取り除き、そのサブツリーがあった箇所にステップM203で選択したドナーサブツリーを移植する。すなわち、プロセッサ21は、勝者ツリーに含まれるサブツリーをドナーサブツリーで置換する。このサブツリーが置換された勝者ツリーが、次世代の子孫(個体)となる。
【0120】
操作m2は、サブツリーを突然変異させる操作である。サブツリーを突然変異させることにより、絶滅した機能とオペレーターを集団に再導入し、多様性を維持することができる。この場合、ステップM211において、プロセッサ21は、勝者ツリーに含まれるサブツリーをランダムに選択する。
【0121】
ステップM212において、プロセッサ21は、サブツリーをランダムに生成する。ステップM213において、プロセッサ21は、勝者ツリーにおいてサブツリーの入れ替えを行う。本実施形態では、プロセッサ21は、勝者ツリーからステップM202で選択したサブツリーを取り除き、取り除いたサブツリーがあった箇所に、ステップM212で生成したサブツリーを移植する。すなわち、プロセッサ21は、勝者ツリーに含まれるサブツリーをステップM212で生成したサブツリーで置換する。このサブツリーが置換された勝者ツリーが、次世代の子孫(個体)となる。
【0122】
操作m3は、ホイスト突然変異である。ホイスト突然変異は、ツリーの膨らみと戦う突然変異操作である。ステップM221において、プロセッサは、勝者ツリーに含まれるサブツリーをランダムに選択する。ステップM222において、プロセッサ21は、ステップM221で選択したサブツリーに含まれるサブツリーをランダムに選択する。
【0123】
ステップM223において、プロセッサ21は、ステップM222で選択したサブツリーを、元のサブツリー(ステップM221で選択したサブツリー)の位置まで巻き上げる。このサブツリーが巻き上げられた勝者ツリーが、次世代の子孫(個体)となる。
【0124】
操作m4は、点突然変異である。点突然変異は、多様性を維持するために、絶滅した関係式と演算子を集団に再導入する操作である。ステップM231において、プロセッサ21は、勝者ツリーのノードをランダムに選択する。ステップM232において、プロセッサ21は、ステップM231で選択したノードを、他のノードに置換する。これにより、勝者ツリーの表す関係式は、元のノードと同じ数の引数を必要とする他の関係式に置き換えられる。置き換えにより得られる勝者ツリーが、次世代の子孫(個体)となる。
【0125】
操作m5は、再生である。この場合、勝者ツリーは複製され、変更されることなく次の世代に含められる。
【0126】
図12図15は、勝者ツリーに対して行われる操作の内容を例示する図である。図12は、操作m1(クロスオーバー)の内容を例示する図である。図12の例では、勝者ツリーtr11のサブツリーtr111が、ドナーツリーtr12のサブツリーtr121で置換され、勝者ツリーtr13となる。勝者ツリーtr13が、次世代の子孫(個体)となる。
【0127】
図13は、操作m2(サブツリー突然変異)の内容を例示する図である。図13の例では、勝者ツリーtr11のサブツリーtr111が、サブツリーtr22で置換され、勝者ツリーtr23となる。勝者ツリーtr23が、次世代の子孫(個体)となる。
【0128】
図14は、操作m3(ホイスト突然変異)の内容を例示する図である。図14の例では、勝者ツリーtr11のサブツリーtr1121が、サブツリーtr112の位置まで巻き上げられ、勝者ツリーtr31となる。勝者ツリーtr31が、次世代の子孫(個体)となる。
【0129】
図15は、操作m4(点突然変異)の内容を例示する図である。図15の例では、勝者ツリーtr11に含まれるノードn21及びノードn34が、ノードn421及びノードn434に置換され、勝者ツリーtr41となる。勝者ツリーtr41が、次世代の子孫(個体)となる。
【0130】
〔実施形態2〕
本発明に係る推定システムS1は、抗折強度の目標値を満たし、コストが所定値以下であるパラメータセットを選抜し、さらに、該パラメータセットのうち、サイクルタイムが所定時間以内であるパラメータセットを目的パラメータセットと決定してもよい。
【0131】
以下、本発明の第2の実施形態について、図16図17を参照して説明する。なお、説明の便宜上、既出の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。これは、以降の実施形態においても同様である。
【0132】
本実施形態に係る推定装置1は、実施形態1に係る推定装置1と同様のハードウェア構成を備える。ただし、本実施形態に係る推定装置1の二次メモリ13には、第1推定プログラムP1とともに、または、第1推定プログラムP1の代わりに、第2推定プログラムP3が格納されている。
【0133】
プロセッサ11は、二次メモリ13に格納されている第2推定プログラムP3を一次メモリ12上に展開する。そして、プロセッサ11は、一次メモリ12上に展開された第2推定プログラムP3に含まれる命令に従って、第2推定方法M3に含まれる各ステップを実行する。一次メモリ12上に展開された抗折強度関係式F1は、第2推定方法M3の抗折強度推定ステップM31(後述)をプロセッサ11が実行する際に利用される。また、一次メモリ12上に展開されたサイクルタイム関係式F2は、第2推定方法M3のサイクルタイム推定ステップM35(後述)をプロセッサ11が実行する際に利用される。また、一次メモリ12上に展開されたコスト関係式F3は、第2推定方法M3のコスト推定ステップM33(後述)をプロセッサ11が実行する際に利用される。
【0134】
なお、第2推定プログラムP3が二次メモリ13に格納されているとは、ソースコード、または、ソースコードをコンパイルすることにより得られた実行形式ファイルが二次メモリ13に記憶されていることを指す。
【0135】
(第2推定方法M3の流れ)
第2推定方法M3の流れについて、図16および図17を参照して説明する。図16は、第2推定方法M3の流れを示すフローチャートである。また、図17は、第2推定方法M3におけるパラメータセットの選抜方法を模式的に示した図である。第2推定方法M3は、パラメータセット作成ステップM30と、抗折強度推定ステップ(第1推定ステップ)M31と、抗折強度選抜ステップM32と、コスト推定ステップ(第4推定ステップ)M33と、コスト選抜ステップM34と、サイクルタイム推定ステップ(第5推定ステップ)M35と、サイクルタイム選抜ステップM36と、を含む。
【0136】
パラメータセット作成ステップM30、抗折強度推定ステップM31、および抗折強度選抜ステップM32はそれぞれ、第1の実施形態において説明したパラメータセット作成ステップM10、抗折強度推定ステップM11、および抗折強度選抜ステップM12と同様の処理であるので、説明を繰り返さない。プロセッサ11は、一次選抜パラメータセットについて、次の処理であるコスト推定ステップM33を実行する。
【0137】
コスト推定ステップM33は、プロセッサ11が、コスト関係式F3を用いて、各パラメータセットで鋳型を作成したときのコストを推定するステップである。具体的には、図17に示す通り、プロセッサ11は、一次選抜パラメータセットを、それぞれコスト関係式F3に入力することで、コスト関係式F3の解として、コストの推定値を得る。全ての一次選抜パラメータセットについてコストの推定が実行されると、プロセッサ11は、コスト選抜ステップM34を実行する。
【0138】
コスト選抜ステップM34は、コスト推定ステップM33において特定されたコストが所定値以下であるパラメータセットを選抜するステップである。プロセッサ11は、一次選抜パラメータセットから、コストが所定値以下であるパラメータセットを選抜する。すなわち、本実施形態では、一次選抜パラメータセットのうち、コストが所定値以下であるパラメータセットが、二次選抜パラメータセットである。プロセッサ11は、二次選抜パラメータセットについて、次の処理であるサイクルタイム推定ステップM35を実行する。
【0139】
サイクルタイム推定ステップM35は、プロセッサ11が、サイクルタイム関係式F2を用いて、各パラメータセットで鋳型を作成したときのサイクルタイムを推定するステップである。具体的には、図17に示す通り、プロセッサ11は、二次選抜パラメータセットをそれぞれサイクルタイム関係式F2に入力することで、サイクルタイム関係式F2の解としてサイクルタイムの推定値を得る。全ての二次選抜パラメータセットについてサイクルタイムの推定が実行されると、プロセッサ11は、サイクルタイム選抜ステップM36を実行する。
【0140】
サイクルタイム選抜ステップM36は、サイクルタイム推定ステップM35において特定されたサイクルタイムが所定時間以内であるパラメータセットを選抜するステップである。プロセッサ11は、二次選抜パラメータセットから、サイクルタイムが所定時間以内であるパラメータセットを1つ以上選抜し、これを目的パラメータセットと決定する。
【0141】
以上の処理によれば、推定装置1は、目標値を満たす抗折強度が得られるパラメータセットを特定することができる。また、以上の処理によれば、推定装置1は、コストが所定値以下であるパラメータセットを特定することができる。また、以上の処理によれば、推定装置1は、サイクルタイムが所定時間以内であるパラメータセットを特定することができる。
【0142】
さらに言えば、推定装置1は、上述した第1推定方法M1の順で抗折強度、コスト、およびサイクルタイムの推定と、各推定の後のパラメータセットの選抜を行う。これにより、推定装置1は、目標とする抗折強度が得られ、コストが所定値以下であり、かつ、サイクルタイムが所定時間以内であるパラメータセットを特定することができる。したがって、ユーザは、所望の抗折強度、コスト、およびサイクルタイムの条件を満たすための各種パラメータの値を、実験を経ることなく特定することができる。
【0143】
なお、第2推定方法M3は、抗折強度推定ステップM31にて推定した抗折強度を出力する第4出力ステップを含んでいてもよい。また、第2推定方法M3は、コスト推定ステップM33にて推定したコストを出力する第5出力ステップを含んでいてもよい。また、第2推定方法M3は、サイクルタイム推定ステップM35にて推定したサイクルタイムを出力する第6出力ステップを含んでいてもよい。第4~第6出力ステップにおいて、プロセッサ11は、推定した抗折強度、コスト、またはサイクルタイムをディスプレイに出力する。また、第2推定方法M3は、目的パラメータセットが示す各種パラメータの値を、製造装置4の設定値として設定する条件設定ステップを含んでいてもよい。
【0144】
〔実施形態3〕
サイクルタイム関係式F2および/またはコスト関係式F3は、前述の第1および第2の実施形態で説明した抗折強度関係式F1の導出方法と同様の方法で導出されてもよい。
【0145】
サイクルタイム関係式F2を抗折強度関係式F1の導出方法と同様の方法で導出する場合、抗折強度関係式F1の導出に用いたパラメータのうち、サイクルタイム関係式F2に関係するパラメータで、サイクルタイム関係式F2導出用のパラメータセットと、サイクルタイムの実測値または推定値とを組み合わせた教師データを用いればよい。
【0146】
コスト関係式F3を抗折強度関係式F1の導出方法と同様の方法で導出する場合も同様である。抗折強度関係式F1の導出に用いたパラメータのうち、コスト関係式F3に関係するパラメータで、コスト関係式F3導出用のパラメータセットと、コストの実計算値または推定値とを組み合わせた教師データを用いればよい。
【0147】
〔実施形態4〕
前述の各実施形態では、非線形回帰アルゴリズム(具体的には、遺伝的アルゴリズム)を用いて、抗折強度関係式F1を構築する構成について説明した。しかしながら、抗折強度関係式F1を構築する方法は、非線形回帰アルゴリズムに限定されない。例えば、モンテカルロ法を用いて抗折強度関係式F1を構築してもよい。この場合、例えば、抗折強度関係式F1の長さ、及び、抗折強度関係式F1の要素(変数や演算子など)をランダムに選択することによって複数の関数式を作成し、これらの関数式のなかから誤差の最も小さい関数式を選択することによって、抗折強度関係式F1を構築する。
【0148】
〔実施形態5〕
本発明に係る推定装置1は、抗折強度関係式F1を用いることなく、学習済モデルLMを用いて目的パラメータセットを推定してもよい。前述の各実施形態における学習済モデルLMは、パラメータセットと、当該パラメータセットに対応する抗折強度との関係を学習したモデルである。換言すると、関係式特定装置2は、学習済モデル構築ステップ(特定ステップ)M22において、学習済モデルLMとして、抗折強度の目標値を入力すると、当該抗折強度を示す鋳型を作成するための目的パラメータセットを推定して出力する、学習済ニューラルネットワークモデル(より具体的には、ディープニューラルネットワークモデル)を構築する。
【0149】
本実施形態において、推定装置1は関係式特定装置(特定装置)2と一体に構成されるか、推定装置1に学習済モデルLMがダウンロードされるか、または、推定装置1が外部に保存されている学習済モデルLMにアクセス可能に構成される。そして、推定装置1は、抗折強度の目標値を学習済モデルLMに入力することで、目的パラメータセットを得る。これにより、抗折強度関係式F1を特定する必要なく、学習済モデルLMから直接目的パラメータセットを導き出すことができる。
【0150】
〔実施形態6〕
本発明に係る関係式特定装置2は、学習済モデルを用いずに、データロガー3が取得する実パラメータ値、および実際の抗折強度の値から抗折強度関係式F1を特定してもよい。以下、本発明の第6の実施形態について、図18を参照して説明する。
【0151】
なお、本実施形態に係る関係式特定装置2は、実施形態1および2に係る関係式特定装置2と同様のハードウェア構成を有する。ただし、本実施形態に係る関係式特定装置2の二次メモリ23には、第1関係式特定プログラムP2に代えて第2関係式特定プログラムP4が格納されている。
【0152】
二次メモリ23には、第2関係式特定プログラムP4および実データセットが格納されている。プロセッサ21は、二次メモリ23に格納されている第2関係式特定プログラムP4および実データセットを一次メモリ22上に展開する。そして、プロセッサ21は、一次メモリ22上に展開された第2関係式特定プログラムP4に含まれる命令に従って、第2特定方法M4に含まれる各ステップを実行する。一次メモリ22上に展開された実データセットは、第2特定方法M4の第1関係式特定ステップM24(後述)をプロセッサ21が実行する際に利用される。なお、第2関係式特定プログラムP4が二次メモリ23に格納されているとは、ソースコード、または、ソースコードをコンパイルすることにより得られた実行形式ファイルが二次メモリ23に記憶されていることを指す。
【0153】
≪第2特定方法M4の流れ≫
第2特定方法M4の流れについて、図18を参照して説明する。図18は、第2特定方法M4の流れを示すフローチャートである。
【0154】
第2特定方法M4は、実データセット作成ステップM41と、第2関係式特定ステップM42とを含んでいる。
【0155】
実データセット作成ステップM41は、プロセッサ21が、データロガー3が取得した実パラメータ値と、実際の抗折強度の値とから、実データセットを作成するステップである。実データセットは、後述する第2関係式特定ステップM42において使用される。プロセッサ21は、作成した実データセットを二次メモリ23に記憶させる。
【0156】
プロセッサ21は、第2関係式特定ステップM42において使用する分だけ、実データセットを作成する。第2関係式特定ステップM42の実行に必要な実データセットが準備できると、プロセッサ21は、次の第2関係式特定ステップM42を実行する。
【0157】
第2関係式特定ステップM42は、非線形回帰アルゴリズム(本実施形態では、遺伝的アルゴリズム)を用いて、実データセットから、パラメータセットと、抗折強度との関係を示す抗折強度関係式F1を特定するステップである。第2関係式特定ステップM42の具体的な処理内容は、実施形態1において説明した、第1関係式特定ステップM24と同様である。ただし、第1関係式特定ステップM24では、学習済モデルLMへの入力データと出力データとの組み合わせである推定データセットを用いたところを、本実施形態に係るプロセッサ21は、推定データセットではなく実データセットを用いて同様の処理を実行する。
【0158】
〔実施形態7〕
また、本発明に係る推定装置1は、抗折強度関係式F1、およびニューラルネットワークとしての学習済モデルLMを使用せずにパラメータセットから抗折強度を導出する構成であってもよい。例えば、推定装置1は、パラメータセットに含まれる各パラメータと抗折強度とを相互に関連付けた多次元のテーブルを参照して、パラメータセットから抗折強度を導出してもよい。
【0159】
〔変形例〕
本発明に係る推定装置1は、抗折強度推定ステップ(M11またはM31)、サイクルタイム推定ステップ(M13またはM35)、および、コスト推定ステップ(M15またはM33)を、それぞれ単独で実施してもよい。すなわち、第1推定プログラムP1または第2推定プログラムP3における、前述の各ステップは、別個のプログラムモジュールであり、それぞれ単独で呼び出して処理可能なプログラムであってもよい。
【0160】
これにより、例えば、あるパラメータセット群のうち、目標値以上の抗折強度が得られるパラメータセットを目的パラメータセットとして特定することができる。また例えば、あるパラメータセット群のうち、サイクルタイムが所定値以内であるパラメータセットを、目的パラメータセットとして特定することができる。また例えば、あるパラメータセット群のうち、コストが所定値以下、またはコストが最も低いパラメータセットを目的パラメータセットとして特定することができる。
【0161】
本発明の各実施形態において、第1推定方法M1、第1特定方法M2、第2推定方法M3、および、第2特定方法M4を異なるプロセッサ(プロセッサ11およびプロセッサ21)を用いて実行する構成を採用している。しかしながら、本発明における方法M1~M4の実行主体は、前述した各実施形態の組み合わせに限定されない。
【0162】
すなわち、第1推定方法M1、第1特定方法M2、第2推定方法M3、および、第2特定方法M4のうち2つ以上を同一のプロセッサを用いて実行してもよい。この場合、第1特定方法M2または第2特定方法M4を実行することによって、このプロセッサと同じコンピュータに内蔵されたメモリに抗折強度関係式F1が格納さる。そして、このプロセッサは、第1推定方法M1または第2推定方法M3を実行する際に、このメモリに格納された抗折強度関係式F1を利用することになる。
【0163】
〔まとめ〕
態様1に係る推定装置は、一または複数のプロセッサを備え、前記プロセッサは、鋳型の作成に関する複数のパラメータのパラメータセットから、前記鋳型の抗折強度を推定する第1推定ステップを実行し、前記複数のパラメータは、(1)前記鋳型の原料に関する原料パラメータ、(2)前記原料の混練工程において測定または設定される混練パラメータ、および(3)前記混練工程で作成された混練砂の造型工程において測定または設定される造型パラメータ、を含む。
【0164】
前記の構成によれば、推定装置は、鋳型の作成に関する複数のパラメータから、抗折強度の値を推定することができる。
【0165】
態様2に係る推定装置は、態様1に係る推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様2に係る推定装置において、前記第1推定ステップは、鋳型の抗折強度と、前記鋳型の作成に関する複数のパラメータとの関係を示す抗折強度関係式を用いて、前記パラメータセットから前記抗折強度を推定するステップである。
【0166】
前記の構成によれば、推定装置は、抗折強度関係式を用いて、鋳型の作成に関する複数のパラメータから、抗折強度の値を推定することができる。
【0167】
態様3に係る推定装置は、態様2に係る推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様3に係る推定装置において、前記抗折強度関係式は、非線形回帰アルゴリズムを用いて特定された関係式である。
【0168】
前記の構成によれば、推定装置は、非線形回帰アルゴリズムを用いて抗折強度関係式を特定することができる。
【0169】
態様4に係る推定装置は、態様2または3に係る推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様8に係る推定装置において、前記抗折強度関係式は、前記鋳型の抗折強度と、前記鋳型の作成に関する複数のパラメータとの関係を機械学習させた学習済モデルに、前記パラメータセットの具体値を入力することによって得られた出力データと、該具体値とを組み合わせたパラメータセットを用いて、非線形回帰アルゴリズムで特定された関係式である。
【0170】
前記の構成によれば、推定装置は、学習済モデルを用いて作成されたパラメータセットを用いて、さらに、非線形回帰アルゴリズムで特定された抗折強度関係式を用いて抗折強度を推定することができる。したがって、推定装置は、より正確に抗折強度を推定することができる。
【0171】
態様5に係る推定装置は、態様1~4のいずれか1態様に係る推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様4に係る推定装置において、前記プロセッサは、前記複数のパラメータのうち少なくとも一部のパラメータと、前記鋳型の作成のサイクルタイムとの関係を示す関係式であるサイクルタイム関係式に、前記第1推定ステップにおいて推定された前記抗折強度が目標値以上である前記パラメータセットについて、該パラメータセットに含まれる前記少なくとも一部のパラメータを、前記サイクルタイム関係式に代入することで、前記サイクルタイムを推定する第2推定ステップを実行する。
【0172】
前記の構成によれば、推定装置は、目標値以上の抗折強度を有する鋳型を作成可能なパラメータセットについて、さらに、サイクルタイムを推定することができる。
【0173】
態様6に係る推定装置は、態様5に係る推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様5に係る推定装置において、前記プロセッサは、前記複数のパラメータのうち少なくとも一部のパラメータと、前記鋳型の作成にかかるコストとの関係を示す関係式であるコスト関係式に、前記第2推定ステップにおいて推定された前記サイクルタイムが所定時間以内である前記パラメータセットについて、該パラメータセットに含まれる前記少なくとも一部のパラメータを、前記コスト関係式に代入することで、前記コストを推定する第3推定ステップを実行する。
【0174】
前記の構成によれば、推定装置は、目標値以上の抗折強度を有する鋳型を作成可能で、かつ、鋳型作成のサイクルタイムが所定時間以内となるパラメータセットについて、さらに、鋳型作成にかかるコストを推定することができる。
【0175】
態様7に係る推定装置は、態様1~4のいずれか1態様に係る推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様6に係る推定装置において、前記プロセッサは、前記複数のパラメータのうち少なくとも一部のパラメータと、前記鋳型の作成にかかるコストとの関係を示す関係式であるコスト関係式に、前記第1推定ステップにおいて推定された前記抗折強度が目標値以上である前記パラメータセットについて、該パラメータセットに含まれる前記少なくとも一部のパラメータを、前記コスト関係式に代入することで、前記コストを推定する第4推定ステップを実行する。
【0176】
前記の構成によれば、推定装置は、目標値以上の抗折強度を有する鋳型を作成可能なパラメータセットについて、さらに、コストを推定することができる。
【0177】
態様8に係る推定装置は、態様7に係る推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様7に係る推定装置において、前記プロセッサは、前記複数のパラメータのうち少なくとも一部のパラメータと、前記鋳型の作成のサイクルタイムとの関係を示す関係式であるサイクルタイム関係式に、前記第4推定ステップにおいて推定された前記コストが所定値以下である前記パラメータセットについて、該パラメータセットに含まれる前記少なくとも一部のパラメータを、前記サイクルタイム関係式に代入することで、前記コストを推定する第5推定ステップを実行する。
【0178】
前記の構成によれば、推定装置は、目標値以上の抗折強度を有する鋳型を作成可能で、かつ、コストが所定値以内となるパラメータセットについて、さらに、鋳型作成のサイクルタイムを推定することができる。
【0179】
態様9に係る推定装置は、態様1~8のいずれか1態様に係る推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様9に係る推定装置において、前記原料パラメータは、前記混練工程における鋳物砂投入量、水分投入量、および添加物投入量、ならびに、鋳物砂の残留添加物量の、少なくとも一部を含む。
【0180】
前記の構成によれば、推定装置は、混練工程における鋳物砂投入量、水分投入量、および添加物投入量、ならびに、鋳物砂の残留添加物量の少なくとも一部から、抗折強度を推定することができる。
【0181】
態様10に係る推定装置は、態様1~9のいずれか1態様に係る推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様10に係る推定装置において、前記混練パラメータは、前記鋳型の混練工程における原料の混練速度、混練時間、および混練砂の温度の、少なくとも一部を含む。
【0182】
前記の構成によれば、推定装置は、前記鋳型の混練工程における原料の混練速度、混練時間、および混練砂の温度の、少なくとも一部から、抗折強度を推定することができる。
【0183】
態様11に係る推定装置は、態様1~10のいずれか1態様に係る推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様11に係る推定装置において、前記造型パラメータは、鋳型の型枠への混練砂の圧入速度、型枠の温度、型枠に塗布する離型剤の量、および、混練砂の焼成時間の、少なくとも一部を含む。
【0184】
前記の構成によれば、推定装置は、鋳型の型枠への混練砂の圧入速度、型枠の温度、型枠に塗布する離型剤の量、および、混練砂の焼成時間の、少なくとも一部から、抗折強度を推定することができる。
【0185】
態様12に係る関係式特定装置は、一または複数のプロセッサを備え、前記プロセッサは、鋳型の作成に関する複数のパラメータであって、(1)前記鋳型の原料に関する原料パラメータ、(2)前記原料の混練工程において測定または設定される混練パラメータ、(3)前記混練工程で作成された混練砂の造型工程において測定または設定される造型パラメータ、および、(4)前記鋳型の抗折強度を含む、複数のパラメータのパラメータセットから抗折強度を推定するための関係式または学習済モデルを特定する特定ステップを実行する。
【0186】
前記の構成によれば、鋳型の作成に関する複数のパラメータから抗折強度を推定するための関係式または学習済モデルを特定することができる。
【0187】
態様13に係る推定方法は、一または複数のプロセッサが、鋳型の抗折強度と、前記鋳型の作成に関する複数のパラメータのパラメータセットから前記鋳型の抗折強度を推定する第1推定ステップを含み、前記複数のパラメータは、(1)前記鋳型の原料に関する原料パラメータ、(2)前記原料の混練工程において測定または設定される混練パラメータ、および(3)前記混練工程で作成された混練砂の造型工程において測定または設定される造型パラメータ、を含む。
【0188】
前記の構成によれば、鋳型の作成に関する複数のパラメータから、抗折強度の値を推定することができる。
【0189】
態様14に係る特定方法は、一または複数のプロセッサが、鋳型の作成に関する複数のパラメータであって、(1)前記鋳型の原料に関する原料パラメータ、(2)前記原料の混練工程において測定または設定される混練パラメータ、(3)前記混練工程で作成された混練砂の造型工程において測定または設定される造型パラメータ、および、(4)前記鋳型の抗折強度を含む、複数のパラメータのパラメータセットから抗折強度を推定するための関係式または学習済モデルを特定する特定ステップを含む。
【0190】
前記の構成によれば、鋳型の作成に関する複数のパラメータから抗折強度を推定するための関係式または学習済モデルを特定することができる。
【0191】
〔付記事項1〕
前述の第1から第5の実施形態では、学習済モデルLMとして、教師あり学習により機械学習された学習済モデルを用いたが、教師なし学習により機械学習された学習済モデルが用いられてもよい。教師なし学習により機械学習された学習済モデルについても、プロセッサ21が、学習済モデルの入力と出力との関係を表す非線形の関係式を、非線形回帰アルゴリズムを用いて特定する。
【0192】
〔付記事項2〕
上述の第1から第5の実施形態では、関係式特定装置2が学習済モデルLMを構築したが、学習済モデルLMは、関係式特定装置2以外の他の装置により予め構築されていてもよい。この場合、関係式特定装置2は、他の装置により予め構築された学習済モデルを用いて上述の第1特定方法M2を実施する。
【0193】
〔付記事項3〕
前述の第1から第5の実施形態では、プロセッサ21が、学習済モデルLMの入力データと出力データとの関係を表す非線形の関係式を解の候補とする遺伝的アルゴリズムを用いた非線形回帰により、当該関係式を特定した。しかしながら、入力データと出力データとの関係を表す関係式の特定方法は前述の第1および第2の実施形態で示した方法に限られない。例えば、プロセッサ21が、入力データを表す数値と隠れ層に属する一部又は全部のノードの各々の出力値との関係を表す非線形の第1の関係式、及び、当該ノードの各々の出力値と出力データを表す数値との関係を表す非線形の第2の関係式を解の候補とする遺伝的アルゴリズムを用いた非線形回帰により、当該第1の関係式及び当該第2の関係式を特定してもよい。この場合、プロセッサ21は、例えば特定した第1の関係式と第2の関係式との連立方程式を解くことにより、入力データを表す数値と出力データを表す数値との関係を表す非線形の関係式を特定する。
【0194】
〔付記事項4〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0195】
1 推定装置
2 関係式特定装置
3 データロガー
4 製造装置
11、21、 プロセッサ
12、22、 一次メモリ
13、23、 二次メモリ
14、24 入出力インタフェース
15、25 通信インタフェース
16、26 バス
40 鋳物砂性状測定装置
41 鋳物砂投入装置
42 添加物投入装置
43 注水装置
44 混練機
45 混練砂性状測定装置
46 金型
47 造型機
48 抗折強度計
M1 第1推定方法
M3 第2推定方法
M10、M30 パラメータセット作成ステップ
M11、M31 抗折強度推定ステップ
M12、M32 抗折強度選抜ステップ
M13、M35 サイクルタイム推定ステップ
M14、M36 サイクルタイム選抜ステップ
M15、M33 コスト推定ステップ
M16、M34 コスト選抜ステップ
M2 第1特定方法
M21 データセット構築ステップ
M22 学習済モデル構築ステップ
M23 推定データセット作成ステップ
M24 第1関係式特定ステップ
M4 第2特定方法
M41 実データセット作成ステップ
M42 第2関係式特定ステップ
S1 推定システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18